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宇宙戦艦ヤマト前史

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宇宙戦艦ヤマト登場前の地球防衛軍の苦闘を描きます。

カテゴリ:ヤマト2199 挿話( 143 )

 「おおっ!動き出した!」第一艦橋に居た全員が喜びの声を上げた。

ヤマトが修理・資材を提供したガトランティスのレティファン・クエセジャード姫、”御召艦 ガウ・ルーガル” がゆっくりと
前進を始めたのだ。

「やれやれ、これでやっと解放されるな。 沖田艦長の容態も安定した、ヤマトはこの場を去る事が出来る!波動エンジン
始動!直ちに”転移(ワープ)”に入る!」真田副長が大幅に遅れた”定時転移(ワープ)”を命令した。

予め計算してあった定時転移(ワープ)を行うべく、ヤマトは準備に入った。

「波動エンジン始動! 室圧上昇!七十、八十、フライ・ホイール接続! 室圧 九十、百、エネルギー充填 百二十%、
航海長、何時でも”転移(ワープ)可能じゃ!」徳川機関長が準備完了を告げる。

その声を受けて島航海長はヤマトを”転移(ワープ)速度”へ加速させ様とした。
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<アレッ? 何時もより加速が鈍い・・・。 機関の異常か!>島は静かにスロットル・レバーを元に戻した。

「航海長! どうした!」真田副長が誰何した。

しかし、島航海長はそれには応えず、徳川機関長の注意を喚起した。

「徳川さん、ヤマトの加速が何時もより僅かですが、”鈍い”、このままでは”波動エンジン”に異常が出るやも
知れません!」

それを聞いた徳川機関長は機関室に連絡を取り、波動エンジンを停止、機関点検をさせた。

「ムゥ、エネルギー伝道管の一本に亀裂が入り懸かっておる、確かに航海長の言う通り、このまま運転し続ければ
”転移(ワープ)”中に急に機関が止まり大事故になる所だった。 
いや、流石、地球初の光速突破艦”ヤマト”の航海長だ、見事じゃな。」徳川機関長は若者の成長が嬉しかった。

反面、真田副長は頭が痛かった、経年劣化した”波動エンジンのエネルギー伝道管”の”番手”である。

エネルギー伝道管の予備はまだあったが、悪い事に先程ガトランティス艦の修理に供出した”番手”の在庫は尽きて
しまっていた。
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幸いエネルギー伝道管の材料である”コスモナイト90”はまだ十二分に持っていたので製作は可能だったが、これで
また定時転移(ワープ)が遅れる、そして御召艦”ガウ・ルーガル”には敵対勢力の追手が迫る危険が増していた。

一刻も早く”ガウ・ルーガル”にこの宙域から立ち去って貰う必要があるのだ。

真田副長は再度、”ガウ・ルーガル”のボ・ルドウ艦長に連絡を取りこの宙域からの退避を懇願した。

『なるほど、確かに危機が迫って居りますな。 貴艦が退避されない理由はお尋ねしますまい。 機関全速!
最大空間跳躍用意!」ボ・ルドウは艦長の顔で命令を発した。

『待てい!』 凛とした声がガウ・ルーガルの艦橋に響いた。

スクリーンに映ったその姿を見て真田副長は頭を抱えた、<あの”姫”はまた何か問題を起こすに違いない!>彼の心は不吉な予感に満たされた。

「姫! ”漢同志の話”に口を挿む事は成りませんと日頃からお話申し上げているはず、許しませんぞ!」ボ・ルドウは情け
容赦無く鉄拳を振るった。

しかし、”姫”はそれをスルリとかわすとボ・ルドウ、いやガトランティスにとってはとんでもない事を言い放った。

「あの船にはわらわと”真の名”を交わした者が居る、難儀しておるなら捨てては置けぬ!」 それを聞いたボ・ルドウを
始めとするガトランティス兵達はあんぐりと口を開け驚愕を隠せないでいた。

「御父上、御母上ですら知らぬ”真の名”を”姫”は幾ら恩義があるとは言え、”異星人”に与えてしまったのですか!」
ボ・ルドウ艦長いや、侍従長は血を吐く様な言葉で”姫”を追求した。

「”星の海を往く者の理からなした”交換”じゃ、何もやましい事は無い!」”姫”はヤマト航海長の使命が”故郷の復活”に
ある事を告げ、自分の使命が”ガトランティスの矯正”である事を語った。

「”姫”・・・貴女様は”使命の神託”を得られたのですね。 ありがたや。」ボ・ルドウは”姫”の前に跪くと両手を上に伸ばし
つつ、”姫”を丁重に拝んだ。

「な、何のまねじゃ、”爺”、わらわはそれ程大それた事をしようとは思わぬ!」ボ・ルドウの思わぬ対応に”姫”の方が
戸惑っていた。

「これは誰しも”大帝”を恐れ、口に出来なかった”ガトランティスの悲願”であります。」副長の”ヤ・ラルトウもボ・ルドウの
左脇に跪いて”姫”を両手で仰いだ。

副長に続きブリッジに居たクルーの全員も戸惑いながらも、同じ様に”姫”の前に跪いた。

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 <”使命の神託”? この言葉を聞くのは二度めだ・・・。 それも女王、スターシャ・イスカンダルが言っていた言葉、
ガミラス人の口から聞いた事が無かったから、イスカンダル特有の”信仰”だと思っていたが、ガトランティスでも
重視されている処を見ると汎宇宙的な”信仰”なのかもしれないな…。>真田は学求者らしい考察をしていた。
(注、”使命の神託”については 拙作・大長編「使命の神託」を参照して下さい。)

「航海長! レティファン姫の”真の名”を本当にお聞きになったのですか!」桐生美影が蒼ざめた顔で聞いた。

「ああ確かに交わした、彼女の”真の名”は」そこまで言いかけた島の口は新見情報長に依って手で塞がれた。

「駄目よ、ここで言っては・・・。”姫”の気持ちを踏みにじる事になる! 相手に”真の名”を明かす事の意味を良く
考えなさい!」文化人類学に明るい新見情報長は島の無知から来る無神経さに呆れた。


個人や物の”真の名”を知る、明かす、これは地球の古代人の”言霊信仰”に関係した重要な儀式である。

人が猿人でまだ言葉を持って居なかった時代にはまるで意味の無い事であったが、一度、言葉を持ち、それを使って
人同士が意志を伝えられる様に成ると”言葉”は神聖なものとして洋の東西を問わず”信仰”の対象になった。

何しろあるもの(者、物)が、如何に遠くにあろうとも、如何に昔のものでも、遠い未来であってもその存在を確実に示す
事の出来る”は言葉”は、それまで刹那にしか生きれなかった人々に”言葉を使う事”に依って時空さえ越える事が
出来る事を教えたのである。

そして人々は”言葉”を神聖な物として扱った、これが”言霊信仰”である。

しかし、反面、”自分の名前”を敵に知られるとどんな”呪い”や”心理操作”を受けるか判らないと言った”恐怖”も生まれ、
自分の”真の名”は隠して置き、対外的には”仮の名”を名乗ると言う風習が古代・地球では当たり前に行われていた。

勿論、時代が下るにつれ、”言霊信仰”は薄らいで行ったのであるが、今だ持ってその力は決して無くなってはいない。
(宮崎駿 監督「風立ちぬ」、『堀越二郎、菜穂子、婚儀の場』[追記]を参照)

ガトランティスのセジャード族にもこの風習がまだ受け継がれていた様である。

しかも、王家の所属者だけかもしれないが、”真の名”は”成人”した時、自分で決める物の様である。

自分の家来はおろか父母すら”姫”の”真の名”を知らない、そんな”神聖”な”名前”を明かすのは”生涯の伴侶”か、
”絶対信用出来る同盟者(親友?)”だけであった。

「航海長・・・。貴方は何者なのですか・・・?」驚愕の余り、桐生・美影は絞り出す様な声で島に問いかけた。

「転移(ワープ)反応、多数確認! ガトランティスの艦隊です!」岬・百合亜が次々と現れるガトランティスの艦影を捉え、報告した。
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<しまった! 間に合わなかったか!>真田副長は一戦交える覚悟を固めた。

                                       180. やってきたのはお姫(ひい)様ー(8)→ この項・続く

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( 追記 )

ここからは”言霊信仰”が実在する事の証明文書です。

「ヤマト関連以外、要は無い!」と言われる方は読み飛ばして下さい。

表題 『”言霊”の威力について』

私は”言霊信仰”など”迷信”だと思って馬鹿にしていました。

今描いている物語でもガトランティスが”過去”を引きずっている事の象徴としての”言霊信仰”を扱い、その形として
”真の名”を使うつもりでした。

しかし、2015年2月20日、宮崎駿監督の「風立ちぬ」を見て”言霊信仰”は決して”迷信”等では無く、現在も脈々と
生きている事を実感させられました。

それは堀越二郎と里美菜穂子の婚礼のシーンです。

婚儀は二郎の面倒を見てくれている黒川家の”離れ”で慌ただしく行われました。

婚礼用の飾りつけなど全く無い日常空間で堀越二郎と媒酌人(黒川氏)は普段着のまま、媒酌人(黒川夫人)と
里美菜穂子を待ちます。(二郎は外出着である”背広”黒川氏は”どてら”の上にチャンチャンコを着て正装っぽく
しています。)

家名の入った提灯を掲げ、家紋の入った羽織を羽織った媒酌人(黒川夫人)はゆっくりと二郎達が待つ”離れ”へと
晴れ着(これも羽織)を纏った菜穂子を連れて行きます。
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 媒酌人(黒川夫人)は新郎と介添人(黒川氏)の待つ部屋の正面でまず新婦の介添人が自分の前だけの障子を開け
口上を述べます。


新婦の介添人口上

「申す 七珍万宝投げ捨てて 身ひとつにて山を下りし みめうるわしき乙女なり いかーに。」

(申し上げます。 全財産を投げ捨ててまで山を下ってここに参った美しい乙女です。どうか嫁として
迎えてやって下さい。)


中にいる新郎の介添人が応えます。

新郎の介添人口上(返答)

「申す 雨露しのぐ屋根もなく 鈍感愚物のオノコなり それでもよければお入りください。」

(こちらも申し上げます。かの者も家も持たない鈍感でノロマな男です。それでも良ければ”嫁に”お入り下さい。)


新婦の介添人返答

「いざ 夫婦の契り 常しなえ。」

(これで結婚の儀、成立しました。 永遠の幸せを!)

提灯を折り畳み、灯りを吹き消し、障子を全部開けて、新郎の前に新婦をお披露目します。

(提灯の火を新郎側の口上が終わるまで消さないのは万一受け入れられない時は暗がりを新婦を連れて
引き返さなければならないからです。 また、受け入れられた後は新婦はもはやどこにも行かぬ証として提灯の火を
吹き消すのです。
それが成って初めて新婦のお披露目が為される訳です。)
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先にも書きましたがこの婚礼の儀は黒川家の”離れ”という日常空間で行われます。

しかも婚礼の儀に相応しい道具は媒酌用の酒器(盃と銚子)、提灯、後は花嫁衣裳位です。
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だがしかし、ここで媒酌人(黒川夫人)が提灯を灯したまま「申す!」と言った瞬間、”言霊”の力は登場人物達だけで
無く、我々観客さえをも、”神聖な異空間、婚礼の場”へ飛ばしてしまいました。

きちんと片付けられてはいましたが普段、生活する単なる部屋が新郎は外出着の”背広”とはいえ、普段着を
媒酌人(黒川氏)に至ってはどてらとチャンチャンコを羽織っているだけにも関わらず、です。

そう言えば私も結婚式に金を掛けるなど下らない、いっそ何もしないで良いと思っていましたが、義理の父母が結婚式に
拘ったので仕方なく式を挙げました。

しかし、実際に体験してみると結婚式(披露宴では無く、)の空間には確かには日常とは異なる全く別の物が
漂っている事がはっきりと判りました。

賛否両論渦巻く最後の”宮崎駿”監督作品、”風立ちぬ」ですが、まだ見ておられ無い方も先入観を捨てて一度、全編を
通して見る事をお勧めします。(他にも良い所がてんこ盛りです。)



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by YAMATOSS992 | 2015-02-28 21:00 | ヤマト2199 挿話 | Comments(2)
  真田副長がガトランティス艦へ派遣した修理班と連絡を取った所、修理が完了した旨の連絡が来た。

しかし、どうしても主機関の再起動が出来ないとの報告であった。

この事をボ・ルドウ侍従長、いやガトランティス戦艦”ガウ・ルーガル”艦長に伝えると再起動にはパス・ワードが必要な
場合があると言う事が判り、”姫”とボ・ルドウは自艦に引き返す事になったのだが、”姫”は『まだ、修理が終わった
訳では無い! ”証人”はまだ必要じゃ!』と自己の役割に拘った。

「判りました。”姫”の御覚悟しかと受け止めました。 私も貴艦の修理に立会いましょう。」押し問答をしていても時間の
無駄だと考えた真田副長はもう一機残されていた百式空間偵察機を使ってガトランティス艦に向かった。
(操縦は航空隊員が受け持ったが・・・。)

もちろん、ボ・ルドウも”姫”と共にヤマトに来艦した 時に使った”連絡艇”を使って戦艦”ガウ・ルーガルに戻って行った。
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真田副長とボ・ルドウ侍従長が出て行くとヤマト左舷展望室には”レティファン姫”と島航海長だけが残されていた。

島航海長はガトランティス艦を目指してヤマトから発艦してゆく二筋の光の帯を展望室の窓から見つめながら言った。

「私は卑怯者です。 何時だって”航海”の事だけを考え、ヤマトの安全な場所で舵を執って来た。・・・」島航海長は
突然、レティファン姫の思いもよらぬ事を言って来た。

怪訝な顔で沈黙する”姫”を余所に島は言葉を続けた。

「本来なら、貴女のお相手をするのは本艦・戦術長の役目です。 私の親友、古代・進の・・・。」島・大介はバラン星・
亜空間ゲートの銀河系・方面・亜空間回廊内で起こった戦闘により親友・古代の恋人が瀕死の重傷を負い、
冷凍睡眠カプセルで命を繋いでいる事を語った。

「良かったではないか? そちの親友の”恋人”とやらは死なずにすんだのであろう?」"姫”が怪訝な顔をした。
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「良くない! 瀕死の重傷を負ったんだぞ! 彼女は今も”生死の境”を彷徨っている・・・。」島航海長は悔しげに
拳を握った。

 古代・進は”恋人、森・雪”が何時、死んでもおかしくない中、戦術長の任務を続けた。
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そして、睡眠から目覚めると真っ先にする事は”彼女の生死”を確かめる事だった。

多分、睡眠中も眠りは浅く、悪夢にうなされる日々が続いた事であろう。

しかし、そんな無理は長く続けられるはずも無く、”森・雪”の負傷から三ヶ月たった所で古代戦術長はとうとう床から起き上がれなくなり、佐渡医師の判断で冷凍睡眠処置を受け、今は眠っている状態なのだ。

「そこまで想って貰える”恋人”とやらは”幸せ者”じゃな・・・。 わらわなど自分の運命から逃げてばかりじゃ・・・。」
”姫”は多くを語らなかったがその言葉に彼女が庶民には判らぬ苦労をして来た事を島・航海長は感じた。

「じゃが、そなた達の旅とその使命の話を聞いて決めた! 私の使命はガトランティスを父上から聞いていた本来の姿に
戻す事じゃ!」<ガトランティスの本来の姿? それはどう言うことだ?>島・航海長は”姫”の唐突な言葉に戸惑った。

ガトランティスは凶暴な戦闘民族である、群れを成して大艦隊で星系を襲い、その持てる資源や人材を根こそぎ奪って
行く存在としてガミラスからさえも恐れられていた。

しかし、レティファン姫が所属していたセジャード族が主導権を握っていた時代には母星を持たず、宇宙船を住処とし、
星の海を漂泊している点では今と変わらなかったが現在のガトランティスと大きく決定的に違う部分があった。

それはガトランティスの生計の立て方であった。

現在のガトランティスの生計は”略奪”に依って成り立っている。

しかし、過去は”星間・貿易”が生きる手段であった。

ある星系で仕入れた珍しい金品を他星系で物々交換して生きるのに必要な物資を手に入れると共に相手にも有用な
技術や文化・芸術といった形に成らない物も提供していたのである。

この為、アンドロメダ星雲ではガトランティスは各星系国家に歓迎され、寄港した際には大いに歓待されると言う今では
考えられない待遇を受けていたのだった。

だが、ガトランティスが豊穣な財産を保有している事が知れ渡るとそれを”武力”で奪い取ろうとする輩が生まれてくるのも
必然だった。 (”宙賊”の出現である。)
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そうなれば必然的にガトランティスの方も軍艦で輸送船団を護送する様になってくる、ガトランティス艦隊の艦船が
両舷同時戦闘を前提に設計され、また輪動砲を主に採用しているのもあらゆる方向から来る敵に即座に対応するため
である。
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また、艦隊には必ず空母を伴っているのも常時、広範囲な索敵警戒、及び初期迎撃をするのが目的」であった。
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だが、悲しいかな、波動防壁(ゲシュタム・フィールド)の様な純粋な防衛システムを持たなかったガトランティスは
攻撃力を強化する事で自らを防衛するしか無かった。

本来、侵略者の使う武器は見た目は高威力で恐ろし気だが実際の威力は少ないか、脅しだけで実戦には投入しない
場合が多い。

それは何故か? 侵略者はあまり高威力の兵器を使うと奪うべき戦利品までも失ってしまうので波動砲の様な
大量破壊兵器は使えないのだ。

反対に防御側は侵略者を兵士も船も纏めて排除してもなんら問題が無いので幾らでも高威力の大量破壊兵器が使えると言う皮肉な事になってしまっている。

だが、この理がガトランティスにとってはその運命を大きく作用する結果となった。

ガトランティスは自己防衛の為に武装したのであるからその武装は防御用の大量破壊兵器が中心であったが
アンドロメダ星雲の各星系国家は大量破壊兵器で武装したガトランティスに警戒感を抱き、ガトランティスは排除される
対象となってしまった。

そして補給をする必要上、止む無くではあったが、ガトランティスは各星域で略奪行為を働く様になってしまったのだ。

こうなれば後は坂道を転がり落ちる如く”略奪・国家”に成り下がるしか無かったガトランティスであった。

”レティファン姫”はそれを正し、ガトランティスを真面な”星間貿易国家”に戻す様、導くと言っているのだ。

「姫様、恐れ多き事ですがそれは無理です。 ”姫”、御一人が幾ら頑張っても体制までは変えられない。」生真面目な
島航海長は”姫”の無謀なはかりごとを諌めた。

「何を申す! そなた達だってあのガミラスに滅亡の瀬戸際まで追い詰められながらもイスカンダルといったか?その地で救済の手段を手にし、帰還の途にあるのではないか?」

確かにヤマトの航海は奇跡の連続だった、そして、その”不可能”を”可能”にして来たのは常にヤマト乗組員全体の人の
力だった事を島航海長は思い出していた。

「”生まれた星は違っても想う所が同じならきっと心は通じる!” わらわは”爺”にそう教えられて育った・・・。」”姫”は
どこか遠くを見つめる様な目になった。

「そうじゃ、そなた達の旅はまだ終わってはおらん、私の”企て”も始まったばかりじゃ、互いの成功を約してお互い、
”真の名”を交換いたそう。 どうじゃ、異論はあるまい!」”姫”は再び島を当惑させる様な事を言い出した。

<”真の名”? 何の事だ?>文化人類学の知識など無い島航海長は当惑するばかりだった。 

                                       179. やってきたのはお姫(ひい)様 ー(7)→ この項・続く

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by YAMATOSS992 | 2015-02-21 21:00 | ヤマト2199 挿話 | Comments(10)
  一行が応接室に入り、着席すると間の悪い沈黙が二組の間に流れた。

「ところで、何で貴艦の最高責任者である貴方がたが”証人”として本艦にやって来られたのです?」島航海長が沈黙に
耐え切れず口を開いた。

「航海長!」真田副長の叱責が飛んだ。

「島殿、異星人は珍しいですかな?」ボ・ルドウが微笑しつつ、聞いた。

「えっ、それは・・・。」島が応えかけるのを制する様に真田副長が発言した。

「いえ、貴方がたとは一度、接触しています。 また、ガミラス、イスカンダルとも接触しています。 航海長が驚いたのは
貴艦に送り出した修理・調査隊の”安全”を保障する為に本艦に送られた”証人”が貴艦の最高責任者である貴方がた
だった事です。『人の命は平等なのですから士官の方であればそれで良かったのでは?』と彼は考えたのです。」
真田はガトランティスの貴人に対する非礼を極度に恐れていた。

ここで紛争が起きればヤマト本体は何とか切り抜けられるだろうが、沖田艦長の容態を悪化させる恐れがあったからだ。

「『人の命は平等・・・。』我等には考え及ばぬ事ですわい。 ”姫と儂”が”証人”としてまいったのは出来うる限り
高位の者を”証人”として立てる事で貴艦の好意に報いようとしたまでの事、他意はありませぬ。」ボ・ルドウは
ガトランティスが階級社会である事を暗に明かしてしまった。

姫が目の前に出された”紅茶”を興味深げに見遣り、手に取って一口、啜ったが渋かったのであろう複雑な表情をした。

「失礼します。」それを見た島航海長は姫の傍らまで行くと跪き、姫の紅茶に付属のレモンを浮かべ、砂糖を適量入れるとそれを薦めた。

「これで美味しくなったと存じます。姫様、お試しあれ。」
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島に薦められるまま、姫は恐る々その紅茶を口にした。

一口啜った姫の目が大きく開かれた。

「こんな美味しい物、口にした事無いぞ! 試して御覧、爺。」姫はボ・ルドウにも紅茶を薦めた。

「これは・・・。我が部族には無い味ですわい、我等は”証人”、これ程の持成しを受ける資格などありはしませぬ。」
”証人”とは砕けて言えば”人質”の事である、ボ・ルドウは自艦の修理を他勢力の艦の力を借りねばならぬ事を深く
恥じているのだ。

<技術力が不足している?のか・・・。 ではあのビーム転送兵器はどうやって作ったのだ?>真田はガトランティス艦の
技術の偏り方が気になった。

「そうお気遣いなさらずに。この飲み物、”紅茶”と申しますが、これは本艦の一般の乗組員でも自由に飲む事の
出来る物です。別にあなた方を特別扱いしている訳ではありません。」島航海長がすかさず説明した。

「これ程の”享楽”を与えても一般兵士の”規律”が保たれるとは貴艦の艦長の”人心掌握力”は恐るべき強大さですな。」
ボ・ルドウは手にした紅茶のカップを目の高さに掲げつつ、感慨深げな言葉を漏らした。

「爺、つまらない!ここは星が見えない!わらわは母なる星の海を見て居たい。」姫がまた我儘を言った。

「姫!我等は”証人”、迂闊に動き回る事など許されませんぞ!我慢なされよ!」ボ・ルドウが姫を叱責した。

「まぁまぁ、ボ・ルドウさん、修理はまだ時間が掛かる事でしょう。 姫様が退屈されるのも無理はない。場所を
変えましょう。真田副長、展望室など如何でしょうか?」島航海長が提案した。

<確かに左舷展望室ならガトランティス艦も真近に見えるし、機密に触れる物も何も無い。反対する理由は無いな。>
真田副長は島の進言を入れて一行を左舷展望室に案内した。

「オオ、見事な!そなた達はあそこに向かって航海するのじゃな。」姫が真近に迫った光の海、銀河系を見て感嘆した。

「はぁ、ですが我が故郷”地球”はガミラスの手に依って”瀕死”の状態です。 我等はイスカンダルが差し伸べてくれた
”救済”を求めて”旅”をし、その”救済”をイスカンダルから受け取って帰還の途にある状況なのです。」島航海長が
ヤマトの置かれている状況について説明した。

真田副長は島航海長の説明を遣り過ぎだと思いつつ眉をしかめた。

「そちらが”旅”の事情を明かして下さったのなら、こちらも事情説明をせねばなりますまい。」ボ・ルドウ侍従長が”姫”の
逃避行の訳を説明し始めた。

”レティファン姫”はガトランティスの古き部族、セジャード族の王女である。

そしてセジャード族は一時は全ガトランティスを束ねる程の強力な部族であった。

しかし、小マゼラン雲への侵攻に仲々成功出来ないでいる内に新興勢力が台頭しセジャード族はガトランティスの
支配権を新興勢力に奪われ、大きく弱体化してしまったのだった。

台頭して来た新興勢力は一つでは無く、幾つかあった為、彼等は権力闘争に明け暮れており、仲々纏まる事は
無かった。

しかし、やがて幾つかの部族を統合する事に成功した一派が全ガトランティスの全権力を掌握し、部族連合だった
ガトランティスに独裁体制を敷く事に成功したのだ。

その支配者の名は”ズォーダー”、自ら”大帝”を名乗り、圧倒的な支配力を”恐怖”に依って実現した恐ろしい男だった。

だが、彼は民衆や兵士の前に姿を現す事は無く、その施策は全て丞相のシファ・サーベラーを通して官僚や軍・指令官、
一般兵士に伝えられた。
(訂正 シファ・サーベラー → シファル・サーベラーでした。HAL0999さん御指摘有難うございました。)
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一応、部族の連合体だったガトランティスを一枚岩に統合する事に成功した”ズォーダー”だったが、宇宙を漂泊する
集団であるガトランティスの本質は変えようが無く、旧部族毎の集団で艦隊を組む事を許さざるを得なかった。

この為、”大帝”は各部族に族長の娘を”側室”として差し出す様に要求して来た。

「婚礼の旅とは”政略結婚”の為だったのですね。」真田副長が痛ましそうに”姫”を見やった。

「そうじゃ、じゃが同情は無用じゃ、我等は彼奴らの迎えの艦隊を全滅させ、最大空間跳躍を行って追手をまいたところ
じゃ。」姫が星の海から顔を上げ、悪戯っぽく微笑んだ。

「しかし、”側室”とはいえ”大帝の家族”となるのでしょう? 御父上が束ねる部族の為にも”姫”はお輿入れすべきだった
のではありませんか?」島航海長が余計な事を言った。

「判っておらぬな。 ガトランティスを構成する部族は千近くあるのじゃ。 今頃、輿入れした所で”大帝”の顔を拝む事も
無く、武功のあった武将に”下賜”されるのが落ちじゃ。」”姫”は絶望的な事を言った。

「どうしてそうだと決めつけるんです! それだけ大きな集団を束ねる”漢”でしょ、人間的魅力がある”人”なのでは?」
島航海長は”姫”に平和な暮らしをして欲しかっただけだった。

「それはありませぬ。 なぜなら”姫様”の御母上は御父上、グエゼ・クエセジャード様の下に”大帝”が”下賜”する形で
嫁いで来られた方じゃった。
その上、”姫”を生んだ後の産後の肥立ちが悪く早くに亡くなったのじゃが最後まで”大帝”の扱いを恨んで居られた。
ですからシファル・サーベラーからこの輿入れの話があった時、御父上、グエゼ・クエセジャード様は形だけ”大帝”の命に
従い、裏で私に”姫”の逃亡を助ける様に命じられたのじゃ。」ボ・ルドウは衝撃的な事実を告げた。

<これは早く彼等と別れねば確実にヤマトは戦火に巻き込まれるぞ!>真田副長はそっと席を外すとガトランティス艦・修理・遠征部隊に連絡を取った。


                                        178. やってきたのはお姫(ひい)様 ー(6)→ この項・続く

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by YAMATOSS992 | 2015-02-14 21:00 | ヤマト2199 挿話 | Comments(3)
 ガトランティス艦から来た連絡艇はヤマトの左舷第三格納庫に誘導され、ガトランティスの使節は格納庫内が加圧され
たのを確認したらしく、ヤマト側が誘導しなくても姿を現した。

しかし、その姿を格納庫の観測室で見た真田副長は目を剥いた。

遣って来たのがボ・ルドウ侍従長であったのも驚きだったが、彼にはもう一人、”連れ” があった。

先程、画像通信でメイン・パネルに映っていた正統ガトランティス王家第二王女レティファン・クエセジャード、その人が
ヤマトを訪問して来たのである。

王家の人間を迎えるとなればそれなりの儀礼を整えなければならない、副長は取り敢えず四人の保安部員を呼び寄せ
儀仗兵の役割を果たさせる事を考えたが文化風習の違いを考えるとやたら武器をチラつかせる地球式の儀礼は返って
相手を刺激する事に成りかねないと考えを改めた。
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「ブリッジ、聞こえるか? 島航海長、悪いが第三格納庫まで足を運んでくれ。但し、貴人を迎えるので正装で頼む。」
真田副長は一方的に要件を伝えるとインカムを切り、自分も着替える為に自室に走った。

<貴人って誰の事だろう?>真田副長に命じられた正装を整えながら島航海長は首を傾げた。

<あのガトランティス艦は『御召艦』だと言っていたっけ、姫と侍従長の他にも高官が乗って居ても不思議は無いな。>

島航海長はまだ事態を軽く考えていた。

**************************************************

「”迎え”はまだか! 我はレティファン・クエセジャード、正統ガトランティス王家、第二王女なるぞ!」気が短い”姫”が
切れた。

「申し訳けありません。もう間も無く責任者が参りますので今しばらくの御辛抱をお願いします。」保安部長代理の
星名・透が異星の客(?、”姫君”)をなだめるのに必死になっていた。

<クッ、これがヤマトの外なら指向性翻訳機構が働かないから言葉が判らない振りも出来るのに・・・。>星名・保安部長
代理は心の中で毒づいたが顔は笑顔を絶やさなかった。

指向性翻訳機構とは桐生・美影が学生時代から研究してきた言語相互翻訳装置の事である。

彼女の母が集めた地球各地、各時代の言語をベースに相互翻訳をタイム・ラグ無しに行うものであったがその場に居る
全員に聞こえる様に音量を上げると会話が騒音の渦になって仕舞うので音波に指向性を持たせ、聞かせるべき相手に
だけ言葉が届く様、真田技師長の助けを借りて改良していた。

更に彼女はイスカンダル滞在中、ガミラス・イスカンダル両星でのフィールド・ワークを行い膨大な量のデータを入手していた。
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その中にはガトランティスの言語データも含まれていたので前回と今回、殆ど顔も合わせた事の無い種族同士でも意志
疎通が可能となっていた。

どうしてイスカンダルに居ながらにしてフィールド・ワークが可能だったかと言うとこれは桐生・美影のスターシャに対する
積極的アプローチに尽きる。

最初は地球人の”野蛮さ”を警戒していた女王、スターシャであったが、彼女も分野こそ違えやはり研究者であった。

結局は桐生・美影の言語学・人類学に対する熱意に負け、復興に忙しいガミラスの植民地管理を行っている統制省に
掛け合って言語データの譲渡を頼んでくれた。

これが広いガミラスの版図に散らばった多数の星と民族の言語と文化を入手する事を可能にし、前回、今回と
ガトランティスと意志疎通を果たせたのもこの時のフィールド・ワークの賜物だった。

<桐生・美影・・・さんか。 今頃、あっちで上手く出来ているのかしら。>星名に付き添って来た和田保安部員は今は
閉まっているシャッターの方を、そしてガトランティス艦の方を見やった。

「お待たせしました、支度に手間取りましてお迎えが遅れて申し訳けありません。」真田副長が島航海長を連れて”客”を
迎えに来た。

「私は本艦の副長、真田です。彼は航海長の島・大介、艦長は只今不在にしており、ここに来れない事をお詫び申し上げ
ます。さ、さ、立ち話では無く寛いで頂く為に部屋を用意しました。 そちらにお移り願います。」真田は姫とその侍従長を
ヤマトの艦内にある応接室へと案内した。
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**************************************************

「全くもう、ヤマトにあった”予備のエネルギー伝道管”を殆ど全部持ち出す事に為っちゃいましたよ!」岩田・甲板員が
コンテナに物を積み込みながらぼやいた。

「大丈夫だ。木星・浮遊大陸の波動砲使用によるトラブル以外、”伝道管”関係のトラブルは出ていない。 
幸い、コスモナイトの鉱石はまだ残っている。後は航海しながら予備を再度作り直せば良いと思うよ。」コンテナの
積み込み作業を手伝っていた吉田・充機関員が楽観的な見方をしてみせた。

「積み込み完了!”コウノトリ”にコンテナを接続しろ!」榎本掌帆長が命令した。

本来、”コウノトリ”ことキ8型試作宙艇は輸送機ではない、しかし、元々、輸送任務を担うべき空間汎用輸送機SC97
<コスモ・シーガル>をヤマトは二機搭載していたが、ガミラスとの戦闘で二機とも失われてしまっていた。

この為、惑星探査艇であるキ8型試作宙艇に無理やりコンテナを取り付けて輸送機として使おうと言うのだ。

<かなり無理やり感が強いが、まっ重力圏内に降りる訳ではないから大丈夫だろう。>”コウノトリ”とコンテナの接続作業を見守りながら榎本掌帆長は思った。

やがて”コウノトリ”はその汎用性をフルに発揮して大型のコンテナを機体の下に抱え込むとガトランティス艦に向かって飛び立っていった。
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                                        177. やってきたのはお姫(ひい)様 ー(5)→ この項・続く
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by YAMATOSS992 | 2015-02-07 21:00 | ヤマト2199 挿話 | Comments(2)
 「だ・か・ら、桐生くん何時起こるか判らない戦闘を恐れて艦長の命を掛ける訳にはいかないんだよ。」真田副長が
噛んで含める様に言った。

「だったら、あのガトランティス艦にこの宙域から退去して貰えれば良いのではないですか?」桐生も負けて居なかった。

「あの艦は機関が故障していてワープ出来な・・・って真田副長、あのガトランティス艦の機関を修理してやって速やかに
退去して貰えば良いのでは無いのですか?」島航海長が再度ガトランティス艦の救援を進言した。

<フム、確かにこのままあのガトランティス艦と同じ宙域に居るのは危険だ。 かと言ってヤマトは今、艦長の容体・悪化でワープ出来る状態に無い。 それならあのガトランティス艦を修理してやってさっさとこの宙域から去って貰えれば
こちらにとっても相手にとっても都合が良い。>真田副長は素早く頭を巡らせた。

「よし、それで行こう。 岬くん、ガトランティス艦はまだ後方にいるか?」副長はレーダー席に着いている岬・百合亜に
尋ねた。

「はい、右舷後方四十光秒にピタリと着けています。」と岬は応えた。

「桐生くん、市川くん、先方を呼び出してくれたまえ。 交渉は私がする。」真田副長が矢継早に命令を発した。

やがてヤマト艦橋のメイン・パネルに先ほどの姫と侍従長の姿が映った。

「我が艦に救援を頂けるとの事だが、如何なる次第ですかな。」ボ・ルドウ侍従長は慎重だった。

姫の方は珍しそうにメイン・パネルに写った異星人の姿に見入っていた。

「貴艦の機関故障、我々で修理可能な物なのかどうか確かめさせて欲しいのです。 そして修理出来るものなら修理
させて頂きたい、但し、その理由は聞かないで下さる事がこの援助の条件です。」真田副長は率直な希望を言った。

あまりにも美味い話を怪しんだのか、ボ・ルドウ侍従長は腕組みをしたまま俯いてしまった。

姫がボ・ルドウ侍従長の様子がおかしいのに気付いて顔を覗き込んだ。

そしてその顔を見ると思わず言った。

「爺・・・。 泣いているの?」

「いや、お恥ずかしい、久しぶりに、本当に久しぶりに”船乗り魂”に触れる事が出来、このボ・ルドウ感激のあまりつい、
涙を見せてしまいましたわい。 ご提案、快諾いたします。」ボ・ルドウ侍従長はヤマトの提案を丸呑みしてくれた。

**************************************************

ヤマトとガトランティス艦の距離は一光秒以内に詰められていた。

ヤマトから山崎機関士と新見情報長、桐生通訳が先遣隊として当該艦の故障状況調査のため複座から三座に緊急改修
した百式空間偵察機で発進した。

一応、護衛として山本・玲のコスモ・ゼロαー2 が付いてたが百式空間偵察機がガトランティス艦に着艦し、三人が
ガトランティス艦内に入ってしまったら山本には手出しのしようが無いのだ。
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<ガトランティス艦・・・。確かにこの前の艦隊とは違う所属の様だが本当に信用して良いのか・・・。>山本・玲は
大マゼラン雲・外縁で戦ったガトランティス艦隊を思い出して不安を募らせた。

その頃、山本・玲のコスモ・セロ αー2 の前を飛ぶ百式空間偵察機の中は奇妙な事に為っていた。

操縦を山崎機関士、本来の複座席には桐生美影、最後部の緊急用補助座席には新見情報長が座っていた。

本来なら新見情報長が操縦を担当し、複座席には山崎機関士、桐生・美影は緊急用補助座席に詰め込まれるはず
だった。

だが桐生・美影には通訳と言う本作戦のキー・マンとも言うべき役割が振られていた。

ガトランティス艦に到着次第直ぐに任務を果たして貰わなければならない。

そこでタブレット・端末を操作出来る余裕のある本来の複座席をあてがわれた。

しかし、大男の山崎機関士では緊急用補助座席には入れなかった。

そこで新見情報長が割を食って緊急用補助座席を使う羽目になったのだ。
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「先輩、申し訳けありません。帰りは私がそっちに座りますから御勘弁下さい。」桐生が紋切り口調で言った。

「いいのよ。 その代りキッチリ仕事してね。桐生さん!」新見情報長が愛想笑いをしながら応えた。

その遣り取りを聞いていた山崎機関士は言葉こそ平穏なものの、裏で交わされる女の闘いを見た様な気がして
素直に”怖い”と思ったがガトランティス艦が間近に迫っているのに気付き減速して相対速度を零にした。

そしてその艦の後部にV字型をした艦載機発艦軌条と思しき箇所がある事を見つけてゆっくりと接近して行った。

**************************************************

山崎達は格納庫から艦内に案内され、案内の兵は山崎達の目の前でヘルメットを脱いで見せ、ここが気密区画である事を示した。

それに応えて山崎達もヘルメットを脱いだ。

そこに一人の男が跪いていた。

その男はガトランティスの言葉で何か口上の様なものを述べた。

「地球艦の皆様、本艦を救援して頂けるとの事、感謝の念に堪えません。」素早く桐生・美影が通訳した。

「私の名はヤ・ラルトウ、この艦の副長を任せて貰って居ります。」

<副長? ここは艦長か、あの”姫様”、侍従長が出てくる場面じゃない!>新見情報長は何か馬鹿にされた様な気になって怒りをぶちまけた。

「艦長はどうしたの! 失敬な! ここは艦長が出てくる場面でしょうに!」桐生・美影が新見の怒りをどう通訳したら良い
ものやら、迷っている内にヤ・ラルトウ副長の方から弁明が為された。

「お怒りごもっとも。実は貴艦と接触したボ・ルドウは侍従長であると同時に本艦の艦長なのです。
ですから本来ならボ・ルドウが皆様のお相手をすべきところなのですが、お互い一度は対立した関係です。
本艦の艦長は皆様の安全を保障すると言う意味で”証人”として貴艦に向かって居ります。」桐生の通訳を聞いた新見は
<嵌められたわ! これで好い加減な修理は出来ない!>と覚悟を決めた。
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「桐生くん、早速、トラブル箇所へ案内してくれと伝えてくれたまえ。」山崎機関士はサッサと仕事を片付けてヤマトに戻るつもりだった。

ヤ・ラルトウ副長は一行を機関室に案内した。

「これは・・・。」山崎機関士が息を飲んだ。

「まぁ・・・。 これでは不調になるのも無理無いわ。」新見情報長も呆れていた。

桐生・美影は機関に関しては全くの素人だったがそれでも眼前に置かれたガトランティス艦のエンジンが真面な状態に
無い事は一目で判った。

エネルギー伝道管がエンジンを蜘蛛の巣の様に取り囲んでいたのだ。

「何分、古い機関です。 修理を繰り返している内にこの様な無様な姿に為ってしまったのです。」副長は恥ずかしそうに
説明した。

<艦体は新しいのにエンジンだけが骨董品・・・。これは一体どういう事だ・・・。>山崎機関士は大きな疑問を持ったが、
込み入っている伝道管を整理してやれば機関が息を吹き返すのは明確であり、新見情報長も同意見だった。

「ヤマトに応援を頼もう! それと応援隊に」エネルギー伝道管の予備を十三本ばかり持って来て貰う様に副長に
頼んでくれ。」山崎機関士はヤマトとの交信をヤ・ラルトウ副長に行う様、桐生・美影に通訳を頼んだ。


                                       176. やってきたのはお姫(ひい)様 ー(4)→この項・続く
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by YAMATOSS992 | 2015-01-31 21:00 | ヤマト2199 挿話 | Comments(2)
 「痛いなぁ、もう。 少しは加減してよ。 爺・・・。」ムクリと起き上ってフレーム・インして来たのは姫様(?)だった。

「『悪い事』は悪い! 『道を外したら正しき道に戻す!』 これは正統ガトランティス王家の当主であらせられる父君、
グエゼ・クエセジャード様が私に持たせた特権であり果たすべき義務で御座います。 お姫(ひい)様、私目の采配が
お気に召さなければ私目を何時でも解任、処刑されて結構です。」ボ・ルドウ侍従長は最敬礼しつつ自分の正統性を宣言した。

「よう判った! 後の交渉はお前に任せる! わらわは室に帰る!」レティファン・クエセジャード姫は至極御機嫌斜めで自室に引き下がろうとした。

しかしボ・ルドウ侍従長は姫の襟首を掴んで引き戻した。
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「いけません! 交渉前に最高責任者が逃げ出す事はなりません!」どうやら侍従長は姫の教育係も兼ねている
ようだった。

「テロンの皆様。 改めて御挨拶いたします。私の主人は正統ガトランティス王家第二王女レティファン・クエセジャードと
申します。 私は姫付きの侍従長のボ・ルドウ、我々は姫の婚礼のための航宙途中ですが船の機関に不調を生じ、難儀
致しておりました所ですわい。」彼は自分が頭を下げると共に姫の後頭部を押さえて無理やり頭を下げさせた。

「それは我々に救助を求めるという事ですか? お助けしたいのは山々ですが、我々も地球のために先を急ぐ旅です。 
大したお手伝いは出来ません。」真田副長が申し訳無さそうに、しかし、断固として救援要請を断った。

「副長、意見具申します。差し出がましい様ですが相手の機関の様子を診てやる位はしてやっても良いのでは
ないでしょうか?」島航海長が進言した。

島にとってこの状況は今は無き父親、島大吾が残した言葉、”船乗りは決して仲間を見捨てない!”と言った言葉が
当てはまる状況に思えてならなかった。

「これは失礼した貴艦は重大な使命を帯びての旅の途中の御様子、その足を止めさせた事、重々お詫び申し上げる。 
貴艦は早々にこの宙域を離れられよ。 我等に掛かった追っ手が迫って居りまする、何の関係も無い貴艦が戦闘に
巻き込まれでもしたら貴艦に対して申し訳が立ちようもありません。 貴艦の無事な航海をお祈りして居ります。」
それだけを告げるとボ・ルドウは一方的に通信を絶ってしまった。

**************************************************

「ガトランティス艦に”動き”はあるか?」真田副長は探知主任の岬・百合亜に尋ねた。

「ありません。 当該艦は本艦の後方六十光秒を通常航法で追尾してきます。」岬は即答した。

今、ヤマトの艦橋内はくだんのガトランティス艦を救援するか、否かで意見が真っ二つに分かれてしまっていた。

勿論、救援派の先方は島航海長である、彼は亡き父の「星の海を往く船乗りの理」に忠実であろうとしていた。

反対しているのはヤマトの任務達成を急ぐ真田副長だった。

先方が折れてくれ、しかも戦闘の可能性まで匂わされてはここに留まる理由は無かった。

「間も無く”定時ワープ”の時間だ。 航海長、最大ワープの準備に入れ!」副長は断固たる調子で命令を発した。

ヤマトは軍艦である、上官の命令は絶対だった。

『本艦ハ二十:00ニ最大わーぷニ入リマス。各部署・各員ハわーぷに備エテクダサイ。』機械音声の警告放送が艦内に
流れる中、島は抗命しようか、どうしようか葛藤していた。

今は冷凍睡眠槽で眠っている古代戦術長は元気な時には”間違った命令”には決して従おうとはしなかったからだ。

古代の親友である島・大介もまた、”転移命令の拒否”を口に出そうとしたその時、真田のインカムに通信が入った。

「真田君! 艦長の容態が急変した。 再手術の必要があるかどうか、しばらく様子を診たい、今、ワープ、それも最大
ワープなどで艦長の身体に負荷を掛ける事などもってのほかじゃ、直ぐに中止せい!」佐渡酒造医師からの緊急報告
だった。

「了解しました。ワープは中止します。」それだけ言うと真田副長はインカムを切った。

<ワープ航路の算定とワープ先空間の安全確認は今までの通常航行中に既に済んでいる、後はワープ実施の命令を
出すだけなのだが艦長が不調ではワープは見合わすしかない、かと言って他の乗組員にその事を知らせるのは艦の
士気上好ましい事では無い・・・。>真田副長は当惑顔で考え込んだ。

「どうしたのです? 副長・・・。 何かあったのですか?」島航海長がワープ中止と言う言葉に戸惑いながら聞いた。

考え込んでいた真田はその声で我に返った。

<艦長の病状悪化の件、隠し通す事など出来はしない・・・。 ここに居る者は皆百戦錬磨のベテランだ、ここに居る
メンバーだけには真実を打ち明けよう。>真田副長が腹を括って第一艦橋にいる全員に沖田艦長の病状悪化の
報告・容態を説明し、これは第一艦橋内の緘口令である事を告げた。

「何時、次のワープが実行出来るか判らないんですか?」新人の市川・純が怯えた様に尋ねた。
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「大丈夫、艦長は何時だって必ず”死神”を打ち負かして来たじゃないか! それにあの人は必ず約束を守る
漢(おとこ)だ。その漢(おとこ)が”地球をこの目で一目見るまでは絶対死なん!”と言い切ったんだ。絶対大丈夫さ!」
島航海長が副長の話の重大性に沈黙していた皆を励ました。

その様子を見た副長は島の成長振りに喜びを覚えた。

「副長、進言して宜しいでしょうか?」桐生美影が手を挙げた。

「ん!何だね、桐生くん、言ってみたまえ。」副長は機嫌良く発言を許した。

「真に言い難いんですが、先ほどのガトランティス艦、”追手と戦闘する事になる”と言っていました。 この宙域に
長居すると我々もその戦闘に巻き込まれる恐れが大きいのではないかと思います。 艦長の容態は心配ですが
ここは一刻も早くワープして戦闘を回避すべきと考えます。」桐生・美影は皆が内心恐れている心配事を堂々と口にした。

                                         175. やってきたのはお姫(ひい)様 ー(3)→この項続く
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by YAMATOSS992 | 2015-01-24 21:00 | ヤマト2199 挿話 | Comments(4)
 <この光点(レーダー・ブリップ)気になる・・・。>森雪が倒れた今、探査主任を任された岬百合亜にはそれがヤマトの
いや、地球の敵対勢力が放った戦闘艦である様に思えてならなかった。

ただ、目標との距離はヤマトの後方、六十光秒と遠く、直ぐに危険が迫る事は考えなくても良かった。

しかし、岬百合亜は森雪のサポートとはいえこの席に座って長い時間を経ており、ガミラスでのバレラス突入戦では
見事、探知主任を務め挙げたベテランだった。

<この前のガトランティス特殊兵器装備艦かもしれない・・・。>彼女はその経験からこの光点に警戒心を強め早目に
上官に報告する事にした。

「航海長、艦尾一時の方向に所属不明艦が追尾しています。」

「岬くん! メイン・パネルに出してくれたまえ!」古代戦術長も倒れた今、副長の次席として交代勤務の時、艦橋の
指揮を任されていた島航海長が落ち着いた声で指示を出した。

「第三種戦闘配備! 第三主砲塔、目標の追尾を始めろ!」まだショック・カノンの射程外ではあったが南部砲術長は
目標の自動・射撃・追尾を指示した。

この直の技術班担当は真田副長でも新見情報長でもなく、言語分析担当の桐生美影だったが専門外とは言えヤマトに
対する脅威を見過ごす事は無かった。
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彼女もヤマト周囲の空間に空間の歪みが形成されつつあるのを見逃さなかったのだ。

「航海長、ヤマト周囲に”空間転移の穴”が形成されつつあります! 未知艦がワープ・アウトしてくるのか、投射転移で
艦載機やビームなど攻撃性の物体が送り込まれてくる可能性が大きいです!」桐生美影は警告を発した。

「何! 大島君!桐生君から貰ったデータを精密解析! 転移物体の出現予想方向を至急特定してくれたまえ!」
島航海長は気象解析席に座った大田健二郎の交代要員、大島夏樹に命じた。

「了解しました。 あれっ、おかしい、転移孔と思しき反応は左舷二時方向から観測されます!」大島の声は
戸惑っていた。

<敵性艦は後方のはず、何故前方から攻撃が・・・!>それが艦橋にいた皆の考えだった。

しかし島航海長の判断に迷いは無かった。

「取舵一杯! 測的手第一、二、主砲を右舷に指向、右舷戦闘準備に入れ!」ヤマトの舵を思い切り切りながら
北野宙雷士に指示を出しつつ、言った。

「艦長へ報告! 敵性艦と接触の公算大、艦長の指示を乞う。」その直後である見覚えのある極太ビームがヤマトの
左舷を前方から後方へ擦過した。
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「例のガトランティス艦の武器か! しかし敵艦の反応は後方・・・一体どうやって?」北野宙雷士が思わず呟いた。

「原因究明は後だ。今は眼前の脅威に対処する事に注力せよ。」様態の思わしく無い艦長に代わって真田副長が艦橋に
上がって来た。

「また前方からビームが来ると思いますか?」島が真田に尋ねた。

「いや、そうとは限らん! ドメル将軍との戦いを思い出せ!」副長は慎重だった。

確かにドメル将軍はヤマトの周囲全部に渡って転送エリアを設定し、攻撃機を送り込み、縦横無尽の攻撃を仕掛けて
来た、それに比べればガトランティス艦の攻撃など単調なものだった。

「再び投射転移の反応が増大しています!」桐生が上擦った声で報告した。

「大島君! 敵ビームの発生予想点は? 右舷か?左舷か?」舵を執る島は操舵の寄る辺を求めて大島夏樹に尋ねた。

「それが・・・発生予想点は左舷なのですが、ビームの方向は本艦を指向していないのです。」大島は敵の意図を
図りかねると言った声で報告した。

「敵さん、どうもこちらに用がある様だな。」真田副長が言い終わるか終らないかの内にヤマトの左舷前方千mに出現した
極太のビームはヤマトの進路を遮るかの様に左舷から右舷に走った。

敵の意図が判らずヤマト艦橋には沈黙が満ちた。

<遊んでやがる!>この沈黙に普段は冷静な島航海長が心の底で毒づいたが、それは新人の市川・純・通信士によって破られた。

「敵艦よりコンタクト! 回線を分析官に回します。 翻訳をお願いします。」
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「回線受領しました。 言語照合、ガトランティス、但し前回接触した艦隊が使用していた物とは違う亜種とでも言うべき
言語ですが翻訳は可能です。」 桐生美影は本業の言語学の才を存分に発揮していた。

メイン・パネルに映ったガトランティス人の姿にヤマトの艦橋に居た人々は息を飲んだ。

地球年齢で言えば十六歳程度のロー・ティーンの少女だったからだ。

「テロン人よ。正統ガトランティス王家の名において”停船”を命ずる。逃亡が不可能なのは今までの威嚇攻撃で判った
はず。 速やかに”船”を開け渡・・・。」物騒な要求を述べていたのがまだ年端もいかぬ少女だったのも驚きだったが、
その少女が後からスクリーンの視界に入って来た男に有無を言わさず殴り飛ばされて画面から消えたのには
もっと驚いた。

何が起こっているのか判らないでいるヤマト乗組員はただメイン・スクリーンを見つめるだけだった。

如何にもガトランティスの戦士といった装いに身を包んだ老兵が視界の外に飛ばされた娘にまず呼びかけた。

「姫! 如何に正統ガトランティス王家と言えども”星の海を征く者の理”を疎かにしてはなりませんぞ!」彼は姫様(?)を
一喝するとスクリーン中央に向きなおり、口上を述べた。

「私は正統ガトランティス王家、第二王女レティファン・クエセジャード付侍従長ボ・ルドウ。 テロンの方々、我が主人の
非礼、平にお詫び申し上げる。 我が主人は若輩者故、まだ”星の海を征く者の理”を理解出来ていないのです。」

<宇宙人とだって必ず友達になれるさ。>島はその言葉に亡き父の言葉を改めて思い出していた。

                                          174. やってきたのはお姫(ひい)様 ー(2)この項続く
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by YAMATOSS992 | 2015-01-17 21:00 | ヤマト2199 挿話 | Comments(2)
惑星イスカンダルの王都、イスク・サン・アリアの中央に聳え立つクリスタル・パレスの女王居室でスターシャ・
イスカンダルは旧式な通信機を使って何処かと連絡を取っていた。
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しかし、目の前のスクリーンは黒く、”SOUND・ONLY”(を意味する文言)が表示されてた。

妹の顔を見て話したかったスターシャは”黒い画面”に文句を言った。

「可愛いいユリーシャ、顔を見せて頂戴、これで”はデスラー総統”と話しているみたいで気分が悪いわ。」彼女は気軽に問いかけた。

デスラーも何故かホット・ラインでは音声通信のみを多用していた。

しかし、返って来た答えはやけに堅苦しい物だった。

「イスカンダル女王、スターシャ・イスカンダル猊下に措かれましては御機嫌麗しゅう事、 
このガミラス皇室、女皇・ユリーシャ・ガミロニア、心よりお喜び申し上げます。」

「通信の件に付きましては今ガミラスは復興作業に技術者達が皆、邁進しており、この”ホット・ライン”の改善に力を
割く事が出来ない状態にあります。 どうか、御理解下さい。」ユリーシャの声は事務的だったが彼女の姉を思う気持ちに
嘘は無かった。

「やはりそちらは大変なのですね。 しかし、貴女は大きな力を手に入れたようですね。 その力、平和と安定に使うなら
この上ない威力を発揮します。 でもそれを領土の拡張や侵略・略奪に使う様なら貴女自身だけでなく臣民全部を
巻き込む災厄に発展しますよ。」さすが、イスカンダルの女王、スターシャ・イスカンダルだった。

「やっぱりダメ、ヒスには悪いけれど、こんな堅苦しいしゃべり方、私には出来ないわ。
姉さんも気が付いていたのね?」ユリーシャは鎌を掛けた。

「気が付きました。 サンザー系内の精神空間がこれほどザワついたのは私が生まれて以来初めてだったからです。

で、どうします? 大きな”力”を持つ精神個体が二つも覚醒してしまった。 これを放置して置くとガミラスの支配圏は

二つに別れて争いが起こり兼ねませんよ。」彼女はユリーシャを試す様に言った。

「”二つ”じゃありません。 覚醒した”精神体”は”三つ”です。でも、これで”天下三分の計”が行えます。」

「”覚醒した精神体は三つ”? ”天下三分の計?”ユリーシャの言葉に眉を顰めた。

**************************************************

”天下三分の計”とは西暦二百年前後に地球の中国で唱えられた戦乱を収める為の一方策である。
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大きな勢力が中国全土の派遣を争っていたが故に戦乱が長く続いていた訳だか、それを三つの国(魏、呉、蜀)で天下を分割して治める事により力の均衡を保って天下に平和をもたらす事を”蜀”の軍師・諸葛孔明は画策した。

即ち、一国が天下統一を目指すと他の二国がそれを抑えると言う考え方である。

現実には国力の差などの問題があって実現は出来なかったが、その思想は「三竦み理論」として今でも色々な場面で
適用されている。

「成程、”ジレルの総体”、”イルダ・ディッツ”は判るけど、もう一つは何?」女王は興味を魅かれた様だった。

「はい、それは”私”です。 ガミロイドはNetワークで繋がっています、しかし、その精神は芽生えに過ぎず、
”ジレルの総体”や”イルダ・ディッツ”の侵入を簡単に許してしまいます。

でも私はガミロイドNetワークに物理的に侵入出来ますので、もし、そのような”干渉”があった場合、
直ぐに対処出来ます。」スターシャ・イスカンダルは妹がヤマトとの旅で如何に成長したか、それを実感した。

「その”力”を使って今度の旧デスラー支配圏を巡る”行幸”を行うのですね。」スターシャは妹がかつての
ミーゼラ・セレステラ専用艦を「皇室ヨット」に改装させている事も知っていた。

「いいえ、今回は”精神文明”に頼った戦いは一切しません。

物質文明による攻撃は同じ物質文明で排除しなければ相手は決して納得しないからです。

精神文明の”力”は未知の”力”、不用意に使えば、悪戯に”未知なる恐怖”を広げるだけです。

 
エーリク大公・時代の様に・・・。」彼女は妹が再び砲火の前に立とうとしているのを知ってスターシャは愕然とした。

「大丈夫よ、姉さん。 ”ジレルの総体”はガミラス人の心の片隅で静かに眠る事を欲しているし、”イルダ・”は
”星一つ滅ぼす力”を持ちながら普通のガミラス人で居たいと望んでいます。 両者とも、もはや敵対関係では無いわ。」
ユリーシャがスターシャを慰めた。

「私? 私の心理操作能力はまだ弱い、ですが、私を狙う”精神生命体”は”イルダ”が排除してくれます。
物理的な力に対しては、どう対処するのか? それは、あの「ヤマト」が教えてくれました。」

ユリーシャは沖田を初めとするヤマトの乗組員の顔を懐かしく思い出していた。
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「そうね、あの『使命の信託』を持つ船、「ヤマト」に範を取るなら大抵の危機は避けられるでしょう。」

あの総統デスラーがヤマトの波動砲と同じ原理のゲシュ=ダールバムを持って自星系の兄弟星エピドラを消し去り、
また、ヤマトを葬る為には手段を選ばず、最初は巨大質量を落としバレラス毎ヤマトを葬ろうとし、更にその大質量を
ヤマトが波動砲で迎撃すると今度は修理の為ったゲシュ=ダールバムで再びヤマトを狙った事を思い出していた。

結局、原因不明の事故でデスラーのゲシュ=ダールバムは暴走し、軌道衛星都市第二バレラス毎、吹き飛んでしまい、目的は果たせなかったが、同じ”兵器”を持ちながらその使い方はデスラーは”破壊”、ヤマトは”救済”、と、全く真逆の
使い方をしていた。

スターシャはかつて沖田が告げた言葉「兵器その物に善悪はない、その”力”を生かすも殺すも人の”心”しだいです。」
と言った事を思い出していた。(『使命の神託ー(17)』)

<『使命の神託』、あのデスラーもかつては確かに持っていた。 だから私は彼の帝星膨張政策にも反対しなかった・・・、
でもどこかでボタンの掛け違いが起こったのね・・・。>スターシャはデスラーの自分に向けられた一途だけれど
”一方的な愛”が、これまでの惨禍の遠因だと思うと居ても立っても居られなかった。

**************************************************

「女皇、ユリーシャさま。 出立の用意が整いました。」ユリーシャの個室に女衛士が迎えに来た。

「分かったわ、エミル、ちょっと待って頂戴。」それに応えるとユリーシャは頭に付けたヘッド・セットを通して
ガミロイド・Netワークに潜って行っていた会談を続けた。

<失礼しました。 会談を続けましょう・・・。>

<では女皇がお出掛けの間、人々の人心収攬は我々”ジレル”に任せて頂くと言う事で宜しいのですな。>この前、
ユリーシャの感情の爆発による”精神的な津波”で”ジレルの聖域”から流されそうになった”ジレルの総体”は
ユリーシャの力を思い知っていた。

<その”監視”と他の精神体の侵入の監視が私の役目ですね。>イルダ・ディッツもユリーシャの”力”の凄さには
一目置いていた。

「姉には”天下三分の計”は力の”均衡”だと説明したけど私はあなた達を信頼しているわ。

これは寧ろ、”分業”と考えて、頂戴。」彼女は二人(?)の役割をはっきりと告げた。

 <ザー・ベルク!  ガーレ・ガミロニア(高貴なる女皇)お気を付けて!>二人(?)の懐刀に見送られて
女皇ユリーシャ・ガミロニアはガミラスの支配圏内を巡る”行幸”に出かけて行った。
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イルダ・ディッツはユリーシャに宛がわれた住居の中で寛いでいた。

<しかし、あの姫様がガミラスの指導者、”女皇、ユリーシャ・ガミロニア”になるとは思っても見なかったわ。 しかも、
ほとんど非武装の単艦でガミラス帝星領内を巡回して回るとは大した度胸ね。>

イルダは過去に幼い彼女を遠目に見た事があるだけだったが、それでも現在の彼女の成長振りは驚くべき物があった。

”ヤマッテ”での旅、イルダは、それがユリーシャを単なる”お姫様”から”女皇”に変えたのに気が付き、短い間だったとは
言え、”ヤマッテ”に乗り込めた姉、メルダを羨ましく思った。

<それに引き換えこっちは”魔女の館”かよ!>ユリーシャからイルダに与えられた新居はあのミーゼラ・セレステラ
宣伝・情報相がかつて住んでいた家だった。

こじんまりとして飾り気も無い屋敷だったが、きちんと清掃されており、物理的な面での不快感は無かった。
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ただ、ここがガミラス帝星全土に”ジレルの魔女”としてその名を轟かせていた「最後のジレル人」ミーゼラ・セレステラの
住居だったと言う事は彼女に実質的心理操作能力が無かったのを知っていてもイルダにとってあまり気持ちの良いもの
では無かった。

<そう、ぼやき為さんな、ユリーシャ様など、元・セレステラ専用艦を改装して”行幸”にお出掛けになったんだよ。>
”ジレルの総体”が精神感応で話しかけて来た。

<使えるものは何でも使う・・・か! これはユリーシャ様らしいや!>イルダは自分の”怯え”が根拠の無い馬鹿々しい物
であるのに気が付き高笑いした。

<それより、何だ? お前が私に接触して来るとは何かあったか?>イルダは軽い気持ちで聞いた。

<頼みがある、イルダ・ディッツ、私をやはり”ギルティ”と呼んで欲しい。そして何時までも私の傍らに居て欲しい!>
”総体”の申し出は余りにも以外なものだった。

<はぁ! それは告白か? お前は”ジレルの総体”は男なのか?>あまりの申し出にイルダは笑い飛ばした。

確かにジレル人も雌雄一対の種族だった、しかし、種族全員の心が一つに溶け合ってしまった今では総体の性別など
意味の無い物になっていた。

まして、”総体”としての”肉体”などあろうはずが無かった。

だが、単独・覚醒したイルダと行動を共にし、その能力開発を行っている内に今まで余り感じて居なかった”再び孤独”に
なる恐怖を”総体”は感じる様になっていた。

イルダの”心”は本来、能力開発が進むにつれ、”総体”に取り込まれるはずだった。

現に何人もの”覚醒者”が確実に”総体”に吸収・同化していた。

しかし、イルダの場合は”総体”と融合する気配は微塵も無かった。

その理由を考えた”総体”は自分が、お互い”同等の存在”として付き合える相手を欲している事に気が付いたのだ。

しかし、ユリーシャ・ガミロニアは怪し過ぎてて手に負えそうも無かった。

やはり、体内細胞にジレル人のDNAの一部を宿したガミラス人、イルダ・ディッツの方が”相方”?には相応しかった。

<私は”恋”をするつもりだし、結婚もしたい、子供だって生むつもりだ、勿論、女皇の懐刀としての任務は優先する、
しかし、私には”寿命”がある、お前の様に何千年もの間、生きる訳では無いんだぞ!>イルダは冷たく言い放った。

<その点は大丈夫、私は”精神”の領域にしか興味は無い、お前の”肉体”が何をしても関係無い、その点について
完全にお前は自由だ。 それにお前の肉体が滅びてもその”心”と”記憶”はジレル・Netワークの内に残るから
ガミラス圏が続く限り、お前も私も不滅だ。>”総体”はイルダの不滅性を保証した。

<ちょっと待て! ジレル人の”記憶と心”を宿したガミラス人が肉体的に死んだ場合、”記憶”はNetワーク内に
保存されるが”心”の方は新しい者が入って来ると古い者が捨てられ、新陳代謝すると説明されたぞ!私の”心”も幾許も
無く消滅するのではないのか?>イルダは前に聞いた説明と異なる内容を聞いて訝しんだ。

<私とお前が両者共に強く”融合”したい!と強く願わない限り、我々が一つになる事はない、>彼は確約した。

<私達の気持ちしだい・・・ねぇ・・・。>イルダは複雑な気分だった。

確かに初めから精神体が一体ならば”孤独”を知る事は無いだろう、しかし、同じような”精神体”と何度も”接触”すると、今度はそれと離れた時、今まで自分が如何に”孤独”であったかを思い知る事となる。

異種族との交際なんてまっぴらだわ、虫唾が走るわ!イルダの心ははっきりしていた。

<確かに、落ち着いて考えてみれば私も”お前”と位近い精神的な接触をした事は無いわ、姉や父とも長い時間を
掛けたから判り合えるけど、確かに普通の人とではチョット付き合った程度じゃここまで判りあえないわね。>イルダは
本心を偽って彼に話した。

<では、私の傍らに居てくれるのか! 永遠に!>彼は驚喜した。

<今の状態が続くと言う事はあなたの望みが叶うと言う事だわ。>イルダは冷静に分析した。

<でも、普通のガミラス人は”心”が肉体に”閉じ込められて”いるからこそ、相手の心を知ろうとして”努力”する。 
”恋”に酔い、”恋慕”の情があればこそ”猜疑心”に苦しんだりもする。 相手の”心”が読めないからこそ、”判り合おう”と
する事も”恋”の”楽しみ”の一つなのよ。>イルダはフォムト・バーガー少佐との短かった”恋”を思い出していた。

<人は”判りあえない”から”判りあおうとする”、”一つの精神に纏まって、”個人”と言う存在がなくなれば、今度は
”判りあえない”存在を求める、”知性”とはなんと身勝手で贅沢な”存在”なのだろう。>とイルダは思った。

<そうは思わない”ギルティ”?>イルダは悪戯っぽく問いかけた。

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by YAMATOSS992 | 2014-12-18 21:00 | ヤマト2199 挿話 | Comments(2)
 ユリーシャは続けた。

そうしたらそのガミロイド、オルタと名乗ったけど自分の存在を問うと答えられず混乱していたわ。>オルタが出会った
”この船の女神”はやはりユリーシャの意識だったのだ。

<”自分”と言う意識を持ち、その”存在理由”を考えるのは”心”がある証拠よ。 

多分個々のガミロイドだけではその”意識”は薄い、ヤマッテで出会ったオルタが自己を持ちながらも存在意義までは
語れなかった様に・・・、でもガミラス本星では違う、膨大な数のガミロイドがNetで繋がっているわ。
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これは”ジレルの総体”の機械版と言って良い”能力”を秘めているわ。

今のまま、ガミロイドを生産し続ければ数十年もすれば機械版の”総体”が生まれ意識を持って行動するでしょう。>
ユリーシャは恐るべき事態を予言した。

<でも私はそれを望まない、今、”生きているガミロイド”は心を持つ知的生命体として尊重すべきだけれど
もはや膨張政策を止めたガミラスにとって”代理兵士”はもういらない。  生産は中止させるわ。>

イルダはユリーシャの物言いに何か違和感を感じた。

<高貴なるイスカンダ、・・・ユリーシャ様、失礼ですがその御言葉、旧総統・デスラーのようですが?>イルダは疑問を
持ったら黙って居られない性質だった。

<あら! 知らなかったの? 私はデスラーが去った後の混乱を最小限度にする為、ガミラス人が文句なく従がえる
”存在”としてガミラスで”皇室”を開く様、ガミラス政府高官達から要請されたの。>今や、女皇となった彼女は
イルダの知る悪戯好きな茶目っ気たっぷりの第三皇女では無かった。
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<我々の”秘密”を知られた、貴方を殺す!>ジレルの”総体”がユリーシャに向かって鋭い精神衝撃波を発した。

だがその”心の槍”をイルダは”心の盾”を作って弾いた。
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<全く、もう、貴方達は”精神体”となっても物理的暴力から離れられないのね。  ”ジレルの総体”、これじゃ平和の為に
”その種族全体”を捧げた御先祖様に顔向け出来ないわよ。>

”総体”もその宿り先であるガミラス人が死んだり、新しい子供が生まれる事で”総体”全体としての”記憶”は変わらない
ものの、”意識”は常に新陳代謝していた。

<イルダもイルダよ! 心理操作によって血を流さない戦闘を学んだはずなのにどうして最後は暴力なの?
テロン人の方がよっぽど潔い戦士だったわ。>ユリーシャは約半年間を共に過ごしたヤマトの仲間を思った。

彼等は予想された苦難の旅への恐怖から波動エネルギーを大量破壊兵器に応用してしまった。

最初はその事に強い不快感を持ったユリーシャだったが、彼等はその筒先をガミラス自体に向ける事は無かった。
(木星、浮遊大陸をその試射で破壊した時、ユリーシャの意識はまだ戻って居なかったのでこの件は知らなかった。)

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最後の使用に至ってはデスラーの”暴挙”から一般ガミラス臣民を救う為に使った。

「言葉ではなく、行動で!」彼女はかつてヤマトの沖田艦長と交わした約束を思い出していた。

しかもヤマトはイスカンダルでこの上ない力、波動砲を捨て、”コスモリバース・システム”への改修を快く受け入れた。
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「一度出来た旅がもう一度出来ないはずはない!」沖田の決意を後で姉から聞かされた彼女の頬に涙が伝わった。

彼女は自分の父を知らなかった。 

生後、間も無く王都を疫病が襲った時、イスカンダルの王と王妃は三人の王女をクリスタル・パレスに彼女達を
隔離すると宮殿の外で病魔と闘ったのだ。

結果は二人の努力にも係らず王都イスク・サン・アリアに残っていた僅かなイスカンダル人は全滅してしまった。

だが王と王妃は自分達の体を使って”ワクチン”の培養に成功し、三人の王女にそれを摂取、病魔から彼女達を
守る事には成功していた。  

だから姉達から伝え聞く”偉大”だった父の姿を”偉大で強い「漢」”沖田に重ねて涙した。
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そして、その圧倒的な感情の”津波”はイルダの精神も”総体”の集合体精神も飲み込んで行った。


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by YAMATOSS992 | 2014-12-14 21:00 | ヤマト2199 挿話 | Comments(0)
  <それは各々のガミラス人の心の片隅にジレルの”総体”が宿っていたからだ。>”総体”は事も無げに恐ろしい事を
告げた。

<”総体”の意識が宿ったガミラス人同士が結婚し、子を成した場合、その子の遺伝子にジレル人の遺伝子の一部が
入る事が解った。 もちろん、心理操作する能力の部分とジレルの記憶の部分だけだが・・・。>”総体”の言葉にイルダは
両肩を腕を交叉させて震えた。

<私の中にも”総体”が居る・・・。>それはまだうら若い乙女にとっては気味悪い事この上ない事だった。

<いや、君と私は独立した存在だ、だからこうしてお互い精神感応で話しているんじゃないか。>

<だが君の身体の細胞の内の遺伝子には”ジレルの総体”を形作る部分があるのは確かだ。>”総体”はイルダを
慰めようとしているのか、絶望させようとしているのか、良く解らない話をした。

<ウイルス、他の生物の細胞に取り付き、自分の遺伝子を注入して自分を量産させ、最後にはその細胞を喰い尽す
ウイルスだ! お前達は!>イルダの怒りは収まらなかった。
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<心外だな、ウイルスは”宿主”を殺してしまう寄生物だ。 しかし私はガミラス人の心の片隅を借りて存在を守っている
だけで”宿主”に害は与えて居ない。>”総体”は自分の正当性を訴える事でイルダの心を”総体”内に取り込もうと
考えていた。

<確かにガミラス帝星に害は与えてはいないが恩恵も与えては暮れてはいないな! これでは本当の”共生”とは
言えない。>イルダはバッキリと”総体”がガミラス帝星に”寄生”する存在だと告げた。

”イルダ”と”ジレルの総体”、二つの巨大な”力”が対峙し、一発触発の状態になった。

クスクスと微笑む声をイルダは感じた。  ”ジレルの総体”も第三者が近くに居るのを感じた様だ。

<誰だ! そこに居るのは!>二人は揃って尋ねた。

<あらぁ、気が付いちゃった~っ 二人とも何て禍々しい気配を放っているの。 コワイ、コワイ。でも・・・。>

<部外者の私ですら気が付く程の強大な”力”を持っているのにそれを民の為に使おうとは思わないの?>声の主は
二人を強く糾弾した。
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<だから、誰だと聞いている! ”ジレルの聖域”にこんなにもたやすく入って来た貴様は一体何者だ!>イルダより
”総体”の方が動揺していた。

<まぁ、精神文明に偏った貴方には私が誰だか何時までも判らないでしょうね。  でもイルダ、イルダ・ディッツ、
あなたの方は私が誰だか気が付いたんじゃなくて?>その”声”は決して大きくは無かったが女王の様な威厳を持って
辺りを圧した。

<貴方は・・・ユリーシャ・イスカンダル・・・違いますか?>イルダは恐る々尋ねた。

イルダはガミラス高官の娘としてイスカンダル王室に対する忠誠は骨の髄まで叩き込まれていた。

<スゴイ!スゴイ!やっぱ判っちゃた! ウ~ン、若い子は頭が柔軟ね。>声の主はやはりユリーシャ・イスカンダル
だった。
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<私はお前がどうやってこの”聖域”に入ったと聞いている!>”総体”は彼には理解不能の状況に戸惑っていた。

<貴方はもう一つの入り口があるのを忘れている様ね、自分も利用している癖に・・・。>彼女はおかしな事を告げた。

**************************************************

三人(?)は近くの工事現場に心を飛ばした。

そしてそこで働くガミロイドの心(?)に侵入した。

<ほら、彼らの内にチラチラした小さな炎の様な輝きが見えるでしょ。>ユリーシャが一つの事実を指摘した。

<馬鹿な、あれが”ガミロイド”の”心”だって言うんですか? ガミロイドは機械ですよ。 それもジレル人に心理操作され
ない様、主なコマンドは遠隔操作で行う様に設計されています。>イルダは反論した。

<確かにガミロイドは対ジレル人用の兵器として開発されたわ、でもジレル人の掃討が終わった今でも量産は続いて
いる・・・これはどういう事かしら?>ユリーシャが切り返した。

<それは・・・ガミロイドは人型を模したものなので人の使う装置や武器がそのまま使えるます。

だから、ガミラスの領土拡大に伴う人的資源の不足に対応するのに最適だったのです。>イルダの答えにユリーシャは
拍手した。
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<良く理解しているわね。 でもその答えでは七十点しか挙げられない。>ユリーシャはイルダの答えに不足している
部分を付け加えた。

ガミロイドは標準的なAIを備えたオートマタ(自動人形)であり、単純なプログラムを膨大な多重処理によって人間と
同じ様な複雑な行動を可能にしている。

初期のガミロイドは対ジレル人用の兵器だったので心理操作されない兵士として主なコマンドを遠隔操作で行って
いたが、ジレル人掃討作戦が時と共に下火になっていった時、ガミラス人達はガミロイドの”汎用性”に着目し、
戦闘以外の下級兵士が行う任務位はこなせる様、ガミロイドにどんどん新しいプログラムを付け加えて行き、結果として
操作盤からの指令は優先されるものの、操作盤からの指令が来ない時は完全自立型のAIを備えた、プログラムの
膨大な積重ねによって動くオートマタ(完全・自動人形)となった。

<過剰な多文書多重処理によってガミロイドに”心”が芽生えたとおっしゃるのですか! 殿下>イルダにとって
ユリーシャの言葉は衝撃的だった。

<事実だ、もっとも私には理屈は判らないが彼女が言った通り”ガミロイド”には”心”がある。>”総体”が新たな証拠を
提示した。

<イルダよ、我々がディッツ提督救出の為、戦艦を一隻態々新造し、運航するにも下級兵士はガミロイドで代用したのを
覚えているな?>”総体”はかつてはぐらかしたイルダの質問に正面から答えた。

<私なら彼らガミロイドを心理操作出来たからさ。 そうでなければあの作戦に必要な人数は集まらなかった。>
動かぬ証拠を突き付けられたイルダはプライドを大きく傷つけられた。
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<彼等の処理系に我々と同種の”意識”は芽生えない、貴女はそう信じたい様ね。 でも事実は違う、当時、私は事故で意識を失ってしまい、姉様からの使命であったテロンの船をイスカンダルに導く事が出来なくなっていた、だから
テロン人は仕方なく、テロン艦、ヤマッテの自動航法装置なる機械に私の脳を繋ぎ、イスカンダルへの航路を私が眠って
居ても導き出せる様にしたの。>彼女は重大な秘密を明かした。
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<そんな、非道な、テロン人はやぱり野蛮人だったのですね。>イルダは怒りに燃えた。

<彼等も必死で生存の為の努力をしただけよ。 あなた達、ガミラスの非道から故卿を守る為にね。>

<でも先に発砲して来たのがテロンの方です! それも宣戦布告も無しに!>ユリーシャはイルダの子供の様な主張
には答えず話しを続けた。

<私の意識は確かに身体を動かせる状態では無かったけれど自動航法装置を介してヤマッテの艦内Netに侵入する事は簡単に出来たわ。  
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そしてヤマッテの隅々まで探索出来た。  

しかし有る時テロンのテクノロジーとは全く異なった存在に出会った。  

今思えばあれはヤマッテが捕獲修理したガミロイドだったのね。  
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でも当時の私はそんな事には気付かず、「貴方はだーれ?」と素直に質問したの。

                                                168.イルダ・走る!-(13)→この項続く
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by YAMATOSS992 | 2014-12-10 21:00 | ヤマト2199 挿話 | Comments(2)