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宇宙戦艦ヤマト前史

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宇宙戦艦ヤマト登場前の地球防衛軍の苦闘を描きます。

152.夢幻の 宇宙戦艦・・・『扶桑』 (フソウ) ー (17)

 木星の赤道付近の衛星軌道上に眩い光点が幾つも煌めいた。

ガミラスの反陽子弾頭魚雷が無人になった、地球側エネルギー採掘プラントを破壊してゆく光だった。

「くそっ、ガミラスめ!」古代 守は唇を噛んだ。

<プラント・がやられたと言う事は、それを防衛していた国連宇宙軍・欧州艦隊も全滅したと言うことだ。>史上最年少の
提督、秋山実彦三等宙将の同窓生だった古代 守は小憎らしい友人も失った事に落胆を隠せなかった。

「古代、どうしたこんな事位でへこたれていたら、またあの秋山に笑われるぞ!」艦隊型駆逐艦『さみだれ』の操艦席に
座った同窓生の菅野一郎一等宙尉が射撃指揮装置を扱う古代 守に声を掛けた。

「なぁ、菅野、俺達も死ぬのかな・・・。」古代 守がポツリと言った。

「ああ、死ぬ、確実にな。 だが、それは「いつか」だ! 今はその時じゃない、秋山は陽電子・衝撃砲が間に合わなかった
場合に備えて最後の一手を残してくれた、それが、お前や俺が木星プラントで受けていた特訓だ。」菅野が力強く応えた。

『いい加減にしろ! お前達の私語は艦隊中にダダ漏れだぞ! 今は無線封鎖中だと言う事を忘れるな!」残り少ない
国連宇宙海軍の艦艇を率いている土方司令が喝をいれた。
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戦闘配備中の艦艇の内部は慣性制御を切っており、空気はあるが何時機密が破られるか判らないので気密服の着用が
義務付けられている。

だから直ぐ隣りの人ともインカムで話をせざるを得ず、そうすると会話の内容は全艦隊中に筒抜けになるのだった。

古代と菅野の私語を叱った土方だったが、ヒッパー総司令から木星からの撤退戦を命じられた時、彼自身、
陽電子・衝撃砲も無い自分達がガミラスを撃退して地球船団を無事に地球に送り届ける自信はなかった。

しかし、秋山はこの時を予想していたかの様に陽電子・衝撃砲に頼らない作戦を立案していたのだ。

勿論、秋山は陽電子・衝撃砲を搭載した戦艦の整備に全力を挙げ、なんとかガミラスの侵攻作戦に間に合わせた。

だが、陽電子・衝撃砲を使わない作戦(仮に『Z作戦』と呼ぶ。)も訓練は続けさせていた。

<秋山の予想が最悪の形で実現してしまった訳か・・・。しかし、史上最年少の提督、真に『智謀、湧くが如し』だな。>
沖田はシェーア総司令の元に秋山を送り出した時の事を思い出していた。

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ガミラスのテロン(地球)・ズッピスト(木星)・要塞・拠点(エネルギー・プラント)攻撃作戦はルミナス総司令によって
一部内容が変更されていた。

”デストリア”級による防衛艦隊の釣り出し、防衛艦隊の居なくなった敵・拠点にズッピスト(木星)の陰から反陽子弾頭
魚雷の雨を浴びせる計画だったのだが、どうやら敵も陽電子砲を入手し、”デストリア”級艦隊を阻止したのみ為らず、
殲滅させたらしい事が判ると、ルミナスは最早、”囮”作戦の意味が無くなった事を悟って方策を変える事にした。

<やはり、”奇策”に頼るのは軍人の本分ではない! それにしても敵の最高司令官、天晴な奴だ。自軍にキッチリ役割
分担を設け、”デストリア”級艦隊迎撃と、拠点防衛とを分けて混乱を生まない様配慮している! 私もそこまで
信じられる部下を持てたら良かったのだが・・・。> ルミナスは自分の優柔不断さは棚に上げて作戦を変更せざるを
得なくなった責任を部下に押し付けていた。

だが、彼も一応、一軍の将である、艦隊の陣頭指揮を執るとなるとその指揮は冴えわたっていた。

「全軍、横陣で前へ、ズッピスト(木星)の陰から出る! 敵艦隊に探知されるから加速を続けて的に成らない様に
気を付けろ! 敵艦隊直前まで迫ったらそこで手持ちの反陽子弾頭・魚雷を全て敵拠点に叩き込め! 敵艦には
構うな! 敵の拠点・要塞の破壊が目的だ!」ルミナスの指令にガミラスの将兵は今まで内に秘めていた闘志を
燃やしズッピスト(木星)の陰から踊り出し、テロン・要塞・拠点に向かって突撃を開始した。

ガミラス艦は”クリピテラ”級駆逐艦が装甲が薄弱とは言ってもそれは陽電子ビームに対しての事である、地球艦隊の
高圧増幅光線砲では地球艦は駆逐艦クラスはおろか、巡洋艦クラスの物でも通用せず、辛うじて戦艦クラスの
高圧増幅光線砲が損害を与えられると言う状況だった。

だから、ヒッパー新司令はシェーア提督の生前、戦艦部隊を前面に押し出し、駆逐艦、巡洋艦は後方からVLSによる
反物質ミサイル攻撃を掛ける事を打ち合わせていた。

このミサイルは陽電子と反陽子で出来たを『反水素』を磁場で弾頭に無理やり詰め込んだとんでもないしろものであった。

反陽子爆弾と陽電子爆弾が同時に炸裂する様なものである、破壊力は既存の兵器のどれよりも勝っていた。

破壊力から言えば反陽子弾頭で充分なはずであったが、地球の兵器開発の伝統は『破壊力』に満足する事は無かった。

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ズッピスト(木星)の陰から躍り出たルミナス提督のガミラス宙雷戦隊十個はいきなり目の前に弾幕が張られて驚いたが
その突撃速度は全く鈍る事は無かった。

と、その爆炎のまだ濃い所に艦首を突っ込んだクリピテラ級航宙駆逐艦が何隻か大爆発を起こして吹っ飛んだ。
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「何!」突然の出来事にルミナスの頭は真っ白になったが、軍人の本能はすぐさま艦隊の減速を命じていた。

これが『反物質弾頭』の恐るべき特性の一つであった。

通常、圧縮・陽電子・弾頭も、反陽子弾頭も爆発して飛び散り、その飛散粒子に当たったものが対消滅反応を起こして
光子に変換されるがその反応は迅速であり、爆発危険範囲はさほど大きくない、しかし、『反物質弾頭』は反物質とは
いえ、一応安定した(反)水素の形態を保っている。

勿論、通常物質の『水素』より遙かに寿命は短いが、反陽子や陽電子とは比べ物になら無い位、半減期は長いので爆発したその空間付近には危険な反物質(反水素)が漂い、破壊半径は反陽子、陽電子弾頭の比ではない。

そんな『反物質』弾頭が作った『爆炎』に突っ込むなど自殺行為なのだ。

だが、これは既に『土星会戦』で使われており、ガミラスの木星侵攻を遅らせた大きな要因だった。

ルミナスは『土星会戦』後に着任した補充要員であり、地球側の”強力弾頭魚雷”の存在を知ってはいたが実戦で
出会ったのは初めてであった。(だが、その正体が『反物質』弾頭魚雷である事までは思いも依らなかった。)

<敵も”反陽子弾頭”を使っているか! よし、それならば、こうしてやる!>ルミナスは突撃する自艦隊、各艦の間隔を
大きく採る様、指示を出した、個艦の損失は仕方が無いが、複数の艦が誘爆する事を避けようと考えたのである。

<敵の防御線を突破出来ればこちらの勝だ!>彼は地球人の好戦的性格を甘く見ていた。

こちらが乱戦に持ち込めば敵は同士討ちを恐れてあの”反陽子(?)弾頭・魚雷”は使えないと踏んだのである。

「司令、あの爆発は”反陽子弾頭”では在りません。 もっと強力な弾頭です!」誘導弾・指揮・管制官が進言した。

その声にルミナスが振り向くと初老のザルツ人が座席から立ち、敬礼していた。

一等ガミラス人に二等ガミラス人が意見を言う、普通なら処刑処分も有り得る不敬罪だった。

だが、ルミナスはザルツ人の勇猛さと戦闘に関するセンスを高く買っていた。

「判った、それでは 本艦隊は、敵陣の強硬突破は止め、ゲシュタム・ジャンプで敵艦隊と敵要塞・拠点の間に跳ぶ!」
ルミナスは先程のザルツ人の覚悟に心を動かされ、冷静に状況を分析した。

<確かに彼の言う通りだ、あのミサイル攻撃は強力過ぎる、あの戦艦部隊から行われた物では無い。
幾らこちらが強硬突破しようとしても後方に布陣した別の艦隊からのミサイル攻撃では避け切れない。
ミサイルの誘導は目前の戦艦部隊が行っているからだ。
だったら敵要塞・拠点と防衛艦隊の間にジャンプし、まず敵要塞・拠点に”反陽子弾頭・魚雷”の雨を叩き込んでやる。
残った防衛戦艦隊は慌てて引き返してくるだろうが、そちらの相手は陽電子・ビーム砲で沢山だ。>ルミナスは
ほくそ笑んだ。




                                 153.夢幻の 宇宙戦艦・・・『扶桑』 (フソウ) ー (18)→ この項続く
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by YAMATOSS992 | 2014-08-19 21:00 | ヤマト2199 挿話 | Comments(14)
Commented by 古世人 at 2014-08-20 08:35 x
早17話ですか。確かに、使命の神託並みの長編になりそうですね。先生のフソウに対するこだわりが見えてきます。
Commented by YAMATOSS992 at 2014-08-20 09:19
2199の製作者側は沖田艦、『英雄』の名を嫌い、『キリシマ』の名を使いました。 確かに『ナガト』は姉妹艦に『ムツ』がいるので使えず、『イセ』、『ヒュウガ』は現用艦があるので使えず、『フソウ』、『ヤマシロ』はダメ戦艦のイメージが付きまといこれも使えず、だったら一番古いが一番活躍した『コンゴウ』級の内、ソロモン海で米戦艦2隻を相手に奮闘した『キリシマ』を沖田の座上艦に選んだのは判る経緯です。
 しかし『金剛』級が実は戦艦では無く、巡洋戦艦だった事に気が回らなかったのが2199の『コンゴウ』級にただ一隻戦艦である『フソウ』が混じってしまった事の真相でしょう。
私なら『コンゴウ』、『ヒエイ』、『ハルナ』、『キリシマ』を第一陣とし、
第二陣として『ツクバ』、『イコマ』、『クラマ』、『イブキ』としたでしょう。
Commented by YAMATOSS992 at 2014-08-20 09:21
(上から続く)
しかし、ここまで考えて設定者は何故『コンゴウ』から『チョウカイ』まで適用に不満はあるものの、一応、『山名』を踏襲してきたのに何故、いきなり日本国の美名である『フソウ』を持ち出してきたのか、疑問を持ちました。
結果、これは”確信犯”だと気が付きました。
だったら、設定だけでなくその名に相応しい物語を用意しようと考え今終盤の部分を執筆している最中です。
間も無く終わりますからしばし、お付き合い下さい。
Commented by 宇宙零戦 at 2014-08-21 22:08 x
地球の技術では、赤系の陽電子砲は作れないのでしょうか?
Commented by 宇宙零戦 at 2014-08-21 22:16 x
おっと、言葉不足でした。ガミラスの陽電子砲や地球の高圧増幅光線砲サイズのものという意味です。
Commented by YAMATOSS992 at 2014-08-21 22:52
ガミラスの光速兵器の特徴は低エネルギー密度なので発生器の扱うエネルギーも少なくて済み、小型のものも実用化している事です。
単純な荷電粒子砲なら、より高い破壊力を求めるとどんどん大型化しますが、陽電子ビーム砲の様な低エネルギー密度でも十分な破壊力が得られる兵器であれば必要以上に大型化する事はありません。
ガミラスの陽電子ビーム砲はだから330mm止まりでゼルグート級の490mmビーム砲は実行威力より他艦との差別化で大口径砲を装備していると解釈しています。

物語上は純粋な地球技術では不可能な事にしてあります。
現実の陽電子ビーム発生は大変に難しく、またエネルギー効率の悪いものだと聞いていました。
そこで物語上、波動エンジンが手に入るまでは高エネルギー密度の陽電子砲しか作れず、大型化したそれは艦首搭載せざるを得なかったと
理解しました。
ヤマトは波動エンジンが付いているのでガミラス流のビームを発射可能と考えますがそれらの改良の余裕も無く出発せざるを得ず、また、単艦で敵地を行く事を考えれば出力を挙げこそすれ、態々ビームを低密度にする事は考えなかった、と思います。
Commented by 宇宙零戦 at 2014-08-25 17:27 x
返信に気づくのが遅れてしまい、申し訳ありません。
>陽電子ビーム発生は(中略)エネルギー効率が悪い
そうでしたか。道理で(低圧)陽電子ビーム砲を地球は所持せず、高圧陽電子ビーム砲を所持していたわけですね(最も、弟は、「先生が書いているモ号作戦は、地球が勝ち、その経験から「陽電子光線砲(ガミラス軍のものより低密度の陽電子砲)」を南部重工が開発、日本艦隊を中心に換装、モ2号作戦で猛威(?)を振るうも、地球は敗北してしまった」と設定したいみたいですが)。そして、二代目防衛艦隊は量より質を重視して、ショックカノンを最大でも4基までしか搭載しなかった、と言ったところでしょうか。
追伸
「弟」とは「古世人」のことです。
長々と申し訳ありません
Commented by YAMATOSS992 at 2014-08-25 18:40 x
御兄弟で読者になっていただいているとは光栄の極みです。
私が書いているモ号作戦は戦略的にはテロン・プラントを潰したガミラス側の勝利です。
しかし、戦術的にはガミラス艦隊は地球遊撃艦隊にデストリア艦隊を潰され、大打撃を受け、戦術的には敗北します。
後、地球製の陽電子・衝撃砲はヤマトに積まれても高エネルギー密度です。
これは地球人の特性として兵器の破壊力を高める事には血道をあげますが、破壊力を落とす事など核兵器の様な汚染が残る兵器以外考えられません。
Commented by YAMATOSS992 at 2014-08-25 18:56 x
モ2号作戦は今の所予定して居りません。
モ号作戦は表面上は地球側の完敗ですが、実はこの後の物語があります。
(この後語られます。記事No.153以降)
それは”未来を繋ぐ物”を守り抜く物語です。
お楽しみに!

カ2号作戦は本家が計画している可能性があるので現在のところ保留としています。
(この作戦は戦略、戦術共に地球の完勝のはずです。)
Commented by 宇宙零戦 at 2014-08-26 07:43 x
返信ありがとうございます。これを(風邪で寝込んでいる(汗))弟に聞かせたところ、二、三、誤解されているかもしれないとのことです。
まず、弟は先生が披露しているものにあたる内容を2つのモ号作戦で著そうと考えているそうです。つまり、モ一号作戦で地球の熱源迷彩や光学迷彩でガミラス軍はエネルギープラントの中枢施設の破壊に失敗、戦略面でも地球は辛勝します。その後、モ2号作戦で陽電子光線砲が活躍するも、今度こそ敗北してしまう、とのことです。
Commented by YAMATOSS992 at 2014-08-26 08:20
 ヤマト2199世界を維持する為にはカ2号作戦まで地球軍は戦略的な勝利を成してはなりません。
そうでないと遊星爆弾によるロング・レンジ攻撃の意味がなくなってしまいます。
それにもしガ軍がエネルギープラントの破壊に失敗していたら地球軍はもっと有利に戦局を進められます。
但し、”エネルギープラントの中枢”の意味を単なる物資や施設では無いと考えれば話は変わってきます。
それを加味したのが今展開している『モ号作戦』です。
Commented by YAMATOSS992 at 2014-08-26 08:35
(追記)
”古世人”さんご自身の”創作”内容はご自由です。
私は一つの可能性を示したに過ぎません。
確かに地球側にとって木星のプラントは命綱です。
開発したての超大型(になってしまった)試作陽電子砲でガ軍を撃退する。(『モ号作戦』)
軽快な運動性を誇るクリピテラ級駆逐艦隊の大群の攻撃を受けて大敗する(『モ2号作戦』)・・・と言う展開も考えられますね。
Commented by 古世人 at 2014-09-13 14:26 x
そういえば、2199では同じ第一種戦闘配置のままワープでも、七色星団では通常服、サレザーでは船外服、と服装に違いがありますが、これは何の違いが原因でしょうか?
Commented by YAMATOSS992 at 2014-09-13 18:59
>第一種戦闘配置のままワープでも、七色星団では通常服、サレザーでは船外服

この違いは制作側のミスだと思われます。
七色星団は難所、サレザーは敵地と危険度に違いがあるとは思えません。