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宇宙戦艦ヤマト前史

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宇宙戦艦ヤマト登場前の地球防衛軍の苦闘を描きます。

154.夢幻の 宇宙戦艦・・・『扶桑』 (フソウ) ー (19)

 <フッ、テロンの連中、こんな戦局の展開は考えて居なかったろう、さあ、全艦、前方のテロン・拠点・要塞に
持てるだけの反陽子弾頭・魚雷を叩き込め!>ルミナス司令は力強く命令した。

五十余隻のクリピテラ級航宙駆逐艦が前方魚雷発射管四門、後方魚雷発射管二門、前上甲板VLS八門、計十四門の
発射管から反陽子弾頭を付けた魚雷が地球陣営が経営していたエネルギー・プラントに吸い込まれて行った。
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猛烈な爆炎が木星赤道軌道上に存在していた地球側エネルギー・プラント群の上に煌めき、全てを破壊して行った。

その光景を見つめ、恍惚とした表情を浮かべたルミナスだったが、彼の座上した艦の艦長が声を掛けた。

「テロン艦隊が急迫して来ます! 迎撃命令を!」

「反陽子弾頭・魚雷は使い切った! 敵艦隊の迎撃は陽電子ビーム砲で行う、圧縮陽電子弾頭魚雷はまだ使うな!」

普通なら艦首方向四門、艦尾方向二門の魚雷発射管に残弾があれば、それを使って攻撃すべきところだが、ルミナスは
テロン艦隊なら陽電子ビーム砲の方が敵の正体不明の強力弾頭・魚雷を迎撃するのに相応しいと考えたのだ。

しかし、地球艦隊はこちらに正面を見せる立体梯形陣で接近してきた。

一列に横並びしていてくれればビームを薙ぐ攻撃で同時に何隻も葬れる、しかし高度を一隻毎に変えてこられては
その戦法も通用しない。

余程、熟練した射撃指揮官なら斜めにビームを薙ぎ払う神業で一網打尽にする事も考えられたが辺境のさほど
重視されていない本戦線にはそうした熟練兵はあまり配属されていなかった。

何の躊躇いも無く急接近する地球艦隊、陽電子ビームを喰らえばたちまち爆沈する事は目に見えているのに彼等は
そんな事にはお構いなく接近を続けた。

<こいつら、鬼神か!>ルミナスは交錯する陽電子ビームを物ともせず突撃してくるテロン艦隊に背筋が寒くなった。

しかし、次の瞬間、ルミナスは自分が重大な過ちを犯した事に気が付いた。

彼はテロン・拠点・要塞攻撃の為に艦隊を散開させて、拠点を取り囲む様な態勢を取らせていたが、これではテロン
艦隊が梯形陣で急迫してくるのに対し、散発的な攻撃しか出来ない、兵器で勝ち、数で勝っていても有効な打撃を
与えられないのは明らかだった。

それにクリピテラ級航宙駆逐艦の陽電子ビーム砲は攻撃も出来るがどちらかと言えば防御用であり、後部の
133mm速射・陽電子砲と艦底の280mm連装陽電子ビーム砲を両方とも活用するのには艦尾を敵に向けて戦うという
軍艦乗りなら最もやりたくない戦い方をしなくてはならなかった。

<今から慌てて陣形を整えるより、現在位置と向きのまま、敵艦隊を迎え撃つ方が混乱の中、自分(達)を見失って
戦うよりは、ずっとましだ!>ルミナスは各艦長の判断を信じる事にした。

「間もなく敵艦隊は我々のいる宙域を通過する、各艦、現在位置のまま、最適な迎撃を遂行せよ!」ルミナスは簡潔な
命令を発した。

確かにゾル星系派遣軍には経験の少ない新兵が多かった、しかし、その反面、彼等を指導する意味で老練な指揮官も
少数ではあるが派遣されていた、そして艦の要である艦長は優秀な男か、経験豊富か、どちらにしても揺ぎ無い指揮を
執れる者が配置されていた。

「司令! 態勢を整えないと効率的な迎撃は出来ません!」副官が悲鳴を挙げた。

「慌てるな! 非効率でも防御・迎撃が出来れば良い、こちらはもう目標である敵の要塞・拠点は破壊した、
後は引き上げるだけだ。」戦略目標を破壊出来た事にルミナスは満足だった。

しかし、地球艦隊は団子になったルミナス艦隊の一部と砲火を交えただけでさっさと地球方面に逃走していった。

ガミラス艦隊は陽電子ビームを振り回したが戦果を得る事は無かった。

反対に地球艦隊の高圧増幅光線砲は威力は少なかったが照準は正確で何隻かの駆逐艦が中破、戦闘不能になった。

だが、地球艦隊それ以上に戦果を拡大しようとはせず、直ぐに母星の方に向かって一路、帰投軌道に乗って行った。

ルミナスは怪訝な顔をしたが、副官は単純に喜んだ。

「司令! 見て下さい、敵は守るべき拠点・要塞を失って尻尾を巻いて逃げて行きますよ!」彼は子供の様に喜んで
いた。

しかし、ルミナスはテロン艦隊の動きにはあまり疑問を感じなかった、拠点防衛に失敗した以上、防衛艦隊は出来るだけ
無傷で帰還し様とするだろう、何も不思議はない、だが、彼は別の点が気になった。

<我々が攻撃したのは敵の”拠点・要塞”だな? では何故、我々が反陽子弾頭・魚雷の攻撃を行った時、要塞側から
何の迎撃も無かったのだ? これはおかしい!>ルミナスは情報士官を呼び寄せると協議し始めた。

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 ヒッパー中将は玉砕してまでガミラス軍を叩くつもりはさらさら無かった。

戦病死したシェーア大将は大事なのは人材だと常々言っていた。

だから、プラントの技術要員は早めに脱出させた。

そして、今、現在、生き残っている防衛艦隊も極力、多くを、脱出させるつもりだった。

<秋山国連宇宙海軍総参謀長、奴は『モ』号作戦の実態がプラント要員の撤退作戦だと言いおった、まさか本当に
そうなるとは思いもしなかったな・・・。>

ヒッパー中将はシェーア提督にあの秋山三等宙将を紹介された時の事を思い出して苦笑した。

彼は秋山があまりにも若い将官だったのでその能力に疑問を持つと同時に嫉妬の炎に胸を焦がした。

欧州連合艦隊次席の誇りも大きく傷つけられた。

しかし、数日後、そんなヒッパーの元に秋山は訪ねて来た。

ヒッパーは彼の顔を見るのも嫌だったが、任務上は上官である、仕方なく自分のオフィスに通すと秋山はいきなり
敬礼した。

戸惑いながら敬礼を返すと「欧州艦隊副指令ヒッパー中将、アジア連合宇宙艦隊参謀秋山三等宙将、意見具申に
参りました。」と秋山は言った。

ヒッパーが無言でいると秋山は「ご多忙のようです。 失礼します。」と言って退室しようと廻れ右をした。

「待って下さい! 国連宇宙海軍総参謀長秋山少将、お話を聞きましょう。」ヒッパーは慌てて秋山を止めた。

ここには別の部下もいる、総参謀長を話も聞かずに追い返したとあっては今後の士気に関わる、指揮官としてここまで
上り詰めたヒッパーにはわざわざ秋山がもう一つの顔、アジア連合宇宙艦隊参謀を名乗った意味が判った。

「今、アジア連合では未成艦三隻の陽電子砲・搭載計画が進んでいます。」秋山は仇敵に手の内を明かした。

本当は『金剛』型四隻、ファースト・コンタクトで中破した『キリシマ』もその中に入っていたのだがそこまで明かす必要は
今は無いと秋山は踏んでいた。

「欧州連合でも新型艦の建造が計画されており、それらの新型艦には当然、陽電子ビーム砲を搭載するつもりだと
推測しています。」と秋山は相手の顔を立てたが本当は欧州連合の新鋭艦はまだ図面も出来上がって居なかった。

「しかし、我が国の南部重工業の開発によるとガミラスのエネルギー発生方法が判らぬ以上、エネルギー密度は低いが
破壊効果の高い陽電子ビーム砲の製造は不可能だそうです。

しかし、エネルギー密度が高くても良ければ開発は可能ですが、南部重工業では数年掛るとの予想が出ました。」

「何が言いたいのかね? 総参謀長。」ヒッパーは皮肉な笑みを浮かべた。

「国連宇宙海軍は英・アームストロング社、ヴィッカース社、独・クルップ社と大砲製造の老舗全てに同時発注を
掛けたいのです!」秋山は大胆な提案をした。

「三社に競争させると言うのかね! それは駄目だ、彼等の誇りを傷つけ兼ねない!」ヒッパーはにべも無く撥ね付けた。

「いえ、私は『競争』では無く、『協力』を望んでいます。 ガミラスは何時襲って来るか判らない、時間が無いのです。」
秋山の瞳は真剣だった。

「それなら、シェーア国連宇宙軍総司令に頼めば良いでしょう。 総参謀長殿。」出来た陽電子砲を今建造中の自国の
艦に搭載しようとしているのは明らかだった、<こんな、要求呑んでたまるか!>ヒッパーは心の奥で毒づいた。

「いえ、あなたでなければ駄目なのです。 シェーア提督はガミラス戦が始まってから出来た国連宇宙海軍の総司令、
つまりにわかづくりのお飾りです。
勿論、かつては欧州連合宇宙軍にその人ありと謳われた猛者であるのは否定しません。 
しかし、現役を離れて何年も経つ提督が軍需産業に影響力を発揮出来るとは私は思えません。」秋山は言ってはならぬ
事を言った。

「シェーア提督が『お飾り』だと! だったら、その『お飾り』に指名されて国連宇宙軍総参謀長、つまりNo.2の地位にいる
お前は何者だ!」ヒッパーは立ち上がって秋山を指さし強弾した。

「はてさて、『道化』ってところですかね。 『滑稽な仕草』で将兵全ての目を見るべき所に導くのが私に出来る精一杯の
事です。」秋山は下を向いて照れ臭そうに嗤った、しかし、次の瞬間、ヒッパーの顔を見つめると鋭く言った。

「そして『道化』が示した『方向』にどの様に艦隊を導くか、それが『指揮官』であるあなたの役目です。
米ソの連合艦隊は土星会戦で全滅しました! 残るは欧州連合艦隊、アジア連合艦隊、太平洋合同連合艦隊が
大きな勢力として残っていますがその内で最大の戦力を保持しているのは欧州連合です。 
そして、その実質最高司令官はあなたです。 あなたはかつての上司、シェーア提督を慕っておいででしょうから
気付かないでしょうが、外部から見ればやはり欧州連合の最高司令官はあなたなのです!」秋山の目には炎が
宿っており、ヒッパーは己の小ささを思い知らされた。

「よし、了解しました。三社には友人も多くいます。 確かに私が頼めば連携して陽電子砲を開発する事も不可能では
ないでしょう。
そして、陽電子砲を開発・製造する時間を稼ぐ為、土星宙域に通商破壊艦隊を派遣します。」ヒッパーは二十歳も年下の
漢に快い敗北を感じていた。
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「では私はその陽電子砲を使いこなせる乗組員を養成して置きます。 どの道、砲塔に搭載出来る様になるまでの
小型化は出来ないのです。  戦艦を単座戦闘機の様に扱える様にして見せます。」秋山は力強く約束したが、
ヒッパーは秋山が<戦艦を単座戦闘機並みに扱える様にする>と言った言葉の、その覚悟の強さに言葉を失った。


                                 155.夢幻の 宇宙戦艦・・・『扶桑』 (フソウ) ー (20)→ この項続く
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by YAMATOSS992 | 2014-08-25 21:00 | ヤマト2199 挿話 | Comments(0)