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宇宙戦艦ヤマト前史

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宇宙戦艦ヤマト登場前の地球防衛軍の苦闘を描きます。

193. ”大義”の”甲冑(よろい)” ー(11)

ガミラス第七空間機甲師団を率いて小マゼラン雲の入り口に設定された "殲滅回廊" の出口を固めていた
デーリアン少将は自分の兵力に絶対の自信を持っていたが、彼はかつてドメル司令の元で戦った経験があり、
その時、一番の怖いのは敵そのものでは無く、敵を侮る "慢心" だと言う事を徹底的に叩き込まれていた。
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だから彼は普通は敵が越えられないと考えられる多数の縮退星で構成される幾つかの星団の周りにも小規模の艦隊を
張り付けていた。

小規模の艦隊と言っても彼がガトランティスを侮っていた訳では無く、首尾すべき個所が多く一か所に廻せる艦の数が
二十隻前後と少なくなってしまったのだった。

これは地球の艦隊運用では充分、大艦隊なのだがガミラスやガトランティスの様な星間国家の運用方法では小艦隊に
過ぎないのだ。

<第三監視艦隊からの連絡が途絶えて一時間か・・・。 まさか侵入艦隊がイオン嵐の宙域を通過出来たとは
思えないが・・・。>デーリアン少将は監視艦隊が全滅した事など思いも依らなかったので再度通信を試みた。

しかし、応えが有ろうはずも無く、クリピテラ級航宙駆逐艦二隻からなる一個戦隊を偵察の為に当該宙域へ派遣した。

そして彼等も「ガトランティス艦隊の侵入を確認!・・・。」と言う通信を最後に連絡が着かなくなってしまった。

デーリアン少将はこれでガトランティス艦隊の侵入を確心、直ぐに全艦隊を持ってこれを撃滅したい所であったが
"回廊" の首尾を完全に外す訳には行かなかった。

彼はこれがガトランティスの陽動作戦だと考えたのだ。

彼は、ガト軍は錬度の高い小艦隊にイオン嵐の壁を突破させ、ガミラスの監視艦隊を叩く、慌てたガミラス艦隊は
"回廊" の守備艦隊を外してガト軍小艦隊の迎撃向かう、その隙にガト軍本体が "回廊" を抜け、後からガミラス艦隊に
襲い掛かる作戦と踏んだのだ。

< 相手は囮とはいえ、こちらの監視艦隊と増援戦隊を一撃で葬った彼等は強力な艦隊だ。
再び小艦隊を送っては強大な敵に戦力を逐次投入する愚を犯しかねない。
かといって "回廊" の守備も外せない・・・。>

戦争で一番やってはいけないのは戦力の逐次投入である、強力な敵に少ない兵力を向かわせ敗北する、
それを知った司令部は先に投入したものより多い兵力を投入するがそれでも足らず再び全滅する、こうして戦局は
泥沼化し、混迷の度を深めてゆくのである。

デーリアン少将は事の重大さにガミラス大本営に事の次第を報告し、指示を仰ぐ事にした。

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「ガミラスの青虫共、脆かったですね。 今まで敵わなかったのが嘘のようです。」副官がナーカスに喜びを伝えた。

「ああ・・・確かに脆かったな、脆過ぎた位だ。 敵も決して錬度が低かった様には見えなかったが・・・。」ナーカスは副官に
返事をしている様で独り言を言っている様にも見えた。

< "自在雷" これはかなり昔に封印された技術のらしい。 
古い技術だからその効果にはあまり期待して居なかったのだが、とんでもない威力を持っていた。
何故、先祖は "自在雷" を封印する必要があったのだろう?>ナーカスは頭を巡らした。

"自在雷" 、それは旧ラスコー級の主砲、輪動砲塔の真ん中に空いている穴からエネルギー球を発射し、母艦任意の
位置に配置、輪動砲が発射するビームをまるでビリヤードの様に弾き、その進路を変える物だった。
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これによりガミラスの皇室・ヨットが持つ "光の花園" と同等の効果をもたらし、全主砲の死角を無くし、その火力を一点集中出来るのだ。

ただ、ゲシュタム・フィールドの技術を持たないガトランティスは反射板誘導弾では無く、エネルギー球とビームの玉突き効果に依ってビームを屈曲させていたので第一撃を終わると再攻撃の為にエネルギー球を配置し直さなければならず、結果、発射速度に劣ったのだが、それは砲塔の交互射撃である程度補いがつき、大きな欠点とはならなかった。

ナーカスが理解しかねたのはこの様に有用な技術を封印していた先祖の考え方だった。

大帝の下で侵略と略奪に明け暮れている今のガトランティス軍人達だったらこの技術を使ってガミラスも忽ち飲み込んでいただろう。

しかし、祖先達は自軍が不利になるのを承知で "自在雷" を封印した、何故か・・・?

その理由は電撃の様にナーカスの心を心を打った。

<この技術を侵略に使えば戦闘に勝てはするだろうが、奪うべき敵の資源や財産までも破壊してしまうのか? 
それを防ぐ為の封印だったのか?だったら、俺は "禁断の箱" の蓋を開けてしまったのか?>ナーカスはこの封印の
意味を深く考え始めた。

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 大帝の "謁見の間" から "輪廻の雷" の空間跳躍能力を使って脱出したテレサ・テレザートは今、旗艦の機関室の
片隅でガルダ・ドガーラが待つ駆逐艦指令室に "輪廻の雷" による "回廊" を形成すべく奮闘していた。

しかし、何度 空間跳躍の入り口を開いても冷たい宇宙空間が開けているばかりで待機しているはずのドガーラが
指揮する駆逐艦の艦内には届かなかった。

<謁見の間を脱出するのに時間が掛かり過ぎた、ドガーラが計画通り脱出してもやむをえない・・・か。>テレサは
標準座標をドガーラの駆逐艦に置いていたので現地点を新たな標準座標として設定、大帝の旗艦の中を跳び廻って
次に打つ一手の材料を集めた。

その中の一つにテレサは興味を魅かれた。

それはサーベラーとナーカスの通信の内容からたまたま入手出来た情報だった。
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<旧型ラスコー級巡洋艦十隻の艦隊でイオン嵐を縦断、アムート星系からダガン星系を結ぶ宙域に網を張っている
ガミラス艦隊を引き剥がして本来、ガトランティス艦隊・本体が通りたい宙域を押さえているガミラス艦の数を減らそうと
言うのか・・・。
何と大胆な作戦を立てる漢だ、ヨダム・ナーカスと言ったか、この漢、是非とも欲しい!>テレサはナーカスの属する
ラウス族が秘密兵器 "自在雷" を操る事はまだ知らなかった。

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 ここはガミラス皇星、皇都 "バレラス" 、郊外にある乾ドックの一つにメルダ・ディッツが指揮する改・ガイデロール級
航宙・指揮戦艦が収まっていた。

ドック全体を見渡せる張り出しデッキの上でガル・ディッツ提督は手摺を握りつつ、身を乗り出しながら言った。

「見事な仕上がり・・・と言って良いのかな? 儂にはまだ改装部分が殆ど解らんぞ・・・?」
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「それでなくては困ります。 この艦はいくら防御力を格段に上げてあるとは言え、敵艦隊の付近に留まり続けて
一撃離脱を掛ける配下の突撃戦隊を指揮するのですから敵には普通の旧式なガイデロール級だと思い込んで油断して
もらう必要があります。」メルダが何度目か分からない説明をした。

「艦の後部しか赤く塗っていないのは間に合わなかったからか? それとも節約か?」
提督は如何でも良い質問をした。

「これも用兵上の必要事項です。 前は敵からはガイデロールと区別させない為に標準色を、
味方には指揮・戦艦である事を判り易くする為に後部を赤色に塗っているのです。」
メルダは<この親父、呆けたんじゃ無いのか?>と本気で心配に成った。

「配下の突撃艦隊の訓練状況はどうか? お前の事だ、旗艦が就航すると同時に出撃出来る様、準備をしておるの
じゃろう?」水面下で進めていた配下になる予定の艦艇に前倒しで猛訓練を課していたメルダはそれを黙って承認して
くれた父の想いに是非とも応えなければならないと身を引き締め敬礼した。

「デーリアン少将は知・力合わせ持った名将だが、援軍として差し向けてやれるのはお前の艦隊しか無いのだ。 
新艦隊の初陣としてはかなり厳しい戦いになると思うがお前の働きに期待しておるぞ!」ディッツ提督も娘の肩に
手を置き激励した。

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 メラ・ドーラⅡ(ア・ルー)がバレラスを離れ、重力制御力場の力でぐんぐん上昇して行く、その艦橋で大佐に昇進させられたメルダが居心地悪そうに立っていた。

<如何に旧式とはいえ、戦艦の艦長が中佐では収まりがつかん! これも体制だ、我慢しろ!・・・か。 全く階級章で
戦闘が出来れば苦労は無い!>メルダが困惑していると通信士が秘匿回線の通信が届いた旨伝えた。

秘匿回線、それは誰から、或いは何処からの通信であろうか?

ディッツ提督なら別に普通回線で何の不都合も無く連絡してくる、他にこの秘匿回線の事を知っているのはガミラス皇室それもユリーシャ・ガミラシアだけだった。

艦長室に戻るとメルダの目の前にあるモニターにユリーシャの姿が映し出された。
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「ルード・ガミラシア(高貴なるガミラス皇女)、御見送り恐縮至極で御座います。」メルダは片膝を着き、両腕を胸の前で
合わせ、深く頭を垂れる礼を取った。

「また闘いに行くのですね、現実は解っているのですがやはり悲しいです。」ユリーシャ・ガミラシアはガミラス皇室・皇女と言う立場になって皇女らしい装いをしていた。

「はっ、これも運命(さだめ)、この身はユリーシャ様の楯となる所存です!」メルダは大望を言った。

「私の事など如何でも良い! 臣民を守って! 兵士を死なせないで!」ユリーシャはメルダに懇願した。

「勿論、我々は臣民を守る為に戦うのです。そして兵士の損害も最小に成る様、努力します。 しかし、相手が強ければ
こちらも無償と言う訳には参りません、御理解下さい。」メルダは戦士としての立場を貫こうとしたが、ユリーシャはそれを
許さなかった。

「貴方達はどうして "外交" と言うと戦闘ばかりに頼るの! 話し合いの余地は本当に無いの!」ユリーシャはメルダの
最も苦手な "政治" をこの戦いに持ち込もうとしていた。

「まさか "外交官" を連れて行けとおっしゃるのですか! 危険すぎます! 相手は蛮族です!」メルダはユリーシャが
"外交官" を付け、作戦行動を制限される事を恐れた。

「あなたに付けてあげられる程、外交官は余っていないわ、それに特別あなたに外交官は必要ないでしょうに。」
ユリーシャは小狡そうな笑みを浮かべた。
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「はぁ、どういう事です! 私は外交官用の学習・訓練は受けて居りません!」メルダが癇癪を起しそうなのを止めて
ユリーシャが続けた。

「地球とガミラス、その戦争の最悪の状況を改善し、ついにはデスラーの暴走から滅ぼされかかっていたバレラスの
臣民を地球のヤマトが救ってくれた。
更には異空間に閉じ込められたガミラス艦を兵ごと救い出す作戦をガミラス・ヤマトの共同戦線で実行、成功させた。
これらの業績はすべてあなたが次元断層内でヤマトへ丸腰でたった一人脱出の為の共闘作戦を提示する為に向かった
事に始まるのよ、充分な実績では無くて?」メルダは次元断層での出来事は全て秘密にしていた。

<あれはヤマトにコダイがいたからだ。 他の者では共闘は失敗したかもしれない・・・。>

<それにこの件については父、ガル・ディッツに対しても私の口からは一言も話してはいない。 
それを何故、ユリーシャ様は知っている・・・。>メルダは困惑を隠せなかった。

「それとあなたにはガトランティスに強力な伝手があるでしょ。」ユリーシャは事も無げに言った。

「何隻もの配下を持ち、ガトランティスでも数少ない秘密兵器を積んだ特殊艦を持っている・・・。 
彼女の名は "テレサ・テレザート" と言ったかしら。
あなたの艦隊は彼女の艦隊に次元断層から救いだされたのよね?」ユリーシャは再びメルダが上層部へ報告していない秘密事項に触れた。

< ・・・ >ユリーシャの告げた言葉にメルダの思考は停止してしまった。

「ふふん、驚いた? あなたの心の中には私の密偵がいるの、隠し事は一切無駄よ。」

<イルダ・・・。その密偵、私の記憶に無い私の妹なのだろうか?>

メルダはユリーシャはある意味、デスラーより恐ろしい支配者だと思った。


                                     194. ”大義”の”甲冑(よろい)” ー(12) → この項・続く

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by YAMATOSS992 | 2016-01-30 21:00 | ヤマト2199 挿話 | Comments(0)