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宇宙戦艦ヤマト前史

yamato2199.exblog.jp

宇宙戦艦ヤマト登場前の地球防衛軍の苦闘を描きます。

202. アッカイラ 鮫達の狂宴ー(3)

「艦長! 勝算がおありなのですね! 作戦をお聞かせ下さい!」ラングが身を乗り出した。

「ああ、だが敵は四連装魚雷発射管二基を備えた化物。 加えてこちらは修理したてのポンコツ魚雷一本だ、
真面から噛み合ったら確実にこちらが負ける!」フラーケンは現状を皆と共有した。

「だから、鬼手を使う。 この次元断層の更に下の次元断層に潜り、そこで亜空間魚雷を発射、
敵潜が予想しない次元境界面から雷撃するんだ。」フラーケンの言葉に一同、息を呑んだ。

次元断層は幾つもの空間が折り重なっている部分の境界面に出来た裂け目だ。

人工的にその "裂け目" を作り出し亜空間に潜むのが次元潜航艦である。
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しかし、通常空間で次元断層を作るから敵艦船の攻撃に意味があるのであって次元断層に居ながら更に一層下の
亜空間に潜るなど正気の沙汰では無かった。

いや、通常空間の直ぐ下の亜空間だからこそ次元潜航艦は安定して留まれるのであってその下の亜空間となると
一度そこへ降りたが最後、もはや再び通常空間に戻れるか、どうか怪しい物であった。

「艦長は相打ちになってまで敵を葬るつもりなのですね・・・。」潜航士官が蒼ざめた顔で言った。

「心配するな! ベッラ少尉、この艦長は "猟犬" と呼ばれる男だ。 必ず "主人"の元に還る !
相打ちなんて考えてもいないさ。」ラング副長が潜航士官の背中をどやしつけた。

<チッ、二等が!>潜航士官が蔑みの眼差しを向けたがラング副長は彼には構わず作戦の戦術について語った。

「確かにベッラ少尉の危惧の通り、完全に下の亜空間に潜ってしまったら再度浮上出来る可能性は殆どない、
しかし、敵潜を攻撃するのにはどのみち次元潜望鏡を上げて敵の動きを探る必要がある、つまり今いる亜空間に
足掛りを残さざるを得ない。 そうですね、艦長!」ラングはフラーケンに念を押す様に聞いた。

「潜航用意! 潜望鏡深度まで潜る、なるべくゆっくりとな・・・。」フラーケンはラングの緻密な戦術に舌を巻いていた。

本来の彼の作戦は敵潜に極力接近し残った一本の魚雷を叩き込む単純な物だったからだ。

「深度、司令塔を越えます。」潜航士官が報告する。

「潜航中止! メイン・タンク・ブロー! 」潜望鏡を覗いたフラーケンが叫んだ。

「どうしました、艦長?」ラング副長が恐々る聞いた。

「次元潜望鏡の視界が真っ暗だ。 恐らく先程の敵潜の攻撃にやられたのだろう。」フラーケンは悔し気に次元潜望鏡の
鏡体を叩いた。

通常、次元潜航艦による襲撃は次元潜望鏡による各種諸元(データ)の取得から始まる、敵速、敵方位、射距離、自速、自方位等々だ。

これらのデータは艦長が次元潜望鏡を覗いて目標にピントを合わせるだけで自動的に魚雷方位盤
(雷撃用コンピュータ)にデータが送られ、さらに方位盤から魚雷に必要な制御データが送られる様になっていた。

それが行えない今、UX-01は絶対絶命の危機の内に居ると言えた。

「測的手! 魚雷方位盤に異常はないか?」艦内の士気が落ちる間を与える事無くラングは指示を出した。

「はっ、魚雷方位盤に異常はありません! しかし、雷撃に必要な諸元はどうやって入手するのです?」
測的手が訝しんだ。

「心配はいらん! メイン・タンク・チョイ・ブロー、司令塔深度まで浮上する!」フラーケンはラングの意図を読み取り
浮上を指令した。

司令塔深度、これは普通めったに取らない潜航位置である、司令塔だけを通常空間に出し、艦体は次元断層に留めると
いう難しい操艦が要求された。

更に今回は次元断層に司令塔を残しながら更に下層の次元断層に艦体を潜らせると言う高度な操艦なのだ。

「落ち着け、おまえなら出来る。」潜航士官の耳元でフラーケンが囁いた。

「測的手、携帯測距義と手動魚雷方位盤を出せ!俺と副長で司令塔に上り、雷撃に必要な諸元を手動で取って
それを連絡するから、測的手も手動で方位盤に諸元を入力しろ!」フラーケンの命令は衝撃的だった。

次元潜航艦乗りと言っても宇宙船乗りであるから宇宙服を着て船外作業する事には慣れっこである。

しかし、次元断層潜航中に船外に出る事など考えるだに恐ろしかった。

「艦長・・・。」潜航士官が言葉に詰まった。

「皆、何を心配しているんだ。この艦は次元潜航する為の特別な防御装置など持って居ないぞ。 
無防備で次元潜航出来るなら宇宙服でも充分耐えられるさ。」ラングが自信たっぷりに言った。

「それはそうですが・・・。」潜航士官は淡々と作戦準備を行う艦長と副長に思わず敬礼していた。

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< ふん! いつ見ても薄気味悪い光景だ。> 司令塔ハッチを潜り、艦外に出たフラーケンは亜空間特有の浅海の様な
光煌く光景に鼻を鳴らした。

「艦長、グズグズしないで測的をお願いします。」ラングはフラーケンに携帯測距義を渡した。

「距離八百、的速三十・・・。」フラーケンが測距義を覗いて距離を測りつつ、時計の針を見つめて敵の速度を測った。

「方位角二十、雷速五十、境界面突破角度0・・・。」ラングがそれを手動式魚雷方位盤に入力し、出力した答を雷撃手に伝えた。

<しかし、次発装填装置付き四連装魚雷発射管を二基も持っているだけあって敵潜はでかいな!>フラーケンは
測距義のレンズを覗きながら思った。

「確かに大きいですね。こちらの倍、重巡クラスはあるでしょうか? こちらの魚雷は一本、艦長、奴のどこを狙います?」
ラングはまるでフラーケンの心の中を覗いているかの様に作戦指示を仰いだ。

「雷撃手、魚雷・射角180!」フラーケンの命令にラングは感心した。

「射角180!・・・ですか! 成程、艦長、さすがです!」ラングが驚いてみせた。

亜空間魚雷は敵艦より一層下の亜空間を航走するがどこかで次元境界面を突き破って敵艦と同じ空間に戻らなければ
雷撃の意味は無い。

しかし、次元潜航艦は魚雷が戻る位置を敵艦と自艦の相対位置に無関係に選べるのが特徴であった。
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即ちフラーケンは敵艦の後方直後に魚雷を出現させ様としているのだ。

「敵艦、転舵、こちらに接近します!」ラング副長が冷静に報告した。

<何!こちらは司令塔深度潜航中だ。 目標が小さくなっているから敵艦からは殆ど探知出来ないはず?>
フラーケンはハッとして司令塔の縁に手を掛け直下にある司令塔が次元境界面に作る赤い航跡を見た。

それは赤く輝く長い尾を曳いていた。

「これでは、頭隠して尻隠さずだ! 機関停止!航跡を消せ!」フラーケンは即座に機関停止を命じた。

「敵艦、魚雷発射!雷数八!真っすぐこちらに向かって来ます!」ラング報告した。

<こちらの位置は知られている、速度を変えても敵はそれを加味した魚雷の射角を選んでいるはず、どうする!>
フラーケンは一瞬、躊躇った。

「艦長!潜りましょう。今のままではどう回頭しようが速度を変えようが敵の魚雷の網からは逃れられません!」
ラングが進言した。

「潜航士官! 深度を潜望鏡深度まで下げろ!大至急だ!」フラーケンが吠えた。

「艦長!それでは艦長達を見殺しにしてしまいます! それに潜望鏡は使えません。潜望鏡深度をとる意味が
解りません!」潜航士官が抗議した。

「議論している暇は無い!魚雷に当たりたくなければ潜るんだ!」フラーケンは部下を怒鳴りつけた。

UX-01はゆっくりと更に下の次元断層に向かって降りていった。

普段の単なる緊急潜航と違い、司令塔深度から潜望鏡深度に潜る深さを変える事は難しく慎重な操作が必要なのだ。

フラーケンやラングのいる司令塔頂部に次元境界面が達し、彼等の宇宙服の胸から下は次元境界面を異物が
押し分ける時に出来る赤く輝く航跡に浸っていた。

「艦長! 魚雷が来ます! 右舷三十度、雷数八!」ラングが測距義を覗きつつ報告した。

「敵魚雷接近!降下やめ!」フラーケンは必要以上に下部次元断層に足を突っ込む事は避けたかった。

敵の魚雷はUX-01に到達した時、司令塔はほぼ下部次元断層に潜り、フラーケンとラングは宇宙服の頭部を残している
状態だった。

魚雷が一本、本来ならUX-01の艦首に当たる部分をすり抜ける、二本目は艦首上部を擦過して行った。

残り五本の魚雷は後部や下部を大きく外れた位置で擦過していったのでUX-01が回避行動を起こした時にそれを狙った射線だと考えられた。

しかし、最後に残った一本はUX-01の司令塔目指して一直線に走って来た。

先程、UX-01が司令塔深度で測的作業を行っていた時に曳いていた赤い航跡の発生部位に何かあると踏んでの
攻撃だと思われた。

迫りくる魚雷、その光景にフラーケンは魂も凍る思いだった。

だがそんな中、ラング副長は手動魚雷方位盤を敵艦に向けていた。

「魚雷、発射射角、修正-5!」迫りくる魚雷に立ち向かう様にラングは方位盤を向けて叫んだ。

「雷撃手! 射角修正したら直ぐに魚雷を発射しろ!」フラーケンが最後の魚雷発射命令を下した。
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<当たってくれよ!>と祈る間も無く敵魚雷がUX-01の司令塔を直撃した。

しかし司令塔は一つ下の次元断層に殆ど潜っていたため、魚雷は爆発する事無く、フラーケンやラングの身体ごと亡霊の様に司令塔を擦り抜けていった。

<フ ~ ッ、肝を冷やしたぜ、あっ、こちらの魚雷はどうした!>フラーケンが敵潜の居る方へ頭を巡らした。

<敵潜、後部に魚雷命中! 奴は深度を上げ始めました。相当大きな損傷を与えた模様です。」ラングが報告した。

敵がすぐそこに居るのに形振り構わず緊急浮上するのはそうしなければ沈没してしまうからに他ならない。

「よし、こちらも浮上だ。潜航士官、メイン・タンク・ブロー! 敵潜の正体を確かめる!」フラーケンはこの戦闘が
終了した物だと思い込んでいた。


                                         203. アッカイラ 鮫達の狂宴ー(4)→この項、続く

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by YAMATOSS992 | 2016-05-07 21:00 | ヤマト2199 挿話 | Comments(0)