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宇宙戦艦ヤマト前史

yamato2199.exblog.jp

宇宙戦艦ヤマト登場前の地球防衛軍の苦闘を描きます。

206.疾風の漢(おとこ)ー(3)

ゴトランド・ゴース宙雷戦隊が後回しにした機関不調の輸送艦の艦長は実は輸送艦隊司令ヴァルス・ラング少佐だった。

彼は秘策を持って業と僚艦一隻を連れ、輸送艦隊から落伍したのだ。

そして敵艦隊が自分達を追い越して行った後に行動を起こした。

「輸送艦101号から102号へ "花火" の用意は出来たか?」ラングの問に102号から直ぐに返事が来た。

「全弾発射準備でけましたで。何時でもいけまっせ!」強いザルツの地方訛りで男は応えた。

「よし!”技師(エンジン)”全弾発射せよ!」ラングの命令一下、輸送艦101、102号は積荷である空間魚雷を次々と
放出し始めた。

ガミラスの輸送艦と言えども必要な局面で危険な積荷を投棄出来る仕組みを持っていた。

そうでなければ危ない荷物を扱える希少な人材が失われるからだ。

だから、ゴトランド・ゴースの宙雷戦隊の監視員も落伍したガミラス輸送艦は戦闘時の通常業務を行っている物として
取り立てて艦長に報告しなかった。

しかし、輸送艦は見掛けの様にただ積荷の魚雷を投棄している訳では無かった。

両艦合わせておおよそ二十基の魚雷が投棄された時一斉に魚雷が火炎の尾を引いて敵・宙雷戦隊を目指した。

ゴトランド・ゴース宙雷戦隊は分散したガミラス輸送艦隊の構成艦を一隻づつ追いかけ様としていたが、旗艦の艦橋は
後ろから迫る大型魚雷の群れに恐慌をきたしていた。

<しまった!あの落伍艦は伏兵だったのか!>敵宙雷戦隊の司令は自分の迂闊さに臍を噛む暇も無く大量のミサイルに対する対応に追われた。

だが、駆逐艦が装備している防御火器の数などたかが知れている、ゴトランド・ゴースの駆逐艦隊は辺りの宙域を炎に染める大量のガミラス魚雷の爆発に呑まれていった。

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ゴトランド・ゴース交通破壊艦に突撃を仕掛けるバーガーの駆逐艦隊からでもラングが仕掛けた罠、大型魚雷の
大量爆発は観測出来た。

<おっさん、やるなぁ、ではこちらも負けずに魚雷で勝負だ!>ラングの作戦を聞いた時はそんな与太話、
聞いてられるかと相手にしなかったバーガーであったが、実績を見せつけられては自分達も奮い立たない訳には
行かなかった。

三隻の駆逐艦が一隻に見える位に重なった隊形で突撃するバーガー隊、確かにこの隊形では先頭艦以外主砲の280mm連装砲塔は使えない、しかし、前方四基、後方二基の魚雷発射管、全甲板上八基のVLS(垂直発射管)は直前に僚艦が居ようと居まいと関係なく発射出来るのだ。

一隻で合計十四基、三隻で四十二基の魚雷がゴトランド・ゴース交通破壊艦を襲った。
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交通破壊艦も充実した対空兵装を持っていたので幾つかの魚雷は迎撃出来たが撃ち洩らした数本の魚雷の直撃を
受けて大破した。

「駆逐艦ZR103が隊列を離れて輸送艦隊の方へ戻ろうとしています!」バーガーはその報告を受けるとすぐさまマイクをってその駆逐艦を制止しようとした。

「馬鹿野郎!ドナー少尉!すぐ戻れ!」

「バーガー中尉、私はこの駆逐艦で暴れる機会を与えてくれたヴァルス・ラング少佐とその部下達を見捨てる事は
出来ません!許して下さい!」ドナー少尉は輸送艦隊がいた宙域で起こった大爆発を観測しており、本隊が大損害を
受けた物と勘違いしたのだ。

「あれはこちらの作戦だ! お前も出港前の打ち合わせに参加していただろう!」バーガーは教育だけは受けていても
実戦経験の無い士官の役立たずさ加減に苦笑いした。

と、バーガーが見ていた通信スクリーンがブラック・アウトした。

<?>戸惑うバーガーに情報将校が悲報を伝えた。

「司令! 駆逐艦ZR103が撃沈されました。 隊列を離れたため、敵艦の砲火に晒された様です。」
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「何! 敵艦は大破させたんじゃなかったのか!」バーガーは怒りをぶちまけた。

「全艦主砲斉射だ! 今度こそ遠慮するな!」バーガーの復讐の矢が四筋閃き、今度こそゴトランド・ゴースの
交通破壊艦は完全に沈黙した。

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「この宙域を通るのは危険だ。 交通破壊艦、宙雷戦隊と二重の待ち伏せを受けている。」ラング司令は今後の方針を
バーガー達、幹部と打ち合わせていた。

「右に行けば縮退星団とイオン嵐、左へ行けば中性子星団とブラック・ホールの海、駆逐艦ならともかく、輸送艦では
どちらにいっても船体が持たないぜ。ここは中央突破だろう。」バーガーが選択の余地は無い事を告げた。

「敵艦隊の司令もそう考えるだろうな。順当な考え方だバーガー君。」ラングは何か秘策を持っている様だった。

「ローレン君、この航路を封鎖している敵艦隊の規模はどれくらいだ。」ラングは再度情報士官に確認した。

「はっ、確認されているだけで戦艦十隻、巡洋艦五隻、駆逐艦二十隻、その他補助艦艇数隻であります。 しかも彼等は
ガミラス艦隊の様な密集隊形では無く、各艦の間を20,000は開けた拡散隊形を取っています。」情報士官は驚くべき事を
伝えた。

「拡散隊形? そんな艦隊形状聞いた事もないぞ? 奴等は何を考えているんだ!」バーガーの副官が当惑した質問を
発した。

「いやディラー少尉、これは新しい戦術、ゲシュタム・ジャンプの実用化に伴って出現した新しい艦隊形式なのだ。」
ラング司令が部下の疑問に応えた。

通常、海上でも宇宙でも艦隊は僚艦を有視界に収める密集隊形を執る事が多い。

但し、自艦と僚艦の間は互いに爆沈しても損害を与えない位には離すのが常識だ。

そして全艦で一つの生き物の様に運動するのが今までの艦隊運用だったのだ。

しかし、転移航法(ゲシュタム・ジャンプ)が実用化すると艦隊運用の事情が変わって来た。

艦隊を構成する艦の間隔を今までの常識では考えられない位広げた場合、単艦で処理出来ない場面が出て来たら
直ぐに超空間通信で僚艦を呼べばゲシュタム・ジャンプで駆け付けてくれる。

もちろん、敵勢力に合わせた戦力を集中・運用させる戦略・戦術・管制装置、と超空間通信システムが充実している事が
必要だが、それさえ克服出来れば非常に有望な戦術なのだ。

今回のゴトランド・ゴースの艦隊が取っている各艦の間隔が20,000と言うのは通常の艦隊では考えられない位、広いが
新しい艦隊運用法においてはむしろ狭い位である。

これは封鎖すべき宙域が比較的狭かった事が大きな要因だった。

「敵の、ゴトランド・ゴースの艦がそれ程大きくジャンプ出来ないのかも知れません。」バーガー付きの情報士官が
推測を述べた。

「かと言ってあの封鎖線をこちらが艦隊を組んだまま突破しようとすれば、周り中から敵艦がジャンプして来て包囲、
撃沈されるし、艦隊を解いて各個に封鎖線を突破しようとすれば各個・撃破されてしまうのは明らかだ。 
ラング司令、速やかな御採決をお願いしたいところですな。」バーガーはここに到ってもまだ斜に構えたままだった。

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「今度の司令は人使いが荒いですなーや!」ランツ・シュナイファー技術士官補が愚痴を言った。

「アホ! こんな面白う作戦、やりとうてもなかなかやれるもんやおまへん! がたがた抜かしておるとケツの穴から
手、突っ込んで奥歯ガタガタ言わしちゃるぞ!」”技師(エンジン)”とラングが呼んだ男、
ホッファー・キルリング技術少佐は手元のキーボードを目にも止まらぬ速さで打ち続けながら言った。

「しかし、我々が運搬している魚雷、全てのプログラムを書き換えろとは一体どういう心積もりしてはるんでしょうや? 
大将、まさか運搬中の魚雷全部使うつもりなん?」
シュナイファー技師補はまだ自分のやるべき事が納得出来ない様だった。

「コラ! 滅多な事言ったらアカン! 我々は魚雷・弾薬輸送艦隊やこの荷を待っている第六空間機甲師団に何が何でも
届けなアカン! 勝手に使える訳無いわい!」キルリング技術少佐はそう言いつつ心の中で舌を出していた。
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「こんな馬鹿な作戦は許されません! 我々の任務は第六空間機甲師団が今の戦局で必要としている武器・弾薬を
届ける事です。 自らが戦果を挙げる事ではありません!」バーガーの副官、ディラー少尉は
どこまでも生真面目な男だった。

「私だって無傷で積荷を輸送艦に積んで渡したい。 しかし現状選択可能なルートは三つ、しかもその内一つは縮退星が
造るイオン嵐の宙域、もう一つはブラック・ホールと中性子星の星団が造る重力井戸の星域、この二つは武器・弾薬を
満載した動きの鈍い輸送艦にはとても通過不能だ。
最後に残ったルートはゴトランド・ゴースの艦隊が拡散隊形の艦隊で塞いでいる。
さて、君ならどのルートを取るね?ディラー少尉。」ラングは新米の少尉に戦略と言う物を教え様としていた。

「ゴトランド・ゴース艦隊の中央突破以外に方法はありません!
運が良ければ十数隻の輸送艦は突破に成功するでしょう。」若者らしい真直ぐな意見にラングの頬は緩んだ。

「それじゃ駄目なんだよ。やられた艦の武器・弾薬は先方に届けられないだろ?
俺達、第11輸送艦隊の補給量が減れば第六空間機甲師団は不利になる、全く届けられなければ撤退を
余儀なくされちまう。
それじゃまずいだろ? 少し位、武器・弾薬を摘み食いしても残りの大半をちゃんと届けて勝利に繋げれば
問題は無いのさ。」壁にもたれて立ったバーガー中尉がディラー少尉を諌めた。

「だがどうする? この若造が言った様に中央突破に賭ければ敵の新たな戦術、拡散艦隊の網に引っ掛かって
集中攻撃を受けるぞ。 艦隊を分散してもこの網には通じない、分散して戦力が少なくなったとはいえ戦闘艦と輸送艦の
戦力差は埋めようがないぞ。」バーガーにもラング司令の腹の内は読めなかった。

「まず輸送艦隊を三つに別ける。」ラング司令はスクリーンへ作戦宙域の模式図を映し出した。

「イオン嵐の宙域を抜ける組、重力井戸の星域を抜ける組、そして中央突破を試みる組だ。」

「護衛艦隊はどうしやす? 今までの戦いで損耗してもはや護衛に使える駆逐艦は二隻ですぜ!」 バーガーは
この作戦の無謀さに呆れていたがガミラス軍人として敵を前にして手をこまねいている事など考えられなかった。

「大丈夫だ。勝算は十二分にある! 安心したまえ!」ラングが右手で胸を叩いて自信の程を示した。

しかし、その作戦内容がラング司令の副官、ランツ・シュナイファー少尉から詳細に説明されるとその内容の破天荒さに
さすがのバーガーも言葉を失った。


                                       207.疾風の漢(おとこ)ー(4)この項 続く

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by YAMATOSS992 | 2016-06-04 21:00 | ヤマト2199 挿話 | Comments(0)