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宇宙戦艦ヤマト前史

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宇宙戦艦ヤマト登場前の地球防衛軍の苦闘を描きます。

205.疾風の漢(おとこ)ー(2)

 「第112駆逐宇宙艦隊の任務は第11輸送船団を護衛して積荷をゴトランド星系を攻略中の第六空間機甲師団に届ける事にある。」幕僚団を集めたラング司令はここで一端言葉を切った。

スクリーンから目を離してガミラス人とザルツ人の混成幕僚団を見渡した。

案の定、ザルツ人はキチンとラングの言葉を聞いていたが、ガミラス人は二等臣民の言葉なぞ聞いてたまるか!と言う態度でそっぽを向いていた。

だが、ラングはこうした場合の一等臣民の気持ちと態度は次元潜航艦学校と実戦で経験済みだった。

「フォムト・バーガー中尉、君は純粋ガミラス人で一等臣民だ。そして、私、ヴァルス・ラングは被征服国民、ザルツ人で
二等臣民だが少佐だ。

当然、君は征服者であるガミラス人と征服されたザルツ人の間には差があるべきだと考えているのだろう。

しかし、ここはガミラス軍の内、命令系統は階級のみで決まる。

もし、これに他の要素を加えたら命令系統は複雑になり過ぎて伝えるべき命令がきちんと伝わらなくなってしまうからだ。

だから先程基地司令が申し渡した通り、悔しいだろうが私の命令を聞いて欲しい。

それが今回の作戦を成功させひいてはガミラス版図の拡大に繋がるのだ。」ラングは正面からバーガーを説得した。

「へいへい、俺より二階級も上の少佐殿の命令じゃ仕方ありませんな。

指令には従いますよ、心配しなすって!」バーガー中尉は不貞腐れ切っていた。

「ところでバーガー中尉、君の前歴を聞かせてくれないか?」ラングは気さくに話しかけた。

「今更、俺の悪歴を聞いて笑おうってんですかい・・・。先に自分の経歴を話すのが礼儀ってもんでしょ!」バーガーが
昏い目で凄んだ。

「私か、私はしがない次元潜航艦乗りだ。 ついこの前まで UX-01と言う艦の副長をしていた。」ラングが懐かしそうに言った。

「UX-01・・・って、もしかして艦長はヴォルフ・フラーケンか!」バーガーですらフラーケンの名は知っていた。
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「ああ、彼は大した漢だよ。これからの次元潜航艦隊の行く末は彼の肩に掛かっていると言っても過言では無い。」
ラングはバーガーがフラーケンの名を知っていた事が嬉しかった。

「あんたは "猟犬" の尻尾ってわけか! 二等臣民に相応しい卑怯な戦い方だな。」バーガーは異次元に潜み一方的に
敵を攻撃、撃滅する次元潜航艦を快く思って居なかった。

「それで君は、ここに来る前には何をしていたのかね?」ラングがバーガーの挑発に乗る事は決して無かった。

「ほとんどずっと宙雷戦隊だが、大した戦歴は残せなかったぜ・・・。大事な物も守れなかったしよ・・・。」バーガーの眼に
哀しみの光が宿ったのをラングは見逃さなかった。
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<やはり”メリア・リッケの死”を引き摺っているな・・・。>ラングはバーガーの心が沈んでいる理由を知っていたが
ここでその事に触れる事はしなかった。

「そこなんだ、バーガー中尉。 私は次元潜航艦乗り一本でやって来た男だ。 いくら護衛艦といっても駆逐艦は
ズブの素人だ。

しかし、君の経歴は宙雷屋一本だ、そこで私が率いている第112駆逐宇宙艦隊の駆逐艦三隻の指揮を君に任せたい。
どうだろうか?」ラングの申し出にバーガーは二の句が継げなかった。

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「良いんですか? 我々が護衛艦隊ですよ。 軍令部の指示も仰がないで勝手に輸送艦隊と護衛艦隊の乗組員を
入れ替えるなんて前代未聞ですよ!」ラングの副官が憤懣やるかたない気持ちをぶちまけた。

「大丈夫だ、責任は私一人で取る。 君は抗命し続けたと報告すれば良い事だ。」ラングが張り切って訓練に勤しむ
バーガー艦隊の襲撃・運動を見つめた。

「司令、何を考えているんですか!もし、それにこの配置換えを認めたとしても彼等が実施すべきなのは襲撃・訓練では
無く、船団護衛の訓練ではないんですか?」副官の不満はまだ続いていた。

そのころバーガー中尉は有頂天になっていた。

それもそのはず、彼は確かに宙雷屋一筋の軍務を歩んで来ていたのだが、戦隊長はおろか、艦長なども務めた事は
無く、最高でも宙雷長止まりだったからだ。

それを艦を任されただけで無く、規模が小さく、非公式とはいえ戦隊の長に任命されたのだ。

但し、バーガーの率いる少数の幹部以外は駆逐艦乗りでは無く、輸送艦乗りだったので彼等を駆逐艦乗りとして
使い物になる様、護送任務が始まっても訓練を続けているのだった。

「カウト君、輸送艦隊に残った乗員全ての経歴を用意してくれたまえ。」ラングは副官に今更なな命令を下した。

「何て顔をしている、輸送艦隊の方も護衛艦におんぶに抱っこと言う訳には行かないんだぞ、やる事は山ほどある!」

ラングは困惑している副官に言葉を掛けた。

「『一手先を読め!』だよ、一手先をな。」ラングは副官に笑いかけた。

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「戦隊長!右舷10,000にある小惑星帯の中に敵艦らしい反応があります!」探査主任が艦長であり
第112駆逐宇宙艦隊、戦隊長であるバーガー中尉に報告した。

<ゴトランド・ゴースの交通破壊艦の待ち伏せか!>バーガーはすぐさま襲撃・運動に入った。

<先手必勝だ! 敵の交通破壊艦の砲力は多分、こちらより優れている、肉薄して宙雷攻撃を決める!>味方の
護衛艦の数は少ない、船団に張り付く消極的な作戦よりも敢えてこちらから撃って出る積極策をバーガーは選んだのだ。

そのころ小惑星帯の中に潜んだゴトランド・ゴース交通破壊艦の艦長はガミラス輸送船団から護衛の駆逐艦隊が離れて
自艦の方に向かって来るのを確認し、ニヤリと微笑した。

「ガミラスの護衛は三隻だけか?」艦長は情報士官に確認した。

「はい、こちらの作戦通り、全艦こちらに向かって来ています。」情報士官の報告に艦長は別動隊の行動開始を
指示した。

ラングはバーガーの素早い判断を評価していたが、反面、護衛艦の駆逐艦の数の少なさによる本体の護衛が
手薄になる事が気懸りだった。

「司令、バーガー隊が敵艦に攻撃をかけます!」副長が指摘した。

「待って下さい!輸送艦隊後方の空間5,000に敵・駆逐艦隊ゲシュタム・アウト!襲撃態勢に入りました!」探知主任が
警告した。

「輸送艦隊散開! 被害を極限する事に努めよ!」ラングは落ち着いて命令した。

確かに護衛の艦の数が十二分にいて、それらが輸送艦隊を近接護衛出来るなら輸送艦隊を散開させる必要は無い。

しかし今のラングが指揮する輸送艦隊は護衛のバーガー艦隊を囮に釣り出され全くの無防備状態に
なってしまっている、しかもこの輸送艦隊の主な積荷は第六空間機甲師団に向けた弾薬、空間魚雷や各種ミサイルで
あったからもし単艦が被弾、爆発しても近接して別の艦がいると誘爆する可能性が高いのだ。

「司令、護衛艦隊を呼び戻しましょう!」副長が進言した。

「駄目だ、今、護衛艦隊を呼び戻すと戦線が混乱する!幸い我々輸送艦隊を襲って来たのは駆逐艦、直ぐには
こちらの艦を撃沈出来まい。」ラングの判断はこうだ。

敵の大型交通路破壊艦と闘っているバーガー隊を戦闘が終わる前に呼び返すとガミラス艦隊は敵の大型交通路破壊艦と駆逐艦隊の双方から挟み撃ちを受ける格好となってしまう。

特に大型交通路破壊艦の接近を許してしまうとその強大なビーム砲の威力で艦隊は全滅させられてしまう恐れが
あった。

かと言って個別に短距離ゲシュタム・ジャンプで戦場から逃れようとしても敵は既にこちらの位置を特定している、
その状況下で短距離とはいえジャンプをすれば空間航跡をトレースされどこまでも追跡され、ついには撃沈されて
しまうだろう。

こうした場合、船団を解き、輸送艦をばらばらの方向に退避させるのが一般的だ。

そうすれば艦隊が全滅すると言う最悪の事態は避けられる。

しかしラングはそうした定法だけに頼る事をしなかった。

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「戦隊長、敵輸送船団の内、二隻が落伍します。 後四分で魚雷射程に入ります。」ゴトランド・ゴース・駆逐艦隊の
情報士官が状況の変化を告げた。

「機関が故障したか!ガミラスめ!俺達を舐め切ってオンボロ船を使っているからだ。」戦隊長がチャンスを得た事に
狂喜した。

「直ぐに攻撃しましょう!」戦術士官が勇んで叫んだ。

「まぁ、まてブンナム君、あの二隻は最早、我々の砲・雷撃の射程内に入っている。
しかし、加速して逃げようとしない、いや機関が不調で逃げられないのだ。
だから、放って置いてもこの宙域から大きく移動する事は出来ない。
青息吐息の獲物は後回しで良い、生きの良い獲物から片付けよう。」戦隊長は落語した二隻にビーコンを
打ち込んで先行する輸送艦を追撃する様、指示した。

<掛かったな!>ゴーン、敵のビーコン・ミサイルが自艦に着弾する音を聞きながらラングは会心の笑みを浮かべた。

同じ頃、バーガーの宙雷戦隊はゴトランド・ゴースの放った交通破壊艦にてこずっていた。

航宙艦艇の基準からすれば取り立てて有力な砲力を持つ訳では無く、加速力も戦艦より優れてはいたが駆逐艦には
遠く及ばなかった。

<交通破壊艦はやっかいな存在だとは聞いていたが、これほどとは思わなかった!>バーガーは心の内で舌打ちした。

砲力は戦艦には及ばなかったが駆逐艦のそれを大きく上回り、更に対魚雷防御用の小口径・近接防御火器を無数に装備していたのである。

加速力も駆逐艦には大きく劣るとはいえ輸送艦を容易に捕捉出来るだけのものは備えていた。

即ち、バーガー隊がゴトランド・ゴースの交通破壊艦を仕留めようと接近すれば中口径のビーム砲の洗礼を浴び、
離れた所から雷撃を加えても近接防御・火器で防がれてしまうのである。

かと言ってバーガー隊が交通破壊艦を放り出して船団を襲撃しつつあるゴトランド・ゴース駆逐艦隊を迎撃しようとすれば交通破壊艦はてんでんバラバラに逃げる輸送艦を一隻づつ捕捉、撃沈してしまうだろう。

<自分より砲力の強い敵からは強力な加速力で退避し、自分に追いつける加速力を持つ敵には卓越した砲力で
沈黙させる・・・か。 確かに厄介な敵だ、だが、ガミラスの宙雷戦術の奥義を見せてやる!>バーガーは実戦では
一度も使われた事の無い戦術を使う事にした。

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「艦長!敵・駆逐艦隊が隊列を一本に絞って艦首方向から突撃を掛けて来ます。」情報士官の報告にスクリーンに目を
凝らした艦長は訝しんだ。

「敵・駆逐艦は三隻いたはず、それが一隻にしか見えないとは随分と訓練したものだ。主砲、副砲で歓迎してやれ!」
艦長はバーガー隊の奮戦をあっぱれだとは思いつつ迎撃の手を緩める事は無かった。

「艦長!敵は艦首方向上方二度の方向から突っ込んで来ます!」再度、情報士官が報告した。

「何!」艦長は自艦の置かれた状況の悪さに気が付いた。

ゴトランド・ゴースの "リペーリア" 級交通破壊艦は三連装250mmビーム砲塔四基、単装140mmビーム砲十六基を備える
重装備艦である。

しかし、単艦よく長躯出撃して交通破壊を行うためその武装は周囲を万遍無く射界に収められる様、設計されている。

だが、艦の前後方向、特に敵が首尾線軸を僅かに外して突撃して来た場合、周囲を万遍無く射界に収める様に
砲を配置したが故に敵の突撃に対して指向出来る砲は三連装主砲塔一基、単装副砲二~四基と使える兵装の数が
激減してしまうのだ。

「面舵一杯、側面の火器を使用出来る様にしろ!」艦長の命令がとぶ。

「それは駄目です! 間も無く敵のビーム砲の射程圏内に入ります!」情報士官が畳み掛けた。

「落ち着け!敵の砲の口径はこちらより更に小さい、敵の砲の有効射程距離に入る前にこちらの砲の必中圏内に
入る!」しかし、艦長はガミラス駆逐艦の主砲の口径が自艦より大きいのを知らなかった。

「間も無く主砲の射程距離に入ります。」測的手がバーガーに報告した。

「戦隊長、今の一列縦隊のままでは先頭艦が邪魔になって二、三番艦が発砲出来ません。」副長が隊列の
変更を求めた。

「一列縦隊のまま、全艦が主砲を使える様にする隊形などにわか宙雷戦隊の俺達には無理だ。 
しかし、魚雷なら一番艦がロック・オンした目標データを二、三番艦に送れば同じ敵艦に全魚雷を叩き込める!」
バーガーは生粋の宙雷屋だった。
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<あれは本艦と同じか少し大口径の砲だぞ! このままでは打ち負けるかもしれん!>ゴトランド交通破壊艦の艦長は
バーガー艦が牽制で放つビームの太さに驚愕した。


                                       206.疾風の漢(おとこ)ー(3)この項 続く
                                                               

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by YAMATOSS992 | 2016-05-28 21:00 | ヤマト2199 挿話 | Comments(0)