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宇宙戦艦ヤマト前史

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宇宙戦艦ヤマト登場前の地球防衛軍の苦闘を描きます。

161.イルダ・走る!-(6)

 「フム、新造艦はいつ見ても良いものだ。 ただ、塗装が”親衛隊”仕様なのが気に入らないが・・・。」メルダ・ディッツは
眼下の広がる乾ドックに収まった完成間近のハイゼラード級航宙戦艦を見ながら呟いた。

「メルダ様、御心配無く。この外部塗装はパウダー・コーティングです。 青色の粒子を磁力でくっつけてあるだけです。」
オルト・ドルメン大尉が説明した。

「パウダー・コーティング・・・だと?」メルダは訝しげな顔をした。

「ですから、宇宙空間に出て磁力を反転させればたちどころに外皮塗装は四散し、本来の航宙艦隊仕様の塗装が
出現します。」ドルメン大尉が得意げに語った。

それを聞いたメルダは辺り構わず高笑いした。
「それは愉快だ、出来たら”親衛隊”艦隊の目の前で早変わりしてやりたいものだな。」

「面白い! やりますか!」ドルメンも悪戯は大好きだった。

「お二人とも! ここで危険を冒して新造艦を用意してくれている同志達の努力を何だと思っているのです! 
不謹慎極まり無いですぞ!」黙って聞いていたランス・ラーキン中尉が激怒した。

「判っているわよ。 各収容所惑星を査察して歩く”監察官”に成りすまして父上、ガル・ディッツ提督を救出し、
反体制・運動の御神輿に担ぎ上げるんでしょ。」メルダは不貞腐れて言った。
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「悪く言えばその通りです! ですが、現ガミラス政権で一番人望が厚いのはディッツ提督なのは確かです。
”デスラー政権”に反対する政権を樹立するとしてその首班に相応しいのは御父上しかいないのです。」ラーキン中尉は
熱く語った。

<全く、あの連中、反体制派を捜してその”心”の内まで覗いて”忠誠”を確認し信用のおける乗組員を選抜したのは
一体誰だと思っているのかね。>イルダは”ギルティ”と共にメルダとその側近(?)の周りに居るガミラス人達の”認識”を
歪めてそこにいるのが”死んだはずのメルダ・ディッツであるのを隠しながらぼやいた。

<まあ、そう言うなよ。 これは”君”が立てた計画だ、この”黒幕”が誰だか知られない事も含めてね。>”ギルティ”が
精神的に苦笑い(?)しながら彼女を窘めた。

<ところで私は乗組員幹部の人選には参加したけど、下部乗組員やこの艦の建造を行う工廠員の選抜は
どうしたの?>イルダの質問に彼は意外な言葉を返して来た。

<ああ、それなら”全然心配ない”、彼等は全部”ガミロイド”だ。>

<何! それはどう言うことだ!>これにはイルダが慌てた、それもその筈、ガミロイドは機械、心理操作は効かない、
しかも全ガミロイド間でネットワークが形成され情報は共有化される、当然、ガミロイドの顔に付いた四つの目の内、
向かって左下の一つはNETカメラなのだ。

これでは幾ら二人が”親衛隊”や”一般ガミラス人”の”心理操作”や”認識誤認”を駆使しても全く意味が無い。

<何て恐ろしい事をしてくれたんだ! やっぱりお前は私の”敵”か!>イルダは彼から心理的に飛び退いた。

<そんなに慌てなくても良いよ。 そろそろ次の段階の説明をする時期が来た様だ。>彼はイルダを見詰めた。

<君も薄々気づいていると思うが私は”ジレル人”だ。>一番秘密にして置きたいであろう、自分の正体を”ギルティ”は
イルダに告げた。

<やっぱり・・・。他の”ジレル”は何処に隠れている? 今までの仕事ぶり、とてもお前一人で行えたとは思えない。>
イルダは身構えながら質問を続けた。

<いや、今、生き残っているジレル人は三人、もっとも、一人はヤマトとの戦闘で死亡したから今は二人だけだ。>
彼の答えは意外だった。


<じゃあ、お前は”ジレルの魔女”、あのミーゼラ・セレステラ宣伝・情報相の心とも繋がっているって事だな。>イルダは
一番恐れている事を尋ねた。
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<もちろん君の推察通り、セレステラの”心”と私の”心”とは繋がっている、但し、セレステラは私を知らないし、まして
我々が何をしようとしているのかは知りはしない。 なにしろ彼女は”囮”に過ぎないからね。>彼はイルダの思いも
よらない事を告げた。

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 現ガミラス宣伝・情報相・ミーゼラ・セレステラによれば彼女が所属していた惑星”ジレル”の住民は”人の心を読む事が
出来る能力”を持ち、その”力”を周辺惑星・勢力から疎まれ、滅ぼされたと言う事であった。

しかし、もし本当にジレル人に”読心力”を始めとする”心理操作能力”があったのであれば、物理的攻撃手段しか
持たない勢力など全く敵し得ないのは今までの出来事で御理解頂けると思う。

じゃあ、そうした”能力”を持った者は極一部しか居らず、大概のジレル人はそうした能力を持って居なかったとしたら逆に
”民族殲滅”などと言う大袈裟な悲劇は起こらなかったろう。

では真実は一体どの様な出来事だったのであろうか?

時代はエーリク大公時代に遡る、ガミラス軍の領地・探査隊が惑星”ジレル”とその住民を発見した。

原住民達は一見すると中世風の文化程度の物質文明しか持って居なかったが、その精神文明は非常に高度であった。

彼等はガミラス探査隊に”心理操作”を行い、惑星”ジレル”の発見の記憶を消す事に成功した。

だが、物質文明においてはガミラスに大きく劣っていたジレルは物理的データの消去の必要性に気が付かなかった。

探査隊全員の記憶にない惑星の記録・・・これはガミラス本星でも問題になり再度、宙母を基幹とする機動部隊を送り
込んだ。

結果は前回と同じく探査隊員全員の記憶には残って居なかったが多数飛ばした艦載・偵察機や上陸した探査員の
持参していた記録装置には”ジレル人”の姿や街が写っていた。

この探査結果にガミラス本星、特にエーリク大公は恐れを抱き、”惑星ジレル”の存在は最高機密の一つとなった。

しかし、ジレル人の”人の心”を思いのままに操作出来る能力は”政財界”の”陰謀”を生業とする輩には魅力的に写り、
何とかその力を手に入れようとする動きがあちこちで観測された。

もちろん、そうした愚かな試みはことごとく失敗したのだがこうした状況に危機感をつのらせたエーリク大公は
心理操作されないガミラス兵の代理人を開発させ、惑星ジレルの警備に当たらせた。

これが、ガミロイドの原型である、しかしまだ個々のガミロイド間を結ぶNETワークは設定されていなかった。

この為、”闇の仕掛人”達は秘密裡にガミロイドを入手し、やはり”闇”で仕入れた宇宙船を使って惑星ジレルに
ガミロイドを送り込みジレル人、特にまだ心理操作に長けていない幼児を誘拐し、政財界で暗躍する工作員に
育て上げる事が計画・実行された。

エーリク大公は剛腕をもってなる独裁者であったが徒に武力に頼らず叡智を巡らす名君でもあった。

だが、それだけに敵も多く、ジレル人工作員を差し向けられた場面が何度かあった。

しかし、エーリク大公が強靭な精神力の持ち主であった事とジレル人工作員がまだ未熟な少年、少女だった事も手伝って
エーリク大公に対する心理攻撃は失敗、首謀者は悉く検挙された。

ところがジレル人工作員は逮捕に来た警官や親衛隊員を心理操作し、”ガミラスの闇”に消えて行った。

ジレル人逮捕にガミロイドが使われ無かったのは逮捕の現場担当者のジレル人の能力に対する脅威の認識の甘さが
原因であった。

この後、長きに渡りガミラスは”ジレルの魔女”の脅威に怯える事となった。

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<今の説明だとやっぱりガミロイドは我々の天敵じゃないか! それがどうして今は”安全”なんだ?>イルダが
”ギルティ”に疑問をぶつけた。

<それは彼等、ガミロイドが単なる”自動人形”ではなくなったからさ。>彼は思いもかけない言葉を返した。


                                                 162.イルダ・走る!-(7)→この項続く

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by YAMATOSS992 | 2014-11-08 21:00 | ヤマト2199 挿話 | Comments(0)