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宇宙戦艦ヤマト前史

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宇宙戦艦ヤマト登場前の地球防衛軍の苦闘を描きます。

151.夢幻の 宇宙戦艦・・・『扶桑』 (フソウ) ー (16)

 地球艦隊の残存艦、三隻がそれぞれロケット・アンカーで捕らえたガミラス艦は間も無く各艦の陽電子・衝撃砲の軸線に
乗り、艦の機関部を撃ち抜かれて宇宙の塵となった。

自由になった地球艦は十六点回頭も成し遂げ、残る一隻のガミラス艦を追った。

しかし、このガミラス艦の艦長、次席士官リッヘル中佐はザルツ人らしい屈強な勇者だった。

僚艦が次々と撃沈され、戦隊長のガット大佐も戦死したと言うのに眉一つ動かさず、彼らの任務、”囮役”を忠実に守る
決意だった。

何があっても敵の最終防衛ラインまで辿り着き、そこに張り付いている敵の防衛艦隊を引きずり出して本隊の拠点
攻撃を成功させねばならない。

だが、自分達の”囮”としての役目は艦隊が殆ど壊滅した以上、最早、意味が無くなったと彼は考えた。

<強力な”デストリア級”十隻による”威圧”は最早出来ない、だったら本艦一隻でも出来る”威圧」”は何だろうか?>
彼は目を閉じて考えた。

スクリーンにはたった五隻で自分達より大きい艦体をもつ、ガミラスの”デストリア”級十隻をたった一隻になるまで
追い詰めた強敵の姿が映っていた。

先程、見せたアンカーを使った十六点回頭などガミラス人はもとよりザルツ人でも行わない冒険的な戦術だった。

<あいつら、「死ぬかもしれない。」とは考え無いのか・・・。これは単なる”勇敢さ”じゃない、ここまで来ると単なる
”蛮勇”だ!>リッヘルはそう考えるとサァッと血の気が引くのを感じた。

<テロンは決して降伏しない・・・、ザルツ人は勇敢ではあったがガミラスとの力の差を冷静に分析、降伏した方が
お互いの未来のためだと考えてガミラスに降伏した。 
しかしテロンは力の差があっても敵本体に打撃を与える事に腐心する恐るべき性癖を持っているらしい。
ガミラスが早急にテロンを殲滅出来れば良いが長引くとガミラスですら、とんでもないしっぺ返しを食らう事に
なりかねない。>リッヘルは秋山の率いる特別遊撃艦隊をもう相手にするのは止め、短距離ゲシュタム・ジャンプで
プラント防衛艦隊の正面に出る『奇襲』で防衛艦隊をプラントから引き剥がそうと考え方を変えた。

「リトル・ジャンプだ! 目標、敵拠点正面!」リッヘルがそう命じると共に猛烈な衝撃が”デストリア”の端から端までを
貫いて走った。

「何だ、何が起こったか!」リッヘルが問い質した。

「また、例のアンカーです! 今度は真後ろから打ち込んで来ました。」情報士官が報告した。

「何!なんでこんな近距離まで敵の接近を許した!」リッヘルは部下の無能さに呆れ果てた。
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<急激に相対距離が縮まる反航戦ならともかく同航戦、しかも敵は後ろに居るのが判っているのに迎撃しないとは!
全ての判断は艦長がやれと言うのか!>リッヘルは怒りに身を震わせたが、今、自分が何をすべきか、思い出し、
反撃を命令した。

「後部主砲塔、底部主砲塔、後部側面カノン砲、全てを使って敵艦隊を撃滅、敵のアンカー・チェーンを切断せよ!」

「航法士、チェーン切断を確認後、直ぐに予定空間点へゲシュタム・ジャンプだ!」

リッヘルの命令通り”デストリア”級の後部三連装陽電子砲塔、底部三連装陽電子砲塔、後部側面陽電子カノン砲が
火を噴き、後部空間を薙ぎ払った。

『ヒエイ』、『チョウカイ』はリ・アクティヴ・アーマーの限界を迎えていたので、陽電子ビームに耐え切れず、
爆沈して果てたが、”デストリア”級の真後ろの死角に入っていた『フソウ』だけは被弾せず無事だった。

そして反対に『フソウ』はアンカー・チェーンで位置が特定出来ているので『ヒエイ』、『チョウカイ』の仇とばかりに三連装
・陽電子・衝撃砲をリッヘルの座上する最後の、”デストリア”級に叩き込んだ。

しかし、『ヒエイ』、『チョウカイ』を撃沈し、死角に居た『フソウ』を見逃したリッヘルの”デストリア”級はリトル・ジャンプを
同時に敢行していた。

リッヘル艦は『フソウ』を引き摺ったまま、ジャンプしたので『転移(ワープ、ゲシュタム・ジャンプ)』の経験の無い
秋山宙将を初めとする『フソウ』の将兵には何が起こったのか、理解出来ないまま、二隻の艦はワーム・ホールへ
消えて行った。

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<遅い! ガットの奴、一体何をしているのだ!>ルミナス総司令は陽動部隊である”デストリア”級・艦隊の末路についてまだ何の情報も得て居なかったので苛立ちを募らせるばかりだった。

「偵察部隊が戻りました。」情報士官が側に来て耳打ちした。

<何でこんな簡単な事をコソコソと報告する! 『ウッ!』>ルミナスは情報士官が何故、偵察部隊の帰還をこっそり
報告したのか、その意味に気付いたのだ。

ルミナスが艦長室に戻ると彼のデスクの前には既に二人のガミラス人が居た。

先程、情報士官が言っていた『偵察部隊』の指揮官と副官であった。

「ガーレ、デスラー、自分は・・・」偵察隊・指揮官が名乗ろうとするのを制してルミナスは報告を促した。

「今は貴様達が誰か?なぞ、どうでも良い、直ぐに偵察結果を報告したまえ!」
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偵察隊の二人は顔を見合わせたが、今回の偵察結果を報告した。

「予定軌道上に”デストリア”級・艦隊の姿は有りませんでした。 しかし、周辺空間には多数のデブリが観測出来ました。

そして・・・。」そこまで言って彼は言い淀んだ。

「どうした! 今更何を聞いても驚かんぞ!」ルミナスは作戦計画の大幅変更を覚悟した。

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シェーア国連宇宙海軍総司令、宇宙海軍大将が死亡した。

だが、戦死では無く、戦病死だった。 (脳溢血による突然死)

だが、木星に陣を敷いた国連宇宙海軍の指揮は直ぐにアルフレッド・ヒッパー中将が引き継ぎ、混乱は最小限度に
留められた。

本来の次席司令官はシェーア自身が指名した秋山真彦・日本宇宙海軍・三等中宙佐であったが、彼は最新の陽電子・
衝撃砲・搭載・戦艦隊を率いて木星衛星軌道の只中にあり、その消息は不明だった。

沖田と土方の元にシェーアの戦病死の件と秋山艦隊の消息が不明である旨の連絡がヒッパー新総司令直々の通信で入った。

「何ですと! ヒッパー総司令、我々に逃げろとおっしゃるのですか!」土方は一筋も剣を交えず撤退するのが
悔しかった。

「私は君達に『逃げろ!』とは言っていない、プラントに残っている非戦闘員を乗せた船団を”護衛”して地球まで
送り届けて欲しいのだ。」秋山が居なければ本来シェーア提督の元で辣腕を振るっていたであろう男の声は冷静だった。

憤懣やるかた無い土方の肩に手を置いて沖田は血気に逸る古き友を諌めた。

「土方、これは我々が人類の未来を繋げるかどうかの戦いなのだ。 多分、ガミラス艦隊は無人になったエネルギー・
プラントを容赦なく破壊するだろう、しかし、あそこで働いていた技術者達が生き残っていればいつの日か、必ず、
プラントは再建出来る! だが、全員死亡してしまったら全ては一からやり直さなくてはならない。 
そうなれば我々はガミラスに追い詰められる一方だ。 ヒッパー提督、この任務、日本艦隊の総力を挙げて
実施します!」沖田はさっと敬礼した。

沖田より五歳位若く見える総司令は何も言わず微笑しつつ、敬礼を返した。

通信用のモノクロ・スクリーンの映像が消えると土方は沖田に詰め寄った。

「あの人は死ぬ気だぞ! 沖田、本気で見捨てて帰るのか!」

「総司令は地球を守る為に『未来を送り届ける任務』を我々に下した。 しかし、ガミラス艦隊は強大だ、簡単に還して
くれると思うか?」沖田は土方をジロリと横目で見た。

「残るも地獄、帰るも地獄、・・・と言うわけか・・・。」土方は沖田が突然、目前に差し出したメモリー・スティックに戸惑った。

「秋山の置き土産だよ。 さてはて、あいつは今頃、特別遊撃隊を指揮して最前線を駆けているのだろうな。」沖田は感慨
深げに天を仰いだ。

土方は上着の内ポケットから小型のタブレットを取り出すとおぼつかない手つきでメモリー・スティックをそれに差し、普段こうしたIT機器に慣れていないのがバレバレな一本指操作をした。

彼も若い現役バリバリの頃はこうしたIT機器の操作を何の苦も無く出来たのだが、歳を取り、高官になるとこうした機器の操作は部下の仕事になってしまって使う事が無くなっていたからだ。

「なんだ、こんな物も満足に扱えんのか! 二十世紀人じゃあるまいし、貸してみろ!」沖田はスティック毎、土方の
タブレットを奪い去った。



                                 152.夢幻の 宇宙戦艦・・・『扶桑』 (フソウ) ー (17)→ この項続く
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by YAMATOSS992 | 2014-08-16 21:00 | ヤマト2199 挿話 | Comments(3)
Commented by 古世人 at 2014-08-23 12:55 x
コンゴウ級の陽電子衝撃砲のエネルギー充填の所要時間はどのくらいですか?
Commented by YAMATOSS992 at 2014-08-23 13:16
 私は0秒として考えています。 エネルギー・チャージに時間が掛るのはアニメの常識ですが、引き金を引いた時に破壊力を即発揮できない兵器など非現実的で実用に成らないと考えております。
ヤマトの波動砲はその大量破壊兵器としての性質上、充填時間が掛るのは認めますし、それに類したエヴァンゲリヲンのヤシマ作戦で使用した陽電子砲なども試作品という事で認めますが、それ以外の充填時間の必要な強力兵器は軍事を知らない者の妄想に過ぎません。
敢えて充填時間を設定するとすれば、アイオワ級戦艦の40cm砲は7発/分の発射速度を持っていましたので、これを適用すると充填時間は8.6秒以内という事になるでしょうか。
Commented by YAMATOSS992 at 2014-08-23 18:49
チャージに時間に掛る兵器も使用方法があります。
平常航行時に充填を済ませておき、戦闘時に即、発砲、再充填はせず、廃棄する使い捨て式の用法です。
本来、砲塔形式に搭載出来ない兵器の場合そうした方が死荷重を抱え込まずに済み、艦の軽量化にも
なります。
こうした用法はミサイルの使い方に他なりません。
しかし、ミサイルは光速兵器に迅速な攻撃力で劣ります。
ですが、再充填に時間の掛る光速兵器を使い捨てにすればこの欠点も補え強力な戦力となる事が
期待出来ます。