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宇宙戦艦ヤマト前史

yamato2199.exblog.jp

宇宙戦艦ヤマト登場前の地球防衛軍の苦闘を描きます。

177. やってきたのはお姫(ひい)様 ー(5)

  一行が応接室に入り、着席すると間の悪い沈黙が二組の間に流れた。

「ところで、何で貴艦の最高責任者である貴方がたが”証人”として本艦にやって来られたのです?」島航海長が沈黙に
耐え切れず口を開いた。

「航海長!」真田副長の叱責が飛んだ。

「島殿、異星人は珍しいですかな?」ボ・ルドウが微笑しつつ、聞いた。

「えっ、それは・・・。」島が応えかけるのを制する様に真田副長が発言した。

「いえ、貴方がたとは一度、接触しています。 また、ガミラス、イスカンダルとも接触しています。 航海長が驚いたのは
貴艦に送り出した修理・調査隊の”安全”を保障する為に本艦に送られた”証人”が貴艦の最高責任者である貴方がた
だった事です。『人の命は平等なのですから士官の方であればそれで良かったのでは?』と彼は考えたのです。」
真田はガトランティスの貴人に対する非礼を極度に恐れていた。

ここで紛争が起きればヤマト本体は何とか切り抜けられるだろうが、沖田艦長の容態を悪化させる恐れがあったからだ。

「『人の命は平等・・・。』我等には考え及ばぬ事ですわい。 ”姫と儂”が”証人”としてまいったのは出来うる限り
高位の者を”証人”として立てる事で貴艦の好意に報いようとしたまでの事、他意はありませぬ。」ボ・ルドウは
ガトランティスが階級社会である事を暗に明かしてしまった。

姫が目の前に出された”紅茶”を興味深げに見遣り、手に取って一口、啜ったが渋かったのであろう複雑な表情をした。

「失礼します。」それを見た島航海長は姫の傍らまで行くと跪き、姫の紅茶に付属のレモンを浮かべ、砂糖を適量入れるとそれを薦めた。

「これで美味しくなったと存じます。姫様、お試しあれ。」
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島に薦められるまま、姫は恐る々その紅茶を口にした。

一口啜った姫の目が大きく開かれた。

「こんな美味しい物、口にした事無いぞ! 試して御覧、爺。」姫はボ・ルドウにも紅茶を薦めた。

「これは・・・。我が部族には無い味ですわい、我等は”証人”、これ程の持成しを受ける資格などありはしませぬ。」
”証人”とは砕けて言えば”人質”の事である、ボ・ルドウは自艦の修理を他勢力の艦の力を借りねばならぬ事を深く
恥じているのだ。

<技術力が不足している?のか・・・。 ではあのビーム転送兵器はどうやって作ったのだ?>真田はガトランティス艦の
技術の偏り方が気になった。

「そうお気遣いなさらずに。この飲み物、”紅茶”と申しますが、これは本艦の一般の乗組員でも自由に飲む事の
出来る物です。別にあなた方を特別扱いしている訳ではありません。」島航海長がすかさず説明した。

「これ程の”享楽”を与えても一般兵士の”規律”が保たれるとは貴艦の艦長の”人心掌握力”は恐るべき強大さですな。」
ボ・ルドウは手にした紅茶のカップを目の高さに掲げつつ、感慨深げな言葉を漏らした。

「爺、つまらない!ここは星が見えない!わらわは母なる星の海を見て居たい。」姫がまた我儘を言った。

「姫!我等は”証人”、迂闊に動き回る事など許されませんぞ!我慢なされよ!」ボ・ルドウが姫を叱責した。

「まぁまぁ、ボ・ルドウさん、修理はまだ時間が掛かる事でしょう。 姫様が退屈されるのも無理はない。場所を
変えましょう。真田副長、展望室など如何でしょうか?」島航海長が提案した。

<確かに左舷展望室ならガトランティス艦も真近に見えるし、機密に触れる物も何も無い。反対する理由は無いな。>
真田副長は島の進言を入れて一行を左舷展望室に案内した。

「オオ、見事な!そなた達はあそこに向かって航海するのじゃな。」姫が真近に迫った光の海、銀河系を見て感嘆した。

「はぁ、ですが我が故郷”地球”はガミラスの手に依って”瀕死”の状態です。 我等はイスカンダルが差し伸べてくれた
”救済”を求めて”旅”をし、その”救済”をイスカンダルから受け取って帰還の途にある状況なのです。」島航海長が
ヤマトの置かれている状況について説明した。

真田副長は島航海長の説明を遣り過ぎだと思いつつ眉をしかめた。

「そちらが”旅”の事情を明かして下さったのなら、こちらも事情説明をせねばなりますまい。」ボ・ルドウ侍従長が”姫”の
逃避行の訳を説明し始めた。

”レティファン姫”はガトランティスの古き部族、セジャード族の王女である。

そしてセジャード族は一時は全ガトランティスを束ねる程の強力な部族であった。

しかし、小マゼラン雲への侵攻に仲々成功出来ないでいる内に新興勢力が台頭しセジャード族はガトランティスの
支配権を新興勢力に奪われ、大きく弱体化してしまったのだった。

台頭して来た新興勢力は一つでは無く、幾つかあった為、彼等は権力闘争に明け暮れており、仲々纏まる事は
無かった。

しかし、やがて幾つかの部族を統合する事に成功した一派が全ガトランティスの全権力を掌握し、部族連合だった
ガトランティスに独裁体制を敷く事に成功したのだ。

その支配者の名は”ズォーダー”、自ら”大帝”を名乗り、圧倒的な支配力を”恐怖”に依って実現した恐ろしい男だった。

だが、彼は民衆や兵士の前に姿を現す事は無く、その施策は全て丞相のシファ・サーベラーを通して官僚や軍・指令官、
一般兵士に伝えられた。
(訂正 シファ・サーベラー → シファル・サーベラーでした。HAL0999さん御指摘有難うございました。)
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一応、部族の連合体だったガトランティスを一枚岩に統合する事に成功した”ズォーダー”だったが、宇宙を漂泊する
集団であるガトランティスの本質は変えようが無く、旧部族毎の集団で艦隊を組む事を許さざるを得なかった。

この為、”大帝”は各部族に族長の娘を”側室”として差し出す様に要求して来た。

「婚礼の旅とは”政略結婚”の為だったのですね。」真田副長が痛ましそうに”姫”を見やった。

「そうじゃ、じゃが同情は無用じゃ、我等は彼奴らの迎えの艦隊を全滅させ、最大空間跳躍を行って追手をまいたところ
じゃ。」姫が星の海から顔を上げ、悪戯っぽく微笑んだ。

「しかし、”側室”とはいえ”大帝の家族”となるのでしょう? 御父上が束ねる部族の為にも”姫”はお輿入れすべきだった
のではありませんか?」島航海長が余計な事を言った。

「判っておらぬな。 ガトランティスを構成する部族は千近くあるのじゃ。 今頃、輿入れした所で”大帝”の顔を拝む事も
無く、武功のあった武将に”下賜”されるのが落ちじゃ。」”姫”は絶望的な事を言った。

「どうしてそうだと決めつけるんです! それだけ大きな集団を束ねる”漢”でしょ、人間的魅力がある”人”なのでは?」
島航海長は”姫”に平和な暮らしをして欲しかっただけだった。

「それはありませぬ。 なぜなら”姫様”の御母上は御父上、グエゼ・クエセジャード様の下に”大帝”が”下賜”する形で
嫁いで来られた方じゃった。
その上、”姫”を生んだ後の産後の肥立ちが悪く早くに亡くなったのじゃが最後まで”大帝”の扱いを恨んで居られた。
ですからシファル・サーベラーからこの輿入れの話があった時、御父上、グエゼ・クエセジャード様は形だけ”大帝”の命に
従い、裏で私に”姫”の逃亡を助ける様に命じられたのじゃ。」ボ・ルドウは衝撃的な事実を告げた。

<これは早く彼等と別れねば確実にヤマトは戦火に巻き込まれるぞ!>真田副長はそっと席を外すとガトランティス艦・修理・遠征部隊に連絡を取った。


                                        178. やってきたのはお姫(ひい)様 ー(6)→ この項・続く

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by YAMATOSS992 | 2015-02-14 21:00 | ヤマト2199 挿話 | Comments(3)
Commented by HAL0999 at 2015-02-16 17:06 x
こんばんは、またお邪魔いたします。
ありゃりゃ、本当にシファル・サーベラーでしたか(汗)
いっそのこと姉か妹でもよろしかったのに(笑)

YAMATOSS992さんに影響されまして、実はこの週末にひと私的な挿話を作ってしまいました。

そして、私のYahooブログで予約投稿をいたしております。
本日2/16日の19時に自動公開される予定です。

ちょと趣味が入りすぎで、駄文ではありますが、お陰様で私は楽しく書くことができました。
もし、ご興味がありましたら、覗いてやってください。

前篇と後編に分かれていて、前篇は16日、後編は17日の19時に公開されるようになっております。

YAMATOSS992さんの「ヤマト2199世界に於ける”精神文明”の有り様について」のジレル人についての考察も参考にさせていただいています。

はなしの内容はセレステラを主人公とした第14話「魔女はささやく」を掘り下げたような内容になっています。

アドバイスなど、いただけると光栄です。

ではまた続きを楽しみにしております。
Commented by YAMATOSS992 at 2015-02-16 17:59
HAL0999さん今晩わ。

ヤマト世界の禁断区域「精神文明」と「物質文明」の対決を描かれ様となされるのなら非常に深い考察が
必要です。
マンガ版を描いているむらかわ・みちお氏はこの所を実に上手く処理してアニメの2199での矛盾点の処理に
利用していました。
但し、それだけに留まらず、ミレーネル・リンケの心理にまで踏み込んだ描写には唸らせられました。
(後出しジャンケンと言われればそれまでですが・・・。それを言えば私の2199挿話だって同じ事です。)
とにかく貴君の作品楽しみにしております。
(出来たらコメント”可”にしておいてくれれば助かります。)
Commented by HAL0999 at 2015-02-17 13:01 x
拙ブログに訪問いただき、ありがとうございます。

また貴重なコメントをありがとうございました。

たしかにヤマト世界の禁断区域「精神文明」と「物質文明」の対決などに手を出したら大やけど必至ですね。

ちょっと無理だと思います。

実はまだむらかわみちおさんのコミックに関しては3巻までしか読んでいなかったもので、ジレル人設定が好きな私にとって、リンケが深堀りされているならぜひ読まなくては…

昨日から公開させていただいている「黒い星」ですが、後編はHAL的に濃ゆ~い内容になっています。実は前編は前ふりでしかないもしれません。

セレステラにたった一言を言わせただけのために書いているようなものですから。

また後編読んでやってくださいね。

でわまた!!