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宇宙戦艦ヤマト前史

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宇宙戦艦ヤマト登場前の地球防衛軍の苦闘を描きます。

<   2012年 05月 ( 7 )   > この月の画像一覧

 「技官、あの人は一体、いつまでここに居るつもりでしょう?」 真田は秘書役の女性士官にたずねられたが、それは彼にも解らなかった。

大山造艦技術大佐は真田に見せられた捕獲したガミラス艦のエンジンの解析に掛りっきりになっていたのだ。

それも食事も睡眠もエンジンの脇でとり、1日15時間は働いていたであろう、幾ら、ここが秘密保持が厳密な
軍技術部であってもここまであからさまに調査、解析をやられてはガミラス艦の秘密を技術部が握っているのを
宣伝している様なものだった。

<もう、2週間になるものな・・・。好い加減に一度、打ち切ってくれないものかな、奴だって休暇は1週間だった
はずだぞ?

伊地知参謀長が捜しまわっていなければいいが・・・。> そう考えた真田は大山に一度、解析を中断させる
ためにガミラス艦のエンジンが保管してある室に入っていった。

しかし、そこに大山は居なかった、いや、あれほど散らかっていた室は綺麗に片付いており、誰かが
そのエンジンを解体して分析していた後はなかった。

秘書官にたずねたが、彼女も知らなかった。

<まっ、何時もの事だ。 しかし、自分で退去したって事は奴め、何かを掴んだな・・・。>真田は自分が
歯の立たなかったガミラス艦のエンジンの解析を2週間でやってのけた大山の技術に嫉妬に似た複雑な
感情を持った。


 大山が造艦部に返ってくると部下が任せておいた構造計算データを大山のコンピューターに送って来ていた。

その結果を見ると大山は直ぐに部下達を呼び寄せた。

「悪いが機関出力と機関重量はこの数値で計算しなおしてくれ・・・。」 大山は部下達にぶっきらぼうに言った。

設計変更は何時もの事なので部下達は別に気にしなかったが、その数値を見た部下の一人が不審そうに
たずねた。

「大山技官・・・。この数値、間違っていませんか? 重量が 1/4 で 出力は8倍ですよ。 出力/重量比が
32!なんて信じられません!」

大山は悪戯っぽく笑うと一言言った。 「ガ・ミ・ラ・ス!」

それを聞いた部下達は直ぐに全てを悟った。 そして直ぐに自分が果たすべき仕事に向かって散っていった。

**********************************************

1週間もすると大山の元に計算結果が届き始めた、しかし、それを見た大山は何かに彼が気付いた時の癖が
出た。

髪の毛を掻き毟ってフケを飛ばすのである、当然、彼の机はフケまみれだったが、もう誰もそんな事を気に
するものは居なかった。

彼は腹心の部下である森田技術大尉を呼ぶと「大和」型の主武装を反物性ミサイルからフェーザー砲に
切り替えられないか、相談した。

「フェーザー砲はガミラスに適いませんよ。 やはり、「やまと」の主武装は反物性ミサイルでなければ。」 

森田は否定的だった。

「しかし、森田、反物性ミサイルはいくら資材を積んでも戦闘中は製造が間に合わない、フェーザーなら
エネルギーさえあれば戦闘し続けられるんだ。 幸いエンジンの出力の大幅アップは目処が付いた。 
可能性はないだろうか?」

森田もこの「やまと」型を「箱舟」として使う場合、反物性ミサイルを主武装とする事の非合理性には気が
付いていた。

だが、主武装をフェーザーに変えると言う考えまでは浮かばなかった。

確かにフェーザーに主武装を変更すれば、反物性ミサイルの搭載量を大幅に減らせる、それは何より、装甲を
大幅に増やせる事を意味していた。

沖田提督が言っていた様に、移民の搭載は考えない方針だったので積むべき荷重(ペイ・ロード)は変わらない、だとすれば、装甲を大幅に増やせる事は「やまと」型の生存性を大幅に高める事になるのだ。

森田は大山のコンピューターを借りて新エンジンでのフェーザー砲の出力アップの可能性を計算してみた。

だが、その結果は否定的だった。 ガミラスはどうやって問題を回避しているのか、解らなかったが、地球で
手に入れられる材料でフェーザー砲を作っても今の1.5倍の出力が限界で、それではガミラス戦艦とほぼ
同等の性能にしかならない事が予想された。

しかも、フェーザーの砲としての寿命(命数)は大幅に減る事が解った。

これでは太陽系内での戦闘だけを考え、地球圏での補給や修理が可能であるなら、それでも良かったが、
他星系まで長距離の航行をしなければならない時、この欠点は重大であった。

だが、大山はこの可能性をどうしても捨て切れなかったので、森田に「やまと」型フェーザー主兵装試案を
作る様に命じた。

**********************************************

 実は大山は元々、「箱舟」計画には反対であった。

だから本心ではガミラス冥王星基地を叩ける性能を持った戦艦を2隻造って戦隊を組ませ、ガミラスを
太陽系から追い出す事を夢見ていた。

しかし、そのままではガミラスによって人類や地球の生命が滅ぼされる事に変わりは無かった。

だからこそ、ガミラスを追い出した後、地球を再生させる、それが彼の意思だったのである。

そんな大山の思いを察してか、森田技術大尉の作ってきた「やまと」型フェーザー砲主兵装試案は驚くべきもの
だった。

前に大山が伊地知参謀長に提示した反物性ミサイル主兵装案と基本的な構造・配置は変らなかった。

細長い船体の中央部に艦橋がそびえ、その前部の甲板ににVLS(垂直発射方式)の反物性ミサイルセルが
並ぶ、前後部の軸線方向に多数のミサイル発射管社が覗き、そして艦底は着陸床を兼ねて最大厚の装甲とし、戦闘時は敵にこの装甲板を向け続けつつ、この装甲の陰から敵に攻撃を加える設計であるのは同じだった。

しかし、森田案では今、地球で製造可能な最大口径18インチのフェーザー砲を3連双2段の砲塔にして2組
用意、それを右舷と左舷に振り分けて搭載、最大厚の装甲ごしに発砲出来る様にしていた。

この配置の場合、装甲を敵に向け続ける限り、前後、左右に死角は存在しない。

当然、反物性ミサイルVLS(垂直発射セル)の数は半分以下に抑えられていた。

この設計は欧州連合の装甲艦、「シャルンホルスト」級と同じ思想であったが、「シャルンホルスト」級は
通商破壊艦として常に戦闘をリードする事を前提としてこの思い切った装甲、武装配置を取っているのに
対し、「やまと」型はなるべく戦闘は避けて脱出するのが使命で戦闘はやむなくするものであったため、
どうしても戦闘は敵にリードされがちになるので大山はこの装甲配置極限案には疑問を持った。

前に自分が反物性ミサイル主兵装案でこの装甲配置極限案を使ったのは反物性ミサイルのVLSを極力沢山
積む為の妥協案だったからだ。

その事を森田に話すと森田は言った。「だからこそ、『やまと』型は2隻必要なのです。 互いに不利な方向を
カバーしつつ、航行する、それがこの案の大前提です。 それと、もう一つ、今までに無い装備があります。」

彼がそう言って指差したのは艦首だった。

通常、今までの地球艦は紡錘形をしていて艦首は尖っていた、しかし、森田の設計では艦首の下半分は
今までの地球艦の様に紡錘形の先端をもっていたが、上半分は大きく花が開いた様に拡がっており、
その中央には巨大な穴が開いていた。

「これは超大型荷電粒子砲です。発射口の部分の内径は2mですが、ロート型に広がった誘導部をその後に
持っています。」

「これは・・・、もしや、敵艦隊に包囲されかかった時、血路を開くための決戦兵器か!」 大山は驚いた。

「ええ、荷電粒子砲は地球では戦闘時、デブリを生みやすい兵器としてここ30年くらい使われなくなって
いますが、狭い宙域ではなく、広い宙域で使用する分にはデブリの発生は何の問題もありません。

また、ロート型に拡がった誘導部でビーム方向をコントロールしてやれば艦隊の様に広がった敵にも
対処出来ます。

12門のフェーザー砲とあわせれば、前方方向の破壊力はガミラス艦を上回ると考えられます。

しかも、2隻同時の攻撃が可能ですから、この戦隊の前に立ち塞がる物はたとえそれがガミラス艦隊と
いえども原子の雲にかえるでしょう。」

大山は森田の案は勝れていると思ったが、既に2隻の戦隊行動を前提としている点に不安を持った。

また、フェーザー砲の妙数が少ない点も未解決のままだった。

総司令部ではたぶん、2隻の戦隊運用か、1隻づつ反対方向に脱出させ、生存率を高める方を選ぶか、
まだ決めかねているだろう。

設計で造艦部が主導権を握る事も考えたが、大山はそうした政治に係わる決断をするのは苦手だった。

彼はもう一人の腹心、荒川技術少佐を呼び出した。

**********************************************

 真田は後から大山が「これだけ解った。」と言って送ってきた、ガミラスのエンジン解析結果みていた。

さすがの大山もワープの原理や機構までは解析出来なかった様だ、彼はエンジンを小型・大出力化する事を
重点に解析していったのだ。

それが今の「箱舟」計画にまず必要とされる技術だったからだ。

だが、その報告書の中に真田は気になる箇所を見つけた、大山は最初、当然、ワープの秘密を探ろうと
このエンジンの解析を始めたはずだった。

しかし、その報告書の中ではこのエンジンの機構には地球で解っている超光速ワープ理論で理解出来ない
部分はほとんどないと言っていたのだ。

確かに真田が知っている理論物理の分野でもワープは可能とされ、その技術開発をしている内にガミラスの
侵略が始まり、防戦一方の地球軍にはそんな研究をのんびりやっている暇はなかっただけだった。

ただし、このエンジンの持っている理論上のワープ可能距離は数万キロが限度でそれ以上はどう見ても
無理だと大山は結論付けていた。

しかし、現実にガミラスは宇宙の深遠を渡って侵略に来ている、破壊されたガミラス艦から割り出された
航続期間はせいぜい数ヶ月だった。

この矛盾を理解する手段は地球には無かった。

これはガミラス帝国の構造体質に起因するものだったからである。

ガミラスはその歴史上、記録が残る時代から宇宙飛行を行い、近隣の星系に侵略の手を伸ばしていた。

そして、降伏した星を自らの内に取り込む融和政策を採っていた。

しかし、征服された側が何時までも大人しくしているとは限らず、反乱も絶えないのが実情だった。

そんな、いつ裏切るか、解らない連中に強力な決戦兵器を渡せないのは当然だったが、使用させる艦艇にも
制約を設ける必要があった。

反乱軍に駆逐型デストロイヤーはおろか駆逐型ミサイル艦の様な小船でも奪われて束になって襲ってこられ
てはたまったものではない。

そこでガミラスは大型戦艦未満の駆逐型とよばれる汎用戦闘艦は全て1隻では長距離ワープが出来ない様に
設計していたのだ。

1隻でも小ワープは出来るからワープの出来る艦が得意な一撃離脱戦法(ヒット・エンド・ラン)は使える。

しかし、少数の脱走者が1隻の汎用戦闘艦を乗っ取っても遠くに行く前に大ワープの出来る追跡艦隊に
追いつかれ始末されるという訳である。

ガミラスが殆ど単艦で行動せず、常に艦隊を組んで行動しているのには敵に対する威圧の効果もあったが、
こうした個艦能力の制約という面が運用者の心理的な負担となるため、彼等がそれを嫌ったためだとも
言えた。

真田はそんな事は知るよしもなかったが、理論的には可能だが、技術的には無理だという、現実が今度は
彼の技術者魂に火を付けた。

彼は制服の上着を脱ぐと、ガミラス・エンジンが保管してある室に向かって飛び出していった。


                                                     ヤマト発進まで787日
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by YAMATOSS992 | 2012-05-31 21:00 | 本文 | Comments(0)
シュルツは今月の遊星爆弾命中成績表を見て渋い顔をした。

「ガンツ、地球側の遊星爆弾迎撃施設や迎撃基地を殆ど叩いたと言うのに60%の命中率だというのは
どういう訳だ。 命中率が悪すぎるぞ! 現場がたるんどるのではないか?」

「司令、今、遊星爆弾を発射している現場の技術は芸術的なものに育っています。

それこそ、フェーザー砲で隣りの敵艦を撃ちぬく位の精度です。

命中率が悪いのは悔しいですが、地球側の迎撃が的確だからです。

浮遊大陸哨戒基地から発進したパトロール艇が得た情報によると地球側は衛星軌道上に新型駆逐艦を
常駐させ、遊星爆弾の飛来とともに行動、迎撃している様子が観測されています。

ですから、この軌道上の駆逐艦群を叩く必要があると私は思います。」ガンツは再び地球圏の奥深く、
艦隊を送り込む作戦を提示した。

「確かに、この駆逐艦隊は排除する必要があるな。 だが、前の様にこの艦隊は地球本土に基地を
持っているのではないか?

だとしたら、その基地も叩かないと結局、いつまでもイタチゴッコでケリはつかないぞ!」

ガンツはゴクリと唾を飲み込んだ、敵本星に対する攻撃、それもまだ、戦力を大きく残している相手に
対する攻撃だ。

こちらもある程度の損害を覚悟しなくてはならない。

木星会戦並の戦闘規模になる事が予想された。

ガミラス艦隊は再建されてはいたが、シュルツの直接上司のゲールは今度、艦隊を大きく傷つけたら
シュルツやガンツを許さないであろう。

土星会戦、木星会戦、地球ー木星間の通商破壊戦、土星ー冥王星間の交通保護戦、どれも少なからず
艦隊に損害をだしたが指揮していたのは生粋のガミラス人であり、名将の誉れ高い、レッチェンス大将だった
から許された損害だったのだ。

もし、仮にゲールが許してもガミラス大本営は殖民星であり、被征服星であるザルツ出身の兵で固められた
冥王星前線基地そのものを無能者の集まり、サボタージュをする反逆者としてシュルツやガンツのみならず、
1兵卒にいたるまで処分する恐れが高かった。

「何を青い顔をしている。 お前は今はガミラス軍人だが、誇り高いザルツ軍人でもあるのだぞ! 
ガミラス人みたいな顔をするな」 シュルツはガンツをからかった。

「ですが、司令、敵の本拠を突くのですぞ!こちらの損害もただでは済みません!」ガンツは焦っていた。

「果たしてそうかな?」シュルツは机に両肘をついて掌を顔の前で組んだ姿勢のまま言った。

「ガンツ、お前がガミラス本星、大本営に勤めていたとして、もし、いきなり、少数の艦載機による攻撃が
あったらどうする?」 そう言うとシュルツは悪戯っぽく微笑した。

ガンツは質問の意味が解からず当惑したがそれでも精一杯の知恵を絞って答えた。

「防空隊に迎撃を命じますが・・・。」

「それだけか?」 シュルツがたたみ掛けるとガンツは慌てて付け加えた。

「艦載機の母艦を捜させ、それも排除、撃沈します。」

シュルツはウンウンと微笑しながら頷いた。

「では、話を変えて、もし、攻撃されたのがこの冥王星前線基地だったら、どうする?」

「この基地は浮遊大陸哨戒基地から発進したパトロール艇が木星軌道から土星軌道を固めています。

更には、深宇宙方面にも警戒艦を常備配置しているのでその様な奇襲を受ける事はありません。

充分な時間を持って艦隊で迎撃する事が出来ます。」

ガンツは何を当たり前の事を今更聞くのかとシュルツの真意を図りかねた。

「そうだろう、意外と心臓部の警戒は薄いものだよ。  奇襲があってから対応する羽目になる、これは
大ガミラスとて変わらん、

たぶん、今までの戦いぶりからして地球軍も前線にいる部隊は勇猛果敢だが、戦線後部にいる連中は
その場、その場の対応しか出来まい。」

シュルツがそう思ったのは火星の地球軍秘密基地を攻撃した時だった。

自分達が攻撃しているのは地球を狙う遊星爆弾だという、固定観念があり、遊星爆弾で自分達が
攻撃された時、その攻撃の意味が判らず、何も出来ないまま、遊星爆弾の集中爆撃を受けて火星秘密基地は
崩壊したのだ。

「では司令、今回の作戦、もう腹案があるのですね。」ガンツは今までとはうって変わったシュルツの積極的な
対応ぶりに何があったのだろうと訝りながらも喜びを隠し切れなかった。

「うん、それでだな・・・。」シュルツはガンツに作戦計画の腹案を話し始めた。

そして、新作戦の準備として、再び戦略偵察の任をおびて高速宙母が2隻、発進して行った。

**********************************************

 高速宙母は地球に接近するにあたり、ワープを最大限に用いた。

幸いな事に宇宙空間を航行する艦艇と違って天体は規則正しい法則に従って太陽の周りを自転しながら、
公転している。

その未来位置を計算するのは容易だった。

だから、2隻の高速宙母は1隻は北極上空へ、もう1隻は南極上空へワープ・アウトした。

木星会戦の時のガンツ隊の様な大気圏上層ギリギリを狙う、危ないワープではなく、大気圏から充分に離れた
余裕を持ったワープ・アウトだったが、それでも地球の早期警戒網は2隻の宙母を探知出来なかった。

シュルツの言うとおり、地球の目は冥王星方向からくる遊星爆弾に向いており、自らの早期警戒網の
ど真ん中にガミラス艦がワープ・アウトする事態など全く、考慮していないのは明らかであった。

古代守に「ガミラス艦はワープ出来る事を忘れてはならない・・・。」と注意した早期警戒艦「たかお」の艦長、
永倉大佐ですら、ガミラス艦は地球の早期警戒網の外にワープ・アウトしておもむろに警戒網を潜って
潜入すると言う固定概念を持っていた。

その結果、やすやすと地球の両極の上空に専位した2隻のガミラス宙母はその艦載機、42機を放った。

ガミラス高速宙母の艦載機の定数は1隻あたり、攻撃機、20機、偵察機1機であったが、今回はその艦載機の
全てを偵察機にして短時間で地球の地表をくまなく偵察する計画であった。
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しかし、いくら不意を突かれたとはいえ、地表の上空を多数のガミラス機に蹂躙されたままでいるのは
地球防空隊にとって耐え難い事であり、緊密な連携は出来ないものの、各地で防空隊がスクランブルを
かけてガミラス偵察機の迎撃に上がってきた。

だが、その時点でガミラス偵察機の任務は殆ど終わっており、偵察結果も自らの母艦にデータ送信した後で
あった。

ガミラス宙母はデータを回収し終わると、地球防空隊に追いかけ廻される偵察機を見捨てて離脱にかかった。

偵察機の機上ではガミラス・パイロット達が皆、一律に離脱する宙母の方を向いて敬礼していた。

そう、彼等は地球防空隊に追い掛け回されているのではなく、防空隊を宙母に向かわせない様、引き摺りまし
ていたのだ。

離脱する宙母の艦長の目には涙が浮かんでいた、これは全て予定の行動だったのである。

宙母2隻は帰りがけの駄賃として月の周りを1周して最後の偵察データを取るとすぐさま、ワープに入り、
地球圏を脱出していった。

そして、宙母が月軌道に達した頃を見計らって生き残っていたガミラス偵察機は一斉に自爆した。

これは地球人に偵察機が有人機ではなく、無人機であると思わせ、偵察に来たのが宙母で編成された
機動部隊である事を隠蔽するためであった。

ガミラスにとって有人航空兵力の有用性が前2回の戦闘で明らかになったための隠蔽工作であったが、
折角育てた有能なパイロットを犠牲にする今回の様な作戦はさすがにガミラスでも問題視され、偵察機を
無人化する方向で新たなる開発が行われる事となった。

**********************************************

 ガミラス冥王星前線基地は木星会戦の時の様な喧騒を再び迎えていた。

42人の勇士の命と引き換えに得られた地球本土及び月面上の遊星爆弾迎撃設備や駆逐宇宙艦の
発進基地を叩くのだ。

ただし、今回の出撃の主役は駆逐型ミサイル艦であった。

駆逐型デストロイヤーは艦隊戦では大きな力を発揮するが、こと地表の拠点攻撃などにはかえって
駆逐型ミサイル艦の方が向く。

もちろん、駆逐型デストロイヤーも作戦には参加するが、あくまでも主役は駆逐型ミサイル艦であり、
駆逐型デストロイヤーはその支援、といえば聞こえは良いが、とどのつまり護衛をする事になってしまった
のである。

これは普段の艦隊戦の時とは立場が逆転しており、護衛艦を戦艦で護衛する様なものであった。

駆逐型デストロイヤーの艦長達は面白くなかったので士官食堂で酒を飲んでくだを巻いていた。

そこにガンツ中佐が入って来た。

酒をのんでいた連中はガンツの姿を見つけるとその周りを取り囲んで愚痴を言った。

最初は受け流して自分の食事をしていたガンツであったが、一人の艦長が「あんな小船共に何が出来る!」と
言った所で立ち上がり、その男の顔をしたたかに殴った。

たちまち、男は吹っ飛び、机や椅子をなぎ倒して倒れた。

「やりやがったな!」くだを巻いていた男達は一斉にガンツに飛びかかろうとした。

「ついてこい!」ガンツは普段、柔和な、場合によっては頼りなくさえ見える風采の上がらない男であったが、
今、男達の前にスックと立った姿はそんな雰囲気は微塵も無い、叩き上げた軍人の姿だった。

ガンツはそれ以上、何も言わず、歩いてゆくと、エア・ロックの前で簡易宇宙服を身に着け始めた。

艦長達が躊躇しているとお前たちも付けろと無言でうながした。

一行がエア・ロックを出て基地の片隅に行くとそこは墓地だった。

今までの戦闘で戦死した勇士を葬っているところだ、もっとも、戦場は宇宙なので遺体も遺品もなく、
ただ名前だけがそっけない金属板に刻まれているだけだったが・・・。

ガンツはその巨大な金属の墓碑ではなく、その隣りの小さい墓碑の前に止まると姿勢を正し、最敬礼をした。

一人の艦長がその墓碑に書かれている言葉を読んで、「あっ!」と声を上げた。

そこには、42名ものガミラス兵の名前とその所属が高速宙母航空隊である事が記されていた。

それは、帰還を期さない今回の偵察任務に殉じたパイロット達の墓碑であった。

作戦行動の準備で基地中が喧騒の中にある時、この様な墓碑を作っている暇などあろうはずがない・・・。

「そうだ、これは彼等が自分達で残していったものだ。 お前達も艦長を任されている身だろう・・・。
 これに恥じない行動をとれ!」

ガンツは一喝するとそのまま後も見ずに基地の屋内に戻っていった。

ヘルメットは彼の息で曇り気味であり、中は良くみえなかったが、ガンツの頬には確かに涙の跡があった。

**********************************************

 木星空域には撃沈された早期警戒艦「シドニー」に変わって、欧州連合の早期警戒艦「ドーセットシャー」が
任務についていた。

「ガミラスめ、調子に乗りやがって、遊星爆弾の投射数を増やしてきやがった。」情報士官が独り言の様に
いった。

「どうした、ジョー、また遊星爆弾を探知したのか?」 艦長が問いただした。

「ええ、今までの最大投射数を遥かに越えます。 今のところ約20発ですが、次々と新しい遊星爆弾が観測出来ます。

途切れる様子はありません。 これは地球圏にいる突撃型駆逐宇宙艦のみならず、艦隊型でも、さらに
旧式な艦でも総動員して迎撃しないと間に合わないかもしれません。」

「何! それはまずい、直ぐに防衛本部へ警報とデータを送れ!」 艦長がそう命令し、送信が終わるのを
待っていた者がいた。

浮遊大陸哨戒基地からやって来ていたパトロール艇である。

パトロール艇の艇長は「ドーセットシャー」の警報とデータ発信が終わるのを待って早期警戒艦でも
探知出来ない遥か遠方で待機していた地球圏奇襲艦隊に出撃開始の合図を送った。

次の瞬間、「ドーセットシャー」はガミラス艦隊の只中にいた。

早期警戒艦「ドーセットシャー」は元々、重巡航艦であり、連双フェーザー砲塔を4基持っていたが、
早期警戒艦に改装するにあたり砲塔2基を降ろして、探知設備設備を増強していた。

しかし、ワープの出来るガミラス艦は「ドーセットシャー」が探知出来ない遠方からパトロール艇に誘導されて
ワープ・アウトすると同時にフェーザー砲の槍ぶすまを「ドーセットシャー」に浴びせた。

ただでさえ、地球艦はガミラス艦のフェーザー攻撃に弱い、しかも古いタイプの巡航艦はいかに重巡と言えども
戦艦より大幅に防御力が劣る。

たちまち、「ドーセットシャー」の戦闘能力は奪われた。

しかし、丁度、「ドーセットシャー」の第1砲塔の真前に駆逐型ミサイル艦が1隻、差し掛かってしまった。

駆逐型ミサイル艦の装甲は薄い、地球の弱いフェーザー砲でも撃ち向ける位であった。

「ドーセットシャー」の生き残り砲塔員はその幸運に感謝しつつ、最後の力を振り絞って駆逐型ミサイル艦に
1撃を浴びせた。

だが、その時、ミサイル艦を護衛していた、駆逐型デストロイヤーが1隻、2隻の間に割り込んだ。

「ドーセットシャー」と駆逐型デストロイヤーは本当に舷側を擦るほど接近していた。

ここまで接近すると、いくら弱いといってもフェーザー砲である、駆逐型デトロイヤーは装甲を打ち抜かれて
しまった。

ただ、その駆逐型デストロイヤーにとって幸運だったのは打ち抜かれたのが居住区だった事で、開いた穴は
直ぐに隔壁を閉鎖する事でそれ以上のダメージを負う事はなかった。

助かった駆逐型ミサイル艦の艦長は直ぐに自艦を身を挺して救ってくれた、駆逐型デストロイヤーに感謝の
通信を送った。

「なあに、何時もは君等に守ってもらっている身だ。 たまには立場が逆転する事もあるさ。」

駆逐型デストロイヤーの艦長は笑って応えたが、その頬にはガミラス式の絆創膏が貼られていた。

**********************************************

シュルツの予想通り、地球本土の防空はザルであった。

今、地球側の迎撃部隊は全て冥王星方面から飛来する30数個の遊星爆弾に注意を奪われ、月軌道内、
地球絶対防衛圏内へワープ・アウトしたガミラス艦隊に気が付かなかった。

ガミラス艦隊の内、駆逐型ミサイル艦40隻が地球本土に、10隻が月面に攻撃に向かった。

また、駆逐型ミサイル艦を護衛してきた5隻の駆逐型デストロイヤーは遊星爆弾迎撃に向かって待機していた
駆逐宇宙艦隊に背後から襲い掛かり、それを全滅させると地球衛星軌道上にある人工構築物を手当たり
次第に破壊した。

1時間後、地球の表面に露出していた宇宙船基地は一つ残らず破壊されていた。

月面の裏に設けられていた駆逐宇宙艦基地も同様だった。

そして、最後の仕上げは囮として発射された遊星爆弾30数個であった。

この遊星爆弾群は地球の迎撃駆逐宇宙艦隊を誘き出すのが主任務であったが、迎撃されなければ
地球表面地下に設けられた地下ドックの類を爆撃する様、プログラミングされていた、辛うじて残っていた
地下ドックや基地も破壊しつくし、このガミラスの制宙作戦(ファイター・スイープ)はまるで軍事教本に出て来る
課題の様に完璧に行われたのだった。

だが、そんなガミラスも大きな見落としをしていた。

それは月の表側(地球から見て)にあった地下工場施設を見落とし、破壊し損ねた事である。

多分、ガミラスにしてみれば、常に外側を向いている月の裏側(地球から見て)こそ、艦隊基地であり、
地球圏防衛の要だと考えたのだろう、攻撃前の戦略偵察の時、一応、月の表も偵察していたのだが、
艦隊基地がないと解ると、攻撃目標から外してしまったのだ。

また、月の裏側には廃艦駐機場があり、それがいかにも艦隊基地に所属する大駐機場に見えたのかもしれ
ない。

ともあれ、地球は何もかも失うと言う最大の悲劇だけは避ける事が出来たのだった。



                                                     ヤマト発信まで833日
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by YAMATOSS992 | 2012-05-30 21:00 | Comments(0)
 その部屋には4人の男が机を挟んで対峙していた。

どれ位の時間が流れたであろうか、それでも男達は誰一人、口を開こうとしなかった。

かすかにミシッという音がして男達の上にホコリが舞い落ちてきた。

「また、一発命中したか・・・。」一人の男が重い口を開いた。

どこか比較的近い場所に遊星爆弾が命中したのだ。

地球軍は絶対防衛線を月軌道に引き、突撃駆逐宇宙艦による迎撃を行って効果をあげていたが、火星軌道の
防衛システムを失って以来、ガミラスの遊星爆弾はたまにではあるが地球本土を犯し始めていた。

「今のままではいずれ人類は絶滅する・・・、判ってくれ!大山! 『箱舟』は最後の希望なのだ!」もう一人、
別の男も加勢した。

「だからと言って、今、計画中の新型戦艦『やまと』、『むさし』の計画をやめて地球脱出のための・・・
『箱舟』とやらに計画変更するのは俺は反対です。」

「いいですか、 『箱舟』は移民のための船だ。 人員や各種動植物のDNAデータを出来るだけ多く搭載する
必要がある。

 また、今の状況では『箱舟』を衛星軌道上で建造するとガミラスに発見されて攻撃を受ける可能性が
高くなります。

従って地球の地下ドックで秘密裡に建造する必要がありますが、そうすると重力があるから無闇に巨大な船は
作れない。

当然、搭載力には大きな制限が出て来る、目的の荷物があるからそんなに多くの武装を積むわけには
いかないのです。

そして一番肝心なのは我々がまだ自分の太陽系すら出た事がない事です。

いいですか、ガミラスはワープと思われる超光速航行技術を持っているんですよ!

『箱舟』は有重力下で建造可能な最大の船になるでしょうから、地球を発進すれば必ずガミラスに発見され
ます。

陽動作戦を行って隠蔽する事も不可能ではないでしょうが、いずれ発見されるのは時間の問題です。

そして、一度発見されたら、超光速航行の出来ない『箱舟』は間断のないガミラスの攻撃に晒されます。

いくら強力な武装と防御力を持っていても撃沈されるのは時間の問題です。」

大山と呼ばれた男は心の奥にしまっていた思いのたけをぶちまけた。

そして、遠い目をして天井を見上げた。

「そう、この『箱舟』は1949年にそこが死地と判っていながら沖縄に出撃した日本海軍の超戦艦『大和』と
そっくり同じ運命を辿るの事でしょう。

人類にとっては僅か、数週間、寿命が延びるだけなのです。」

「貴様!司令部を馬鹿にするのか!」伊地知参謀長が大山技術大佐を睨みつけた。

「そんなつもりはありませんよ、ただ、俺は地球の事は地球のなかで納めるべきだと思うのです。」

「どういう事かね? 大山君?」先程、一番最初に口を開いた男、藤堂平九郎長官が聞いた。

「地球を脱出した人類は何処にいくのですか? ・・・ まぁ今は決まっていなくても何処か別の星系で居住
出来る惑星を捜して移民するのでしょう・・・。 ですが、それってガミラスのやっている事と基本的には
同じですよね。」

「全く地球と無関係な生態系に地球の生態系を無理やり割り込ませるわけですから、軍事力を使わなくても
これは立派な侵略です。」

「なんという事を! 貴様! 軍法会議にかけるぞ!」再び伊地知参謀長が吼えた。

「伊地知君、静かに。大山君、君の言う事はもっともだ。 だが、大山君、我々、人類はいや地球の生命は
何んとしてでも生き残らなければならない、これは地球に生命が発生して以来、そのDNAに刻み込まれた
至上命令なのだ。

我々、今生きている人類は甘んじて『侵略者』の汚名を着よう、それが我々、今を生きる者の責任なのだ。」
藤堂は強い意志を持って大山俊郎技術大佐を見詰めた。

藤堂は思った、<ガミラスが遊星爆弾の示威攻撃を仕掛けて来た時、地球に『絶滅か、奴隷化か』を
要求してきた。

あの時、『奴隷化』を受け入れていたなら、今の苦境は無かったかもしれない・・・。 しかし、人類のプライドに
掛けて『奴隷化』などと言う要求は呑めるものでは無かった。

その結果、今度は人類が『侵略者』になる・・・、本当に人類は抗争好きな宇宙の癌なのかもしれない・・・。>

いままで黙って話を聞いていたもう一人の男、沖田十三が口を開いた。

「大山君、今、君が計画している新戦艦は『やまと』、『むさし』の2隻だが、『箱舟』計画に切り替えるとしたら
どうするのかね?」

「それは『やまと』一本に絞ります。超遠距離、超長時間の旅を前提とした設計が必要になってきますから
今の『やまと』、『むさし』の建造資材を全部1隻に絞っても間に合うかどうか、判りませんから・・・。」 大山は
当然の如く応えた。

しかし、沖田は驚くべき提案を出した。

「それは目一杯の移住民と各種生物のDNAを運ぶと仮定した時の場合じゃろう、移住民もDNAだけにして
乗組員はその船を維持、ガミラスと戦闘出来るだけの最少人数に絞ったら、2隻作れるのではないかね。」

「沖田君!君は今生きている人々を見捨てるというのかね!」伊地知参謀長はど怒髪天を突く勢いで怒った。

沖田は静かに言った。 「誰を選ぶのかね?」 「えっ・・・。」伊地知は言葉に詰まった。

今の地球の実力では重力下で建造可能な宇宙船では武装なしで移住者だけを運ぶとしても最大限に
見積もっても1000人の人間を運ぶのがやっとだった。

それが、ガミラスと戦闘しながら航行するとなると更に人員は絞られてくる、冷凍睡眠等の技術を使っても
武器やミサイル等の消耗兵器の製造設備やその資材の格納場所などを考えると一度に運べるに人数は
約300人が限界だった。

「全世界から、たった300人の人間を選ぶ事など出来はしない。 むしろ、この事を発表しただけで地球陣営は
内部分裂する。」

伊地知参謀長は言葉に詰まった。

<確かに、これは一時の感情で処理できる問題ではない・・・。>石頭で通った伊地知であったが、流石に
沖田の言い分はもっともだと思った。

「しかし、『箱舟』を2隻作るというのはどういう意味があるのかね。」藤堂長官が沖田に尋ねた。

「戦艦は1隻より同型艦がもう1隻あった方が色々と運用に幅が出てくるのです。」

沖田はまだ戦闘艦が海の上を走っていた時代の例を引いた。

日本の明治時代、日露戦争の山場、日本海海戦に日本海軍が大勝した事の一環に戦艦6隻、
装甲巡洋艦6隻をそれぞれ準同型艦として性能を揃えた事があった。

性能が揃った艦隊は提督の意志のもと、まるで1隻の船の様に行動する事を可能とする、対して
ロシア海軍の戦艦隊は性能がバラバラで統一した指揮をするのには全く向いていなかった。

また、海軍軍縮条約が大海軍国の間で結ばれようとした時、日本海軍は世界初の16インチ(正41センチ)砲、
戦艦「長門」と同型艦「陸奥」の保有を強行に主張したが列強は連携して「陸奥」が未製であるとして、
廃棄を迫った。

だが、日本はアメリカや英国に新設計の正16インチ(40.6センチ)砲戦艦の建造を認めてまで戦艦「陸奥」を
保有する事に拘った。

これはいかに強力な戦艦でも1隻では本来の設計値以上の性能は出せないが、同型艦が2隻いてその2隻が
旨く連携して作戦する時、設計には出ない効果をあげる事が知られていたからだ。

今度の場合、戦闘を目的とした航行ではないが、2隻でお互いをカバーする様な戦術を用いればかなり
生存性を増す事が出来る。

また、1隻づつ、全く別の方向に脱出すれば、ガミラスの攻撃力を半分にする効果があると考えられるのだ。

「大山君、この方向で作業を進めてくれんかね。」沖田は大山の方に強力な意志を秘めた視線を向けた。

下を向き両手を直角に挙げて負けたという意志表示をした大山はそれでも言った。

「脱出戦艦『やまと』と『むさし』を設計するのは承知しました。  

但し、条件があります。」

”条件”という言葉に伊地知だけでなく、沖田も藤堂も訝しげな表情になった。

しかし、大山は吹っ切れた顔でその”条件”を口にした。

「俺はどんな形であれ、脱出船には乗りません。 地球に残って最後まで生存の努力をします。 

それで良ければ、この計画に参加しましょう。」

「それは困る、新しい船だ、どんな不具合が起こるか判らない! 最上級の技術者が乗っていなければ
心配だ。」伊地知参謀長が再び意義を唱えた。

しかし、沖田はそれを抑えて大山の方に向き直って言った。

「良く言った。それが男の言葉だ。 伊地知君、設計する事とそれを運用しつつ、手直しする事はまた別の
技術だ。 

それは修理の分野の仕事と考えてくれたまえ。 いいですな、長官。」

藤堂も無言で頷いたが、次に発した言葉は少々、大山を腐らせた。

「それでは、この『箱舟』計画の実務責任者は伊地知参謀長とする。いいね。沖田君、大山君、」

「はっ、謹んでお受けします。」伊地知参謀長がシャチホコばって敬礼した。

唖然とする大山の肩を沖田は苦笑いしながらポンと叩いた。

**********************************************

 新型戦艦「やまと」型はガミラスとの最初の戦闘であった土星会戦の戦訓を基に設計された初めての戦艦
だった。

地球軍の艦艇はガミラス艦に比べると小型でその分、機関の出力が劣り、当然の結果として光速兵器、
ビーム砲やフェーザー砲の出力が劣り、より接近しなければ効果を挙げる事が出来なかった。

また、装甲もガミラスの方が勝れており、ガミラス艦の残骸を調査した結果、装甲の厚さはむしろ、
ガミラス艦の方が薄いくらいであった。

敵のビームがこちらの装甲をブスブス貫けるのに、こちらのビームは相手の装甲に弾き返され、相手の装甲を
貫けるまで接近するのは至難の業だという事が一番の問題であったのだ。

ただし、ミサイルは地球側が勝れており、単なるエネルギー供給式の爆発型ではなく、小型ブラック・ホールを
利用した爆縮型で相手の装甲の素材が何であろうと小型ブラック・ホールのシュヴァルツ・シルト半径内に
入った物は全て吸収、穴を開けてしまう特性はガミラスも知らないものであった。

このミサイルは「反物性ミサイル」と呼ばれ、ガミラス艦との戦闘が予想される艦艇には必ず積まれていた。

当然、新型戦艦「やまと」型もその武装は大半「反物性ミサイル」であり、効果の薄いフェーザー砲、
レーザー砲は小口径にして敵ミサイルなどを防ぐ、近接防御火器として装備する計画であった。

大山造艦技官は悩んでいた。

元々、「やまと」型は冥王星前線基地を攻撃するために設計していた艦である。

その航行期間は長くても数ヶ月、短ければ数週間であった。

だからこそ、主武装を反物性ミサイルにして艦内の容積の殆どをその格納に使えたのである。

しかし、今度はいくらDNAの情報データだとはいえ膨大な量のペイロードが加わる事になった。

当然、ミサイルの搭載量は減る、しかし、反対に航行期間は年単位、ないしは数百年単位になるかもしれな
かった。

頭を抱える大山の基に古くからの因縁がある男、真田志郎が訪ねてきた。

真田は大山の悩みを聞くと大山を造船部門の部屋から連れ出した。

そして司令部の会議室の一つに大山を連れ込むとその部屋の監視システムを切った。

これは藤堂司令長官や沖田提督も知らないパス・ワードを知っていたから出来た事だ。

彼は仕事柄、司令部はおろか、世界中のネットワークを管理するサーバー・コンピューターは全てハッキング
して自由に情報が取れる様にしていたのだ。

「お前、これって悪くすると反逆罪だぞ・・・」大山は呆れたが、そうまでして真田が自分に伝えようとしている事の
重要さが良く判った。

「大山、俺達は今までの戦闘で撃破されたガミラスの兵器の調査、分析を行ってきた。

だが、戦闘場所は宇宙、中々、重要な資料は得られなかった。

しかし、ついに殆ど無償のガミラス艦のエンジンを手に入れたんだ。」

大山の背中にドーンとカミナリが走った。

「そ、それで解析は出来たのか・・・。」そう言うのがやっとだった。

ガミラス艦のワープの秘密が解かる! そう考えただけですぐさま、現場へ飛んでいって確認したくてしょうが
なくなっていた。

「残念まがら、俺たちのレベルでは理解出来ない部分が沢山ある、だが、もしかしたらお前ならもう少し
突っ込んだ理解が出来るのではないかと考え、今日は相談に来たんだ。」真田は大山の目をのぞきこんだ。

彼の目はもはや真田の顔を見ていなかった、たぶん捕獲したガミラス艦のエンジンを想像してそれを
見ているのだろうと思った。

**********************************************

 「伊地知提督、基本設計が終了しましたので、1週間ほど休暇を頂きます。」大山は伊地知参謀長に報告
した。

「そうか、そうか、とうとう出来たか、で、わしと家族が乗れる様に特別な配慮をしてくれたろうな。」
やはり伊地知は卑怯な男だった。

しかし、大山はそれを不快に思ったがそれをおくびにも出さず言った。

「それはもちろん、この任務をお受けした時の最初のお約束です。配慮してありますから御心配なく。」

だが、そんな細かい設計が基本設計の段階で盛り込めるものではないのを知っている大山は心の中で
ペロリと舌を出していた。

「基本設計の説明をします。」大山がそう言ってスクリーンに「やまと」の基本図面を写しだした。

「細かい説明は良い。 わしと家族の席は何処に用意してあるんだ。」伊地知は説明をせかした。

「ここです。」大山はいたずら心を起こして艦の中央部、艦橋の構築物が積み重なった最上部の艦長室を指差
した。


「ここは艦長室ではないのか?それにこんな艦から飛び出した所、敵に狙われたら一発でお仕舞いでは
ないか!」伊地知は大山を睨みつけた。

「参謀長、藤堂長官も沖田提督も『箱舟』には乗らないとおっしゃっています。となると、この艦に乗る者で
最高官位を持っているのはあなただ。 艦長はあなたがなるのが当然です。

また、『やまと』は目的の星を見つけられたら着陸しなければなりません。だから艦底部はその他の部分より
ずっと分厚くしなければ艦が持ちません。

しかし、着陸のためだけに分厚い装甲を持つのは非合理的です。 すなわちこの一番厚い艦底部の装甲を
メインの装甲と考え、敵が来る方向に常に向け続ける様にすれば、非常に良い防御装甲になります。

こちらの攻撃兵器は反物性ミサイルですから別に敵に直接狙いを付けなくても装甲の陰から誘導してやれば
充分、用を果たします。

そして、敵に艦底部を向けている時、艦橋構造物の最先端にある艦長室は敵から一番離れた安全な位置に
なるのです。」

大山はいかにももっともらしい事を言ったがその言葉の大部分は嘘ではなかった。

現に欧州連合の装甲艦「シャルンホルスト」級はこの考えで設計されており、大きな実績を上げていた。

伊地知参謀長はこれを聞くとご機嫌で大山に1週間の休暇をくれた、特に『自分が艦長で艦長室が一番安全』と
言うところが気に入ったとみえた。

よくよく、俗物な男だと大山は思ったが、彼もまた生物の本能に従って自分のDNAを残そうとしているだけ
なのだと思い直した。

そして、彼は司令部に併設されていた造船部を後に、非常灯もまばらな地下都市の闇に消えていった。


                                                    ヤマト発進まで1213日
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by YAMATOSS992 | 2012-05-29 21:00 | 本文 | Comments(0)
 「土星宙域にいる早期警戒艦がガミラスの戦略偵察艦がこちらに向かっているとの情報を送ってきました。」
情報士官が参謀本部に報告した。

参謀本部長、伊地知少将はその報告を聞くと地球衛星軌道上にいる突撃駆逐宇宙艦隊に迎撃を命じた。

彼はガミラスが戦略偵察を行うとしたら地球本土上陸作戦の兆しと決め付けていたのだ。

地球衛星軌道上に配置された突撃駆逐宇宙艦隊は本来、遊星爆弾迎撃の最後の砦だったのだが、
だからと言ってガミラスの戦略偵察を許す訳にはいかなかった。

第5宙雷戦隊と呼ばれるその艦隊の指揮官は古代守少佐だった。

彼はこの任務のため、木星会戦には参加出来なかったので敵艦来襲の報に喜び勇んで飛び出して行こうと
した。

だが、そんな彼に待ったを掛ける男がいた。

「慌てるな。 坊や、 何処に行けばいいのか、本当にわかってるのかい。」血気に逸る古代少佐に声を
掛けたのは地球近傍の宙域の哨戒を担当している早期警戒艦「たかお」の艦長、永倉大佐だった。

「このまま、最後に観測された位置の方向に真っ直ぐ突き進めば出会うんじゃないですか?  大佐。」
古代はムッとして応えた。

「だから若いって言うんだ。 相手はワープ出来るんだぞ。 一直線に来るとはかぎらん。 いや、本気で
地球本土を戦略偵察する気なら冥王星方向から真っ直ぐ来る様な真似はせんよ。」

確かに永倉大佐の意見はもっともだった。

<しかし、それなら俺は何処へ向かえば良いんだ?>古代守は当惑した。

「その為に、俺たちがいるんだよ。  今、地球は月基地と2隻の早期警戒艦がつくる三角形の警戒網を
作っている。

ガミラスの戦略偵察艦がどの方向から来ようとこの警戒網には必ず引っ掛かる、だからその情報に従って
迎撃すれば良い。

幸い、今、来ているのは偵察艦だ。 迎撃するのは2隻の突撃艦で充分だ。 本来はやりたくないが君の
艦隊を3つに別けてそれぞれの警戒艦や基地の指揮に従えば確実に迎撃出来る。」永倉大佐は古代に戦術を
授けた。

早速、古代は配下の突撃艦を3分隊に別けて各早期警戒艦と月基地の配下に置き、偵察艦の襲来に備えた。

しかし、実際は全く違った方向に戦局は動いていったのだった。

**********************************************

 火星のオリンポス山地下大空洞を利用して作られた地球防衛艦隊秘密基地は土星宙域にいる早期警戒艦
「シドニー」からの情報に緊張が走っていた。

しばらくぶりに遊星爆弾の大量投射が観測されたのだ。

その数、10基、もはや艦隊型駆逐宇宙艦、1隻で対処出来る数ではなかった。

幸い、10基の遊星爆弾は固まって飛来してきている、これならば反物質弾頭を付けた大型ミサイルで
迎撃すれば1、2基は破壊、その他は大きく機動をそらせる事が出来る。

火星の衛星フォボスの近傍にあったミサイル工廠から反物質弾頭大型ミサイルが発射され、
艦隊型駆逐宇宙艦「あさぎり」によって誘導、飛来する遊星爆弾を迎撃した。

しかし、「シドニー」は更に10基の遊星爆弾、投射を観測した。
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「ガミラスめ、何を焦っている・・・。」火星秘密基地の司令、鴨志田少将はガミラスが遊星爆弾による
戦略核攻撃を本格化させたものと考え、フォボスのミサイル工廠に更に1基の反物質弾頭大型ミサイルの
用意をさせた。

だが、この遊星爆弾攻撃はいままでの地球に対する戦略核攻撃ではなかった。

2投射目の遊星爆弾群が木星軌道に到達した時、浮遊大陸哨戒基地から発進して遊星爆弾群を待っていた
ガミラス駆逐型ミサイル艦が遊星爆弾を先導するかの様に同速で航行し始めた。

また、そのころ、火星軌道では「あさぎり」が遊星爆弾迎撃の最終工程に入っていたが、ガミラス機動部隊も
また、作戦位置に付き、攻撃機を発艦させていた。

そして「あさぎり」は遊星爆弾群、第1陣の破壊・ミス・リードをさせる反物質弾頭大型ミサイルを命中させる
一歩手前で撃沈されてしまった。

もはや、火星軌道周辺で遊星爆弾、第1陣を防ぐ事は出来ない。

すぐさま、火星秘密基地から地球へ遊星爆弾迎撃失敗の報が飛ぶ、戦略偵察艦の迎撃のために地球
衛星軌道上に展開していた古代守の第5宙雷戦隊は再集結し、冥王星方向へ向けて発進していった。

そのころ、火星では「あさぎり」が撃沈されてしまったものの、遊星爆弾、第2群10基の迎撃をやめるわけには
いかなかった。

また、次の誘導用艦隊型駆逐宇宙艦の発進はとても間に合わない状況だった。

そこで、位置を知られる恐れを犯して早期警戒艦「シドニー」が反物質弾頭大型ミサイルの誘導を引き継ぐ事に
なった。

フォボスのミサイル工廠から長いプラズマ炎を引いて大型ミサイルが発射されていく、だが、ガミラスはこの時を
待っていたのだ。

前回の火星基地、詳細偵察時、遊星爆弾迎撃用大型ミサイルの発射ポイントは発見出来なかった。

そして、論理上、宇宙空間で利用する物をわざわざ重力井戸の底である惑星上で製作、運用するとは
考え難かったため、ガミラス冥王星前線基地の首脳陣は必ず、ミサイルの組み立て発射基地は火星衛星
軌道上にあるとふんでいた。

だから、今回の時間差攻撃はその位置を確かめ、攻撃する意図も含んでいたのである。

土星宙域に陣取っていた早期警戒艦「シドニー」は撃沈された「あさぎり」に変わって反物質弾頭大型ミサイルの
誘導を引き受けるために、全速力で木星宙域に入っていった。

しかし、その姿は木星の浮遊大陸哨戒基地から発進したパトロール艇に発見されてしまったのである。

**********************************************

「ミサイル、遊星爆弾群の衝突コースに乗りました。 あと20分後には命中します。」戦術士官の報告に
「シドニー」の艦長はホッと胸をなでおろした。

「良かった、なんとか間に合ったぞ。このポンコツも捨てたもんじゃないな。」艦長はコンソールをポンと叩いた。

その時である、「シドニー」の船体が大きく揺れた。

「どうした!探査主任!」艦長が呼ばわった。

「ガミラス艦・・・だと思われます。 ただ、今までのガミラス艦とは違い、異様に小さいです。」探査主任は
当惑していた。

元々は軽巡航宇宙艦だった「シドニー」は小ぶりだとはいえ、100mを超える全長を持つ、それに比べ、今、
攻撃してきたガミラス艦は小型で有名なゆきかぜ型突撃駆逐宇宙艦より更に小さい直径50mの円盤型を
した艦だった。

いや、もはや、このサイズになると艦というより、艇、ボートのレベルでしかない。

この船は木星の浮遊大陸哨戒基地から発進したパトロール艇であった。

しかも武装はほとんど持っていない、彼等は車両の出入り口を開け、そこから搭載している戦車の砲を
撃ってきたのだ。
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「見敵必戦か、敵ながら見上げた根性だな。」艦長はそのパトロール艇の戦意を称えた。

「だが、攻撃してくる者を黙って見過ごす事は出来ない! 主砲で反撃しろ!」

「シドニー」は軽巡航宇宙艦だったころから6インチ連双フェーザー砲塔3基と軽武装だった。

早期警戒艦に改装するにあたり、武装は最小限度の6インチ連双フェーザー砲塔1基に減らされていた。

だが、今、相手にしているパトロール艇はその位の軽武装でも充分だった。

「シドニー」のフェーザー砲2連射でパトロール艇は沈黙した。

その時である戦術士官が慌てて報告した。

「大変です。 遊星爆弾の軌道が大きく変わりました。」

「何! 迎撃が成功した訳ではないのか!」

「はぁ、迎撃用反物性弾頭大型ミサイルは爆発せず、そのまま外宇宙に向けて遠ざかっていきます。」

「遊星爆弾の新しい軌道を計算しろ!直ぐにだ!」艦長は嫌な予感を感じていた。

「大変です!遊星爆弾群の新しい目標は火星、オリンポス山です!」

「何! それでは本当の目標は火星の前線秘密基地だったのか!」

「直ぐに火星基地に警報を伝えろ・・・、」艦長がそこまで言った時、沈黙していたパトロール艇が最後の力を
振り絞って搭載戦車の砲を「シドニー」の機関部に打ち込む事に成功した。

「シドニー」は警報を発する事が出来ないまま爆沈した。

ガミラス・パトロール艇の搭載戦車の砲塔の中でも名も無いガミラス兵が微笑んだまま息絶えていた。

**********************************************

 2投射目のガミラス遊星爆弾群10基が木星軌道で大きく軌道を変えたのは普通の遊星爆弾とは違い、
軌道修正用の補助エンジンとその制御装置とプログラムを積んでいたからだ。

そして、1隻の駆逐型ミサイル艦がそれを使って地球直撃軌道から火星、オリンポス山に目標を変更する様、
軌道を変えたのだ。

「シドニー」の哨戒をあてにしていた火星前線秘密基地は自らのコスモ・レーダーに遊星爆弾群を感知するまで
その奇襲に気が付かなかった。

いや、感知しても遊星爆弾攻撃は地球に向かってなされるものとの固定観念が混乱を生み、何も出来ない
まま、遊星爆弾10基の集中爆撃を受けてしまった。

火星の運行軌道が変わるかと思われるくらいの大爆発がおさまるとオリンポス山のあった場所には巨大な
クレーターが口を開けていた。

それは地球軍が基地にしていた地下の冷えて固まったマグマ溜まりの上に出来ていた大空洞が完全に
潰れた事を表していた。

そして、死火山だと思われていたオリンポス山の地下深くにはまだ溶けたマグマ溜まりがあり、そのマグマが
噴出して巨大なクレーターの中に流れこんで火星秘密基地、壊滅の最後の仕上げをした。

この作戦の最後の仕上げとして、遊星爆弾を誘導した駆逐型ミサイル艦と高速宙母は共同して火星の衛星、
フォボス近傍の空間にあった、地球軍の遊星爆弾迎撃用大型ミサイルの建造・発射基地を叩き、壊滅させる
事に成功、意気揚々と冥王星に引き上げていった。

対する地球陣営には重苦しい空気が流れていた。

遊星爆弾攻撃を防衛する出城的な役割の火星秘密基地が叩かれたのだ。

そして、地球軌道上の突撃駆逐宇宙艦による防衛はやはり完全ではなく、10基の遊星爆弾の内、3基の
阻止に失敗していた。

「申し訳ありません。 我々がもっとしっかりしていればこんな事には・・・。」古代守は司令部で藤堂長官、
沖田少将、伊地知少将に頭を下げていた。

今回の遊星爆弾、3基は陸地ではなく、大西洋に固まって落ちた、その結果、200mの高さを超える大津波は
大西洋沿岸の大陸や島、その全ての表面を洗い流し、不毛の土地としていた。

幸い、1発目の示威で行われた遊星爆弾攻撃の結果、地表は「核の冬」を向かえていたので人類はその殆どが
地下に生存の場を求めて移住していた。

このため、人的被害は最小限度に食い止められたが、それでも億を大きく超える人命が失われた。

「古代少佐、悔やんでも始まらん。 我々の迎撃システムには大きな穴がある様だ。 君一人の責任ではない、
あまり自分を責めるな。」藤堂長官は古代守の前に進むとその肩に手をおいた。

「しかし・・・。」何か古代が言いかけると今度は沖田少将がそれを制した。 そして、もう行け、と合図した。

古代は海軍式の敬礼をすると自分の艦へ帰っていった。

それを見送った藤堂と沖田は伊地知少将の方に向き直った。

しばらく嫌な沈黙が3人の間に流れた。

早期警戒艦「シドニー」が戦略偵察艦の艦隊という有り得ないものを発見した時点で司令部まで報告が
上がっていればもしかしたら結果は違っていたかもしれない・・・、そうした思いが藤堂にも沖田にもあった。

伊地知少将の独断専行が生んだ悲劇なのかもしれなかった。

だが、沖田は黙って首を振った、あの戦略偵察艦の任務が何だったのか、未だに判っていない、
そして「朝霧」を攻撃した攻撃機がどこから来たのかも不明だ。

ガミラスに遊星爆弾の軌道を大きく変更する能力がある事も判った。

早期警戒艦と突撃駆逐宇宙艦の組み合わせだけで遊星爆弾を迎撃し切れるだろうか・・・。

沖田はこれから続くであろう、長く苦しい戦いを思った。

だが、わしは決して諦めない、ガミラスを太陽系から放逐するまで決して諦めない!と決心を新たにするので
あった。

                                                   

                                                    ヤマト発進まで1277日
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by YAMATOSS992 | 2012-05-28 21:00 | 本文 | Comments(0)
ガンツ中佐の提案どおり、木星の浮遊大陸に設けた観測基地から発進したパトロール艇による哨戒はまもなく
効果を上げた。

月基地のマス・ドライバーをガミラスに破壊された地球軍は今度は火星衛星軌道上で反物質弾頭を備えた
大型ミサイルを組み立てて、発射、木星会戦で生き残った数少ない艦隊型駆逐宇宙艦に誘導させて迎撃
していた事が判明したのだ。

シュルツはその報告を聞くとすぐさま艦隊を派遣してそのミサイルを誘導している駆逐宇宙艦を叩こうと
考えたが、ガミラスもまた、木星会戦で大きく傷ついており、バラン星から新しい艦艇を補給する必要に
かられていた。

木星会戦の結果、ガミラス艦隊の中心戦力である、汎用戦闘艦、駆逐型デストロイヤーはほぼ全艦が
大なり小なり傷ついていたからだ。

当然、今、作戦を行い、ただでさえ損耗している艦隊を更に傷つける事は得策ではなかった。

「ガンツ、何か妙案は無いか・・・。」レッチェンス大将を失って戦略案や戦術案を一人で立てなければならなく
なったシュルツは必然的にガンツ中佐を副官として重用する、いやせざるを得なくなっていた。

シュルツ大佐は古いタイプの軍人であり、大艦巨砲主義者であった。

従って、突撃艦の様な駆逐型ミサイル艦は戦力としてあまりあてにしていなかった。

レッチェンス司令から譲られた大型戦艦を投入する事も頭の隅を過ぎったが、まだまだ戦力を残している
地球陣営の中に虎の子の大型戦艦を向かわせる勇気はシュルツには無かった。

何やかにや言ってもガミラスは一応、有利に戦局を進めている、それなのに、この優柔不断ぶりである。

そんなシュルツの姿を見てガンツ中佐はこのままで本当に大丈夫なのか、不安になったがそんな彼も
シュルツと一連托生なのは変わらなかった。

シュルツもガンツもガミラスの被征服星の出身であり、戦果を挙げられなければその配下の部隊ごと始末され
かねない立場だったからだ。

「司令、せっかく、宙母が2隻も配備されているのですから機動部隊を編成してみてはいかがでしょう。」

「機動部隊? 宙母部隊か? そんな脆弱なものが役にたつのか?」シュルツは懐疑的であった。

確かに宇宙での戦いでは宙母は使い方の難しい艦艇であった。

宙母は艦載機を運用して艦隊の攻防力を担う役目があったが、艦載機は有人である以上、必ず帰還を前提と
した運用をしなければ成らなかった。

すなわち、帰りの燃料や推進剤を必要とする有人機は母艦から大きく離れる事は出来ず、艦隊戦では
近接防御が主任務にならざるを得なかったのだ。

それならば母艦から無人機を発進させれば、帰還を考えなくても良いので有人機の倍の距離にいる敵を攻撃
出来るのである。

これはすなわち、ミサイルを主兵装とする駆逐宇宙艦の用法に他ならない。

従って、ガミラスでも宙母は比較的贅沢な兵器と考えられており、あまり重用される事は無かったが、有人機の
融通の利く運用性は偵察や局地攻撃、反乱鎮圧などに価値を見出され、冥王星前線基地にも新型の十字型
高速宙母が配備されたのだ。

ガンツ中佐はその艦載機の融通の利く、運用性に着目した。

また、ガンツは1隻目の高速宙母を回航してきたピラウア少佐から高速宙母とその艦載機の有効な運用法を
学んでいた。

その秘策を秘めて2隻の高速宙母が冥王星前線基地を発進していった。

シュルツはガンツから作戦の説明を充分受けていたのだがそれでも自分が慣れ親しんだ艦艇型で無い
宙母の姿に不安を隠しきれないのだった。

*********************************************

「早期警戒艦『シドニー』より入電!遊星爆弾1基、地球に向かっています。」

「よろしい、護衛艦などはついていないか?」艦隊型駆逐宇宙艦「ゆうぐも」の艦長は問いただした。

「遊星爆弾だけでの飛来との報告です。」

「よし、本艦はこの遊星爆弾の迎撃に向かう、目標軌道データに従い、変針せよ」

「ゆうぐも」はこの遊星爆弾の迎撃に向かうべく、大きく面舵をとり、加速した。

ガミラス側は地球軍が的確に遊星爆弾を迎撃してくるので以前の様に一度に大量に投射するのをやめていた。

複数の遊星爆弾が固まって飛来するとそのなかの1発に反物質爆弾の命中があった場合、被弾した
遊星爆弾が破壊されるのはもちろん、周りの遊星爆弾も猛烈な対消滅爆発の影響を受けて軌道を
外されてしまう。

これでは、ガミラス側はいくら自然物を利用しているとはいえ、遊星爆弾が幾つあってもたまったものではない。

反対に今の様に遊星爆弾を1基だけ発射すると地球側はその1基のために大型反物質爆弾と大型ミサイルを
1基づつ、消耗しなければならなくなる、木星という資源、エネルギーの供給源を絶たれた地球にとってこの
様な消耗戦は避けたいところであった。

そのために地球側は火星軌道に艦隊型駆逐宇宙艦を単艦、交代で常駐させていた。
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本来、反物質弾頭大型ミサイルの誘導だけなら艦隊型駆逐宇宙艦の必要はない、遊星爆弾を感知する
早期警戒艦がミサイルの誘導もすれば済む事である。

それをあえて艦隊型駆逐宇宙艦をその誘導艦に当てているのは、遊星爆弾が単独飛来した場合、
通常サイズの反物質弾頭ミサイルで迎撃し、あえて破壊を狙わず、命中軌道を外させる事が出来るためで
あった。

今回の遊星爆弾迎撃に向かった「ゆうぐも」は比較的古い設計の「かげろう」型の駆逐宇宙艦だったが、
ミサイル・プラット・フォームとしては充分な能力を持っており、この種の任務にはうってつけの艦であった。

「ゆうぐも」が遊星爆弾を探知、その軌道を変えるためのプログラムを施したミサイルを発射した時である。

ガミラスの高速宙母から発進して地球軍、駆逐宇宙艦を捜索していた艦載機がミサイルの発射炎を探知、
「ゆうぐも」の位置を知った。

ガミラス艦載機はブーメラン型をした全翼機であったが、これは大気圏内での運用を考慮したというより、
ミサイルなどの外装兵装をより多く積むための設計であった。

1機6発の艦載機にしては大型のミサイルが宙母1艦で攻撃機20機のミサイル、計120発が「ゆうぐも」に
襲い掛かった。
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「ゆぐも」は個艦防御兵装として5インチ連双レーザー砲塔を3基、計6門を持っていたが、120発もの
ミサイルの同時攻撃を迎撃することは出来ず、また、突撃型駆逐宇宙艦と違って運動性能は大きく劣って
いたためかわす事もかなわず、爆沈して果てた。

通常だったら宙母艦載機の航続距離くらいであれば「ゆうぐも」は容易に高速宙母の存在を探知出来たはず
だった。

しかし、今回、ガミラス冥王星前線基地の副官、ガンツ中佐は高速宙母の回航員であったピラウア少佐から
秘策を授けられていた。

宙母の攻撃半径の足枷となっているのは有人艦載機の航続力が半分しか使えない事であった。

つまり、艦載機は攻撃するための往路に加え、宙母に帰還するための復路に全航続力を別けて使わねば
ならないのだ。

これでは艦隊型駆逐宇宙艦の方がよほど遠距離の敵を攻撃出来ると考えるのが自然であり、ガミラスでも
その考えのもと、宙母は艦隊戦には使わず、惑星制圧戦に使う艦艇として用いられてきた。

しかし、有人である事の融通性の高さを生かす研究は宙母関係者のなかで地道に行われており、ついに
コロンブスの卵的発想が宙母の運用に画期的な道を開いたのである。

それは複数の宙母による機動部隊の結成であった。

しかし、これは単に宙母がかたまって行動するのではなく、一種の艦載機のシャトル運用とも言うべき
用法だった。

1隻の宙母が艦載機の航続距離ギリギリのところで敵に向かって機を発進させて攻撃を行い、機はそのまま
フライ・バイして敵のいる宙域を慣性で脱出、安全な宙域で前もって待機していた別の宙母に攻撃機を
回収させるというものだった。

もちろん、2次攻撃が必要ならば回収した宙母で燃料、推進剤、武装の補給を受けて再度、攻撃をかけ、今度は
出発した宙母に帰れば良いのである。

そして、このフライ・バイ攻撃は訓練を積みさえすれば、ワープの出来るガミラス艦なら最終的には1隻の
宙母で実行可能なものだったが、今回は初回という事もあり、錬度不足の搭乗員や艦艇の乗組員のことを
考えてガンツは機動部隊での運用に絞って作戦を行った。

しかし、それがガミラスに幸運をもたらすとは誰も考えてはいなかった。

*********************************************

ガミラスの放った機動部隊は火星からかなり離れてはいたが攻撃機を回収する役割の高速宙母は火星よりの宙域にいた。

いくらガミラスの軍人が精神力を鍛えられているとはいえ、自分の搭乗している艦載機が燃料切れを起こして
慣性航行に移った時、何も無い無の空間を目指して飛ばざるをえなくなるのは避けたい事だったのである。

このため、「ゆうぐも」を攻撃した6機の攻撃機は火星を目指して飛ぶ様に作戦行動が決められていた。

比較的火星よりの宙域でもう1隻の高速宙母は20機の攻撃機を回収する作業を始めた。

有重力下での空母への着艦作業は海上に浮かぶマッチ箱に降りる様だと形容される様に難しい物の代表の
様に言われるが、無重力下ではランデブーして着艦アームを宙母が伸ばして艦載機を艦内に引き込めば
済むのである。

着艦の順番待ちの時にも事故の起きる確率は有重力下の時に比べれば格段に少なかった。

だが、いくら離れているとはいえ、この宙域は完全に地球軍の勢力圏内である。

高速宙母は艦載機の回収作業を進めつつも、火星方面にいるであろう地球軍の動きに気を配っていた。

着艦待ちをしている機のパイロットも警戒措置の一環として火星の表面を機載の偵察用望遠モニターで
観察していたが、その結果、驚くべき事が解かった。

「ゆうぐも」が撃沈されても、さすがに直ぐには次の駆逐宇宙艦は姿を表さなかったが、高速宙母が初めての
作戦で艦載機の回収に手間取って時間が掛ってしまっていると次の駆逐宇宙艦が姿を表した。

地球軍もいつまでも遊星爆弾の脅威に耐えられなかったからであった。

ある意味、かつてシュルツがヨルクに圧力を掛けて実施させた遊星爆弾示威攻撃の恐ろしさが地球陣営に
染み渡っていたといえる。

しかも彼は単に次の迎撃任務に就く駆逐宇宙艦を発見しただけでなく、その発進基地をも見つけたのだ。

それは火星最大の火山であるオリンポス山の麓にある、宇宙艦発進口であった。

しかし、高速宙母の艦長は慎重だった。

もう1隻の高速宙母も呼び寄せると2隻で連携して詳細偵察行動に入った。

その結果、地球軍の火星基地は死火山であるオリンポス山の地下深く、既に冷えて固まったマグマ溜まりに
出来た大空間を利用して作られている事をも突き止めた。

これは元々、高速宙母が戦略強行偵察任務を重要な任務として設計されており、強力な探知装置を幾種類も
持っていたから出来た事であった。

オリンポス火山の標高は25,000mもある。

マグマ溜まりにある空間の上の岩盤の厚さはそこまでは無かったが、流石に高速宙母の艦載機の攻撃力では
分厚い岩盤に守られた地球軍の火星基地には手が出せなかった。

そこでガミラスの機動部隊は一度、冥王星前線基地に帰り、シュルツやガンツと戦略を練り直す事にし、
すぐさまワープに入ると火星宙域を後にしていった。

**********************************************

機動部隊が持ち帰った地球軍の火星基地に対する情報はシュルツやガンツ、冥王星前線基地、首脳部を
色めきたたせた。

木星圏のプラント奪取はかねてからの計画であってが、火星にこれほど大規模な防衛拠点が設けられていた
とはガミラスにとって大問題であり、この拠点を潰さない限り、遊星爆弾による戦略核攻撃はおろか、
地球を艦隊で襲撃したとしても背後を突かれ、苦戦する羽目に陥るのは目に見えていたからだ。

普段はあまり声を掛けられない作戦スタッフや技術将校も含め、大規模な作戦計画が練られていった。

「なんだい、この無茶苦茶なスケジュールは! 1日で20個の遊星爆弾を発射しろって司令部は何を考えて
いるんだい、一体!」
ガミラスの遊星爆弾発射用の施設では下士官が理由も聞かされずに押し付けられたノルマに悲鳴を
あげていた。

しかも、地球軍にこの作戦がある事を悟られぬために、無駄と判っていても1日、1基の遊星爆弾攻撃は
休まず続けられていた。

また、技術部や前線工廠でも新しい作戦に向けて新装備の開発・製造が急ピッチで推められていた。

開発とはいっても、遊星爆弾の軌道修正用補助エンジンとその制御システムであり、冥王星前線基地の
技術レベルでも充分対応出来る物で更にその製造数も量産という程の数ではなかったので前線工廠で数は
揃えられた。

突貫工事の末、この新作戦、「地球のたそがれ」の準備が出来たのは地球時間で7日後だった。

まず、その先遣として再び高速宙母2隻で編成された機動部隊が発進していったが、シュルツは機動部隊の
活躍に気を良くし、それがまるで自分の案だったかの様にガンツに得意そうな顔を見せた。

ガンツは<やれやれ、またか・・・。>と思ったが大事の前の小事と感情を顔に出さない様に極力、努めた。


「ガミラス艦出現! 距離10万! 数は2隻! 例の新型艦です。」土星宙域で警戒に当たっていた
早期警戒艦「シドニー」はガミラスの機動部隊を捕らえた。

「新型艦? 木星会戦の時、目撃したあの艦か? あれは戦略偵察艦だろう・・・。 それが何故、艦隊を
組んでいるんだ?」
「シドニー」の艦長は高速宙母と1度、会敵していたが、あの時は艦載機を使わなかったので、
それが宙母だとは想像も出来なかったのだ。

それに火星軌道で艦隊型駆逐宇宙艦「ゆうぐも」が撃沈された時に得られた情報では攻撃してきたのは
ガミラスの小型無人攻撃機だという事だった。

地球軍はまだ本格的な宙母を運用した実績がなく、シャトル運用という考えがなかった。

従って「ゆうぐも」を撃沈したのが高速宙母から発進した有人攻撃機であるとは考えもつかなかったのである。

もし、艦載機のシャトル運用という考えがあれば、攻撃機の飛来方向ばかりを探査して、進行方向を探査せずに
何の手掛かりも得る事が出来ない、しかも敵の攻撃機の回収作業が火星宙域で行われていたにも係わらず、
それに気付かないなどという無様な事にはならなかいで済んだはずであった。

だが、早期警戒艦「シドニー」の艦長は古参のベテランであった。

ガミラスの艦隊の正体が機動部隊である事までには気が付かなかったが、戦略偵察艦が行動しているという
事は敵が大きな作戦を計画している証であると考えたのだ。

「シドニー」は早期警戒艦である、通常の巡航宇宙艦とは比較に成らない探査能力を持っていた。

対してガミラス高速宙母は船体下面に偵察用探知装置が集中して装備されており、船体上部にある
航行用コスモ・レーダーの探知範囲や精度は駆逐型デストロイヤーとほとんど変わらなかったので
地球の早期警戒艦に目を付けられている事には気が付かなかった。

「シドニー」はガミラス機動部隊が充分遠ざかると探知情報を地球防衛軍司令部へ送り、ガミラス軍大作戦
行動に対する警告を送った。

                                                    ヤマト発進まで1278日
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by YAMATOSS992 | 2012-05-27 21:00 | 本文 | Comments(0)
今日も冥王星前線基地には強風が吹いていた。

厳重に遮断された居住区の中には風や有毒ガスは流れ込んでこなかったが、吹き荒れる大気の音は居住区の
厚い壁を通して聞こえていた。

<まずい、これはまずいぞ・・・。>シュルツ大佐は木星会戦が終わった後、レッチェンス大将が戦死したので
格上げされて冥王星前線基地の司令官に収まっていた。

彼は戦略方針として地球陣営に対する攻撃を艦隊戦から遊星爆弾による戦略核攻撃に切り替えたが、それが
上手くいっていなかったのだ。

木星会戦直後からここ1ヶ月、ほぼ毎日の様に遊星爆弾を地球に向けて放っていたが、命中コースから外れたもの10個、地球側に迎撃されたもの約20個と、地球に命中した遊星爆弾は皆無だったのである。

本来、木星会戦はガミラスにとっては地球側の喉元を締め上げ、エネルギーや資源を枯渇させて抵抗を封じ、
遊星爆弾による惑星改造をスムーズに進めるための戦いであった。

だからこそ、元々少ない戦力であったが、それを惜しみなく投入し、最終的には最高司令官の戦死という高価な
代償まで支払って手に入れた貴重な勝利であった。

<ずいぶん、あっさりと引き上げたのが気にはなっていたが、次の手を読まれていたとはな・・・。>シュルツは
自分がかつて犯したミスにまだ気が付いていなかった。

シュルツは土星会戦のあと、地球艦隊の戦意に怖気づき、ヨルク技術中佐に圧力をかけて地球に対する
遊星爆弾攻撃の実験をさせていた。

シュルツは単に実験だけに納めるつもりだったが、担当者のヨルクは示威攻撃として遊星爆弾攻撃がガミラスの
仕業だと言う事を明かしてしまった。

地球陣営はこの示威攻撃の後、遊星爆弾攻撃に対する対抗策を幾つかこうじていたのだが、シュルツはそれが
自分が過去に犯した性急な行為の結果だとは気付いていなかった。

<少なくともどの様に迎撃しているのか、掴む必要があるな・・・。>シュルツは高速宙母を使って調査
させる事にした。

木星会戦での情報戦で活躍した高速宙母は更に1隻配備されて小さいながら機動部隊を編成出来る様に
なっていたが、シュルツは古いタイプの軍人であり、大艦巨砲主義だったため、宙母は単独運用、それも
偵察行動が主になっていた。

今回もシュルツの運用方針のとおり、高速宙母が1隻、地球側の迎撃方法を偵察するため、冥王星前線基地を
発進していった。

**********************************************

「早期警戒艦『シドニー』から入電!遊星爆弾6基、地球に向かっています。 ただし、その数はまだ増える
模様!軌道データを送ります。」

「よし、月面上のマス・ドライバーに反物質爆弾を発射させて迎撃しろ!」

地球陣営は木星~土星宙域に早期警戒艦を配備し、遊星爆弾の発射を早期に探知、月面上に3基ある
マス・ドライバーから反物質爆弾を発射、精密誘導によって地球から遥か彼方で爆破処理していた。

地球とガミラスの技術文明の程度はガミラスが勝っていたが、この遠距離探知の技術と宇宙航行体の精密
誘導の分野では地球側が大きく勝っていた。

ガミラスはその知られている歴史で既に他星を侵略していたが、その時から現在に至るまで無人探査機に
よる偵察という概念はなかった。

偵察も攻撃も必ず有人の艦艇で行うのがあたり前だったのだ。

例外は既に発見している目標の監視にカメラを搭載した人工宇宙塵や待ち伏せに使う宇宙要塞くらいだった。

ガミラスは今回の高速宙母による偵察のために10基の遊星爆弾を発射していたが高速宙母の艦長が
驚いた事にその全てが木星軌道に達する前に探知され、撃破、処理されてしまっていた。

地球人はその持てる技術よりも常にその好奇心が勝っており、人間を遠く宇宙空間を旅させる技術がなくても
遠くの星の様子を知りたいという欲求を持っていた。

その結果、地球上にいながら何千、何万光年もはなれた宇宙の様子を知る事が出来る深宇宙探査の技術を
発達させ、21世紀初頭にはすでに無人探査機を使って小惑星帯にある微惑星のサンプルを取って地球に
帰還させる事に成功していた。

ガミラス宙母の艦長はワープで地球軌道内にひっそりと進入すると偵察のために再度、遊星爆弾の発射を
冥王星前線基地に要請した。

再び月面上のマス・ドライバーが反物質爆弾を投射して遊星爆弾を処理した。

しかし、今度はガミラス宙母がその一部始終を観測していた。

そしてマス・ドライバーの設置位置が本拠地近辺であるという油断が地球軍にはあった。

本来、マス・ドライバーはスペース・コロニー建設用の資材を月面からラグランジュ点に向かって
打ち出すための設備で軍用の物ではなかった。

当然、その施設は全くの無防備でガミラスの攻撃を受けたらひとたまりも無い事は明らかだった。

だが、地球陣営はお膝元である月面にガミラスの手が及ぼうとは思っていなかったのだ。

ガミラス宙母は護衛艦も連れず完全に単艦だったが、月面上に3基のマス・ドライバーの存在を感知すると
その艦載機、20機を全力発進させ、その3基を完膚なきまでに破壊しつくした。

地球軍が慌てて迎撃に向かった時にはガミラス宙母はワープして早々に戦場を離れていた。

**********************************************

地球側迎撃施設の破壊成功の報を受けてガミラス前線基地は遊星爆弾による戦略核攻撃を再開したが、
やはり地球側は上手に立ち回り、遊星爆弾を迎撃、地球の損害は皆無であった。

再び高速宙母による戦略偵察が行われたが今回は艦艇からの反物質弾頭ミサイルによる迎撃であり、目標が
マス・ドライバーの時と異なって固定しておらず、その発見は困難を極めた。

遊星爆弾に突撃艦を同行させてミサイルを迎撃する事も考えたが艦艇は先の木星会戦で大幅に損耗しており、
例え、突撃艦と言えども、この任務に耐えるだけの数を揃えるのは容易ではなかった。

<定点観測基地が必要になるな・・・。>シュルツは木星圏に出城を一つ、設けようと考えた。

しかし、幾ら数があるとはいえ、木星の衛星上に観測基地を設けたのでは地球側に発見される恐れが大で
あった。

「司令、それでしたら、前回の会戦時、うってつけの物を発見しました。」ガンツ中佐が進言した。

彼は別動隊として地球プラントに奇襲を掛けた時、有り得ベからざる物を発見していた。

それは木星の大気圏下層部(木星は大気圏と液層圏の区別がほとんど無かったが・・・。)に浮遊して動き回る
大陸だった。

ガンツは作戦中だったので詳しい調査は出来なかったが利用価値ありと判断、位置を知らせるビーコンを
打ち込ませていた。

会戦が終わった後、再度その大陸を訪れ、利用方法を考えるためであった。

「そんな濁った大気の底にある基地では観測など不可能ではないか?」シュルツは率直な疑問をぶつけた。

「確かに、基地から直接の観測は不可能です。  しかし、多分、この大陸は地球側に知られておりません。

ですから、この基地からパトロール艇を運用すればこちらの存在を知らせずに地球側の戦略偵察が
出来ます。」

「突撃艦と違ってワープなど本格的な航宙機関は必要ありませんからこの基地でも製造する事が出来る
レベルの艦艇、いや舟艇クラスの航続距離も短いもので充分です。」

「ふむ、確かに遊星爆弾攻撃の進捗を進める事も重要だが常時、地球側の動きを監視しておく必要もあるしな。

ガンツ中佐、木星の浮遊大陸とやらに観測基地を設ける方向で作業を進めてくれ。」シュルツ大佐は以外と
冷静であった。

<この戦線はゆっくりでも良い、着実に進展を重ねる必要がある・・・。>シュルツは先の会戦でガミラスに
その人あり、と歌われたレッチェンス大将が戦死した事の重みを味わっていた。

その戦死に彼が責任があった訳ではなかったが、ガミラス大本営は敢えて新しい指揮官を任命せず、
シュルツを基地司令に格上げしてその采配ぶりを見ているのは明らかだった。

<絶対に失敗出来ない・・・。>この思いがやがて大きな失策に繋がってゆくのだが、今はその事に彼は
気付いていなかった。

                                                    ヤマト発進まで1426日
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by YAMATOSS992 | 2012-05-22 21:00 | Comments(0)
 「どうした!ガミラス艦隊の総攻撃があったそうだが!」シェーア大将は旗艦「フレードリッヒ・デア・グロッセ」の
艦橋からプラントにある総合防衛司令部を呼び出した。

「はい、地球標準時15:07に南半球連合の艦隊が攻撃され、全滅しました。 その後、敵艦隊は再度ワープ、
行方を絶っております。」

「アジア連合の艦隊は無事か?」

「はい、今のところ、アジア艦隊も本艦隊も全く、攻撃を受けておりません。」

<フーム、ガミラスめ、何を考えている・・・。>シェーアはガミラスの司令官の心が読めなかった。

地球の常識でいえば真っ先に攻撃されるのは最も手薄なアジア艦隊のはずである。

だからこそ、シェーアはアジア連合のプラントと艦隊は強力な二つの艦隊で挟む形の布陣を敷いたのだ。

<読まれているのか・・・。 だとすれば、次に攻撃されるのはアジア艦隊ではなく、我が艦隊だ。>

シェーアはガミラスが弱い所から突き崩す戦法ではなく、自らの戦力が強大な内に手強そうな敵を片付ける
作戦だと読んだのだ。

<滅敵戦法・・・か、情け容赦ない奴等だ。> 敵の戦力を挫いて引かせる屈敵戦法ではなく、敵を一艦、一兵に
到るまで全滅させる滅敵戦法は後顧の憂いを絶つと言う意味でガミラスらしい戦法であった。

「南半球連合の艦隊が全滅した時の模様はデータがあるか?」シェーアは総合司令本部に問い合わせ、
データを至急、送らせた。

**********************************************

そのころ、レッチェンスは艦隊の建て直しに必死だった。

緒戦で2隻もの駆逐型デストロイヤーを失ったのだ。

ガンツ少佐の遊撃隊の駆逐型デストロイヤー2隻を引き抜き、本隊に組み入れざるを得なかった。

<あの指揮官め、経験は浅いが、度胸は満点だったわい!>レッチェンスは敵の司令官の力に瞑目した。

南半球艦隊はヤークト艦単独の攻撃時には戦艦のフェーザー砲塔を互い違いに左右に向けて一撃離脱
(ヒット・エンド・ラン)戦法に対応して見せた。

しかし、この態勢は両舷を満遍なくカバー出来るが自艦隊の砲力が半減したのと同じ結果となる。

レッチェンスもヤークト艦の攻撃時に南半球艦隊がとったこの戦法に指揮官が優秀ではあるが経験の少ない
提督であると看破、配下の駆逐型デストロイヤー、全艦を敵艦隊の木星よりの空間に小ワープさせ、砲力を
半減させた敵艦隊を圧倒的な砲力で沈黙させる作戦にでた。

しかし、小ワープして敵艦隊の右舷に出てみると敵艦隊は単縦陣でこちらに横腹を見せているのではなく、
横陣で艦首をこちらに見せており、ガミラス艦隊がワープ・アウトすると同時に突撃を掛けてきた。

ガミラス艦に艦首を向けている地球戦艦の目標としての面積は非常に小さく、反対にガミラス艦は横腹を
晒しているので目標としての面積は非常におおきくなっていた。

幸い、ガミラス艦は地球戦艦より重防御だったので地球戦艦が至近距離に接近するまで装甲を打ち抜かれる
事はなかったがそれでもガミラス艦隊の後部では地球戦艦によりガミラス艦隊は戦列を分断され、噴射口の
中にビームを打ち込まれた駆逐型デストロイヤーが2隻、爆沈してしまっていた。

これも英国伝統のネルソン・タッチ型戦術であるが駆逐宇宙艦と違って目標が大きく、動きが鈍い戦艦では
今一つの効果に欠け、強力な装甲を誇るガミラス艦隊に甚大な被害を与えるまでには到らなかった。

別動隊のガンツ少佐から連絡があった。

「司令、ヒッペルト中佐の威力偵察を退けた右翼の艦隊は見るからに手強そうです。 
ここは予定を変えて手薄な中央の艦隊を殲滅してはいかがでしょう。」

「わしが中央の艦隊を始末できたら直ぐに予定の行動に入るつもりだろう? ガンツ!」

心を見透かされたガンツはバツの悪そうな顔をした。

「慌てるな。もし万が一、右翼の艦隊がわしの艦隊を退けてもガンツ、お前の艦隊を相手に出来る戦力は
残さない!安心しろ!」レッチェンスは言い切った。

しかし、勇者は勇者を知る、の言葉どおり、欧州艦隊を率いるシェーア大将が腕利きである事を彼は
感じとっていた。

**********************************************

シェーア大将は相手の出方を見てから行動するタイプの指揮官ではなく、全軍を率いて戦運を自らの方に
引き寄せるタイプの指揮官だった。

しかし、今はプラントの防衛という相手の行動に自らの行動を合わせざるを得ない立場にあった。

とはいえ、彼は自艦隊をプラントの前を遊弋させるなどという中途半端な態勢は採らなかった。

どのみち動けないなら敵にも行動の自由を失ってもらおう。

彼は自艦隊をプラントの脇、ギリギリの位置に専位させた。

ガミラス艦隊が欧州艦隊より木星よりの空間にワープしようとしてもその位置にはプラントがある、ワープを
強行すればガミラス艦隊はプラントを構成している建築材料と物質重複を起こして吹き飛んでしまう。

否がおうでも、欧州艦隊の外側にワープせざるを得ないのだ。

艦隊は単縦陣を2群に別けてプラント前に外側に口を開いた「ハの字型」にしていた。

この悪魔の口にガミラス艦隊を宙雷戦隊の攻撃で誘導しようというのがシェーア提督の作戦だった。

「ガミラス艦隊出現!方位12時、距離10万、戦艦10 駆逐艦20」早期警戒艦から報告が入った。

ガミラス艦隊は超遠距離にも係わらず、フェーザー砲の一斉射撃を掛けてきた。

ガミラス艦のフェーザーは地球のそれよりも射程が長いとはいえ、この距離では戦艦の分厚い装甲は
破れなかった。

<ガミラスめ、何を考えている?>シェーアはレッチェンスの意図を図りきれなかった。

通常、軍艦のカタログ性能を比較する場合、主砲の射程が長い艦は短い艦より強いと判定される事が多いが、
最大射程はその距離まで弾を届かせる事が出来るというだけで命中率まで保障されているわけではない。

しかも実体弾ではなくエネルギー・ビームであるから距離の2乗に比例して威力は減ってしまう。

だから実戦では有能な艦長ほど砲戦距離を安全な範囲で出来るだけ詰め様とする。

<誘いか? だったら動くまい!>シェーアは断固として現状維持を命じた。

ガミラス艦隊のフェーザー・ビームは地球艦隊の直後にあるプラントに被害を与え始めていた。

また、ガミラス艦隊を罠の口に追い込む為に待機させていた宙雷戦隊にも被害を与えていた。

<ここが耐え時だ・・・。>シェーア大将がそう思った瞬間、彼の思考は真っ黒になった。

「司令!しっかりして下さい!司令! 軍医を呼べ!」参謀長がシェーアの体を支えながら叫んだ。

しかし、シェーアの体はそのまま旗艦の艦橋内で仰向けに浮遊し、軍医が駆けつけた頃には死亡していた。

脳溢血だった。
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**********************************************

「なんて事だ!シェーア提督が戦病死しただと! 欧州艦隊の次席の司令、カニンガム中将は・・・。」
戦艦「栄光」の寺内大佐が怒鳴るのを沖田提督が制した。

「嘆いても始まらん! 欧州艦隊は全滅したのだ! だが彼等はやるべき事はやってくれた。」沖田は
まなじりを決した。

「ガミラス艦隊出現!1時方向!距離5万! 戦艦4隻、単縦陣で接近、こちらの頭を抑えるつもりです。」
探査主任が報告する。

「オキタ・フォーメーション発動しますか!」山南艦長が沖田に問う。

「まだだ・・・。 それにその呼び名はやめてくれ。恥ずかしい。」沖田は打ち消す様に言った。

「敵の有効射程内、ギリギリまで引き寄せるんだ。そのかわり、無理はしないでよいぞ。」

ガミラス艦隊はアジア艦隊の戦艦が日本艦隊の「英雄」、「栄光」の2隻しかいないのは地球陣営の罠で
手薄な中央のアジア艦隊の防備を破ろうとすると、両翼の強力な南半球連合と欧州連合が押し寄せてくる
作戦だと読んでいた。

だからレッチェンスは両翼をそれぞれ別個に切り崩し、その後アジア連合の艦隊を排除して地球の
木星プラントを裸にするつもりだった。

ガミラス艦隊が先にフェーザー砲を発砲した。

地球艦隊も応射する、しかし、まだこの距離では地球艦隊のフェーザーはガミラス艦に弾かれてしまった。

ガミラス艦はそれに力を得て更に接近、必中の距離まで近づこうとした。

その時である、戦艦の陰に隠れていた突撃駆逐宇宙艦で編成された宙雷戦隊が2個、ガミラス艦隊に
襲いかかった。

艦隊型駆逐宇宙艦とは違って艦艇形の運用ではなく、航空機形の運用を前提とする突撃型駆逐宇宙艦は
突撃時の陣形は単縦陣ではなく、横に拡がった鶴翼型であった。

宙雷戦隊の指揮官、管野大尉は先陣を切ってガミラス艦隊に迫ると特殊ミサイルを放った。

配下の駆逐宇宙艦も負けじとミサイルを放つ、1隻の駆逐宇宙艦にはミサイル発射管が3基しか
搭載されていなかったが、突撃型駆逐宇宙艦は艦隊型の駆逐艦の様なセル方式ではなく、次発装填装置が
ついていたので連射が出来た。

すなわち、ガミラス艦隊が迎撃しきれないほどの多量なミサイルが投与されたのだ。

そしてこのミサイルは反物性ミサイルでは無かった。

もちろん核兵器でも反物質弾頭でもなかった。

このミサイルはガミラス艦のフェーザー・ビームを浴びて爆発すると液体をほとばしらせた。

しかもかなり粘性の強い液体である。

この液体はミサイルとして飛翔してきた時の慣性をまだ持っており、ガミラス艦のフェーザー砲塔周りに張り付いた。

フェーザー・ビームを潜り抜けたミサイルもガミラス艦の砲塔付近に粘性物質を撒き散らした。

レッチェンスは多数のミサイルを被弾した自艦や配下の駆逐型デストロイヤーに爆発も爆縮も起こらないのを
不審に思ったが、距離をつめて来ていた日本艦隊の戦艦2隻に対処する必要に迫られていた。

日本艦隊が再びフェーザー・ビームを放ったが、まだ距離が遠く駆逐型デストロイヤーの装甲を破るには到らなかった。

「こちらは既に必中の距離に入っている・・・。」レッチェンスは不敵な微笑を浮かべた。
 
「あの戦艦隊を葬れ!」彼の命令一下、ガミラス艦はフェーザー砲を放ったがそのビームは日本戦艦隊を
大きくかすめて宙に消えた。

「どうした! ちゃんと照準しろ!」レッチェンスは有り得ない部下の不手際に驚いた。

「照準はきちんと出来ています! 何故か砲塔が思う様に廻らないのです。」射撃手が信じられないという顔をした。

先に地球の突撃駆逐宇宙艦がガミラス艦に浴びせかけたのは強力な粘着物質だった。

ガミラス艦の砲塔と甲板の間に入り込み砲塔の旋回を邪魔していた。

旋回を完全に止める事はなかったが、微妙な旋回の微調整などとても出来る状態ではなかった。

しかし、幾多の戦乱を潜り抜けてきたガミラス軍はこのような事態に対する訓練も兵士に課していた。

艦艇がダメージを受けて砲の使用は可能だが砲塔の旋回が出来なくなった場合、砲塔側の照準は固定し、
艦艇の躁艦で照準をつける高度な技だ。

敵艦隊は自艦のフェーザー砲の有効射程まで接近するためにこの様な小細工を弄して来たにちがいない。

<ガミラスはこんな小細工には負けんぞ!>レッチェンスは更に闘志を燃やした。

しかし、沖田は一度は接近したがその後は何故か大きく距離をとって近づいてこなかった。

<何故だ? こちらは圧倒的に不利な状態だ。 何故攻撃してこない?>レッチェンスの疑問は直ぐに晴れた。

「大変です! 船外温度が急激に上昇しています。 現在3000度C! まだまだ上がります。」

ガミラス艦はどれも粘着物質にまみれて砲戦が出来ない状態だったが、日本艦隊は一度接近した時に
その粘着物質にフェーザー・ビームを照射し、発火させたのだ。

粘着物質は適度な酸素を含み、比較的ゆっくりではあるが高温を出して燃焼していた。

「ワープして脱出しろ!」危険を感じたレッチェンスは戦闘宙域からの脱出を図ろうとした。

「駄目です! 高温のため機関の制御がもはや利きません。」

機関部分に粘着物質をより多く被っていた2番艦の機関が高温に耐えられず爆発した。

「別働隊へ攻撃命令を! それも大至急だ。」

レッチェンスはスクリーン上の運命の定まった己の艦隊を見詰め、自分のコンソールをいとおしげに撫でた。

<今まで良く働いてくれたな、有難う。 デーニア・・・。>

デーニア・・・それは20年前に失った彼の妻の名だった。

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レッチェンスからの攻撃命令を受け取ったガンツは予定通り、木星の大気圏の最上層の直ぐ上にワープ・アウトした。

地球のプラントは木星大気圏の最上層に浮かんでいる様なものだ。

それを複数の宙雷戦隊が守っている・・・、遠距離から接近するとその宙雷戦隊に迎撃される恐れがあった。

だから、ガンツは事前の研究でプラントに出来るだけ接近してワープ・アウトする事が攻撃成功の鍵を
握っていると考えていた。

「ワープ・アウトします!」航宙士がガンツに報告した。

ガンツの乗った駆逐型デストロイヤーは無事、地球プラント直近にワープする事に成功したが、艦隊の後尾に
位置していた2隻は木星大気と物質重複を起こして大破してしまった。

大気の濃い部分だったら大爆発が起こって他のガミラス艦もただでは済まなかったろう、しかし、物質重複を
起こした大気分子は微量だったため、その艦だけに被害は極限された。

とはいえ、被害は甚大でその2隻はもはや航行する事が出来ず、木星の重力に引かれ、その艦体をメタンの海深く沈めていった。

ガンツはその艦に敬礼を送ると直ぐに地球プラントの攻撃、破壊を命じた。

あまりにもガミラス艦隊はプラントに接近しすぎていたため、地球側のプラント防衛を担っていた宙雷戦隊は
攻撃をしかける事が出来なかった。

もともと戦闘を想定していなかったエネルギー・プラントは攻撃に脆く、たちまち瓦解して木星大気の底に沈んでいった。

収まらないのは防衛部隊であった。

ガミラスの奇襲部隊に対して一矢報いようと無謀な突撃をかける宙雷戦隊が一つ、二つあったが、生き残った
司令官、沖田少将や李中将は復讐にはやる宙雷戦隊や戦艦部隊をなだめすかし、地球帰還の途につかせた。

例え、木星プラントが失われようとガミラスに決して膝を屈しない決意が地球側にはあったのだ。

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破壊されたプラントはプラントを維持する最小限の人員が残されていた。

そしてプラントが破壊された時、彼等は脱出船になる区画に避難しており、プラント破壊と同時にプラントから
切り離されて宇宙を漂っていた。

リットリオ技術大佐は部下達に睡眠ポッド入りを命令した。

助けが来るまで酸素の消費量を最小限にし、代謝も抑えて長時間の待機に備えるためだった。

しかし、時間が経てばたつほど救出の見込みが薄れるのは皆、判っていた。

「諸君! 再び、ここで合おう!」

リットリオは最後の別れになるかもしれない今、指揮官としては落第だと思いながらも部下達に感謝の敬礼を
捧げずにはおれなかった。

コーン、コーン、エア・ロックの方で何か戸を叩く様な音がした。

船外監視カメラを使ってエア・ロックのドアの前を見てみると地球軍の宇宙服姿が2人見えた。

他のカメラを使って船外全周を写してみると地球艦隊の巡航艦が来ていた。

低出力のレーザー通信が入った。

「こちら欧州艦隊所属、重巡『シャルンホルスト』、救援に来ました。 こちらに移乗して下さい。」

「ありがたい! 欧州プラント維持要員、リットリオ技術大佐以下6名、移乗します。」リットリオは申告すると
すぐ、部下に移乗を始めさせた。

他のプラント、アジア連合には日本艦隊の早期警戒艦「たかお」が米国プラントには戦艦「英雄」、「栄光」が
ソ連プラントには重巡「グナイゼナウ」が南半球連合のプラントには早期警戒艦「シドニー」がそれぞれ救援に
向かっていた。

ガミラス艦隊は地球プラントを壊滅させると長居は無用とばかりにワープして撤退していった。

しかし意気揚々と冥王星前線基地に帰還したガンツは尊敬していたレッチェンス司令の戦死を知り、体中から
力が抜けるようだった。

あの時、レッチェンス司令が攻撃司令を「大至急」実施しろと言ったのは自分が地球艦隊を引き付けておける
のはもはやこれまでという事だったのだ。
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<有難うございました。 司令・・・>ガンツの脳裏には艦体後部を真っ赤に塗ったレッチェンスの旗艦の
後姿が焼きついていた。

地球陣営は木星の資源・エネルギー・プラントを失い、その勢力は大きく後退する事になった。

                                                   ヤマト発進まで 1481日
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by YAMATOSS992 | 2012-05-08 21:00 | 本文 | Comments(0)