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宇宙戦艦ヤマト前史

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宇宙戦艦ヤマト登場前の地球防衛軍の苦闘を描きます。

 179. やってきたのはお姫(ひい)様 ー(7)

 「おおっ!動き出した!」第一艦橋に居た全員が喜びの声を上げた。

ヤマトが修理・資材を提供したガトランティスのレティファン・クエセジャード姫、”御召艦 ガウ・ルーガル” がゆっくりと
前進を始めたのだ。

「やれやれ、これでやっと解放されるな。 沖田艦長の容態も安定した、ヤマトはこの場を去る事が出来る!波動エンジン
始動!直ちに”転移(ワープ)”に入る!」真田副長が大幅に遅れた”定時転移(ワープ)”を命令した。

予め計算してあった定時転移(ワープ)を行うべく、ヤマトは準備に入った。

「波動エンジン始動! 室圧上昇!七十、八十、フライ・ホイール接続! 室圧 九十、百、エネルギー充填 百二十%、
航海長、何時でも”転移(ワープ)可能じゃ!」徳川機関長が準備完了を告げる。

その声を受けて島航海長はヤマトを”転移(ワープ)速度”へ加速させ様とした。
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<アレッ? 何時もより加速が鈍い・・・。 機関の異常か!>島は静かにスロットル・レバーを元に戻した。

「航海長! どうした!」真田副長が誰何した。

しかし、島航海長はそれには応えず、徳川機関長の注意を喚起した。

「徳川さん、ヤマトの加速が何時もより僅かですが、”鈍い”、このままでは”波動エンジン”に異常が出るやも
知れません!」

それを聞いた徳川機関長は機関室に連絡を取り、波動エンジンを停止、機関点検をさせた。

「ムゥ、エネルギー伝道管の一本に亀裂が入り懸かっておる、確かに航海長の言う通り、このまま運転し続ければ
”転移(ワープ)”中に急に機関が止まり大事故になる所だった。 
いや、流石、地球初の光速突破艦”ヤマト”の航海長だ、見事じゃな。」徳川機関長は若者の成長が嬉しかった。

反面、真田副長は頭が痛かった、経年劣化した”波動エンジンのエネルギー伝道管”の”番手”である。

エネルギー伝道管の予備はまだあったが、悪い事に先程ガトランティス艦の修理に供出した”番手”の在庫は尽きて
しまっていた。
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幸いエネルギー伝道管の材料である”コスモナイト90”はまだ十二分に持っていたので製作は可能だったが、これで
また定時転移(ワープ)が遅れる、そして御召艦”ガウ・ルーガル”には敵対勢力の追手が迫る危険が増していた。

一刻も早く”ガウ・ルーガル”にこの宙域から立ち去って貰う必要があるのだ。

真田副長は再度、”ガウ・ルーガル”のボ・ルドウ艦長に連絡を取りこの宙域からの退避を懇願した。

『なるほど、確かに危機が迫って居りますな。 貴艦が退避されない理由はお尋ねしますまい。 機関全速!
最大空間跳躍用意!」ボ・ルドウは艦長の顔で命令を発した。

『待てい!』 凛とした声がガウ・ルーガルの艦橋に響いた。

スクリーンに映ったその姿を見て真田副長は頭を抱えた、<あの”姫”はまた何か問題を起こすに違いない!>彼の心は不吉な予感に満たされた。

「姫! ”漢同志の話”に口を挿む事は成りませんと日頃からお話申し上げているはず、許しませんぞ!」ボ・ルドウは情け
容赦無く鉄拳を振るった。

しかし、”姫”はそれをスルリとかわすとボ・ルドウ、いやガトランティスにとってはとんでもない事を言い放った。

「あの船にはわらわと”真の名”を交わした者が居る、難儀しておるなら捨てては置けぬ!」 それを聞いたボ・ルドウを
始めとするガトランティス兵達はあんぐりと口を開け驚愕を隠せないでいた。

「御父上、御母上ですら知らぬ”真の名”を”姫”は幾ら恩義があるとは言え、”異星人”に与えてしまったのですか!」
ボ・ルドウ艦長いや、侍従長は血を吐く様な言葉で”姫”を追求した。

「”星の海を往く者の理からなした”交換”じゃ、何もやましい事は無い!」”姫”はヤマト航海長の使命が”故郷の復活”に
ある事を告げ、自分の使命が”ガトランティスの矯正”である事を語った。

「”姫”・・・貴女様は”使命の神託”を得られたのですね。 ありがたや。」ボ・ルドウは”姫”の前に跪くと両手を上に伸ばし
つつ、”姫”を丁重に拝んだ。

「な、何のまねじゃ、”爺”、わらわはそれ程大それた事をしようとは思わぬ!」ボ・ルドウの思わぬ対応に”姫”の方が
戸惑っていた。

「これは誰しも”大帝”を恐れ、口に出来なかった”ガトランティスの悲願”であります。」副長の”ヤ・ラルトウもボ・ルドウの
左脇に跪いて”姫”を両手で仰いだ。

副長に続きブリッジに居たクルーの全員も戸惑いながらも、同じ様に”姫”の前に跪いた。

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 <”使命の神託”? この言葉を聞くのは二度めだ・・・。 それも女王、スターシャ・イスカンダルが言っていた言葉、
ガミラス人の口から聞いた事が無かったから、イスカンダル特有の”信仰”だと思っていたが、ガトランティスでも
重視されている処を見ると汎宇宙的な”信仰”なのかもしれないな…。>真田は学求者らしい考察をしていた。
(注、”使命の神託”については 拙作・大長編「使命の神託」を参照して下さい。)

「航海長! レティファン姫の”真の名”を本当にお聞きになったのですか!」桐生美影が蒼ざめた顔で聞いた。

「ああ確かに交わした、彼女の”真の名”は」そこまで言いかけた島の口は新見情報長に依って手で塞がれた。

「駄目よ、ここで言っては・・・。”姫”の気持ちを踏みにじる事になる! 相手に”真の名”を明かす事の意味を良く
考えなさい!」文化人類学に明るい新見情報長は島の無知から来る無神経さに呆れた。


個人や物の”真の名”を知る、明かす、これは地球の古代人の”言霊信仰”に関係した重要な儀式である。

人が猿人でまだ言葉を持って居なかった時代にはまるで意味の無い事であったが、一度、言葉を持ち、それを使って
人同士が意志を伝えられる様に成ると”言葉”は神聖なものとして洋の東西を問わず”信仰”の対象になった。

何しろあるもの(者、物)が、如何に遠くにあろうとも、如何に昔のものでも、遠い未来であってもその存在を確実に示す
事の出来る”は言葉”は、それまで刹那にしか生きれなかった人々に”言葉を使う事”に依って時空さえ越える事が
出来る事を教えたのである。

そして人々は”言葉”を神聖な物として扱った、これが”言霊信仰”である。

しかし、反面、”自分の名前”を敵に知られるとどんな”呪い”や”心理操作”を受けるか判らないと言った”恐怖”も生まれ、
自分の”真の名”は隠して置き、対外的には”仮の名”を名乗ると言う風習が古代・地球では当たり前に行われていた。

勿論、時代が下るにつれ、”言霊信仰”は薄らいで行ったのであるが、今だ持ってその力は決して無くなってはいない。
(宮崎駿 監督「風立ちぬ」、『堀越二郎、菜穂子、婚儀の場』[追記]を参照)

ガトランティスのセジャード族にもこの風習がまだ受け継がれていた様である。

しかも、王家の所属者だけかもしれないが、”真の名”は”成人”した時、自分で決める物の様である。

自分の家来はおろか父母すら”姫”の”真の名”を知らない、そんな”神聖”な”名前”を明かすのは”生涯の伴侶”か、
”絶対信用出来る同盟者(親友?)”だけであった。

「航海長・・・。貴方は何者なのですか・・・?」驚愕の余り、桐生・美影は絞り出す様な声で島に問いかけた。

「転移(ワープ)反応、多数確認! ガトランティスの艦隊です!」岬・百合亜が次々と現れるガトランティスの艦影を捉え、報告した。
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<しまった! 間に合わなかったか!>真田副長は一戦交える覚悟を固めた。

                                       180. やってきたのはお姫(ひい)様ー(8)→ この項・続く

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( 追記 )

ここからは”言霊信仰”が実在する事の証明文書です。

「ヤマト関連以外、要は無い!」と言われる方は読み飛ばして下さい。

表題 『”言霊”の威力について』

私は”言霊信仰”など”迷信”だと思って馬鹿にしていました。

今描いている物語でもガトランティスが”過去”を引きずっている事の象徴としての”言霊信仰”を扱い、その形として
”真の名”を使うつもりでした。

しかし、2015年2月20日、宮崎駿監督の「風立ちぬ」を見て”言霊信仰”は決して”迷信”等では無く、現在も脈々と
生きている事を実感させられました。

それは堀越二郎と里美菜穂子の婚礼のシーンです。

婚儀は二郎の面倒を見てくれている黒川家の”離れ”で慌ただしく行われました。

婚礼用の飾りつけなど全く無い日常空間で堀越二郎と媒酌人(黒川氏)は普段着のまま、媒酌人(黒川夫人)と
里美菜穂子を待ちます。(二郎は外出着である”背広”黒川氏は”どてら”の上にチャンチャンコを着て正装っぽく
しています。)

家名の入った提灯を掲げ、家紋の入った羽織を羽織った媒酌人(黒川夫人)はゆっくりと二郎達が待つ”離れ”へと
晴れ着(これも羽織)を纏った菜穂子を連れて行きます。
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 媒酌人(黒川夫人)は新郎と介添人(黒川氏)の待つ部屋の正面でまず新婦の介添人が自分の前だけの障子を開け
口上を述べます。


新婦の介添人口上

「申す 七珍万宝投げ捨てて 身ひとつにて山を下りし みめうるわしき乙女なり いかーに。」

(申し上げます。 全財産を投げ捨ててまで山を下ってここに参った美しい乙女です。どうか嫁として
迎えてやって下さい。)


中にいる新郎の介添人が応えます。

新郎の介添人口上(返答)

「申す 雨露しのぐ屋根もなく 鈍感愚物のオノコなり それでもよければお入りください。」

(こちらも申し上げます。かの者も家も持たない鈍感でノロマな男です。それでも良ければ”嫁に”お入り下さい。)


新婦の介添人返答

「いざ 夫婦の契り 常しなえ。」

(これで結婚の儀、成立しました。 永遠の幸せを!)

提灯を折り畳み、灯りを吹き消し、障子を全部開けて、新郎の前に新婦をお披露目します。

(提灯の火を新郎側の口上が終わるまで消さないのは万一受け入れられない時は暗がりを新婦を連れて
引き返さなければならないからです。 また、受け入れられた後は新婦はもはやどこにも行かぬ証として提灯の火を
吹き消すのです。
それが成って初めて新婦のお披露目が為される訳です。)
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先にも書きましたがこの婚礼の儀は黒川家の”離れ”という日常空間で行われます。

しかも婚礼の儀に相応しい道具は媒酌用の酒器(盃と銚子)、提灯、後は花嫁衣裳位です。
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だがしかし、ここで媒酌人(黒川夫人)が提灯を灯したまま「申す!」と言った瞬間、”言霊”の力は登場人物達だけで
無く、我々観客さえをも、”神聖な異空間、婚礼の場”へ飛ばしてしまいました。

きちんと片付けられてはいましたが普段、生活する単なる部屋が新郎は外出着の”背広”とはいえ、普段着を
媒酌人(黒川氏)に至ってはどてらとチャンチャンコを羽織っているだけにも関わらず、です。

そう言えば私も結婚式に金を掛けるなど下らない、いっそ何もしないで良いと思っていましたが、義理の父母が結婚式に
拘ったので仕方なく式を挙げました。

しかし、実際に体験してみると結婚式(披露宴では無く、)の空間には確かには日常とは異なる全く別の物が
漂っている事がはっきりと判りました。

賛否両論渦巻く最後の”宮崎駿”監督作品、”風立ちぬ」ですが、まだ見ておられ無い方も先入観を捨てて一度、全編を
通して見る事をお勧めします。(他にも良い所がてんこ盛りです。)



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by YAMATOSS992 | 2015-02-28 21:00 | ヤマト2199 挿話 | Comments(2)
Commented by HAL0999 at 2015-03-04 15:55 x
こんにちはHALです。
7話拝読いたしました!!
これ、ひょっとして島くんとレティファン姫の恋物語になるのでしょうか?
8話、期待してますね!!
Commented by YAMATOSS992 at 2015-03-04 16:24
半分合ってます。

レティファン姫の ”真の名” が全てを明らかにします。