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宇宙戦艦ヤマト前史

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宇宙戦艦ヤマト登場前の地球防衛軍の苦闘を描きます。

201. アッカイラ 鮫達の狂宴ー( 2 )

 次元断層内は真空である。 次元潜航艦の中で如何に音を立てようともそれが敵艦に伝わるはずは無いと考えるなら
その者はたちまち魚雷を喰らってしまうであろう。

確かに音そのものは伝わらないが次元潜航している艦が周りの次元断層に与えている微振動が艦内で音を立てる事によって大きく変わり、それが敵艦に探知されてしまうのである。

だから潜艦が無音潜航するのは今も昔も変わらない戦術だった。
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「副長、潜航士官(ダイヴ・オフィサー)、こっちに来てくれ。」フラーケンは次の戦術を今の内に決めておこうと思った。

とはいえ魚雷を使い果たしてしまった今、取れる戦術は一つしか無かった。

 UX-01の主な任務は敵の交通路の破壊、通商破壊戦である。

だから小柄な艦体に不釣り合いな戦艦級の魚雷を多数積んでいる。

しかし、次元潜航艦の数は少なく、相手にすべき敵商船の数は多い。

そこでここぞと思しき宙域に機雷をばら撒く戦術を取る事もある。

もちろん単純な接触型の物では無く、近接信管を備え敵商船が接近したらブースターをふかして懐に飛び込んで行く
短魚雷とでも言うべきものなのだが、たまたまUX-01は今度の作戦時、機雷を積み込んでいたが使う機会が無く、
五基全てがまだ残存していたのである。

「成程、機雷か! これなら機械音を出さずに敵潜に接近出来るやもしれませんね!」フラーケンやラングより二つ下の
潜航士官が感心した。

「ですが、ただ浮上させるだけでは敵艦に当てる事は難しいのではありませんか?」ラング副長が問題点を指摘した。

「ウム、確かにそこがこの戦術の弱点だ。 何時、敵が真上を通るかをどうやって知るか、それさえ出来ればこの戦術は有効なのだが・・・。」フラーケンは腕組みして考えた。

「探知主任、敵潜の位置は掴んでいるか?」ラング副長が敵の位置を確認した。

「駄目です。 敵も音響管制に入っている様で機械音、その他の雑音、一切、聞こえません。」探知主任が絶望的な事を
伝えた。

<音響管制・・・。そうか!>フラーケンは敵の正体に思い当たった。

潜艦の音響管制の考え方は第二次大戦の独海軍Uボートの運用上で完成された。

それは大英帝国の生命線である海上交通路を脅かすものであったが、英国はUボート狩りを駆逐艦だけでなく
護送空母、対潜哨戒機を動員して大々的に行った。

対するUボートは駆逐艦に見つからない様、静粛性を増し、航空機のレーダーに捕まらない様、シュノーケルや
対レーダー電波警報機を備えて極力浮上する事無く作戦出来る様に工夫した。

この様に実戦で鍛え上げられた独のUボートに対し日本の伊号潜水艦は対米作戦の要である漸減作戦の主役としての役割を与えられていたため、水上高速力を求めて機関をフル回転する事にのみ注力し、静粛性はお世辞にも良いとは言えなかった。
(これは大戦中五回行われた潜水艦による遣独使節が二回しか成功しなかった事でも解る。)

フラーケンは敵潜の静粛性に着目した。

もし敵潜の目標が通常宇宙にいる艦艇ならここまで静粛性を求める事は無いだろう。

何故なら幾ら探知されても敵に攻撃手段が無い以上、静粛性はそれほど必要の無い性能なのである。

しかし実際の敵潜は非常に静粛性に優れている、これは敵潜の目標が音響管制に勝れた艦、
即ちガミラスの次元潜航艦だと言う事だ。

「対潜攻撃型の潜艦だと言う事ですか!」ラング副長が驚きの声を上げた。

「上方から接近する小物体が多数あります!」測的手が警告した。

「深々度潜航!」フラーケンが命じた。
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「反対だ!メイン・タンク・ブロー、深度を上げろ!」ラングがフラーケンの頭越しに命令した。

潜航士官はどちらの命令に従ったらよいか、戸惑った。

しかし、フラーケンはただ頷いて見せた、それはラングの指揮を優先しろとの指示だった。

UX-01は浮上を始めた、そして今までいた深度とそれ以下の深度に爆轟が渦巻き、もし今までの深度を維持していたら、更に深度を下げていたらどうなっていたか皆が背筋を寒くした。

確かに水中だったらこの局面で深度を上げるのは自殺行為であったが次元断層中でも真空で在る事は変わらず、
深度を上げても下げても敵爆雷から艦を守る事は変わらなかったが敵潜はUX-01が深度を下げる事を予測、次発の
爆雷の爆発深度を下げて設定していたのだ。

「艦長の見立て通り、相手は対次元潜航艦・攻撃型次元潜航艦ですね。」ラング副長が感心して見せた。

「どうしてそう思う。」フラーケンはラングのあからさまな持ち上げが不愉快だった。

「敵潜は我々に対して爆撃?を行いました。これは通常空間においては考えられない攻撃です。
敵味方同じ次元断層内にいるからこそ有効な攻撃です。次元断層に居る艦艇は次元潜航艦以外に考えられませんから
先程の爆撃?は対次元潜航艦兵器に違いありません。」ラングの分析は適確だった。

「あっ、敵艦が左舷を後方から前方に擦過して行きます。」測的手が報告した。

「何!」フラーケンは測的手のレシーバーをひったくると自分で敵潜の音を聞こうとしたが何も聞こえなかった。

「艦長、グランはプロです。プロの耳を信じましょうや」ラング副長は艦長の行為を嗜めた。

艦長からレシバーを取り戻すと測的手はムッと顔付を変えた。

「魚雷接近! 方位十、雷数八!僅かに扇状に開いた雷跡です。」測的手は報告した。

「取り舵十、魚雷群と正対しろ!」フラーケンは今度は適確な命令が出せた。

しかし前方から来て舷側を擦過する八本の魚雷の航走音は気持ちの良いものでは無かった。

「あ、再度、魚雷発射音、雷数八!」測的手が驚いた様に報告した。

それはそうである、雷撃戦に熟達したUX-01ですら全魚雷発射後、次発装填して再び全門斉射を行うには地球時間で
六~八分掛かるのであるから敵潜の次発装填の速さは驚異的な物だった。

<奴は一体何本魚雷をもってやがるんだ!>フラーケンは心の底で毒づいた。

「艦長、敵潜の前甲板に四連装大口径ビーム砲塔が背負い式に二基装備されていましたよね?」ラング副長が
関係ない事を言った。

「それがどうした?」フラーケンはイラつきつつ応えた。

「あれは多分ビーム砲塔ではありません、旋回式四連装魚雷発射管です。」ラングは誰も予想しない事を言った。

次元断層に潜む攻撃艦から発射された魚雷は次元境界面を突破する位置を指定しておけば通常宇宙にいる敵艦を
全方位どこからでも攻撃出来る。

しかし次元断層内での戦闘では亜空間魚雷も普通の魚雷としての機能しか持たない。

だから敵潜は次発装填装置を持った旋回式の魚雷発射管二基で魚雷を連射し目標を雷撃して来るのだ。

UX-01は前方、後方にしか雷撃出来ない訳ではない。

魚雷方位盤によって敵艦の速度と進路から敵艦の未来位置を割り出し、こちらの雷速と魚雷の進路、舵角の調整など
様々なデータを入力する事で真横にいる目標に前部、後部の全発射管の魚雷を導く事も出来る。

但し、相手が通常宇宙にいる通常艦艇ならばの話である、今回の様に双方とも次元断層内に居て、速度が速く、
運動性も良い艦艇相手に魚雷方位盤で魚雷を命中させるのは至難の技と言って良かった。

「こちらがもう一層深く次元潜航出来れば亜空間魚雷の全方位雷撃が可能になるのだが・・・。」フラーケンは腕組みして考えた。

次元潜航艦は次元断層潜航中に更にもう一層、次元境界面を突破して深く潜る事は出来た。

しかしそれを行ったが最後多次元断層に落込み二度と浮上出来なくなる事は目に見えていた。

<それに本艦の攻撃手段で残っているのは機雷のみ・・・。一層下からの攻撃は不可能だ・・・。>フラーケンは
追い詰められていたが、突然、ラング副長の前に手を差し伸べた。
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「魚雷を出せ!」フラーケンの要求は唐突だった。

<は? 何の事です?>と言いたげに戸惑った表情をするラングにフラーケンは重ねて問い質した。 

「先程敵潜に向けて残りの魚雷を斉射した時、故障で打てなかった魚雷だ。修理はもう済んでいるのだろう?」
フラーケンはラングが何か企んでいると踏んでいた。




                                     202. アッカイラ 鮫達の狂宴ー(3)→ この項続く


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by YAMATOSS992 | 2016-04-30 21:00 | ヤマト2199 挿話 | Comments(0)