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宇宙戦艦ヤマト前史

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宇宙戦艦ヤマト登場前の地球防衛軍の苦闘を描きます。

187. ”大義”の”甲冑(よろい)” ー(5)

 「はっ、発言の機会を与えて頂きこの老骨、感謝致します。」彼はもったいぶった話し方をした。

「司令は古から伝わる”星の海を往く船乗りの理”を御存じでしょうか?」彼は随分古い事を持ち出して来た。

「ああ・・・。確か、”船乗りは船乗りを決して見捨てない、見捨ててはならない。”だったかな?」メルダは記憶の底から
古い言伝えをすくい出して答えた。

「クリフ・ラッド中尉、あなた、まさか”ガトランティス”に助けを求めるつもり! そんなの不可能よ!」メルダの副官で
航宙軽巡洋艦”メラ・ドーラ”艦長のルルダ・メッキラ大尉が異を唱えた。

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「まぁ、待てメッキラ大尉、私もこの古い”理”には何度も助けられた。
最も相手はガミラスの恩人、”テロンのヤマッテ”だがな。」メルダは短かったが濃密だった彼等との旅に想いを馳せた。

「テロン人とガトランティス人ではその”魂の高貴さ”が違います。 ガトランティスは所詮”蛮族”です。」メッキラ大尉は
ヤマトのバレラス戦時、バレラスの郊外にある軍港におり、デスラーが落とした第二バレラス633工区をヤマトが波動砲で
迎撃してくれなければ大多数のガミラス臣民と共に死亡していたはずだったので恩義を感じていて当然だった。

「しかし、テロン人はイスカンダルのスターシャ猊下によって技術供与されなければ自星系からすら出れない程度の文明
しか持って居なかったと聞きます。
また、”波動エネルギーの兵器転用”の件でスターシャ猊下の不興を買ったとか、ガトランティスは確かに好戦的では
ありますが、”波動エネルギーの兵器転用”を行う程、”野蛮”ではありません。
交渉の余地は充分にあると自分は考えます。」

「何を言う、ガミラスの恩人、ヤマッテやテロン人を”野蛮人”扱いするとは! ガミラス皇室、女皇ユリーシャ様に
対しても”不敬罪”になるぞ! 言葉を控えろ! 中尉!」 メッキラ大尉は自分の価値観を覆され、ラッド中尉に
今にも飛び掛らんばかりだった。

「まぁ待て二人とも、ラッド中尉、君の案を取るとして実際にはどの様な方法でガトランティスと交渉するつもりなのだ?」

メルダはこの偵察艦隊の司令官として最早、ラッド中尉の案に賭けるしかない事を強く感じていた。

「超空間・通信・バンドを広域帯に設定してこちらの窮状を”放送”するのです。」ラッド中尉は至って常識的な答えを
返した。

「ハッ、そんな事したら血に飢えたガトランティス軍が押し寄せて来るだけだ! 私は反対です!」 メッキラ大尉は
ラッドの中尉”無差別・広域・救援要請放送”に強く”異”を唱えた。

「こちらの”状況”を詳しく説明する必要はありません。 ただ一言、”古への船乗りの約定に従いて救援を要請する。”と
伝えれば良いのです。」ラッド中尉の目は輝いていた。

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<この男、妙に”自説”に確信を持っている・・・。 過去に何かを経験しているのか?>メルダは中尉の進言を取り上げる事にした。

「よし、救援要請を”広域・超空間・通信バンド”にて”放送”する! 文面は”こちらガミラス航宙警備艦隊、大規模次元
断層発生にて遭難せり。 近傍を航行中の船舶は厳重に注意されたし! この警報は”古への星の海を往く船乗りの
約定”に基づき発する! ” だ。 後は位置情報を付け加える必要があるな。」メルダは明確な指示を出した。

「はぁ? 具体的な”救援・要請”はしないのでありますか? これでは我々の位置情報を伝えるだけで終わって
しまいます。」 ルルダ・メッキラ大尉は更に反発した。

「さすが総司令官の御令嬢、”古への星の海を往く船乗りの約定”を御存じなのですね」 ラッド中尉は感心した。

<私がガミラス史上初のテロン艦ヤマトの捕虜に成ったから”知った”とは・・・言えないな。>メルダは心の内で
苦笑した。 ( 過去記事・「勇者の砦」、「烈光の使者」参照。)

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 「行く手を阻んでいた”超大規模次元振・次元断層”は崩落は続いていますが基本的には収束の方向です。」 巡航艦
”メテヲール” の観測士が報告した。

「航行は可能か? 危険は回避出来るのだろうな? 三日の遅れは取り戻せるのか?」”メテヲール”の艦長はかなり焦っていた。
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「ガルダ・ドガーラよ、”迅雷の戦士”よ、焦っても無駄じゃ! 遅延は遅延、理由の如何を聞いてくれる相手では
あるまい。」ドガーラの後ろから凛とした声がした。

「テレサ様。 この様な俗な場所に参られては困り申す、あなた様は”大帝の妻”に成られる御方であられます。
到着まで自室で御寛ぎ下され。」ドガーラはボ・ルドウ侍従長からテレサの補佐を引き継いでいた。

「ガミラス艦隊の通信を傍受! 内容は平文、”超大規模・異次元断層”の発生を報じるものです、この艦隊は既に次元断層に飲み込まれ遭難した模様・・・なのですが・・・。」 通信傍受を報じた通信士は言葉を濁らせた。

ドガーラには判らなかったようだが、テレサは鋭い眼差しを通信士に向けるとその目力に押された通信士は報告を
続けた。

「後、”この警告は”古への星の海を往く船乗りの約定”に基づき発する! ” とか、訳の分からない事を
言っています・・・。」通信士の言葉が終わるとテレサはその通信を発した者の冥福を祈る様に瞑目した。

しかし、次の瞬間、閉じてた目をカッと開くとその通信源の特定と艦長には艦隊の転進を命じた。

「どうされました? ”大帝”は痺れを切らしていますぞ、これ以上遅れては”御命”に係ります!」
転進命令に従いながらも艦長は疑問を口にした。

テレサは ”古への星の海を往く船乗りの約定” が ”船乗りは決して同じ船乗りを見捨てない” 事である事を説明し、
それは非戦闘時であれば敵対勢力同士であっても適合される事を話した。

「しかし、ガミラスは明らかに我等の ”敵” 。 今更 ”船乗りの絆” 等と言われても承諾しかね申す!」 ドガーラは納得
しなかった。

「”大帝”の・・・”敵” であろう? ガミラスの勢力圏内に無理やり艦隊をねじ込んだのは ”大帝” いや ”サーベラー” の
采配、ガミラスは第三勢力となった我等の ”敵” では無い! ここで彼等を見捨てたら我等が ”大帝” と袂を分かつ
”大義” も失われてしまう! 急げ、一人でも多く救い上げるのじゃ!」テレサはその名(愛満つる者)に相応しい行動を
取る様になっていた。

「おっと、忘れる所だった、通信士、族長に連絡! ”ガウ・ルーガル” が必要になるかもしれん。 出動を要請して
おいてくれ!」”ガウ・ルーガル” は ”火炎直撃砲艦” である、当然、部族の保有艦艇では重要な位置を占める。

テレサは何気なく命令したが、先の ”レティファン・クエセジャード姫” の逃走劇に使用されたのは
この逃走に ”姫”と”部族” の命運が賭けられていたからだ。

しかし、あのガミラスの救出に、この ”虎の子” を使う事の意味を艦橋にいる部下達は理解出来なかった。

「テレサ様! ”ガウ・ルーガル” を呼ぶのはガミラスと事を構える時の用意で御座るか?」ドガーラはガミラスとの戦闘を
本気で望んでいる様だった。
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<まぁ、旧来の戦闘に明け暮れていた時代の性癖は簡単には治らん・・・か。>テレサは苦笑しつつ、一旦、自室に
引き上げた。

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救援要請を超空間通信・広域帯バンドで流し続けながらメルダ達は別の生存の可能性を模索していた。

「本当に大丈夫でしょうか? この空間を宇宙服だけで移動するなんて無謀です!」メッキラ大尉はメルダが命じた
次の作戦に異を唱えた。

「危険は承知だ。 幸い、”KD-361” も本艦もゲシュタム機関は好調で ”KD-288” を支え続ける事に何の問題も無い。
しかし、エネルギー供給には問題が無くとも乗組員の生命維持に必要な ”食糧” は有限だ。
"水" と ”空気” も循環して使用しているとはいえ、100%の再生は出来ない僅かだがその量は確実に減少している。」
この足止めが後、数か月も続けば艦隊は ”飢え” と ”酸欠” で全滅してしまう事をメルダは艦隊の全員に説いた。

「 確かに ”KD-288” の機関が修理不能と判った今、乗員を "KD-361” と ”メラ・ドーラ” に分乗させ、移乗に成功したら
無人になった ”KD-288” を自沈・廃棄するのが正しい判断です。」ラッド中尉は賛成した。

「しかし、次元崩落中の危険な空間を遊泳させるのは無理があります!」メッキラ大尉は強硬だった。

「それは理解する。大尉。 指揮官・先陣だ、まず私が遊泳して ”KD-288” まで乗組員を迎えに行く。」メルダは
久し振りに愛用のパイロット・スーツに着替えようとした。

「お待ち下さい。 司令、貴女は航宙艦隊・提督、ディッツ様の御令嬢です。 こんな生命の保証の無い任務は我々に
お任せ下さい。」メルダのお目付け役でもあるラッド中尉はメルダの蛮勇を諌めた。

「駄目だ、これは最高責任者が行うべき仕事だ。」メルダはそう言い放つと愛用のパイロット・スーツに身を固め、
次元振による空間崩落の続く危険な空間に出ると、”KD-288” を目指した。
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メルダの眼前には崩落が続く次元断層の開口部が不気味に赤い光を放って広がっていた。

” KD-288 ” に着くと副長が十数名の乗組員を取りまとめて待っていた。

「私は ”KDD-288” 副長、トレンス中尉であります。メルダ司令、自らの救援活動恐れ入ります! 
我々、乗組員十六名は全員感謝しております。」と副長は申告した。

「よし、一人づつ私の持って来た救助索を使って階級の低い者順に”メラ・ドーラ”に移乗してもらう。
それで良いな? トレンス中尉。」メルダは救出方法の段取りを確認した。

今までデスラー政権時のガミラスでは上官が部下の命を踏み台にする事など平気な輩が跋扈していたからだ。

「はっ、ザーベルク! 問題ありません。」トレンス中尉はメルダの命令を当然の如く受け入れてくれた。

「しかし、艦長はやはり最後にするのでしょうか? 病人ですから特例で先行脱出させる訳には行かないでしょうか?」
副長は遭難の重圧に精神を押し潰されてしまった艦長の事を気遣った。

「ウム、」メルダは副長の足元にうずくまる艦長の肩に手を掛けるとその階級章をむしり取った。

<クソッ、今度の司令は度量のある方だと聞いていたが所詮、中央の人間、現場で命を擦り減らす者の気持ちは
分かってはくれないのか!>メルダの冷酷な仕打ちにトレンス中尉は怒りを覚えた。

しかし、メルダは二人に背を向けたまま言った。

「トレンス中尉、そこにいるのは階級章も付けていない二等兵だ。 直ぐに救助索を与えてやり給え。」

「はっ?」副長はメルダの言った言葉の意味が分からなかった。

「階級章紛失の件は私の方で処理しておく、君がその”二等兵”を責任を持って”メラ・ドーラ”に送り届けてくれたまえ。」
メルダの口許は呼吸器マスクに覆われており、表情は読めなかったが目元は確かに微笑んでいた。


                                         188. ”大義”の”甲冑(よろい)” ー(6) → この項・続く

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by YAMATOSS992 | 2015-07-11 21:00 | ヤマト2199 挿話 | Comments(0)