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宇宙戦艦ヤマト前史

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宇宙戦艦ヤマト登場前の地球防衛軍の苦闘を描きます。

203. アッカイラ 鮫達の狂宴 ー(4) (最終話)

通常空間に戻ったUX-01は目の前の空間に浮かぶ敵艦の小山の様な大きさに圧倒された。

「なんてでかいんだ!こんなのと我々は戦っていたのか!」潜航士官が皆の気持ちを代弁した。

「降伏を呼びかけろ、言語はこちらが知っている限り全てを使え!」フラーケンの指示で降伏勧告が行われたが敵潜は
沈黙したままだった。

<気に入らないな・・・。>ラングはスクリーンに映る敵潜の様子に何か胸騒ぎを感じていた。

と言うのもUX-01が完全浮上して通常空間に浮かんでいるのに、敵潜は艦体の半ばをまだ次元断層に残し、赤い航跡を
曳きつつゆっくりとUX-01に近づいてきていたからである。

「まだコンタクトは取れないか?」ラングは通信士に確認した。

「駄目です。 全く応答しません。 最早悪あがきをしても仕方ないでしょうに・・・。」通信士も敵潜の挙動に
不審を表明した。
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指呼の間に敵潜が接近した時、フラーケンは突然、危機感に襲われた。

「緊急潜航だ! 急げ!」フラーケンの剣幕に潜航士官はわけも分からないまま急潜航を指示した。

次元断層の波間に吸い込まれて行くUX-01。

その時、敵潜からアンカーがUX-01に目がけて放たれた。

フラーケンの勘によっていち早く潜航に入ったUX-01だったが、敵潜の思わぬアンカー攻撃に司令塔を絡み取られて
しまった。

敵潜はアンカーがUX-01に絡まったのを確認したのか、再び次元断層に潜り始めた。

UX-01はそれに引き摺られて亜空間の中を進んでいたが潜航士官は疑問を疑問を呈した。

「奴は何をしたいのでしょう。 このまま本艦を引き摺って次元断層の深みに入っても何も変わらないでしょうに・・・。」

「機関・後進強速!アンカーを陽電子砲で切るんだ!早くしろ!」フラーケンが切羽詰まった声で命令を出した。
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「落ち着いて下さい!艦長!この空間ではビーム兵器は無効です!」ラングは艦長がパニクッたと思って思わず制した。

「大変です! 敵潜は更に下の次元断層に潜ろうとしています。 このままでは我々も道連れです!」探知主任が悲鳴を上げた。

「砲手、何をしている!ワイヤはまだ切れんのか!」フラーケンが督促した。

「駄目です!敵ワイアは本艦の側面から艦底に沿って敵潜に向かっています!陽電子砲の射界に入りません!」
砲手(雷撃手の兼任)が報告した。

「陽電子ビームは発射出来るか!」ラングが誰何した。

「砲口から少しの間はビームは収束していますが直ぐに拡散してしまって破壊力を失っています。やはりこの空間では
陽電子ビームの使用は不可能です。」砲手は状況を分析した。

「艦長、陽電子ビームは拡散してしまって使用不可能です。また、今の態勢では陽電子ビームの射界に敵ワイアを
捉える事が出来ません。」ラングが落ち着いた口調でフラーケンに報告した。

「艦長!敵潜完全潜航、本艦も引き摺られています。何か手を打つなら早くしてください!」測的手が悲鳴を上げた。

それを聞いたフラーケンは<今だ!>と思った。 そして命令を下した。

「上下反転180度! 敵ワイアが陽電子砲の射界に入るからビームを薙いで確実に切断しろ!」

「ザー・ベルク!」操舵手が空間ジャイロを反転させると共に慣性制御(人工重力)の方向も同調して変化するのだが
艦の姿勢と慣性制御の軸は完全に一致していなかったので軽い衝撃があった。

UX-01は軍艦、乗り心地は二の次なのだ。

「目標捕捉! ビーム攻撃を試みます!」砲手がワイヤ目がけて陽電子ビームを薙ぎかけた。

しかし、どんな材質で出来ているのであろうか、ワイヤはびくともしなかった。

「砲手! 艦首側では無く、司令塔側のワイヤを切断しろ!」ラングが思いも依らない命令を発した。

「それでは本艦も損害を受けます!」砲手にはとんでもない命令に聞こえたのだ。
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「何を言う! このまま複合型次元断層に引き込まれた方が良いとでも言うのか!」フラーケンの叱責が飛んだ。

「はっ」砲手は蒼ざめた顔でUX-01の司令塔先端に照準を合わせ引き金を引いた。

今度は九九ミリ単装陽電子ビーム砲は今度は司令塔の一部と共にワイヤを確実に切り飛ばした。

フラーケンの読み通り、次元断層内ではビーム兵器は無効とはいっても砲口を離れた直後のビームは破壊力を
残していたのだ。

綱引き状態にあったUX-01と敵潜はワイヤが切れると同時にお互い反動で弾き飛ばされた。

着席して居なかったフラーケン、ラング、潜航士官の三人は床に投げ出されてしまった。

<イタタタ・・・。大きな獲物の釣り糸は切れたか!>ラングは床から立ち上がると艦長を補助して立ち上がらせた。

「敵艦、ワイアの切れた反動で一度この次元断層内にその姿を現しましたが、直ぐにまた下位次元断層に
沈む模様です。」測的手がスクリーンに前方の次元断層内空間を映し出した。

そこには赤く光る次元断層の裂け目に艦首を立てて艦尾から沈没する敵潜の姿があった。

フラーケン達、UX-01の乗組員達は誰からと言うでも無くその敵潜の最後の姿に敬礼していた。

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通常空間に浮上するとフラーケンは今度は最優先で補給艦を呼んだ。

まだ別の敵潜が潜んでいる可能性も無くは無かったが、主要兵器である亜空間魚雷が空っ欠では戦い様が
無かったからだ。

部下達が補給艦の酒保で乱稚気騒ぎを繰り広げていた頃、フラーケンは魚雷の積み込み作業を司令塔の上から
見守っていた。

作業は専用のプログラムを施したガミロイドが行うので監視する必要は無かったのだがフラーケンはどうにもガミロイドと
言う物に嫌悪感を拭い切れなかった。

普段なら彼は司令塔の先端部分の壁に肘を預けるのだが、先程のワイア戦で陽電子ビームでワイア毎、司令塔の
先端を切り飛ばしてしまったので足元近くまで司令塔先端は壁を失っていた。

「アレ、アレ、これじゃ補給艦より工作艦を先に呼ぶべきでしたね。 司令部のお偉いさんが我々の報告を
信用してくれれば問題ないんですが・・・。大丈夫ですよね?」何時の間にかラング副長が傍に来ていた。

「貴様の報告なら誰でも疑わんさ・・・。」フラーケンは胡乱な目をラングに向けた。

「それじゃ駄目ですよ。この艦の艦長は貴方なのですから貴方が報告しなければいけません!」ラングは鯱ばって
主張した。

無言で疑いの目を向けて来るフラーケンにラングは両手を振って否定した。

「大丈夫ですって! もし艦長の報告が信じて貰えなくても我々乗組員は全員艦長の味方です! 地獄の底までついて
いきますよ!」ラングは孤独感に打ちのめされているフラーケンを励ました。

「有難う・・・と言うべきなんだろうな。 しかし・・・。」自分に否定的な気分になっていたフラーケンだったが、
ラングが手元に携えている物に興味を持った。

「これですか? これは『ザルツの竜』です。 手慰みです。」ラングが照れて嘘を言った。

「これは・・・紙を折った物か? ザルツではこれで何をするんだ?」フラーケンは折り紙を持ったラングの手を掴み、
ためすがめす見回した。

「『弔い』です。 勇敢に戦って散った勇者の魂の『鎮護』です。」ラングが宇宙の地平を見つめながら遠い目をした。

「本来は味方陣営の勇者を『弔う』ためのものですが、今回、アッカイラで出会った敵潜の勇猛さは半端無いものでした。 特に最後のワイア戦、多分あの時点で敵潜も魚雷が尽きていたのでしょう。 それでもなお、降伏勧告を無視して
我々に喰らい付き、自艦と一緒に我々をも複合次元断層に引き込もうとしました。 
艦長にはうざいだけの敵だったかもしれませんが私、ザルツの武人にはその尚武は讃えるべき物なのです。」ラングは
手にした『ザルツの竜』をそっと宇宙の彼方へ向けて飛ばした。
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「結局、彼等はどこの誰だったんでしょうね・・・。」ラングが飛び去りゆく『ザルツの竜』を見つめながら言った。

「フン!上の奴らは敵潜の所属に拘るだろうが、直接、刃を交わした俺達にとっては『彼等が恐ろしく手強い
勇者だった』と言うだけで充分さ。」それを聞いたフラーケンが応え、そして続けた。

「戦死した勇者は星を伝って故郷に還えるのだろ? それが船乗りの心得だからな。」

「さすが艦長、『ザルツの船乗りの心得え』をご存知だったのですね。」ラングももはや見えなくなる位遠く小さくなった
『ザルツの竜』を見つめながら言った。

 
                                       203. アッカイラ 鮫達の狂宴 ー(4) → この項了





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by YAMATOSS992 | 2016-05-14 21:00 | ヤマト2199 挿話 | Comments(0)