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宇宙戦艦ヤマト前史

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宇宙戦艦ヤマト登場前の地球防衛軍の苦闘を描きます。

カテゴリ:本文( 24 )

 「土星宙域にいる早期警戒艦がガミラスの戦略偵察艦がこちらに向かっているとの情報を送ってきました。」
情報士官が参謀本部に報告した。

参謀本部長、伊地知少将はその報告を聞くと地球衛星軌道上にいる突撃駆逐宇宙艦隊に迎撃を命じた。

彼はガミラスが戦略偵察を行うとしたら地球本土上陸作戦の兆しと決め付けていたのだ。

地球衛星軌道上に配置された突撃駆逐宇宙艦隊は本来、遊星爆弾迎撃の最後の砦だったのだが、
だからと言ってガミラスの戦略偵察を許す訳にはいかなかった。

第5宙雷戦隊と呼ばれるその艦隊の指揮官は古代守少佐だった。

彼はこの任務のため、木星会戦には参加出来なかったので敵艦来襲の報に喜び勇んで飛び出して行こうと
した。

だが、そんな彼に待ったを掛ける男がいた。

「慌てるな。 坊や、 何処に行けばいいのか、本当にわかってるのかい。」血気に逸る古代少佐に声を
掛けたのは地球近傍の宙域の哨戒を担当している早期警戒艦「たかお」の艦長、永倉大佐だった。

「このまま、最後に観測された位置の方向に真っ直ぐ突き進めば出会うんじゃないですか?  大佐。」
古代はムッとして応えた。

「だから若いって言うんだ。 相手はワープ出来るんだぞ。 一直線に来るとはかぎらん。 いや、本気で
地球本土を戦略偵察する気なら冥王星方向から真っ直ぐ来る様な真似はせんよ。」

確かに永倉大佐の意見はもっともだった。

<しかし、それなら俺は何処へ向かえば良いんだ?>古代守は当惑した。

「その為に、俺たちがいるんだよ。  今、地球は月基地と2隻の早期警戒艦がつくる三角形の警戒網を
作っている。

ガミラスの戦略偵察艦がどの方向から来ようとこの警戒網には必ず引っ掛かる、だからその情報に従って
迎撃すれば良い。

幸い、今、来ているのは偵察艦だ。 迎撃するのは2隻の突撃艦で充分だ。 本来はやりたくないが君の
艦隊を3つに別けてそれぞれの警戒艦や基地の指揮に従えば確実に迎撃出来る。」永倉大佐は古代に戦術を
授けた。

早速、古代は配下の突撃艦を3分隊に別けて各早期警戒艦と月基地の配下に置き、偵察艦の襲来に備えた。

しかし、実際は全く違った方向に戦局は動いていったのだった。

**********************************************

 火星のオリンポス山地下大空洞を利用して作られた地球防衛艦隊秘密基地は土星宙域にいる早期警戒艦
「シドニー」からの情報に緊張が走っていた。

しばらくぶりに遊星爆弾の大量投射が観測されたのだ。

その数、10基、もはや艦隊型駆逐宇宙艦、1隻で対処出来る数ではなかった。

幸い、10基の遊星爆弾は固まって飛来してきている、これならば反物質弾頭を付けた大型ミサイルで
迎撃すれば1、2基は破壊、その他は大きく機動をそらせる事が出来る。

火星の衛星フォボスの近傍にあったミサイル工廠から反物質弾頭大型ミサイルが発射され、
艦隊型駆逐宇宙艦「あさぎり」によって誘導、飛来する遊星爆弾を迎撃した。

しかし、「シドニー」は更に10基の遊星爆弾、投射を観測した。
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「ガミラスめ、何を焦っている・・・。」火星秘密基地の司令、鴨志田少将はガミラスが遊星爆弾による
戦略核攻撃を本格化させたものと考え、フォボスのミサイル工廠に更に1基の反物質弾頭大型ミサイルの
用意をさせた。

だが、この遊星爆弾攻撃はいままでの地球に対する戦略核攻撃ではなかった。

2投射目の遊星爆弾群が木星軌道に到達した時、浮遊大陸哨戒基地から発進して遊星爆弾群を待っていた
ガミラス駆逐型ミサイル艦が遊星爆弾を先導するかの様に同速で航行し始めた。

また、そのころ、火星軌道では「あさぎり」が遊星爆弾迎撃の最終工程に入っていたが、ガミラス機動部隊も
また、作戦位置に付き、攻撃機を発艦させていた。

そして「あさぎり」は遊星爆弾群、第1陣の破壊・ミス・リードをさせる反物質弾頭大型ミサイルを命中させる
一歩手前で撃沈されてしまった。

もはや、火星軌道周辺で遊星爆弾、第1陣を防ぐ事は出来ない。

すぐさま、火星秘密基地から地球へ遊星爆弾迎撃失敗の報が飛ぶ、戦略偵察艦の迎撃のために地球
衛星軌道上に展開していた古代守の第5宙雷戦隊は再集結し、冥王星方向へ向けて発進していった。

そのころ、火星では「あさぎり」が撃沈されてしまったものの、遊星爆弾、第2群10基の迎撃をやめるわけには
いかなかった。

また、次の誘導用艦隊型駆逐宇宙艦の発進はとても間に合わない状況だった。

そこで、位置を知られる恐れを犯して早期警戒艦「シドニー」が反物質弾頭大型ミサイルの誘導を引き継ぐ事に
なった。

フォボスのミサイル工廠から長いプラズマ炎を引いて大型ミサイルが発射されていく、だが、ガミラスはこの時を
待っていたのだ。

前回の火星基地、詳細偵察時、遊星爆弾迎撃用大型ミサイルの発射ポイントは発見出来なかった。

そして、論理上、宇宙空間で利用する物をわざわざ重力井戸の底である惑星上で製作、運用するとは
考え難かったため、ガミラス冥王星前線基地の首脳陣は必ず、ミサイルの組み立て発射基地は火星衛星
軌道上にあるとふんでいた。

だから、今回の時間差攻撃はその位置を確かめ、攻撃する意図も含んでいたのである。

土星宙域に陣取っていた早期警戒艦「シドニー」は撃沈された「あさぎり」に変わって反物質弾頭大型ミサイルの
誘導を引き受けるために、全速力で木星宙域に入っていった。

しかし、その姿は木星の浮遊大陸哨戒基地から発進したパトロール艇に発見されてしまったのである。

**********************************************

「ミサイル、遊星爆弾群の衝突コースに乗りました。 あと20分後には命中します。」戦術士官の報告に
「シドニー」の艦長はホッと胸をなでおろした。

「良かった、なんとか間に合ったぞ。このポンコツも捨てたもんじゃないな。」艦長はコンソールをポンと叩いた。

その時である、「シドニー」の船体が大きく揺れた。

「どうした!探査主任!」艦長が呼ばわった。

「ガミラス艦・・・だと思われます。 ただ、今までのガミラス艦とは違い、異様に小さいです。」探査主任は
当惑していた。

元々は軽巡航宇宙艦だった「シドニー」は小ぶりだとはいえ、100mを超える全長を持つ、それに比べ、今、
攻撃してきたガミラス艦は小型で有名なゆきかぜ型突撃駆逐宇宙艦より更に小さい直径50mの円盤型を
した艦だった。

いや、もはや、このサイズになると艦というより、艇、ボートのレベルでしかない。

この船は木星の浮遊大陸哨戒基地から発進したパトロール艇であった。

しかも武装はほとんど持っていない、彼等は車両の出入り口を開け、そこから搭載している戦車の砲を
撃ってきたのだ。
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「見敵必戦か、敵ながら見上げた根性だな。」艦長はそのパトロール艇の戦意を称えた。

「だが、攻撃してくる者を黙って見過ごす事は出来ない! 主砲で反撃しろ!」

「シドニー」は軽巡航宇宙艦だったころから6インチ連双フェーザー砲塔3基と軽武装だった。

早期警戒艦に改装するにあたり、武装は最小限度の6インチ連双フェーザー砲塔1基に減らされていた。

だが、今、相手にしているパトロール艇はその位の軽武装でも充分だった。

「シドニー」のフェーザー砲2連射でパトロール艇は沈黙した。

その時である戦術士官が慌てて報告した。

「大変です。 遊星爆弾の軌道が大きく変わりました。」

「何! 迎撃が成功した訳ではないのか!」

「はぁ、迎撃用反物性弾頭大型ミサイルは爆発せず、そのまま外宇宙に向けて遠ざかっていきます。」

「遊星爆弾の新しい軌道を計算しろ!直ぐにだ!」艦長は嫌な予感を感じていた。

「大変です!遊星爆弾群の新しい目標は火星、オリンポス山です!」

「何! それでは本当の目標は火星の前線秘密基地だったのか!」

「直ぐに火星基地に警報を伝えろ・・・、」艦長がそこまで言った時、沈黙していたパトロール艇が最後の力を
振り絞って搭載戦車の砲を「シドニー」の機関部に打ち込む事に成功した。

「シドニー」は警報を発する事が出来ないまま爆沈した。

ガミラス・パトロール艇の搭載戦車の砲塔の中でも名も無いガミラス兵が微笑んだまま息絶えていた。

**********************************************

 2投射目のガミラス遊星爆弾群10基が木星軌道で大きく軌道を変えたのは普通の遊星爆弾とは違い、
軌道修正用の補助エンジンとその制御装置とプログラムを積んでいたからだ。

そして、1隻の駆逐型ミサイル艦がそれを使って地球直撃軌道から火星、オリンポス山に目標を変更する様、
軌道を変えたのだ。

「シドニー」の哨戒をあてにしていた火星前線秘密基地は自らのコスモ・レーダーに遊星爆弾群を感知するまで
その奇襲に気が付かなかった。

いや、感知しても遊星爆弾攻撃は地球に向かってなされるものとの固定観念が混乱を生み、何も出来ない
まま、遊星爆弾10基の集中爆撃を受けてしまった。

火星の運行軌道が変わるかと思われるくらいの大爆発がおさまるとオリンポス山のあった場所には巨大な
クレーターが口を開けていた。

それは地球軍が基地にしていた地下の冷えて固まったマグマ溜まりの上に出来ていた大空洞が完全に
潰れた事を表していた。

そして、死火山だと思われていたオリンポス山の地下深くにはまだ溶けたマグマ溜まりがあり、そのマグマが
噴出して巨大なクレーターの中に流れこんで火星秘密基地、壊滅の最後の仕上げをした。

この作戦の最後の仕上げとして、遊星爆弾を誘導した駆逐型ミサイル艦と高速宙母は共同して火星の衛星、
フォボス近傍の空間にあった、地球軍の遊星爆弾迎撃用大型ミサイルの建造・発射基地を叩き、壊滅させる
事に成功、意気揚々と冥王星に引き上げていった。

対する地球陣営には重苦しい空気が流れていた。

遊星爆弾攻撃を防衛する出城的な役割の火星秘密基地が叩かれたのだ。

そして、地球軌道上の突撃駆逐宇宙艦による防衛はやはり完全ではなく、10基の遊星爆弾の内、3基の
阻止に失敗していた。

「申し訳ありません。 我々がもっとしっかりしていればこんな事には・・・。」古代守は司令部で藤堂長官、
沖田少将、伊地知少将に頭を下げていた。

今回の遊星爆弾、3基は陸地ではなく、大西洋に固まって落ちた、その結果、200mの高さを超える大津波は
大西洋沿岸の大陸や島、その全ての表面を洗い流し、不毛の土地としていた。

幸い、1発目の示威で行われた遊星爆弾攻撃の結果、地表は「核の冬」を向かえていたので人類はその殆どが
地下に生存の場を求めて移住していた。

このため、人的被害は最小限度に食い止められたが、それでも億を大きく超える人命が失われた。

「古代少佐、悔やんでも始まらん。 我々の迎撃システムには大きな穴がある様だ。 君一人の責任ではない、
あまり自分を責めるな。」藤堂長官は古代守の前に進むとその肩に手をおいた。

「しかし・・・。」何か古代が言いかけると今度は沖田少将がそれを制した。 そして、もう行け、と合図した。

古代は海軍式の敬礼をすると自分の艦へ帰っていった。

それを見送った藤堂と沖田は伊地知少将の方に向き直った。

しばらく嫌な沈黙が3人の間に流れた。

早期警戒艦「シドニー」が戦略偵察艦の艦隊という有り得ないものを発見した時点で司令部まで報告が
上がっていればもしかしたら結果は違っていたかもしれない・・・、そうした思いが藤堂にも沖田にもあった。

伊地知少将の独断専行が生んだ悲劇なのかもしれなかった。

だが、沖田は黙って首を振った、あの戦略偵察艦の任務が何だったのか、未だに判っていない、
そして「朝霧」を攻撃した攻撃機がどこから来たのかも不明だ。

ガミラスに遊星爆弾の軌道を大きく変更する能力がある事も判った。

早期警戒艦と突撃駆逐宇宙艦の組み合わせだけで遊星爆弾を迎撃し切れるだろうか・・・。

沖田はこれから続くであろう、長く苦しい戦いを思った。

だが、わしは決して諦めない、ガミラスを太陽系から放逐するまで決して諦めない!と決心を新たにするので
あった。

                                                   

                                                    ヤマト発進まで1277日
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by YAMATOSS992 | 2012-05-28 21:00 | 本文 | Comments(0)
ガンツ中佐の提案どおり、木星の浮遊大陸に設けた観測基地から発進したパトロール艇による哨戒はまもなく
効果を上げた。

月基地のマス・ドライバーをガミラスに破壊された地球軍は今度は火星衛星軌道上で反物質弾頭を備えた
大型ミサイルを組み立てて、発射、木星会戦で生き残った数少ない艦隊型駆逐宇宙艦に誘導させて迎撃
していた事が判明したのだ。

シュルツはその報告を聞くとすぐさま艦隊を派遣してそのミサイルを誘導している駆逐宇宙艦を叩こうと
考えたが、ガミラスもまた、木星会戦で大きく傷ついており、バラン星から新しい艦艇を補給する必要に
かられていた。

木星会戦の結果、ガミラス艦隊の中心戦力である、汎用戦闘艦、駆逐型デストロイヤーはほぼ全艦が
大なり小なり傷ついていたからだ。

当然、今、作戦を行い、ただでさえ損耗している艦隊を更に傷つける事は得策ではなかった。

「ガンツ、何か妙案は無いか・・・。」レッチェンス大将を失って戦略案や戦術案を一人で立てなければならなく
なったシュルツは必然的にガンツ中佐を副官として重用する、いやせざるを得なくなっていた。

シュルツ大佐は古いタイプの軍人であり、大艦巨砲主義者であった。

従って、突撃艦の様な駆逐型ミサイル艦は戦力としてあまりあてにしていなかった。

レッチェンス司令から譲られた大型戦艦を投入する事も頭の隅を過ぎったが、まだまだ戦力を残している
地球陣営の中に虎の子の大型戦艦を向かわせる勇気はシュルツには無かった。

何やかにや言ってもガミラスは一応、有利に戦局を進めている、それなのに、この優柔不断ぶりである。

そんなシュルツの姿を見てガンツ中佐はこのままで本当に大丈夫なのか、不安になったがそんな彼も
シュルツと一連托生なのは変わらなかった。

シュルツもガンツもガミラスの被征服星の出身であり、戦果を挙げられなければその配下の部隊ごと始末され
かねない立場だったからだ。

「司令、せっかく、宙母が2隻も配備されているのですから機動部隊を編成してみてはいかがでしょう。」

「機動部隊? 宙母部隊か? そんな脆弱なものが役にたつのか?」シュルツは懐疑的であった。

確かに宇宙での戦いでは宙母は使い方の難しい艦艇であった。

宙母は艦載機を運用して艦隊の攻防力を担う役目があったが、艦載機は有人である以上、必ず帰還を前提と
した運用をしなければ成らなかった。

すなわち、帰りの燃料や推進剤を必要とする有人機は母艦から大きく離れる事は出来ず、艦隊戦では
近接防御が主任務にならざるを得なかったのだ。

それならば母艦から無人機を発進させれば、帰還を考えなくても良いので有人機の倍の距離にいる敵を攻撃
出来るのである。

これはすなわち、ミサイルを主兵装とする駆逐宇宙艦の用法に他ならない。

従って、ガミラスでも宙母は比較的贅沢な兵器と考えられており、あまり重用される事は無かったが、有人機の
融通の利く運用性は偵察や局地攻撃、反乱鎮圧などに価値を見出され、冥王星前線基地にも新型の十字型
高速宙母が配備されたのだ。

ガンツ中佐はその艦載機の融通の利く、運用性に着目した。

また、ガンツは1隻目の高速宙母を回航してきたピラウア少佐から高速宙母とその艦載機の有効な運用法を
学んでいた。

その秘策を秘めて2隻の高速宙母が冥王星前線基地を発進していった。

シュルツはガンツから作戦の説明を充分受けていたのだがそれでも自分が慣れ親しんだ艦艇型で無い
宙母の姿に不安を隠しきれないのだった。

*********************************************

「早期警戒艦『シドニー』より入電!遊星爆弾1基、地球に向かっています。」

「よろしい、護衛艦などはついていないか?」艦隊型駆逐宇宙艦「ゆうぐも」の艦長は問いただした。

「遊星爆弾だけでの飛来との報告です。」

「よし、本艦はこの遊星爆弾の迎撃に向かう、目標軌道データに従い、変針せよ」

「ゆうぐも」はこの遊星爆弾の迎撃に向かうべく、大きく面舵をとり、加速した。

ガミラス側は地球軍が的確に遊星爆弾を迎撃してくるので以前の様に一度に大量に投射するのをやめていた。

複数の遊星爆弾が固まって飛来するとそのなかの1発に反物質爆弾の命中があった場合、被弾した
遊星爆弾が破壊されるのはもちろん、周りの遊星爆弾も猛烈な対消滅爆発の影響を受けて軌道を
外されてしまう。

これでは、ガミラス側はいくら自然物を利用しているとはいえ、遊星爆弾が幾つあってもたまったものではない。

反対に今の様に遊星爆弾を1基だけ発射すると地球側はその1基のために大型反物質爆弾と大型ミサイルを
1基づつ、消耗しなければならなくなる、木星という資源、エネルギーの供給源を絶たれた地球にとってこの
様な消耗戦は避けたいところであった。

そのために地球側は火星軌道に艦隊型駆逐宇宙艦を単艦、交代で常駐させていた。
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本来、反物質弾頭大型ミサイルの誘導だけなら艦隊型駆逐宇宙艦の必要はない、遊星爆弾を感知する
早期警戒艦がミサイルの誘導もすれば済む事である。

それをあえて艦隊型駆逐宇宙艦をその誘導艦に当てているのは、遊星爆弾が単独飛来した場合、
通常サイズの反物質弾頭ミサイルで迎撃し、あえて破壊を狙わず、命中軌道を外させる事が出来るためで
あった。

今回の遊星爆弾迎撃に向かった「ゆうぐも」は比較的古い設計の「かげろう」型の駆逐宇宙艦だったが、
ミサイル・プラット・フォームとしては充分な能力を持っており、この種の任務にはうってつけの艦であった。

「ゆうぐも」が遊星爆弾を探知、その軌道を変えるためのプログラムを施したミサイルを発射した時である。

ガミラスの高速宙母から発進して地球軍、駆逐宇宙艦を捜索していた艦載機がミサイルの発射炎を探知、
「ゆうぐも」の位置を知った。

ガミラス艦載機はブーメラン型をした全翼機であったが、これは大気圏内での運用を考慮したというより、
ミサイルなどの外装兵装をより多く積むための設計であった。

1機6発の艦載機にしては大型のミサイルが宙母1艦で攻撃機20機のミサイル、計120発が「ゆうぐも」に
襲い掛かった。
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「ゆぐも」は個艦防御兵装として5インチ連双レーザー砲塔を3基、計6門を持っていたが、120発もの
ミサイルの同時攻撃を迎撃することは出来ず、また、突撃型駆逐宇宙艦と違って運動性能は大きく劣って
いたためかわす事もかなわず、爆沈して果てた。

通常だったら宙母艦載機の航続距離くらいであれば「ゆうぐも」は容易に高速宙母の存在を探知出来たはず
だった。

しかし、今回、ガミラス冥王星前線基地の副官、ガンツ中佐は高速宙母の回航員であったピラウア少佐から
秘策を授けられていた。

宙母の攻撃半径の足枷となっているのは有人艦載機の航続力が半分しか使えない事であった。

つまり、艦載機は攻撃するための往路に加え、宙母に帰還するための復路に全航続力を別けて使わねば
ならないのだ。

これでは艦隊型駆逐宇宙艦の方がよほど遠距離の敵を攻撃出来ると考えるのが自然であり、ガミラスでも
その考えのもと、宙母は艦隊戦には使わず、惑星制圧戦に使う艦艇として用いられてきた。

しかし、有人である事の融通性の高さを生かす研究は宙母関係者のなかで地道に行われており、ついに
コロンブスの卵的発想が宙母の運用に画期的な道を開いたのである。

それは複数の宙母による機動部隊の結成であった。

しかし、これは単に宙母がかたまって行動するのではなく、一種の艦載機のシャトル運用とも言うべき
用法だった。

1隻の宙母が艦載機の航続距離ギリギリのところで敵に向かって機を発進させて攻撃を行い、機はそのまま
フライ・バイして敵のいる宙域を慣性で脱出、安全な宙域で前もって待機していた別の宙母に攻撃機を
回収させるというものだった。

もちろん、2次攻撃が必要ならば回収した宙母で燃料、推進剤、武装の補給を受けて再度、攻撃をかけ、今度は
出発した宙母に帰れば良いのである。

そして、このフライ・バイ攻撃は訓練を積みさえすれば、ワープの出来るガミラス艦なら最終的には1隻の
宙母で実行可能なものだったが、今回は初回という事もあり、錬度不足の搭乗員や艦艇の乗組員のことを
考えてガンツは機動部隊での運用に絞って作戦を行った。

しかし、それがガミラスに幸運をもたらすとは誰も考えてはいなかった。

*********************************************

ガミラスの放った機動部隊は火星からかなり離れてはいたが攻撃機を回収する役割の高速宙母は火星よりの宙域にいた。

いくらガミラスの軍人が精神力を鍛えられているとはいえ、自分の搭乗している艦載機が燃料切れを起こして
慣性航行に移った時、何も無い無の空間を目指して飛ばざるをえなくなるのは避けたい事だったのである。

このため、「ゆうぐも」を攻撃した6機の攻撃機は火星を目指して飛ぶ様に作戦行動が決められていた。

比較的火星よりの宙域でもう1隻の高速宙母は20機の攻撃機を回収する作業を始めた。

有重力下での空母への着艦作業は海上に浮かぶマッチ箱に降りる様だと形容される様に難しい物の代表の
様に言われるが、無重力下ではランデブーして着艦アームを宙母が伸ばして艦載機を艦内に引き込めば
済むのである。

着艦の順番待ちの時にも事故の起きる確率は有重力下の時に比べれば格段に少なかった。

だが、いくら離れているとはいえ、この宙域は完全に地球軍の勢力圏内である。

高速宙母は艦載機の回収作業を進めつつも、火星方面にいるであろう地球軍の動きに気を配っていた。

着艦待ちをしている機のパイロットも警戒措置の一環として火星の表面を機載の偵察用望遠モニターで
観察していたが、その結果、驚くべき事が解かった。

「ゆうぐも」が撃沈されても、さすがに直ぐには次の駆逐宇宙艦は姿を表さなかったが、高速宙母が初めての
作戦で艦載機の回収に手間取って時間が掛ってしまっていると次の駆逐宇宙艦が姿を表した。

地球軍もいつまでも遊星爆弾の脅威に耐えられなかったからであった。

ある意味、かつてシュルツがヨルクに圧力を掛けて実施させた遊星爆弾示威攻撃の恐ろしさが地球陣営に
染み渡っていたといえる。

しかも彼は単に次の迎撃任務に就く駆逐宇宙艦を発見しただけでなく、その発進基地をも見つけたのだ。

それは火星最大の火山であるオリンポス山の麓にある、宇宙艦発進口であった。

しかし、高速宙母の艦長は慎重だった。

もう1隻の高速宙母も呼び寄せると2隻で連携して詳細偵察行動に入った。

その結果、地球軍の火星基地は死火山であるオリンポス山の地下深く、既に冷えて固まったマグマ溜まりに
出来た大空間を利用して作られている事をも突き止めた。

これは元々、高速宙母が戦略強行偵察任務を重要な任務として設計されており、強力な探知装置を幾種類も
持っていたから出来た事であった。

オリンポス火山の標高は25,000mもある。

マグマ溜まりにある空間の上の岩盤の厚さはそこまでは無かったが、流石に高速宙母の艦載機の攻撃力では
分厚い岩盤に守られた地球軍の火星基地には手が出せなかった。

そこでガミラスの機動部隊は一度、冥王星前線基地に帰り、シュルツやガンツと戦略を練り直す事にし、
すぐさまワープに入ると火星宙域を後にしていった。

**********************************************

機動部隊が持ち帰った地球軍の火星基地に対する情報はシュルツやガンツ、冥王星前線基地、首脳部を
色めきたたせた。

木星圏のプラント奪取はかねてからの計画であってが、火星にこれほど大規模な防衛拠点が設けられていた
とはガミラスにとって大問題であり、この拠点を潰さない限り、遊星爆弾による戦略核攻撃はおろか、
地球を艦隊で襲撃したとしても背後を突かれ、苦戦する羽目に陥るのは目に見えていたからだ。

普段はあまり声を掛けられない作戦スタッフや技術将校も含め、大規模な作戦計画が練られていった。

「なんだい、この無茶苦茶なスケジュールは! 1日で20個の遊星爆弾を発射しろって司令部は何を考えて
いるんだい、一体!」
ガミラスの遊星爆弾発射用の施設では下士官が理由も聞かされずに押し付けられたノルマに悲鳴を
あげていた。

しかも、地球軍にこの作戦がある事を悟られぬために、無駄と判っていても1日、1基の遊星爆弾攻撃は
休まず続けられていた。

また、技術部や前線工廠でも新しい作戦に向けて新装備の開発・製造が急ピッチで推められていた。

開発とはいっても、遊星爆弾の軌道修正用補助エンジンとその制御システムであり、冥王星前線基地の
技術レベルでも充分対応出来る物で更にその製造数も量産という程の数ではなかったので前線工廠で数は
揃えられた。

突貫工事の末、この新作戦、「地球のたそがれ」の準備が出来たのは地球時間で7日後だった。

まず、その先遣として再び高速宙母2隻で編成された機動部隊が発進していったが、シュルツは機動部隊の
活躍に気を良くし、それがまるで自分の案だったかの様にガンツに得意そうな顔を見せた。

ガンツは<やれやれ、またか・・・。>と思ったが大事の前の小事と感情を顔に出さない様に極力、努めた。


「ガミラス艦出現! 距離10万! 数は2隻! 例の新型艦です。」土星宙域で警戒に当たっていた
早期警戒艦「シドニー」はガミラスの機動部隊を捕らえた。

「新型艦? 木星会戦の時、目撃したあの艦か? あれは戦略偵察艦だろう・・・。 それが何故、艦隊を
組んでいるんだ?」
「シドニー」の艦長は高速宙母と1度、会敵していたが、あの時は艦載機を使わなかったので、
それが宙母だとは想像も出来なかったのだ。

それに火星軌道で艦隊型駆逐宇宙艦「ゆうぐも」が撃沈された時に得られた情報では攻撃してきたのは
ガミラスの小型無人攻撃機だという事だった。

地球軍はまだ本格的な宙母を運用した実績がなく、シャトル運用という考えがなかった。

従って「ゆうぐも」を撃沈したのが高速宙母から発進した有人攻撃機であるとは考えもつかなかったのである。

もし、艦載機のシャトル運用という考えがあれば、攻撃機の飛来方向ばかりを探査して、進行方向を探査せずに
何の手掛かりも得る事が出来ない、しかも敵の攻撃機の回収作業が火星宙域で行われていたにも係わらず、
それに気付かないなどという無様な事にはならなかいで済んだはずであった。

だが、早期警戒艦「シドニー」の艦長は古参のベテランであった。

ガミラスの艦隊の正体が機動部隊である事までには気が付かなかったが、戦略偵察艦が行動しているという
事は敵が大きな作戦を計画している証であると考えたのだ。

「シドニー」は早期警戒艦である、通常の巡航宇宙艦とは比較に成らない探査能力を持っていた。

対してガミラス高速宙母は船体下面に偵察用探知装置が集中して装備されており、船体上部にある
航行用コスモ・レーダーの探知範囲や精度は駆逐型デストロイヤーとほとんど変わらなかったので
地球の早期警戒艦に目を付けられている事には気が付かなかった。

「シドニー」はガミラス機動部隊が充分遠ざかると探知情報を地球防衛軍司令部へ送り、ガミラス軍大作戦
行動に対する警告を送った。

                                                    ヤマト発進まで1278日
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by YAMATOSS992 | 2012-05-27 21:00 | 本文 | Comments(0)
 「どうした!ガミラス艦隊の総攻撃があったそうだが!」シェーア大将は旗艦「フレードリッヒ・デア・グロッセ」の
艦橋からプラントにある総合防衛司令部を呼び出した。

「はい、地球標準時15:07に南半球連合の艦隊が攻撃され、全滅しました。 その後、敵艦隊は再度ワープ、
行方を絶っております。」

「アジア連合の艦隊は無事か?」

「はい、今のところ、アジア艦隊も本艦隊も全く、攻撃を受けておりません。」

<フーム、ガミラスめ、何を考えている・・・。>シェーアはガミラスの司令官の心が読めなかった。

地球の常識でいえば真っ先に攻撃されるのは最も手薄なアジア艦隊のはずである。

だからこそ、シェーアはアジア連合のプラントと艦隊は強力な二つの艦隊で挟む形の布陣を敷いたのだ。

<読まれているのか・・・。 だとすれば、次に攻撃されるのはアジア艦隊ではなく、我が艦隊だ。>

シェーアはガミラスが弱い所から突き崩す戦法ではなく、自らの戦力が強大な内に手強そうな敵を片付ける
作戦だと読んだのだ。

<滅敵戦法・・・か、情け容赦ない奴等だ。> 敵の戦力を挫いて引かせる屈敵戦法ではなく、敵を一艦、一兵に
到るまで全滅させる滅敵戦法は後顧の憂いを絶つと言う意味でガミラスらしい戦法であった。

「南半球連合の艦隊が全滅した時の模様はデータがあるか?」シェーアは総合司令本部に問い合わせ、
データを至急、送らせた。

**********************************************

そのころ、レッチェンスは艦隊の建て直しに必死だった。

緒戦で2隻もの駆逐型デストロイヤーを失ったのだ。

ガンツ少佐の遊撃隊の駆逐型デストロイヤー2隻を引き抜き、本隊に組み入れざるを得なかった。

<あの指揮官め、経験は浅いが、度胸は満点だったわい!>レッチェンスは敵の司令官の力に瞑目した。

南半球艦隊はヤークト艦単独の攻撃時には戦艦のフェーザー砲塔を互い違いに左右に向けて一撃離脱
(ヒット・エンド・ラン)戦法に対応して見せた。

しかし、この態勢は両舷を満遍なくカバー出来るが自艦隊の砲力が半減したのと同じ結果となる。

レッチェンスもヤークト艦の攻撃時に南半球艦隊がとったこの戦法に指揮官が優秀ではあるが経験の少ない
提督であると看破、配下の駆逐型デストロイヤー、全艦を敵艦隊の木星よりの空間に小ワープさせ、砲力を
半減させた敵艦隊を圧倒的な砲力で沈黙させる作戦にでた。

しかし、小ワープして敵艦隊の右舷に出てみると敵艦隊は単縦陣でこちらに横腹を見せているのではなく、
横陣で艦首をこちらに見せており、ガミラス艦隊がワープ・アウトすると同時に突撃を掛けてきた。

ガミラス艦に艦首を向けている地球戦艦の目標としての面積は非常に小さく、反対にガミラス艦は横腹を
晒しているので目標としての面積は非常におおきくなっていた。

幸い、ガミラス艦は地球戦艦より重防御だったので地球戦艦が至近距離に接近するまで装甲を打ち抜かれる
事はなかったがそれでもガミラス艦隊の後部では地球戦艦によりガミラス艦隊は戦列を分断され、噴射口の
中にビームを打ち込まれた駆逐型デストロイヤーが2隻、爆沈してしまっていた。

これも英国伝統のネルソン・タッチ型戦術であるが駆逐宇宙艦と違って目標が大きく、動きが鈍い戦艦では
今一つの効果に欠け、強力な装甲を誇るガミラス艦隊に甚大な被害を与えるまでには到らなかった。

別動隊のガンツ少佐から連絡があった。

「司令、ヒッペルト中佐の威力偵察を退けた右翼の艦隊は見るからに手強そうです。 
ここは予定を変えて手薄な中央の艦隊を殲滅してはいかがでしょう。」

「わしが中央の艦隊を始末できたら直ぐに予定の行動に入るつもりだろう? ガンツ!」

心を見透かされたガンツはバツの悪そうな顔をした。

「慌てるな。もし万が一、右翼の艦隊がわしの艦隊を退けてもガンツ、お前の艦隊を相手に出来る戦力は
残さない!安心しろ!」レッチェンスは言い切った。

しかし、勇者は勇者を知る、の言葉どおり、欧州艦隊を率いるシェーア大将が腕利きである事を彼は
感じとっていた。

**********************************************

シェーア大将は相手の出方を見てから行動するタイプの指揮官ではなく、全軍を率いて戦運を自らの方に
引き寄せるタイプの指揮官だった。

しかし、今はプラントの防衛という相手の行動に自らの行動を合わせざるを得ない立場にあった。

とはいえ、彼は自艦隊をプラントの前を遊弋させるなどという中途半端な態勢は採らなかった。

どのみち動けないなら敵にも行動の自由を失ってもらおう。

彼は自艦隊をプラントの脇、ギリギリの位置に専位させた。

ガミラス艦隊が欧州艦隊より木星よりの空間にワープしようとしてもその位置にはプラントがある、ワープを
強行すればガミラス艦隊はプラントを構成している建築材料と物質重複を起こして吹き飛んでしまう。

否がおうでも、欧州艦隊の外側にワープせざるを得ないのだ。

艦隊は単縦陣を2群に別けてプラント前に外側に口を開いた「ハの字型」にしていた。

この悪魔の口にガミラス艦隊を宙雷戦隊の攻撃で誘導しようというのがシェーア提督の作戦だった。

「ガミラス艦隊出現!方位12時、距離10万、戦艦10 駆逐艦20」早期警戒艦から報告が入った。

ガミラス艦隊は超遠距離にも係わらず、フェーザー砲の一斉射撃を掛けてきた。

ガミラス艦のフェーザーは地球のそれよりも射程が長いとはいえ、この距離では戦艦の分厚い装甲は
破れなかった。

<ガミラスめ、何を考えている?>シェーアはレッチェンスの意図を図りきれなかった。

通常、軍艦のカタログ性能を比較する場合、主砲の射程が長い艦は短い艦より強いと判定される事が多いが、
最大射程はその距離まで弾を届かせる事が出来るというだけで命中率まで保障されているわけではない。

しかも実体弾ではなくエネルギー・ビームであるから距離の2乗に比例して威力は減ってしまう。

だから実戦では有能な艦長ほど砲戦距離を安全な範囲で出来るだけ詰め様とする。

<誘いか? だったら動くまい!>シェーアは断固として現状維持を命じた。

ガミラス艦隊のフェーザー・ビームは地球艦隊の直後にあるプラントに被害を与え始めていた。

また、ガミラス艦隊を罠の口に追い込む為に待機させていた宙雷戦隊にも被害を与えていた。

<ここが耐え時だ・・・。>シェーア大将がそう思った瞬間、彼の思考は真っ黒になった。

「司令!しっかりして下さい!司令! 軍医を呼べ!」参謀長がシェーアの体を支えながら叫んだ。

しかし、シェーアの体はそのまま旗艦の艦橋内で仰向けに浮遊し、軍医が駆けつけた頃には死亡していた。

脳溢血だった。
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**********************************************

「なんて事だ!シェーア提督が戦病死しただと! 欧州艦隊の次席の司令、カニンガム中将は・・・。」
戦艦「栄光」の寺内大佐が怒鳴るのを沖田提督が制した。

「嘆いても始まらん! 欧州艦隊は全滅したのだ! だが彼等はやるべき事はやってくれた。」沖田は
まなじりを決した。

「ガミラス艦隊出現!1時方向!距離5万! 戦艦4隻、単縦陣で接近、こちらの頭を抑えるつもりです。」
探査主任が報告する。

「オキタ・フォーメーション発動しますか!」山南艦長が沖田に問う。

「まだだ・・・。 それにその呼び名はやめてくれ。恥ずかしい。」沖田は打ち消す様に言った。

「敵の有効射程内、ギリギリまで引き寄せるんだ。そのかわり、無理はしないでよいぞ。」

ガミラス艦隊はアジア艦隊の戦艦が日本艦隊の「英雄」、「栄光」の2隻しかいないのは地球陣営の罠で
手薄な中央のアジア艦隊の防備を破ろうとすると、両翼の強力な南半球連合と欧州連合が押し寄せてくる
作戦だと読んでいた。

だからレッチェンスは両翼をそれぞれ別個に切り崩し、その後アジア連合の艦隊を排除して地球の
木星プラントを裸にするつもりだった。

ガミラス艦隊が先にフェーザー砲を発砲した。

地球艦隊も応射する、しかし、まだこの距離では地球艦隊のフェーザーはガミラス艦に弾かれてしまった。

ガミラス艦はそれに力を得て更に接近、必中の距離まで近づこうとした。

その時である、戦艦の陰に隠れていた突撃駆逐宇宙艦で編成された宙雷戦隊が2個、ガミラス艦隊に
襲いかかった。

艦隊型駆逐宇宙艦とは違って艦艇形の運用ではなく、航空機形の運用を前提とする突撃型駆逐宇宙艦は
突撃時の陣形は単縦陣ではなく、横に拡がった鶴翼型であった。

宙雷戦隊の指揮官、管野大尉は先陣を切ってガミラス艦隊に迫ると特殊ミサイルを放った。

配下の駆逐宇宙艦も負けじとミサイルを放つ、1隻の駆逐宇宙艦にはミサイル発射管が3基しか
搭載されていなかったが、突撃型駆逐宇宙艦は艦隊型の駆逐艦の様なセル方式ではなく、次発装填装置が
ついていたので連射が出来た。

すなわち、ガミラス艦隊が迎撃しきれないほどの多量なミサイルが投与されたのだ。

そしてこのミサイルは反物性ミサイルでは無かった。

もちろん核兵器でも反物質弾頭でもなかった。

このミサイルはガミラス艦のフェーザー・ビームを浴びて爆発すると液体をほとばしらせた。

しかもかなり粘性の強い液体である。

この液体はミサイルとして飛翔してきた時の慣性をまだ持っており、ガミラス艦のフェーザー砲塔周りに張り付いた。

フェーザー・ビームを潜り抜けたミサイルもガミラス艦の砲塔付近に粘性物質を撒き散らした。

レッチェンスは多数のミサイルを被弾した自艦や配下の駆逐型デストロイヤーに爆発も爆縮も起こらないのを
不審に思ったが、距離をつめて来ていた日本艦隊の戦艦2隻に対処する必要に迫られていた。

日本艦隊が再びフェーザー・ビームを放ったが、まだ距離が遠く駆逐型デストロイヤーの装甲を破るには到らなかった。

「こちらは既に必中の距離に入っている・・・。」レッチェンスは不敵な微笑を浮かべた。
 
「あの戦艦隊を葬れ!」彼の命令一下、ガミラス艦はフェーザー砲を放ったがそのビームは日本戦艦隊を
大きくかすめて宙に消えた。

「どうした! ちゃんと照準しろ!」レッチェンスは有り得ない部下の不手際に驚いた。

「照準はきちんと出来ています! 何故か砲塔が思う様に廻らないのです。」射撃手が信じられないという顔をした。

先に地球の突撃駆逐宇宙艦がガミラス艦に浴びせかけたのは強力な粘着物質だった。

ガミラス艦の砲塔と甲板の間に入り込み砲塔の旋回を邪魔していた。

旋回を完全に止める事はなかったが、微妙な旋回の微調整などとても出来る状態ではなかった。

しかし、幾多の戦乱を潜り抜けてきたガミラス軍はこのような事態に対する訓練も兵士に課していた。

艦艇がダメージを受けて砲の使用は可能だが砲塔の旋回が出来なくなった場合、砲塔側の照準は固定し、
艦艇の躁艦で照準をつける高度な技だ。

敵艦隊は自艦のフェーザー砲の有効射程まで接近するためにこの様な小細工を弄して来たにちがいない。

<ガミラスはこんな小細工には負けんぞ!>レッチェンスは更に闘志を燃やした。

しかし、沖田は一度は接近したがその後は何故か大きく距離をとって近づいてこなかった。

<何故だ? こちらは圧倒的に不利な状態だ。 何故攻撃してこない?>レッチェンスの疑問は直ぐに晴れた。

「大変です! 船外温度が急激に上昇しています。 現在3000度C! まだまだ上がります。」

ガミラス艦はどれも粘着物質にまみれて砲戦が出来ない状態だったが、日本艦隊は一度接近した時に
その粘着物質にフェーザー・ビームを照射し、発火させたのだ。

粘着物質は適度な酸素を含み、比較的ゆっくりではあるが高温を出して燃焼していた。

「ワープして脱出しろ!」危険を感じたレッチェンスは戦闘宙域からの脱出を図ろうとした。

「駄目です! 高温のため機関の制御がもはや利きません。」

機関部分に粘着物質をより多く被っていた2番艦の機関が高温に耐えられず爆発した。

「別働隊へ攻撃命令を! それも大至急だ。」

レッチェンスはスクリーン上の運命の定まった己の艦隊を見詰め、自分のコンソールをいとおしげに撫でた。

<今まで良く働いてくれたな、有難う。 デーニア・・・。>

デーニア・・・それは20年前に失った彼の妻の名だった。

**********************************************

レッチェンスからの攻撃命令を受け取ったガンツは予定通り、木星の大気圏の最上層の直ぐ上にワープ・アウトした。

地球のプラントは木星大気圏の最上層に浮かんでいる様なものだ。

それを複数の宙雷戦隊が守っている・・・、遠距離から接近するとその宙雷戦隊に迎撃される恐れがあった。

だから、ガンツは事前の研究でプラントに出来るだけ接近してワープ・アウトする事が攻撃成功の鍵を
握っていると考えていた。

「ワープ・アウトします!」航宙士がガンツに報告した。

ガンツの乗った駆逐型デストロイヤーは無事、地球プラント直近にワープする事に成功したが、艦隊の後尾に
位置していた2隻は木星大気と物質重複を起こして大破してしまった。

大気の濃い部分だったら大爆発が起こって他のガミラス艦もただでは済まなかったろう、しかし、物質重複を
起こした大気分子は微量だったため、その艦だけに被害は極限された。

とはいえ、被害は甚大でその2隻はもはや航行する事が出来ず、木星の重力に引かれ、その艦体をメタンの海深く沈めていった。

ガンツはその艦に敬礼を送ると直ぐに地球プラントの攻撃、破壊を命じた。

あまりにもガミラス艦隊はプラントに接近しすぎていたため、地球側のプラント防衛を担っていた宙雷戦隊は
攻撃をしかける事が出来なかった。

もともと戦闘を想定していなかったエネルギー・プラントは攻撃に脆く、たちまち瓦解して木星大気の底に沈んでいった。

収まらないのは防衛部隊であった。

ガミラスの奇襲部隊に対して一矢報いようと無謀な突撃をかける宙雷戦隊が一つ、二つあったが、生き残った
司令官、沖田少将や李中将は復讐にはやる宙雷戦隊や戦艦部隊をなだめすかし、地球帰還の途につかせた。

例え、木星プラントが失われようとガミラスに決して膝を屈しない決意が地球側にはあったのだ。

**********************************************

破壊されたプラントはプラントを維持する最小限の人員が残されていた。

そしてプラントが破壊された時、彼等は脱出船になる区画に避難しており、プラント破壊と同時にプラントから
切り離されて宇宙を漂っていた。

リットリオ技術大佐は部下達に睡眠ポッド入りを命令した。

助けが来るまで酸素の消費量を最小限にし、代謝も抑えて長時間の待機に備えるためだった。

しかし、時間が経てばたつほど救出の見込みが薄れるのは皆、判っていた。

「諸君! 再び、ここで合おう!」

リットリオは最後の別れになるかもしれない今、指揮官としては落第だと思いながらも部下達に感謝の敬礼を
捧げずにはおれなかった。

コーン、コーン、エア・ロックの方で何か戸を叩く様な音がした。

船外監視カメラを使ってエア・ロックのドアの前を見てみると地球軍の宇宙服姿が2人見えた。

他のカメラを使って船外全周を写してみると地球艦隊の巡航艦が来ていた。

低出力のレーザー通信が入った。

「こちら欧州艦隊所属、重巡『シャルンホルスト』、救援に来ました。 こちらに移乗して下さい。」

「ありがたい! 欧州プラント維持要員、リットリオ技術大佐以下6名、移乗します。」リットリオは申告すると
すぐ、部下に移乗を始めさせた。

他のプラント、アジア連合には日本艦隊の早期警戒艦「たかお」が米国プラントには戦艦「英雄」、「栄光」が
ソ連プラントには重巡「グナイゼナウ」が南半球連合のプラントには早期警戒艦「シドニー」がそれぞれ救援に
向かっていた。

ガミラス艦隊は地球プラントを壊滅させると長居は無用とばかりにワープして撤退していった。

しかし意気揚々と冥王星前線基地に帰還したガンツは尊敬していたレッチェンス司令の戦死を知り、体中から
力が抜けるようだった。

あの時、レッチェンス司令が攻撃司令を「大至急」実施しろと言ったのは自分が地球艦隊を引き付けておける
のはもはやこれまでという事だったのだ。
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<有難うございました。 司令・・・>ガンツの脳裏には艦体後部を真っ赤に塗ったレッチェンスの旗艦の
後姿が焼きついていた。

地球陣営は木星の資源・エネルギー・プラントを失い、その勢力は大きく後退する事になった。

                                                   ヤマト発進まで 1481日
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by YAMATOSS992 | 2012-05-08 21:00 | 本文 | Comments(0)
ヒッペルトもやられたのか・・・。

レッチェンスは木星圏の威力偵察に出した重巡艦隊の末路に眉をひそめてた。

ヒッペルト中佐はガミラスの重巡艦長の中でも切れ者で通った男だった。

それが任務遂行中に6隻中、4隻を失い、残り2隻も1隻は大破、もう1隻も中破という有様でしかも、敵状は殆ど偵察出来なかったのだ。

本人も艦と運命を共にしてしまった。

仕方ない、面倒だが、ここはまず、欲張らずに遠距離からの戦略偵察を行うとするか・・・、レッチェンスは冥王星前線基地に連絡をとった。

「先に試験配備された『高速宙母』を至急、派遣しろ!」レッチェンスは留守を預かるシュルツ大佐に命じた。

「『高速宙母』でありますか・・・、まだ受け取りが完全に済んでおりませんで・・・。」シュルツは口ごもった。

「何! 作戦に使用出来ないと言うことか!」レッチェンスは仕事の遅い部下は大嫌いであった。

「宙母を回航して来た要員は帰ったのか?」

「いえ、まだ居ります。 その回航委員長が問題でして・・・。」

「どういう事だ。?」レッチェンスは事情を聞いた。

要するに、『高速宙母』は新型艦で今までのガミラス艦と推進機関の方式など様々な部分が違っていて
その引継ぎに時間が掛っているのだ。

しかも、その引継ぎを仕切る回航委員長が完全主義者で中々、引継ぎの終了を認めなかった。

「判った。 その回航委員長とやらを出せ!」レッチェンスが委員長の呼び出しを要求するとシュルツ大佐は内心喜んだ。

<あの頑固者に司令のカミナリが落ちるか・・・フフッ>

しかし、現実はシュルツの期待した様には進まなかった。

「お初にお目に掛ります。 『高速宙母』回航委員長のピラウア少佐です。」

スクリーンに出た回航委員長はガミラス人の女性将校だったが、ガミラスも直接戦闘する部隊以外には
女性兵士も多く、レッチェンスも慌てなかった。

「ピラウア少佐、前線基地の要員ではまだ『高速宙母』の運用は無理との事だが、回航要員でなら
運用できるか?」

「はい、回航要員でなら出撃可能です。 しかし、搭載機の離着艦訓練は間に合いませんし、要員も
足りません。」

「いや、それは構わん、宙母そのものが出撃できればいいのだ。 『高速宙母』で遠距離からの戦略偵察を行って貰いたい。」

「了解しました。」ピラウア少佐は女であるがゆえに中々最前線に出して貰えなかったもどかしさが一気に晴れる気がした。

「冥王星前線基地副指令、シュルツ大佐、『高速宙母』出撃します!」

今まで引き継ぎ作業中は無表情だったピラウア少佐の顔は歓喜に溢れていた。

さっきまで疎ましく思っていた女性将校だったが、シュルツは喜び勇んで出撃してゆくピラウアの顔に
ガミラス本星に残してきた娘の顔が重なり複雑な思いにかられた。

<わしの娘もこうやって戦火の中に飛び込んでゆく日がくるのか・・・。>

シュルツ大佐は艦体の四方に腕を伸ばし、十字形をした円盤型の「高速宙母」が回転しながら木星圏へ
向かって発進してゆくのを何時までも見詰めていた。

**********************************************
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「トロンプ司令・・・。これは一体何でしょう?」参謀はスクリーンに写った奇妙な物体に思わず上司に問いかけた。

スクリーンにはまるでヒトデの様な物体が写っていた。

その物体はゆっくりと回転しながら南半球連合の艦隊の前を高速で横切っていった。

「UFOってこんな感じの物なのかな?」トロンプは子供の頃、見た記録のUFOの写真を思い出していた。

「とはいえ、今の状況ではこれはガミラスのものと考えるべきだろう・・・。 こちらの早期警戒艦に正体を
探らせろ!」

このUFOに一番近い位置にいたのは早期警戒艦「シドニー」だった。

この艦はもともと軽巡で速度は速かったが武装も軽装だったので早期警戒艦に改装するにはその武装を
ほとんど全部降ろさなければならなかった。

そんな艦で正体不明の物体を調査させるのは心配だったが、今は贅沢は言っていられなかった。

「シドニー」はその物体よりも僅かだが土星よりの空間にいたので電波管制を敷いて接近を図った。

木星圏にいる艦隊から見るとその物体の底面しか見えないので判らなかったが、「シドニー」が
接近してみるとその物体の背面が見てとれた。

その物体の背面の形状はやはり見た事のないものだったが、その色はお馴染みのガミラス艦の緑色だった。

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「シドニー」は南半球艦隊のみならず、全艦隊にガミラスの偵察艦来襲の警報を発した。

そして「シドニー」は僅かに残された6インチフェーザー連双砲塔1基からビームをガミラス艦に浴びせかけた。

しかし、そのガミラス艦は反撃もせず速度を上げるとみるみるうちに遠ざかって行った。

もっともこのガミラス艦は撤退した訳ではなく、アジア連合艦隊、欧州連合艦隊の前も横切って偵察の
任務を果たしていった。

早期警戒艦「たかお」もこのガミラス艦を追尾しようとしたが簡単に振り切られてしまった。

「たかお」の広瀬艦長は反物性ミサイルを持っていない事が悔しくてしょうがなかった。

だが、ガミラスの偵察艦はそんな地球艦隊を嘲笑うかの様に速度を更に上げると宇宙の闇に消えていった。

**********************************************

「やはり新型艦の威力は侮れないな。」レッチェンスは「高速宙母」が戦略偵察してきた情報に唸っていた。

木星圏をはなれ、ほぼ土星圏との境といって良い位置から採った情報だったが、レッチェンスが欲しかった
地球艦隊の規模と配置の情報はほぼ完璧に網羅されていた。

後は実際に交戦して相手の実力を確かめる必要があったが、その威力偵察に使うべき重巡はもはや消耗
し切っていた。

やはり、手順は守らないと結局、余分な手が掛るものである。

とはいっても、失った艦を惜しんでいても作戦は進展しない、レッチェンスは注意すべき戦力はプラント群の
両翼を固めている戦艦群だと考えていた。

そして、欧州連合の艦隊の性能についてはヒッペルトの重巡艦隊が偵察できた断片的ではあるが情報がある。

しかし、反対翼を固めている南半球連合の艦隊については性能の情報がない。

そこで、再度、威力偵察を行わせる事にした。

だが、今回はその任務に投入できる重巡はおろか軽巡すらなかった。

レッチェンスは一人の艦長を呼び出した。

「ヤクート大尉であります。お呼びでありますか。」スクリーンにごつい男が出た。

彼の顔は傷だらけでその歴戦ぶりを窺がわせた。

「ウム、ヤクート君、君には地球艦隊の左翼を固めている艦隊の威力偵察を行ってもらいたい。」

「偵察だけ・・・でありますか。 どうせ攻撃するなら撃滅を図りたいのですが。」

「とりあえずは偵察だけだ。 一隻だけなのだ。 決して深入りするな!」レッチェンスは釘をさした。

ヤクート艦は駆逐型突撃艦である。

本来なら巡航艦を出したかったが、巡航艦は重巡はおろか軽巡も消耗しきっていた。

レッチェンスは駆逐型デストロイヤーを出す事も考えたが、駆逐型デストロイヤーは基幹戦力である、もし、
戦闘で喪失すると、即、戦力低下に繋がるので出す事を躊躇ったのだ。

釘はさしたものの、ヤクート大尉は多分、自らの劣勢も返り見ず、地球艦隊に真っ向から挑戦するだろう。

レッチェンスはその戦闘状況を再び、高速宙母に観測させ、情報をとるつもりだった。

レッチェンスは年齢を重ねるにつれ、老獪になる自分に嫌気がさして来ていたが、今はガミラス軍の勝利が全てと割り切った。

ヤクート艦はたった一隻で南半球連合艦隊のいる方角に小ワープしていった。

**********************************************

「再びガミラス艦出現!12時方向、距離5万!」戦艦「オーストラリア」の艦橋に探知報告が響く。

「数量は・・・、駆逐艦一隻です。」トロンプ中将はまだ若かったがこれが威力偵察である事に直ぐ気が付いた。

だとしたら、なるべく早く始末して情報を取られない様にしなければならない。

そう判断したトロンプは配下の宙雷戦隊に迎撃に向かわせると同時に敵艦が小ワープによる
一撃離脱(ヒット・エンド・ラン)攻撃を戦艦に掛けてくる事を想定して自艦「オーストラリア」以下、
配下の戦艦に極力、左右均等に攻撃が出来る様、フェーザー砲塔を互い違いに両舷方向に向けさせた。

地球の宙雷戦隊を充分に引き付けるとヤークトは反物性ミサイルの雨がくる前に小ワープした。

そして南半球艦隊の右舷に出現すると旗艦「オーストラリア」に向かってミサイルを放つとまた小ワープして
位置を変えた。

「全く良くやるわね。ヤクート大尉・・・。」 ヤクートの戦いと地球軍の反応を偵察していた「高速宙母」の
ピラウア少佐はあきれていた。

ヤクート大尉は一撃離脱(ヒット・エンド・ラン)攻撃を連続して加えていたが単純に同じ位置を往復していた
のでは忽ち位置を特定されてミサイルや機雷の待ち伏せ攻撃を受けてしまう・・・だから、彼は往復の複時の
帰還座標をランダムに少しずつずらしていた。

しかし、その座標が安全である保障など何処にもないのだ。

しかも木星という大質量がそばに存在しているのに・・・である。

レッチェンスからヤークトに帰還命令が下った。

レッチェンスも失わないで済む部下は失いたくなかったのだ。

しかし、その命令は一歩遅かった。

その時、ヤークト艦は一撃離脱攻撃をするために小ワープで地球艦隊に接近した、が、
戦艦「ミナス・ゼラース」が発射したフェーザー・ビームの直撃を受けてしまった。

頑強な装甲を持つ事で知られるガミラス艦も駆逐艦はほとんど無装甲で有り、戦艦のフェザー砲を
弾き返す事は出来ず、爆沈した。

ある程度予想していた結果であったが、レッチェンスは苦渋に満ちた顔を隠さなかった。

木星圏に吹く嵐は激しさを増していった。

                                                    ヤマト発進まで1481日
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by YAMATOSS992 | 2012-04-30 21:00 | 本文 | Comments(0)
2012,7,2、図版とその説明を追加 
2012,7,4,図版説明の改訂

 「目標捕捉!数量4! 距離2万宇宙キロ!」早期警戒艦「たかお」の艦橋に緊張が走った。

「敵味方識別(IFF)はポジティブ。 識別コードによればドイツ艦隊第2特務戦隊です。」探査主任はホッとした顔で報告した。

「土星圏へ行っていた、第2特務戦隊だとすると数が合わないが・・・。」副長が疑問を口にした。

「識別信号によると帰って来たのは『ニンフェ』、『アリアドネ』、『ウンディーネ』、『ブレーメン』・・・。全て軽巡
です。」

<重巡の「デアフリンガー」と「リュッツオー」はやられたのか・・・。>「たかお」の艦長、広瀬大佐は心を
曇らせた。

その時、再度、探査主任は目標探知を告げた。

「再度目標捕捉! 数量は34! 敵味方識別(IFF)はネガティブ! ガミラス艦隊です!」

「通信士! 艦隊司令部へ打電! 203宙域にガミラス艦隊出現! 本艦は敵艦隊との距離を取りつつ、
その動向を調査!詳報を続けて送る旨を連絡しろ!」艦長は「たかお」の最後を覚悟していた。

「たかお」は元々、高速を出せる重兵装の巡航艦として設計されていた。
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しかし、内惑星戦争時の花形艦も今は旧式化して船体の老朽化も目立ってきていたので8インチ荷電粒子砲、
連双5砲塔の武装を8インチフェーザー、連双3砲塔に減らし、代わりに大型だった初期のコスモ・レーダー
装置を積んで早期警戒艦に生まれ変わっていた。
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当然、重巡だった頃は積んでいたミサイル装備も今は下ろしており、持っていない。

重巡だった頃より軽量化していたので速度だけは現役時より速かったが、敵であるガミラス艦はワープが
出来る・・・。

狙われたら逃げようがないのが実態だった。

探査主任が訝しげが顔をした。

「どうした! 斉藤!」副長が探査主任の顔を見た。

「それが・・・。ガミラス艦隊の隊列が大きく乱れています。 これでは彼等は艦隊戦が出来ません。」

「何!状況を大スクリーンに写せ!」

スクリーンには驚くべき光景が写っていた。

先程、撤退して来たドイツ艦隊の軽巡4隻が横陣に広がってガミラス艦隊の進路を遮りつつ、対艦ミサイルを
連射して次々とガミラス艦に損傷を与えていた。

「こちら日本艦隊、早期警戒艦『たかお』、ドイツ第2特務戦隊!何をしている! 早く撤退しろ!」広瀬艦長は
呼びかけた。

「こちら『ブレーメン』艦長、マトニ中佐、そちらこそ、早く脱出して貴艦は自分の任務に専念して下さい。」

「無茶だ! 相手は戦艦クラスだぞ!」その叫びが終わらない内に9条のフェーザー・ビームが1隻の軽巡を
捕らえた。

その軽巡「ニンフェ」はたちまちズタズタになって大破、爆発した。

「早く退避しろ!」広瀬艦長は思わず怒鳴っていた。

しかし、ドイツ軽巡部隊は撤退するどころか、更に距離を詰めていった。

ガミラス戦艦隊は総旗艦と思しき一隻の艦を守る様に横腹を晒して立ちはだかった。

ドイツの軽巡は通商破壊用に造られ、反物性ミサイルの垂直発射管(VLS)を90セルも持っていた。

長期に渡る通商破壊活動時にも補給を受ける事無く活動するための装備だ。

今、戦っている第2特務戦隊は今回、任務について直ぐにガミラス艦隊と遭遇したため、その兵装がまだ全く
消耗していなかったのだ。

第2特務戦隊の残りの軽巡、3隻は残りの反物性ミサイルを全弾をこちらに横腹を見せているガミラス戦艦に
叩きこんだ。

ガミラス艦も駆逐艦の援護を受けてミサイルを防衛したが約270発のミサイルを全て防御する事は不可能
だった。

総旗艦の前で横腹を見せたガミラス戦艦や駆逐艦は重力崩壊を起こしてこの宇宙から消えていった。

**********************************************

<地球艦隊も粘るな・・・。>レッチェンスは舌を巻いていた。

土星空域で奮戦した2隻の装甲艦、幸いこちらの駆逐型デストロイヤーで戦闘不能になった艦はなかったが、
結構傷を負わされた艦は多かった、時間稼ぎをされたのも結構痛かった。

<そして今度は軽巡艦隊の勇戦だ、装甲艦より弱兵力と思ったのが油断だった。

駆逐型デストロイヤー2隻と駆逐艦5隻を失う羽目になるとは・・・。

木星圏には多分、地球艦隊の戦艦群がいる・・・、それも多分、精鋭中の精鋭だ。

艦隊の編成を考え直さねば・・・。>彼は副長に躁艦指揮を任せ、艦隊の再編成作業にかかった。

最初、レッチェンスは艦隊の前衛に2隻の重巡ををおいて威力偵察し、駆逐型デストロイヤーで構成された
主力艦隊は単縦陣、その上下左右に駆逐艦で構成された宙雷戦隊で球形陣を組んで侵攻するつもりだった。

<しかし、本当にそれで問題ないのか?>レッチェンスは自信が無かった。 

まず、為さねばならないのは地球艦隊の情勢を偵察する事だ。

レッチェンスは手持ちの巡航艦に艦隊を組ませ、最大限の威力偵察をする事にした。

これはかつて地球上で大艦巨砲主義が全盛だったころ、大海軍国が持っていた巡洋戦艦部隊が担っていた
任務だった。

高速で敵艦隊に近づき、攻撃を加えて挑発、相手の出方を見極める重要な任務だ。

ガミラス艦隊の高速巡航型クルーザーのうち、重巡に相当するのは駆逐型デストロイヤーより大口径の
3連双フェーザー砲塔を2基持っているタイプであるが、今までの約3年に渡る木星圏通商破壊戦で消耗して
おり、元々12隻あった重巡は6隻に減ってしまっていた。

全艦をこれに当てるのは少し大胆すぎる気もしたが、効果を挙げられなければ元も子もない、レッチェンスは
少し考えてから巡航艦戦に秀でたヒッペルト中佐を呼び出した。

「ヒッペルト中佐、君を巡航艦戦隊の戦隊司令に任命する。 君の艦を含む6隻の重巡で艦隊を組み、木星圏の
威力偵察を行ってくれ。」

「了解しました。 しかし、司令、6隻しかない重巡を全て投入するのはあまりにも危険ではないかと
思いますが・・・。」

ヒッペルトは会議室に他の将校がいなかったので大胆にもレッチェンスに反論した。

「だから君を任命したのだ。 勇猛さだけなら他に適任者が沢山いる。 君は押す勇気と引く勇気を合わせ
持っている。」

ヒッペルトはその言葉に微笑し、サッと敬礼して旗艦を出ていった。

**********************************************

木星圏の欧州連合の資源・エネルギー・プラントを防衛している欧州連合の早期警戒艦は日本艦隊の
「高雄」級と同じく、少し旧式になった英国重巡を改装した「ケント」、「ドーセットシャー」の2隻がプラントから
離れた遥か20万キロの位置を遊弋してガミラスの動向を探っていた。

「ケント」の艦橋に敵艦探知の報告が入った。

「403宙域にガミラス艦隊が出現しました。 6隻います! 距離5万! アッ 1隻が消失!ワープしたものと
思われます!」

その言葉が終わるか、終わらない内に「ケント」の右舷、直近にガミラス重巡が現れた。

あまりにも唐突な出現に「ケント」があっけに採られている内にガミラス重巡は手馴れた様子で攻撃して来た。

ほとんど何も出来ないうちに「ケント」は爆沈した。

それを確認したかの様に残りのガミラス艦5隻がワープして来た。

「何とか門は抉じ開けましたね。」副長がヒッペルトに声をかけた。

「ああ、でも威力偵察はこれからが本番だ。 航宙士、現在の座標を記録せよ。」

ヒッペルトの艦隊はこれから敵である地球軍の懐深く入って行くのだ。

撤退しなければならなくなる場合もあるだろう、その時、ワープの座標計算を一々やり直している暇はない、
安全だった前の座標を記録しておいて非常時にはその座標にワープすれば危険が少なく脱出出来る、
これは彼が木星圏で通商破壊作戦に従事していた時に編み出した戦術であった。

しかし、この戦法も決して無敵ではない、特にワープする前の出発点を知られていると罠を張られる場合があり、
現に何隻かは地球軍の罠にはまり、失われていた。

だから、ヒッペルトは自艦の位置を探知し、ワープ航跡をトレースしているであろう、早期警戒艦は重点的に
潰してゆく方針だった。

「戦術上の常識から言えばもう1隻いるはずだが・・・。 戦術士! どうだ、探知出来ないか!」

「はぁ、いる様子はありません。 もしかしたら、探知電波の発信を控えて受信(パッシブ)に徹しているのかも
しれませんが・・・。」

確かにその通りだった。

早期警戒艦「ケント」は僚艦「ドーセットシャー」と40万キロの間隔を置いていたが、データ・リンクは
成立させていた。

したがって、「ケント」が撃破された時、直ぐに「ドーセットシャー」はその事を知って電波管制をしいた。

そして外部からの傍受の恐れがほとんど無い、レーザー通信で艦隊本部に状況を報告していた。

ガミラス艦はワープする必要上、光年単位で空間を走査出来る能力を持っていたが、それは自艦が航行する
必要上、ワープ予定空間の走査が出来るだけで、40万キロ離れて息を殺している「ドーセットシャー」を発見
出来る可能性は薄かった。

ヒッペルトは10箇所の宙域をランダムに設定させ、コスモ・レーダーで走査させたが何も発見できず、
それ以上の探査は無駄と判断して、木星圏への強行偵察のためワープに入っていった。

**********************************************

 「ガミラス重巡艦隊6隻、11時の方角より 本艦隊に向かって接近してきます!」欧州艦隊司令部に報告が
入った。

「威力偵察か・・・。 ガミラスめ、大道を歩んできおったな。」シェーア大将はスクリーンに写る光点を
見詰めながら言った。

ここは同規模、同性能の艦隊を繰り出して迎撃、威力偵察を妨害したい所である。

しかし、地球軍にはガミラス重巡と同性能を出せる艦艇はほとんど存在しなかった。

平和な時代が続いたため武装は強力でも航行能力に秀でた艦は建艦されなかったのだ。

「今、第1特務戦隊はどうしているか?」シェーアはフローラー・ライニック大佐を呼び出した。

「我が第1特務戦隊は再度、土星圏への出撃のため補給作業中です。 作業は最終段階で今、燃料、推進剤の
補給中です。」

フローラーはシェーアに報告した。

「ガミラスの重巡6隻が艦隊を組んで威力偵察にきている。 すまんがこれを迎撃してくれ。 ただし、
無理はするなよ!」

シェーアは、またライニック姉妹に負担をかけるのは心が痛んだが背に腹は変えられない、実績のある部隊を
繰り出さなくてはならないのだ。

欧州プラントの一角から2隻の重巡、4隻の軽巡が発進、ガミラス艦隊に向かっていった。

<今度は重巡6隻を相手にしろとは、シェーアのオヤジめ、どんどん要求がエスカレートしやがる!>
フレイヤが心を弾ませた。

<我々の作戦目的は敵の威力偵察の妨害よ! 撃滅までは要求されていないわ。>フローラーが釘を刺した。

<へん!結果的に相手が滅ぶのは勝手だろ!>フレイヤは大胆な作戦を提示した。

それはかつて、フローラー自身が用いた戦法だった。

第1特務戦隊は早期警戒艦「ドーセットシャー」に連絡をとり、ガミラス艦隊が最後にワープに入った地点の
座標を確かめ、配下の軽巡部隊に10発づつの反物性ミサイルをそこに向けて発射させた。

そして、フローラーは自艦隊をガミラス艦隊に向けて直進、迎撃に向かった。

**********************************************

ガミラス重巡艦隊を率いるヒッペルト中佐はスクリーンに写った、迎撃に向かってくる地球軍艦艇を見て驚いた。

ガミラスの土星圏交通路を荒らし回った装甲艦2隻、軽巡4隻の艦隊だったからだ。

ヒッペルト自身は木星ー地球航路の通商破壊活動に従事していたので1度も剣を合わせた事はなかったが、
冥王星基地で聞いたその勇猛ぶりと狡賢さは跳びぬけていた。

地球軍の通商破壊活動はガミラスのそれとは規模が大きく違っていたので実質上の損害は大きくなかったが、
敵に凄腕がいるというだけで味方の士気は大きく影響されるものだ。

だから反対にこの敵を倒せれば、味方の士気は天を突く、ヒッペルトは心の中で舌舐めずりをした。

2つの艦隊の距離は1万キロを切った。

ガミラス艦隊は砲塔を廻し、第1特務戦隊に照準を合わせ様とした。

「敵艦が妙な動きを見せています! 重巡が2隻ともこちらに腹を見せました。 故障でしょうか?」

戦術士官がヒッペルトに報告した。

「よく判らんが油断するな! 射程距離に入ったら射撃を開始しろ!」ヒッペルトの指示が飛ぶ。

「シャルンホルスト」と「グナイゼナウ」と戦って帰還出来たガミラス艦はまだ居なかった。

戦いの終わった戦場で回収された僅かな情報のみが第1特務戦隊に関する情報の全てだったのだ。

当然、ヒッペルトには2隻が腹を見せる態勢をとった事が攻撃態勢だとは知るよしもなかった。

「ガミラス艦隊との距離、8000、一斉回頭! 敵艦隊の頭を抑える!」フローラーの命令が飛ぶ、

ガミラス艦隊と第1特務戦隊は反航戦の形だったが、フローラーは一斉回頭してガミラス艦隊の左舷を
圧迫するイの字型の隊形を強引に作った。

ガミラス艦隊はすぐさま、フェーザー砲の嵐を撃ちかけてきた。

しかし、並の戦艦以上の装甲をガミラス艦隊に向けている2隻は平然とそのビームをはね返し、更に距離を
詰めてきた。

そして、1艦、3連双2段、2群に分かれた11インチレーザー砲、2隻、全24門をガミラス艦隊に浴びせかけた。

ゴーン、ゴーン、ヒッペルト艦の艦橋に続けざまに命中するレーザー・ビームの衝撃が伝わった。

残念ながら、土星圏での戦闘時の軽巡と違って、装甲の厚い重巡は傷を負わせるまでには到らなかったが、
近距離でビームを浴びせられるのは気持ちの良いものではなかった。

更に2番艦は艦橋の窓に降ろしていた装甲シャッターを溶かされ、内部の光が漏れて来た。

<クソッ! たった2隻にここまで翻弄されるとは!>ヒッペルトは歯噛みした。

しかし、次の瞬間、彼は自分が重大な事を忘れていた事を思い出した。

<この敵艦隊には軽巡が4隻いたはず・・・。 奴等はどこへ行ったのだ?>

彼の疑問は直ぐに氷解した。

「シャルンホルスト」と「グナイゼナウ」が作った鉄壁の陰に彼等は隠れていた。

そして、「シャルンホルスト」から送られた敵の位置データを元に反物性ミサイルの雨を浴びせかけた。
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ヒッペルトは状況判断に勝れた男だったので直ぐにその場から退避し、ミサイルの洗礼は受けずに済んだが、
5番艦は艦橋部分にミサイルの直撃を受け、戦闘不能になってしまった。

6番艦の艦長はガミラスの鉄の軍律に従って5番艦にフェーザー・ビームを浴びせ、始末した。

「艦長! 地球艦隊主力がこちらに向かってきています!」情報士官が叫んだ。

「なに!」ヒッペルトは2隻の装甲艦に翻弄され続けていた事を知った。

彼の艦隊は第1特務戦隊と交戦する内に知らず々と欧州連合艦隊主力の方へ誘導されていたのだ。

本来、ヒッペルトの艦隊の任務は威力偵察であった、だから、このまま敵主力と剣を交える事も考えた。

しかし、今のヒッペルト艦隊の態勢は完全に受身であった、このまま戦闘を続行しても良い結果は得られないと
彼は判断した。

戦闘の主導権を握ってこその威力偵察だと彼は思ったのである。

「全艦、小ワープで退避! 一度態勢を立て直す。」ヒッペルトは全艦隊を木星圏に侵入する時、集結した
宙域まで撤退する命令を発した。

ガミラス重巡艦隊は一度、威力偵察をやめ、出発点に戻って態勢を立て直す事にしたのである。

しかし、その宙域には第1特務戦隊が予め敷設しておいた反物性ミサイルが10基、獲物を求めて待ち伏せて
いた。



木星圏の支配権を巡る戦いはまだ始まったばかりだった。 

                                                    ヤマト発進まで1481日
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by YAMATOSS992 | 2012-04-24 21:00 | 本文 | Comments(0)
 「こりゃ~っ・・・。 なんと言う・・・。」スクリーンに写っている光景を見た副長が呟いた。

土星宙域でガミラスの交通路の通商破壊工作を行っている第2特務戦隊は土星の衛星、ミマスの陰に
ガミラス艦隊が集結しているのを発見したのだ。

その数は大小の艦艇を取り混ぜて60隻余を数えた。

「これは地球ー木星交通路の襲撃を狙ったものではない・・・。」艦長も生唾を飲み込んだ。

「デアフリンガー」を旗艦とする第2特務戦隊は「シャルンホルスト」が旗艦を努める第1特務戦隊と
通商破壊任務を交代し、戦場に着くと、定位置である土星の輪の中に艦隊を潜ませ、ガミラスの輸送船団を
狙って網を張っていたのであるが、単独航行をするガミラス戦艦を発見、
測距用のカール・ツァイス製大望遠鏡でその行く先を確かめたのだ。

その結果、ガミラスの大艦隊を発見した。

彼等が集結する理由は一つしかない、「デアフリンガー」の艦長、リンデマン大佐は配下の重巡「リュッツオー」と軽巡4隻に脱出を命じた。

彼等は命令どおり、土星の輪の中をゆっくりとその場から遠ざかっていった。

しかし、リンデマン艦長は「デアフリンガー」をその場に留まらせた。

彼はガミラス艦隊の動向を偵察、逐次、地球陣営に通報するつもりなのだ。

これはガミラスに発見されたら確実に撃沈されるであろう決死的行動だった。

だが、リンデマン艦長にとっては自艦の安全よりガミラス艦隊集結の情報を一刻も早く味方に届け、更には
敵の次の動向を探る事の方が重要だった。

「すまんな・・・。」艦長は誰に言うともなく呟いた。

「大丈夫ですよ。 見敵必戦は我が英国海軍の伝統です。 あ、 この艦はドイツ艦でしたっけ・・・。」副長の
スミス少佐が笑った。

彼は同じ欧州連合の英国出身の軍人だ。

そして、確かに、見敵必戦は英国海軍の伝統だった。

過去、英国の生命線が海上交通路にあった時代、英海軍は多数の船団を護衛するため、軽巡洋艦を
多数配備した。

しかし、敵対するドイツが放った通商破壊艦は重巡クラス以上の強力な武装を持っていて、とても正面から
戦ったら適うはずもない絶望的な戦いになる事が多かった。

しかし、それでも英国軽巡は怯む事なく、強大な敵に立ち向かった。

運が良ければ敵に大きな傷を負わせて本拠に帰らざるを得なくさせる事が出来るかもしれない・・・。

もし、武運つたなく自艦が撃沈される事になっても敵が本来、味方の輸送船に打ち込むはずの弾薬を
浪費させ、味方の輸送船の被害を減らす事が出来る・・・と言う考え方だった。

今の「デアフリンガー」の置かれた状態も同じだった。

今、ガミラスが見せているのは明らかに木星圏への侵攻準備のための集結であった。

彼等は最終的には撃沈されるであろうが、それまでの間、取れるだけの情報を取って木星圏にいる
地球陣営に送り続ける・・・。

その悲壮な決意の元、「デアフリンガー」は情報を取り続けた。

同じ任務なら配下の軽巡に命じる事も出来た。

そして軽巡1隻の損害の方が地球軍には良いとも言える・・・、しかし、軽巡は反物性ミサイルは多数搭載
していても装甲板は皆無なのだ。

発見され、攻撃されたらひとたまりもなく、撃沈される、しかし、「シャルンホルスト」型の装甲艦である
「デアフリンガー」なら一面ではあるが分厚い装甲板を持ち、ガミラスの攻撃に対する耐性は格段に
高いので発見され、撃沈されるまでの時間をより多く稼ぐ事が出来るとリンデマン艦長はふんだのだ。

そして何よりこうした決死の任務を部下に与えたくなかったのも本音だった。

<生き残ってくれ・・・。>彼は心の中で祈りつづけた。

**********************************************

 ガミラス冥王星前線基地は次々と発進する艦艇の発する轟音で満たされ、いつもの静かな佇まいとは
打って変わった忙しさだった。

「閣下、私は本当に後詰めで良いのですか?」シュルツは新型の大型戦艦と共に留守番を命ぜられ
戸惑っていた。

「前にも言ったろう。 シュルツ君、君は残って大型戦艦の乗員訓練をしていてくれと。」レッチェンスは眉を
吊り上げながら言った。

「閣下、私はそんなに頼りないのですか!」シュルツは今回の遠征に同行されない事に安心すると同時に
軍人としての誇りを傷付けられた気持ちだった。

しかも彼より階級が下のガンツ中佐は今度の侵攻では別働隊の指揮者を任されているのだ。

「シュルツ、わしは君の能力を買っておるよ。 まして君が殖民星出身だからと言って差別しているつもりもない。

それを言ったらガンツ中佐も君と同じ星の出だ。 そして、決して彼の方が君より勝れているわけではない。

しかし、人には適材適所という事がある。

君は基地にいてそこから全般の状況を判断して戦略を立て、戦術を選ぶ能力に秀でているとわしは思う。

だから君は基地にいて、もし、この作戦でわしが戦死する様な事態になった時、的確な判断を下すためには
基地にいてくれた方が都合が良いのだ。」レッチェンスはシュルツの肩に手を置いて諭した。

<まして地球軍にこの基地を破壊されたら我々は太陽系での足がかりを失ってしまう・・・。 地球軍の艦艇の
能力から考えたらその恐れは少ないが用心するに越したことはない。>レッチェンスはシュルツに別れを
告げ、旗艦の艦長席に座った。

スクリーンにガンツ中佐の顔が写った。

「別働隊、予定任務に向け、発進します。」ガンツは快活に言った。

彼は自分が研究していた作戦が全面的に採用され得意の絶頂だった。

「よし、うまくやれよ。 ガンツ。」レッチェンスはウインクしてガンツの発進を見送った。

「本艦も発進準備出来ました。」副長が報告した。

レッチェンスは乗艦した駆逐型デストロイヤーを発進させた。

ブリッジから見える駐機場に大型戦艦が威容を見せて停泊していた。

<いつ見ても美しい船だ。>レッチェンスは何度か、この戦艦を本国で見かけた事があったが、いまだ指揮
した経験はなかった。

<この戦いが終わったら一度、訓練航海に同行させてもらうとするか・・・。>

レッチェンス提督は思いを残したまま冥王星基地を発進していった。

**********************************************

「ガミラスが動いたか! どの部隊からの情報か?」シェーア大将は木星防衛司令部に飛び込むと報告を
求めた。

「はっ、現在、土星宙域にいるドイツ第2特務戦隊からの情報であります。」参謀長が応えた。

「リンデマン大佐の通商破壊部隊か。 敵艦隊の規模は?」

「今のところ、戦艦20隻 巡航宇宙艦15隻、駆逐艦25隻、ですが時間と共に増大中との事です。」

「そんなに多数か・・・。」シェーア大将は驚いた。

普通、一度に指揮出来る艦の主力艦の数は精々10隻が良い所だった。

特別に勝れた指揮者がいるか、部隊を別けてくるか、さもなければ地球人の知らない指揮方式があるか、
どちらにしても地球側にとっては非常事態である事に変わりはなかった。

シェーア大将はドイツ艦隊の提督であったが、欧州連合の最高指揮者であり、国連宇宙軍の最高指揮者でも
あった。

彼はすぐさま前線から届いた貴重な情報を各国、各勢力の宇宙軍指揮者に連絡した。

**********************************************

 眼下にはおどろおどろしい海が広がっていた。

水素とメタンの海である。

その表面には時折、人類の木星進出を拒否するかの様に電光が走った。
 
木星は人類の進出を許してはくれなかった。

こうして水素とメタンの海の上に浮かび、それを採取する事が人類に許された唯一の開発方法だったのだ。

木星は太陽系で一番大きなガス惑星である。

その実態は水素とメタンガスの混合したガスの塊で分厚いガス層の下には金属水素のコアがあると
推定されている。

ガス層の奥に入ったら最後、強大な重力に捕まり、脱出不可能となる恐ろしい惑星であった。

地球人はこの惑星の水素ガスとメタンガスをエネルギー・資源として採取、活用していた。

そのため巨大なエネルギー採取プラントを各国とも建設していた。

だがこれ等の施設は軍事施設ではなかったので攻撃には非常に脆かった。

そこで各国の設備を極力、一ヶ所に固めて防備する計画が立てられ、実行された。

「ついに来たか・・・。 全ての現場主任に連絡!作業員を中央待避所に集合させろ!」欧州連合プラントの
責任者、リットリオ技術大佐は部下を退避させる司令を発した。

悔しいが、彼等、プラント技術者は今は軍を信じて退避カプセルでじっとしているしかない。

しかし、彼等は襲来するであろうガミラス艦隊が彼等の想像を超えた大軍である事を知らなかった。

**********************************************

「山南君、寺内君、管野君、ガミラスが押し寄せてくる。 訓練の成果を見せる時が来たぞ。」沖田提督は
日本艦隊の艦長達に激をとばした。

日本艦隊は戦艦「英雄」、「栄光」、を基幹とし、重巡航宇宙艦を改装した早期警戒艦「たかお」、「あたご」、を
耳目に、立体攻撃の主役として「ゆきかぜ」型突撃駆逐宇宙艦10隻を擁するものだった。

「英雄」クラスの14インチフェーザー砲ではよほど接近しないとガミラス艦の装甲は破れない事は土星会戦で
米ソの艦隊が全滅した時に判明していた。

そこで沖田提督とその配下の艦長達はそのハンデを補う方策を模索し、訓練を繰り返していたのだ。

「新戦法が通用するといいですね。」山南大佐が沖田に言った。

「大丈夫さ、山南君、あれだけ研究し、訓練を重ねた方法だ。 ガミラスにも必ず通用するさ。」沖田は
自信たっぷりに応えた。

寺内大佐、管野少佐も闘志に燃えた目で頷いた。

「さあ、諸君、時間がない、所定の場所に展開! ガミラス艦隊を迎撃する!」沖田は全艦隊に命令を発した。

プラントから遥か離れた土星よりの宙域に50万キロの間隔をおいて早期警戒艦「たかお」と「あたご」が
専位した。

そしてアジア連合のプラント正面には戦艦「英雄」と「栄光」が単縦陣で横付けする様に防御態勢をしき、

10隻の突撃駆逐宇宙艦はその陰にガミラスから隠れる様に待機していた。

もちろん、アジア連合には中国も朝鮮も東南アジア諸国連合もいたが、彼等の持つ艦艇は殆ど駆逐宇宙艦で
艦隊戦には向かず、中国の李中将が宙雷戦隊を幾つか組ませて指揮する事になっていた。

拠点防衛には小回りが利いて配置に融通が利く宙雷戦隊が向く、沖田はプラントの直衛は李中将の
宙雷戦隊に任せ、日本艦隊はプラントから離れた所を遊弋してガミラス艦隊を迎撃するつもりだったのだ。

他のプラントを防衛する艦隊も同じ様に展開を始めていた。

日本艦隊の右舷には南半球艦隊が展開していた。

南半球艦隊は戦艦「ミナス・ゼラース」、「アルミランテ・ラトーレ」、「リヴァダヴィア」、「オーストラリア」、
「ニュージーランド」と比較的新しい戦艦群を擁しており、自信に溢れた布陣だった。

左舷には欧州連合艦隊がいた。

ドイツ艦隊からは国連宇宙軍総旗艦に指定されている「フレードリッヒ・デア・グロッセ」、「ケーニヒ」、
英艦隊からは「アイアン・デューク」、「ウォースパイト」、 仏艦隊からは「ジャン・バール」、「ストラスブール」
伊艦隊からは「レオナルド・ダ・ヴィンチ」、「ダンテ・アリギェーリ」と、錚々たる布陣だったが、欧州連合の艦は
比較的旧式で速度が遅いハンデを負っていた。
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しかし、沖田は過去に剣を交えた事があるシェーア大将の腕は畏怖していた。

反対に南半球艦隊は実戦経験が少なく、そのハンデを補うため英艦隊のトロンプ中将が指揮を執っていた。

トロンプ中将は英艦隊の至宝と言われた男だったが着任してから日が浅く、艦隊を手足の様に操る所まで
訓練しきれていなかった様だった。

だが、沖田は地球の七つの海を約4世紀に渡って支配した英国艦隊の伝統を信じていた。

<今、我々が負けたら地球に後は無い・・・。>今の地球はエネルギーや資源を全て木星に頼っていた。

ガミラスの侵略が明らかになった時点で、太陽光発電やMHD(直接核)発電、化石燃料の再開発等、木星に
頼れなくなった時の事を考えた対策が行われていたが、とてもガミラスの侵略を跳ね除ける為に必要な量を
賄うのには程遠かったのだ。

まだ、ガミラス艦隊の現れない空間だったが、沖田は遥か彼方の土星宙域を見詰めていた。

**********************************************

「艦長!ダメージ・コントロールが間に合いません! どんどんエネルギーが失われていきます!」機関長が
叫んだ。

「裏側に敵を廻らせるな! 裏側の敵はミサイルで対処! 表の敵は主砲で攻撃!」リンデマン艦長は
満身創痍となった装甲艦デアフリンガーを操って木星圏に立てこもる地球艦隊のために時間を稼いでいた。

全部の敵を引き付けておける訳ではないが、少なくともデアフリンガーが引き付けている敵は木星圏の戦闘に
参加出来ないのだ。

しかし、ガミラス艦隊を指揮しているレッチェンス大将もいつまでも装甲艦一隻にかまけているつもりはなかった。

駆逐型デストロイヤー(地球側は戦艦と信じていたが・・・)を「デアフリンガー」の艦首側に1列、艦尾側に
1列5隻づつ、2列の単縦陣に別けて突撃させた。

「くそっ、奴等の中にも切れ者がいる!」リンデマン艦長は歯噛みした。

「シャルンホルスト」型の装甲艦は底部の分厚い装甲板面を敵に向けて戦う様に設計されている。

だからこの面はたとえ、ガミラスの戦艦(駆逐型デストロイヤー)のフェーザー砲といえども撃ちぬけない、
しかし、装甲板の裏側、艦橋や居住区、武装や機関などの重要区画のある面は殆ど装甲がないに等しい。

つまり、裏に廻られ、重要区画にフェーザーをつるべ撃ちに浴びせられたら最後なのだ。

レッチェンスは配下の10隻の駆逐型デストロイヤーを2列の単縦陣に別け、「デアフリンガー」の艦首と艦尾を
かすめる進路を取らせた。

「デアフリンガー」は両方の敵に同時に対応する事は出来ない。

必ず、どちらかの単縦陣に背面を晒す事になってしまう。

「デアフリンガー」のスクリーンに迫り来るガミラス艦隊の単縦陣、2列を睨みつけた。

艦尾方向をすり抜け様としている列の先頭の戦艦(駆逐型デストロイヤー)は他の艦と変わった塗装をしていた。

艦尾第3砲塔から推進用の噴射口にかけての後部が真っ赤に塗られていたのだ。

リンデマン艦長はこの艦がこの大艦隊の総旗艦だと直感した。

そして、不敵な微笑を浮かべると操舵手に命じた。

「信地旋回、艦尾方向からくるサルに突撃だ!」

「はぁ、サル?ですか? あ!」操舵手は一瞬とまどったがスクリーンの左手に写っているガミラス艦の特徴に
直ぐに艦長の意図を察した。

「デアフリンガー」はバーニャ・ノズルを吹かし、クルリと艦首、艦尾を入れ替え、3基のメイン・ノズルを全力で
吹かして突撃した。

反対側に取り残されたガミラス艦単縦陣はチャンスとばかりに「デアフリンガー」の背面に攻撃を集中してきた。

<至近距離まに近づくまで持ってくれ!>リンデマンは祈った。

居住区が打ち抜かれて様々な思い出が宇宙に吸い出されていく・・・、次は主反応炉か! リンデマンは
目を瞑った。

しかし、数秒が過ぎても彼も部下も無事だった。

『遅くなりました! 伝令終了です!』スクリーンには先に退避させたはずの僚艦「リッツオー」の艦長、
マイヤー大佐が写っていた。

マイヤーは「リッツオー」に航空機で言うバック・トウ・バックの姿勢を取らせ、「デアフリンガー」の背面を
守っていた。

「馬鹿もん! 何故帰って来た。 俺は貴様等に生き残って欲しかったんだぞ!」リンデマンは怒鳴った。

「『シャルンホルスト』型の装甲艦は2隻で1隻です。 片割れを残しては帰れません。」マイヤーは子供の様に
笑った。

「ここで採った情報は全て軽巡部隊が本部に送っています。 大丈夫、司令、彼等は生き残りますよ。」

「よし、それじゃ、思い残す事なく突撃出来るな。 目標は総旗艦だ。 相手に採って不足はないぞ!」

「了解!」 2隻の装甲艦はバック・トウ・バックの姿勢のまま、錐を揉む様に回転しつつ、突撃していった。



地球とガミラスの太陽圏の覇権を争う戦いの天皇山と言われた、木星会戦が始まろうとしていた。
                                                             
                                                    ヤマト発進まで1482日
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by YAMATOSS992 | 2012-04-20 21:00 | 本文 | Comments(0)
  左舷、目の前の宇宙空間に巨大な鉄の塊が浮いていた。

数人の宇宙服姿の人間が取り付いて何か作業をしていた。

「何処に曳航してゆくんでしょうね。」 それを見詰めながら、副長が艦長に尋ねた。

応えは無かった。

副長は古代守の方を向いた。

古代はその鉄の塊に敬礼していた。

「艦長・・・。」

「あ、すまん。 あれはドイツの装甲艦だったからな~っ。 解体するスクラップ屋は苦労するぞ。」
古代守は副長の方に向き直って言った。

彼等は第36輸送船団を護送して木星宙域に差し掛かろうとしていた。

この宙域では3日前、ドイツ船団がガミラス艦隊に襲われ、全滅したのだ。

ガミラス艦隊はワープが出来る利点を生かした一撃離脱(ヒット・エンド・ラン)戦法を多用する様に戦術を変えて来ていた。

装甲艦ヘッセンとその配下のZ級駆逐宇宙艦2隻はその攻撃に4日間耐えたが徐々に駆逐宇宙艦を失い、
最後の2日はヘッセン1隻で奮闘したが、何十箇所もガミラス重巡の大口径フェーザー砲に撃ちぬかれ、
とうとう沈黙した。

しかし、流石にドイツの装甲艦、元がどんな形だったか、わからない位にダメージを受けても爆発する事は
無かった。

「シャルンホルスト」クラスの装甲艦とは構造が違って艦体を満遍なく装甲する方式だったので1枚当たりの
装甲板厚は薄かったが、それが何層にも重なる構造は非常に頑強でガミラス艦の執拗な攻撃にも致命的な
ダメージを受けるまでにかなりの時間が掛った。

<苦しかったろう・・・。>古代はその間の「ヘッセン」の艦長を始め、乗組員達の苦闘を思って心の中で涙した。

古代は自分が護衛している第36輸送船団に目をやった。

今回の護衛は艦隊型駆逐宇宙艦「かげろう」型が4隻、突撃駆逐宇宙艦「ゆきかぜ」型が4隻と変則的だった。

「かげろう」型は艦隊に編入され、宙雷戦隊を構成したり、主力艦を防衛したりするのが目的の
艦隊型駆逐宇宙艦だ。
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艦体中央に反物性ミサイルの垂直発射管(VLS)を18門攻撃兵装とし、2連双5インチレーザー砲塔を3基を
ミサイル防衛用に持っている、そして、今は艦体両側に翼の様なパイロンを張り出し、片側3基、合計6基の
反物性ミサイルを追加装備ていた。

これは、本来の駆逐宇宙艦の主流をなす姿だと言えた。

それに対し、「ゆきかぜ」型は今までになかった突撃駆逐宇宙艦という分類だった。

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「かげろう」型より一回り小さい艦体で進行方向にミサイルを発射する、艦艇というより、航空機型の戦闘方式を
とる新型艦だ。

光速兵器も5インチと小ぶりではあるが、一応、3連双フェーザー砲等を2基持っている。

ミサイル発射管は3基と少ないが、次発装填が可能なので連射が効く、また、主攻撃兵装は反物性ミサイル
だったが、他にも目的別に幾種類かのミサイルを積んでいた。

この突撃駆逐宇宙艦という艦種は元々は艦隊戦を目的に開発されたものではなかった。

小型で運動性が高く、防御兵装は最低限、攻撃兵装に重点を置いたその設計は実は遊星爆弾迎撃システムに
組み込まれる事を前提に設計されていた。

そして構造が簡易なため今までの艦隊型駆逐宇宙艦よりも量産が効くという利点もあった。

だが、問題だったのは今までの艦隊型駆逐宇宙艦が旧式化して退役したり、ガミラスとの戦いで損耗した
場合、新たな艦隊型駆逐宇宙艦を設計、配備するだけの余裕はもはや地球側には無かった事だ。

否が応でも新種の突撃駆逐宇宙艦で全ての任務を賄わなければならないのだ。

遊星爆弾の迎撃はもともと建造目的がそれなのだから運用に問題はなかった。

艦隊に配備され、今までの艦隊型駆逐宇宙艦と同じ様な使い方、すなわち主力艦を守って防御弾幕を張る
護衛艦の役割、敵艦隊近傍まで接近してミサイルを放って攻撃する宙雷戦隊の役割、をするのも問題なく
こなせると思われた。

一番、憂慮されたのが船団護衛の任務だった。

艦隊型駆逐宇宙艦は非常に大雑把に言ってミサイル・キャリアーである。

自らは余り、運動せず、発射したミサイルに運動させ、敵を追いかけさせる、また、船団に接近する
敵のミサイルはレーザーで迎撃する、そうした艦艇運用型のコンセプトで設計されていた。

それに引き換え、突撃駆逐宇宙艦は航空機、それも大型の戦闘機としてのコンセプトで設計されていた。

小さい艦体に多くのミサイルを積むためにミサイルの航続距離を少なくして小型化し、その運動性の少なさを
艦自体の運動性で補う考え方だった。

当然、推進剤やエネルギー消費は艦隊型駆逐宇宙艦より多くなると推定された。

まともに戦っていては直ぐに推進剤切れで戦闘出来なくなり、ガミラス艦隊の餌食になるのは目に見えていた。

地球ー木星間の通商路は日本にとっても生命線である。

何んとしてでも、突撃駆逐宇宙艦の有効な運用方法を確立する必要があった。

幾つかの案が浮上しては消えていった。

そしてある程度、煮詰まった案が出来、今回、第36船団の護衛に通常の艦隊型駆逐宇宙艦4隻に加えて
突撃型駆逐宇宙艦4隻を余分につけて実戦評価する事になったのである。

古代守の指揮する「ゆきかぜ」以下、「みねかぜ」、「うみかぜ」、「かわかぜ」の4隻は新戦法の訓練を積んで
初実戦に望むのである。

「艦長、早く腕試しをしたい・・・と言いたい所ですが、相手がガミラスじゃ遠慮しておきたいですね。」副長が
守に話かけた。

「そうでもないさ。 オキタ・フォーメーションやネルソン・タッチは俺たちが迅速に行動して戦闘の主導権を
握れば戦いを有利に進める事が出来る。 今までの訓練結果にもっと自信を持てよ。」守は部下の不安を
打ち消してやった。

しかし、彼自身はガミラス艦のワープ能力が戦闘にどの様に影響するか、一抹の不安をいだいていた。

**********************************************

 突撃駆逐宇宙艦「ゆきかぜ」のブリッジで古代守は一人緊張した面持ちでスクリーンを見詰めていた。

そこには接近してくるガミラスの重巡2隻の姿が映っていた。

列車の様に繋がったタンカーを護衛して木星に達する寸前の所でガミラス通商破壊用重巡艦隊に発見されて
しまったのである。

<エネルギーがギリギリしか無い!>

木星のプラントで水素やメタンを受け取った後なら充分、太刀打ち出来るのだが・・・

「悪い時に来てくれた・・・。」内心、最悪の結末を想像している自分に気が付いた。

副長の方を見ると心配そうに彼はこちらを見ていた。

部下を不安がらせてはいけない! 彼はおもむろに命令を発した。

「ゆきかぜ 以下突撃駆逐艦4隻はガミラス艦の迎撃に向かう

陣形は鶴翼! 戦術はA!「かげろう」以下艦隊型駆逐艦4隻はタンカーの護衛に専念しろ!」

「了解!」操舵手は命令一下、「ゆきかぜ」の艦首をガミラス艦の方に向け、突撃を開始した。

「ネルソン・タッチで行きます!」射撃管制官が叫んだ。

ネルソン・タッチとは19世紀英国の名提督ネルソンが多用した戦術である。

単縦陣、縦に繋がって横腹を見せている敵艦隊に対し、風上から一直線に突撃し、相手の単縦陣を横切る時
こちらの左右の全砲門を開いて左右の敵艦に至近距離から弾雨を浴びせて仕留める戦法の事だ。

突撃中は敵艦隊の砲の数が圧倒的に勝っており、撃たれっぱなしの危険な状態になる様に思われるが、
こちらは突撃中で前面を相手に見せており、目標としては小さくなったのと同じ効果があるのだ。

しかも、当時の射撃指揮は稚拙で砲手に任されており、波浪のある海上では距離が開くとたちまち命中率が
下がったのである。
 
ネルソン自身も長距離射撃は当たらないと言って嫌っており、舷々合い摩する距離に接近するまで発砲
させなかった。

 こんな旧式な戦法をどうして地球軍は採用したのであろうか?

ガミラス艦はどうした訳か主砲を前方に撃てないのだ。

必ず、艦首を振って単縦陣で斜めに突撃してくる。

古代はこの2隻の間を目がけて艦隊を突撃させた。

「ゆきかぜ」型のフェーザー砲ではガミラスの重巡の装甲には歯がたたない。

艦首から発射する反物性ミサイルが頼りだ。

しかし、至近距離からの射撃なら別だ。

しかも後部の噴射口内部にビームをぶち込まれたら、流石のガミラス重巡もひとたまりも無い。

「ゆきかぜ」と「かわかぜ」を先頭に鳥が翼を広げた様に拡がった地球艦隊は反物性ミサイルを発射しつつ、猛烈な速度で近づく。

ミサイルの第一射目は敵のフェーザー砲で迎撃された。

猛烈な爆煙が辺りを覆った。

フレアとチャフが詰められたダミーだったのだ。

ガミラスも地球艦隊も相手を見失う。

しかし、古代守はニヤリと笑った。

『戦術Aクイック発動!」命令一下、地球艦隊は二たてに別れ、二隻一組の単縦陣に移行した

そして何のためらいも無く、爆煙の中に突っ込んだ。

「ゆきかぜ」の左舷にいきなり先頭のガミラス重巡の噴射口が現れた。

敵艦隊の分断に成功したのだ。

射手が反射的にビーム砲の引き金を引いた。

6条のビームがその噴射口に吸い込まれたと思ったら「ゆきかぜ」は忽ちガミラス艦隊を横切った。

続いて僚艦の「うみかぜ」もフェーザーを叩き込んで通りすぎた。

後続のガミラス艦も「みねかぜ」、「かわかぜ」の攻撃を受けていた。

先頭のガミラス艦が小爆発を起こしたがその姿がユラリと歪んだと思ったらその姿は消えた。

「ワープしたな。」古代守は唇を噛んだ。

後続のガミラス艦はやはりワープしようとしたがユラリと歪んだと思ったと同時に大爆発を起こして宇宙のチリと
なった。

たぶん一隻目もワープ中の亜空間内か、通常空間に戻った時に爆沈するだろうと思われた。

もし、生還したとしても修理に時間を取られるだろう。

一応、古代守の護衛の任務は果たせたと言えた。

しかし、これでエネルギーを使い切ってしまった艦隊は木星軌道上を漂流する羽目になってしまった。

「こんな時に別のガミラス艦隊がやって来たら一巻の終わりですね。艦長。」副長がコーヒーを手渡しながら
古代守に言った。

「それはそれ、運命さ、しかし、俺は『ゆきかぜ』の幸運伝説を信じるよ。」守には「ゆきかぜ」の運の良さに
自信があったのだ。

「『雪風』は第2次大戦中に活躍した『陽炎』型駆逐艦の一隻である。

この艦は殆ど全ての海戦に参加したにも係わらず、戦死者3名と言う幸運艦なのだ。

ある時など海戦後食料倉庫の中から米軍機の発射した5インチロケット弾が発見された事が、あった。

そして、その隣りは火薬庫だったのである。

もし、ロケット弾が食料で受け止められずに火薬庫に飛び込んでいたら爆沈は免れなかったろう。

 日本の敗戦後、「雪風」は中華民国の「丹陽」として再び弾雨の中にいたが幸運はまだまだ続いていた。

中華人民共和国の駆逐艦隊に追われた時、あまりの酷使に機関が故障を起こして動けなくなってしまった。

もうだめだ!艦長以下全乗組員がそう思った時、追撃して来た敵の駆逐艦が次々と爆発を起こしたのである。 

やはり、機関の酷使が原因のボイラー爆発であった。 

それも三隻全てがである。 

これはもう何か特別な力が働いているとしか思えなかったのである。

駆逐宇宙艦になってからも幸運は続いていた。

だから古代は落ち着いていられたのである。

根拠の全くない自信であったが、明日をもしれない任務に明け暮れる駆逐艦乗りには必要な心の拠り所だった
と言える。

数隻の作業艇が近づいて来た。 

エネルギー補給のためである。

突撃駆逐宇宙艦隊はプラントに戻れるだけの最低量のエネルギーを貰い、プラントで完全補給した後、
今度は満載のタンカー船団を護衛して地球に戻るのだ。

日本プラントに着くと古代守は「かげろう」型の艦隊が先に入港しているのを確認した。

よかった。あれ以上のガミラス艦はいなかった様だ。

「かげろう」のパイロンに吊るされた反物性ミサイルの数は揃っており、使われた様子は無かったからだ。

「ゆきかぜ」型より大分古い「かげろう」型はフェーザー砲すら持たず、攻撃手段は反物性ミサイルだけだ。

砲塔は二連双レーザー砲を三基持っていたが、これらは対ミサイル防衛用で出力も少なく、もし、「ゆきかぜ」型の留守に船団が別のガミラス艦隊に襲われたら苦戦は免れなかったろう。

 とにかく、船団が水素とメタンで腹を満たす間、半舷上陸だ。

護衛艦隊司令、古代守大尉は自分も腹を満たすべく、ケータリングに向かっていった。



 地球ー木星間航路でのガミラス艦隊の跳梁激しさを増す、地球軍かなり苦戦を強いられる。

                                                    ヤマト発進まで2026日
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by YAMATOSS992 | 2012-04-13 21:00 | 本文 | Comments(2)
2012/09/09 図版交換

 廊下の突き当たりに木製の重々しい立派な扉があった。

ライニック姉妹はその前で止まり、扉をノックすると中から入室を促す声がした。

フローラーは入室すると海軍式の敬礼をし、出頭を申告した。

「シェーア大将、フローラー・ライニック少佐、フレイア・ライニック大尉出頭しました。」

「うむ、木星航路の防衛戦、良い働きをしてくれているな。 感謝する。」シェーア大将は微笑んで椅子を勧めた。

「ガミラスの攻撃は執拗を極めてきています。

こちらも重巡クラス以上の艦を投入しないと対処しきれません。」フローラーは前から思っていた事を
シェーア大将に告げた。

「今、我が艦隊には重巡は『プリンツ・オイゲン』と『ブリュッヒャー』しかない、通商保護には出せんな。 
艦隊の方が手薄になってしまう。」 シェーアはにべも無くフローラーの意見を却下した。

「艦隊保全策を取って成功した例はないぜ! 折角、持っているものは使わなきゃ価値がないよ!」フレイアも
噛み付いた。

確かに日露戦争時の旅順艦隊、第1次大戦の帝政ドイツ高海艦隊、第2次大戦の日本の戦艦部隊等、
ただ悪戯に引きこもって自滅した艦隊の例は多い。

海軍は陸軍と違って艦艇という設備がなければ戦い様がない。

そのため、手持ちの戦力(設備)をなるべく傷付け無い様に戦いを進めたがる傾向がある。

その極端な例が艦艇を軍港の奥から出撃させない艦隊保全策である。

しかし、戦う為の兵器である軍艦を戦闘に参加させないのは矛盾を通り越して無駄以外の何物でもない。

この辺りの事をきちんと理解していたのは海賊帝国と呼ばれた英国、幾ら艦艇が沈められてもそれを補える
工業力を持っていた米国、自らの2倍の戦力と対峙せざるを得なかった明治時代の日本帝国海軍位であった。

シェーア大将は艦隊の耳目となる重巡を艦隊から外してしまうと後にガミラスが木星圏侵攻をして来た時、
それを迎撃するのに支障があると考えていたのである。

「今回、君達を呼んだのはこんな事を議論するためではない。 新しい辞令だ。 受け取りたまえ。」シェーアは
2通の封筒を2人に渡した。

「フローラー・ライニック少佐、少佐を免じ ・・・大佐に任じる!」フローラーは驚いた。

「俺は中佐だぜ!」大尉のフレイアも驚きを隠せなかった。

「二階級特進・・・ですか? これは一体・・・。」 ライニック姉妹の驚きも無理は無かった。

二階級特進は普通、戦死した時のみ、その功績を称えて行われる処置だったからである。

「二階級特進は何も戦死した時のみに限った事ではない。 まぁ極めて稀な事には違いないがな。」シェーアは
悪戯っぽく笑った。

「来たまえ。 君達に見せたい物がある。」シェーアはライニック姉妹を奥の部屋に誘った。

**********************************************

 フローラーの目の前のモニターには土星の輪がまるで氷原の様に広がっていた。

<全く、シェーアのオヤジも無茶言ってくれるよなーっ>例によってフレイアが無言でぼやいた。

<そうでも無いわよ。 私達は護衛の巡航艦を引き付けておけば良いだけよ。 何も全部、撃沈する必要は
無いわ。>

<今までのガミラス艦隊はどの艦隊も全滅するまで喰らい付いてきたぜ。 それに今の護衛は
巡航艦だけど、戦いが長引けばその内、戦艦が出て来るかもしれない・・・。 いや、きっと出て来る。>

<その時はその時、今は今の事を考えましょう。>フローラーは意外と落ち着いていた。

今、ライニック姉妹は重巡航艦に乗って土星空域にいた。

フローラーは「シャルンホルスト」、フレイアは「グナイゼナウ」の艦長に任命されていたのだ。

しかもこの2隻は曰く付きの重巡だった。

と言うより、この2隻は今の区分こそ重巡航艦だったが本当の建造目的は通商破壊用装甲艦だったのだ。

2168年、欧州連合の重要な構成国だったドイツ連邦は政権をネオ・ナチスに奪われ、欧州連邦を脱退した
歴史を持つ。

そして周り中を敵に廻したドイツは自国の独立を守るためと称して軍拡を進めた。

しかし、ドイツ宇宙軍、いや海軍は歴史的伝統的に対立する国と力で決戦する事は極力避ける方針だった。

それが艦隊保全主義に繋がり、水兵の反乱を招いて帝政ドイツは崩壊したのだが、それとは別に独特の戦略を
持っていた。

第1次、第2次大戦共にドイツの主な敵対国は英国だった。

そして英国は戦争遂行に必要な物資を海外からの輸入に頼っていた。

すなわち、物資を運んでくる船を英国に辿り着かせなければ、その内、英国は干上がって戦争遂行は
覚束なくなる。

そのためにドイツは多数の潜水艦や水上艦を通商破壊の目的で七つの海に放ったのだ。

結局はドイツは英国に敗北したが後一歩で滅亡させると言う所まで追い詰めたのだ。

2169年代のネオ・ナチス政権も直接的に自国や自国プラントを防衛する宇宙艦隊は最小限度にし、代わりに
木星ー地球間の航路を狙う通商破壊艦を多数建造した。

これはドイツと対立する国には恐るべき脅威となった。

戦艦に砲力は劣る、速力は巡航艦と同等か少し下回る位のつまらない船という見方も出来る。

しかし、実際には自分に追いつけるどんな艦よりも強く、自分より強いどんな艦よりも速い、という敵に廻すには
真にやっかいな存在だったのだ。

ドイツは最初15インチ・フェーザー3連双砲塔を2基持ち、速度を戦艦より速く、巡航艦よりは遅くした
「ドイッチェ・ランド」クラスの装甲艦を装備したが外国の新型戦艦の速度が高めに設定されると旧式化し、
新型艦の出現が待たれた。

そして満を持して出現したのが「シャルンホルスト」クラスの通商破壊艦だった。

しかし、「シャルンホルスト」、「グナイゼナウ」が完成したところでネオ・ナチス政権は倒れ、ドイツは欧州連合に
復帰した。(2171年)

新生ドイツは欧州連合の1員に帰り咲くに当たり、ネオ・ナチス時代の悪夢の象徴として多数の通商破壊艦の
廃棄を決め、これらの艦艇は全てスクラップにされたはずだった。

少なくとも表向きは・・・。

**********************************************

 フローラーは土星の輪に艦を潜ませながらガミラスのエネルギー・資源運搬タンカーの船団を待ち伏せていた。

土星会戦の時に観測された土星上空に建設中と思しき施設が後の人工惑星のフライ・バイ偵察で
エネルギー採取プラントだと判明した時、ガミラスが何故、地球文明の急所というべき木星のプラント群を
直ぐに攻撃せず、木星ー地球航路の通商破壊に力を注いでいるか、判ったのだ。

彼等は自分達の攻撃準備が整うまでの間、地球陣営の体力を極力奪う方針なのだ。

遊星爆弾による示威攻撃もその一環と思われた。

あれ以来、一個の遊星爆弾も観測されなかったが地球陣営としては警戒を緩めるわけにはいかず、この警戒、
迎撃準備態勢を維持するだけで地球側の体力は相当奪われる事になった。

ガミラスの方針が予想出来た以上、その計画は断固、阻止する必要があった。

それはガミラスが地球陣営に対して仕掛けてきている攻撃、通商破壊工作をそっくり、そのまま仕掛け返す事
だった。

しかし、今の地球陣営には冥王星まで足を伸ばして通商破壊工作を行える艦艇は無かった。

但し、ネオ・ナチス時代のドイツが建造した各種の通商破壊艦ならば冥王星は無理としても土星までならば
長期通商破壊工作活動が出来る事が判っていた。

しかし、その各種通商破壊艦は既に廃艦となり、スクラップ化されていたはずだった。

だが、実際は月面の裏にあった廃艦駐機場でスクラップにされる順番を待っている状態だった。

ドイツ艦は堅牢な造りが解体業者に嫌われ、そのほとんど全部、スクラップ化が後回しになっていたのだ。

欧州連合の宇宙軍はすぐさま解体業者から通商破壊艦郡を買い戻し、整備の上、再度、任務に付ける事に
なった。

フローラーが少佐から大佐、フレイアが大尉から中佐と2階級特進したのも重巡航艦以上の艦艇の艦長は
大佐がなる慣例になっていたからであった。

フレイアが中佐で艦長を務めるのは特例事項でフローラーが指揮する第1特務艦隊の2番艦、
「グナイゼナウ」の艦長であると言う事を考慮した結果だった。
(まさか3階級特進という超特例はつくる訳には行かなかった。)

<2階級特進させたって言う事は戦死するまで帰ってくるなって事かな・・・。>フレイアがポツリと言った。

<私達はまだ良いわよ。 次にくる第2特務戦隊は船も乗組員も新品よ。 まともに戦えるかどうか心配だわ。>

「シャルンホルスト」クラスは通商破壊艦として非常に勝れた設計であった。

そこでその設計を殆ど流用して更に2隻の通商破壊艦が造られていた。

「デアフリンガー」と「リュッツオー」である。

この2隻はネオ・ナチス時代に起工されたが進宙式を迎えた所で廃艦が決まり、武装などの艤装が
施されないまま、廃艦駐機場に放置されていた。

スクラップ業者は「デアフリンガー」の解体を始めたがそのあまりにも頑強で複雑な構造に手を焼き、解体を
中止、他のドイツ通商破壊艦の解体も他国のやり易い物件から片付けて、先延ばしにしていた。

ガミラスの侵攻が異星文明の侵略だとはっきりした時点で欧州連合は過去に廃棄した艦艇でまだ解体されて
いない、ないしは戦闘可能なまでに復帰出来る艦艇を求めて廃艦駐機場に調査官を派遣した。

その結果、ドイツが廃棄したはずの通商破壊艦、装甲艦4隻、重巡4隻、軽巡8隻を発見したのである。

欧州連合の艦隊上層部はすぐさまこれ等の艦の買戻しと復元を決め、一大戦力を手にした。

装甲艦4隻は武装は強力だったが、速度が遅く、航続距離も劣るため、地球ー木星航路の防衛に廻し、
重巡2隻と軽巡4隻で1戦隊を組み、ガミラスの土星ー冥王星航路を襲う事になった。

その第1陣がライニック姉妹の指揮する第1特務戦隊であった。

その内訳は重巡は「シャルンホルスト」と「グナイゼナウ」の2隻、軽巡は「「ゼーアドラー」、「エムデン」、
「ケーニヒスベルク」、「フランクフルト」の4隻である。
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ガミラスは土星以外にもエネルギー・プラントを保有している可能性はあったが、今の所の人工惑星による
戦略偵察では確認出来なかった。

もし、天王星や海王星にプラントを作られていたら地球艦隊には手も足も出ない、遠すぎるのである。

元々、ガミラスは初期には天王星からエネルギーを得るプラントを持っていたが、土星圏の制圧に成功すると
そのプラントをそっくり引き上げ、土星プラントの増強に廻してしまったのである。

ガミラスの冥王星前線基地司令、レッチェンスは本来、予備として天王星プラントは残して置きたかったのだが、
ガミラス本国はその必要を認めず、レッチェンスは仕方なく、全プラント設備を土星に移さざるを得なかった。

彼は地球ー木星航路の通商破壊活動を重視していたのが決して土星ー冥王星交通路の防衛を
軽視していた訳ではなかった。

だが、本国に要請した12隻の重巡の増強は拒否され、大型戦艦の配備時護衛に着いて来た軽巡4隻を
土星ー冥王星航路の防衛に当てざるを得なかった。

<こちらの航路の防衛にも重巡が使えれば安心なのだが・・・。>レッチェンスは一人ごちた。

しかし、彼は地球ー木星航路でガミラスの重巡戦隊と死闘を演じている地球の護衛艦の殆どが駆逐宇宙艦で
あるとは予想もして居なかった。

**********************************************

「目標補足!(ゲッタ・ブリップ!!)」シャルンホルストの艦橋に情報士官の声が響いた。

「大型タンカー2、巡航艦2、冥王星方面から飛来、距離10万!」

<さぁーて、お客さんが来たぜ、姉貴 どう御持て成しする?>フレイアがワクワクしながら語りかけて来た。

毎度の事ながら妹の好戦的態度にフローラーはあきれたが、部下達にそんな顔は見せられない。

落ち着いた態度で司令を発した。

「全艦、前進微速、そのまま接近!」

2隻の重巡、4隻の軽巡は土星の輪に身を潜めたまま、ガミラス船団との距離を詰めた。

「敵の方が速度が速い! このままでは目の前を素通りされます!」情報士官が状況報告をした。

「仕方ないわね。『シャルンホルスト』、『グナイゼナウ』は輪を出て最大戦速!敵船団の前に回りこんで!」
フローラーは間髪入れず敵の頭を抑える様、命令した。

細長いマッコウクジラを思わせる優美な艦体を持つ2隻の重巡が姿を表した。

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僚艦「グナイゼナウ」 ( 第一特務戦隊所属 )
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ガミラスの巡航艦も2隻に気付き、砲塔をめぐらすと遠距離からフェーザーを打ちかけてきた。

と、地球艦隊の2隻は全く違う行動を取り始めた。

「シャルンホルスト」はゆっくり回転を始め、ガミラス艦に艦底を見せて止まった。

「グナイゼナウ」は猛烈な速度で突進し、距離を詰めて来た。

ガミラス護衛艦隊の司令は地球艦隊は一体、何をしようとしているのか、判らず判断に迷った。

普通、2隻の軍艦が戦隊を組んで行動する時、相手が1隻なら二手に分かれて挟み撃ちという方法も
考えられたが、この場合、敵味方同数である。 

挟み撃ちには到底出来ない、かえって自らの戦力を分散して不利になるだけである。

しかし、ガミラス側の司令は2隻の行動を好機と捉えた。

特に「シャルンホルスト」が底部をこちらに向けているのは故障か、何か、不備な状態に陥った結果だと判断し、
「グナイゼナウ」の迎撃に全力を上げる事にした。

しかし、実際は違っていた。

この底部を敵に向ける態勢こそ、「シャルンホルスト」クラスの装甲艦の攻撃態勢なのである。

「シャルンホルスト」は大抵の戦艦と同じ位か、少し厚めの装甲を持っていた。

だが、その装甲は底部のみで他は装甲されていない、というより細長い装甲板の上に兵装や機関、艦橋が
乗っているのだ。

そして、主兵装の11インチ大口径レーザー砲を3連双2段の砲塔に積み、この2組の砲塔を船体左右に
張り出して、底部の装甲板ごしに敵を攻撃する様になっていた。

この配置の場合、有人の艦橋は戦闘面から一番離れた位置となり、安全性も増す効果もあった。

フローラーは自ら艦橋直下の装甲板中央に開いた穴に設置されている装甲球にセットされた
カール・ツァイスの大望遠鏡で「グナイゼナウ」に迫ってゆくガミラス艦を捕捉し、艦の全長を利用した
大型測距儀で距離を測り直すと、12門の大口径レーザーを手前のガミラス巡航艦に浴びせた。

普通のレーザー射撃だったら簡単にガミラス艦は弾き返しただろう。

しかし、フローラーが放った一撃はガミラス艦の機関部近辺を打ち抜いた。

幸運な事にその一撃が当たったのは機関部のメンテナンス・ハッチだったのだ。

超一流の名人だけが引き寄せる事が出来る幸運だったのかもしれない、ガミラス艦は爆発して果てた。

もう1隻のガミラス艦が慌てて「シャルンホルスト」にフェーザーを打ちかけて来た。

しかし、並の戦艦より厚い装甲はいくらガミラス艦とはいえ、軽巡のフェーザーでは反対に弾き返されて
しまった。

もう一射、打ちかけ様とした時である。

「シャルンホルスト」にかまけて見過ごしていた「グナイゼナウ」が思い切り、距離を詰めてきていた。

「艦長!本艦は重巡です! 単座戦闘機ではありません!」 フレイアの乱暴な操艦に航宙士がコ・パイ席で
悲鳴を上げた。

「いただき! ミサイル斉射!」フレイアはガミラス艦を下から突き上げる強引な躁艦ですれ違った。

ガミラス艦は艦底部に9発もの反物性ミサイルを受けて重力崩壊を起こして消失していった。

「戦闘終了! ガミラスの輸送船2隻も軽巡部隊が片付けたわ。 次もこの調子でいきましょう。」フローラーは
快活に言って再び艦隊を土星の輪の中に潜ませた。

<次に来る船団の護衛は重巡、いや戦艦かもしれない・・・。>と言う恐れを部下に見せない指揮官の
苦悩を味わいつつ、部下達に仮眠を取らせて自分は一人、スクリーンに写る冥王星方向の宙域を見詰める
フローラーだった。


土星空域で地球艦隊が反撃を始め、地球ーガミラス双方とも辛抱強い通商破壊戦の応酬を始めた。

                                                    ヤマト発進まで2434日
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by YAMATOSS992 | 2012-04-09 21:00 | 本文 | Comments(0)
 ミュンヘン市のスケートリンクの銀板の上に1つの影があった。

一人の少女がフィギャア・スケートの練習をしているのだ。

しかし、少女は世界選手権で使われる難易度の高い技を次々と信じられない様な高速で繰り出していた。

リンクの縁にはもう一人の少女の姿があった。

その顔は微笑んでいたが、その目からは涙が一筋、頬を伝って流れていた。

<フレイア、思い切り滑りなさい。 次はいつ滑れるのか、判らないのだから・・・。>フローラーは心の中で
言った。

<姉貴は良いよなぁ。 元々軍人なんだから・・・。 航宙士免許を持っているだけで無理やり軍人にさせられる
こっちの身にもなってみろよ!>正確にトリプル・アクセルを跳びながらフレイヤは毒づいた。

<文句は後で聞くから今は悔いの無い様、思い切り滑りなさい。>フローラーは妹の滑走を感慨深げに
見詰めながら思った。

フローラーとフレイアのライニック姉妹は冬季オリンピックの華であり、ドイツの誇りだ。

フローラーはバイアスロンの選手、フレイアはフィギャア・スケートの選手だった。

しかし、ガミラスの侵略はオリンピックの開催を不可能にしていた。

そして2192年9月には地球ー木星航路でガミラスが通商破壊を始め、地球に入ってくる資源やエネルギーに
影響が出始めていた。

そのため、スポーツ施設など不急の施設は次々と閉鎖されていった。

フレイアがミュンヘン市のスケートリンクで滑っていたのもこのスケートリンクが今日を限り、閉鎖されるから
であった。

また、ルフトハンザ・ドイツ航宙の最年少機長でもあるフレイアは他の航宙士免許を持つ同僚と共に
ドイツ艦隊に編入されてしまったのだ。

今は無心となって滑走に集中する妹の姿にフローラーの心は痛んだ。

そして、こうしたささやかな幸せを情け容赦無く奪うガミラスに対して怒りを覚えた。

**********************************************

<どこまで続いているんだろう・・・。>フローラーはこれから護衛してゆくタンカーの脇を進んで先頭に出ようと
していた。

彼女が指揮する駆逐宇宙艦Z-14の左舷には全長3kmはあろうか、1隻300m位のユニットが10隻繋がって
いるのだ。

その先頭のユニットのみ有人になっている。

その有人ユニットの艦橋、とはいっても航空機型の艦橋の窓には航宙士の姿が二人見えた。

地球ー木星航路が開設され、地球がエネルギーや資源を木星に頼る様になってもう50年が経とうとしていた。

その間に船の信頼性は上がり、今では船長と航海士、副長と副航海士の4人で12時間交代勤務で済むのだ。

しかし、今、ガミラスは地球経済に打撃を与えるべく、この地球ー木星航路を航行する輸送船やタンカーを
攻撃して来た。

各国、各勢力、とも自分の所の輸送船は自分の軍艦で守るのが精一杯だった。

米ソは土星会戦で多くの艦艇を失っていたが、持ち前の工業力で護衛艦隊だけは復旧させていた。

フローラーが護衛するのは当然、ドイツのタンカーだ。

<姉貴、よろしくな。>フローラーの脳の中にフレイアの思考が響いた。

フローラーの指揮する第3護送艦隊、4隻がの護衛するタンカーの副船長はフレイアだった。

<まあ、木星からの帰りだけ心配すればいいんだけどな。>

<そうね、 空荷のタンカーを襲うとは考え難いわね・・・。>一応、賛同したフローラーだったが、
何か一抹の不安を覚えた。

「コントロール、標準時16時、タンカー『ジークフリード』木星に向かい、発進します。」船長が管制官に告げた。

地球衛星軌道上にある航宙管制センターの管制官はタンカー『ジークフリード』及び第3護衛艦隊の出航を
許可した。

<さて、俺は次の直だから一休みするわ。 護衛の方は頼んだぜ。>フレイアの思考がフローラーの
頭の中に響いた。

<全く、もう、こっちは直を組めるだけの人員の余裕はないわ。 軍艦は辛い・・・ってとこかしらね。>

フローラーがぼやいて見せたが、実際には幾ら軍艦でも人が動かしている以上、休息は必要だった。

先程、フレイアが言っていた様に、地球→木星間で襲われる確率は低い。

だから、自動航行装置(オート・パイロット)を使って1隻を残して全員、仮眠を取る事になっていた。

しかし、フローラーはどうしても不安を拭い切れず、自分の席で仮眠を取る事にした。

**********************************************

船団が火星軌道に入ろうとした時である。

当直だった駆逐宇宙艦Z-15から警報が入った。

艦長席で仮眠を取っていたフローラーは直ぐに身を起こすと状況報告をさせた。

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「識別表によるとガミラス巡航艦2隻が1時の方向から接近して来ます! 距離1万5千!」

Z-16は反物性ミサイルの発射許可を求めて来た。

しかし、フローラーはそれを許可しなかった。

代わりにZ級駆逐宇宙艦の主兵装である6インチフェーザー砲の全艦リンク射撃の準備をさせた。

「敵との距離、1万を切りました。 あっ! 敵艦発砲!」観測員の悲鳴が走る。

フローラーの乗るZ-14のブリッジの脇を極太のフェーザー・ビームが擦過する。

Z-16は敵のフェーザー・ビームに第3砲塔をもぎ取られていた。

我慢しきれなくなったZ-16は単独で残り2門のフェーザー砲を敵に向けて発射、ビームは敵艦ブリッジ下の船体に命中した。

しかし、6インチと比較的小口径のフェーザーはガミラス艦の厚い装甲を破れず、弾かれてしまった。

「戦隊長! フェーザーは効きません! やはり反物性ミサイルを!」副長が進言した。

「黙って!」 射撃管制員の席を占領したフローラーはモニター上に写しだされたガミラス艦のブリッジに
照準環(ピパー)を合わせた。

そして、戦隊全艦の射撃リンクが成立しているのを確認すると冷静に引き金を引いた。

Z級の駆逐宇宙艦のフェーザー砲は6インチ単装砲塔3基だ。(但し、今回Z-16は砲塔を1基失っていたが・・・。)

1戦隊4隻、11条のビームがガミラス巡航艦のブリッジに集中した。

被弾したガミラス巡航艦がよろめいた。 

明らかに乗組員に損害を与えたのだ。

するともう1隻のガミラス艦が被弾した僚艦に至近距離からビームを浴びせた。

6条の大口径フェーザー・ビームに貫かれたガミラス艦は木っ端微塵に吹き飛んだ。

被弾して損害を受けた僚艦を始末したガミラス艦は反転すると宇宙の闇に消えていった。

「恐ろしい奴等ですね。 仲間を何の躊躇いも無く始末するとは・・・。」副長がフローラーに言った。

<面白くはないが、ガミラス艦が傷ついて航行不能になった僚艦を始末したのは当然だな。>フレイヤの思考が
割って入った。

ガミラスと地球のテクノロジーは微妙なバランスを保っていた。

ガミラスはワープなど様々なオーバー・テクノロジーを持ってはいたが、地球がそれを理解出来ない訳では
なかった。

特に波動エンジンなど、もし、無傷で地球側の手に渡ったら一気に態勢を挽回されないとも限らないのだ。

<そうね・・・。立場が違えば私達でも遣らざるえなくなる場合があるかもね・・・。>フローラーは戦争の
持つ理不尽さが許せなかった。

**********************************************

木星が眼前の視界を埋め尽くす程の距離まで船団は接近していた。

<結局、あれ以上の攻撃はなかったな。 姉貴の腕に恐れをなしたのかな?>フレイアがちゃかした。

しかし、フローラーは別の事を考えていた。

何故、ガミラスは空荷で身軽な往航時の船団を襲って来たのだろう?

タンカーや輸送船が満載で動きが取れない復航時に襲撃した方が効果が上がりそうなものなのに・・・。

フローラーは「はっ」と気付いた。 

<なんて悪賢い・・・。>ガミラスの戦略を指揮しているのは相当な知恵者だと思った。

確かに復航時に襲う方が襲撃の効果は上がりそうに思える、しかし、地球側の兵器で確実にガミラス艦を
仕留められるのが反物性ミサイルだという事を考慮すると事情が変ってくる。

ドイツのZ級駆逐宇宙艦以外の各国の駆逐宇宙艦は主兵装が反物性ミサイルでフェーザーは5インチと
小口径である。

フェーザーではなく、レーザーを積んだ旧式艦も多い。

フローラーが行ったフェーザー主体の戦闘は出来ないのである。

だから、往航時に襲撃して護衛艦の反物性ミサイルを消耗させてしまえば、復航時に地球の護衛艦の武装は
無いに等しいものになるのだ。

これでは復航時の襲撃はガミラス艦の思いのままになってしまう。

往航時の空荷の輸送船に出来るだけ多数の反物性ミサイルを積んで木星プラントに備蓄しておく必要が
ありそうだ。

フローラーは木星プラント到着後に総司令部に戦闘報告と共にミサイル備蓄の提案をする事にした。
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**********************************************

復航時の航行は案の定、ガミラス艦隊の襲撃が絶え間なく行われた。

多分、往航時に撃破した艦隊の残存艦からの情報に基づくものと考えられた。

今度はワープを使った一撃離脱(ヒット・エンド・ラン)戦法での襲撃だった。

多分、ガミラス艦は、こちらの探知外に遊弋していて、こちらの位置を特定し、小ワープで接近してくるものと
思われた。

フローラーはドイツ艦隊本部に早期警戒システムを積んだ艦艇が近くにいないか、問い合わせた。

 復路上には該当艦はいなかったが、往路上には日本艦隊の『たかお』がいた。

この巡航宇宙艦は2165年進宙の旧式艦だったが8インチ連双フェーザー砲塔を5基装備と強兵装だった。

そこで、2基の砲塔を降ろし、代わりに初期のコスモ・レーダーを積んで早期警戒艦に改装されていた。

日本は第2次大戦で早期警戒の失敗で破れた戦いを幾つも経験しており、それ以降、早期警戒システムの
充実には力を入れていたのだ。

「たかお」の艦長は窮状を訴えるフローラーの要求をすぐさま聞き入れてくれ、タンカー『ジークフリード』の
周辺の空間を走査した。

果たせるかな、タンカー『ジークフリード』の船団の左舷、3万宇宙キロの所をガミラス艦3隻が平行して航行
していた。

<こっちが手の出せないと思ってこれ見よがしに遊弋しやがって!>フレイヤが切れた。

<いやどこにいるか、判れば対処の方法もあるわ。>フローラーは微笑んだ。

第3護送艦隊は既に1隻の護衛艦、Z-16を失っていたが、フローラーは相手の挑発に乗せられる事なく、
反物性ミサイルはまだ充分持っていた。

「フレイア少尉、反物性ミサイルの推力を絞って最後は慣性力で敵艦隊に届かせる軌道計算プログラムは
組める?」

「そうね、ざっと見積もっても到達時間は1時間位かかるわよ。」複雑な軌道計算をフレイアは暗算で
概算数値をだした。

「いいじゃない。直ぐに計算データをこちらに頂だい。 護衛艦Z-15は残りの反物性ミサイルを全部、
そのプログラムで発射。

護衛艦Z-17は本船団右舷、1000宇宙キロの所をこちらと平行に慣性航行させる様にミサイルをプログラムして発射して!  もちろん、全弾よ!」

直ぐに命令は実行され3発のミサイルが獲物を待ってひっそりと船団から1000宇宙キロの所を平行して
慣性航行し始めた。

「戦隊長、 罠をはるんですね。 しかし、次のワープで右舷に出現するとは限らないのでは?」副長が
疑問を口にした。

「本船団は間も無く火星軌道に入る、しかも今、ガミラス艦の遊弋している付近は火星の衛星、ダイモスの
軌道と重なる、否が応でも位置を変えなければならないわ。 

ガミラス人の心理は判らないけど、地球人と同じなら、確実にダイモスの軌道を大きく避ける方法をとるわ。」

<その予想が外れたらどうするんだよ?>フレイアが思考で聞いてきた。 

<当たるまで待つだけよ。>フローラーさらりと言った。

それに火星軌道より地球よりの宙域はまだまだ地球の勢力圏内だった。

すでにフローラーからの救援要請は火星基地に届いており、ガミラス艦といえども長居出来る状態では
なかった。

「『たかお』から入電! ガミラス艦が3隻とも消失しました。 小ワープに入ったものと思われます。!」通信士が
叫んだ。

全員が右舷を見た。   

フローラーの予測どおり、ガミラス艦は右舷に出現するとすぐさまフェーザーを打ちかけて来た。

今までの襲撃ではガミラスは護衛艦をまず始末しようと護衛艦隊に攻撃をかけてきたが、今回はタンカーを
目標にして来た。

タンカーは全長3000m、全幅200mの巨体である。

たちまちガミラスの全ビームはタンカーの巨体を貫いた。

しかし、装甲板もない、酸化剤も積んでいないタンカーはビーム直径の穴が開くだけで積んでいるメタンガスが漏れ出すだけだった。

しかも、300mX200mのユニットを10個繋いで1隻になっているタンカーを始末するには全ユニットに穴を開ける必要があった。

護衛艦の妨害さえなければタンカーに平行して航行しながらフェーザーを浴びせ続ければ直ぐに済む
簡単な任務だったが、護衛艦がいる以上、自らが固定目標になってしまうこの方法は使えなかった。

だが、火星基地からの応援を気にするガミラス艦隊は焦っていた。

今までの一撃離脱戦法をやめ、2隻が護衛艦を引きつけ、1隻がタンカーを攻撃する作戦に切り替えてきた。

しかし、これこそ、フローラーの狙っていた状況だった。

予め戦闘予想空域に放っていた反物性ミサイルはガミラス艦を探知すると自動で追尾し始めた。

護衛艦とタンカーに注意を引き付けられていたガミラス艦は密かに追尾してくる反物性ミサイルに
気付かなかった。

そして、最後尾にいたガミラス艦は3発の反物性ミサイルを機関部に受け、爆沈した。

残りのガミラス艦は驚いたが、すぐさま退避に入った。

しかし、新たなワープ目標を設定している暇などあろうはずもなく、待機位置に戻るプログラムを使用せざるを
得なかった。

そしてこれこそ、フローラーが仕掛けた罠の本命だった。

船団左舷の遥か彼方に光点が灯った。

「ミサイル命中!」船団各艦の艦橋は歓声に包まれた。

しかし、フローラーは起こった爆発が予定していた爆発より大きかった事に不審をいだいた。

だが、その疑問は『たかお』からの通信ではっきりした。

フローラーが仕掛けた浮遊ミサイルとその空間に戻ってきたガミラス艦が同じ空間を占めたのである。

物質重複・・・それはこの宇宙で考えられる最大最強の爆発だった。

爆発したガミラス艦は原子レベルどころか、光子になって飛散した。

もう1隻残ったガミラス艦は至近距離でその爆発に巻き込まれた。

地球艦だったら誘爆していたかもしれない。

しかし、堅牢な構造のガミラス艦はその爆発に良く耐えた。

とはいっても、中破してしまったのか、戦闘継続を断念してワープして消えていった。

「今度は『たかお』の探知範囲内にはもはや存在しないそうです。」通信士が報告した。

<どうだい、俺の軌道計算は大したもんだろう!>フレイアの得意げな思考が響いた。

しかし、フローラーの頭の中には別の思考が渦巻きはじめていた。


                        ガミラス通商破壊艦、猛威を揮い始める。  ヤマト発進まで2603日
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by YAMATOSS992 | 2012-04-05 21:00 | 本文 | Comments(0)
2012,7,6 図版入れ替えと説明追加

 「閣下!来ましたぞ! あそこに見えます。」 シュルツはレッチェンス大将に告げた。

冥王星前線基地の司令室のスクリーンにはもうその姿は明確に映し出されていたが、展望室にいるレッチェンスの肉眼にはまだ一粒の光点にしか見えなかった。

しかし、百戦錬磨の戦士であるレッチェンスにはそれだけで充分だった。

「総司令部め・・・。 やはり、わしの要求を無視しおったわい。」そう呟くと下の司令室で大型戦艦の勇姿に感動しているシュルツ大佐とガンツ中佐を見て溜息をついた。

大型艦が配備されるのは嬉しい事だとレッチェンスは思ったが同時に用兵を軽んじる総司令部には不満を抱いた。

 そうしている内に大型戦艦は展望室の真近にまでやって来た。

逆噴射をかけつつ、減速したその巨体にレッチェンスは思わず感嘆の声を上げた。

流麗な曲線に彩られつつ、多数のミサイル発射管を持ち、駆逐型デストロイヤーとは比較にならない
大口径の三連双主砲塔を三基、駆逐型デストロイヤーと同威力の副砲塔を四基備えたその戦力は
絶大なものだったからである。
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「こいつの同型艦がもう一隻あれば強力な戦隊が組めるものを・・・。」レッチェンスは一人ごちた。

「レッチェンス様! 大型戦艦がドックに入りました。 早速視察なされますか?」ガンツ中佐がスクリーンから
目を離し、上の展望室にいるレッチェンスの方を向き直して言った。

ガンツは自分が大型戦艦の副長になれると思い、意気込んでいた。

「視察するのは良いがお前はこの戦艦には乗り込ませないぞ。」ガンツの心を見透かしたレッチェンスは言った。

「で、では副長はシュルツ大佐ですか?」残念そうに返すガンツ。しかし、レッチェンスはニヤリと笑って
シュルツ大佐の方を見た。

「シュルツ大佐、君には従来通り、この前線基地の司令を担当して貰う。」

「ではご自身が艦長を?」シュルツは不満そうに言った。

これだけの強力艦だ。大将は自分の物にしたいのだろう。と思ったのだ。

しかし、レッチェンスは二人のそうした思いも見抜いていた。

「シュルツ君。この艦の乗員を選んで訓練して置きたまえ。 この艦が必要になるその時までに・・・」

「と申しますと?」シュルツは怪訝な顔をした。

「大型戦艦は君にやる、と言っているのだ。」

「はあ?」シュルツとガンツは顔を見合わせた。

「幸い今、相手にしている地球艦は駆逐型デストロイヤーで充分相手に出来る。

また、間も無く行う予定の木星圏掃討作戦までには大型艦の乗員訓練は間に合わない。

太陽の大活動期が迫っている、木星圏掃討作戦はその前に済ませたいのだ。

そして一番重要なのはこの艦が一隻しかないと言う点だ。

最低もう一隻はいないと戦隊は組めない。 戦隊を組めない戦艦は幾ら強力でもハリコの虎だ。

性能の劣った艦と戦隊を組んでも性能の低い艦に合わせた戦い方しか出来ない、それでは折角の
大型戦艦も宝の持ち腐れだ。

それに、今、必要なのは通商破壊戦に使える巡航艦だ。

だから、わしは本星に重巡十二隻の増強を要請したのだ。

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しかし、大型戦艦一隻で済まされてしまった! わしも随分と舐められたものだ。」レッチェンスは自嘲した。

「しかし、このまま済ます訳には行かん!シュルツ君、護衛に付いてきた軽巡四隻を差し押さえろ! 
通商破壊戦に廻すのだ。」レッチェンスは吼えた。

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「では、木星圏侵攻作戦には大型戦艦は使わないお積もりで・・・。」シュルツは驚いた。

「そうだ。侵攻作戦は従来艦だけで行う。全艦隊を三グループに分け、二グループはわしが率いて正面から
攻撃する。

残りの一グループは遊撃隊を組織する、ガンツ、君が指揮しろ!」

「私がですか?」ガンツは驚いて自分の顔を指差した。

「そうだ、ガンツ、君の努力が報われる時だぞ。 シュルツにはここに居て後詰を頼む。

もちろん大型戦艦を一日も早く運用出来る様、乗員の訓練は続けていてくれ。」

レッチェンスはガンツが日頃、暇を見つけては木星圏の侵攻作戦を彼なりに研究していたのを知っていたのだ。

そしてまた、レッチェンスは士気に係わるので心に秘めていたが、一隻しか無い大型の強力戦艦の使い道は
撤退作戦での殿軍だと決めていた。

だが、そのレッチェンスでさえ、そんな事態が実際に起こるとは露ほどにも考えていなかった。

**********************************************

「首相、先月落下してきた隕石は人為的な攻撃だった事が判明しました。」防衛大臣が報告した。

「例の異星人の仕業か? 勝てる保障はあるのか? 被害が少ない内に降伏した方が良いのではないか?」
首相は防衛大臣に戸惑った様な顔を見せた。

防衛大臣は<この人ではだめだ・・・。 「箱舟」計画は打ち明けられない・・・。>と直感的に思った。

今回の侵略が最悪の展開となった場合、出来るだけ多くの人員や生命を地球から脱出させる
真にノアの「箱舟」と呼べる計画が密かに始められていた。

しかし、この計画の内容が漏れると市民の間にパニックが広まる恐れがあり、実行寸前まで絶対に
その存在すら知られてはならなかった。

まだ、計画の段階で規模や予算など全く決まっていなかったが、どんな最悪の事態となっても
人類と地球生命の火種を絶やさないと言う強力な意志の基、「箱舟」は動き出そうとしていた。



                                    ー「箱舟」計画が浮上、ヤマト発進まで2,622日ー
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by YAMATOSS992 | 2012-04-02 21:00 | 本文 | Comments(0)