163.イルダ・走る!-(8)
その関係か、書き欠けの最新記事が勝手にUPされてしまいました。(イルダ・走る!-(12))
執筆中の記事は予約投稿にして安全を期して月末の月日を指定日にしております。
KAZUさんの御指摘を受けて初めてトラブルに気が付き、設定を確認したのですが問題はありませんでした。
やはりコンピューター・トラブルに関連した事故としか考えられません。
ただ、これは読者の皆様には関係の無い、こちらの都合です。
ともかく、皆様には醜態を晒してしまい、恥ずかしい限りです。
「皆様、申し訳けありませんでした。 お詫びして今後の鑑と致します。」
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<本編>
<それで、エーリク大公は「自分が負けた物理的証拠」を手に入れたのかい?>イルダは興味津々で”ギルティ”に
尋ねた。
<ああ、尊大な王であった彼も流石に”敗北”を認めざるを得ない”物理的証拠”を彼はバレラス上部の外郭上から
見つけた。>”ギルティ”の思考は勿体ぶったものだった。
<それは何だ! 焦らすな早く教えろ!>イルダの性格は途轍もなくセッカチだった。
<百六十発の核ミサイルの残骸だ。 しかも核弾頭は抜き取られ重量合わせのダミー弾頭が詰められていた。
さらにその弾着位置はバレラスを取り囲む大クレーターの外周上にほぼ均等に着弾していた。>イルダは”ギルティ”の
言葉に当時、エーリク大公がどんな顔をしたか、見てみたかったと思った。
もし、そのミサイルに本物の核ミサイルが搭載されていれば、最初のジレル人の宣言通り、バレラスは核の炎で焼き尽く
されていたのは明らかだったからだ。
惑星ジレルの封鎖の厳重化と共にガミラスやザルツ等植民星に潜伏しているジレル人を”心理操作”されない
ガミロイドを使って徹底的に捕獲しようとしたが、大人のジレル人が先に侵入してその殆どを生還させる事に
成功していた。
山々だったが、彼女達はガミラスの地で拙いながらも”心理操作”を行い、闇社会で”ジレルの魔女”として恐れられる
存在となっていた事が問題となった。
”ジレルの掟”では本来、他の星人に”心理操作”する時は上級幹部の了承が必要であり、勝手にガミラスで
”ジレルの魔女”を演じていた二人には”追放”処分が決定された。
この二人こそ誰有ろう、後のミーゼラ・セレステラ宣伝・情報相とミレーネル・リンケ特務官であった。
彼女達は母星に災厄をもたらした元凶としてジレルからは切り捨てられ、ガミラスからはガミラス社会を混乱に陥れた
”ジレルの魔女”として幽閉すべき危険な存在として惑星レプタポーダの収容所に収監される事となったのだ。
<ずいぶん酷い話だな。 ガミラスから追われたのはともかく、母星からも見捨てられたんだなあの”魔女”は・・・。>
イルダは父の失脚に一枚噛んでいたと思われるセレステラを敵視していたが、今の話を聞くと孤立無援であるが故に
”救済”の手を差し伸べてくれたデスラー総統に忠誠を尽くしているのも判らない話ではないと思った。
ある発言をした。
<あの二人の”役割”・・・? それは一体なんだ?>イルダは”虜囚”の役割など見当も付かなかった。
<後でゆっくりと考えるが良い。 さあ、姉上いや、”収容所・査察官”の新造艦の検収が終わるぞ! 最後まで
心理操作の気を抜くなよ。>”ギルティ”が最後の気合いを入れた。
<この心理操作ってやり方は血を流さず強大な力を発揮出来るが猛烈に疲労するのが敵わんな。>イルダは
もう三時間もメルダ一行が、”収容所・査察官”に見える様、周囲の人々に働き掛けていた。
イルダは自分が眩暈を感じる程に疲労しているのに”彼”が疲労の色を全く見せないのを不思議に思った。
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数日後”収容所・監察官御一行”に成り済ましたメルダ達はラーキン中尉がNetハッキングで得た情報に基きディッツ
提督の収監先が惑星レプタポーダにある第十七収容所である事を割り出していた。
メルダ達がバレラスを発つと直ぐに”親衛隊”の「メルトリア級航宙巡洋戦艦」に率いられた「デストリア級重巡」三隻が
艦名と行先を誰何して来た。
「我が艦名はガル・レダート、行先は惑星レプタポーダ、目的はそこで行われているらしい不正の摘発だ。
死刑囚が大半のはずなのに第十七収容所は膨大な物資を消費している、これは物資の横流しが行われていると見て
間違いない、もし、これが本当ならガミラスに対する重大な裏切り行為だ、私はギムレー長官から勅命を受けて事の
真偽を確かめるために調査に向かうのだ。 不審な点があればバレラスに問い合わせてくれて結構だ。」
メルダは恐れも怒りも顔に出さず”親衛隊”と対峙して見せた。
「ちょっとお待ちを・・・」”親衛隊”の将校が艦長の元に書類を持って来た。
艦長は書類を受け取ると険しい表情でスクリーン上からメルダを見据えた。
「何か問題でも?」メルダが涼しい顔で”親衛隊”艦隊司令に問うた。
「いや、お恥ずかしい、監察官殿があまりにお若いので少々戸惑っただけです。 書類に不備は有りません、出航を許可します。 それでは良い航行を!」それだけ言うと”親衛隊”艦隊はメルダ達の艦から離れていった。
「さて、それでは偽装をときますか・・・。」オルトドメルン大尉が艦体表面に着けてある青色粒子の拡散レバーに
触れようとしたがメルダに止められた。
「偽装解除は一回目のゲシュタム・ジャンプ終了後にしよう、折角ここまで”親衛隊”を欺き通したんだ、詰めは慎重に
行こう。」ドメルンは不満そうだったがメルダの言い分には賛成せざるを得なかった。
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「レプタポーダが見えたぞ!」誰かが叫ぶ声にイルダは起こされた。
<クソッ、もう着いたのかよ。 後、 二~三日休ませて欲しかったな・・・。>つい、イルダは弱音を吐いてしまった。
彼女は連日の心理操作に疲れ切っていたからだ、しかし、彼女以上に働いている相棒(先生?)の”ギルティ”には
全く疲労の色は感じられなかった。
<”ギルティ”お前本当に一人なのかよ。 そうだったら化物だな。>イルダは疲れを知らぬ彼がうらやましかった。
<そうだね、もう明かしても良いころだ。 私は多数の個体を一つの精神で操る「多個体一精神生物」だ。
確かに君からすれば「化物」以外の何物でもない。 心は一つでもそれを支える肉体は億の単位で存在するから
この程度の心理操作行動では殆ど疲労はしないんだ。>彼はペロリと舌を出す信号を送って来た。
<おっ、先行潜入部隊が出発する様だ。 私は彼らの作戦が成功する様に援護に廻る、イルダ、君は姉上とその部下
二人の潜入をサポートしてやってくれ。>”ギルティ”の気配が消えた。
<いよいよガル・ディッツ提督救出作戦の始まりだ。>イルダは自分も気密服に着替えながら気を引き締めた。
ジレル人、”ギルティ”には大きな謎と訳の分からない恐怖はあったが今の所、裏切りの気配は感じられなかった。
<信じるしかないか・・・。>彼女は彼が今まで彼女を色々な局面で助けてくれた事に嘘は無いと思いたかった。
164.イルダ・走る!-(9)→この項続く