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宇宙戦艦ヤマト前史

yamato2199.exblog.jp

宇宙戦艦ヤマト登場前の地球防衛軍の苦闘を描きます。

156.イルダ・走る!ー(1)


 「この老いぼれに何を期待する・・・。」ガル・ディッツは普段なら粗末な食事が入っているはずのカトゥーンの中に
大型拳銃を見つけ、呟いた。

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ディッツ家はデスラー政権前のエーリク大公時代より更に前から軍事を専門に司る家系としてガミラスの歴史の中、
政権の中央を歩み続けて来た由緒ある家系だった。

しかし、現政権の長であるデスラー総統が暗殺され、その首謀者として親衛隊により拘束、この惑星『レプタポーダ』に
ある第十七収容所に収監されたのだった。

実際はデスラー総統を担ぐ一派と貴族政治の復興を望むゼーリック国家元帥の間で行われた権力抗争に巻き込まれ、
双方から利用された形で失脚したのだが、本来政治力はあっても権謀術数を駆使するのは余り得意では無い
ガル・ディッツは自分が利用された事に直ぐに気付きはしたものの、中央の勢力争いに疲れ、このまま、収容所で余生を
送るつもりだった。

ディッツはカトゥーンの中に収められた大型拳銃を見つめ続けた。

更なる陰謀の可能性を考えると簡単に手に取る気にはなれなかった。

ーガッシュッー、独房の扉が開錠される音が響き、程なく辺りに解放された(らしい?)囚人達の歓声が響き渡った。

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しかし、老練な軍人である彼はすぐさま銃を取ったが、直ぐに解放の喧騒の只中に出てゆく事を良しとしなかった。

これまで厳重に監視され拘束されて来た我が身がこんなに簡単に解放されるとはとても信じられない事だったからだ。

混乱の中、刺客が接近する事は容易に想像された。

<今、暫くは動くまい・・・本当に儂を解放したがっている勢力があれば向こうから接触してくるはず・・・。>支給された
大型拳銃を掌の内で動かし点検しつつ、ディッツは待った。

その顔はもはや先程までの”世捨て人”の顔では無く、老練な軍人のそれに戻っていた。

再び何の前触れもなく、独房の扉が開き、航宙服、航宙ヘルメットに身を固めた四人のガミラス兵が入って来た。

彼等はディッツの前に一列に並ぶとまず両端に立った大男、二人がヘルメットを取り、顔を晒したが、見た事の無い顔だった。

だが、二人よりずっと背の低いパイロット服のガミラス兵がヘルメットを取り、貌を晒すと「お前は!」その顔を見た
ガル・ディッツは思わず声を上げた。

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「お迎えに上がりました、提督。」にこやかに微笑むその顔は愛娘、メルダ・ディッツ少尉、その人だった。

<メルダ!そうだ、イルダはどうしたのだ?>ディッツの心にもう一人の娘の姿が無い事に不安を持った。

しかし、その事を口に出そうとした時、ディッツの頭の中は急に霧が掛った様に何も考えられなくなった。

「どうしました。お父様・・・。」メルダが心配げに駆け寄った。

「いや、何でもない、それより収容所内の混乱をどう収拾するか、それが問題だな。 なにしろ私の様な政治犯だけで
なく、戦争捕虜も多数いる、彼等をどう説得するか、そこのところを良く考えねばな。」囚人服」から軍服に着替えながら
ディッツは一人ごちた。

彼の心からはもう一人の娘、イルダ・ディッツ少尉候補生の存在はその記憶と共に黒板消しで拭い去った様に
消えていた。

「ゆくぞ、」ディッツは最後に将官の証であるマントを羽織ると先頭を切って歩き始めた。

そこには先程までの世捨て人の陰は微塵も見られなかった。

<お父様、無事で良かった・・・。> イルダ・ディッツは先行するガル・ディッツ提督、メルダ・ディッツ少尉、
オルト・ドルメン大尉、ランス・ラーキン中尉のグループから少し遅れて付いていった。

一行の行く手がT字路になっており、左右どちらに進むべきか、一同は迷った。

と、左側の通路からガトランティス人の一団が訳の分からない言葉を叫びながら一行の前を横切って行った。

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一同は身構えたが相手が戻って来ないので彼等は自分達に気付かず通り過ぎたのだと考えた。

「彼等の来た方向は多分、牢獄だ。 中央制御室のあるのは彼等の向かった方向にあると儂は考えるが、メルダ、
お前はどう思う?」提督は愛娘に意見を求めた。

「はい、提督のお考えの通りだと思います。」メルダは躊躇無く父の問いに応えた。

「ウム、お前もそう考えるか? それでは中央制御室に向かおう、諸君も異議は無いな?」やけに素直なメルダに
違和感を覚えつつ、一行を率いてディッツは進んだ。

<そろそろ良いのではないか?>遅れて進むイルダの心に再び”あの声”が響いた。

<まだ駄目。 父や姉の安全が完全に確保されるまでまだ私の”支援 ”が必要よ。>イルダは”声 ”に応えた。

<フッ、私も手伝っているんだがね・・・。>”声 ”はうそぶいた。

<確かに”あの時 ”私が”覚醒 ”し、”この力 ”を得なければ「メルダ姉さま」を助け、「反政府組織、”真ガミラス同盟 ”に
渡りをつけ、ハイゼラード級戦艦を乗っ取り、惑星レプタポーダに幽閉された「父様」を助け出しに来る事など出来は
しなかった・・・。>イルダはここ数週間の破天荒な日々を思い出していた。



                                               157.イルダ・走る!-(2)→この項続く


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by YAMATOSS992 | 2014-10-04 21:00 | ヤマト2199 挿話 | Comments(2)
Commented by 古世人 at 2014-10-04 22:08 x
お待ちしておりました‼
イルダさん、長編に登場ですか。この後の展開、期待しています!
Commented by YAMATOSS992 at 2014-10-05 06:01
まだ、ゴタゴタが片づけ切っていないので連載は不定期になるかもしれませんが、出来るだけ早く記事をアップするつもりですのでよろしく読んでやって下さい。