ブログトップ

宇宙戦艦ヤマト前史

yamato2199.exblog.jp

宇宙戦艦ヤマト登場前の地球防衛軍の苦闘を描きます。

188. ”大義”の”甲冑(よろい)” ー(6)

 ”KD-288” は乗組員を全員 ”メラ・ドーラ” に移し終えると、牽引ビームの接続を切られ次元断層の奥に消えていった。

”メラ・ドーラ” の艦橋にいた全員が消えゆく僚艦に敬礼(ガミラス式)で別れを告げた。

「さぁ、これで安心してこの場を離れられますね。」”メラ・ドーラ” 副長、フィレリア中尉が喜びの声を上げた。

「まだ安心は出来ん、”地獄の釜” がすぐそこに口を開けているんだぞ!」艦長のメッキラ大尉は慎重だった。

「兎も角、”KD-361” を先行して脱出させろ、急加速は厳禁だぞ、断層・崩落を助長しかねん。」メルダも慎重な脱出を
指示した。

徐々に加速を強めて ”地獄の釜” からの離脱を試みる ”KD-361” 、しかし ”KD-361” が崩落口から充分安全な距離を
取る前に大規模な崩落が起こり ”KD-361” は次元断層に飲み込まれそうになった。

「牽引ビーム照射! ”KD-361” を支えろ!」とっさにメルダは ”KD-361” を牽引ビームで支える命令を発していた。

しかし、今度起こった次元断層の崩落はメルダ達が経験した物の中で最大であり、 ”メラ・ドーラ” まで”赤い咢”に
引き込まれそうになった。
e0266858_15124053.jpg
「司令! 今まで有難う御座いました。 牽引ビームを切って旗艦だけでも脱出して下さい。」 ”KD-361” 艦長である
エル・ギャロ大尉が悲痛な声で ”メラ・ドーラ” 脱出を促した。

「いかん! ここで貴様達を見捨てては何の為に今まで皆で生存の努力をしてきたか分からなくなる!」メルダは何が
何でも全員の生還を諦めるつもりは無かった。

**************************************************

 しかし悪い時には悪い事が重なる物で先に投棄した ”KD-288” の質量が次元断層の崩落に拍車を掛けてしまった。

”メラ・ドーラ” はそれまで通常空間に位置して牽引ビームにより ”KD-361” を ”崩落口” に落下しない様に支えて
来たのだが、次元断層の ”崩落口” 拡大によって ”メラ・ドーラ” 自体もその ”縁” に辛うじて引っ掛かっている状態に
なってしまった。

「いけません! このままでは共倒れです! 戦場では負傷兵にかか患って徒に健全な戦力を消耗するのは ”愚将” の
する事です! 御理解下さい 司令!」ルルダ・メッキラ大尉が詰め寄った。

「先程、古の ”星の海往く船乗りの理” を信じて我々は ”次元断層・発生” の警告を放った。
その我等がその ”理”を蔑ろにして "同胞” を見捨てては我等の ”身体” は助かっても ”心” は死ぬ!」メルダにとって
名誉は何にもまして重要なものだった。

「 ”KD-361” 、機関が無事なら再度、機関・出力を徐々に上げ、脱出を試みよ!」メルダは決して ”仲間” を見捨てる
気は更々無かった。

「私はテロンの ”ヤマッテ” に僅かの間だが乗艦を許され、旅を共にした事がある・・・。」メルダは部下達に ”ヤマト” の
旅について語った。

彼等は我々ガミラスの攻撃を受けその母星は ”瀕死” の状態になっていた事。
 
そこへイスカンダルからの使者、ユリーシャ様がスターシャ猊下からの技術供与と救済の可能性を届け、
彼等は使者 ”ヤマッテ” を派遣し、片道十六万八千光年、往復三十三万六千光年の旅を遂行する事を決断した事。 

三十三万六千光年、これはガミラス人ならゲートが使えなければ決して実行しない距離である事。

しかも当初は和解していないガミラスの猛攻を受けつつの航海を覚悟していた事。

”ヤマッテ” の旅はいくらガミラスの内政に混乱があったとはいえ、”宇宙の狼” ドメル将軍の猛攻を潜り抜け、
一万隻の艦隊が集う、バラン・ハブ・ステーションを破壊しつつ、自らはゲートを使って追手をかわすなど尋常な物では
無い、まるで神がかったものだった事。
e0266858_11182575.jpg

e0266858_10415553.jpg

e0266858_10422731.jpg
「そう、彼等は どんな時も決して”諦め無かった”、だから "明日” を手にして今、帰還の途にある。
だから我々も決して諦めてはならない、最後の一ゲックが尽きるまで冷静に状況を見、可能性を探り、それを全力で
実行するのみだ。」メルダは ”ヤマト” から教えられた ”負けじ魂”を 部下達に語った。

「成程、”ヤマッテ” を ”バレラス” に導いた " 共闘者は貴女でしたか。」クリフ・ラッド中尉はメルダの体験について
良く知っていたが、知らん顔を決めていた。

「別に ”裏切者” とはっきり言っても良いのだぞ…。しかし、私は家名を汚す様な真似をしたとは思っていない!」
メルダはヤマトでの旅、特に協力して切り抜けたバレラス戦の内に誰憚る事の無い、強い ”正義” を感じていた。

「あの戦い(バレラス戦)は理不尽な暴力を排する為の物でした。
裏切者はデスラーの方です! あんな男を総統と呼んで崇めていた自分が恥ずかしい・・・。」ルルダ・メッキラ大尉が
メルダを擁護した。

「もちろん、私だってそう思いますよ。」ラッド中尉はヘラッと調子を合わせるとメッキラ艦長に目配せした。

「 ”KD-361” に再度、牽引ビーム照射、本艦は機関・出力を徐々に増して脱出を試みる、観測士、次元断層の
崩落状況を逐次報告、大きな崩落の兆候を掴んだらフェーズ3でゲシュタム・ジャンプ、脱出を試みる! ”KD-361”も
本艦の操艦システムにリンクし、脱出・ジャンプのタイミングを合わせろ!」メッキラ艦長は大胆な脱出手段を命じた。

メルダはラッド中尉が敢えて憎まれ役を引き受けてメッキラ艦長に思い切った作戦を取らせたのに気付き、
<この男、何者だ?>と不審に思ったが今は脱出に専念すべきだと思い直し艦長の采配を見守るに止めた。

************************************************

 メルダの指揮するマゼラン雲・外縁・偵察・艦隊の生き残りはその生死を掛けて次元断層脱出に挑んでいた。

出力を強引に上げての緊急・離脱は更なる次元断層・崩落を招く恐れがあり、行う訳には行かなかった。

辛うじて通常空間に留まっている ”メラ・ドーラ” が微速でそろそろと次元断層から離れ、次に牽引ビームを
手繰り寄せて航宙駆逐艦 ”KD361” を次元断層開口部から離脱させる方法しか無かったのだ。

それは一時の休みも許されない緊張した時間で疲労した将兵には永遠とも感じられる長いものであった。

”メラ・ドーラ” が完全に通常空間に戻る事に成功し、牽引ビーム出力をあげ、”KD-361” を手繰り寄せようとしたその時である、更なる次元断層の崩落が起こった。

しかも今度は完全に ”メラ・ドーラ” も完全に飲み込む大規模な崩落でもはや一刻も早くゲシュタム・ジャンプしなければ
絶対助からない状況だった。

「ゲシュタム・ジャンプ、フェーズ3を適応!」今度はメルダも迷わず命令を下した。

航宙・駆逐艦 ”KD-361” も航法システムをリンクさせていたので同時に脱出出来るはずだった。

しかし、その作戦はとんでもない所から大きく崩れた。

「済みません! 司令、本艦の質量補正に誤りがありました、今のままではジャンプ不能です!」航宙士が報告した。

<クソッ、”KD-288” から救出した乗組員の合計・体重を加算し忘れたのか!>あまりの初歩的ミスについメルダも
きつい目で航宙士を睨んだ。

「直ぐに全員の体重合計の補正計算をやり直せ! そして一刻も早いジャンプ態勢を作れ!」メルダは航宙士を
叱責するのを後回しだと考えた。

「 ”KD-288” を自沈させた今、航法システムのリンクが使えません! "KD-288” の乗組員体重合計は実測するしか
方法はありません!」航宙士は完全にパニックに陥っていた。

「落ち着け! 艦長、”KD-288” の乗組員の艦内服に付いて居るバイタル・センサーをメイン・コンピューターに接続! 
ゲシュタム・ジャンプに必要なデータを取得しろ!」メルダは執拗なまでに生きる努力を諦め無かった。

 ”KD-361” は ”ゲシュタム・ジャンプーフェーズ3” の指示が ”メラ・ドーラ” から、航法システムのリンクで伝えられていたので自動的に ”ゲシュタム・ジャンプ”に入り、この場から脱出して行った。

但し、その ”ジャンプ” が成功し、通常空間に戻れたか否かはまだ次元断層の ”赤い咢” に捕らわれている
”メラ・ドーラ” には知る由も無かった。

「本艦はゆっくりだが着実に次元断層内に引き込まれつつある。 だが質量補正計算が間に合えば我々は助かる!」
メルダは中央コンピューターの端末モニターに写る目まぐるしく変わる数列を食入る様に見つめた。

「駄目です! 落下速度が加速度的に増えています! 補正計算、間に合いません!」観測士が絶望的な叫びを上げた。

「まだだ、我々はまだ生きている! 諦めるのはまだだ!」メルダは ”ヤマトのオキタ”なら発っしたであろう、言葉を
全乗組員に訴えた。

<あの ”漢” はこんな ”恐怖” を全て呑み込んで ”ヤマト” を率いていたのか・・・それが判っただけでも満足だ・・・。>
メルダは心の内に ”敗北” を認めようとしている自分がいる事に気が付き自責の念に駆られた。

「通信士! 先程 "放送” した ”次元断層・発生の警告” を再度 "放送” しろ!早く!」メルダはクリフ・ラッド中尉の
進言した 古の”星の海往く船乗りの約定” に再度賭けてみるつもりなのだ。

「落下加速度、本艦の補助エンジン加速度の1.5倍を超えました! どんどん増えます! もう駄目です!」航法士が
舵輪から手を離し顔を手で覆ってその場に崩れ落ちた。

ガラガラと空回りする舵輪、しかし、それをしっかり掴み、空回りを止めた者がいた、艦長だった。

彼女はメルダを肩越しに振り返ると微笑んで見せた。

<地獄の底まで付き合ってくれるのだな、メッキラ大尉・・・。有難う。>メルダも無言で頷いた。

火器管制席にメルダが目をやるとラッド中尉も穏やかな顔でコンソールを見つめていた。

<私は部下に恵まれた・・・。 みんな、有難う!>メルダは声には出さなかったが最後まで自分に従ってくれた
乗組員・全員に感謝した。

次第に失速し、面舵を切る ”メラ・ドーラ” 、加速度的に落下速度を増して行く。

<いよいよ最後か・・・。>メルダは言葉には出さなかったが心の中では覚悟を決めていた。

その時である、 ”メラ・ドーラ” は大きな衝撃に見舞われ、艦橋に立って指揮していたメルダは床に叩き付けられた。

しかし、その衝撃は一瞬で収まり、艦橋スタッフ、特にメルダやメッキラ艦長の様に立って任務を遂行する者達は床に投げ出された身体を起して姿勢を整えた。

「艦長! 本艦の落下速度が殆ど ”0” に成っています!」航法士が報告した。

「 ”牽引ビーム” です。本艦に向けて ”牽引ビーム” が照射されています!」探査主任が驚くべき報告をした。

<馬鹿な!? 今の本艦に ”牽引ビーム” を届かせるには自艦も ”次元断層の裂け目” に落ち込む位、深く降りなければ
ならないぞ! 一体誰が・・・。>メルダはあまりの事に頭が混乱していた。

「通信が入っています!」通信士が報告した。

< ”KD-361” め、再び戻って来よったか?>メルダは眉を曇らせた。

しかし艦橋の大スクリーンに写し出されたのはガミラス人では無かった。

<あの肌の色は ”ガトランティス” !>メルダはあの ”約定”が本当に為された事に驚きを感じた。
e0266858_09470796.jpg
「我が名は ”テレサ・テレザート”、古の ”星の海往く船乗りの約定” に基づき、救援に参った。」その ”ガトランティス人” はまだ幼い少女だったがその風格はまるで女王の様だとメルダは感じた。


                                         189. ”大義”の”甲冑(よろい)” ー(7) → この項・続く
[PR]
by YAMATOSS992 | 2015-07-18 21:00 | ヤマト2199 挿話 | Comments(3)
Commented by 古世人 at 2015-07-24 18:30 x
お久しぶりです。部活動の大会等でしばらく閲覧しておらず、先生の執筆再開にも気付きませんでした。すみません。さて、遂にガミラス-ガトランティス共同戦線成立(しかもまさかのお嬢様同士(笑))ですね。しかし、戦争状態の双方の星にとんだ暴君がいたものですね(汗)。ところで、野暮な質問ですが、この話の時系列はどの辺りですか?
Commented by YAMATOSS992 at 2015-07-24 19:45
> 古世人さん
本当にご心配をお掛けして済みませんでした。

>しかもまさかのお嬢様同士の共闘・・・。
これは両者が共有出来る接点、それも相当に大きな物となると「ヤマト」以外に考えられず、
そうなるとヤマト本編ではガミラス側はメルダ・ディッツ、2199挿話では ”やって来たのはお姫さま” で
テレサ・テレザート(レティファン・クエシェザード姫)とせざるを得なかったと言うのが本音です。
ただ ”大義の甲冑(よろい)” ではテレサと ”サーベラー・大帝” との相克がテーマですのでテレサは
外せません。 ではメルダは・・・。この辺りの仕込みが旨くいくかどうかお楽しみに!
Commented by YAMATOSS992 at 2015-07-24 20:02
>この話の時系列はどのあたり・・・?
”終わりなき戦い” >(銀河系辺境宙域から三ヶ月後 ”やって来たのはお姫さま”
>(直後)”大義の甲冑(よろい)” の順番に成ります。
”終わりなき戦い” から ”やって来たのはお姫さま” の間が大きく空いているのは戦死者の数を少しでも減らすためと古代戦術長に一時退場して貰うためです。(理由は分かりますね?)