ブログトップ

宇宙戦艦ヤマト前史

yamato2199.exblog.jp

宇宙戦艦ヤマト登場前の地球防衛軍の苦闘を描きます。

197. ”大義”の”甲冑(よろい)” ー(15)

 <皆、生命の無駄使いをしおって・・・。>テレサは種族の垣根を越えて自分を支えてくれる人々がこんなにも居る事が
嬉しかった。

「しかし、このままでは行かん! この馬鹿げた戦いを終わらせねばならない!」テレサはキッと表情を引き締めると
"輪廻の雷" を取り出した。

ドガーラはそれを見て驚いた、いや "輪廻の雷" を取り出した事にでは無い、彼が驚いたのはその数だった。

その数は四つ、テレサはその内の三つを小さく縮めると指輪の様に左右の指にはめた。

そうすると、"輪廻の雷" には見えず単なる綺麗な光輝く指輪にしか見えなかった。

テレサは一つ残った "輪廻の雷" を自分がくぐれる大きさに広げると中に身体を押し込もうとした。

「テレサ様、どこへ行かれる御積りですか?」ドガーラはテレサの行動に嫌な予感を持ったのだ。

「決まっておる! この無駄な抗争をやめさせなければならない!」テレサは何を判り切った事を聞く?と言うそぶりを
見せた。

「テレサ様、貴女がここから退去して頂ければこの戦いは自ずと収まります。
彼等は貴女の脱出の為に奮闘しているのですよ!」テレサの身勝手がドガーラは許せなかった。

「妾がここを黙って立ち去れば確かに今行われている戦闘は収まるかもしれない。 
しかし、ガミラスの方はともかく、そちやナーカスは大帝、いやサーベラーの詮議を受けるだろう、何しろ仇敵ガミラスと
手を組んだのみならず旗艦を合同で攻撃したのだからな。」ドガーラはテレサが一歩先を読んでいる事に驚きを感じた。

「妾はこれより、この艦の艦橋に戻る、そこで大帝と交渉して来る! そちも駆逐艦で早々に退避せい!」
テレサの行動は大胆だった。

二の句が継げずに立ち尽くすドガーラを尻目にテレサは "輪廻の雷" をくぐった、その時であるドガーラも床を
蹴って跳び 、"輪廻の雷" が閉じ切る前に自分も "輪廻の雷" が作る空間跳躍回廊に飛び込み消えて行った。

**************************************************

「旗艦の直営艦隊はどうした? 何処で何をしている!」サーベラーは艦橋に怒鳴り込んで来た。

「はぁ、それが一隻も連絡が付かない有様でして後方に待機している船団護衛艦隊をこちらに廻す様、手配中です。」
艦長がこの状況にも冷静さを失わない態度でサーベラーに応えた。

「致し方無い、早うせい!」艦長の平静な有様にサーベラーは気押されたが、それを周囲に知られたく無かったので
自らも平静」を装った。

「慌てるで無い! ゆっくりで良い、ゆっくりでな。」艦橋に艦長達の知らない声が広がった。
e0266858_20420518.png
<テレサ・テレザート、まだ艦内に残っていたのか・・・。>艦橋の中が騒然とする中、サーベラーはその声の主が誰だか
解った。

「姿を現せ! 卑怯だぞ!」サーベラーは大声で呼ばわった。

「そんな大声を出しては喉を痛めるぞ、サーベラー殿、場所を変えよう、ゆっくり話せる場所でな。」テレサは抜け目無く
サーベラーを一人にする事を画策した。

「 "謁見の間" が良かろう、ついて参れ、どうせ大帝陛下にも話を聞いて頂く積りであろう?」サーベラーが再び罠に誘った。

「宜しいですわ。 大帝の御前で話合い、同意致します。」テレサは殊勝に応えたが、彼女は油断なく目配せをして
ドガーラに斥候を命じていた。

ドガーラはその意を無言で酌むと影の様にその場から走り去って行った。

**************************************************

「こちらが、兵を引く条件は二つ、一つ目は今回、妾の救出に尽力したガトランティス人とその部族の詮議を行わない事。
もう一つはガミラスの支配圏への侵攻を止める事だけです。」テレサは大帝がとても呑むとは思われない条件を
突付けた。

「何を馬鹿な、お前とお前の仲間に残されているのは無条件降伏の道だけじゃ!
この旗艦たる超巨大戦艦に僅かばかりの傷を負わせたからと言って調子に乗るで無い!」サーベラーはテレサの
尊大な態度が許せなかった。

サーベラーは衛兵を呼び、テレサを取り押さえようとしたが、何か様子がおかしいのに気が付いた。

"謁見の間" を守る衛兵の気配が無いのである、テレサが身の安全を図る為に何かしたとしか思えなかった。

「だらしない者共だ。たった一人の間者に惑わされて衛兵共は皆倒された。サーベラーこれはお前の失態だぞ」尊大な
声が闇の奥から響いて来た。

「ははぁ、大帝陛下、お叱りは後で受け賜ります。ですが今はテレサ・テレザートとの交渉中です。今しばらくの御容赦を
賜りたく存じます。」サーベラーは冷や汗をかいていた。

大帝は衛兵と間者の闘争を知っていた、それは彼がこの部屋に居た事を意味する。

この部屋は "謁見の間" としての性格上、監視カメラも盗聴器も仕掛けられていない、大帝が闘争を知っていると言う事は彼が直に見聞きしたと言う事だ。

<良く闘争に巻き込まれ無かったものだ。>サーベラーは大帝の胆の太さ鋭敏な判断力に感心した。

**************************************************

「テレサ・テレザートよ、停戦に関するそちらの条件は判った。しかし、別に我が方はそち等と停戦しなければならない
理由を思いつかんのだが・・・。」大帝が尊大に告げた。

「陛下! この様な成り上がり者と言葉を交えては成りませぬ!」サーベラーは自分抜きで交渉が進むのが
許せなかった。

「良いではないか、それにここにおわすはセジャード族、第二王女レティファン・クエシャザードその人だぞ、決して
下賤の者では無い、十分立派にお前の代わりは務まると儂は考えて居るぞ」そう言って大帝はサーベラーの貌を
青ざめさせた。
e0266858_21203515.jpg
<陛下、私を捨てるとおっしゃるか!>サーベラーは今まで大帝に尽くして来た日々は何だったのかと悔し涙を流した。

「案ずる事は無い!サーベラー殿、妾は大帝の下僕になぞ成りはしない。」テレサは手にした "輪廻の雷" を頭上高く
放り投げた。

「サーベラー殿、本艦の左舷、前方よりの空間をモニターに映し出されよ!」テレサの指示に誇りを傷つけられた
サーベラーは何か言い返そうとした。

しかし、大帝は右手を挙げてサーベラーを制止しテレサに許可を与えた。

「良い! 面白い余興、楽しみにしておるぞ。」大帝は不敵に笑った。

「ではお言葉のままに!」テレサは左手薬指にはめていた別の "輪廻の雷" を外して先程投擲し空中に浮かんだままの
"輪廻の雷" の中央めがけて放り投げた。

すると後から投擲した "輪廻の雷" は既に空中にあった "輪廻の雷" の中央をくぐり、空間回廊を抜けて先程テレサが
指示した空間に空間跳躍により出現した。

大帝の前、謁見の間の奥にある巨大なスクリーンには小さく光る "輪廻の雷" が確かに映し出されていた。

「何をしようと言うのか? レティファン姫よ。」大帝の言葉にテレサは応えず、スクリーンの真下に移動して膝を着き、
最敬礼をした。

「御覧あれ! 我が力の一端を!」テレサはそう叫ぶと一端、上に挙げた両手を合わせ、次に勢い良く両手を左右に
伸ばした、すると指輪大でしか無かった二つ目の "輪廻の雷" は大きく広がり傍にあったククルカン級駆逐艦の残骸を
包み込んだ。

次の瞬間、猛烈な閃光が走り、その残骸は綺麗さっぱりと消えていた。

「・・・。」あまりの事に大帝もサーベラーも言葉を失った。
e0266858_11064603.jpg
「今の技はどんな目くらましか!説明せい!」サーベラーは恐れを打ち消そうとするかの様に呼ばわった。

「静かにせい! サーベラー、丞相らしくしかとと構えよ!」流石に大帝は落ち着いていた。

「姫、そなたの力は違う物質世界とこの世界の間に回廊を開けるのだな。」大帝は物理学にも堪能だった。

「そうです。 妾の操る "輪廻の雷" は本来この宇宙の中だけで空間跳躍を行う回廊を開く物です。
しかし、ある時偶然に "負の物質界" に回廊が繋がってしまったのです。
妾はその座標を記憶しておき、必要に応じてその世界との間の回廊も開ける様にしたのです。」テレサは言葉を選んで
説明した。

<それはこの超巨大戦艦の中に反物質の奔流を呼び込む事が出来る、と言う事か!>さすがのサーベラーもテレサの
能力に戦慄した。

「大帝陛下、貴方々に取っても停戦した方が良い理由、お判かり頂けたでしょうか?」テレサは自信に溢れた言葉を
告げた。

「小賢しい、その程度の能力、陛下が恐れると思ってか!」再びサーバラーが吠えた。

「確かにこれは堪らんな・・・。しかし、我等もそちらの条件を鵜呑みにする訳にはいかん、こちらにも体面があるのでな。」
大帝はテレサとの交渉に乗って来た。

**************************************************

<これがガトランティスの長が指揮する旗艦だったのか・・・。>メルダ・ディッツはそのあまりにも巨大な艦影に、
今まで闇雲に戦っていた自分達が愚かに思えた。

しかし、テレサ・テレザートはそのガトランティスの長、大帝と交渉して停戦に持ち込んだのだ。

<底の知れないお人だ。>メルダはテレサの実力の強大さを思った。

メルダはテレサの人と成りを、僅かな接触だったとは言え、予め知っていたからこそ、ドガーラの要請により、
ナーカス艦隊との戦闘を即座に止め、テレサ救出作戦に参加したのだ。

しかし、どの様な交渉をしたか解らないがあれ程激しかった超巨大戦艦の反撃は止んでいた。
e0266858_15061609.jpg
そしてメルダやナーカスにも停戦の要請がテレサからの直接連絡で来ていた。

「司令、我々の役目は終わりました。 即時帰還命令をお願いします。」ルルダ・メッキラ艦長が督促した。

「まだだ、この化物の行先を確認しない内は任務は終わったとは言えん!」メルダは大帝を全く信用して居なかった。



                                         198. ”大義”の”甲冑(よろい)” ー(16)→この続く
[PR]
by YAMATOSS992 | 2016-02-27 21:00 | ヤマト2199 挿話 | Comments(0)