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宇宙戦艦ヤマト前史

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宇宙戦艦ヤマト登場前の地球防衛軍の苦闘を描きます。

192. ”大義”の”甲冑(よろい)” ー(10)     

 イオン嵐を乗り切ったヨダム・ナーカスはガミラスの支配宙域に入る大分手前で止まり、艦隊の編成を単縦陣から大きく
変えさせた。

その陣形は "鶴翼" 、古くからどの民族、星系国家も用いる古典的な陣形でそこには何の新しさも感じ取れなかったが、
彼が取らせた隊形は通常の鶴翼陣より横一直線の横陣に近い浅いV字形だった。

<ガミラスの青虫共め、今度こそ貴様達の前線を中央突破して見せてくれるわ!> "刃雷" と仇名される
ヨダム・ナーカスはガトランティス・ガミラス方面攻略軍の一艦隊を指揮していた。
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小マゼラン雲の一角、アムート星系からダガン星系を結ぶ線は他の星系がイオン嵐吹きすさぶ難所であるにも
関わらず嘘の様に穏やかな宙域だ。

しかし、これはガミラスの作り出した "罠" だった。

本来、アムート星系からダガン星系を結ぶ一線にもイオン嵐が吹きすさんでいた。

ガミラス大本営ではこれを天然の要害と考える事も出来たのだが、強者がこれを乗り越える事を危惧した大本営は業と
イオン嵐の少ない宙域を作り出し、そこに侵入艦隊を誘導、出口で待ち構えたガミラス艦隊群に依って撃滅するのが
常だった。
(グリーゼ581で主星にヤマトを追いつめた技術はこれの転用。)

しかし、ガトランティスにも "雷鳴" のゴラン・ダガームの様な知恵無し者ばかりでは無く、これが罠である事を見破り、
" 平穏な回廊 " を通らずイオン嵐を突破しようと考える強者も少なからずいた。

残念ながら彼等の大半はイオン嵐に呑まれたが "刃雷" のヨダム・ナーカスはじっくりと考え、イオン嵐は強烈に
吹いてはいるが、その強度が一定の場所を突き止め、そこを一気に突破し艦隊を一隻も失わずにイオン嵐を
突き抜ける事に成功したのだった。

しかもヨダム・ナーカスは更にこの侵攻艦隊を特別な艦で統一していた。

彼が今回使った艦は他の部族と同じラスコー級巡洋艦であったが旧式な重装備型であった。
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何故、彼が重装備故に機動力に劣り、兵装配備の非合理さから重装備の割に火力の集中に難がある旧型を
選んだのか?

新型艦は輪動砲塔の数を減らしつつも、兵装配置を合理化、軽量化に成功して旧型とは比較に成らない機動性を
獲得していた。

だが、その新型艦を多数保有していた "雷鳴" のゴラン・ダガームの艦隊もガミラス艦隊とヤマッテの共闘に敗れた。
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そして旧型艦はドメル将軍の指揮する第6空間機甲師団に手も無く捻られ全滅しているのに、である。
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だが、ヨダム・ナーカスにとって旧型艦の重装備ゆえの機動力の悪さはイオン嵐の中では安定性の確保に繋がり、
イオン嵐の防壁を突破に成功したのだった。

また彼は通常ガトランティス艦隊が多用する軽快艦艇、ククルカン級の駆逐艦を同伴させて居なかった。
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先のイオン嵐突破時、主力の巡洋艦が辛うじて安定を保てる程の荒れた宙域では質量の少ない駆逐艦ではその安定を
保てず迷走する事が危惧されたからだ。

「 "刃雷" の戦士よ。イオン嵐の正面突破見事であった。 しかし、駆逐艦が一隻も居ない旧型ラスコー級巡洋艦隊で
ガミラスの強固な防壁をどうやって打ち破るつもりか、考えを聞かせい。」シファル・サーベラーは立体通信でナーカスを
問い質した。

「ははぁ、旧式艦ゆえの不利は承知しております。 後は初志貫徹の意志あるのみで御座います。」ナーカスは愚直な
応えを返した。

それを聞いたサーベラーは<この男もか!>と言う侮蔑の眼差しをナーカスに送ると「吉報を待つ!」とだけ告げて
通信を切った。

<フン!大帝の雌犬め!貴様などに我等が持つ秘儀 "自在雷" の秘密は簡単に渡してたまるか!>ナーカスもまた
テレサの故郷、シェザード族と同じく表面上は大帝に従っているものの、心から忠誠を誓って仕えている訳では
無いのだ。

こうした内情の不統一がガトランティスのいや、"大帝" の懸案事項だった。

これを緩和する為の "策" の目玉として一大勢力にあり空間跳躍の技に勝れるセジャード族の姫 、
"レティファン・クエセジャード" を "大帝" の妾籍に向かい入れ婚姻関係を持って中央勢力の拡大を目論んだ
サーベラー丞相であったのだが、肝心の "姫" が "真の名" に目覚め "使命の神託" を得て "テレサ・テレザート" と
名乗り、セジャード族の元を離れ、新たな新興勢力として台頭して来たとあっては何もかもぶち壊しになってしまった。

一度は "姫" を"大帝とサーベラー" の本拠まで引き摺り出す事に成功したが姫もさるもの、個人用空間跳躍という
サーベラーの信じられない技で彼等の手をすり抜けていった。

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 目の前に広がる宇宙空間は平穏で今までイオン嵐に揉まれた続けた航行とはうって変わった平穏な航行だった。

しかし、ヨダム・ナーカスは気を緩めなかった、< 一応 ガミラスの裏はかいたつもりだが、こんな巧妙な " 罠 " を
張って来る敵の事だ自らの策が破れる事態も考慮していると考えるべきだ。>と信じる彼は次なる策を用意する様に部下に命じた。

「ナーカス様、全艦 "自在雷" 使用可能になりました。」副官が報告する。

「よし、分かった、全艦 "自在雷" 使用準備態勢のまま前進だ!」ナーカスは率いている艦隊十隻に命令を徹底する様に
命じた。

「前方一光秒の空間に次々にと所属不明艦が "空間跳躍" して来ます。現在その数二十隻、こちらの倍の数です!」
探知主任が悲鳴を上げた。

< 一光秒か、"自在雷" が使用出来るギリギリの距離だ。 だが今目前に居る敵がガミラスならその優れた機動性で
我等を押し包んで攻撃して来る。敵が態勢を整える前に先制攻撃を掛けるべきだ。>ナーカスはそれまでの
対ガミラス戦を良く研究していた。

「 敵が態勢を整える前に "自在雷" による攻撃を掛ける! 全艦、後部砲塔の "自在雷" を起動、前方砲塔はそのまま
直接目標を狙え、後部砲塔は "自在雷" を使った間接射撃で火線を集中して敵を殲滅する!」ナーカスの命令は簡潔だった。

しかし、この日の為に猛訓練を積んで来た部下達にはそれで充分だった。

旗艦ルード・ナルドは勿論、旗下の九隻も殆ど同時に後部輪動砲塔の中央に空いた穴から穴より少し大きめの
エネルギー球を吐き出し、その級は母艦の少し上で止まったまま、母艦と同方向に動き始めた。

旧ラスコー級は前方に五基の輪動砲塔を集中出来るが後部四基は射撃出来ない。

また輪動砲塔の特性上、一基の砲塔が一度に構成出来る火線が一本なのも欠点だ。

しかし、連射は出来るのでその欠点は大分少なくなるが、それでもやはり多連装砲には同等か、少し劣る物でしか無い。

だが "自在球" を使えば輪動砲塔の欠点が無くなる訳では無いが普通は使えない後部砲塔のビームも前方に指向
出来る様になる、これでどの方向にも八門の火線を集中出来る様になったのだ。
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「 "自在球" 所定位置に配置完了!」火器管制士が主任に報告する。

「よし、全主砲発砲せよ!」火器管制主任はナーカスの司令を待たず、発砲命令を下した。





                                       193. ”大義”の”甲冑(よろい)” ー(11) → この項・続く
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by YAMATOSS992 | 2016-01-23 21:00 | ヤマト2199 挿話 | Comments(0)