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宇宙戦艦ヤマト前史

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宇宙戦艦ヤマト登場前の地球防衛軍の苦闘を描きます。

148.夢幻の 宇宙戦艦・・・『扶桑』 (フソウ) ー (13)

 一瞬の反航戦で更に二隻の僚艦を失ったガミラス艦隊の艦隊副指令は噂話を信じるものでは無いとつくづく思った。

今、剣を交えた相手は噂のファースト・コンタクト時のテロン艦とは違い、豆鉄砲で武装したブリキ船などでは決して
無かったからだ。

<確かにテロンの技術は我々には及ばない、しかし、その戦闘力、応用力は決して侮れない・・・。  先行している
ルミナス総司令にこの事を伝えねばなるまい。>ガット副指令は超光速通信回路を開かせた。

「なにっ!敵は陽電子砲を手にしたのか! それに十隻のデストリア級のうち、三隻もがやられたのか! 
敵艦隊は全滅させたろうな!」ルミナス総司令はガット副指令を問い質した。

「残念ながら早期警戒艦一隻を撃沈しましたが、敵本隊は摩訶不思議な装甲を持っており、被害を与える事は
出来たのですが撃沈には至りませんでした。」バツが悪そうにガットは答えた。

リ・アクティヴ・アーマーの概念の無いガミラスには日本遊撃艦隊の防御方法は魔法の様にしか見えなかったのだ。

もともとガミラス人は防御の観念が薄い、陽電子砲は大抵の装甲なら貫いてしまう超兵器だったからだ。

そして、対ビーム用として装甲板に帯磁特殊加工(ミゴヴェザー・コーティング)を施す事はしたものの、陽電子ビームを
完全に防ぐ事は出来なかった。
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こうした個艦の防御力の薄弱さはガミラスの政治にまで影響していた。

つまり、ガミラス艦、個艦の防御が不足しているため、ガミラス帝星を防衛する艦隊は出来るだけ遠くで侵略者を討つ
必要があると考えられたていたのである。

他の要因も勿論、あったが、これがガミラスの急速な版図拡大に一番影響のあった要因であった。

「我々に帰順すれば寛大な措置が与えられる、そうでなければ殲滅するだけだ!」これは後ににメルダ・ディッツ少尉が
古代一尉に言った言葉だが、ここにガミラスの本音が隠れている。
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出会いが敵の先制攻撃で始まったとしても艦の防御力に絶対の自信があれば相手の攻撃は無視し、交渉開始の
手続きを執るはずである。

本当に強く、相手の攻撃を受け付けないのであれば反撃する必要すら無いのである。

しかし、ガミラスは彼等も異星文明が怖かったのだろう、地球側の先制攻撃に対し反撃してしまった。

地球ーガミラス大戦はこうした”弱さ”と”弱さが”出会ってしまったために起こった「悲劇」であった。

**************************************************

 先程、反航戦で交戦したガミラス艦隊が追って来ないのを確認した秋山は残った艦隊に回頭命令を発していた。

「全艦、左十六点回頭、残敵を掃討する!」その命令は各艦の艦長を唖然とさせた。

十六点回頭、それは180度の方向転換を意味していたからである。

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「司令、お気持ちは判りますが、先程の戦闘で各艦大なり小なり傷ついています。
それに手持ちの推進剤では百八十度の方向転換は出来ません、一度、基地に帰るべきです。」 副官が恐る恐る
意見具申した。

「俺たちの基地はどのみち百八十度、方向転換しなければ帰れない、途中で奴らと再戦するのは何の不思議も
無い事だ。」秋山は平然と言った。

「推進剤の不足は木星の大重力を使ったフライ・バイでなんとかならないか? 航海長、どうか?」

「いけます! 但し、木星の重力圏に捕まって二度と太陽を拝めなくなる位、低高度まで降りる必要がありますが・・・。」
航海長は眼前の計器では無く、自分専用のタブレットを操作しながら応えた。

「なら決まりですね、司令。本艦はこれより左十六点回頭を木星の重力を利用して行う。航海士は軌道計算を行へ!」
『フソウ』艦長が命令を発し、『ミョウコウ』、『ヒエイ』、『チョウカイ』もそれに続いた。

しかし、このフライ・バイはかなり無茶な作戦であった。

本来、フライ・バイとは大重力源を掠める様に航行する事で航行速度を推進剤を使わず飛躍的に上げる技術であった。

それを方向転換に利用しようと言うのであるからその無茶ぶりが判る。

一度完全に木星の重力圏に入り、どんどん高度を下げながら大重力によって加速、木星の周囲を半周した所で
木星の大重力圏の脱出を試み様と言うのだ。

正に「奇法」である、戦闘には「正法」と「奇法」がある、「正法」は正面から実力でぶつかる方法、「奇法」は敵の
思いも依らない方法で奇襲を賭ける事を言う、先程の戦闘でガミラス艦隊に反航戦を挑んだのは「正法」、左八点回頭で
敵艦隊に陽電子・衝撃砲を打ち込んだのは「奇法」であった。

秋山は更に木星という大重力源を利用して通常では考えられない回り込み戦を敵の背後に掛けようとしていた。
(これも立派に「奇法」である。)

地球上や大気のあるところなら舵が使えるから回り込み戦闘を仕掛けるのは容易である。

しかし宇宙の何もない所でそれをやるには膨大な量の推進剤を必要とする、何故なら、一度、戦闘速度に加速した
戦艦の速度を逆噴射でゼロにし、向きを180度変更した後再び元の戦闘速度まで加速しなおすというプロセスが
必要だからである。

艦首のバーニャで方向転換すれば良いと考えるかもしれないが、それでは艦の向きが変わるだけで進行方向は
何も変わらないのだ。

秋山は先程の反航戦ではこれを利用して艦全体を一個の砲塔として運用、ガミラスの度胆を抜いた、しかし、今度は
本当に180度の方向転換が必要となった。

平時なら加速を止め、補給用無人タンカーを使って推進剤を補給、帰途に付けば良いだけの話なのだが今は戦時、
のんびり慣性航行をして補給タンカーを待つなどと言う悠長な事をしている暇は秋山達にはなかった。

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 「あの大赤班が目標だ! 但し、近づき過ぎない様に注意しろ! 大重力で木星内部まで引き込まれるぞ! 
特に『ミョウコウ』は大気抵抗が大きい、本艦隊より深く木星内部に入らないで済む軌道計算をしろ!」

秋山は木星の内部まで降り過ぎない様、目標基準を大赤班に選んだ、これなら安定した固形物が無い木星でも
自分達の位置判断が出来る、また、フライ・バイで方向転換しつつ、木星の大重力圏から離れるために必要な速度を
得る事が出来る高度では『ミョウコウ』の様に艦首にアンテナや外装式陽電子・衝撃砲を備えていると大気抵抗が
大きすぎて失速、木星内部に引き込まれる恐れがあったからだ。

「了解しました。 ただ、木星侵入高度が浅いと十六点回頭の半径が本艦隊より大きくなってしまい、本隊に遅れて
しまいます。

それでは本艦が居ないまま、ガミラス艦隊と戦闘になる可能性があります。」『ミョウコウ』の石田艦長が異を唱えた。

「大丈夫だ、本隊は『ミョウコウ』を待ってガミラスの残敵を掃討する! 安心しろ、今は自艦の安全だけを考えろ!」
秋山はこの冒険的な作戦で更なる無理を部下にさせたくなかった。

それに秋山は既に『ミョウコウ』が戦闘に遅れた場合の策も考えていた。



                                 149.夢幻の 宇宙戦艦・・・『扶桑』 (フソウ) ー (14)→ この項続く

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by YAMATOSS992 | 2014-08-07 21:00 | ヤマト2199 挿話 | Comments(18)
Commented by 古世人 at 2014-08-08 14:56 x
私も、製作サイドのショックカノンの扱い方の雜さにはやや呆れていました。ワープや波動砲は分かりますが、魚雷や機銃は実戦で試されたのに、肝心の主副砲がぶっつけ本番とはあり得ません。そのため、先生の今回の作品は楽しませていただいております。ところで、ガミラスは機動力に、地球は攻撃力(や防御力)にそれぞれの重きを置いていますよね。それでは、ガトランティスは何に重きを置いているのでしょうか?それと、フソウシリーズの次は何にするおつもりでしょうか?
Commented by 古世人 at 2014-08-08 15:08 x
それと、もうひとつ、
「アオスイショウ」シリーズでの「ドメル将軍タイプか?エリーサ船長タイプか?」関連です。土方さんは「2」の土星海戦だけを見れば、ドメル将軍タイプですけど、「さらば」や(その後)の教え子である古代君との共通点を見れば、エリーサタイプとも思えます。先生はどちらとお考えでしょうか?
Commented by YAMATOSS992 at 2014-08-08 16:39
古世人さんいらっしゃい。
>ガミラスは機動力に、地球は攻撃力(や防御力)にそれぞれの重きを置いている・・・
私の物語を深く読んで頂いて感謝の念に堪えません。
私の物語の根本は地球で行われた戦いの分析です。
あなたは地球側が攻撃力(や防御力)を重視していると考えておられる様ですが、私は「破壊力と防御力」を
重視していると考えています。
例えば「核兵器」は現時点で最大の破壊力を持ちますが、使ったが最後、敵軍を消滅できますが、不毛の土地が開けるだけになってしまいます。
即ち、身を切る覚悟で侵略者を討つ場合にしか使えない兵器なのです。
こんな事を書くと識者から叩かれそうですが、私は核兵器は地上で使う限り「防御兵器」だと思っています。
(だから、冷戦の時、何度も核戦争の危機がありましたが使えない兵器ですから戦争に成り様がありません。)

(下へ続く)
Commented by YAMATOSS992 at 2014-08-08 17:07
ガミラスは持てるテクノロジーの都合上、侵略国家になった旨、本編で説明しました。

しかし、ガトランティス=彗星帝国だとすると根っからの侵略国家です。
侵略国家の特徴は強力な武器を末端兵士に持たせない事です。
だって自分達の武器で侵略する星を焼き尽くしたら資源も食料もその他、彼らにとって価値があるものを
全て失ってしまいます。
だから拙作「使命の神託」で述べた様に「波動砲」を使った侵略など有り得ないと私は思っています。

ガトランティス艦は回転式砲塔を多数備えているので如何にも重武装している様に見えますが、回転砲塔
一基が一度に発射出来るビームは一条です。 
かなりの大口径砲の様ですので敵艦を一撃で屠る事を目的に作られたものでしょう。
ドメル将軍との戦いではガミラスの機動力に翻弄され一方的に敗れたガトランティスですが、本来彼等は
移動国家です。
ガミラスの様に強い勢力は避けて通り、弱い惑星国家などにはそこそこの攻撃力を持つ艦艇を差し向けて
降伏させ、略奪の限りを尽くす、それがガトランティスのやり方だと私は思っています。
Commented by YAMATOSS992 at 2014-08-08 17:20
>土方はドメル・タイプかエリーサ・タイプか?

これは指揮官としての資質の問題では無いと私は考えます。
即ち、エリーサもその気に成りさえすればドメルの様に軍団を指揮する資質は持っています。
ただ、本人がそうした戦い方を好まず、女皇ユリーシャを守る為にだけ力を出して見せているのです。
Commented by YAMATOSS992 at 2014-08-08 21:13
現在連載している「フソウ」シリーズは思いの外、大長編になってしまいました。
本来5回位の作品のものだったのですが、書きたい事を書いて行く内に「使命の神託」に
迫る長編になって行きました。
今、広げるだけ広げた大風呂敷を畳んでいる最中です。
次のシリーズの事まで頭が回りません、ご勘弁を!
Commented at 2014-08-09 09:20 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by 古世人 at 2014-08-09 09:21 x
誤って非公開コメントにしてしまいました。すみませんでした。
Commented by YAMATOSS992 at 2014-08-09 09:55
普通、ビームの色はそのエネルギー密度で決まります。
そして、高密度になると青白くなります。(ショック・カノン)
だから、本編で語った様に高圧増幅光線砲なのではと推測しました。
しかし、非常に大口径なので装甲に加わるエネルギー密度が高く、
地球艦が果たせなかったガミラス艦撃沈が出来たと推測します。
(記事No.134,135参照)
Commented by sengoku at 2014-08-09 17:21 x
慣性制御について、2199世界では、ヤマト艦内で艦内の人工重力や慣性制御の技術が使われているようですが、この技術、少なくとも慣性制御は、ヤマト以前の艦も持っていると考えた方が妥当です。
というのも、メ1号作戦で、地球艦隊は瞬時に、バーニヤのみで反転するシーンが幾つかあります。また、「ゆきかぜ」と「きりしま」がすれ違うシーンがありますが、これも慣性制御できりしまが減速、反転したと考える方が妥当だと思います。
他には、メ1号作戦において、ゆきかぜとガミラス艦の追撃戦においても慣性制御が無い場合、ガミラス艦は容易にゆきかぜのバックを取ることが可能であり、あのような追撃戦自体が発生しないと考えられます。
また、沖田司令や山南艦長、古代艦長が立ったままでの指揮も、少なくとも慣性制御技術がないと出来ないと思われます。
本文中では、慣性制御技術が地球側に存在しないような描写ですが、どのようにお考えでしょうか。
Commented by sengoku at 2014-08-09 17:22 x
続きます。
私は、本文との兼ね合いより、
1)慣性制御装置は、第2次火星沖会戦まで、宇宙船に積める大きさではなかった。第2次火星沖会戦は地球側の慣性制御技術により勝利できた。
2)ファーストコンタクト時にも各艦に搭載されていたが、エネルギー消費が激しいので、限定的にしか使用できなかった。
の、いずれかではなかったかと考えますが。
Commented by YAMATOSS992 at 2014-08-09 20:23
 sengokuさんいらっしゃい。
慣性制御(人工重力)の技術は確実にヤマト登場以前に地球側は実用化していた技術です。
キリシマの大気圏内航行シーンなどこの技術がなければ説明がつきません。
しかし、本来の宇宙戦闘中は艦内は無重力が基本となります。
戦闘中は艦の姿勢が常に変わりその度に艦内重力の発生方向を変える必要が出てきます。
それなら磁力靴や床につま先掛けを用意しておく方が簡単で重量の節約になります。
艦の運行に慣性制御が使えるか、どうかが問題となりますが、私は15話「帰還限界点」でヤマトが機関不調を起した時、沖田は「慣性航法」への切り替えを指示します。 私は最初無動力で慣性だけで推進しているものと思いましたが、推進力を失ったのですから自動的に慣性だけで航行する事になる訳で態々命令するまでも無い事です。
即ち沖田は慣性(制御)航法に移行する様、命じたと私は考え直しました。
また、ヤマトの地球発進、ビーメラ、ガミラス、イスカンダルなどでの着・発進も慣性制御を使っているとしか思えない飛行を見せました。
だから、私は慣性制御は地球独自開発の技術だと考えました。
(下へ続く)
Commented by YAMATOSS992 at 2014-08-09 20:32
ただ、大きな問題が一つあります。
空間転移(ワープ)と違って慣性制御は理論の欠片も掴めていない魔法レベルの技術だと言う事です。
だから本来は兵器への応用とか色々と馬鹿な事が考えられるのですがそれをやるとヤマト世界は崩れてしまいます。
だから私はメ号作戦での各艦の動きにはとぼけて宇宙空間での方向転換が如何に難しいかに焦点を当てようとしましたが、どうやら見破られたようですね。
脱帽します。

また、それなら何故、ヤマト艦内は有重力に設定されているのか、これは現在でも長期宇宙滞在時に起きる筋力低下と骨の劣化の問題をクリアーするためと考えています。
だからヤマト以前の地球艦艇も長期作戦をする巡洋艦は少なくとも慣性制御の技術がなければ運用は出来ません。
勿論、戦闘時は無重力が基本なのは変わりませんが。
Commented by YAMATOSS992 at 2014-08-09 20:44
忘れていましたが、ガミラスも慣性制御の技術は確実に持っています。
各艦艇のバレラス、バランへの離発着を見ればそれはがわかります。
ガミラスが慣性制御技術を持っている確実な証拠は高速空母の存在があります。
この空母、ナント!噴射口を持っていません。
74ヤマトの時はそれ程、問題には感じませんでしたが、色々と知恵が付いて重力制御の難しさを知ってしまうと「オイオイ、これ以上この問題に触れてくれるな! ヤマト世界を壊す気か!」と大慌てした覚えがあります。
Commented by 古世人 at 2014-08-09 22:25 x
ポルメリア級といえば、そういえば、何故にあんな奇妙なシルエットなのでしょうか?私の中では、ヤマトシリーズ随一のいびつなメカニックです。どこかのいつぞやの超文明の神器がモデルなのでしょうか?先生の考えを教えてください。
Commented by YAMATOSS992 at 2014-08-10 05:55
慣性制御の問題さえクリア出来るならあの空母は海上空母の概念を引き摺った
多層式空母や戦闘空母などの現用兵器の歪なレプリカより、よほど説得力のあるデザインです。
特に艦載機の運用方法には74ヤマト時代、感激した覚えがあります。
あなたのおっしゃる通り、異文明が残した遺産と考えるのが妥当かと思います。
そしてほかのガミラス艦艇にもその技術は応用、普及していったのではないかと推測します。
Commented by sengoku at 2015-01-17 17:14 x
こんにちは。
慣性制御技術を持つ戦艦と持たない戦艦との戦闘情報を入手しました。
http://www.dailymotion.com/video/xub495_12-惑星大戦争_shortfilms
ドリル着きの艦の操縦士の腕前はすばらしく、島大介より上かもしれません。
Commented by YAMATOSS992 at 2015-01-17 19:25
これは1977年に東宝が発表した「惑星大戦争」ですね。
残念ながら私はこの作品を語るに足る作品とは認めません。
1963年の東宝「海底軍艦」の方が余程、語る余地があります。
(「惑星大戦争」はこの作品がベースです?)

慣性制御など制作側の頭の隅をかすめもしなかったでしょう。
何しろ劇場版宇宙戦艦ヤマトやスターウオーズ、未知との遭遇の
驀進に置いて行かれまいとして非常にタイトなスケジュールで制作された便乗作品だからです。

予算も低く制作期間もタイトでは見栄えばかりを追いかけるしか無かったのかもしれません。