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宇宙戦艦ヤマト前史

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宇宙戦艦ヤマト登場前の地球防衛軍の苦闘を描きます。

149.夢幻の 宇宙戦艦・・・『扶桑』 (フソウ) ー (14)

 「前方から高速で接近する物体群、あり、 敵艦隊と思われます。」情報士官がガット副指令に報告した。

<何? 敵艦隊は深縦陣防御をとっているのか!>ガットはテロンの用意周到さにまたまた驚かされた。

今までのガミラスの侵攻作戦はほぼ一方的な殲滅作戦であり、曲がりなりにも頑固な抵抗を示したのは
皮肉にも彼の部下の大半をなす「ザルツ人」の星、惑星「ザルツ」位であったからだ。

そのザルツの宇宙艦隊でも旗艦と他、数隻の主力艦が撃沈されると直ぐに抵抗を止め、”和平交渉”を持ちかけて来た。

だが、テロンは違う、最初の接触こそガミラスの完勝だったが、ゼダン(土星)宙域での艦隊戦ではガミラスは
勝ったものの、少なからず損傷艦を出していた。

木星圏(ズッピスト周辺宙域)への侵攻が遅れたのはこの戦闘時の損傷艦の修理と補給に手間取ったからであった。

だが、この時の損害の大きさからガミラスはテロンに対して徹底的な殲滅作戦を決意していた。

テロンに対するガミラスの方針が”殲滅”になったのは先制攻撃よりも土星圏(ゼダン周辺宙域)での抵抗の執拗さに
テロン人の手強さを感じ今の内に”殲滅・排除”するのが一番安全と大本営が判断したからであった。

<また殲滅戦か・・・。 ガミラスは最終的には地獄に落ちるぞ・・・。>ガット副指令は一等ガミラス人であったが、
デスラー総統の就任以来、異星文明は”併合”するより”殲滅”する事の方が多くなって来ている事に批判的であった。

<エーリク 大公時代はもっと”話し合い”で異星文明を”同化”させる事が多かったと聞く・・・。統治者が変わるだけで
こうも文明は凶暴になるものなのか?>ガットは執拗な抵抗を続けるテロン人に何故か同情し始めていた。

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「ガミラス艦隊ガリレオ衛星群の軌道に達します。 『モ』号作戦発動して良いですか?」シェーア国連宇宙海軍総司令の
補佐役、アルフレッド・ヒッパー中将が提督の思惟を正した。

本来なら、この場には秋山真彦三等宙将が総参謀長としてシェーアの脇に控えているべきだったのだが、陽電子
・衝撃砲の開発・運用責任者もであった彼は虎の子の陽電子・衝撃砲装備艦を率いて宇宙の彼方にいた。

「まだだ、アルフ、まだ敵の意図がはっきりしない、それにまもなく遊撃艦隊も参戦出来る、今、仕掛けるのは危険だ。」
老獪なシェーアはガミラス艦隊の侵攻速度の遅さに疑問を持ったのだ。

ガミラス戦艦隊は地球艦隊が用いる速度の1/3位の低速・巡航しながら接近を図って来ている。
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最初はシェーアも幕僚達もガミラスが用心深くこちらの様子を探査しながら接近しているため、侵攻速度が遅いのだと
思っていた、しかし、ここまで接近し、エネルギー・プラントの細部まで探査出来るであろう距離まで近づいたのに
ガミラス艦隊は速度を上げようとはしなかった。

「そうか!判ったぞ!」シェーアは椅子から立ち上がると命令を発した。

「アルフ! 今、正面から接近してくる敵は”囮”だ! 必ずや敵本体は別のところにいて襲撃の機会を
狙っているはずだ! ありったけの早期警戒艦を使って周辺空域、特にここからは見えない木星の裏側の宙域を
探査させろ! 敵艦隊が必ず隠れているはずだ。」シェーアは今、ガリレオ衛星群の軌道を突破しようとしている艦隊に
普通なら随伴して来る護衛艦の姿が無い事に気付いた、そしてある仮説を立てた。

<奴ら、ガミラス艦隊の戦艦は強力だ。 こちらの戦艦で奴らにダメージを与えられるのは陽電子・衝撃砲搭載艦だけだ、
そして今の時点ではその陽電子・衝撃砲搭載艦はここにいない、こちらは高圧増幅光線砲搭載戦艦で立ち向かう
しかない、だが、主砲の威力に差がある以上こちらの戦艦はガミラス戦艦の弱点を突くしかない、それには残存兵力の
全部を投入する必要がある。 つまり、木星エネルギー・プラントを守る艦は居なくなると言う事になる! 目の前の
戦艦隊は我々を引きずり出す”囮”なのだ!>

「特別遊撃隊は今どこか?何処に居るのか? 参謀次長、応えろ!」シェーアは焦っていた。
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「繋がりました! 秋山総参謀長、出ます。」通信士が特別遊撃艦隊との回線を確保した。

「遅くなりました。 ガミラス戦艦隊にこれから第二撃を掛けます!」秋山は船外服に身を固めた姿でシェーアの問いに
応えた。

「何! 貴官はどうやって十六点回頭をしたんだ、貴官の艦隊、帰還用に用意した無人タンカー船団はまだランデブー
予定点に到着していないはずだぞ!」シェーアは驚愕を隠せなかった。

「申し訳けありませんが、今は説明している暇はありません! 間も無く敵艦隊と再度の会敵です。 直ぐに戦闘に
入ります。」秋山は通信を切ろうとした。

「待て! これは罠だ!」シェーアは見す見す罠と判っていて部下をその中に放り込める程、非情では無かった。

「罠?・・・でありますか?」秋山は眉をしかめた。

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 <やはり、大幅に遅れてしまった。 本艦のせいで戦機を逸する事がなければ良いのだが・・・。>
『ミョウコウ』の石田艦長は焦っていた。

『ヨシノ』を失った今、『フソウ』を除く、『ヒエイ』、『チョウカイ』は陽電子・衝撃砲の射撃指揮システムを持たず、
『ミョウコウ』が敵艦の位置をフェースド・アレイ・レーダーで探知、位置情報を送らなければ有効な連携射撃は
望めないのだ。

<急げ、『ミョウコウ』何としてでも本隊に追いつくんだ!>十六点回頭に手間取り、本隊に遅れた『ミョウコウ』の乗員は
石田艦長以下、皆、焦って前しか見て居なかった。

これが『ミョウコウ』の不運だった、『ミョウコウ』が駆け抜けて行く、木星大気圏上層部の更に上空 高度三千kmに
クリピテラ級航宙駆逐艦隊で編成されたガミラス・ズッピスト(木星)テロン(地球)大拠点(エネルギー・プラント)攻撃隊の
本隊が隠れていた。
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「良い獲物だ! 行きがけの駄賃に沈めてしまえ! 全艦主砲斉射であのテロン艦を沈める!」ルミナス総司令は
クリピテラ級航宙駆逐艦が艦底に装備している280mm陽電子連装ビーム砲一基での攻撃を命じた。

『ミョウコウ』は先程のデストリア級との反航戦の時、射撃・指揮艦を務めた、その為、『ヨシノ』ほどでは無かったが、

アクティヴなレーダー照準をした結果、敵にも位置を特定され、陽電子ビームを他艦より多く受けていた。

リ・アクティヴ・アーマーのおかげで艦の本体には傷一つ無かったが、リ・アクティヴ・アーマーはもう殆どその効果が
期待出来ない位、損傷していた。

しかも悪い事に『ミョウコウ』のフェーズド・アレイ・レーダーは前方の空間は広く視界に収めていたが、後方は
高圧増幅光線砲を主砲としていた時から積んでいた光学式探知・照準装置しか無かった。

そんな状態の『ミョウコウ』単艦にガミラスの攻撃隊の本隊が後ろ上方から襲い掛かった。

数十条の陽電子ビームが『ミョウコウ』を貫き、『ミョウコウ』は攻撃された事も気付かないまま爆沈した。



                                 150.夢幻の 宇宙戦艦・・・『扶桑』 (フソウ) ー (15)→ この項続く
by YAMATOSS992 | 2014-08-10 21:00 | ヤマト2199 挿話

by YAMATOSS992