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宇宙戦艦ヤマト前史

yamato2199.exblog.jp

宇宙戦艦ヤマト登場前の地球防衛軍の苦闘を描きます。

176. やってきたのはお姫(ひい)様 ー(4)

 ガトランティス艦から来た連絡艇はヤマトの左舷第三格納庫に誘導され、ガトランティスの使節は格納庫内が加圧され
たのを確認したらしく、ヤマト側が誘導しなくても姿を現した。

しかし、その姿を格納庫の観測室で見た真田副長は目を剥いた。

遣って来たのがボ・ルドウ侍従長であったのも驚きだったが、彼にはもう一人、”連れ” があった。

先程、画像通信でメイン・パネルに映っていた正統ガトランティス王家第二王女レティファン・クエセジャード、その人が
ヤマトを訪問して来たのである。

王家の人間を迎えるとなればそれなりの儀礼を整えなければならない、副長は取り敢えず四人の保安部員を呼び寄せ
儀仗兵の役割を果たさせる事を考えたが文化風習の違いを考えるとやたら武器をチラつかせる地球式の儀礼は返って
相手を刺激する事に成りかねないと考えを改めた。
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「ブリッジ、聞こえるか? 島航海長、悪いが第三格納庫まで足を運んでくれ。但し、貴人を迎えるので正装で頼む。」
真田副長は一方的に要件を伝えるとインカムを切り、自分も着替える為に自室に走った。

<貴人って誰の事だろう?>真田副長に命じられた正装を整えながら島航海長は首を傾げた。

<あのガトランティス艦は『御召艦』だと言っていたっけ、姫と侍従長の他にも高官が乗って居ても不思議は無いな。>

島航海長はまだ事態を軽く考えていた。

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「”迎え”はまだか! 我はレティファン・クエセジャード、正統ガトランティス王家、第二王女なるぞ!」気が短い”姫”が
切れた。

「申し訳けありません。もう間も無く責任者が参りますので今しばらくの御辛抱をお願いします。」保安部長代理の
星名・透が異星の客(?、”姫君”)をなだめるのに必死になっていた。

<クッ、これがヤマトの外なら指向性翻訳機構が働かないから言葉が判らない振りも出来るのに・・・。>星名・保安部長
代理は心の中で毒づいたが顔は笑顔を絶やさなかった。

指向性翻訳機構とは桐生・美影が学生時代から研究してきた言語相互翻訳装置の事である。

彼女の母が集めた地球各地、各時代の言語をベースに相互翻訳をタイム・ラグ無しに行うものであったがその場に居る
全員に聞こえる様に音量を上げると会話が騒音の渦になって仕舞うので音波に指向性を持たせ、聞かせるべき相手に
だけ言葉が届く様、真田技師長の助けを借りて改良していた。

更に彼女はイスカンダル滞在中、ガミラス・イスカンダル両星でのフィールド・ワークを行い膨大な量のデータを入手していた。
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その中にはガトランティスの言語データも含まれていたので前回と今回、殆ど顔も合わせた事の無い種族同士でも意志
疎通が可能となっていた。

どうしてイスカンダルに居ながらにしてフィールド・ワークが可能だったかと言うとこれは桐生・美影のスターシャに対する
積極的アプローチに尽きる。

最初は地球人の”野蛮さ”を警戒していた女王、スターシャであったが、彼女も分野こそ違えやはり研究者であった。

結局は桐生・美影の言語学・人類学に対する熱意に負け、復興に忙しいガミラスの植民地管理を行っている統制省に
掛け合って言語データの譲渡を頼んでくれた。

これが広いガミラスの版図に散らばった多数の星と民族の言語と文化を入手する事を可能にし、前回、今回と
ガトランティスと意志疎通を果たせたのもこの時のフィールド・ワークの賜物だった。

<桐生・美影・・・さんか。 今頃、あっちで上手く出来ているのかしら。>星名に付き添って来た和田保安部員は今は
閉まっているシャッターの方を、そしてガトランティス艦の方を見やった。

「お待たせしました、支度に手間取りましてお迎えが遅れて申し訳けありません。」真田副長が島航海長を連れて”客”を
迎えに来た。

「私は本艦の副長、真田です。彼は航海長の島・大介、艦長は只今不在にしており、ここに来れない事をお詫び申し上げ
ます。さ、さ、立ち話では無く寛いで頂く為に部屋を用意しました。 そちらにお移り願います。」真田は姫とその侍従長を
ヤマトの艦内にある応接室へと案内した。
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「全くもう、ヤマトにあった”予備のエネルギー伝道管”を殆ど全部持ち出す事に為っちゃいましたよ!」岩田・甲板員が
コンテナに物を積み込みながらぼやいた。

「大丈夫だ。木星・浮遊大陸の波動砲使用によるトラブル以外、”伝道管”関係のトラブルは出ていない。 
幸い、コスモナイトの鉱石はまだ残っている。後は航海しながら予備を再度作り直せば良いと思うよ。」コンテナの
積み込み作業を手伝っていた吉田・充機関員が楽観的な見方をしてみせた。

「積み込み完了!”コウノトリ”にコンテナを接続しろ!」榎本掌帆長が命令した。

本来、”コウノトリ”ことキ8型試作宙艇は輸送機ではない、しかし、元々、輸送任務を担うべき空間汎用輸送機SC97
<コスモ・シーガル>をヤマトは二機搭載していたが、ガミラスとの戦闘で二機とも失われてしまっていた。

この為、惑星探査艇であるキ8型試作宙艇に無理やりコンテナを取り付けて輸送機として使おうと言うのだ。

<かなり無理やり感が強いが、まっ重力圏内に降りる訳ではないから大丈夫だろう。>”コウノトリ”とコンテナの接続作業を見守りながら榎本掌帆長は思った。

やがて”コウノトリ”はその汎用性をフルに発揮して大型のコンテナを機体の下に抱え込むとガトランティス艦に向かって飛び立っていった。
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                                        177. やってきたのはお姫(ひい)様 ー(5)→ この項・続く
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by YAMATOSS992 | 2015-02-07 21:00 | ヤマト2199 挿話 | Comments(2)
Commented by 古世人 at 2015-02-07 22:21 x
恐縮ながら、岩田さんは直前の対ガミロイド戦で、戦死か重傷につきダウン、ではないですか?
Commented by YAMATOSS992 at 2015-02-08 07:17
確かにガミロイド侵入による白兵戦で岩田・甲板員は負傷しました。しかし、この物語の時間軸はヤマト復路の中間点で戦闘から時間が経っており、回復に必要な時間は十分にあったものと設定しました。(あまり死人は増やしたく無かったのです。)
ヤマトの復路は「星巡る方舟」を含めてもたった三話しか描かれていません。
しかし、距離と時間は往路と変わらないのです。
アケーリアスのワープ・ネットワークを駆使しても時間短縮は半分に満たないでしょう。
そこに目を付けたストーリー展開が今回の作品です。