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宇宙戦艦ヤマト前史

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宇宙戦艦ヤマト登場前の地球防衛軍の苦闘を描きます。

159.イルダ・走る!-(4)

 <君の姉上は仲々賢いな。 確かに一度脱出した後、頃合いを見計らって元居た場所に潜伏するとは普通は考えない
からね。>”ギルティ”がしきりに感心した。

<私も合流したいところだけど、これからやろうとしている事を考えると”私”は行方不明の方が都合が良いわね。>
イルダは大胆な事を考えていた。

<まず”本物の反政府・組織”を捜す、そして君はその”組織”と姉上を”接触”させて保護してもらうつもりなのかな?>
”ギルティ”がイルダの考えを見透かす様に言った。

<アンタ本当に私の”心”を読んでるの? 屋敷(うち)を灰にされたのよ! 私はそんなヌルい事じゃ済まさない!>
イルダは別の潜伏先で怒りに心を沸騰させていた。

< ・・・。 >”ギルティ”は今度は沈黙していたが、イルダには”ギルティ”の激しい”悔恨”の感情が感じられた。

イルダにはその”内容”は掴めなかったがその”心の闇の深さ”はまるで底の無い”穴”を覗いている様な錯覚に
囚われる程だった。

<アンタも、もしかして自分の住む家を焼かれたの?>自分の不安を振り払いたいイルダはズケズケと”ギルティ”に
迫った。

しかし、彼は頑なに心を閉ざしていたが、やがてその重い戸張を少しだけ下げて言った。

<・・・ああ、そうだ。 もうずいぶんと昔の事だけどね。 それより君は今夜の宿を捜しをした方が良くないかい。>
彼は取り繕う様に言った。

<確かにそうね。 夜も更けて来た事だし、腹も減った。姉貴の所には行けないし ”ギルティ”どうにかしてよ。>
イルダのお嬢様体質はここに至っても抜けていなかった。

<だめだ。今度は君が”力”を使う番だ。>彼はイルダの我が儘を許さなかった。

<これから君は姉上を助けて”親衛隊”を欺き、父上を救出するつもりだろう、そのためには”自分の力”の使い方を学習
しておく必要がある。 夕食の調達と宿の手配はその”学習”の丁度良い取っ掛かりだ。>

<なるほど、そういう事か、さっきの姉貴の救出の時と違って飯と宿の調達なら命の遣り取りには成らないで済むもんな。
やり方は教えてくれよ。”ギルティ”>イルダは脳天気に考えると住宅街の方に向かって走って行った。

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一夜が明け、再び日が落ちるとメルダは池の下に設けられた秘密の地下シェルターで外出する身支度を整えていた。

外に出るのは危険だったが父に何があったのか、まず情報を集める必要性を感じていた。

<今まで待っても、イルダは結局来なかった・・・、あの子も逮捕されたか、あるいは・・・>メルダは最悪の事態を
考えまいと頭を振った。

<あの子も、もう大人、ディッツ家の一員として恥じない行動を執ってくれると信じている!>メルダは地下シェルターに
備わった外部監視装置を駆使して安全を確認すると再び金属柱を池の上に浮上させると夜の闇に消えていった。
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<人間は不便ね。 人一人隠れ潜むだけであんな大袈裟な仕掛けが必要だなんて。>イルダは”姉の意識”にずっと
同調していたのでメルダが何を考え、何をしようとしているのか、手に取る様に判った。

<何を言ってるんだい、私が声を掛けなければ君だって姉上と一緒にあそこに潜んでいたはずだったろうに。>
”ギルティ”が冷やかした。

<しかし、”一夜の宿”としてザルツ人街、警察所の”留置場”を選ぶとは君も随分大胆だな。>彼は呆れていた。

<この区画の警察”留置場”は”空いていた”、 だからここの警察官達は”留置場”を私が使っている可能性を考える
可能性は低い。 しかもここはザルツ人街、警察署とはいえセキュリティは甘々だわ。>彼女は得意げに言った。

<そして食物も贅沢言わなければ簡単に手に入る。>イルダは拘留中の囚人に出される夕飯を搔っ込みながら言った。

<逞しいお嬢様だな、これなら本当にジレルの”光”に成れるかも知れない。>”ギルティ”は意味深な思考を漏らした。

<”ジレル”だって! ジレルは星毎滅んだはずだぞ!>イルダは今、聞いた”忌まわしい名前”に敏感に反応した。

デスラー総統は最後のジレル人、ミーゼラ・セレステラを宣伝・情報相として重用していたが、彼女にジレル人としての
能力は殆ど無いのは既成の事実であった。(もう一人の、そして能力を持つジレル人、ミレーネル・リンケ特務官の存在は
機密扱いになっていた。)

 
<やっ、しまった。 余計な情報を与えてしまった様だ、 でも知ってしまったのでは仕方ない、君や私は”ジレルの業”を
受け継ぐ者だ。>彼はイルダが思いもよらない事を告げた。

<詳しい事はまだ話せない。 でも他人の”心”に勝手に出入りして記憶や認識を操作出来る”力”は”ジレル人の力”と
同じものだとは思わないかい? イルダよ。>彼女は”ギルティ”の意外な言葉に心が震えた。

「嘘だ! 私はイルダ・ディッツ、一等ガミラス人、ガル・ディッツの娘だ!」思わず自分が今居る場所も忘れて大声で
叫んでしまった。

流石に”認識”を操作され、イルダの存在が見えなくなっていたザルツ人の警察官達も彼女の大声に反応して地下の
留置場に集まって来てしまった。

「動くな! お前は誰だ!」警官達は居るはずの無い留置者が手配書が回って来ているイルダ・ディッツでは?と疑いを
持って銃を向けた。

しかし、次の瞬間、彼等は銃を下げ、思いも縁らない言葉を発した。

「おっさん、酒を飲むのは結構だが、あまり騒いで周りに迷惑を掛けるなよ。」そう言うと彼等は談笑しながら詰所に
戻って行った。

<一体何をやったんだ、”ギルティ”>あまりの突然の変化について行けずイルダは戸惑った。

<彼等が君の存在を”認識”してしまったので留置してあった”酔っ払い”が”騒いだ”と彼等の”認識”を書き換えたのさ、
悪いとは思ったが彼等の眼には君が浮浪者として映る様に彼等の”認識を弄った。>彼は問題をどう処理したかを
伝えた。

<酔っ払いの浮浪者? こいつは良い、この貧民街には何処にでも居る当たり前の存在だからな。 さっきは取り乱して
悪かった。 上手く取り繕ってくれて有難う。>イルダは素直に頭を下げた。

< しかし、姉貴を”親衛隊”から救出した時とは随分違った遣り方を取ったものだな、何故だ?>彼女は素朴な疑問を
持った。

<”親衛隊”の下級隊士は下級クローンでしかも感情すら与えられていない。 ”心”も最低限、命令に従う為に与えられ
ている様なものだ。 外からの干渉には非常に弱い。だから一度、”認識”した姉上の存在を簡単に消し去る事が
出来た。 しかし、先程のザルツ人警官達はまともな”人間”だ一度認識した存在を無かった事にするのは至難の技だ。
だから君の存在を前提とした上での”認識”の書き換えが必要だったのさ。>”ギルティ”が説明した。

<私の”力”は”ジレルの力”なのか・・・。 確か”ジレルの民は人の心を操る事が出来た”と言うがこれがそれなのか?>
イルダは疑問をぶつけてみた.

<今私が幾ら言葉をつくしても信じられないだろう。 でも実際に”力”を使って居る内に真実は明らかになってくる、
それまで待ちたまえ。>”ギルティ”は興奮するイルダを諭す様に言った。


                                                 160.イルダ・走る!-(5)→この項続く

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by YAMATOSS992 | 2014-10-25 21:00 | ヤマト2199 挿話 | Comments(0)