ブログトップ

宇宙戦艦ヤマト前史

yamato2199.exblog.jp

宇宙戦艦ヤマト登場前の地球防衛軍の苦闘を描きます。

162.イルダ・走る!-(7)

 <ガミロイドは機械に過ぎない、言わば”自動人形(オート・マタ)” だと私は理解している、
”心”などあってたまるものか!>イルダは如何にも馬鹿々しいと言った感情を”ギルティ”に伝えた。

<確かにガミロイドはAIを搭載した”自動人形(オート・マタ)” である事は否定しない。>彼は素直に応じた。
e0266858_07543395.jpg
<そしてガミロイドが”心理操作”の出来る”ジレル人”に対抗した兵器として開発されたのも事実だ。>
彼は再び”ガミラスの歴史の闇”について語り始めた。

**************************************************

ガミラスの闇社会に溶け込んだジレル人達はまだ少年少女、ないしは幼児と呼ぶしかない幼い世代の子供”でしか
無かった。

当然、効果的な能力の使い方が出来ず、悪戯に”ジレル人”の”恐怖”を”闇社会”だけでなく”表社会”にも広げて行く
結果となった。

この為、ガミラス政府は切り札としてガミロイドをジレル人摘発に使った、まだ、若く、幼いジレル人達はガミロイドの
司令・コントロール者の心理操作までは出来ず、次々と捕縛、虐殺されて行った。
e0266858_16521966.jpg
しかし、ガミラスの闇社会はジレル人工作員を欲していた。
エーリク大公が指導するガミラス帝星は惑星ジレルへの宇宙船の立ち寄りを厳しく制限していたがその網を潜っての
ジレル人誘拐は後を絶たなかった。

結果、恐ろしい事態が起こってしまった。 ガミラス人と”接触”を重ねる内にジレル人の物質文明の程度が飛躍的に
上がり、惑星ジレルを封鎖していたガミラス艦隊、重巡洋艦四隻、駆逐艦二十隻が丸々ジレル人に乗っ取られたのだ。

彼等はそれまで連れ去られた同朋の返還を要求し、それが入れられない場合、ガミラスの帝都バレラスへの攻撃を
表明した。

そして彼等が本気である”証”としてサレザー星域外縁部での決戦を申し入れた。

ジレル人に操られた大勢のガミラス人から声高に発せられたこの”挑戦”にはもはや政府もジレル人の存在を
否定出来ず、エーリク大公もその体面上、”挑戦”を受けざるを得なかった。

当日、エーリク大公が率いる四百隻の重巡洋艦隊が指定された空域にゲシュタム・アウトするとジレル人の艦隊は
既に布陣を終わっていた。

それもたった四隻の重巡洋艦隊である。(識別の為か、淡いパープル調の派手な塗装に塗替えられていた。)
e0266858_14265132.jpg
エーリク大公の座上する旗艦、戦艦「Gardola・Eerariku」の艦橋前面にある大スクリーンに粗末な貫頭衣に身を包んだ
男の姿が写った。

「通信士! 通信接続の許可は出していないぞ!」戦艦「Gardola・Eerariku」の艦長はエーリク大公の手前、外部通信を
勝手に受け付けた通信士を叱咤した。

「良い! ジレルの方々の話を伺おうではないか。」この時点ではエーリク大公もまだジレル人の本当の恐ろしさを
思い知って居なかったのだ。

「良くぞ参られた、エーリク大公殿、我等は戦火は望まないが我等ジレルの民を不正に利用させ続ける訳には行かない。
また、公がジレルの民を不正に利用する事を禁じ、その様な悪業の摘発を行なっている事も知っている。
しかし、残念ながらその法や防止策は未だ大きな効果を挙げていない。

だから今回の”力のデモンストレーション”の場を設けさせて貰った。」ジレル人の代表はそこで言葉を切った。

「”力のデモンストレーション”だと! たった四隻の重巡洋艦隊で四百隻の艦隊を相手にすると言うのか! ガミラスを
馬鹿にするにも程がある! 全軍、敵艦隊を包囲殲滅せよ!」怒り狂ったエーリク大公が吠え、ガミラス艦隊は
攻撃態勢に移行し、ジレル艦隊に襲い掛かった。

蹄鉄金具の様なU字型の隊形でジレル艦隊を包み込む様に機動するガミラス艦隊、そのU字型隊形の根本に
戦艦「Gardola・Eerariku」は位置していた。

<彼我の勢力は圧倒的にこちらが有利だ。 ”妖怪共め”ここで誰が”主人”か思い知らせてくれるわ!>エーリク大公は
勝利を信じて疑わなかった。

**************************************************

<しかし、エーリク大公は負けた・・・。 そうだろう”ギルティ”>イルダは核心を突いてきた。

<いや、単純に”敗北”したと言うより”弄ばれて敗北”したと言うべきかな。>彼は更に恐ろしい事を言った。


ガミラスとジレルの決戦は完全に一方的なものであった。

しかも物理的には”ジレル”側の圧倒的不利という信じ難い状況下においてである。

ガミラス艦はお互いに同志撃ちを繰り返し次々と爆沈していった。

しかもジレル側の艦艇は一発の魚雷も一条のビームも発しないままである。

ジレル人の”認識を歪める力”や”記憶改竄能力”など”心理操作能力”が存分に力を発揮した結果だった。

また、ジレル人が”心理操作”出来ない”ガミロイド”も本星での艦隊編成時にこの艦隊に組み込まれない様、バレラスに
侵入したジレル人工作員が手配りしていた。

ただ、何故かエーリク大公の座上する戦艦だけは操艦不能になっては居たが同士討ちの嵐には巻き込まれ無いで
済んでいた。

動く事もままならず、自艦の発したビームは”敵艦の幻”を貫くだけで何の戦果も挙げられないまま情報士官が
絶望的な事を艦長に伝えた。

「エーリク大公、真に、真に、残念な報告をしなければなりません。 本艦隊はこの戦艦「Gardola・Eerariku」を除き
全滅しました。」艦長は悔し涙を流し俯いて呟く様に報告した。

「・・・良い。 貴公が悪い訳ではない。 下らぬ”体面”を気にしてこの挑戦に乗った私が悪いのだ。 ただこれだけ多数の
戦死者をだしながら何の成果も挙げられなかったのは確かに悔しいな・・・。」エーリク大公はつくづく支配者の孤独と
苦悩に苛まれていた。

その時、旗艦・艦橋の大スクリーンに再び最初に接触してきたジレル人の姿が写り,語り始めた。  

「エーリク大公殿、いかがですかな我が艦隊との戦闘は・・・?」その初老の温厚そうに見える男は皮肉な目をエーリクに
向けた。

「判った、骨身に沁みてそなた達の力の大きさは思い知った。 もう絶対に”ジレル”には手を出させん! 
何人たりともだ! また償いに私の命が欲しければそれも捧げる! だから唯一隻残ったこの戦艦の乗組員の命だけは
助けてやって欲しい!」(物理的な)”力”を自在に揮って大ガミラス帝星の礎を築いたエーリク大公だったが、
いや、自分が物理的な”力”の在り様に精通していたからこそエーリク大公はジレル人の前に素直に膝を付いた。

「気付くのがちと遅すぎましたな。 大勢の幼子を奪われ、殺された我らの恨み、思い知って頂こう!」ジレル人はそう
告げるとスクリーンから消えた。

「皆、落ち着け! 取敢えず動くな! 早急な動作は反逆と看做す!」ベテランの艦長が艦の秩序を守ろうと必死だった。

「大変です! バレラスが、バレラスが・・・。」情報士官が上擦った声で報告した。

「バレラスがどうした! スクリーンに出せ!」エーリク大公が苦り切った顔で命令した。

バレラスは核攻撃の最中にあった、ジレル人に奪取されたガミラス艦は重巡四隻、駆逐艦二十隻だった。

先程エーリクの艦隊を壊滅させたのは重巡四隻であったが、駆逐艦二十隻は塗装も変えず友軍艦に紛れてバレラスに
接近、その持てる火力を存分にバレラスに叩き込んだ。
e0266858_16321807.jpg
紅蓮の炎に焼き尽くされる帝都バレラスの姿が大スクリーンに浮かび上がり、エーリクは自分が迂闊にも誘い出され、
兵だけでは無く、臣民までも殺してしまった事に”ジレル人誘拐”問題を徹底的に取締る事の出来なかった自分を恥じた。

**************************************************

スクリーンから目を逸らし俯いているエーリク大公に艦長が近づいて来て言った。

「定刻に成りましたが”ジレル人”共の艦隊は姿を見せません。 撤収すべきかと考えますが、如何いたしましょう。」

あまりの驚きに声も出せなかったエーリク大公はスクリーンを切替させ、座上艦の周囲を映し出させた。

そこには全く無傷な姿で四百隻の大艦隊が写っていた。

<これは一体どう言う事だ。 私はまだ”ジレル”の術中にいるのか?>エーリクは疑問を残しながらも一旦、撤収、
事実確認をする事にした。

ガミラス本星は何時もと変わらぬ佇まいでイスカンダルの隣で鈍く輝いていた。

そしてエーリクの艦がバレラス上空に差し掛かると核攻撃の嵐にあった事など嘘の様に都市は繁栄していた。

<やはり、あれは単なる目眩ましだったのか・・・。ジレルの奴らは遊び好きだと聞くが私は”遊ばれたって訳”か・・・>
エーリク大公は兵や臣民が無事だったのは嬉しかったがそのプライドはズタズタに傷つけられてしまった。

<いや、貴方は良くやったよ。 私も”遊び”じゃなく本気で戦わさせて貰った。>先程スクリーンに写ったジレル人と
同じ声がした。

<”精神感応”か! また私をペテンに掛ける気か!>エーリク大公は周囲の臣下に気付かれない様に気を付けた。

<あなたは”物理世界”の”王”だ。 だから先程の艦隊戦が本物だった事が信じられない、当然、敗北した事も。>
ジレル人は冷徹な事実を告げた。

<そうだ、何の損害も無い”敗北”など信じられる訳が無い。>エーリクの脳裏には次々と爆沈してゆく四百隻の
艦隊の姿や核攻撃に焼かれるバレラスの姿がハッキリと残っていたが客観的事実ではその様な事は無かったのだ。

<フフッ、やはり”物理的証拠”が欲しいか。 だったらバレラス周囲の外郭表面を調べてみるが良い、貴公の欲しい
”物理的証拠”が手に入るぞ。>それだけ告げるとジレル人の精神感応の気配は消えた。


                                                 163.イルダ・走る!-(8)→この項続く

[PR]
by YAMATOSS992 | 2014-11-15 21:00 | ヤマト2199 挿話 | Comments(0)