ブログトップ

宇宙戦艦ヤマト前史

yamato2199.exblog.jp

宇宙戦艦ヤマト登場前の地球防衛軍の苦闘を描きます。

208.疾風の漢(おとこ)ー(5)

やがて先遣の軽巡洋艦が接触して来た。

バーガーの駆逐艦ZR-101は魚雷を撃ち尽くし、VLSのミサイル弾庫もスッカラカン、艦底に付いた280mm連装
陽電子ビーム砲塔も旋回不能という有様であった。

もう一隻の駆逐艦ZR-102も同じ様な状態でとても戦闘が出来る状態では無かったが第六空間機甲師団から派遣されて
来た軽巡洋艦はビーム砲塔を油断なくこちらに向けつつ、接近を図った。
e0266858_07371136.jpg
バーガーが無礼にも真直ぐ高速で接近してくるケルカピア級軽巡の所属と目的を誰何した。

第六空間機甲師団所属・第一偵察艦隊・旗艦 "ゲットラン" 、目的は輸送艦隊の受入・臨検との返答が来た。

「けっ、こちとら荷物を命懸けで運んで来てやったと言うのに”臨検”かよ!ふざけやがって!」バーガーは臨検の為の
士官を乗せた内火艇がこちらに来るのを見ながら毒づいた。

通常、”臨検”とは交戦国の軍艦が相手国の艦船を捉え、その積荷と船舶・書類を比べて不備が無いか、戦略物資を
運んでいないかを調べる事を指す。

従ってバーガー中尉にしてみれば友軍に”臨検”される事などあってはならない屈辱的な出来事であった。

ゲットランからの”臨検”目的の内火艇が輸送艦隊の旗艦、輸送艦101号へ横付けした。

輸送艦101号のボーディング・ブリッヂが内火艇のエア・ロックに向けて伸ばされそこを通って一等ガミラス人の将校が
二人乗り移って来た。

一人は初老の域に掛かった無骨な傷だらけの隻眼の中佐だったが、もう一人は若い、如何にも貴族的な顔をした
少尉だった。

<なんでこの艦は通路に所狭しと配線がはみ出しているんだ?>艦橋へ案内される途中、初老の中佐はこの艦は
規律が乱れていると感じ眉をしかめた。

**************************************************

一行が艦橋に案内されるとラングとバーガーそしてそれぞれの副官が待っていた。

「第11輸送艦隊・第112護送駆逐艦隊・総合司令、ヴァルス・ラング少佐であります。」ラングは如何にも歴戦の戦士と
いった風貌の隻眼の男に敬礼した。

「私はヴェム・ハイデルン中佐だ。 だが、勘違いするな、ラング少佐、私はこの士官の役目の見届け役だ。居ない者と
思って欲しい。」ハイデルン中佐は答礼しつつ言った。

「ではこちらの少尉殿が”臨検”士官ですか?」ラングは初めての厳しい役目にコチコチになっている貴族の子息然とした
若者に敬礼した。

「ハインツ・ルーデル少尉であります。 この度はゴトランド・ゴース艦隊の妨害を排し良くぞ補給・輸送を成功させて
頂けました。 感謝します!」ルーデル少尉は英雄を見る眼差しでラング達に敬礼していた。

「こちらも少々複雑な事情を抱えていておりまして・・・。」ラングは積荷の摘み食いを如何に報告・説明するかを
考え口籠った。

「ラング司令、ここまで来たら始まらねえ、正直に全てを話すしかないだろ。 おっと俺の申告がまだだったな。
俺は第11輸送艦隊司令、フォムト・バーガー中尉だ。よろしくな。」バーガーもルーデル少尉に敬礼した。

「では搬送・積荷のデータを現物と照合します。 宜しいですね?」臨検・少尉は当然の様にその役目に従った。

なる様になれとそっぽを向いて口笛を吹くバーガー、ラング司令は覚悟を決めたが如く腕組みをして目を瞑っていた。

「えっ!」”書類”のデータと実際に積載されている魚雷やミサイルの数を照合していたルーデル少尉が手にしたタブレット
端末から顔を上げ、腕組みしているラングに当惑した視線を浴びせた。

それもそのはず、積荷の魚雷やミサイルは二十発づつコンテナーに収められ、それが一隻当たり十梱包積んでいたはず
だったが書類上積載している魚雷やミサイルはそのことごとくが『戦闘による行方不明』となっていた。

「ラング司令、『戦闘による行方不明』とは被弾によるものですか? それにしては輸送艦の被弾跡はほとんど無かった様ですが・・・?」ルーデル少尉が戸惑いながら尋ねた。

「それについては第11輸送艦隊司令の俺が答えよう。」バーガーが本来の自分の責任を取るべく手を挙げた。

**************************************************

「それではゴトランド回廊を固めていた敵艦隊を中央突破する為に積荷の魚雷・ミサイルを投棄して身軽になったと言う事
ですか! それでは戦線離脱と同じです。軍法会議ものです!」ルーデル少尉は呆れていた。

強固な敵守備艦隊を退けて輸送を成功させた英雄と思っていただけに落胆も大きかった。

「少尉、積荷の投棄を命じたのはこの私だ。 バーガー中尉に責任は無い。」ラングは話が複雑になる前に二人の問答に
割って入った。

「おおよそガミラスでは上官の命令に従って行動した者が軍法会議に掛けられた例は無い、違うかね少尉。」ラングは
複雑極まる事の顛末を一つ一つ丁寧に解きほぐして行った。

「うははは! これは痛快だ。 貴様らは輸送艦隊を身軽にして敵艦隊の中央突破を図った。
しかもその積荷・魚雷の捨て場所は敵艦隊中央だったと言うのか!」それまで黙ってルーデル少尉の”臨検”作業を
見つめていたハイデルン中佐が高笑いした。
e0266858_09490991.jpg
「迂回コースを取らせていた別働隊と連絡が取れました。イオン嵐宙域を航行して来た艦隊は全艦無事です。 
重力井戸宙域を迂回した艦隊は敵小艦隊の待ち伏せに会い二隻を喪失、自衛の為手持ちの魚雷・ミサイルは全部使用
したとの事です。」通信士が朗報と凶報の両方を伝えた。

ガミラス軍内では輸送艦が宇宙気象や重力井戸、敵艦隊から退避する為に積荷を投棄する事は認められている。

そうでなければラングが使用させた輸送艦の迅速積荷投棄装置など初めから装備されているはずも無かった。

だが、辿り着いた補給先で渡す物資が全く無いと言うのでは任務は失敗である。

そしてその場合、軍法会議を経て銃殺される恐れが高かった。

しかし、ラングが指揮する第11輸送艦隊・第112護衛艦隊は大きな損害を出しつつも敵・封鎖艦隊を排除し、
最初の数分の一になってしまったが積荷の輸送に一応、成功した。

しかも投棄した魚雷・ミサイルはただ捨てたのでは無く敵艦隊に叩き込み壊滅的損害を与えていた。

更に僅かではあったが無傷の魚雷・ミサイルの輸送にも成功していた。

これで取りあえず、第六空間機甲師団も一息つける事が出来たのだ。

「・・・。」ルーデル少尉はラングの顔とハイデルンの顔を交互に見た。

さすがに少尉のすがり付く様な眼差しにハイデルンは助け舟を出す事にした。

「ルーデル君、ラング司令は間違った事はしておらんよ。 彼の行動を戦略的視点で考えて見たまえ。」ハイデルンの
『戦略的』と言う言葉がルーデル少尉の顔の曇りを取り去った。

ラングの指揮する第112護送駆逐艦隊はバーガー中尉の指揮する第11輸送艦隊を守って第六空間機甲師団へ
武器・弾薬を届ける事が任務であった。

そして第六空間機甲師団は他の機甲師団と協力して惑星ゴースとその所属するゴトランド星系を制圧する任務を持っている。

だからラングが第六空間機甲師団へ弾薬を補給しようとする時、妨害して来る敵艦隊に運んでいる魚雷を叩き込んで
届けるべき積荷を消費してしまってもその消費によって敵艦隊の勢力をそぐと言う意味ではゴトランド星系を制圧、
惑星ゴースを併合すると言うガミラスの大戦略から外れた行為と言うよりは適切な援護攻撃と言えるのである。

「ラング司令は単に魚雷を輸送した訳では無い、それを使った”戦果”を届けてくれたんだ。」ハイデルンはラングの
左肩に手を置き、その戦功を讃えた。

**************************************************

 第11輸送艦隊の残存艦は軽巡ゲットランに先導され、後方左右に第112護送駆逐艦隊を従えて進んでいた。

「後少しで本隊の泊地だ。 破損した艦の修理も行えるぞ!」ラングがバーガーが手荒く扱った為、廃艦寸前の
第112護送駆逐艦隊、各艦に檄を飛ばした。

「司令、嫌な兆候が超空間通信に出ています。」通信士が報告した。

「何! ゴトランド・ゴースの”ジャミング”が始まったか?敵艦隊の攻撃を厳戒せよ!」ラングは全艦隊に警戒警報を
流した。

しかし、その行動も虚しく先導艦の軽巡ゲットランの近傍に一瞬、影の様な物が現れたなと思う間もなくその影はビームを
放つと再び宇宙の闇に消えた。

「ゲシュタム・アタックか!(一撃離脱・攻撃)」ラングはまだ敵艦隊が無力化されていないのを感じた。

「ゲットラン、被弾! 損害の模様は不明!」情報士官が報告した。

「ゲットランどうした! 損害状況を知らせ!」ラングは何度も呼びかけた。

「こちらヴェム・ハイデルン少佐。敵の奇襲を受け艦橋要員に死傷者多数、応援を求む。」
ハイデルンが応えた所を見ると設備敵な損害より人為的な損害が大きい様だった。

<艦橋窓から敵ビームが侵入したか!>襲って来た敵艦はそれほど大きくない戦闘艦だった、だから放ったビームが
ガミラス艦の装甲を貫けないのは承知で艦橋の”窓”を狙って乗員の殺傷を図ったものと考えられた。

「ゲットランの艦橋要員は全滅ですか? しかし通信を送って来た所を見ると設備敵損害は少ないと判断されます。
だったらこちらの艦で航行出来るが戦闘不能なKR-101の艦橋要員を送りましょう。」副長のカウト大尉がラングに
進言した。

「了解した。カウト・ロゼム大尉、救援隊を率いてゲットランにおもむけ!」ラングの命令に副長は静かに首を振った。

「お言葉ですが私は司令が先程口にされた”ゲシュタム・アタック(一撃離脱・攻撃)”なる物の詳細を知りません。 ここは
少しでも多くの情報を持つ人が行くべきだと思います。」副長の主張はもっともだったがラングにしてみれば再度持ち場を
離れる越権行為を促されている様で苦笑した。

**************************************************
e0266858_10004743.jpg
「ゲットー! ライル・ゲットー中尉、しっかりしろ!俺だ、バーガー中尉だ。」バーガーは床に艦橋の床に倒れていた
旧友を助け起こした。

「見っとも無い姿を見せてしまったな。救援を感謝する。」傷ついたゲットーが弱々しくバーガーの手を握った。

「それとな、すまんが俺はもう中尉じゃない、大尉だ。」ゲットーは力なく微笑むと目を瞑った。

「ゲットー!」バーガーが焦って友を常世の世界から呼び戻そうと声を掛けた。

「バーガー中尉、友を気遣う気持ちは判るがまずは任務に専念したまえ、それが友を救う最短の道だ。」ラングが前と
違った厳しい言葉でバーガーに任務遂行を促した。

「彼なら大丈夫だよ。 右手首の優先タグを見て見たまえ。」友を気遣うバーガーにゲットーに付けられた救急優先
ストラップの色が”緑”である事を示した。

普通、至急要搬送者には”赤”、念のための搬送者軽傷者には”黄”、搬送の必要が無い軽傷者には”緑”、そして死者は
”黒”のストラップが右手首に巻かれる、そして今回の襲撃でほとんどの艦橋要員は軽傷者ばかりであったが、
艦橋最前部に居た操舵手だけは戦死してしまった。

多分、敵ビームは艦橋窓正面からでは無く、艦橋側面に命中、拡散して正面窓から侵入した物と考えられた、
そうでなくてはこの物的・人的損害の少なさは説明出来なかった。

「”技師(エンジン)! この艦の装備はまだ使えるか! 特に探知装備に問題はないか、良くチェックしてくれ!」
ラングは今回も”技師(エンジン)ことホッファー・キルリング技術少佐を伴っていた。

「もう済んでまっせ! 全探知系、通信系、電子戦装備もバッチリや、いつでも全力で戦えますぜ、大将!」
”技師(エンジン)が力強く応えた。

「よし、これより敵・襲撃艦を殲滅する。 駆逐艦ZR-101は本艦に同航して作戦に参加せよ!」ラング司令の命令は驚くべきものだった。

ラングが率いていた第112護送駆逐艦隊は先程のゴトランド・ゴース艦隊との戦闘で大損害を出しており、
ZR-101は主砲塔回転不能、全魚雷・ミサイル残弾無し、ZR-102は主砲は無事だったが、」やはり全魚雷・ミサイルは
撃ち尽くしていた、ZR-103に到っては撃沈され全損していた。

「何故、戦力を残しているZR-102では無く戦力にならないZR-101を同航するんだ?」バーガーは再び駆逐艦・艦長に
指名されたがそれが戦えない艦である事が大いに不満だった。

「作戦はまず、ゴトランド星域を眼下に一望出来る宙域まで長距離ゲシュタム・ジャンプで離れ、敵艦の位置を特定、
ピンポイント・ジャンプで至近距離に接近・攻撃、殲滅します。」ラングが作戦を説明した。

「ゲシュタム・ジャンプで逆落しか、随分と大胆な作戦だな。」ハイデルン中佐はラングの作戦説明を聞いて感心した。



                                       209.疾風の漢(おとこ)ー(6) この項 続く




                                               

[PR]
by YAMATOSS992 | 2016-06-18 21:00 | ヤマト2199 挿話 | Comments(0)