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宇宙戦艦ヤマト前史

yamato2199.exblog.jp

宇宙戦艦ヤマト登場前の地球防衛軍の苦闘を描きます。

160.イルダ・走る!-(5)

 雨の中、帝都バレラスから飛び立って行く艦隊があった。

ゼーリック国家元帥が座上する”ゼルグート”を旗艦とし、ハイゼラード級航宙戦艦で周りを固めた艦隊だった。
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メルダはこの艦隊がどこへ向かっているのかは知らなかった。

今、彼女に出来るのは去って行く艦隊を悔しそうに見つめ続ける事だけだった。

<ゼーリック国家元帥、あいつが父を陥れた張本人に違いない。 他の高官と父の間に確執があったとは
思えない・・・。>本当はセレステラ宣伝・情報相とギムレー親衛隊・長官も一枚噛んでいたのだが、政治に
疎いメルダにはそこまで考えが及ばなかった。

航宙港の周りを囲むフェンス越しに色々の光景を見ていたメルダが、目の前で繰り広げられる”親衛隊”の”暴虐”に臍を
噛んでいる時、イルダは様々な”人”とこっそり”心理的・接触”を果たし、今後の作戦・計画を煮詰めつつあった。

<やっぱり、”親衛隊”の奴らあちこちで恨み買い捲りだぜ、しかし、残念ながら奴らがばら撒いた”恐怖” の”力”も
”反乱”の抑止力として充分に機能してやがる。>イルダは爪を噛んだ。

<そうだね。人の”心”は個体の”檻”に閉じ込められた存在だ。 強烈な”恐怖” をばら撒けば人々は勝手に”保身”に
走る。 そして”親衛隊”は人心のコントロールに成功する訳だ。 だが、この方式には大きな弱点もある。>

<”親衛隊”のやり口に反発する人や組織が生まれて来るって事だな。 しかし、”反感”は持っても”反体制・運動”まで
起そうと言う気骨のある奴はまだ見つからないな。>イルダは留置場の寝台に腰かけながら頭を垂れつつ、バレラスに
居る人々の心を飛び歩きながら思った。

<待て! それらしい人物が引っかかって来たぞ!>最初に”反体制・運動”と言う大胆不敵な行動を起そうとしている
人物を見つけたのは”ギルティ”の方だった。

<何! ほう、この”親衛隊”に対する”憎しみ”は半端では無いな。 名前は・・・ランス・ラーキン・・・中尉か!>イルダは
将校に”反体制派”が居ようとは思っても見なかった。

何しろ父、ディッツ提督でさえ、”親衛隊”の跳梁跋扈を見て見ぬ振りをしていたのだ、将校の中にはっきり
”反体制・運動”を具体的な行動として起そうとしている者がいるとは信じられなかった。

<おっ、もう一人、仲間が居るみたいだな。>”ギルティ”がランス・ラーキンの”心”の内を覗いて言った。

<オルト・ドルメン・・・こっちは大尉か!・・・しかし、残念ながら他の”親派”はいない様だな。>イルダはちょっと失望した。

<なあに、調査を始めて間もないと言うのにもう”反体制・運動家”が見つかったんだ、他にもまだ沢山いると期待して
良いと思うよ。>”ギルティ”の感情は安堵していた。

<さて、彼らは”親衛隊”にどんな恨みを持っているんだ・・・。>イルダは二人の”反体制・運動家”の心に忍び込みその
心の闇を覗こうとした。

<やめて措きなさい。 人の心は”深淵”だ、何が入っているか判らない。 特に”恨み”の感情は時としてとんでもない
魔物を生み出すものだ。 覗き込んだ君の”心”が反対に”恨みの深淵”に引き摺り込まれる恐れが大きい。>
”ギルティ”はイルダの無謀な挑戦を諌めた。

<それに心への干渉は必要最小限度に留めないと相手が心理操作されている事に気付いてしまい、全て元も子も
無くなってしまいかねない。>彼は現実的なリスクも付け加えた。

<確かに”今”は余計な好奇心で全てを失う時では無いな。 悪かった。 謝る。>イルダは意外と素直に自分の非を
認めた。

だが次に出した彼女が出した要求は”ギルティ”さえ顔(?)をしかめる程、法外なものだった。

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<今日も来てしまった・・・。 成すべき事も判らないと言うのに・・・。>メルダは再び航宙港をフェンス越しに眺めていた。
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眼前の囚人の列から家族と思しき一団が脱走し”親衛隊”に撃たれて全滅した。

だが、今の彼女にはどうする事も出来ないのが辛かった。

<”親衛隊”に逆らう事は”デスラー総統”に逆らう事、だが、今のバレラスの状況は異常だ。 まるで破滅願望が
”デスラー総統”を支配しているとしか思えない。 だが、私の知っている総統は常に”未来”を見据えていた、破滅願望
なんて決して持つお方ではなかった。>メルダは世の移り変わりに付いて行けず戸惑っていた。
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そんな彼女の後ろ姿を左程遠くない路地裏に停められた車が見ていた。

「彼女か?」男の声が短く尋ねた。

「ああ」もう一人の男が短く応えた。


                                               161.イルダ・走る!-(6)→この項続く
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by YAMATOSS992 | 2014-11-01 21:00 | ヤマト2199 挿話 | Comments(0)