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宇宙戦艦ヤマト前史

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宇宙戦艦ヤマト登場前の地球防衛軍の苦闘を描きます。

カテゴリ:ヤマト2199 挿話( 144 )

 また体調を崩し更新が滞ってしまい申し訳けありません。

 本来ならヴァルス・ラングがドメル艦隊に引き抜かれてドメルの元で活躍する話と運命のEX-178艦長就任による
ヤマトとの交流、そしてゲール艦隊の攻撃による最後までを描くつもりでしたが、異次元断層での一件は
散々2199挿話で描いてきましたし、ドメル艦隊での活躍は「疾風の漢(おとこ)」の繰り返しになる事に気が付き、
その構想はひとまず置き、久しく書いていなかった太陽系関連、それも第一次、第二次の内惑星戦争について物語を
綴ってみたいと思います。

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                                          211.第一次内惑星戦争秘話ー(2)この項続く
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by YAMATOSS992 | 2017-10-31 21:00 | ヤマト2199 挿話 | Comments(2)
ラング司令指揮のもと軽巡洋艦ゲットランは小破し、かつ、魚雷・ミサイルも尽きた駆逐艦ZR-101を僚艦に
先程の襲撃艦の追撃態勢に入った。
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「大分遅れちまったが、奴はまだ近くに居やがるんだろうか!」バーガー中尉が親友のライル・ゲットー大尉の仇を
撃たんとうずうずしていた。

「それよりあれは囮の攻撃だったのではないでしょうか? 我々を輸送艦隊から引き離すのが目的なのでは・・・。」
ディラー少尉が作戦に疑問を差し挟んだ。

「我々が引きずり廻されている間に本隊が襲撃される事を心配しているのか?」バーガーが横目で自分の副官を見た。

「ゲットランからゲシュタム・ジャンプの座標が届きました。」通信士が報告する。

「航法士に廻せ!」間髪入れず副長が命じた。

「艦長! 指定座標はゴトランド星系Y軸方向一光日の外宙空間です。 この距離をジャンプするためにはゲットランとの
機関・同調が必要です。」航法士が問題点を告げた。

「何か問題があるのか?」バーガーが今度は首だけ捻って航法士に問いかけた。

「いえ、機関・同調が必要なジャンプなど光年単位の長距離航行しかした事が無かったものですから、つい・・・。 
すみません、機関・同調作業に入ります。」航法士は機関部との打ち合わせに入った。

<これが目的で戦闘力の無いこのポンコツを連れ出したのか・・・。>バーガーはラングの思慮の深さに嫉妬した。

ガミラスは単にサンザー星系のみならず多数の殖民星や併合惑星国家を持っている。

そしてそれらをしっかり掌握する為には強大な軍事力が必要だった。

しかし、版図が広がるにつれ被征服民もガミラス軍に組み込む必要が出て来た。

しかし、力づくで征服した他星系の人間に艦艇などの強力な武器を与える事はガミラスにとって危険と考えられ初期には
被征服民は陸戦隊など艦艇を用いない部隊に限られていたが、人員の不足は如何ともしがたくガミラス帝星の版図
拡大に大きな影を落としていた。

しかし、ある時、ゲシュタム機関の共振現象という現象が開発局で発見された。

これは二台以上のゲシュタム機関を同時運転すると単独で運転した場合よりはるかに長い跳躍距離を得る事が出来ると
言う物であった。

これは軍の人員不足に悩む軍需省に朗報として迎えられた。

単艦での跳躍距離を光時単位に抑え、二艦以上軍艦が集まれば軍事遠征に必要な跳躍距離を得られるのでは?と言う希望であった。

そうすれば、反乱分子が軍艦を乗取って逃亡しても単艦では遠くに行けず、二隻以上の追撃艦隊に簡単に追いつかれて
制圧されてしまうのだ。

だが問題もあった、二隻程度の艦隊では光日単位が精々で実用上必要な跳躍距離を得る為に常にガミラス艦隊は
多数の艦艇がひしめき合う大艦隊とならざるを得なかった。

ラングはこれを利用した。

健全なゲシュタム機関さえ装備していれば小破して弾薬も尽きている駆逐艦ZR-101でもゲットランが長距離ジャンプする
為の僚艦として充分役に立つ。

だが、火力の発揮出来ないZR-101は危険には曝せない、だからラングは一度ゴトランド星域を一望出来る宙域まで
距離をとり、敵艦を発見したら近傍まで再度、艦隊ゲシュタム・ジャンプで接近、ゲットランだけが突撃して敵艦を一撃で撃沈する決意だった。

「敵艦発見! 重巡クラスです。小惑星RS-213の陰に隠れています。」測的主任が報告した。
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「よし、本艦とZR-101は短距離ジャンプで距離10,000まで接近、その後ZR-101はその位置で待機、
本艦は敵左舷後方より接近、ビームを浴びせつつ、魚雷を全弾叩き込む!」ラングが作戦の詳細を指示した。

「最終ジャンプ終了! 本艦は攻撃位置に着きました!」航法士が突撃開始位置にゲットランが到着した事を告げた。

「突撃開始! バーガー中尉、後を頼む!」ラングの言葉はバーガーには別れの言葉に聞こえた。

「本艦も突撃に参加する!」<このまま二等如きに名を成させてたまるか!>バーガーの負けじ魂に火が付いた。

ラングにはバーガーの考えが手に取る様に判ったが、今は議論している暇は無かった。

敵・ゴトランド・ゴースの艦隊型重巡を逃がす訳には行かなかったからだ」。

今仕留めねば、ゆくゆくこの宙域を荒らす交通破壊艦として跳梁跋扈する事を許す事になってしまう。

特にゲシュタム・アタック(一撃離脱戦法)を熟知していると考えると更に厄介な存在だった。

「突入速度を更に10ゲック上げろ! 主砲はまだ撃つな、魚雷方位盤セット完了したか?」ラングの声が狭い艦橋内に
響き渡る、一等ガミラス人の戦術士官が魚雷・方位盤の意味が解らず複雑な顔をしたが艦橋にいたハイデルン中佐が
雷撃・管制装置の事だと耳打ちしてやった。

「雷撃・管制装置セット完了! 敵艦をロック・オンしています。」

「おう! 全発射管発射(オール・シュート)!」今度はラングが専門用語の違いに戸惑いながらも正しく判断し直して
攻撃を命じた。

「艦首、艦尾全ての発射管、魚雷を発射しました!」先程の戦術士官が報告する。
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「航法士、最大戦速、魚雷との距離を出来るだけ縮めろ!」この命令にはさすがのハイデルンも胃の辺りに冷たい物が
入ってくる感じを否めなかった。

<このままでは敵艦が近接防御火器で魚雷を迎撃、爆発させられたら本艦も巻き添えになってしまうぞ、この男、何を
考えているんだ!>とラングの命令に疑問を持ったハイデルンだったがラングの次の命令でその疑問は氷解した。

「発射した魚雷群の直後まで追いつきました!」探知主任が報告する。

「よし!前甲板、艦底の砲塔、射撃開始!敵艦にこちらの魚雷を迎撃する猶予を与えるな!」ラングの命令一下、
ケルカピア級軽巡に備わった三基の三連装陽電子ビーム砲塔の内、前方指向の出来る砲塔が次々と火を噴いて敵艦を
射すくめた。

敵艦はその艦体表面に無数の近接防御火器を備えていたがラングの仕掛けた立体攻撃の前にそれらは悉く本来の
役目を果たす事無く沈黙していった。

そして近接防御火器の無効化が果たされると殆ど同時にゲットランの放った魚雷群が敵艦に次々と突き刺さっていった。

湧き上がる爆炎、その中にゲットランは何も躊躇う事無く突っ込んでいった。

それを見ていた駆逐艦ZR-101の副長は悲鳴を上げそうに成ったがバーガーが肩に手を廻しながら言った。

「雷撃の極意はな、魚雷を発射したら一緒に目標に突っ込む事だ。」

「 ビビッて手前で回避しようとして敵に腹や側面を見せたら魚雷は当たってもテメェがお陀仏になっちまうぞ。」

バーガーが言った通り、第二次大戦で日・米・英の雷撃機は魚雷投下後も敵艦に突っ込み続けて敵艦に晒す前面投影面積を最少にする事で雷撃を成功させると同時に雷撃機も生き残る事に成功したが他国、特にイタリア空軍は魚雷を
投下直後反転して脱出を試みたが敵の直前で面積が極大である下面を敵の砲火に晒すと言う愚を犯し、
多数の雷撃機を失った。

また、対空砲火の届かない所で魚雷を投下する事も試みられたが、今度は魚雷の着水地点が遠く成り過ぎ魚雷の
命中率は最低になってしまった。

近接・魚雷投下と敵艦・突撃を組み合わせた日・米・英の雷撃隊のみが戦果を残せたのだ。

そんな事をラングやバーガーが知っていたはずは無かったが、彼等も魚雷発射と敵艦・突撃を組み合わせて実行、
魚雷の着弾による爆炎に彼等は何の躊躇いも無く突っ込んでいった。

爆炎に覆われ何も見えなく成ったスクリーンを見たディラー少尉は自分の人生が終わったと思った。

「文字通り、炎の洗礼だな! これでお前も一人前の宙雷屋だ。」バーガーがディラー少尉の背中をどやしつけた。

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ハイデルン中佐は事の顛末を第六機甲師団副指令、エルク・ドメル下級少将に報告した。

「信じられるか? 輸送艦隊とその護衛が付け狙う敵の交通破壊艦や宙雷戦隊を退けただけで無く、ゴトランド星系を
封鎖していた敵艦隊を突破、更に襲って来た重巡も始末しただと! そんなに都合良く事が進められるものか? 
カリス! どう考える?」ドメルにはハイデルンの報告が大量の積荷を失った第11輸送艦隊の司令、バーガー中尉と
護送艦隊司令、ラング少佐を庇っているとしか思えなかった。
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「はっ、事件全体を見るととても信じられない出来事ですが、個々の戦闘を見ると宙雷戦術的に基本的で堅実な
作戦です。同じ宙雷屋である私はこの戦果を信じます。」カリス・クライツェ大尉が応えた。

「お前もか、ゲットーなぞ興奮して事情聴取も満足に出来なかったが、やはり司令にはハイデルンの申し立て通りに
報告するしか無さそうだな。」ドメルは諦めた様に目を瞑り肩をすくめた。

「ヴァルス・ラング少佐、その働きは真っ事”疾風の如き漢(おとこ)”じゃな。」ドメルとクライツェが声のした方を振り向くと
老人が一人、立っていた。

「御師匠!」老人はドメルの上官らしかったがドメルの呼び方はとても上官に対するものとは思われ無かった。
                                      
                                       209.疾風の漢(おとこ)ー(6)この項 了                                                                

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by YAMATOSS992 | 2016-06-25 21:00 | ヤマト2199 挿話 | Comments(2)
やがて先遣の軽巡洋艦が接触して来た。

バーガーの駆逐艦ZR-101は魚雷を撃ち尽くし、VLSのミサイル弾庫もスッカラカン、艦底に付いた280mm連装
陽電子ビーム砲塔も旋回不能という有様であった。

もう一隻の駆逐艦ZR-102も同じ様な状態でとても戦闘が出来る状態では無かったが第六空間機甲師団から派遣されて
来た軽巡洋艦はビーム砲塔を油断なくこちらに向けつつ、接近を図った。
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バーガーが無礼にも真直ぐ高速で接近してくるケルカピア級軽巡の所属と目的を誰何した。

第六空間機甲師団所属・第一偵察艦隊・旗艦 "ゲットラン" 、目的は輸送艦隊の受入・臨検との返答が来た。

「けっ、こちとら荷物を命懸けで運んで来てやったと言うのに”臨検”かよ!ふざけやがって!」バーガーは臨検の為の
士官を乗せた内火艇がこちらに来るのを見ながら毒づいた。

通常、”臨検”とは交戦国の軍艦が相手国の艦船を捉え、その積荷と船舶・書類を比べて不備が無いか、戦略物資を
運んでいないかを調べる事を指す。

従ってバーガー中尉にしてみれば友軍に”臨検”される事などあってはならない屈辱的な出来事であった。

ゲットランからの”臨検”目的の内火艇が輸送艦隊の旗艦、輸送艦101号へ横付けした。

輸送艦101号のボーディング・ブリッヂが内火艇のエア・ロックに向けて伸ばされそこを通って一等ガミラス人の将校が
二人乗り移って来た。

一人は初老の域に掛かった無骨な傷だらけの隻眼の中佐だったが、もう一人は若い、如何にも貴族的な顔をした
少尉だった。

<なんでこの艦は通路に所狭しと配線がはみ出しているんだ?>艦橋へ案内される途中、初老の中佐はこの艦は
規律が乱れていると感じ眉をしかめた。

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一行が艦橋に案内されるとラングとバーガーそしてそれぞれの副官が待っていた。

「第11輸送艦隊・第112護送駆逐艦隊・総合司令、ヴァルス・ラング少佐であります。」ラングは如何にも歴戦の戦士と
いった風貌の隻眼の男に敬礼した。

「私はヴェム・ハイデルン中佐だ。 だが、勘違いするな、ラング少佐、私はこの士官の役目の見届け役だ。居ない者と
思って欲しい。」ハイデルン中佐は答礼しつつ言った。

「ではこちらの少尉殿が”臨検”士官ですか?」ラングは初めての厳しい役目にコチコチになっている貴族の子息然とした
若者に敬礼した。

「ハインツ・ルーデル少尉であります。 この度はゴトランド・ゴース艦隊の妨害を排し良くぞ補給・輸送を成功させて
頂けました。 感謝します!」ルーデル少尉は英雄を見る眼差しでラング達に敬礼していた。

「こちらも少々複雑な事情を抱えていておりまして・・・。」ラングは積荷の摘み食いを如何に報告・説明するかを
考え口籠った。

「ラング司令、ここまで来たら始まらねえ、正直に全てを話すしかないだろ。 おっと俺の申告がまだだったな。
俺は第11輸送艦隊司令、フォムト・バーガー中尉だ。よろしくな。」バーガーもルーデル少尉に敬礼した。

「では搬送・積荷のデータを現物と照合します。 宜しいですね?」臨検・少尉は当然の様にその役目に従った。

なる様になれとそっぽを向いて口笛を吹くバーガー、ラング司令は覚悟を決めたが如く腕組みをして目を瞑っていた。

「えっ!」”書類”のデータと実際に積載されている魚雷やミサイルの数を照合していたルーデル少尉が手にしたタブレット
端末から顔を上げ、腕組みしているラングに当惑した視線を浴びせた。

それもそのはず、積荷の魚雷やミサイルは二十発づつコンテナーに収められ、それが一隻当たり十梱包積んでいたはず
だったが書類上積載している魚雷やミサイルはそのことごとくが『戦闘による行方不明』となっていた。

「ラング司令、『戦闘による行方不明』とは被弾によるものですか? それにしては輸送艦の被弾跡はほとんど無かった様ですが・・・?」ルーデル少尉が戸惑いながら尋ねた。

「それについては第11輸送艦隊司令の俺が答えよう。」バーガーが本来の自分の責任を取るべく手を挙げた。

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「それではゴトランド回廊を固めていた敵艦隊を中央突破する為に積荷の魚雷・ミサイルを投棄して身軽になったと言う事
ですか! それでは戦線離脱と同じです。軍法会議ものです!」ルーデル少尉は呆れていた。

強固な敵守備艦隊を退けて輸送を成功させた英雄と思っていただけに落胆も大きかった。

「少尉、積荷の投棄を命じたのはこの私だ。 バーガー中尉に責任は無い。」ラングは話が複雑になる前に二人の問答に
割って入った。

「おおよそガミラスでは上官の命令に従って行動した者が軍法会議に掛けられた例は無い、違うかね少尉。」ラングは
複雑極まる事の顛末を一つ一つ丁寧に解きほぐして行った。

「うははは! これは痛快だ。 貴様らは輸送艦隊を身軽にして敵艦隊の中央突破を図った。
しかもその積荷・魚雷の捨て場所は敵艦隊中央だったと言うのか!」それまで黙ってルーデル少尉の”臨検”作業を
見つめていたハイデルン中佐が高笑いした。
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「迂回コースを取らせていた別働隊と連絡が取れました。イオン嵐宙域を航行して来た艦隊は全艦無事です。 
重力井戸宙域を迂回した艦隊は敵小艦隊の待ち伏せに会い二隻を喪失、自衛の為手持ちの魚雷・ミサイルは全部使用
したとの事です。」通信士が朗報と凶報の両方を伝えた。

ガミラス軍内では輸送艦が宇宙気象や重力井戸、敵艦隊から退避する為に積荷を投棄する事は認められている。

そうでなければラングが使用させた輸送艦の迅速積荷投棄装置など初めから装備されているはずも無かった。

だが、辿り着いた補給先で渡す物資が全く無いと言うのでは任務は失敗である。

そしてその場合、軍法会議を経て銃殺される恐れが高かった。

しかし、ラングが指揮する第11輸送艦隊・第112護衛艦隊は大きな損害を出しつつも敵・封鎖艦隊を排除し、
最初の数分の一になってしまったが積荷の輸送に一応、成功した。

しかも投棄した魚雷・ミサイルはただ捨てたのでは無く敵艦隊に叩き込み壊滅的損害を与えていた。

更に僅かではあったが無傷の魚雷・ミサイルの輸送にも成功していた。

これで取りあえず、第六空間機甲師団も一息つける事が出来たのだ。

「・・・。」ルーデル少尉はラングの顔とハイデルンの顔を交互に見た。

さすがに少尉のすがり付く様な眼差しにハイデルンは助け舟を出す事にした。

「ルーデル君、ラング司令は間違った事はしておらんよ。 彼の行動を戦略的視点で考えて見たまえ。」ハイデルンの
『戦略的』と言う言葉がルーデル少尉の顔の曇りを取り去った。

ラングの指揮する第112護送駆逐艦隊はバーガー中尉の指揮する第11輸送艦隊を守って第六空間機甲師団へ
武器・弾薬を届ける事が任務であった。

そして第六空間機甲師団は他の機甲師団と協力して惑星ゴースとその所属するゴトランド星系を制圧する任務を持っている。

だからラングが第六空間機甲師団へ弾薬を補給しようとする時、妨害して来る敵艦隊に運んでいる魚雷を叩き込んで
届けるべき積荷を消費してしまってもその消費によって敵艦隊の勢力をそぐと言う意味ではゴトランド星系を制圧、
惑星ゴースを併合すると言うガミラスの大戦略から外れた行為と言うよりは適切な援護攻撃と言えるのである。

「ラング司令は単に魚雷を輸送した訳では無い、それを使った”戦果”を届けてくれたんだ。」ハイデルンはラングの
左肩に手を置き、その戦功を讃えた。

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 第11輸送艦隊の残存艦は軽巡ゲットランに先導され、後方左右に第112護送駆逐艦隊を従えて進んでいた。

「後少しで本隊の泊地だ。 破損した艦の修理も行えるぞ!」ラングがバーガーが手荒く扱った為、廃艦寸前の
第112護送駆逐艦隊、各艦に檄を飛ばした。

「司令、嫌な兆候が超空間通信に出ています。」通信士が報告した。

「何! ゴトランド・ゴースの”ジャミング”が始まったか?敵艦隊の攻撃を厳戒せよ!」ラングは全艦隊に警戒警報を
流した。

しかし、その行動も虚しく先導艦の軽巡ゲットランの近傍に一瞬、影の様な物が現れたなと思う間もなくその影はビームを
放つと再び宇宙の闇に消えた。

「ゲシュタム・アタックか!(一撃離脱・攻撃)」ラングはまだ敵艦隊が無力化されていないのを感じた。

「ゲットラン、被弾! 損害の模様は不明!」情報士官が報告した。

「ゲットランどうした! 損害状況を知らせ!」ラングは何度も呼びかけた。

「こちらヴェム・ハイデルン少佐。敵の奇襲を受け艦橋要員に死傷者多数、応援を求む。」
ハイデルンが応えた所を見ると設備敵な損害より人為的な損害が大きい様だった。

<艦橋窓から敵ビームが侵入したか!>襲って来た敵艦はそれほど大きくない戦闘艦だった、だから放ったビームが
ガミラス艦の装甲を貫けないのは承知で艦橋の”窓”を狙って乗員の殺傷を図ったものと考えられた。

「ゲットランの艦橋要員は全滅ですか? しかし通信を送って来た所を見ると設備敵損害は少ないと判断されます。
だったらこちらの艦で航行出来るが戦闘不能なKR-101の艦橋要員を送りましょう。」副長のカウト大尉がラングに
進言した。

「了解した。カウト・ロゼム大尉、救援隊を率いてゲットランにおもむけ!」ラングの命令に副長は静かに首を振った。

「お言葉ですが私は司令が先程口にされた”ゲシュタム・アタック(一撃離脱・攻撃)”なる物の詳細を知りません。 ここは
少しでも多くの情報を持つ人が行くべきだと思います。」副長の主張はもっともだったがラングにしてみれば再度持ち場を
離れる越権行為を促されている様で苦笑した。

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「ゲットー! ライル・ゲットー中尉、しっかりしろ!俺だ、バーガー中尉だ。」バーガーは床に艦橋の床に倒れていた
旧友を助け起こした。

「見っとも無い姿を見せてしまったな。救援を感謝する。」傷ついたゲットーが弱々しくバーガーの手を握った。

「それとな、すまんが俺はもう中尉じゃない、大尉だ。」ゲットーは力なく微笑むと目を瞑った。

「ゲットー!」バーガーが焦って友を常世の世界から呼び戻そうと声を掛けた。

「バーガー中尉、友を気遣う気持ちは判るがまずは任務に専念したまえ、それが友を救う最短の道だ。」ラングが前と
違った厳しい言葉でバーガーに任務遂行を促した。

「彼なら大丈夫だよ。 右手首の優先タグを見て見たまえ。」友を気遣うバーガーにゲットーに付けられた救急優先
ストラップの色が”緑”である事を示した。

普通、至急要搬送者には”赤”、念のための搬送者軽傷者には”黄”、搬送の必要が無い軽傷者には”緑”、そして死者は
”黒”のストラップが右手首に巻かれる、そして今回の襲撃でほとんどの艦橋要員は軽傷者ばかりであったが、
艦橋最前部に居た操舵手だけは戦死してしまった。

多分、敵ビームは艦橋窓正面からでは無く、艦橋側面に命中、拡散して正面窓から侵入した物と考えられた、
そうでなくてはこの物的・人的損害の少なさは説明出来なかった。

「”技師(エンジン)! この艦の装備はまだ使えるか! 特に探知装備に問題はないか、良くチェックしてくれ!」
ラングは今回も”技師(エンジン)ことホッファー・キルリング技術少佐を伴っていた。

「もう済んでまっせ! 全探知系、通信系、電子戦装備もバッチリや、いつでも全力で戦えますぜ、大将!」
”技師(エンジン)が力強く応えた。

「よし、これより敵・襲撃艦を殲滅する。 駆逐艦ZR-101は本艦に同航して作戦に参加せよ!」ラング司令の命令は驚くべきものだった。

ラングが率いていた第112護送駆逐艦隊は先程のゴトランド・ゴース艦隊との戦闘で大損害を出しており、
ZR-101は主砲塔回転不能、全魚雷・ミサイル残弾無し、ZR-102は主砲は無事だったが、」やはり全魚雷・ミサイルは
撃ち尽くしていた、ZR-103に到っては撃沈され全損していた。

「何故、戦力を残しているZR-102では無く戦力にならないZR-101を同航するんだ?」バーガーは再び駆逐艦・艦長に
指名されたがそれが戦えない艦である事が大いに不満だった。

「作戦はまず、ゴトランド星域を眼下に一望出来る宙域まで長距離ゲシュタム・ジャンプで離れ、敵艦の位置を特定、
ピンポイント・ジャンプで至近距離に接近・攻撃、殲滅します。」ラングが作戦を説明した。

「ゲシュタム・ジャンプで逆落しか、随分と大胆な作戦だな。」ハイデルン中佐はラングの作戦説明を聞いて感心した。



                                       209.疾風の漢(おとこ)ー(6) この項 続く




                                               

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by YAMATOSS992 | 2016-06-18 21:00 | ヤマト2199 挿話 | Comments(0)
 ゴトランド・ゴース艦隊の司令官はちっぽけなガミラス艦隊が自分達の方に向かって突っ込んで来るのを見て鼻で
笑った。

「奴らは自殺する気かのう! これだけの戦力差を物ともしない武勇は買うが、何の工夫も無く突っ込んで来るだけとは
武人としては落第じゃな。」司令官は副官を見て顎をしゃくった。

確かに彼の目算は当たっていた。

ゴトランド・ゴース艦隊は戦艦十隻、巡洋艦五隻、駆逐艦二十隻、その他補助艦艇数隻からなる大艦隊なのに比べ、
ガミラス艦隊は中型輸送艦一隻、駆逐艦二隻の小艦隊、しかも艦隊の構成艦艇からしてこの艦隊が輸送艦と
その護衛・駆逐艦からなる戦闘を目的としないものである事は明らかだった。
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「敵艦隊に異常! 艦隊の規模が数倍に膨れ上がりました!」探知主任が驚いた様に声を上げた。

ゴトランド・ゴース艦隊は緩やかに取り舵を取りつつ艦首を殺到する魚雷やミサイルの方向に向け、被弾面積を減らす
努力を行った。

しかし、「遅いわ!」バーガーは闘志を剝き出しにして言った。

「司令、敵艦隊の誘導に成功しました! 敵艦隊はもはや拡散艦隊ではなく通常の密集艦隊に移行しつつあります。
こちらの誘導・魚雷の発射タイミング、慎重に図って下さいよ。」副官のディラー少尉も味方が圧倒的に不利な状況に
あるにも関わらず負ける気がしなかった。

「こちらの囮・魚雷が五十基、敵艦隊に突入します。」情報士官が冷静に告げた。

<さて、こちらの思惑通りに対魚雷・ミサイル(ATM)を使い果たしてくれれば良いのだが・・・。>ラングもバーガーも
スクリーンに見入った。

猛烈な爆炎が辺りの宙域を包みゴトランド・ゴースの艦隊の姿は一瞬、視界から消えた。

しかし、それはゴトランド・ゴース側にしても同じでガミラスの動向を見失っていた。

爆炎が晴れた時、ゴトランド・ゴース艦隊には次の対艦・魚雷の群れが指呼の間に迫っていた。
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第一群の魚雷の迎撃に対魚雷ミサイル(ATM)をほぼ使い切っていた敵艦隊は近接防御火器を使って弾幕を張るしか
無かったが、前の囮・魚雷群とは違って駆逐艦が放った誘導魚雷に率いられた大型魚雷群は巧みに敵の弾幕の
薄い所をぬって次々と敵艦に命中した。

ゴトランド・ゴースの探知主任はガミラス輸送艦隊が膨れ上がったと報告したが、これは本当に船が膨らんだ訳では無く
積んでいた魚雷とミサイルを投棄システムを使って艦隊の周りに展開させていた物を点火し発進させたものだった。

一回目は敵の迎撃ミサイル群を引付け、爆発させてしまう囮だったが、二群目は駆逐艦が発射した誘導・魚雷の出す
ビーコンに導かれて誘導・魚雷が狙った目標に一緒に突っ込んだのだ。

通常のガミラス駆逐艦は一隻あたり、前方発射管・四門、後方発射管・二門、前甲板上の垂直発射管(VLS)・八門、
合計十四基の誘導ミサイルを発射出来る。

つまり一基の誘導・魚雷は十~二十基の大型魚雷を導けるので通常の駆逐艦の場合、もし一隻しか居なかったら、
全発射管の魚雷を集中しても大型戦艦を撃沈する事は難しい。
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しかし、ラングが指示してホッファー・キルリング技術少佐とそのスタッフが実施した輸送・魚雷の急造プログラムによって
残った二隻のガミラス駆逐艦はその持てる火力を十二分に発揮出来たのだ。

しかし、問題もあった、基本的に襲撃目標は誘導・魚雷任せなのだ。

つまり、最初、ガミラス駆逐艦は目標を指定して誘導・魚雷発射するが、目標に接近すると魚雷は独自のプログラムに
従って目標を追尾する一種の”撃ち放し型”なので戦艦クラスの大物に魚雷が集中し、中型艦以下は撃ち洩らす恐れが
あったのだ。

「敵戦艦群はほぼ殲滅出来ましたが中型艦以下はほとんど無傷です!」情報士官がバーガーに報告した。

「予定通りだ! 次群の誘導・魚雷の発射準備は良いか! 目標、敵中小艦艇群!」バーガーは再び敵艦隊に魚雷の
雨を降らせて殲滅するつもりだった。

「旗艦、いや輸送艦101号から通信が入りました。」通信士がバーガーを呼んだ。

「おう、おっさんいや失礼、ラング司令、あんたの作戦通り事がはこんでいるな、喜ばしい限りだ。 だが、作戦はまだ
終わっちゃいない、俺の行動に口出しするな!」バーガーは勢いに乗っている今の状況を二等臣民に乱されるのが
面白く無かった。

「興が乗って居るところ、申し訳けないんだが右翼へ迂回させた船団と左翼に迂回させた船団が両方とも音信不通に
なった。

作戦計画では敵艦隊の中央突破する部隊は手持ちの魚雷とミサイルを全部使う予定だったのだが、迂回させた
船団群に残した魚雷やミサイルを第六空間機甲師団に渡せないと我々の任務は失敗という事になってしまう。

今現在我々が保有している魚雷やミサイルは後、一斉射分しかない、これを全部発射する訳にはいかないのだ。」
ラング司令の言い分はもっともだったがバーガー中尉にしてみれば散々積荷を摘み食いしておいて今更僅かばかりの
魚雷やミサイルを差し出して任務完了とするのは彼の矜持が許さなかった。

しかし、司令の状況判断に基づく命令を無視する訳にはいかないのもバーガーは重々承知だった。

<魚雷やミサイルが使えないならあとはビーム兵器しか無い。>幸いガミラス駆逐艦の陽電子ビーム砲はゴトランド・ゴース側で言えば戦艦クラスの大口径砲であった

但しに砲塔は一艦に連装砲塔が一基しかなく、しかも艦体下面という死角の多い場所に設置されていたので
ガミラスの駆逐艦乗りは皆、魚雷やミサイルを主力とした戦法を執っていたがそれが許されなければ仕方がない、
バーガー中尉はもう一隻の残存・駆逐艦ZR-102に命令を発した。

「敵艦隊の残存兵力を掃討する、貴艦は本艦とバック・トゥ・バックを執り死角を無くして敵に突撃を敢行する。
ガーレ・ガミラス!」本来ならガーレ・デスラー、ガーレ・フェゼロンとか言うべきなのだろうが、バーガーはそれらが持つ
特権階級的な響きが嫌いだった。
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「司令、やはりバーガー隊はこちらの援護をあてにしているんでしょうか?」副長がスクリーンから目を離してラングに
話しかけた。

「それならば放っておくだけだがあの隊形を見たまえ、ランツ君。」ラングはスクリーン上で敵残存艦隊に
吸い込まれてゆくバーガー隊を指差した。

「馬鹿な! 彼等は駆逐艦でビーム砲戦を行うつもりですか!」副長も決して新兵では無い、だからバック・トゥ・バックの
態勢で突撃するバーガー隊が陽電子ビーム砲で勝負しようとしている事に気が付いた。

<仕方ない! 彼等、ガミラスはザルツ星系を併合した存在だ。しかし、今は我々も二等とはいえガミラス臣民となった。 
彼等を見殺しには出来ない・・・。>バーガー隊がビームを閃かせ始めたのを見るとラングは”技師(エンジン)を呼んだ。

**************************************************

ドーン、バーガーのいる艦橋が大きく揺さぶられる、「クソッ、どこをやられた!甲板長(ボースン)!」副長の怒号が
轟く中、バーガーの心の内は自分でも驚く程に冷静だった。

<これでやっと大事な物を救う事も出来ず、生き残ってしまった罪を清算出来る・・・。>
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だが、しかし、そんな想いを打ち消すような熱い願いがボロボロになったバーガー隊を飛び越え、敵・残存艦隊に
突き刺さっていった。

ラング司令が輸送艦に残すつもりだった最後の魚雷とミサイルを全弾発射したのだ。

今度は先の攻撃の様に駆逐艦の発射する誘導・魚雷は使えない、そこでラングは”技師(エンジン)ことホッファー
・キルリング技術少佐に魚雷やミサイルに元々組み込まれている簡易型の撃ち放しプログラムを有効にする様に依頼、
発射したのだ。

勿論、頼りは敵味方識別装置のみなので同士討ちは避けられたが、前回の攻撃の様な効率良い目標選択なぞ
望むべくもなく、同じ目標に多数の魚雷が集中してしまったり、殆ど被弾しなかった敵艦があったりとムラの多い
攻撃だったがそれでも青息吐息だったバーガー艦隊の援護としては十分にだった。

自艦隊を飛び越してゆく多数の魚雷やミサイル群を見て部下達は歓声を上げていたがバーガーの心は生き残れた
喜びと自分の悲しみを清算出来なかった苦しみに千々に乱れていた。

無数の魚雷とミサイルを浴び、再び爆炎に包まれる敵艦隊、三度に渡って無数の魚雷とミサイルの雨を受ける事など
通常の会戦では考えられない事なので彼等はもはやパニックに陥いり、動ける艦はちりぢりに母星へ潰走して行った。

**************************************************

敵艦隊が去ったのでゴトランド宙域を満たしていた超空間通信すら無効にする広域電波妨害(バラージ・ジャミング)が
消え、敵が自軍の為の通信や探査の為にバラージをスポット・ジャミングに短時間切り替えた時のみ回復出来た
超空間通信も常時、通じる様になった。

「第六空間機甲師団が迎えの軽巡をよこすからそれまで現状位置に待機せよとの命令をよこしました。」通信士がラングに伝えた。

ラングはそれに了解した旨、返信をさせた。

バーガーは自艦いや護衛駆逐艦ZR-101の応急修理の指揮にてんてこ舞いだったが、それでも第六機甲師団が
すぐさま自分達の受け入れをしてくれないのが面白く無かった。

                                       208.疾風の漢(おとこ)ー(5) この項 (続く)

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by YAMATOSS992 | 2016-06-11 21:00 | ヤマト2199 挿話 | Comments(0)
ゴトランド・ゴース宙雷戦隊が後回しにした機関不調の輸送艦の艦長は実は輸送艦隊司令ヴァルス・ラング少佐だった。

彼は秘策を持って業と僚艦一隻を連れ、輸送艦隊から落伍したのだ。

そして敵艦隊が自分達を追い越して行った後に行動を起こした。

「輸送艦101号から102号へ "花火" の用意は出来たか?」ラングの問に102号から直ぐに返事が来た。

「全弾発射準備でけましたで。何時でもいけまっせ!」強いザルツの地方訛りで男は応えた。

「よし!”技師(エンジン)”全弾発射せよ!」ラングの命令一下、輸送艦101、102号は積荷である空間魚雷を次々と
放出し始めた。

ガミラスの輸送艦と言えども必要な局面で危険な積荷を投棄出来る仕組みを持っていた。

そうでなければ危ない荷物を扱える希少な人材が失われるからだ。

だから、ゴトランド・ゴースの宙雷戦隊の監視員も落伍したガミラス輸送艦は戦闘時の通常業務を行っている物として
取り立てて艦長に報告しなかった。

しかし、輸送艦は見掛けの様にただ積荷の魚雷を投棄している訳では無かった。

両艦合わせておおよそ二十基の魚雷が投棄された時一斉に魚雷が火炎の尾を引いて敵・宙雷戦隊を目指した。

ゴトランド・ゴース宙雷戦隊は分散したガミラス輸送艦隊の構成艦を一隻づつ追いかけ様としていたが、旗艦の艦橋は
後ろから迫る大型魚雷の群れに恐慌をきたしていた。

<しまった!あの落伍艦は伏兵だったのか!>敵宙雷戦隊の司令は自分の迂闊さに臍を噛む暇も無く大量のミサイルに対する対応に追われた。

だが、駆逐艦が装備している防御火器の数などたかが知れている、ゴトランド・ゴースの駆逐艦隊は辺りの宙域を炎に染める大量のガミラス魚雷の爆発に呑まれていった。

**************************************************

ゴトランド・ゴース交通破壊艦に突撃を仕掛けるバーガーの駆逐艦隊からでもラングが仕掛けた罠、大型魚雷の
大量爆発は観測出来た。

<おっさん、やるなぁ、ではこちらも負けずに魚雷で勝負だ!>ラングの作戦を聞いた時はそんな与太話、
聞いてられるかと相手にしなかったバーガーであったが、実績を見せつけられては自分達も奮い立たない訳には
行かなかった。

三隻の駆逐艦が一隻に見える位に重なった隊形で突撃するバーガー隊、確かにこの隊形では先頭艦以外主砲の280mm連装砲塔は使えない、しかし、前方四基、後方二基の魚雷発射管、全甲板上八基のVLS(垂直発射管)は直前に僚艦が居ようと居まいと関係なく発射出来るのだ。

一隻で合計十四基、三隻で四十二基の魚雷がゴトランド・ゴース交通破壊艦を襲った。
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交通破壊艦も充実した対空兵装を持っていたので幾つかの魚雷は迎撃出来たが撃ち洩らした数本の魚雷の直撃を
受けて大破した。

「駆逐艦ZR103が隊列を離れて輸送艦隊の方へ戻ろうとしています!」バーガーはその報告を受けるとすぐさまマイクをってその駆逐艦を制止しようとした。

「馬鹿野郎!ドナー少尉!すぐ戻れ!」

「バーガー中尉、私はこの駆逐艦で暴れる機会を与えてくれたヴァルス・ラング少佐とその部下達を見捨てる事は
出来ません!許して下さい!」ドナー少尉は輸送艦隊がいた宙域で起こった大爆発を観測しており、本隊が大損害を
受けた物と勘違いしたのだ。

「あれはこちらの作戦だ! お前も出港前の打ち合わせに参加していただろう!」バーガーは教育だけは受けていても
実戦経験の無い士官の役立たずさ加減に苦笑いした。

と、バーガーが見ていた通信スクリーンがブラック・アウトした。

<?>戸惑うバーガーに情報将校が悲報を伝えた。

「司令! 駆逐艦ZR103が撃沈されました。 隊列を離れたため、敵艦の砲火に晒された様です。」
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「何! 敵艦は大破させたんじゃなかったのか!」バーガーは怒りをぶちまけた。

「全艦主砲斉射だ! 今度こそ遠慮するな!」バーガーの復讐の矢が四筋閃き、今度こそゴトランド・ゴースの
交通破壊艦は完全に沈黙した。

**************************************************

「この宙域を通るのは危険だ。 交通破壊艦、宙雷戦隊と二重の待ち伏せを受けている。」ラング司令は今後の方針を
バーガー達、幹部と打ち合わせていた。

「右に行けば縮退星団とイオン嵐、左へ行けば中性子星団とブラック・ホールの海、駆逐艦ならともかく、輸送艦では
どちらにいっても船体が持たないぜ。ここは中央突破だろう。」バーガーが選択の余地は無い事を告げた。

「敵艦隊の司令もそう考えるだろうな。順当な考え方だバーガー君。」ラングは何か秘策を持っている様だった。

「ローレン君、この航路を封鎖している敵艦隊の規模はどれくらいだ。」ラングは再度情報士官に確認した。

「はっ、確認されているだけで戦艦十隻、巡洋艦五隻、駆逐艦二十隻、その他補助艦艇数隻であります。 しかも彼等は
ガミラス艦隊の様な密集隊形では無く、各艦の間を20,000は開けた拡散隊形を取っています。」情報士官は驚くべき事を
伝えた。

「拡散隊形? そんな艦隊形状聞いた事もないぞ? 奴等は何を考えているんだ!」バーガーの副官が当惑した質問を
発した。

「いやディラー少尉、これは新しい戦術、ゲシュタム・ジャンプの実用化に伴って出現した新しい艦隊形式なのだ。」
ラング司令が部下の疑問に応えた。

通常、海上でも宇宙でも艦隊は僚艦を有視界に収める密集隊形を執る事が多い。

但し、自艦と僚艦の間は互いに爆沈しても損害を与えない位には離すのが常識だ。

そして全艦で一つの生き物の様に運動するのが今までの艦隊運用だったのだ。

しかし、転移航法(ゲシュタム・ジャンプ)が実用化すると艦隊運用の事情が変わって来た。

艦隊を構成する艦の間隔を今までの常識では考えられない位広げた場合、単艦で処理出来ない場面が出て来たら
直ぐに超空間通信で僚艦を呼べばゲシュタム・ジャンプで駆け付けてくれる。

もちろん、敵勢力に合わせた戦力を集中・運用させる戦略・戦術・管制装置、と超空間通信システムが充実している事が
必要だが、それさえ克服出来れば非常に有望な戦術なのだ。

今回のゴトランド・ゴースの艦隊が取っている各艦の間隔が20,000と言うのは通常の艦隊では考えられない位、広いが
新しい艦隊運用法においてはむしろ狭い位である。

これは封鎖すべき宙域が比較的狭かった事が大きな要因だった。

「敵の、ゴトランド・ゴースの艦がそれ程大きくジャンプ出来ないのかも知れません。」バーガー付きの情報士官が
推測を述べた。

「かと言ってあの封鎖線をこちらが艦隊を組んだまま突破しようとすれば、周り中から敵艦がジャンプして来て包囲、
撃沈されるし、艦隊を解いて各個に封鎖線を突破しようとすれば各個・撃破されてしまうのは明らかだ。 
ラング司令、速やかな御採決をお願いしたいところですな。」バーガーはここに到ってもまだ斜に構えたままだった。

**************************************************

「今度の司令は人使いが荒いですなーや!」ランツ・シュナイファー技術士官補が愚痴を言った。

「アホ! こんな面白う作戦、やりとうてもなかなかやれるもんやおまへん! がたがた抜かしておるとケツの穴から
手、突っ込んで奥歯ガタガタ言わしちゃるぞ!」”技師(エンジン)”とラングが呼んだ男、
ホッファー・キルリング技術少佐は手元のキーボードを目にも止まらぬ速さで打ち続けながら言った。

「しかし、我々が運搬している魚雷、全てのプログラムを書き換えろとは一体どういう心積もりしてはるんでしょうや? 
大将、まさか運搬中の魚雷全部使うつもりなん?」
シュナイファー技師補はまだ自分のやるべき事が納得出来ない様だった。

「コラ! 滅多な事言ったらアカン! 我々は魚雷・弾薬輸送艦隊やこの荷を待っている第六空間機甲師団に何が何でも
届けなアカン! 勝手に使える訳無いわい!」キルリング技術少佐はそう言いつつ心の中で舌を出していた。
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「こんな馬鹿な作戦は許されません! 我々の任務は第六空間機甲師団が今の戦局で必要としている武器・弾薬を
届ける事です。 自らが戦果を挙げる事ではありません!」バーガーの副官、ディラー少尉は
どこまでも生真面目な男だった。

「私だって無傷で積荷を輸送艦に積んで渡したい。 しかし現状選択可能なルートは三つ、しかもその内一つは縮退星が
造るイオン嵐の宙域、もう一つはブラック・ホールと中性子星の星団が造る重力井戸の星域、この二つは武器・弾薬を
満載した動きの鈍い輸送艦にはとても通過不能だ。
最後に残ったルートはゴトランド・ゴースの艦隊が拡散隊形の艦隊で塞いでいる。
さて、君ならどのルートを取るね?ディラー少尉。」ラングは新米の少尉に戦略と言う物を教え様としていた。

「ゴトランド・ゴース艦隊の中央突破以外に方法はありません!
運が良ければ十数隻の輸送艦は突破に成功するでしょう。」若者らしい真直ぐな意見にラングの頬は緩んだ。

「それじゃ駄目なんだよ。やられた艦の武器・弾薬は先方に届けられないだろ?
俺達、第11輸送艦隊の補給量が減れば第六空間機甲師団は不利になる、全く届けられなければ撤退を
余儀なくされちまう。
それじゃまずいだろ? 少し位、武器・弾薬を摘み食いしても残りの大半をちゃんと届けて勝利に繋げれば
問題は無いのさ。」壁にもたれて立ったバーガー中尉がディラー少尉を諌めた。

「だがどうする? この若造が言った様に中央突破に賭ければ敵の新たな戦術、拡散艦隊の網に引っ掛かって
集中攻撃を受けるぞ。 艦隊を分散してもこの網には通じない、分散して戦力が少なくなったとはいえ戦闘艦と輸送艦の
戦力差は埋めようがないぞ。」バーガーにもラング司令の腹の内は読めなかった。

「まず輸送艦隊を三つに別ける。」ラング司令はスクリーンへ作戦宙域の模式図を映し出した。

「イオン嵐の宙域を抜ける組、重力井戸の星域を抜ける組、そして中央突破を試みる組だ。」

「護衛艦隊はどうしやす? 今までの戦いで損耗してもはや護衛に使える駆逐艦は二隻ですぜ!」 バーガーは
この作戦の無謀さに呆れていたがガミラス軍人として敵を前にして手をこまねいている事など考えられなかった。

「大丈夫だ。勝算は十二分にある! 安心したまえ!」ラングが右手で胸を叩いて自信の程を示した。

しかし、その作戦内容がラング司令の副官、ランツ・シュナイファー少尉から詳細に説明されるとその内容の破天荒さに
さすがのバーガーも言葉を失った。


                                       207.疾風の漢(おとこ)ー(4)この項 続く

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by YAMATOSS992 | 2016-06-04 21:00 | ヤマト2199 挿話 | Comments(0)
 「第112駆逐宇宙艦隊の任務は第11輸送船団を護衛して積荷をゴトランド星系を攻略中の第六空間機甲師団に届ける事にある。」幕僚団を集めたラング司令はここで一端言葉を切った。

スクリーンから目を離してガミラス人とザルツ人の混成幕僚団を見渡した。

案の定、ザルツ人はキチンとラングの言葉を聞いていたが、ガミラス人は二等臣民の言葉なぞ聞いてたまるか!と言う態度でそっぽを向いていた。

だが、ラングはこうした場合の一等臣民の気持ちと態度は次元潜航艦学校と実戦で経験済みだった。

「フォムト・バーガー中尉、君は純粋ガミラス人で一等臣民だ。そして、私、ヴァルス・ラングは被征服国民、ザルツ人で
二等臣民だが少佐だ。

当然、君は征服者であるガミラス人と征服されたザルツ人の間には差があるべきだと考えているのだろう。

しかし、ここはガミラス軍の内、命令系統は階級のみで決まる。

もし、これに他の要素を加えたら命令系統は複雑になり過ぎて伝えるべき命令がきちんと伝わらなくなってしまうからだ。

だから先程基地司令が申し渡した通り、悔しいだろうが私の命令を聞いて欲しい。

それが今回の作戦を成功させひいてはガミラス版図の拡大に繋がるのだ。」ラングは正面からバーガーを説得した。

「へいへい、俺より二階級も上の少佐殿の命令じゃ仕方ありませんな。

指令には従いますよ、心配しなすって!」バーガー中尉は不貞腐れ切っていた。

「ところでバーガー中尉、君の前歴を聞かせてくれないか?」ラングは気さくに話しかけた。

「今更、俺の悪歴を聞いて笑おうってんですかい・・・。先に自分の経歴を話すのが礼儀ってもんでしょ!」バーガーが
昏い目で凄んだ。

「私か、私はしがない次元潜航艦乗りだ。 ついこの前まで UX-01と言う艦の副長をしていた。」ラングが懐かしそうに言った。

「UX-01・・・って、もしかして艦長はヴォルフ・フラーケンか!」バーガーですらフラーケンの名は知っていた。
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「ああ、彼は大した漢だよ。これからの次元潜航艦隊の行く末は彼の肩に掛かっていると言っても過言では無い。」
ラングはバーガーがフラーケンの名を知っていた事が嬉しかった。

「あんたは "猟犬" の尻尾ってわけか! 二等臣民に相応しい卑怯な戦い方だな。」バーガーは異次元に潜み一方的に
敵を攻撃、撃滅する次元潜航艦を快く思って居なかった。

「それで君は、ここに来る前には何をしていたのかね?」ラングがバーガーの挑発に乗る事は決して無かった。

「ほとんどずっと宙雷戦隊だが、大した戦歴は残せなかったぜ・・・。大事な物も守れなかったしよ・・・。」バーガーの眼に
哀しみの光が宿ったのをラングは見逃さなかった。
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<やはり”メリア・リッケの死”を引き摺っているな・・・。>ラングはバーガーの心が沈んでいる理由を知っていたが
ここでその事に触れる事はしなかった。

「そこなんだ、バーガー中尉。 私は次元潜航艦乗り一本でやって来た男だ。 いくら護衛艦といっても駆逐艦は
ズブの素人だ。

しかし、君の経歴は宙雷屋一本だ、そこで私が率いている第112駆逐宇宙艦隊の駆逐艦三隻の指揮を君に任せたい。
どうだろうか?」ラングの申し出にバーガーは二の句が継げなかった。

**************************************************

「良いんですか? 我々が護衛艦隊ですよ。 軍令部の指示も仰がないで勝手に輸送艦隊と護衛艦隊の乗組員を
入れ替えるなんて前代未聞ですよ!」ラングの副官が憤懣やるかたない気持ちをぶちまけた。

「大丈夫だ、責任は私一人で取る。 君は抗命し続けたと報告すれば良い事だ。」ラングが張り切って訓練に勤しむ
バーガー艦隊の襲撃・運動を見つめた。

「司令、何を考えているんですか!もし、それにこの配置換えを認めたとしても彼等が実施すべきなのは襲撃・訓練では
無く、船団護衛の訓練ではないんですか?」副官の不満はまだ続いていた。

そのころバーガー中尉は有頂天になっていた。

それもそのはず、彼は確かに宙雷屋一筋の軍務を歩んで来ていたのだが、戦隊長はおろか、艦長なども務めた事は
無く、最高でも宙雷長止まりだったからだ。

それを艦を任されただけで無く、規模が小さく、非公式とはいえ戦隊の長に任命されたのだ。

但し、バーガーの率いる少数の幹部以外は駆逐艦乗りでは無く、輸送艦乗りだったので彼等を駆逐艦乗りとして
使い物になる様、護送任務が始まっても訓練を続けているのだった。

「カウト君、輸送艦隊に残った乗員全ての経歴を用意してくれたまえ。」ラングは副官に今更なな命令を下した。

「何て顔をしている、輸送艦隊の方も護衛艦におんぶに抱っこと言う訳には行かないんだぞ、やる事は山ほどある!」

ラングは困惑している副官に言葉を掛けた。

「『一手先を読め!』だよ、一手先をな。」ラングは副官に笑いかけた。

**************************************************

「戦隊長!右舷10,000にある小惑星帯の中に敵艦らしい反応があります!」探査主任が艦長であり
第112駆逐宇宙艦隊、戦隊長であるバーガー中尉に報告した。

<ゴトランド・ゴースの交通破壊艦の待ち伏せか!>バーガーはすぐさま襲撃・運動に入った。

<先手必勝だ! 敵の交通破壊艦の砲力は多分、こちらより優れている、肉薄して宙雷攻撃を決める!>味方の
護衛艦の数は少ない、船団に張り付く消極的な作戦よりも敢えてこちらから撃って出る積極策をバーガーは選んだのだ。

そのころ小惑星帯の中に潜んだゴトランド・ゴース交通破壊艦の艦長はガミラス輸送船団から護衛の駆逐艦隊が離れて
自艦の方に向かって来るのを確認し、ニヤリと微笑した。

「ガミラスの護衛は三隻だけか?」艦長は情報士官に確認した。

「はい、こちらの作戦通り、全艦こちらに向かって来ています。」情報士官の報告に艦長は別動隊の行動開始を
指示した。

ラングはバーガーの素早い判断を評価していたが、反面、護衛艦の駆逐艦の数の少なさによる本体の護衛が
手薄になる事が気懸りだった。

「司令、バーガー隊が敵艦に攻撃をかけます!」副長が指摘した。

「待って下さい!輸送艦隊後方の空間5,000に敵・駆逐艦隊ゲシュタム・アウト!襲撃態勢に入りました!」探知主任が
警告した。

「輸送艦隊散開! 被害を極限する事に努めよ!」ラングは落ち着いて命令した。

確かに護衛の艦の数が十二分にいて、それらが輸送艦隊を近接護衛出来るなら輸送艦隊を散開させる必要は無い。

しかし今のラングが指揮する輸送艦隊は護衛のバーガー艦隊を囮に釣り出され全くの無防備状態に
なってしまっている、しかもこの輸送艦隊の主な積荷は第六空間機甲師団に向けた弾薬、空間魚雷や各種ミサイルで
あったからもし単艦が被弾、爆発しても近接して別の艦がいると誘爆する可能性が高いのだ。

「司令、護衛艦隊を呼び戻しましょう!」副長が進言した。

「駄目だ、今、護衛艦隊を呼び戻すと戦線が混乱する!幸い我々輸送艦隊を襲って来たのは駆逐艦、直ぐには
こちらの艦を撃沈出来まい。」ラングの判断はこうだ。

敵の大型交通路破壊艦と闘っているバーガー隊を戦闘が終わる前に呼び返すとガミラス艦隊は敵の大型交通路破壊艦と駆逐艦隊の双方から挟み撃ちを受ける格好となってしまう。

特に大型交通路破壊艦の接近を許してしまうとその強大なビーム砲の威力で艦隊は全滅させられてしまう恐れが
あった。

かと言って個別に短距離ゲシュタム・ジャンプで戦場から逃れようとしても敵は既にこちらの位置を特定している、
その状況下で短距離とはいえジャンプをすれば空間航跡をトレースされどこまでも追跡され、ついには撃沈されて
しまうだろう。

こうした場合、船団を解き、輸送艦をばらばらの方向に退避させるのが一般的だ。

そうすれば艦隊が全滅すると言う最悪の事態は避けられる。

しかしラングはそうした定法だけに頼る事をしなかった。

**************************************************

「戦隊長、敵輸送船団の内、二隻が落伍します。 後四分で魚雷射程に入ります。」ゴトランド・ゴース・駆逐艦隊の
情報士官が状況の変化を告げた。

「機関が故障したか!ガミラスめ!俺達を舐め切ってオンボロ船を使っているからだ。」戦隊長がチャンスを得た事に
狂喜した。

「直ぐに攻撃しましょう!」戦術士官が勇んで叫んだ。

「まぁ、まてブンナム君、あの二隻は最早、我々の砲・雷撃の射程内に入っている。
しかし、加速して逃げようとしない、いや機関が不調で逃げられないのだ。
だから、放って置いてもこの宙域から大きく移動する事は出来ない。
青息吐息の獲物は後回しで良い、生きの良い獲物から片付けよう。」戦隊長は落語した二隻にビーコンを
打ち込んで先行する輸送艦を追撃する様、指示した。

<掛かったな!>ゴーン、敵のビーコン・ミサイルが自艦に着弾する音を聞きながらラングは会心の笑みを浮かべた。

同じ頃、バーガーの宙雷戦隊はゴトランド・ゴースの放った交通破壊艦にてこずっていた。

航宙艦艇の基準からすれば取り立てて有力な砲力を持つ訳では無く、加速力も戦艦より優れてはいたが駆逐艦には
遠く及ばなかった。

<交通破壊艦はやっかいな存在だとは聞いていたが、これほどとは思わなかった!>バーガーは心の内で舌打ちした。

砲力は戦艦には及ばなかったが駆逐艦のそれを大きく上回り、更に対魚雷防御用の小口径・近接防御火器を無数に装備していたのである。

加速力も駆逐艦には大きく劣るとはいえ輸送艦を容易に捕捉出来るだけのものは備えていた。

即ち、バーガー隊がゴトランド・ゴースの交通破壊艦を仕留めようと接近すれば中口径のビーム砲の洗礼を浴び、
離れた所から雷撃を加えても近接防御・火器で防がれてしまうのである。

かと言ってバーガー隊が交通破壊艦を放り出して船団を襲撃しつつあるゴトランド・ゴース駆逐艦隊を迎撃しようとすれば交通破壊艦はてんでんバラバラに逃げる輸送艦を一隻づつ捕捉、撃沈してしまうだろう。

<自分より砲力の強い敵からは強力な加速力で退避し、自分に追いつける加速力を持つ敵には卓越した砲力で
沈黙させる・・・か。 確かに厄介な敵だ、だが、ガミラスの宙雷戦術の奥義を見せてやる!>バーガーは実戦では
一度も使われた事の無い戦術を使う事にした。

**************************************************

「艦長!敵・駆逐艦隊が隊列を一本に絞って艦首方向から突撃を掛けて来ます。」情報士官の報告にスクリーンに目を
凝らした艦長は訝しんだ。

「敵・駆逐艦は三隻いたはず、それが一隻にしか見えないとは随分と訓練したものだ。主砲、副砲で歓迎してやれ!」
艦長はバーガー隊の奮戦をあっぱれだとは思いつつ迎撃の手を緩める事は無かった。

「艦長!敵は艦首方向上方二度の方向から突っ込んで来ます!」再度、情報士官が報告した。

「何!」艦長は自艦の置かれた状況の悪さに気が付いた。

ゴトランド・ゴースの "リペーリア" 級交通破壊艦は三連装250mmビーム砲塔四基、単装140mmビーム砲十六基を備える
重装備艦である。

しかし、単艦よく長躯出撃して交通破壊を行うためその武装は周囲を万遍無く射界に収められる様、設計されている。

だが、艦の前後方向、特に敵が首尾線軸を僅かに外して突撃して来た場合、周囲を万遍無く射界に収める様に
砲を配置したが故に敵の突撃に対して指向出来る砲は三連装主砲塔一基、単装副砲二~四基と使える兵装の数が
激減してしまうのだ。

「面舵一杯、側面の火器を使用出来る様にしろ!」艦長の命令がとぶ。

「それは駄目です! 間も無く敵のビーム砲の射程圏内に入ります!」情報士官が畳み掛けた。

「落ち着け!敵の砲の口径はこちらより更に小さい、敵の砲の有効射程距離に入る前にこちらの砲の必中圏内に
入る!」しかし、艦長はガミラス駆逐艦の主砲の口径が自艦より大きいのを知らなかった。

「間も無く主砲の射程距離に入ります。」測的手がバーガーに報告した。

「戦隊長、今の一列縦隊のままでは先頭艦が邪魔になって二、三番艦が発砲出来ません。」副長が隊列の
変更を求めた。

「一列縦隊のまま、全艦が主砲を使える様にする隊形などにわか宙雷戦隊の俺達には無理だ。 
しかし、魚雷なら一番艦がロック・オンした目標データを二、三番艦に送れば同じ敵艦に全魚雷を叩き込める!」
バーガーは生粋の宙雷屋だった。
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<あれは本艦と同じか少し大口径の砲だぞ! このままでは打ち負けるかもしれん!>ゴトランド交通破壊艦の艦長は
バーガー艦が牽制で放つビームの太さに驚愕した。


                                       206.疾風の漢(おとこ)ー(3)この項 続く
                                                               

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by YAMATOSS992 | 2016-05-28 21:00 | ヤマト2199 挿話 | Comments(0)
 ゴトランド・ゴース艦隊の司令官はちっぽけなガミラス艦隊が自分達の方に向かって突っ込んで来るのを見て鼻で
笑った。

「奴らは自殺する気かのう! これだけの戦力差を物ともしない武勇は買うが、何の工夫も無く突っ込んで来るだけとは
武人としては落第じゃな。」司令官は副官を見て顎をしゃくった。

確かに彼の目算は当たっていた。

ゴトランド・ゴース艦隊は戦艦十隻、巡洋艦五隻、駆逐艦二十隻、その他補助艦艇数隻からなる大艦隊なのに比べ、
ガミラス艦隊は中型輸送艦一隻、駆逐艦二隻の小艦隊、しかも艦隊の構成艦艇からしてこの艦隊が輸送艦と
その護衛・駆逐艦からなる戦闘を目的としないものである事は明らかだった。

「敵艦隊に異常! 艦隊の規模が数倍に膨れ上がりました!」探知主任が驚いた様に声を上げた。

「そんな馬鹿な! 敵艦隊を拡大投影せよ!」司令のゴアン・アルトムは歴戦の戦士らしく落ち着いて現状を捕まえ、
正しい判断を下そうとした。

スクリーンに映った敵艦隊は最初に探知した時と同じく駆逐艦二隻と輸送艦一隻だった。

しかし、歴戦の戦士は何かとてつもなく嫌な予感に眉をしかめた。

「敵艦隊の周りに何かデブリの様な物が見えないか?」旧式な単眼望遠鏡でスクリーンを見つめたアルトムは
探知主任に問いかけた。

「光学探知では何も異常が発見出来ないのですが、アクティヴ・電磁波・探知では艦隊の規模が
どんどん膨れ上がっています。」探知主任は事態が理解出来ないのか、言葉を濁した。

「こちらの駆逐艦を接近させて敵艦隊の情報を取れ!」 現状が不明のままでは艦隊の士気が下がってしまう! 
これは艦隊司令の沽券にかかわる事なのだ。

「偵察に出た駆逐艦からの映像が入りました。 こ、これは・・・。」情報士官の声が上ずった。

「何がどうした! はっきり報告するのじゃ!」アルトムは焦れて情報士官の手元の小スクリーンを覗いた。

「むう・・・。」彼もまた情報士官と同じく言葉に詰まってしまったがその映像を艦橋の大スクリーンに映し出させた。

艦橋にいた全員が同じく言葉を失った。

そこに映し出されていたのは輸送艦が積載していたと思われる無数の大型魚雷が群れをなしてガミラス艦隊を
包み込み、更にはゴトランド・ゴース艦隊に向けてその矛先を向けようとしている姿だった。
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「戦術士官! 何をしている! 全艦隊のATM(対魚雷ミサイル)を使って迎撃するのじゃ! ATMのスクリーンを
抜けて来る敵魚雷は近接火器で撃ち落とせ!」アルトムの命令は簡潔だった。

**************************************************

 「それは命令ですか。」フラーケンは上司であるガル・ディッツ提督の目を正面から見つめた。

「そうだ、嘘偽りの無い大本営からの転属命令だ。」ディッツ提督はフラーケンの気持ちが痛いほど判っていた。

「貴様がラング少佐の転属に反対する気持ちは判る、有能な副長を失うのは貴様にとっては手足をもがれるに
等しいからな。 しかし・・・。」フラーケンはディッツに最後まで言葉を紡がせなかった。

「あいつが二等臣民だからですか? この配転はどうせ大本営上層部が彼の出自を気に入らなくて危ない最前線に
飛ばして始末しようと考えての事でしょう!違いますか!」フラーケンは誰に対しても斜めに構えて対していたが
性格自体は一本気だった。

フラーケンの無礼な振舞いにディッツ提督は僅かに眉をしかめたが、次元潜航艦ドックの暗闇に目を移すと
フラーケンに背を向けて独り言の様に呟いた。

「確かに大本営の上層部はエーリク大公時代を懐かしむ貴族主義者で占められている・・・。」提督は溜息と共に語った。

また、大本営に勤務する者で貴族出身者で無い者は純粋ガミラス人である事だけを心の拠り所にして居る者も多い・・・。

だからヴァルス・ラング少佐が二等臣民、ザルツ人の一員であっても、彼が大きな戦績を積み上げるとそれを
評価しなければならなくなる事を不快に思っている輩がいるのだ。
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<つまらん拘りを持つものだ。奴等はラングが誰の為に働いていると思っているんだ。>フラーケンには大本営の
人事権を持つ者の心の狭さが許せなかったがかつてはフラーケン自身もまた勇猛さで名を轟かせるザルツ人を最後まで
抵抗しなかった腰抜けの集団と評価いていたのだ、しかし実際に出会ったザルツ人、ヴァルス・ラングは彼の予想を
超えた漢だった。

次元潜航艦学校での練習艦沈没事件しかり、実戦ではUX-01の副長としてフラーケン艦長を支えた件しかり、
アッカイラでのガミラス初となる対次元潜航艦戦での活躍しかりである。

いずれの場面もラング無しでは切り抜けられない物ばかりだった。

だからフラーケンとしてはラングが転属になって自分の元を離れるのは辛かった。

だが、ラングはヴァルツ・ラング少佐は淡々とその命令を受け入れた。

フラーケンはラングが何故そんなに簡単に転属命令を受け入れるのか解らなかった。

しかし、フラーケンの問いにラングは「自分はザルツ人ですから・・・。」と僅かに嗤っただけだった。

**************************************************

「ゴトランド前線基地到着はガミラス標準時20:00(フタマルマルマル)です。」
ガミラス航宙駆逐艦 ZR-101の副長は艦橋の中央に仁王立ちしている艦長に報告した。

「宜しい判った、カウト君、有難う。ゆっくり休めたかね。」艦長は報告した副長を労った。

「有難う御座います、艦長。非番、ゆっくり休まさせて頂きました。 しかし間も無く入港ですので艦橋に上がりました。」
副長が艦長に微笑み返した。

「前線基地からの接岸ビームを捉えました。進路との誤差ー5度。進路修正します。」航宙士が舵を操ったがその腕前は
熟練したものだった。
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ゴトランド前線基地はガミラスが今勢力下に収めようと政治的・軍事的に攻勢を掛けているゴトランド星域の辺境、最外縁軌道にある人工惑星である。

ガミラスはここを拠点に艦隊をこの星系の文明活動領域である内惑星系に派遣し、この星系国家の政府に圧力を掛けて
いるのだ。

しかし、ゴトランド側も決して無抵抗な訳では無く、ゴトランド・ゴース艦隊を星系各地に派遣し、ガミラスの侵攻を頑強に阻んでいた。

彼等の使う艦艇は何と言うか、『硬い』のだ、破壊出来た艦艇の残骸を調査してみても特にガミラス艦と大きく違うところは見られなかった。

「敵さんは『ダメ・コン』に勝れている様だな。」この宙雷戦隊を預かる事になったヴァルス・ラング少佐は独白した。

「艦長、『ダメ・コン』はダメージ・コントロールの事ですよね。 ビーム兵器全盛のこの時代、『ダメ・コン』なんて間に合う
ものですか?」副長は艦長の言葉に疑問を持った。

「死にたく無ければ出来る事は全て遣り尽くす、それが私の居た次元潜航艦隊で学んだ事だ。」ラングは当たり前の様に
その信条を口にした。

「ゴトランド・ゴースの艦艇・乗組員はその『ダメ・コン』に勝れていると言う訳ですか?」副長はラングに畳み掛けた。

「判らん! 私はただ、装備面(ハード)に差が無いのに防御力が強いのはその装備を運用する乗員(ソフト)が
優れていると考えただけだ。 さて接舷が済んだら一度、司令部に上がるぞ! 今回の作戦とそれに参加する我々の
任務について良く聞いておかねばな。」ラングは小さいが一艦隊の指揮官であった。
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**************************************************

 司令部に着くとラングとその幕僚達は会議室に通された。

そこには初老の高官が一行を待っていた。

「、第112護衛駆逐宇宙艦艦隊、ヴァルス・ラング少佐、作戦スタッフと共に着任いたしました。」初老のガミラス軍人は
無表情のまま、ラングの敬礼に答礼した。

ラングの隣で敬礼していた副長の後ろに並んでいた情報長はその無表情さが気に入らなかった。

<この司令も俺達がザルツ人なのが勘に触ったのかな・・・。>まだ若い情報士官はこれから先の任務に不安を
感じていた。

しかし、司令は敬礼が済むとニコッと微笑むとラングの手を両手で握って言った。

「ヴァルス・ラング少佐、次元潜航艦隊での活躍、聞いておるよ。 しかもあの悪名高きヴォルフ・フラーケン中佐の手綱を
執っての戦果だ。 今度の船団護衛の任務も難なくこなしてくれると期待して居るよ。」次元潜航艦隊の任務は当然秘密
(特にアッカイラの対次元潜航艦戦は極秘)であり、辺境の前線基地にまでフラーケンはともかく、ラングの名が
知られているのは驚きであった。

「入るぜ!」一際大きな声で呼ばわりながら一等ガミラス人の将校がやはり幕僚団を引き連れて会議室に入って来た。

彼等は先に入室していたラング達の前に割り込んで基地司令の前に立つと着任の報告をした。

「第11輸送船団司令、フォムト・バーガー中尉、第六機甲師団向けの補給物資を受け取りに参りました。」
フォムト・バーガー中尉と名乗った若い一等ガミラス人将校は横目で見下す様にラング達を見つめた。

基地司令はバーガーの無礼な行いにさすがに怒りを感じた様だった。

「フォムト・バーガー中尉、上官の着任申告に割り込むとは良い度胸だ。

しかも、彼はザルツ人とはいえ次元潜航艦隊のエースだ、みくびってはいかん!  

さらにラング司令の階級は少佐、君よりも二階級も上となる。

従って第11輸送船団の司令は君、フォムト・バーガー中尉だが、君達を護衛する第112護衛駆逐宇宙艦艦隊の司令、
ラング少佐が今回は輸送船団、護衛艦隊を合わせて指揮をする事になる。 心して任務に当たりたまえ!」

基地司令の言葉を聞いたバーガー中尉は信じられぬと言う顔をしてラングの顔を見た。



                                         205.疾風の漢(おとこ)ー(2)この項 続く

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by YAMATOSS992 | 2016-05-21 21:00 | ヤマト2199 挿話 | Comments(0)
通常空間に戻ったUX-01は目の前の空間に浮かぶ敵艦の小山の様な大きさに圧倒された。

「なんてでかいんだ!こんなのと我々は戦っていたのか!」潜航士官が皆の気持ちを代弁した。

「降伏を呼びかけろ、言語はこちらが知っている限り全てを使え!」フラーケンの指示で降伏勧告が行われたが敵潜は
沈黙したままだった。

<気に入らないな・・・。>ラングはスクリーンに映る敵潜の様子に何か胸騒ぎを感じていた。

と言うのもUX-01が完全浮上して通常空間に浮かんでいるのに、敵潜は艦体の半ばをまだ次元断層に残し、赤い航跡を
曳きつつゆっくりとUX-01に近づいてきていたからである。

「まだコンタクトは取れないか?」ラングは通信士に確認した。

「駄目です。 全く応答しません。 最早悪あがきをしても仕方ないでしょうに・・・。」通信士も敵潜の挙動に
不審を表明した。
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指呼の間に敵潜が接近した時、フラーケンは突然、危機感に襲われた。

「緊急潜航だ! 急げ!」フラーケンの剣幕に潜航士官はわけも分からないまま急潜航を指示した。

次元断層の波間に吸い込まれて行くUX-01。

その時、敵潜からアンカーがUX-01に目がけて放たれた。

フラーケンの勘によっていち早く潜航に入ったUX-01だったが、敵潜の思わぬアンカー攻撃に司令塔を絡み取られて
しまった。

敵潜はアンカーがUX-01に絡まったのを確認したのか、再び次元断層に潜り始めた。

UX-01はそれに引き摺られて亜空間の中を進んでいたが潜航士官は疑問を疑問を呈した。

「奴は何をしたいのでしょう。 このまま本艦を引き摺って次元断層の深みに入っても何も変わらないでしょうに・・・。」

「機関・後進強速!アンカーを陽電子砲で切るんだ!早くしろ!」フラーケンが切羽詰まった声で命令を出した。
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「落ち着いて下さい!艦長!この空間ではビーム兵器は無効です!」ラングは艦長がパニクッたと思って思わず制した。

「大変です! 敵潜は更に下の次元断層に潜ろうとしています。 このままでは我々も道連れです!」探知主任が悲鳴を上げた。

「砲手、何をしている!ワイヤはまだ切れんのか!」フラーケンが督促した。

「駄目です!敵ワイアは本艦の側面から艦底に沿って敵潜に向かっています!陽電子砲の射界に入りません!」
砲手(雷撃手の兼任)が報告した。

「陽電子ビームは発射出来るか!」ラングが誰何した。

「砲口から少しの間はビームは収束していますが直ぐに拡散してしまって破壊力を失っています。やはりこの空間では
陽電子ビームの使用は不可能です。」砲手は状況を分析した。

「艦長、陽電子ビームは拡散してしまって使用不可能です。また、今の態勢では陽電子ビームの射界に敵ワイアを
捉える事が出来ません。」ラングが落ち着いた口調でフラーケンに報告した。

「艦長!敵潜完全潜航、本艦も引き摺られています。何か手を打つなら早くしてください!」測的手が悲鳴を上げた。

それを聞いたフラーケンは<今だ!>と思った。 そして命令を下した。

「上下反転180度! 敵ワイアが陽電子砲の射界に入るからビームを薙いで確実に切断しろ!」

「ザー・ベルク!」操舵手が空間ジャイロを反転させると共に慣性制御(人工重力)の方向も同調して変化するのだが
艦の姿勢と慣性制御の軸は完全に一致していなかったので軽い衝撃があった。

UX-01は軍艦、乗り心地は二の次なのだ。

「目標捕捉! ビーム攻撃を試みます!」砲手がワイヤ目がけて陽電子ビームを薙ぎかけた。

しかし、どんな材質で出来ているのであろうか、ワイヤはびくともしなかった。

「砲手! 艦首側では無く、司令塔側のワイヤを切断しろ!」ラングが思いも依らない命令を発した。

「それでは本艦も損害を受けます!」砲手にはとんでもない命令に聞こえたのだ。
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「何を言う! このまま複合型次元断層に引き込まれた方が良いとでも言うのか!」フラーケンの叱責が飛んだ。

「はっ」砲手は蒼ざめた顔でUX-01の司令塔先端に照準を合わせ引き金を引いた。

今度は九九ミリ単装陽電子ビーム砲は今度は司令塔の一部と共にワイヤを確実に切り飛ばした。

フラーケンの読み通り、次元断層内ではビーム兵器は無効とはいっても砲口を離れた直後のビームは破壊力を
残していたのだ。

綱引き状態にあったUX-01と敵潜はワイヤが切れると同時にお互い反動で弾き飛ばされた。

着席して居なかったフラーケン、ラング、潜航士官の三人は床に投げ出されてしまった。

<イタタタ・・・。大きな獲物の釣り糸は切れたか!>ラングは床から立ち上がると艦長を補助して立ち上がらせた。

「敵艦、ワイアの切れた反動で一度この次元断層内にその姿を現しましたが、直ぐにまた下位次元断層に
沈む模様です。」測的手がスクリーンに前方の次元断層内空間を映し出した。

そこには赤く光る次元断層の裂け目に艦首を立てて艦尾から沈没する敵潜の姿があった。

フラーケン達、UX-01の乗組員達は誰からと言うでも無くその敵潜の最後の姿に敬礼していた。

**************************************************

通常空間に浮上するとフラーケンは今度は最優先で補給艦を呼んだ。

まだ別の敵潜が潜んでいる可能性も無くは無かったが、主要兵器である亜空間魚雷が空っ欠では戦い様が
無かったからだ。

部下達が補給艦の酒保で乱稚気騒ぎを繰り広げていた頃、フラーケンは魚雷の積み込み作業を司令塔の上から
見守っていた。

作業は専用のプログラムを施したガミロイドが行うので監視する必要は無かったのだがフラーケンはどうにもガミロイドと
言う物に嫌悪感を拭い切れなかった。

普段なら彼は司令塔の先端部分の壁に肘を預けるのだが、先程のワイア戦で陽電子ビームでワイア毎、司令塔の
先端を切り飛ばしてしまったので足元近くまで司令塔先端は壁を失っていた。

「アレ、アレ、これじゃ補給艦より工作艦を先に呼ぶべきでしたね。 司令部のお偉いさんが我々の報告を
信用してくれれば問題ないんですが・・・。大丈夫ですよね?」何時の間にかラング副長が傍に来ていた。

「貴様の報告なら誰でも疑わんさ・・・。」フラーケンは胡乱な目をラングに向けた。

「それじゃ駄目ですよ。この艦の艦長は貴方なのですから貴方が報告しなければいけません!」ラングは鯱ばって
主張した。

無言で疑いの目を向けて来るフラーケンにラングは両手を振って否定した。

「大丈夫ですって! もし艦長の報告が信じて貰えなくても我々乗組員は全員艦長の味方です! 地獄の底までついて
いきますよ!」ラングは孤独感に打ちのめされているフラーケンを励ました。

「有難う・・・と言うべきなんだろうな。 しかし・・・。」自分に否定的な気分になっていたフラーケンだったが、
ラングが手元に携えている物に興味を持った。

「これですか? これは『ザルツの竜』です。 手慰みです。」ラングが照れて嘘を言った。

「これは・・・紙を折った物か? ザルツではこれで何をするんだ?」フラーケンは折り紙を持ったラングの手を掴み、
ためすがめす見回した。

「『弔い』です。 勇敢に戦って散った勇者の魂の『鎮護』です。」ラングが宇宙の地平を見つめながら遠い目をした。

「本来は味方陣営の勇者を『弔う』ためのものですが、今回、アッカイラで出会った敵潜の勇猛さは半端無いものでした。 特に最後のワイア戦、多分あの時点で敵潜も魚雷が尽きていたのでしょう。 それでもなお、降伏勧告を無視して
我々に喰らい付き、自艦と一緒に我々をも複合次元断層に引き込もうとしました。 
艦長にはうざいだけの敵だったかもしれませんが私、ザルツの武人にはその尚武は讃えるべき物なのです。」ラングは
手にした『ザルツの竜』をそっと宇宙の彼方へ向けて飛ばした。
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「結局、彼等はどこの誰だったんでしょうね・・・。」ラングが飛び去りゆく『ザルツの竜』を見つめながら言った。

「フン!上の奴らは敵潜の所属に拘るだろうが、直接、刃を交わした俺達にとっては『彼等が恐ろしく手強い
勇者だった』と言うだけで充分さ。」それを聞いたフラーケンが応え、そして続けた。

「戦死した勇者は星を伝って故郷に還えるのだろ? それが船乗りの心得だからな。」

「さすが艦長、『ザルツの船乗りの心得え』をご存知だったのですね。」ラングももはや見えなくなる位遠く小さくなった
『ザルツの竜』を見つめながら言った。

 
                                       203. アッカイラ 鮫達の狂宴 ー(4) → この項了





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by YAMATOSS992 | 2016-05-14 21:00 | ヤマト2199 挿話 | Comments(0)
「艦長! 勝算がおありなのですね! 作戦をお聞かせ下さい!」ラングが身を乗り出した。

「ああ、だが敵は四連装魚雷発射管二基を備えた化物。 加えてこちらは修理したてのポンコツ魚雷一本だ、
真面から噛み合ったら確実にこちらが負ける!」フラーケンは現状を皆と共有した。

「だから、鬼手を使う。 この次元断層の更に下の次元断層に潜り、そこで亜空間魚雷を発射、
敵潜が予想しない次元境界面から雷撃するんだ。」フラーケンの言葉に一同、息を呑んだ。

次元断層は幾つもの空間が折り重なっている部分の境界面に出来た裂け目だ。

人工的にその "裂け目" を作り出し亜空間に潜むのが次元潜航艦である。
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しかし、通常空間で次元断層を作るから敵艦船の攻撃に意味があるのであって次元断層に居ながら更に一層下の
亜空間に潜るなど正気の沙汰では無かった。

いや、通常空間の直ぐ下の亜空間だからこそ次元潜航艦は安定して留まれるのであってその下の亜空間となると
一度そこへ降りたが最後、もはや再び通常空間に戻れるか、どうか怪しい物であった。

「艦長は相打ちになってまで敵を葬るつもりなのですね・・・。」潜航士官が蒼ざめた顔で言った。

「心配するな! ベッラ少尉、この艦長は "猟犬" と呼ばれる男だ。 必ず "主人"の元に還る !
相打ちなんて考えてもいないさ。」ラング副長が潜航士官の背中をどやしつけた。

<チッ、二等が!>潜航士官が蔑みの眼差しを向けたがラング副長は彼には構わず作戦の戦術について語った。

「確かにベッラ少尉の危惧の通り、完全に下の亜空間に潜ってしまったら再度浮上出来る可能性は殆どない、
しかし、敵潜を攻撃するのにはどのみち次元潜望鏡を上げて敵の動きを探る必要がある、つまり今いる亜空間に
足掛りを残さざるを得ない。 そうですね、艦長!」ラングはフラーケンに念を押す様に聞いた。

「潜航用意! 潜望鏡深度まで潜る、なるべくゆっくりとな・・・。」フラーケンはラングの緻密な戦術に舌を巻いていた。

本来の彼の作戦は敵潜に極力接近し残った一本の魚雷を叩き込む単純な物だったからだ。

「深度、司令塔を越えます。」潜航士官が報告する。

「潜航中止! メイン・タンク・ブロー! 」潜望鏡を覗いたフラーケンが叫んだ。

「どうしました、艦長?」ラング副長が恐々る聞いた。

「次元潜望鏡の視界が真っ暗だ。 恐らく先程の敵潜の攻撃にやられたのだろう。」フラーケンは悔し気に次元潜望鏡の
鏡体を叩いた。

通常、次元潜航艦による襲撃は次元潜望鏡による各種諸元(データ)の取得から始まる、敵速、敵方位、射距離、自速、自方位等々だ。

これらのデータは艦長が次元潜望鏡を覗いて目標にピントを合わせるだけで自動的に魚雷方位盤
(雷撃用コンピュータ)にデータが送られ、さらに方位盤から魚雷に必要な制御データが送られる様になっていた。

それが行えない今、UX-01は絶対絶命の危機の内に居ると言えた。

「測的手! 魚雷方位盤に異常はないか?」艦内の士気が落ちる間を与える事無くラングは指示を出した。

「はっ、魚雷方位盤に異常はありません! しかし、雷撃に必要な諸元はどうやって入手するのです?」
測的手が訝しんだ。

「心配はいらん! メイン・タンク・チョイ・ブロー、司令塔深度まで浮上する!」フラーケンはラングの意図を読み取り
浮上を指令した。

司令塔深度、これは普通めったに取らない潜航位置である、司令塔だけを通常空間に出し、艦体は次元断層に留めると
いう難しい操艦が要求された。

更に今回は次元断層に司令塔を残しながら更に下層の次元断層に艦体を潜らせると言う高度な操艦なのだ。

「落ち着け、おまえなら出来る。」潜航士官の耳元でフラーケンが囁いた。

「測的手、携帯測距義と手動魚雷方位盤を出せ!俺と副長で司令塔に上り、雷撃に必要な諸元を手動で取って
それを連絡するから、測的手も手動で方位盤に諸元を入力しろ!」フラーケンの命令は衝撃的だった。

次元潜航艦乗りと言っても宇宙船乗りであるから宇宙服を着て船外作業する事には慣れっこである。

しかし、次元断層潜航中に船外に出る事など考えるだに恐ろしかった。

「艦長・・・。」潜航士官が言葉に詰まった。

「皆、何を心配しているんだ。この艦は次元潜航する為の特別な防御装置など持って居ないぞ。 
無防備で次元潜航出来るなら宇宙服でも充分耐えられるさ。」ラングが自信たっぷりに言った。

「それはそうですが・・・。」潜航士官は淡々と作戦準備を行う艦長と副長に思わず敬礼していた。

**************************************************

< ふん! いつ見ても薄気味悪い光景だ。> 司令塔ハッチを潜り、艦外に出たフラーケンは亜空間特有の浅海の様な
光煌く光景に鼻を鳴らした。

「艦長、グズグズしないで測的をお願いします。」ラングはフラーケンに携帯測距義を渡した。

「距離八百、的速三十・・・。」フラーケンが測距義を覗いて距離を測りつつ、時計の針を見つめて敵の速度を測った。

「方位角二十、雷速五十、境界面突破角度0・・・。」ラングがそれを手動式魚雷方位盤に入力し、出力した答を雷撃手に伝えた。

<しかし、次発装填装置付き四連装魚雷発射管を二基も持っているだけあって敵潜はでかいな!>フラーケンは
測距義のレンズを覗きながら思った。

「確かに大きいですね。こちらの倍、重巡クラスはあるでしょうか? こちらの魚雷は一本、艦長、奴のどこを狙います?」
ラングはまるでフラーケンの心の中を覗いているかの様に作戦指示を仰いだ。

「雷撃手、魚雷・射角180!」フラーケンの命令にラングは感心した。

「射角180!・・・ですか! 成程、艦長、さすがです!」ラングが驚いてみせた。

亜空間魚雷は敵艦より一層下の亜空間を航走するがどこかで次元境界面を突き破って敵艦と同じ空間に戻らなければ
雷撃の意味は無い。

しかし、次元潜航艦は魚雷が戻る位置を敵艦と自艦の相対位置に無関係に選べるのが特徴であった。
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即ちフラーケンは敵艦の後方直後に魚雷を出現させ様としているのだ。

「敵艦、転舵、こちらに接近します!」ラング副長が冷静に報告した。

<何!こちらは司令塔深度潜航中だ。 目標が小さくなっているから敵艦からは殆ど探知出来ないはず?>
フラーケンはハッとして司令塔の縁に手を掛け直下にある司令塔が次元境界面に作る赤い航跡を見た。

それは赤く輝く長い尾を曳いていた。

「これでは、頭隠して尻隠さずだ! 機関停止!航跡を消せ!」フラーケンは即座に機関停止を命じた。

「敵艦、魚雷発射!雷数八!真っすぐこちらに向かって来ます!」ラング報告した。

<こちらの位置は知られている、速度を変えても敵はそれを加味した魚雷の射角を選んでいるはず、どうする!>
フラーケンは一瞬、躊躇った。

「艦長!潜りましょう。今のままではどう回頭しようが速度を変えようが敵の魚雷の網からは逃れられません!」
ラングが進言した。

「潜航士官! 深度を潜望鏡深度まで下げろ!大至急だ!」フラーケンが吠えた。

「艦長!それでは艦長達を見殺しにしてしまいます! それに潜望鏡は使えません。潜望鏡深度をとる意味が
解りません!」潜航士官が抗議した。

「議論している暇は無い!魚雷に当たりたくなければ潜るんだ!」フラーケンは部下を怒鳴りつけた。

UX-01はゆっくりと更に下の次元断層に向かって降りていった。

普段の単なる緊急潜航と違い、司令塔深度から潜望鏡深度に潜る深さを変える事は難しく慎重な操作が必要なのだ。

フラーケンやラングのいる司令塔頂部に次元境界面が達し、彼等の宇宙服の胸から下は次元境界面を異物が
押し分ける時に出来る赤く輝く航跡に浸っていた。

「艦長! 魚雷が来ます! 右舷三十度、雷数八!」ラングが測距義を覗きつつ報告した。

「敵魚雷接近!降下やめ!」フラーケンは必要以上に下部次元断層に足を突っ込む事は避けたかった。

敵の魚雷はUX-01に到達した時、司令塔はほぼ下部次元断層に潜り、フラーケンとラングは宇宙服の頭部を残している
状態だった。

魚雷が一本、本来ならUX-01の艦首に当たる部分をすり抜ける、二本目は艦首上部を擦過して行った。

残り五本の魚雷は後部や下部を大きく外れた位置で擦過していったのでUX-01が回避行動を起こした時にそれを狙った射線だと考えられた。

しかし、最後に残った一本はUX-01の司令塔目指して一直線に走って来た。

先程、UX-01が司令塔深度で測的作業を行っていた時に曳いていた赤い航跡の発生部位に何かあると踏んでの
攻撃だと思われた。

迫りくる魚雷、その光景にフラーケンは魂も凍る思いだった。

だがそんな中、ラング副長は手動魚雷方位盤を敵艦に向けていた。

「魚雷、発射射角、修正-5!」迫りくる魚雷に立ち向かう様にラングは方位盤を向けて叫んだ。

「雷撃手! 射角修正したら直ぐに魚雷を発射しろ!」フラーケンが最後の魚雷発射命令を下した。
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<当たってくれよ!>と祈る間も無く敵魚雷がUX-01の司令塔を直撃した。

しかし司令塔は一つ下の次元断層に殆ど潜っていたため、魚雷は爆発する事無く、フラーケンやラングの身体ごと亡霊の様に司令塔を擦り抜けていった。

<フ ~ ッ、肝を冷やしたぜ、あっ、こちらの魚雷はどうした!>フラーケンが敵潜の居る方へ頭を巡らした。

<敵潜、後部に魚雷命中! 奴は深度を上げ始めました。相当大きな損傷を与えた模様です。」ラングが報告した。

敵がすぐそこに居るのに形振り構わず緊急浮上するのはそうしなければ沈没してしまうからに他ならない。

「よし、こちらも浮上だ。潜航士官、メイン・タンク・ブロー! 敵潜の正体を確かめる!」フラーケンはこの戦闘が
終了した物だと思い込んでいた。


                                         203. アッカイラ 鮫達の狂宴ー(4)→この項、続く

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by YAMATOSS992 | 2016-05-07 21:00 | ヤマト2199 挿話 | Comments(0)
 次元断層内は真空である。 次元潜航艦の中で如何に音を立てようともそれが敵艦に伝わるはずは無いと考えるなら
その者はたちまち魚雷を喰らってしまうであろう。

確かに音そのものは伝わらないが次元潜航している艦が周りの次元断層に与えている微振動が艦内で音を立てる事によって大きく変わり、それが敵艦に探知されてしまうのである。

だから潜艦が無音潜航するのは今も昔も変わらない戦術だった。
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「副長、潜航士官(ダイヴ・オフィサー)、こっちに来てくれ。」フラーケンは次の戦術を今の内に決めておこうと思った。

とはいえ魚雷を使い果たしてしまった今、取れる戦術は一つしか無かった。

 UX-01の主な任務は敵の交通路の破壊、通商破壊戦である。

だから小柄な艦体に不釣り合いな戦艦級の魚雷を多数積んでいる。

しかし、次元潜航艦の数は少なく、相手にすべき敵商船の数は多い。

そこでここぞと思しき宙域に機雷をばら撒く戦術を取る事もある。

もちろん単純な接触型の物では無く、近接信管を備え敵商船が接近したらブースターをふかして懐に飛び込んで行く
短魚雷とでも言うべきものなのだが、たまたまUX-01は今度の作戦時、機雷を積み込んでいたが使う機会が無く、
五基全てがまだ残存していたのである。

「成程、機雷か! これなら機械音を出さずに敵潜に接近出来るやもしれませんね!」フラーケンやラングより二つ下の
潜航士官が感心した。

「ですが、ただ浮上させるだけでは敵艦に当てる事は難しいのではありませんか?」ラング副長が問題点を指摘した。

「ウム、確かにそこがこの戦術の弱点だ。 何時、敵が真上を通るかをどうやって知るか、それさえ出来ればこの戦術は有効なのだが・・・。」フラーケンは腕組みして考えた。

「探知主任、敵潜の位置は掴んでいるか?」ラング副長が敵の位置を確認した。

「駄目です。 敵も音響管制に入っている様で機械音、その他の雑音、一切、聞こえません。」探知主任が絶望的な事を
伝えた。

<音響管制・・・。そうか!>フラーケンは敵の正体に思い当たった。

潜艦の音響管制の考え方は第二次大戦の独海軍Uボートの運用上で完成された。

それは大英帝国の生命線である海上交通路を脅かすものであったが、英国はUボート狩りを駆逐艦だけでなく
護送空母、対潜哨戒機を動員して大々的に行った。

対するUボートは駆逐艦に見つからない様、静粛性を増し、航空機のレーダーに捕まらない様、シュノーケルや
対レーダー電波警報機を備えて極力浮上する事無く作戦出来る様に工夫した。

この様に実戦で鍛え上げられた独のUボートに対し日本の伊号潜水艦は対米作戦の要である漸減作戦の主役としての役割を与えられていたため、水上高速力を求めて機関をフル回転する事にのみ注力し、静粛性はお世辞にも良いとは言えなかった。
(これは大戦中五回行われた潜水艦による遣独使節が二回しか成功しなかった事でも解る。)

フラーケンは敵潜の静粛性に着目した。

もし敵潜の目標が通常宇宙にいる艦艇ならここまで静粛性を求める事は無いだろう。

何故なら幾ら探知されても敵に攻撃手段が無い以上、静粛性はそれほど必要の無い性能なのである。

しかし実際の敵潜は非常に静粛性に優れている、これは敵潜の目標が音響管制に勝れた艦、
即ちガミラスの次元潜航艦だと言う事だ。

「対潜攻撃型の潜艦だと言う事ですか!」ラング副長が驚きの声を上げた。

「上方から接近する小物体が多数あります!」測的手が警告した。

「深々度潜航!」フラーケンが命じた。
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「反対だ!メイン・タンク・ブロー、深度を上げろ!」ラングがフラーケンの頭越しに命令した。

潜航士官はどちらの命令に従ったらよいか、戸惑った。

しかし、フラーケンはただ頷いて見せた、それはラングの指揮を優先しろとの指示だった。

UX-01は浮上を始めた、そして今までいた深度とそれ以下の深度に爆轟が渦巻き、もし今までの深度を維持していたら、更に深度を下げていたらどうなっていたか皆が背筋を寒くした。

確かに水中だったらこの局面で深度を上げるのは自殺行為であったが次元断層中でも真空で在る事は変わらず、
深度を上げても下げても敵爆雷から艦を守る事は変わらなかったが敵潜はUX-01が深度を下げる事を予測、次発の
爆雷の爆発深度を下げて設定していたのだ。

「艦長の見立て通り、相手は対次元潜航艦・攻撃型次元潜航艦ですね。」ラング副長が感心して見せた。

「どうしてそう思う。」フラーケンはラングのあからさまな持ち上げが不愉快だった。

「敵潜は我々に対して爆撃?を行いました。これは通常空間においては考えられない攻撃です。
敵味方同じ次元断層内にいるからこそ有効な攻撃です。次元断層に居る艦艇は次元潜航艦以外に考えられませんから
先程の爆撃?は対次元潜航艦兵器に違いありません。」ラングの分析は適確だった。

「あっ、敵艦が左舷を後方から前方に擦過して行きます。」測的手が報告した。

「何!」フラーケンは測的手のレシーバーをひったくると自分で敵潜の音を聞こうとしたが何も聞こえなかった。

「艦長、グランはプロです。プロの耳を信じましょうや」ラング副長は艦長の行為を嗜めた。

艦長からレシバーを取り戻すと測的手はムッと顔付を変えた。

「魚雷接近! 方位十、雷数八!僅かに扇状に開いた雷跡です。」測的手は報告した。

「取り舵十、魚雷群と正対しろ!」フラーケンは今度は適確な命令が出せた。

しかし前方から来て舷側を擦過する八本の魚雷の航走音は気持ちの良いものでは無かった。

「あ、再度、魚雷発射音、雷数八!」測的手が驚いた様に報告した。

それはそうである、雷撃戦に熟達したUX-01ですら全魚雷発射後、次発装填して再び全門斉射を行うには地球時間で
六~八分掛かるのであるから敵潜の次発装填の速さは驚異的な物だった。

<奴は一体何本魚雷をもってやがるんだ!>フラーケンは心の底で毒づいた。

「艦長、敵潜の前甲板に四連装大口径ビーム砲塔が背負い式に二基装備されていましたよね?」ラング副長が
関係ない事を言った。

「それがどうした?」フラーケンはイラつきつつ応えた。

「あれは多分ビーム砲塔ではありません、旋回式四連装魚雷発射管です。」ラングは誰も予想しない事を言った。

次元断層に潜む攻撃艦から発射された魚雷は次元境界面を突破する位置を指定しておけば通常宇宙にいる敵艦を
全方位どこからでも攻撃出来る。

しかし次元断層内での戦闘では亜空間魚雷も普通の魚雷としての機能しか持たない。

だから敵潜は次発装填装置を持った旋回式の魚雷発射管二基で魚雷を連射し目標を雷撃して来るのだ。

UX-01は前方、後方にしか雷撃出来ない訳ではない。

魚雷方位盤によって敵艦の速度と進路から敵艦の未来位置を割り出し、こちらの雷速と魚雷の進路、舵角の調整など
様々なデータを入力する事で真横にいる目標に前部、後部の全発射管の魚雷を導く事も出来る。

但し、相手が通常宇宙にいる通常艦艇ならばの話である、今回の様に双方とも次元断層内に居て、速度が速く、
運動性も良い艦艇相手に魚雷方位盤で魚雷を命中させるのは至難の技と言って良かった。

「こちらがもう一層深く次元潜航出来れば亜空間魚雷の全方位雷撃が可能になるのだが・・・。」フラーケンは腕組みして考えた。

次元潜航艦は次元断層潜航中に更にもう一層、次元境界面を突破して深く潜る事は出来た。

しかしそれを行ったが最後多次元断層に落込み二度と浮上出来なくなる事は目に見えていた。

<それに本艦の攻撃手段で残っているのは機雷のみ・・・。一層下からの攻撃は不可能だ・・・。>フラーケンは
追い詰められていたが、突然、ラング副長の前に手を差し伸べた。
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「魚雷を出せ!」フラーケンの要求は唐突だった。

<は? 何の事です?>と言いたげに戸惑った表情をするラングにフラーケンは重ねて問い質した。 

「先程敵潜に向けて残りの魚雷を斉射した時、故障で打てなかった魚雷だ。修理はもう済んでいるのだろう?」
フラーケンはラングが何か企んでいると踏んでいた。




                                     202. アッカイラ 鮫達の狂宴ー(3)→ この項続く


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by YAMATOSS992 | 2016-04-30 21:00 | ヤマト2199 挿話 | Comments(0)