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宇宙戦艦ヤマト前史

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宇宙戦艦ヤマト登場前の地球防衛軍の苦闘を描きます。

186. ”大義”の”甲冑(よろい)” ー(4)

 「随分、遠くまで遣って来ましたね。」副官のルルダ・メッキラ大尉がゲシュタム・ジャンプ終了後、目の前に広がる
小マゼラン雲外縁部の様子を見て要った。

「ああ、だが、ここまで出張って来たと言うのにガトランティス軍の欠片も見つからないとはどうした訳だ? 
奴等、ガミラス領内への侵攻を諦めたとでも言うのだろうか?」小マゼラン方面、ガトランティス軍の動向を偵察する任を
帯びたメルダ・ディッツ少佐は眉をひそめた。

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「そうですとも、我等、ガミラスは無敵です!」ルルダ大尉は大きく張った胸乳をドンと叩いた。

それを見てメルダ少佐は皮肉を言った、「一万隻も軍艦が居たくせにテロンのヤマト一隻を打ち取れなかったのにか?」

「そ、それは・・・。」ルルダ大尉が反論しようとしたその時である、航路探査主任から緊急報告が入った。

「次元振を確認、大きいです! それも近い!」その報告の声は悲鳴に近かった。

「次元断層か! すぐさま緊急ゲシュタム・ジャンプ!フェーズ3で現宙域を離れる! 艦隊各艦に通達!」メルダ少佐の
命令は冷静だった。

ガミラスでは次元断層に遭遇した場合など緊急にゲシュタム・ジャンプをしなければならない場合、
艦隊内で必要な諸元を一々遣り取りして決めていては緊急事態に間に合わないので予め諸元を決めておき、いざ事が
起こればその程度に応じてフェーズ1~フェーズ3の三段階のジャンプ距離を選び危機を回避する方法を執っているの
だった。

今回、メルダが選んだフェーズは”3 ”、約3光時の短距離・ジャンプである。

それまで惑星系を飲み込む程大きな次元断層は観測された事が無かったから彼女の判断は適切だったと言える、
しかし発生した次元断層は思いの外、発生場所がメルダの艦隊に近く、艦隊がゲシュタム・ジャンプに移行する前に
配下のクリピテラ級航宙駆逐艦3隻が”赤い咢”に引き込まれていった。


メルダの乗ったケルカピア級航宙軽巡洋艦と2隻のクリピテラ級航宙駆逐艦は危うく難を逃れたかに見えたが
実際の危機はまだ去って居なかった。

「駄目です! ジャンプしたにも関わらず、”赤い咢”の吸引力はまだ働いています!」航路探査主任は今までに無い
現象にすっかりパニクッていた。

「落ち着け! 航海手!再度、ゲシュタム・ジャンプで現空域を離れる、今度はフェーズ”1 ”だ! 
僚艦にも命令・伝達せよ!」メルダの落ち着いた、しかし強い意志に裏打ちされた命令が艦隊内に平静を取り戻させて
行く。

しかし、運命の悪戯は再び好機をメルダ艦隊から奪い去った。

メルダ艦隊の残存艦はメルダの座上するケルカビア級航宙軽巡洋艦”メラ・ドーラ”とクリピテラ級航宙駆逐艦、
”KD-288”と”KD-361”だったが、”KD-288”が機関不調を起こしてゲシュタム・ジャンプ不能に陥ったのだ。

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「牽引ビーム照射! ”KD-288”の”落下”を支えろ! それと通信士!艦隊本部に救援を要請しろ!」淀みなく下される
メルダの矢継早の判断と命令はともすれば絶望に陥るしかない艦内に高い士気を保たさせていた。

<このお嬢さん、航宙艦隊総司令、ディッツ提督の一人娘だと聞いていたからどんな甘ちゃんかと思っていたが
仲々どうしてやるもんだ!>火器管制席に座った老士官は感心した。
(全種族的な心理操作によってイルダ・ディッツは居なかった事になっています。”イルダ・走る!”参照。)

「ディッツ、いやメルダ司令、艦隊本部と連絡が取れません! この次元断層の発生で空間が歪んでいる物と
考えられます。」

「よし、解った。 今の状態を維持する事は造作も無い。 次元振もそのうち収まるだろう。」通信士の深刻な報告にも
メルダは眉一つ動かさなかった。

 本来、有限のエネルギーしか持たない宇宙船は持久戦には不向きである、しかし波動エネルギーを用いた
波動エンジンは”真空中から無限にエネルギーを取り出せる”夢の様なシステムである。
(ガミラスのゲシュタム・機関も名前が違うだけで実質的に同じシステム。)

だから航行出来ず、かつ、次元断層に落込みそうな僚艦を牽引ビームで支えてもエネルギーが尽きる心配は無いので
現状を維持しつつ、次元断層による次元振が収まるのを待っていれば良いのだ。
(メルダはこの次元振は長くても一時間位で収まるだろうと推測していた。)

しかし、そんなメルダの予想を嘲笑うかの様に3日経っても次元断層の崩落は続き、次元振は一向に収まる気配を
見せなかった。

だが、それでもメルダは指揮官として絶対の自信を持って部下の前では振舞って見せていた。

<ここで私が”折れたら”雪崩を打って一直線に”破滅”へ向かう・・・、助けて!『古代』助けて!『沖田!』 >
幾らガミラス・最年少で”少佐”になったとはいえ、彼女はまだ二十代に成ったばかりの少女なのだ。

「司令・・・。”KDー361”から通信が入っています。」通信士がメルダの個室に連絡を入れて来た。

「よし! 繋げ!」メルダは顔の表情を直ぐに少女の顔から艦隊司令の顔に切り替えると通信接続を命じた。

「航宙駆逐艦 KD-361艦長エル・ギャロ大尉であります。 意見具申します!」デスラー統治時代には考えられない事で
あったがテロン艦「ヤマト」との接触によってガミラスでも一兵卒でさえ意見を言う機会が与えられる様になっていた。

もちろん、それを取り上げる、上げないは指揮官の裁量に任されており必ずしもその意見が通るとは限らなかったが、
それでもデスラー統治時代の盲目的に従うだけの軍務では無く常に自分の頭を使って戦う事が許された事は全軍の
士気を大きく上げる事に成功していた。

「よし! 意見具申を聞こう! エル・ギャロ大尉!」メルダは自分より十歳は年上の駆逐艦長に発言を促した。

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「はっ、それでは意見を述べさせて頂きます。 我が艦隊は今、次元断層の縁に居り、何時、引き込まれても可笑しく
ありません。
しかも僚艦の”KD-288”は機関不調を起こして航行不能に陥り、牽引ビームで支えてやらなければ次元断層に
落ち込んでしまいます。
しかし、幸いにも本艦の機関には全く異常がありません、絶好調です!
そこで本艦が”KD-288”を支え続けますので、司令は”メラ・ドーラ”単艦で脱出、救援を呼んで来て頂きたいのです。」
実直なベテラン宙雷屋らしい進言だった。

「有難う、エル・ギャロル大尉。 しかし、それなら貴官が救援要請に出、少しでも艦体の大きい本艦が”KD-288”を
支える方が理に適っている。」メルダ司令は若い自分を生かそうと考えたギャロ大尉の進言が嬉しかった。

しかし、メルダはその進言にはあまり意味の無い事に気が付き少し悲しかった。

<ガミラス艦艇の”跳躍制限”の秘密・開示は艦隊司令止まりになっているから彼が知らなくても仕方ない・・・か。>

”跳躍制限”の秘密・・・それはガミラス艦は単艦では長距離のゲシュタム・ジャンプが出来ないと言う事だった。

本来、”ワープ”や”ゲシュタム・ジャンプ”の行える艦の密集艦隊運用は効率的な方法とは言えない。

各艦、数光年の間隔を置いた網の荒い艦隊で敵地に侵攻し、反撃の有った、ないしは強い宙域に各艦が集結して
敵を叩く、これが本来の”空間転移”出来る技術を持った艦隊の運用の方法である。

ガミラスも勢力圏拡大を始めた当初はこの運用方法を執っていた。
(対ヤマト戦で中性子星”カレル163”を用いたドメル将軍の”罠”は正にこれ。)

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しかし、支配圏の拡大と共に各方面に派遣出来る艦艇の絶対数が不足する様になった。

もちろん、物理的な艦艇の数の不足はガミラスの工業力を持ってすれば補いが付かない訳ではなかったが、艦隊の
ソフト面、艦艇の運用に必要な人員の不足は如何ともしがたく、ガミラスに対する忠誠度の高い被征服民、
”二等ガミラス人”である”ザルツ人”を多用せざるを得なかった。

幸い、被征服民でも”ザルツ人”は矜持が非常に高く、征服者と言えど一度、忠誠を誓ったからにはそれを貫く事を誇りと
していたので安心して艦隊を任せる事が出来た。

しかし、デスラー政権の中枢部では純血主義が力を持っており、”二等ガミラス人”に対する不信感は根強かった。

そこで航宙艦隊司令部は艦艇の相互監視システムを導入した。

但し、これは個々の艦艇が常にお互いの挙動を監視すると言う士気を下げる方法では無く、単艦で出来る”ゲシュタム・
ジャンプ”の距離を一光年以下に抑えるが、二隻なら十光年単位、五隻なら百光年単位、
十隻集まれば重複・増幅効果で千光年単位の”跳躍”が可能になると言うものだった。

つまり反乱分子が艦艇を乗っ取り脱走を図っても一度に跳べる距離は一光年以下なので複数艦で構成された
追跡艦隊は簡単に逃走艦を捕捉、撃滅出来ると言うシステムなのだ。

(戦艦級は艦長以外に司令官クラスが座上する事が多い事もあり、このシステムはデストリア級重巡までしか採用されて
いない。
しかし、一度、航宙艦隊に組み込まれてしまうと戦艦と言えどその管制システム下に置かれ厳しく監視される事になる
のでイルダ達が惑星レプタポーダからディッツ提督を解放するのに使用したハイゼラード級戦艦は全くの新艦を航宙艦隊の管制システムの外で建造し管制システムとの接触を最小限に抑えて作戦を成功させた。)

だからガミラスの艦隊は常に密集隊形を使用し、そしてこれはこれから侵略する星系に対する強力な示威行動にもなり
支配圏の拡大に大きな力となったのだった。

だが、今のメルダ艦隊にとってはこの”跳躍・制限”は正に八方塞がりを現出してしまっていた。

<デスラー政権は”一等臣民”ですら信用して居なかったのだ。>メルダは”狂信”の恐ろしさを改めて実感していた。

<ヤマトと出逢わなければ私は今でもデスラーの先兵として多くの星の無垢の民を
虐殺し続けていたかもしれない・・・。>

メルダはヤマトの”独房”で交わした古代・進との会話を思い出して唇を噛んだ。

「司令! 火器管制官意見具申!」 野太い声にメルダが首をめぐらすとハイデルン大佐に良く似た老兵が
不敵に微笑んでいた。

「何だ? クリフ・ラッド大尉、妙案があるのか?」メルダはこの火器管制を担当する老士官が苦手だった。




                                         187. ”大義”の”甲冑(よろい)” ー(5) → この項・続く

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お待たせしました”大義”の”甲冑(よろい)” 再開いたします。

まだ本調子では無いので記事・UPが週刊に出来るお約束は出来ませんが、出来るだけ頑張ります。


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by YAMATOSS992 | 2015-07-04 21:00 | ヤマト2199 挿話 | Comments(0)