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宇宙戦艦ヤマト前史

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宇宙戦艦ヤマト登場前の地球防衛軍の苦闘を描きます。

<   2012年 03月 ( 6 )   > この月の画像一覧

 「沖田、防衛会議の感触はどうだった?」土方竜大佐は土星会戦で米ソ艦隊が文字通り、命を賭けて取った
侵略者の情報に基づく、防衛会議の基本戦略方針について沖田少将にたずねた。

「どうもこうもないよ。 なにせ米ソ合同艦隊が全滅させられたんだ。 各国、各勢力ともパニックになっているよ。

まあ、それでもシェーア大将の音頭取りで防衛計画の大要は決まったがね。」沖田は手にしたグラスに入った
ウイスキーをチビチビと舐めた。

「具体的には?」自分のグラスを廻しながら土方は上目遣いに沖田に聞いた。

「木星圏を絶対防衛圏として地球の生命線を確保する、当然、地球ー木星間の交通路もだ。」

「ウム、それは当然だ、 地球のエネルギーは各国、各勢力とも木星プラントに頼っているからな。

それで米ソの艦隊再編成後の反抗作戦についてはどうなった?」

「いやいや、まだそこまで煮詰まった話は出来る状態ではないよ。 残念ながらな。」沖田は溜息をついた。

「相手の目的がはっきりしないのでは戦略の立てようがない・・・か。」

「しかし、土方、ここだけの話だが、土星会戦時に敵は気になる武器を使いよった。」沖田は防衛会議出席者
ではない土方に極秘事項を告げた。

それはガミラスが土星会戦の勝機を掴むために使用した遊星爆弾の事だった。

大質量兵器が艦隊戦に使われる事は地球では考えにくいものだったからである。

沖田はこれが本来は戦術兵器としてではなく、戦略兵器として敵の拠点攻撃に使われるものだと看破したのだ。

そして、防衛会議で戦略攻撃の標的として地球が狙われた場合を考え、火星軌道上に迎撃システムを
構築する様に提案したが、異星からの侵略に混乱した会議ではその重要性が認められる事はなかった。

「その戦略兵器を迎撃出来る兵器や艦艇を今から用意しておく必要があるな。」土方も沖田と同じ考えだった。

「藤堂長官とも良く打ち合わせて置くよ。 長官なら南部重工業とのパイプも太いからな。」沖田は土方と
グラスを合わせた。

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 冥王星からそれほど離れていない宙域にガミラスは遊星爆弾の発射施設を建設していた。

土星会戦の時に使用した遊星爆弾は工作艦を使った応急的設備で発射したのだが、地球に対する本格的
戦略攻撃のためには専用の設備が必要、とのレッチェンスの判断で発射施設がつくられているのだ。

 「シュルツ副指令、設備の完成はもうすぐです。間も無く遊星爆弾の第一発目を地球に対して発射できます。」

工事の進捗状況を視察に来たシュルツ大佐に工事責任者のヨルク技術中佐は説明した。

「ウム、早く遊星爆弾が、どの様な効果を挙げるか、見てみたいものだな。 出来るだけ早くな・・・。」シュルツは
意味ありげに言った。

「発射するだけなら、今の完成状態でも充分行えますが・・・。」ヨルクは応えた。

「ヨルク君、早まってはいかんよ。 折角発射するのだったら、きちんと最終誘導まで行って地球に命中
させなければ実験としても意味がない。 確かに早い成功は勲章ものかもしれんが・・・。」 シュルツは
横目でヨルクを見た。

ヨルクは自分の任務に強い圧力が掛けられているのを感じた。

「はっ、出来るだけ火急速やかに遊星爆弾発射システムを完成いたします。」ヨルクは最敬礼をした。

「ウム、よろしい。 レッチェンス様も期待しておられるぞ」シュルツはニヤリと笑うと視察を終わり、基地へ
帰っていった。

 実はシュルツは土星会戦で見た地球人の底力に畏怖を抱いていたのだ。

レッチェンスは土星にエネルギー・プラントを設け、木星圏侵攻に必要な資源やエネルギーの備蓄が整うまで、
木星ー地球間の交通路に通商破壊艦隊を複数放って地球側の経済や軍備の妨害を行うつもりだった。

しかし、そのためには時間が掛る、その間に地球側に軍備を増強されたらと思うと居ても立ってもいられない
シュルツだった。

彼はレッチェンスに遊星爆弾による戦略核攻撃を提案していたが、レッチェンスは地球側に体力がある内は
戦略攻撃はこちらの手の内を明かすだけで簡単に迎撃されてしまうと考え、シュルツの案を退けていた。

レッチェンスは戦略核攻撃を行うのは最低でも木星圏を制圧した後だと考えていたのである。

しかし、シュルツは一刻も早い戦略核攻撃こそ地球側の機先を制し、ガミラスの勝利を確実にするものだと
思っていた。

ガミラス侵攻軍と言えど、決して一枚岩ではなかったのである。

**********************************************

 「目標補足! 距離1万キロ! 射程距離までまだ大分あるが、本当に良いのか? ライニック大尉?」
艦長が聞いた。

「見ていてください。 艦長。」フローラー・ライニック大尉は自信たっぷりに言った。

彼女の前にはこのドイツ駆逐宇宙艦Z-7の武装を全て官制する射撃指揮装置があった。

そして、今、そのモニターには何も写っていない様に見えた。

だが、彼女が見詰めるモニターの上にはピパーと呼ばれる指輪大のリングが映っていた。

そして、両手の指先を動かすとそのピパーの位置が微妙に変る、ピパーが目標と完全に重なった。

「ピパー・オン・ターゲット!! (照準完了!)」フローラーは艦長に報告した。

「ファイア!(撃て!)」間髪入れず艦長が命令を下した。

ドイツ駆逐宇宙艦Z-7は駆逐宇宙艦にしては大口径のフェーザー砲を持っていた。

6インチ単装フェーザーを3基の砲塔に別けて積んでいたのだ。

その全門のフェーザー・ビーム条が遥か1万キロの彼方で一点に交わった。

たちまち、その空間に標的命中の証である小爆発が起こった。

「シュミレーターでは何編も見せてもらっていたが、実際の標的でも同じなんだな・・・。」艦長は感嘆した。

「シュミレーターと実際が違っていてはシュミレーターで訓練する意味がありません。」フローラーは笑った。

「しかし、見事なものだ。さすが、オリンピック常勝選手だ。 感心したよ。」艦長は和やかに笑った。

しかし、フローラーの心は曇っていた。

彼女は冬季オリンピック、バイアスロンの選手だ。 何度もメダルを手にしていた。

しかし、侵略者の出現が地球にオリンピックなどを行う余裕をなくさせていた。

いや、彼女の心が曇っているのは侵略者相手とはいえ、実際に命のやりとりをしなければならない事だった。

<何匹、いや何人殺すのか・・・。> 彼女はこれから続くであろう長い戦いを思った。

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ドイツ駆逐宇宙艦Z-7は木星ー火星の間に広がる小惑星帯にいた。

ここは他の宙域に比べれば漂う岩塊の密度が高く、演習にはもってこいの空間だったからだ。

とはいっても見た目は他の空間と何も変らなかったが・・・。

Z-7の遥か前方で先程の演習で見たのとは比較にならない大きな爆発が起こった。

「なんだぁ! この宙域では本艦しか、演習をしていないはずだぞ!」艦長が血色ばんだ。

「隕石です。 外宇宙方面から進入して来た隕石と小ぶりの小惑星が衝突した様です。」観測員もかねる
フローラーが報告した。

「同方向から後、三個続いて飛来してきます。」

「外宇宙? 彗星ではなく・・・複数の隕石がか?」艦長はいぶかしんだ。

外宇宙方面から飛来する隕石は大抵、彗星に由来するものか、彗星が引き連れて来たものである。

群れとはいえ、隕石だけで飛来するのは考えにくい現象だった。

「大変です。 艦長! あの隕石群の進行軌道上には地球があります。 衝突確率70%です。」フローラーは
恐るべき予想を口にした。

「地球防衛軍に警報! ライニック大尉、データを至急本部へ送れ!」艦長は命令を発した。

「了解!警報とデータは送りました。 しかし、艦長、本艦は迎撃しないのですか?」フローラは
不満そうだった。

「現在の本艦はミサイルを持っていない。 迎撃は無理だ。 地球本部に任せよう。」

艦長はフェーザーでは隕石を細かく砕いても地球大気圏に突入した時、燃え尽きる大きさにまで小さくするのは
不可能と判断したのである。

ミサイルなら爆圧で軌道をそらせる効果が期待出来たが、それも今は使用されない核や反物質の
爆発型弾頭のものである必要があった。

いたずらに目標を小さくしてしまうが、軌道はほとんど変えられないフェーザーや爆縮型弾頭の
反物性ミサイルではかえって最終迎撃がしにくくなるとの判断が艦長にはあった。

「そうですね・・・。任せましょう。」フローラーも不承々、承知するしか無かった。

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「こちらでも捕らえました。 かなり大型の隕石、3個です。」月面にある地球防衛軍基地でもZ-7が警告した
隕石群を捉えていた。

「迎撃可能なマス・ドライバーは何基あるか?」基地指揮官は尋ねた。

宇宙時代に入り、隕石による地球被災の可能性が本格的に心配される様になったが、地球の地表まで
達する様な大型の隕石が飛来する事など非常にまれな事なので、それ専用の迎撃設備など存在しなかった。

そこで月表面上から宇宙空間へ資源を運搬するのに用いるマス・ドライバーで岩塊や爆発物を打ち出し、
迎撃するのが一般的だった。

「あることはありますが・・・。」副官は言葉を濁した。

「この隕石の軌道から言って迎撃可能なのはM・D-01のみです。 1個迎撃するのが精一杯です。」

マス・ドライバーは本来、兵器ではない、精密照準で速射する様には出来ていなかった。

「仕方が無い。 我々は出来る事をやろう。 地球本部へ警報! 運が良ければこの迎撃で残りの2個の軌道が
変って地球に当たらずに済んでくれるのを祈ろう。」
月面にあるマス・ドライバー、M・D-01は着々と隕石群の迎撃準備を進めた。

「この反物質弾頭、一体、何時作られたものなんだい?」作業員の一人がマス・ドライバーの装填口に
迎撃用の爆弾をセットしながら、同僚に話かけた。

「俺が知る限り、演習以外でこのM・D-01が隕石迎撃に使われた事はないからなぁ。 爆発するかどうかも
判らないぜ。」同僚の作業員は無責任な反応をした。

しかし、装填された反物質弾頭はまるで昨日作られたかの様にピカピカに輝いていた。

**********************************************

 ガミラス冥王星前線基地の司令室でレッチェンスは目の前の大型モニターに写っている宇宙空間を
見詰めていた。

背後に人の気配がした。 シュルツ副指令だった。

「報告します。 ヨルク技術士官の処刑が終了しました。」シュルツはレッチェンスに機械的に告げた。

「ウム、死体は宇宙空間に捨てたまえ・・・。」

「それは宇宙葬にすると言う事ですか?」シュルツは意外な命令・・・という顔をした。

反逆者は八つ裂きにして荒野に放置するのがガミラスの伝統だったからである。

 ヨルク技術中佐は遊星爆弾発射設備が完成する前に発射実験と称して遊星爆弾を4発も地球に向けて
発射したのだ。

しかも自分からガミラスを名乗り、地球に対する降伏勧告付きで!だ。 

これはレッチェンスの戦略方針から真っ向から反対する行為であり、立派な反逆罪であった。

その結果、レッチェンスが恐れた通り、一発は地球に命中させる事に成功したが残りの3発はことごとく
迎撃されてしまった。

<これで地球側は遊星爆弾の迎撃システムを構築するに違いない・・・。>

<ヨルクはこんな事で効を焦る様な男ではなかったはずだが・・・。>レッチェンスは信頼していた部下に
裏切られた悲しみで一杯だった。

「シュルツ、ヨルク技術中佐は有能で真面目な男だった。 何が彼に今回の様な罪を犯させたのか、判らん。」

「技術者とはいえ、彼も軍人でした。 やはり、手柄を立てたかったのでしょう。」シュルツは自分がけしかけた事
などおくびにも出さず、さらりと言った。

「そうか・・・。君も彼が軍人だったと思うか・・・。 ならばせめてそれに相応しい弔いをしてやれ・・・。」
レッチェンスはシュルツをギロリと睨んだ。

「ハッ! しかし奴は反逆者です! 弔ったりしたら示しがつきません!」

「だから、『宇宙に捨てろ!』 と言ったのだ。 お前の裁量としてな!」シュルツに背を向けたままレッチェンスは
言った。

「ハッ! 了解しました。 仰せの通りに致します。」シュルツは心の中でニヤリとしつつ、退室した。

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地球防衛軍司令部は重苦しい空気に包まれていた。

先日、地球に落下し、日本の三浦半島を直撃、甚大な被害をもたらした隕石の正体が判明したのだ。

隕石の落下直後に、地球は英語とロシア語の入り混じった奇妙な通信を受け取っていた。

その解読が先程出来上がって来たのである。

『我々はガミラス帝国、地球よ、滅亡か、我々の奴隷になるか、選択せよ。 我々は星すら動かす力をもつ、
抵抗が無駄な事は今回の攻撃で判ったはずだ。 良い返事を待つ。』

先日の隕石の落下は明らかに人為的なものの疑いが濃かった。

それが、ガミラスと言う敵の示威攻撃だった事がはっきりしたのだ。

土星会戦の結果と合わせて文明の程度に大きな開きがある事も判った。

しかし、このまま何もせず、敵の軍門に下るのは戦争に明け暮れていた地球人の誇りが許さなかった。

<長い戦いになるな・・・。>藤堂は沖田の顔を見た。

しかし、沖田は何故かいぶかしげな表情をしていた。

長い会議が終わると藤堂は沖田に理由を聞いた。

「長官、今回の敵の示威攻撃だが、何かタイミングがおかしい。

確かに遊星爆弾による戦略核攻撃は脅威だが、木星より内側が我々の勢力圏にある内は迎撃は不可能では
ない。

今回の会議でも遊星爆弾の迎撃に関してはどの国、どの勢力とも意見の一致を見た。

次の攻撃はたぶん、迎撃が成功するだろう。

まるでガミラスは自分の手の内を明かしてくれている様だ。」

「それはまだ敵に隠し玉があると言う事だろう?」

「そうかもしれん。 しかし、わしは敵の内部にも問題があると踏んだ。」

「我々にもまだ勝機があると言う事かね?」沖田の性格を良く知っている藤堂は確かめる様に聞いた。

「勝機? それは諦めさえしなければ何時でもある。」沖田は歴戦の勇者のみが見せる微笑を見せた。

                                    

                        時に2192年7月20日 ガミラスの遊星爆弾の示威攻撃が行われた。
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by YAMATOSS992 | 2012-03-30 21:00 | 本文 | Comments(0)
 レッチェンスはファラガットの報告を聞いていた。

ファラガットは大粒の涙を零していた。

理由を訊ねると彼は涙声で応えた。

「私は私の軍が最強でその中でも私は自分が最強だと奢っていました。 だから、いきなり、肉弾戦を仕掛けました。

銃撃から入ると他にいるかもしれない敵の観測隊に気付かれると思ったからです。」

「君も充分大胆じゃないか!」レッチェンスは若者らしい果敢な行動にあきれた。

「ですが、相手は更に1枚上手でした。 軍用ナイフで両者は戦っていたのですが、相手は直に
それを捨てました。」 レッチェンスの眉毛がつりあがった。

「そして、素手で我々と戦ったのです。」

「なんだと!素手の軍に君は負けたのか!」レッチェンスは驚いた。

「はい・・・。彼らはナイフを構えて突進する我々を苦も無く、投げ飛ばし、地面に叩きつけました。

今までに経験した事の無い戦い方でした。

敵の揚陸艦の発進準備が出来るまでの短時間でしたが、まるで教官に格闘戦のコツを教わっている様な
感じでした。」

本当は親に教わっている様な感じだったのだが、まさか司令官にそう言うわけにはいかない。

だから、敵の揚陸艦が味方の重巡に撃破された時、言い様のない、寂しさが心を吹き抜けたのだ。

 宙兵隊の猛者からただの青年に戻ったファラガットの肩をポン!と叩くとレッチェンスは言った。

「良い経験をしたな。ファラガット大尉。 下がってよし!」

「はっ」敬礼すると指令室を出て行った。

結局、観測隊は2隊しか発見されなかった。

しかし、これでガミラスに関する情報がかなり、地球側に流れたのは確実だった。

**********************************************

 レッチェンスはシュルツとガンツを自室に呼ぶと今後の作戦計画を立案する事にした。 

「次は5番星だな。あそこには地球の大プラント群が集中している。潰さなければ厄介な事になる。」

シュルツが発言を求めた。

「レッチェンス様、あそこには地球軍もひしめいています。 全軍を持って事に当たる必要があります。
 
しかし、今のエネルギー状況では全軍の派遣は無理かと思います。
 
かといって6番星のプラントが出来るのを待っていては敵に時間を与えすぎます。」と言って黙ってしまった。

 「でどうするのだ君は! こんな事もわしに頼るのか?大佐!」 レッチェンスの怒号が飛んだ。

「あの~っ 発言しても宜しいでしょうか?」 ガンツ少佐が恐る恐る言った。

 「よしっ言ってみろ。」不機嫌な声をあらわにレッチェンス大将は発言を促した。

ガンツは発言の機会を与えられて喜び勇んで自分の計画を話した。

 「要するに我々の準備が整うまで地球軍を引き付けておけば良いのです。

そして、相手の経済や生産を極力妨害する必要があります。

遊星爆弾による戦略攻撃が出来ればよいのですが、それは6番星のエネルギー・プラントが
本格稼動するまで行えません。

私は通商破壊艦を何隻か放って木星~地球間でエネルギー輸送艦を仕留めさせれば良いと考えます。」
ガンツは言葉を続けた。

「地球の護衛艦より速ければ良いのですから突撃艦で充分でしょう。」

「うむ、なかなか良い案だ。 しかし、あまり敵を舐めてはいかん。 シュルツ、今、重巡は何隻残っている?」

「12隻であります。閣下、半分づつ任務に当たるとすれば6隻が通商破壊戦に使えます。」

「12隻か・・・。少ないな。もう12隻の派遣を本国に要請しろ!」と命じた。

宇宙空間は広い、その中で別の船に出会う確率は皆無に等しいのだ。

今回の場合、5番惑星の周辺空間を戦闘空域と定めたから24隻で済むのだ。

半分の12隻が任務に当たり、そして、残りの12隻は基地で補給や修理を受ける事になる。

それから、有人艦のもう一つの要素、乗組員の訓練も必要となる。

有人艦は戦闘局面において臨機応変の対応が出来る反面、宇宙空間での勤務が長くなると乗組員の
健康管理が重要になって来る。

筋力の低下や、骨のカルシュウムが溶け出して強度が弱ると言う問題がある、

だから、長期に渡る作戦では兵力は必要な量の2倍は持ち、訓練をたゆまず行って健康を管理する必要がある。

地球でも「骨や筋肉は使ってやらないと、直ぐサボる・・・。」と言って宇宙兵の訓練は片時も休まず
続けられていた。

「もう一つ良いでしょうか?」ガンツ少佐は遠慮がちに言った。

<まだ、あるのか!>とレッチェンスは思ったが口には出さず、発言を促した。

「先刻の会戦で失った宙雷戦隊や艦の補充は閣下におまかせするとして、食料の補充要求を!
特に生鮮野菜の補充が必要です。
 
これだけ、善戦したのですから彼らに上手いものを食わせてやりたいのです。」レチェンスは大声で笑った。
 
 「このメタボめ、本当は自分が食いたいのであろうが!」

「はあ、解りましたか。御察しの通りです。ですが、私がそう思う以上に兵士達はもっと、そう思っているはずです。 

食料の補給をお願いします!」

ガンツは日頃からの言動から上官追従形の士官と思われがちだが、部下の事を第1に考える男だった。

「今回、打ち合わせた第6番惑星のプラント建設計画とプラント完成まで時間を稼ぐ通商破壊戦は
長期に渡る物になるだろう。」

「一度、生鮮野菜の補給を受け、それを食い尽くす前に農園を作る・・・。 どうだガンツ、この案では。」

「有難う御座います。宇宙兵達も喜びます。 単に、訓練に日々を送るより、自分の鍛錬が自分の楽しみに
なる・・・。  その方がずっと嬉しいはずです。」

「確かに?な!」レッチェンスは笑った。

だが、シュルツは黙って二人のやりとりを聞いていたが、こらから始まる地球ー木星間で行われる
通商破壊戦に思いをはせていた。

12隻の重巡を2隻一組にして艦隊を組み、6艦隊が戦場に散らばる事になる。

 この方が本来の軍艦の使用法に近いものだが、相手も船団を組み護衛艦を随伴させてくるだろう。

地味だが根気と体力のいる長い戦いになる。  補給艦も送らねばならない・・・。
 
黒いガスが渦巻く窓の外を見詰め続けるシュルツ大佐であった。

時に2191年、太陽系を防衛する地球にとっては当然だが、侵略するガミラスにとっても長く苦しい通商破壊戦が始まろうとしていた。
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by YAMATOSS992 | 2012-03-27 21:00 | 本文 | Comments(0)
土星の衛星上には、米ソの観測隊が陣取っていた。

土星の衛星の一つ、『レア』には米国宙兵隊一個中隊が、タイタンの隣の衛星『ディオーネ』には
ソ連宙兵隊一個中隊が、それぞれ陣取り、乗ってきた強襲揚陸艦に充分な偽装を施すと上空で
行われている地球と侵略者の戦闘状況と侵略者について解った事、全てを地球に向けて打電し続けた。

 「凄い決戦だな。俺達は運が良い。」米宙兵隊の指揮官ドナルド=アイゼンハワー中佐は軽口を
たたいて見せた。

副官が言った。「でも今の戦況では米ソの連合艦隊が全滅するのも時間の問題です。

そうなれば我々は強襲揚陸艦「ベイブリッジ」で帰途についても、すぐに敵に発見され、
揚陸艦ごと全滅させられます。」

 「だから、こうして奴等の情報を送りつつ、敵艦隊が去るのを待っているんじゃないか!
ゆったりと構えて奴等が去るのを待っていれば良い。」双眼鏡を覗きながらアウゼンハワー中佐は応えた。

 「それに我々の隣の衛星『ディオーネ』にはソ連の観測チームがいる。 もし、我々が発見され、
攻撃を受けて『ベイブリッジ』を失ったとしてもベイブリッジから離れて隠れていれば後で
ソ連隊が拾ってくれるさ!」いとも涼しげに言う司令官に自分も自信を取り戻した副官であった。

しかし、内心、アイゼンハワー中佐の心は震えていた。

「もし、侵略者に発見されれば相手が駆逐艦でもベイブリッジでは太刀打ち出来ない。
 
 今は入念に偽装して隠してあるから発見される恐れは少ないがしかし、「帰還準備中に発見されたら・・・」と
思うと足がガクガクと震えそうになった。

ベイブリッジが発見されても宙兵隊は隠れていれば大丈夫だと副官には言ったがそんな甘いものではない事を
アイゼンハワーは良く知っていた。
 
空の強襲艦が発見されれば、必ず周囲の捜索が行われる・・・。逃げ切ろうにも酸素の限界もある、
ここは地球上ではないのだ。

また、「自分達が発見され、ベイブリッジを失ってもソ連の観測チームが拾ってくれる。」と楽観視して見せたが、
もし、そうなったらソ連隊はどうするべきか、アイゼンハワーは良く知っていた。

自分達の他に観測チームがいる事を絶対に侵略者に悟られてはならない。

それが彼ほどの勇者をも恐れさせているのだった。

「だが、俺達は本当に運が良いのかもしれん。 大半の宙兵隊や陸軍はやる事も無しに、ただ訓練に日々を
送っている・・・。
 
そんな中で、俺達はじかに戦う訳ではないが、こうして戦闘の一翼を担っている。

神に感謝しなければな・・・。アーメン」

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アイゼンハワーが自己との戦いを演じている時、ガミラスの勇将レッチェンスもまた、自己との戦いを
演じていた。

地球艦隊は刻々と変る戦況の報告をしていたが、それはガミラスでも同じ様に行う事だ。

しかし、その中に、両者とは別の視点から見た報告が混じっていたのだ。

「明らかに観測者がいる・・・。」地球艦隊の執拗な粘りはガミラスの情報を取るためだと、彼は読んだのだ。

しかし、地球軍の抵抗は激しく、ガミラス艦隊を分散させる事などとても出来ない状況だった。

(もともと戦力の分散は用兵上、一番してはならない事だったが・・・。)

比較的手空きの重巡に周囲の宇宙空間を探索させてみたがそれらしい艦艇は発見出来なかった。

と、なれば衛星上が怪しい、なにせ、土星の衛星は34個もあるのだ。

隠れるにはうってつけの場所だった。

「うーむ、34個か・・・。」地球軍のずる賢さに歯噛みするレッチェンスだった。

と、その時、レッチェンスの部屋のドアがノックされた。「入れ!」とレッチェンスは命じた。

「デスラー総統 ばんざい!」と敬礼をしたのは冥王星を制圧した時、活躍した強襲艦隊の指令官だった。

彼の名はファラガット大尉。  勇猛果敢さではガミラスでも右に出るもののない宙兵隊指揮官だった。

「その敬礼は、デスラー総統に対してだけすれば良い。私なぞには挙手だけで充分だ。

で、何か用が有るのかね。  食い物は期待しない方がいいぞ。」とニヤリと笑って見せた。

 ファラガットは言った。 「確かに宇宙食と栄養剤だけの食事にはあきあきしていますが、
今回は違うお願いです。」

「ほう、脳みそまで筋肉で出来ている様な君が・・・さて、何かな?」

「ハハッ脳みそで腕立て伏せは出来ませんよ。総司令。」

「私は地球軍のあの粘りに疑問を持っています。」真顔に戻った彼は言った。

彼はレッチェンスと同じ推理をしていたのだ。 

グッと眉を上げたレッチェンスは部下の成長を喜んだ。

だが、それを表には出さずに質問をした。

「君は私にどうしろと言うのかね。言っておくが艦隊の分散は出来んぞ。」

ファラガットは大尉は驚くべき進言をした。

「自分達、宙兵隊は冥王星制圧時に少し活躍しましたがその後、何の活動も出来ない唯の遊兵と
化しています。

衛星上に陣取っていると予想される彼らを捜索、撃滅する任務を与えて下さい。

船は今まで通りの強襲艦で構いません。」若者らしい血気にはやった作戦だと思ったレチェンスは質問した。

「調べなければならない衛星は34個もある。 ひとつひとつ調べている内に会戦は終わってしまうぞ。」

ファラガット大尉はちゅうちょする事無く言った。

「我々宙兵隊員は250名おります。また、衛星の中には調査の必要がない小さいものが大半を占めています。

我々は部隊を4大隊にわけ、比較的大型の衛星の昼夜境界線付近だけを調査するのならそんなに
時間は掛らないでしょう。」

 レッチェンスは唸った。 

<確かに全部調べていたら時間が掛りすぎる、だが、兵員を運ぶ輸送船(強襲揚陸艦)が隠せる大きさの
衛星に絞って調査すればそんなに時間はかかるまい。 それに宙兵隊なら会戦に影響はない。>

「確かに観測目的なら20名もいれば十分だな。 それの3倍の兵力で攻められれば敵はひとたまりもあるまい。

よしっ すぐ準備にかかってくれたまえ。」ファラガットは今度は無言で挙手の礼をすると部屋から出て行った。

十五分後、再びファラガット大尉から通信が入った。

「強襲艦4隻出撃します。」との報告だった。

<やはり、やっておったか、 先刻のガンツ少佐にしろ、ファラガット大尉にしろ、自分で考え、
わしの作戦を先読みして準備する能力を持っている。

こうした優秀な人材がデスラー総統の周りから遠ざけられているのが今のガミラスの実態なのだ。

レッチェンスは比較的総統の側にいるドメルに全てを任せるしかない自分の非力さに溜息をついた。

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 「急いでくれ、艦長! これ以上、奴らに我々の情報を与える訳には行かない。」ファラガットは
強襲艦「ルツアイ」の艦長を急かした。

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「解ってるよ。ボーヤ ありったけの艦隊を繰り出し、それでも足らずに強襲艦まで使うとうは!

お偉方は何を考えてるのかね~っ 全く!」

艦長は艦隊戦に参加出来ないうっぷんを晴らす様に言った。

 「しかし、今度の敵は今まで以上の強敵だそうですね。」

「ああっ、宙雷戦隊2個が戦闘開始から5分でやられた。 全滅だったそうだ。」

「ええっ、たった5分で軽巡2隻と駆逐艦10隻がやられたんですか?で、こちらの戦果は?」
艦長は聞いた。

「今のところ、なしだ。」ファラガットは悔しそうに言った。

「えっ」あんぐりと口を開けるしかない艦長だった。

「敵は宙雷戦隊撃滅用の大型戦艦を持っている。大口径の長距離砲と特殊なミサイルで武装した新型艦だ。」

「それなら、今のガミラスにもあるじゃないですか」

「ああ、似たような巡航艦はある。しかし、こいつは、ガミラス戦艦よりずっとでかい。 しかも、我々の軽巡並の装甲しか持っていない。」

「なんですって!軽巡並みの装甲で戦艦より大きい図体ですか? そんな船は役にたたんでしょう。」

「ああ、機関が小さければな、 こいつは我々のデストロイヤーのゆうに5倍の出力を持っている。」

「そんな化け物を作るのはどんな奴らでしょうかね。」

「解らん!それを確かめに我々が出撃してきたんだ!」ファラガットは配下の強襲艦4隻をそれぞれ大きい目の
衛星に振り分けて自艦は12番衛星を目指した。

**********************************************

 他の強襲艦も1隻づつ大型の衛星を中心に捜索を始めた。

昼夜の境目が一番怪しい。 観測すべき戦闘を衛星の反射光が照らし出し、夜の部分に自隊は隠れる・・・、
自分だったらそうする、との分析だった。 

一番大きいタイタンは見過ごした。

この衛星には大気が有る、しかも、黒くにごった大気だった。
 
隠れるだけなら最適の場所だが観測には向かない・・・

彼は次に大きい12番惑星の「レア」に目標を定めていた。

そして、「レア」上の昼夜境界線でうごめく、米宙兵隊を発見したのだ。

ニヤリとしたファラガットは敵本隊のど真ん中に強襲艦を強行着陸させた。

宇宙服姿から自分達と良く似た生物であると考えたのだ。

「軟体動物や甲殻類じゃなくて良かったな。ボーヤ」艦長がからかった。

「ああ、多分、我々と同じ人型をした生物だ。しかし、その実力は肉弾戦をしてみなければ解らん。」装備を
整えたファラガットは真っ先に強襲艦を飛び出した。

驚いたのは米国宙兵隊である。 ガミラス兵は銃撃戦もなく、いきなり肉弾戦を挑んできたのだ。

「解っているじゃないか!こいつら!」アイゼンハワー中佐は嬉しくなった。 

久しぶりの実戦が肉弾戦とは何んと幸運な事か!

 彼は月面柔術の達人だったのだ。

月面柔術とは地球上で行われる柔道を基本として、宇宙空間の特性変化を持ち込んだものだ。

宇宙は無重力である。 しかし、慣性は働く、したがって、投げ技や組技を組み合わせないと
相手にダメージを与えられないのだ。

アイゼンハワーは黒帯である、相手の力を利用した投げ技だけでも充分、相手を投げ飛ばせるのだった。

彼は副官にあえて強襲揚陸艦「ベイブリッジ」の発進準備をさせた。 

ガミラス強襲艦は強行着陸をしたために地面にめりこんでそのままでは発進不可能であると踏んだのだ。

組み合うアイゼンハワーとファラガット、互いに宙兵隊用のゴツイ、ナイフを構えていたがアイゼンハワーは
何故か、そのナイフを捨てた。

 プライドを傷つけられたファラガットは怒りにまかせて切りかかったが、アイゼンハワーはスルリとそれを
かわしつつ、投げを打った。

再び切りかかるファラガット。

だが、結果は同じだった。

そして、そこここで、米国宙兵隊員はガミラス宙兵隊員を翻弄していた。

ベイブリッジから発進準備が出来た旨、連絡が入った。

 「楽しかったぜ!坊や。俺はこれで失礼するぜ!」

アイゼンハワーは地面にへばり込み、肩で息をしているファラガットに挨拶した。

悔しそうにその後を見送るファラガット。

しかし、ベイブリッジは衛星「レア」を離れて幾ばくもしない内に、警戒・偵察活動をしていたガミラス重巡に
捕まり、爆沈して果てた。

 それを見ていたファラガットは思わず叫んだ。

「オヤジ!」

ガミラスの家族形態は地球とは異なっていたが地球流に表現すれば彼の気持ちはその一言に
集約されたものだった。

 衛星『ディオーネ』に駐屯して観測していたソ連中兵隊も同じ運命を辿ったが、それを見送った
ガミラス兵は誰と無く敬礼していた。

何んと勇猛果敢な宙兵隊だったろう。  しかも、他星系人とためらう事無く、肉弾戦を行える勇気を
持っていた彼らに尊敬の念すら持ったファラガット大尉だった。

**********************************************

ファラガットの報告を聞いたレッチェンス大将は思った。

宙兵隊も猛者ぞろいか・・・。やはり、この星系に手を出したのは失敗だったかもしれない。

とんでもない連中の様だ。

近くに重巡が遊弋していたから倒せたが、もし、あのまま帰還されていたら詳細な
報告をされてしまう所だった。

 武装が少ないが勢力範囲が広い星系の軍は好戦的で強い。

ハイデルンが赴任していたオメガ戦線がそうだ。

 あそこの戦艦は前方を攻撃するビーム砲しか持っていない。円錐形の艦体を持ち、大型のビーム砲塔を
3列(3連双2段)持っている。

だから敵に後ろを見せたら何の抵抗も出来ず沈むしかない。

当然、何のためらいも無く、突撃を掛けて来る。

 自分達がガミラスとすれ違った時、ガミラス艦が残ってしまったら背後から攻撃を受けてしまう。
 
だから、二つの艦隊が正対している内にガミラス艦隊を全滅させる必要がある。

そのため、勇猛果敢な突撃をしてくる、生き残りそうなガミラス艦には特攻を仕掛ける事も辞さない連中だ。


地球艦体は基本的にガミラス艦と酷似した武装を持っているが、ガミラス艦が後部兵装は防御に使う目的で積んでいるのだが、地球艦は違う。

敵に横腹を見せて戦う様に設計されているのだ。

 一番広い面積を敵に見せてもそこにハリネズミの様に主力ビーム砲を積む。
 
そして 突撃時にもガミラス艦に勝るとも劣らないビームやミサイルを発射出来る。

 何と、恐ろしい発想だろう。

 だが、レッチェンスはそこでニヤリとした。

<そうか、彼らは惑星国家にすらなっていない。 だから互いに強力な武装をし、軍事的な協力が
不慣れなのだ。 これは我が軍にも勝機があるかもしれん。>

 しかし、レッチェンスの分析は大きく間違っていた。

我が地球の歴史を紐解くとおもしろい事が解る。

威力のある新型兵器は主に防衛側が開発、使用している事だ。

北欧でその名を馳せたバイキングの使用した船は鎧張りの頑丈な木造船だったが、決してそれ以上でも、
それ以下でもない、 唯の戦士を運搬する強襲揚陸船であった。

船同士の戦いは相手に横付けし、大量の兵士を送り込むと言う、地上戦の延長線上にあるものだったので
ある。

対して紀元前に長らく地中海で活躍したフェニキュアは戦闘専門の軍艦を持っていた。

彼らは海上交通の利権を一手に握っていたが、あちこちに出没する海賊に悩まされていた。

当時は1枚帆の帆船が主流であり、船足は遅かった。

海賊は中型の手漕ぎ船で運動性を確保し、単独航海をするフェニキュア船を襲ってきたのだ。

手をやいたフェニキュアはその解決策として、海軍を作り、戦闘専門の軍艦で武装した。

商船は船団を組み、その船団を軍艦が守るのだ。

 もちろん、今の軍艦の様な砲はない、有ってもせいぜいカタパルトと呼ばれる投てき兵器が主だった。

しかし、彼らはもっと強力な武器を持っていた。

船首から前方に延びた衝角、通称「ラム」である。

これをを振り立てて、敵艦のどてっぱらに穴をあけて沈めてしまうのである。

 また、戦闘時の速度と運動性は3段に並んだ櫂で確保しているが、櫂をしまって、重心をずらして
わざと横腹を突き出し、敵艦の櫂を折ってしまうと言う荒業も持っていた。

海賊は目的の商船を沈めてしまってはもともこも無いが、商船を防衛する側は海賊など沈もうがどうしようが
知ったことではなかった。

好戦的なバイキングは唯の輸送船を使い、本当は平和裏に事を運びたかったフェニキア人は
強力な戦艦を持つ、戦争とは全く、矛盾したものである。

だが、その屈折した地球人の思いが今回のガミラス侵略に生きた。

平和時にも仮想敵国を作り、訓練に励んで来たからこそ、米ソは連合軍を組織出来た。 

平時からお互いを仮想敵国として研究してきたからこそ、相手の軍の内容も判り、協力も出来た。 

とうとう、地球人の好戦性が本当に役に立つ時代が始まったのである。

                        土星会戦が終了したのはレアの観測隊が全滅した20分後だった・・・。
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by YAMATOSS992 | 2012-03-26 21:00 | 本文 | Comments(0)
 「フーム・・・相手の陣形は単縦陣か・・・。こちらと同じ陣形だな!」
米艦隊の総司令官ニミッツ提督は鋭い眼差しで侵略艦隊を見つめた。

彼は土星宙域を会戦宙域として定め、侵略者の艦隊を待っていたのだ。

この宙域には土星の衛星が点在し、観測隊を潜ませるのに好都合だったからだ。

既にレアには米国宙兵隊、ディオーネにはソ連の宙兵隊が潜み、敵艦隊との戦闘の模様を観測する事に
なっていた。

今回の作戦は地球の戦力の半分にも当たる米ソの艦隊戦力の大半を用いる大規模なものだった。

<なんとしてでも侵略者はここで討ち取る。>ニミッツ提督は闘志を燃え上がらせた。

しかし、彼の指揮者としての資質はもし、万が一、自分達が破れる事があっても戦いを出来るだけ長引かせ、
敵に関する情報を少しでも多くとる事も忘れていなかった。

米国艦隊の戦艦も単縦陣で相手と戦う様、設計されていた。

「取り舵一杯、相手を予定通りT字戦法で迎撃するぞ!」ニミッツ提督は命令した。

戦艦「ワシントン」から各艦に命令が伝達され、続くソ連艦隊も向きを変え様としたその時である。

ニミッツ提督は異星人の思考が地球人に似ている点に何か胸騒ぎを感じた。

<宙雷戦隊・・・。>

ニミッツ提督は敵の宙雷戦隊が何処にいるか捜させた。

宙雷戦隊とは駆逐艦を数隻集めて戦隊を組ませ、それを軽巡が率いる駆逐艦隊の1バリエーションである。

駆逐艦は1隻では弱いが何隻か集まって宙雷戦隊を構成すると威力を発揮する。

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今回は遠距離遠征なので同行させなかったが、地球では宇宙軍の実質的主力であった。

やはり、単縦陣両翼と上下に展開していた敵の宙雷戦隊は本体とは別れ、突撃隊形に陣を組み直しながら
米国艦隊を分断しようと突っ込んできた。

ニミッツ提督は巡航戦艦「レキシントン」と「コンステレーション」の二隻に迎撃を命じた。

もともと米国の巡戦は宙雷戦隊掃討用である。
 
砲力は強く、速度はべらぼうに速い、駆逐艦よりも速いのである。

しかし、その反面、装甲は無いに等しい、その威容とは裏腹に危険な戦艦であった。

ニミッツの突撃命令は敵艦隊の単縦陣の両翼には必ず軽巡航艦に率いられた宙雷戦隊が居ると踏んでの
攻撃だった。
 
案の定、軽巡航艦1隻に率いられた駆逐艦5隻で構成された宙雷戦隊が両翼に1個戦隊づつ航行していた。

何事も大きさで圧倒しようとする米国らしい巡戦はその大火力と速度で敵宙雷戦隊を攻撃した。

A-1砲塔(上面1番砲塔)A-2(下面1番砲塔)、B-1(上面2番砲塔)、B-2(下面2番砲塔)の各三連双砲塔と
艦首に着いている前方攻撃用の三連双砲塔からフェーザー・ビームを吐き出してガミラス突撃艦を二隻を
グズグズにしてしまった。

<一応、フェーザー砲は効果あり・・・だな。>ニミッツ提督は一人ごちた。

全ての戦いの様子は艦隊からは勿論、土星の衛星上に展開した米ソ宙兵隊からも地球へ中継されていた。

<さて次は反物性ミサイルだが・・・。>ニミッツ提督は地球艦隊の次の主力兵器の効果を期待した。


米国巡戦隊は敵駆逐艦隊とすれ違いざまに3連双5基のビーム砲と18基の反物性ミサイルを浴びせかけた。

次々と爆沈する敵駆逐艦隊、重防御を誇るガミラス艦も運動性能を優先させざるを得ない突撃艦は比較的
軽防御だったのだ。

しかし、敵駆逐艦隊を追って突出し過ぎた巡戦艦隊は敵主力艦隊の射程内に入ってしまった。

 宙雷戦隊の仇とばかりにガミラス主力からのフェーザー・ビームがレキシントン」に突き刺さり、半壊状態に
なった「レキシントン」は戦列を離脱せざるをえなかった。

 ドイツの巡航戦艦とは異なり装甲は20.8cmと重巡航艦並みで、しかも被っているのはバイタル・パートのみだった。
(上下第一砲塔ターレット・リングから上下第四砲塔ターレット・リングまでと装甲されている部分も少なかった。)

本来ガミラス戦艦隊は米国巡航戦艦の相手としては手に余ったが「コンステレーション」は相手の情報を
取るため、距離を取りつつ、時たま自艦の射程距離まで近づいてビームをガミラス艦隊に浴びせた。

 だが、射程距離ギリギリから発射されたビームはガミラス艦に命中しても何の損害を与える事が
出来なかった。

しかし、米国巡戦にはもう一つ強力な武器を持っていた。

上面9門、下面9門合わせて18門の反物性ミサイルの垂直発射管である。

2隻合わせて36基のミサイルの嵐がガミラス艦隊を包んだ。

確実に1隻のガミラス艦が吹き飛んだ。

だが、遠距離から発射されたミサイルは次々と迎撃されてそれ以上の損害を与える事は出来なかった。

<相手のフェーザーはこちらより強力だ。 もっと距離をつめねば効果は上がらない!>ニミッツ提督は
歯噛みした。

戦艦艦隊本隊がガミラス艦隊をT字で待ち受ける方向に誘導しようと賢明に躁艦する「コンステレーション」はかなり無理をしていた。 

有効射程距離に入ると自艦もガミラス艦隊のビームを浴びて危険になって来た。

 だが、それを補う様にソ連の大型巡航艦「タシュケント」と「ミンスク」が戦場に割って入って来た。

「コンステレーション」に変って全ビーム砲、反物性ミサイルを発射し続けた。

 ミニッツ提督はただちにに離脱する様、二隻に命令を発した。

しかし、ソ連のマカロフ提督は二隻を引かせ様とはしなかった。

一人で戦艦を動かせるとまで言われた叩き上げの勇将マカロフには満身創痍となりながらも決して引かぬ
「コンステレーション」と「レキシントン」を見捨てる事など出来なかったのである。

  また、「ミンスク」と「タシュケント」は最先端にブリッジを持ち、武装や機関のある本体は無人である。

損害を受けても本体を切り離せば脱出は可能だと踏んでいたのである。

 <だがそれでは冥王星まで遠征出来る数少ない艦艇がまた減じてしまう。  戦いはまだまだ続くのだ。>
 
 ガミラス側は地球艦隊に宙雷戦隊を全滅させられてしまったが装甲の強力なガミラス主力艦・重巡は
何事もなかったかの様に、地球艦隊に迫ってきた。

 ガミラス艦隊を本隊の方に誘導しようとして敵の射程内に深く入り過ぎた「ミンスク」と「タシュケント」は次々とビームを浴び、まず「ミンスク」が、次に「タシュケント」も爆発して果てた。 

マカロフ中将はあえて軽巡「カーラ」を旗艦としていた。

「旗艦は損傷を受けて撤退しなければならない時、味方の戦力の減少に繋がるようであってはならない。」を
信条としていたからである。

しかし、今は最後の突撃をかける「コンステレーション」・「レキシントン」を誘導する役割を引き受けた。
「コンステレーション」と「レキシントン」はレーダーも測距義も殆ど失って目測を頼りにネルソン・タッチの
攻撃で敵艦隊の分断を図るつもりだった。

 だが、軽巡「カーラ」は殆ど無償で、しかも旗艦設備が整った新鋭艦である。

これで「コンステレーション」・「レキシントン」にもチャンスが巡ってきた。

攻撃隊形は「カーラ」を中心とした平行陣、これで「カーラ」に対する攻撃は少しは減る。

旗艦の艦長席に座ったシュルツ大佐は地球軍の勇猛さに舌を巻いていた。

 通常これだけの損害を受ければ撤退するか、特攻するかのどちらかである。

だが地球人は冷静に勝機を掴む作戦を選び、実施して来た。

このままではまんまと戦列は分断され、至近距離から敵のビームとミサイルを浴びる事になってしまう。

 シュルツは非凡ではなかったが彼もレッチェンスの弟子である。

すぐさま小ワープで地球艦隊の反対側に地球艦隊と平行する位置に移動した。

「カーラ」のマカロフ提督はニミッツ提督と連絡を取り、目標のなくなった「コンステレーション」と「レキシントン」を後退させた。

冥王星基地で一部始終を見ていたレッチェンスは「ムウ・・・。」と唸った。

まんまと目の前でワープをして見せてやったのである。

 これは大失策だった。が、レッチェンスはシュルツを責める気には成らなかった。

自分が指揮していたとしてもやはり同じ様に命じていたろうと思ったからだ。

米国戦艦隊は重装甲であったがその分、加速、減速力が劣る。

 方向転換力もガミラス艦より劣っていた。攻撃力はほぼ互角だったが、ガミラス艦隊は加減速を繰り返し、
米国艦隊を翻弄した。

「侵略者め!良い気に成りおって! そうだ実力の全てを吐き出させてやる。」 ニミッツ提督は味方に
135°回頭命令を出した。
 
これはガミラス艦隊に対し斜めに後退する雁行である。

 斜めに後退する事により敵の攻撃を受けてもそれを受け流す事が出来るのだ。

後退する量も最少にする事が出来る。

シュルツはこうした後退の仕方に初めて出会った。 

しかし、シュルツは思った。

 <最後尾に陣取る様な腰抜けに提督は務まらない。 また、中ほどに旗艦を置けば前後から攻撃を受けてしまう。

先頭を切って走れば一番損害が少なく、艦隊の士気も上がる。 先頭艦に攻撃集中だ!>

シュルツの旗艦と米国艦隊旗艦「ワシントン」・ソ連軍旗艦「カーラ」は互いに全火力をぶつけあった。

米国の戦艦は地球艦では重装甲である。

 「カーラ」はワシントンが楯となってくれたので、「ワシントン」の影から反物性ミサイルを敵旗艦に向けて連射した。

「ワシントン」のビーム砲は2連双砲塔上面5基、下面5基、前面3連双砲塔1基、の23門、反物性ミサイルミサイルは前面に6門持っていた。

「カーラ」はビーム砲は持っておらず、近接防衛用のパルスレーザーが光速兵器の主体だったが反物性ミサイルは大型が8基、中型が18門と強力であった。但し、1斉射しか出来なかったが・・・。

 シュルツの乗った旗艦に次々と「ワシントン」のビームが突き刺さった。

しかし、エンジン出力が低下していたためにガミラス艦の重装甲は敗れなかった。

「カーラ」の放ったミサイルは2番艦を見事撃沈した。

近距離で見た、その爆発の仕方はレッチェンスやシュルツ、ガンツの見た事も無い物だった。

**********************************************

 反物性ミサイル、これは反物質と物質の対消滅爆発を利用したミサイルではない。

このミサイルは爆発するのではなく、爆縮するのである。

 ミサイルの信管が起動するとミサイル内部に磁気的に閉じ込められているマイクロ・ブラックホールが
開放され、辺りの装甲板や兵装を吸収して消える特異なミサイルなのだ。

地球軍がこうした特殊な兵器を用いているのはガミラス侵攻以前も地球人同士で宇宙戦を戦っていた経緯が
あったからである。

宇宙船の航行能力が上がり、木星までの旅が短時間で行える様になると各国、各勢力は木星上に
エネルギー・プラントを設けた。

そして、各勢力同士の争いが起こると、この地球ー木星間の交通路は互いの生命線として、必ず交戦の舞台となった。

初めのうちこそレーザー砲や荷電粒子砲、核ミサイルや反物質ミサイルが主力兵器だったが、
これらの爆発型の兵器は多量のデブリを生み、平時の航行の妨げとなった。

そこでデブリを生じにくい、反物性ミサイルや目標を原子レベルで分解するフェーザーが主力兵器となっていった。

**********************************************

 シュルツは地球艦隊に平行戦を挑んだ。

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しかし又も地球艦隊は雁行し、ガミラス艦隊の力を削いだ。
 
機動力では勝っているはずのガミラス艦隊も斜めに後退する地球艦隊の隊列を崩し切れなかった。

だが、旗艦「ワシントン」も損害に耐え切れず爆沈して果てた。

すぐさまソ連軽巡「カーラ」が旗艦の役割を引き継いだ。

「そうだ!地球攻撃の切り札、遊星爆弾を使おう。」レッチェンスは考えた

「ガンツ、遊星爆弾の用意をしろ!」ニヤリとしたガンツは応えた。

「もう、用意は出来ています。閣下!」「もうか?」いぶかしげにガンツを見るレッチェンス。

「遊星爆弾のセットはどうやっても1時間はかかるはず!一体どうやったのだ。ガンツ応えろ!」

 「遊星爆弾の用意をする工程で一番時間が掛るのは放射能をより多く含む小惑星を捜すか、放射能を
まんべんなくまぶす所です。」

「そうかこの作戦に放射能は無用だ。これは一本とられたな!」さすがはレッチェンスの弟子である。

必要ならその兵器の最大特徴を殺してでも使う事を辞さなかった。

 レッチェンスは次に地球艦隊が雁行するであろう空間に遊星爆弾を投じさせた。

加えて、彼は今はソ連の軽巡を旗艦とする米国艦隊に向かって核ミサイルを放った。

艦隊のすぐ直前で砕け散る遊星爆弾・・・。

 但し、これは米国艦隊を助ける為ではなかった。

宇宙空間でも慣性は働いているので砕かれたとはいえ、まだ大型隕石と同じ破壊力を持つかけらが
数百、数万のつぶてとなって米国艦隊を襲った。

フェーザー砲やレーザー砲でそのかけらを打ち砕く米艦隊。

 その間に距離をつめたガミラス艦隊は至近距離から残りの米戦艦隊とソ連の軽巡「カーラ」に向けて
フェーザーを放ち、やっとの思いで全滅させる事が出来た。

**********************************************

シュルツ艦隊が帰還した。

 レッチェンスはシュルツとガンツの二人を自室へ呼んだ。

「シュルツ 今日の敵、どう思った?」

「敵とはいえあの奮戦振りは尊敬に値するものでした。

私ではあんな旧式艦であそこまでは戦えません。」シュルツも相手がレッチェンスだから本音が語れるのだ。

 「うむ、もしかすると闘志はガミラスより勝れているかもしれん。ガンツ少佐は?」

「私はこの侵略に反対です。何を好き好んで14万8000光年も離れているこの星の竜を目覚めさせなければならないのですか?」

「シッ誰かに聞かれたらお前は総統に処刑されるぞ。」

「私はただ、この星の連中には星間国家群になって欲しくないのです。」

「確かにな・・・。」

窓に写る自分の影に何かとてつもないものを目覚めさせようとしている事をレッチェンスは感じていた。

                            時に2191年1月10日、対ガミラス戦は始まったばかりだった。
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by YAMATOSS992 | 2012-03-25 21:00 | 本文 | Comments(2)
 小惑星の群れの中に明らかに人工物と思われる数個の陰があった。

後にガミラスと呼ばれる侵略者の先遣隊であった。

太陽系最外周の軌道はかつてあった第10番惑星の残骸がなす小惑星の集団があちこちにあり
絶好の隠れ場所を提供してくれていた。

彼等はガミラス本星の寿命が長くないため、新しい移住先を求め、銀河系にやって来たのだ。

もともとガミラスが存在する大、小マゼラン雲は過去にガミラス殖民政策で移住した殖民星が
独立した勢力があちこちで敵対しており、その同盟軍との争いがもう何百年も続いていた。

このため、ガミラス大本営は移住先の確保のため、大、小マゼラン雲での戦争は継続するが、
新しい可能性としてマゼラン雲の隣りにある巨大星雲である銀河系への移住を考えたのだ。

巨大な星雲である銀河系は仮に知的生命体が存在したとしてもその密度は低く、
特に外縁部は充分冷却された星系が多いのでガミラスが望む岩石型惑星も多い事が期待された。

漆黒の宇宙空間を割って1つの影が小惑星の陰に潜んだ艦隊のそばにやって来た。

後に地球側から高速巡航型クルーザーと呼ばれる重巡だった。

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このタイプはもともと艦隊前衛で偵察に用いるため、探知・探査装備が勝れているのだ。

また、発見された場合、急速離脱するための加速性能にも勝れている。

ワープして脱出すれば速度は関係ない様に思えるが相手の科学力や技術力が判らない場合、やたらと
目前でワープを行って自らの手の内を明かす事は極力控えるのがガミラスの方針だった。

クルーザーは1隻の戦闘艦に横付けすると通路を伸ばし、数名のヒューマノイドが移乗した。

**********************************************

「それで、その目で見た敵の様子はどうだった? 事実のみを報告せよ。」会議室のテーブル左奥に座った
太陽系派遣軍総司令、レッチェンス提督は会議室に入ってきた2人の部下を鋭い目で見ながら報告を促した。

「ガンツ、提督に詳細にご報告しろ」シュルツ大佐が部下のガンツ少佐に偵察結果の報告を命じた。

ガンツは責任を押し付けられた様な気分でシュルツに非難の目を向けたが、確かに観測員に張り付いて
情報収集をしたのは自分なので姿勢を正すと報告を始めた。

「この太陽系には先遣隊が報告してきた通り、確かに移住可能な岩石惑星が複数存在しております。

もちろん、環境整備は少し必要ですが、大、小マゼラン雲の惑星に移住して戦争状態を継続するよりは
遥かに安全に居住出来ると考えられます。

エネルギー・プラントを設置出来るガス型巨大惑星(木星型惑星)も4つ存在しております。

次にこの星系を偵察した先遣隊が報告してきた原住生命の文明の程度について報告します。

我々が位置するこの太陽系の外縁部には文明の存在を表すものはほとんどありませんでした。 しかし、
第3惑星から第5惑星の間には頻繁な宇宙船による航行が見受けられました。

そして傍受した電波の発信状況からして第3惑星がこの文明の主星だと考えられます。 云々・・・。」

窓のない会議室の船体外側に漂流してきた小ぶりの宇宙塵がぶつかりコトリと音を立てた。

報告を聞き終わったレッチェンスは黙ったままだった。 

会議室に無限とも思われる沈黙が流れた。

「原住生物の文明の程度を知りたいものだな・・・。」レッチェンスは一人言の様に呟いた。

「司令、その事でしたら付け足す報告が御座います。」シュルツが発言を求めた。

眉をしかめつつ、発言を促すレッチェンス提督、ガンツは報告を続けた。

「実は第9番惑星に小規模な前線基地を2つ発見しております。 

ただ、この基地からは大きなエネルギー反応は検出されず、単なる深宇宙観測基地だと判断したので報告が
遅れました。

申し訳有りません。」

「何だと!それでは彼等は恒星間航行能力を持っているかもしれないではないか!」レッチェンスは
2人を怒鳴りつけた。

「ウウム・・・。これはまずいぞ。 全艦隊に無線封鎖と灯火管制を徹底しろ! 

我々の超光速通信を傍受出来るとは思えんが用心に越した事は無い。 それとガンツ!軍事関連の報告は無いか?」

「はあ、今のところ、戦闘艦や戦闘は観測されませんでした。 平和な惑星系・・・という印象を受けました。」

レッチェンスはシュルツとガンツに背を向け、腕組みしながら右手で顎をなで始めた。

これはレッチェンス提督がその頭の中で問題を検討し始めた事を表していた。

こうなると何を言っても聞こえないを知っているシュルツとガンツは無言でガミラス式の敬礼をすると退出して行った。

時は2190年4月10日 地球はまだ異文明の侵略が始まった事に気付いていなかった。

**********************************************

 ガミラス側指揮官レッチェンス提督(大将)、シュルツ大佐、ガンツ少佐の上官、勇猛果敢にして沈着冷静、
戦略家、戦術家としての名声も高い。

現ガミラス総統、デスラーの教育係だった事もあった位である。

後にヤマトと死闘を演じるドメル将軍も彼の一番優秀な弟子だった。

唯一つ欠点があるとすれば正義感が強く、この太陽系の侵略には反対だった事位であろうか。

太陽系には宇宙浸出を果たしたばかりの原住民が居り、ここは彼らの星系だとデスラーにも進言した。

また、太陽系はサンザー系からあまりにも遠く離れており、補給線が延びきってしまうのも反対の理由だった。

しかし、デスラーもガミラスの星としての寿命が長くないのを知っており、次の移住先を確保するのを急いでいたので聞き入れて貰えなかった。
 
他の戦線、ダイヤ戦線、ルビー戦線、サファイア戦線、オメガ戦線の進捗もはかばかしく無かった。

「ボウも大変だな・・・。」レッチェンスは独り言を言った。

太陽系は14万8千光年の彼方ではあるが2番惑星、3番惑星、4番惑星とちょっと手を加えれば
居住可能な惑星を3つも持っており、エネルギー・プラントが設置可能な木星型惑星も4つあるガミラスに
とってはヨダレが垂れんばかりの好条件を備えた星系だったからである。

中間点のバラン星に一大基地を設けて派遣軍の補給を確実な物にしている事を考えて見てもこの侵略戦争の
重要さが解ろうと言うものだ。

自分が何んと言おうと、「ボウ」はこの作戦を推し進めるだろう。

だったらこの自分が老骨に鞭打ってもこの戦線を引き受けよう。

自分の意志とは反対の行動を取らなければならない悲しみが彼の胸を突き抜けていった。

彼は、冥王星(9番惑星)を偵察させ、小規模ではあるが地球人の基地がある事を確認すると発見されない様、
小ワープをくりかえし、木星型惑星である天王星に水素・メタンの採集プラントを作らせた。

本来、木星(5番惑星)か土星(6番惑星)がエネルギー採取には向いていたが、まず、安全にエネルギー補給を確保する事を優先としたのである。

また、ガミラス軍人が幾ら勇猛でもやはり、腹は減る、食料補給も重要だった。

 こちらはバラン星から定期便で届けられる宇宙食と栄養剤でしのがなければならなかったが、ワープの技術を持つガミラスにとっては解決出来ない問題ではなかった。
 
武器・弾薬もバラン星から届けられた。やはり、最優先事項はエネルギーの確保だった。
 
資源の質は悪かったが天王星(7番惑星)にプラントを設け、とりあえずの態勢が整った所で侵略を開始した。

最前線基地の設置候補として選ばれたのは当然、冥王星(9番惑星)であった。

ここには、米ソがそれぞれ観測基地を持ち、足の長い巡航艦で地球との連絡を行っていた。

軍の指揮下にあるとはいえ、どちらも観測が主目的の平和な基地であり、クリスマス等は合同で行っていた位であった。

ガミラスが襲来して来た時、米国基地はあっと言う間に叩かれ、跡形もなかったが、ソ連基地にはたまたま、
タシュケント級重巡「ゴルバチョフ」が帰還するための発進準備を終えており、すぐさま、謎の敵を迎撃した。

 「ゴルバチョフ」が時間を稼いでくれている間にソ連隊は太陽系以外の星系からの侵略が始まった旨、
地球に警告した。
 
しかし、それが精一杯だった。

ファラガット大尉、率いるガミラス宙兵隊が強襲艦で乗り付け、250名からなる、屈強な宙兵を送り込んできたのである。

 ソ連人の大半は学者や研究者であったのでガミラス宙兵には抵抗出来ず全滅した。

また、大型巡航艦「ゴルバチョフ」も艦首の有人部分を破壊され、宇宙の彼方へ流れていった。

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2190年6月5日、地球ではこの日、侵略者来訪のニュースで大混乱が起こっていた。

大半の国は仮想敵国の仕業だと相手を非難するだけだったが冷戦を続けていたにもかかわらず、米ソは違った見方をしていた。

「仮想敵国の小さな観測基地を潰した所で何の意味がある。
 
これは本当に外部からの侵略の証だと思う。」と。

米ソの代表は紛争当事者であるにも係わらず、相手を非難する事は一切しなかった。

また、この時点ではまだ公表されていなかったが、実は国連の最上部は10年前に他星の文明存在の証拠を入手していたのだ。

これも後に判明した事だが大、小マゼラン雲で行われていた戦闘で損傷したガミラス艦が誤ワープで太陽系
近傍に出現、漂流して来たもので、明らかに発見時点の過去、最近まで作動していた痕跡があった。

そこで国連はファースト・コンタクトが最悪だった場合を想定してのシナリオを用意、米ソ艦隊の合同訓練を行っていたのだ。

また、冥王星に早期警戒用の基地を設けた。

その基地が両方とも叩かれたのだ。

異文明の侵略が始まったのはほぼ確実だった。

 そして、米国のニミッツ提督を主将とし、ソ連のマカロフ提督を副将とする、連合艦隊が土星方面に向けて発進していった。

しかし、この艦隊、表向きの任務は侵略者の撃退だったが本当の目的はありとあらゆる情報を出来るだけたくさん取る事だった。

何も解らないまま全力でぶつかるのは蛮勇でしかない。

 だから、この艦隊は力足らずに全滅するとも出来るだけ長く戦って相手の情報を取ることが使命だった。

そのために、米ソとも宙兵隊を一個中隊づつ、引連れていた。

彼らを土星の衛星上に展開させ、戦闘を第三者の目で観測させるのが目的だった。

 「オレは爬虫類がダメなんだ。」ソ連の宙兵隊長、イワノフ中佐は部に言った。

「大丈夫ですよ中佐、冥王星からの最後の通信では、相手は人型との事。 爬虫類では二足歩行は出来ません。」部下が慰めた。

「そんな事は解ってる!じゃあ地球人は空を飛べるか?」イワノフ中佐は部下に言った。

「それは・・・。」と言って部下は黙ってしまった。

「科学の力は何でも可能にする。自分の目で確かめるまではどんな憶測も禁物だ。」彼は自分に言い聞かせる様に言った。

「だから相手が爬虫類だったらと思うと・・・ああっ嫌だ!」いかにも嫌そうに体の前で腕を交差させて震えてみせた。

副官のミハエル少佐は苦笑した。

戦えば誰よりも強いイワノフだったがやはり、人なのだなと、妙に納得させるものがあった。

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土星遠征艦隊、出発の時、遠征軍を指揮するニミッツ大将、マカロフ中将、マッカーサー少将、アイゼンハワー中佐、イワノフ中佐。

留守を守る 欧州連合のシェーア大将、トロンプ中将、カニンガム少将、ビューティー少将、アジア同盟の藤堂中将、李中将、沖田少将、は一同に会していた。

ニミッツ大将とシェーア大将はお互い何も言わずに固く手を握り合った。

沖田が、そして全員が敬礼した。

言葉は一言も交わされ無かった。

送る方の思い、送られる方の思い、どちらも同じだったからである。

                             時に2191年1月1日、まだヤマトは計画すら存在しなかった。
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by YAMATOSS992 | 2012-03-24 21:00 | Comments(3)
 私は熱狂的ヤマト・ファンの一人です。 (ちなみに第1世代です。)

前々からヤマトの世界を自分なりに解釈した物語を綴りたいと野心を燃やしていました。

しかし、グズグズする内に時ばかりが過ぎ去っていきました。

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この間に発表されたヤマト作品はどれも第1作を超えるどころか、退化する一方でした。

私は一ファンとして第1シリーズのリメイクを強く望んでいました。

そして、2010年、ついに実写版ヤマトが公開され、一部不満はあるものの、良くぞやってくれましたと
溜飲をさげました。

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そして今年は宇宙戦艦ヤマト2199としてアニメで完全リメイクされる事になりました。

まだ、我々はPVでしか、その内容を知るべくもありませんが、かなり期待出来そうな作品です。



そうするとヤマトの世界を自分なりに解釈した物語を綴りたいと野心が再び燃え上がってきました。

とは言ってもヤマトの航海を再びなぞっても面白くありません。

そこでガミラスの侵略開始から地球防衛軍が壊滅し、ヤマトが一縷の望みを託されて出撃するまで
描こうと思いました。

どうしてそう思ったかと言うとヤマト・ファクト・ファイルによれば

ガミラスの侵略開始(遊星爆弾による戦略核攻撃開始) 2192年

冥王星会戦で地球防衛軍全滅                 2199年

宇宙戦艦ヤマト出撃                       2199年

おおまかな経過は以上の様ですが、ガミラスの侵略開始から追い詰められた人類が放射能除去装置を
求めてヤマトをイスカンダルへ派遣するまで約7年の月日が流れています。

本当に冥王星会戦の時の様に地球防衛軍が一方的に殲滅されていたのであれば、もっと早くガミラスは
侵略に成功していたはず
です。

すなわち、地球防衛軍は冥王星会戦で負けはしますが、もっと太陽や地球よりの宙域ではその力を存分に
発揮し、ガミラスに打撃を与えていたのではないでしょうか?

また、ヤマトの沖田十三艦長は名艦長として名高い英雄とされていましたが、一度も勝った事の無い男が
英雄扱いされるはずがありません。

また、ヤマトの主砲、ショック・カノンはガミラスに対して充分以上の威力を示しましたが、第1シリーズ第2話で
初めてガミラス高速空母にショック・カノンを使った時、波動エンジンは未起動で補助エンジンによる射撃でした。

すなわち、当時の地球防衛軍のテクノロジーでもガミラスに対抗出来る部分があったと言う事です。

では何故、冥王星会戦で地球防衛軍は壊滅したのか?

これは後で本文で描きますが、一言で言えば、「冥王星は遠かった。」と言う事です。

では順次、地球防衛軍の奮闘を発表して往きます。  お楽しみに!
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by YAMATOSS992 | 2012-03-23 21:00 | 前書 | Comments(2)