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宇宙戦艦ヤマト前史

yamato2199.exblog.jp

宇宙戦艦ヤマト登場前の地球防衛軍の苦闘を描きます。

191. ”大義”の”甲冑(よろい)” ー(9)

 「済まぬな、メルダ・・・。今の航宙艦隊の事情では新型艦は前線から外せんのだ。」ガル・ディッツ提督は娘である
メルダに都合を付ける様に頼まれた航宙戦艦のデータを示した。
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「これは・・・。二等級の戦艦ですが、一等航宙戦艦 "ハイゼラード級" のベースになった名鑑、ガイデロール級では
ありませんか!」メルダ・ディッツ中佐は父の腕に抱きついた。

「この艦ならユリーシャ様の皇室・巡航戦艦 "アヲ・スイショウⅡ(ア・ルー)" と同様な改装が施せます!」

「おおっ、お前もユリーシャ様の慧眼に目覚めたか!」ガルは娘の成長を素直に喜んだ。

「はい、巡洋艦は速度では無く、航続距離に勝れた艦、駆逐艦は攻撃力は勿論、どんな宇宙気象でも戦力を
発揮出来る艦、そして戦艦は攻撃力より防御力を重視すべきなのです。」メルダはかつて父に言われた言葉を返した。

「何故そう考える?」父の顔から提督の顔に戻ったガル・ディッツはメルダの真意を確かめたかった。
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<単なるユリーシャ様の改装の模倣か、用法研究の成果による改装か、最後に確かめねば貴重な "艦と乗員" を
預けられん!>提督はメルダの答えを待った。

「提督、それは自艦が二等級でも絶対的な防御力さえ持っていれば相手が一等級の戦艦でもその攻撃力を恐れる
必要はありません。

そしてこちらの攻撃力が駆逐艦級、それも後部砲塔の中口径砲でも至近距離まで近づければ、相手の装甲を貫き
戦闘力を奪う事も可能です。」メルダは迷う事無く明確に答えた。

「ですから主砲塔は最前部の一基に絞り、前方を向いている魚雷発射管も底部の六基を除き全部撤去します。 
まぁ、外観上あまり差があると敵に付け込まれますので外観上は装備している様に装いますが・・・。」メルダは更に続けた。

「肝心な防御力はどうする? 皇室巡航戦艦はクリピテラ級二等級航宙駆逐艦の機関を三基装備して強力な
"ゲシュタム・フィールド" を発生させる事が可能だが、それはユリーシャ様だから都合を付けたまでの事、お前にまで
恩恵は与えられんぞ!」娘の用兵家としての素養に舌を巻いたディッツだったが、少し意地悪をしたく成ったのだ。

「構いません、私は必要な部品が沢山ある所を知っていますから問題ありません。」メルダは提督の思いも依らない
回答をした。
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「それはどこだ?」ガル・ディッツ提督は厳しい目でメルダを見つめたが彼女は応え無かった。

しかし、彼女は心なしか微笑んでいる様に見えた。

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「いやはや、どれ程の艦が沈んだのですか?」ルルダ・メッキラ大尉はゲシュタム・ジャンプ明けの空間に広がった
驚くべき光景に目を見張った。

「約1万隻・・・。いや帝星に帰還で来た艦艇が約3千隻いたから、この残骸は7千隻分のものだ。」メルダはバラン星に
あったゲート・コントロール・システムの爆発とそれを引き起こしたヤマトの波動砲の威力に改めて恐怖を感じた。
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「さて、それでは主機関が無事な艦など残っているか、妖しいですね。」メッキラ大尉はこれからメルダ中佐が行おうと
しているサルベージ作業の困難さを思うとつい心が暗くなった。

「でもないさ、爆発するバラン星から退避しようとして間に合わなかった艦の主機関は全損と考えるべきだが、脱出が
大幅に遅れ、艦首をバラン星に向けたまま大破した艦はその強固な前面装甲で後部にある主機関を守ってくれた
可能性が高い、7千隻だぞ、7千隻、そんな艦が3隻位残っているだろう。」メルダは相変わらず楽観的だった。

「さぁ、サルベージ作業を開始しろ! 目的はクリピテラ級航宙駆逐艦の主機関を3基回収する事だ、作業かかれ!」
メルダの命令にガイペロン型多層空母の大容積を利用した高収容能力を持つ作業艦 "ガルン・バシュケ" は
搭載・探査艇を発進させ、めぼしい残骸を調査し始めた。

しかし、現実はやはりメルダの考えの様に都合良くはいかず、主機関が無償のまま壊れた艦艇は殆ど皆無だった。

<仕方ない、無事な部品だけ回収してクリピテラ級の主機関を再構成しよう。>探査艇の中で技術士官、
オルト・シーンブ少尉は方針の切り替えをメルダに具申した。

しかし、それでもクリピテラ級の主機関は2基しか組み上がらなかった。

それほどバラン星のゲート・コントロール・システムの破壊エネルギーは強大だったのだ。

メルダが報告を聞いて困惑しているとかつての部下、クリフ・ラッド大尉が艦橋に入って来た。
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「メルダ司令、お久しぶりです。」ラッド大尉はメルダの旗艦、"メラ・ドーラ" の火器管制主任だった男だ。

「おお、クリフ、次元断層で遭難しかかって以来だな! 懐かしいぞ!」メルダもかつての部下を暖かく迎えた。

「で、今度は何だ? また親父に言われてじゃじゃ馬の御目付か?」

彼がメルダの陰の補佐役なのは彼女には秘密だったのだが感の良いメルダは直ぐに彼の役目を見抜いていた。

いきなりカウンター・パンチを喰らったクリフ・ラッド大尉はバツの悪そうな顔をしながら本題に入った。

「司令、実は妹君から託された "土産" をお持ちしました。」ラッド大尉はメルダの思いも依らない事を言った。

「妹? 何の冗談だ、私はガル・ディッツ提督の一人娘だが・・・。」メルダは対処に困った。

「いえ、実在して居られます。今はさる高貴なお方の懐刀として常時仕えて居られるのでディッツ家を離れて暮らさざるを
得なかったのです。」ラッド大尉は真剣だった。
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<そうだとしても私には妹の記憶が無い・・・。何故だ! どんな任務を負っているのだ!>何か禍々しいものが心の中で
蠢くのをメルダは感じた。

しかし、その妹からの "土産" とは何か? それは大いに気になるメルダだった。

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「これがあの戦艦の改装後の姿なのかね? 何も変わっていない様に見えるが・・・・」メルダに見せられたスクリーンに
映っているのは当たり前の "ガイデロール級戦艦" だとしかディッツには見えなかった。
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「違いがお分かりに成りませんか、提督。」メルダはスクリーンを指差して微笑んだ。
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この艦がガミラスの戦術に革命をもたらし、軍のドクトリンにまで影響を与えるものになるとは開発したメルダ自身も
気付いていなかった。




                                       192. ”大義”の”甲冑(よろい)” ー(10) → この項・続く

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by YAMATOSS992 | 2016-01-16 21:00 | ヤマト2199 挿話 | Comments(0)