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宇宙戦艦ヤマト前史

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宇宙戦艦ヤマト登場前の地球防衛軍の苦闘を描きます。

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2012.08.08 図版追加
2012.8.29 図版追加

「申し訳ありません、どうやら『転移砲(ワープ・カノン)』を使い過ぎたようです。 

『シャルンホルスト』も『グナイゼナウ』も過熱で『転移砲(ワープ・カノン』が使えません。 今はガミラス艦隊の
位置情報だけしか送れません。」フローラーはフレイアの『グナイゼナウ』を一端、引かせると土方に報告した。
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ガミラス艦隊に暴れ込む重巡「グナイゼナウ」

ガミラス重巡の一隻は既に転移砲(ワープ・カノン)の攻撃を受け、光子化寸前である。



「判った。 威力偵察ご苦労! 後はまかせたまえ!」土方はガミラス重巡を6隻も撃破しながら奢らない
ライニック姉妹に好感を持った。

「さすが、『欧州連合』のエースですね。 凄い戦果だ。 冥王星会戦が悪夢の様だ・・・。」 『英雄』艦長、
山南はかつての苦しい戦いを思った。

「進歩しているのは、『欧州連合』だけではないぞ、 探知主任、太陽系の内側方面を重点的に走査しろ!」
土方は思わぬ方向を指示した。

「そちらですか?」広瀬艦長がたずねた。

「ああ、ワープ技術があるとして、君だったら素直に外周から侵入するかね?」土方が横目で広瀬を見た。

「なるほど確かに・・・。 ワープが実用化すると戦術も大幅に見直す必要がある・・・と言うことですな。」広瀬は
微笑った。

「そういう事だ。 艦隊の全艦がワープ出来る様になったら、艦隊というものすら意味をなさなくなる。 

ガミラスが今も艦隊を組んで行動しているのは何か、特別の理由があるんだ。」土方はガミラスの内情を
薄々掴んでいたのかもしれない、彼が「カミソリ」と言われている所以であった。

「感あり! ガミラス艦隊が天王星方面から侵入して来ます。」果たせるかな、土方の予想通り、ガミラス艦隊は
太陽系の内側から入って来た。

「敵は宙雷戦隊も同行しているか?」土方は敵の勢力を確認した。

「はい、第1偵察戦隊の報告どおり、2個戦隊が主力の周りを固めています。」探査主任が報告した。

重巡艦隊を失ったガミラスは主力周りに駆逐艦を配して球形陣を組み、宙雷戦隊の旗艦である軽巡が本来、
重巡が勤める最先陣の位置を占めていた。

「先手必勝だ!  こちらの宙雷戦隊を左右から突っ込ませろ!」土方が吼えた。

「了解、第1宙雷戦隊、右舷から突入します。」御蔵少佐が応えた。

第2宙雷戦隊の管野大尉は左舷からの攻撃を申告した。

御蔵少佐も管野大尉も負傷して冥王星会戦には参加出来ず、その戦友の多くがこの宙域で散った無念の
空間だった。

二つの突撃駆逐宇宙艦隊が冥王星の衛星カロンの影から出て、ガミラス艦隊に向かって突撃を開始した。

新造艦が間に合わなかった地球艦隊の駆逐宇宙艦は相変わらず、「ゆきかぜ」型の突撃駆逐宇宙艦だったが、
冥王星会戦の時と違い、今度は燃料も推進剤もたっぷり持っている、当然、反物性ミサイルも規定量を
搭載している。

管野大尉は無意識の内に舌舐めずりをしていた。

御蔵少佐は両手の親指と人差し指でファインダーを作ってガミラス艦隊をその中に納め、ニンマリとしていた。


**********************************************

ガミラス艦隊も球形陣を解き、駆逐艦は宙雷戦隊として隊形を組みなおして、地球艦の迎撃に向かった。

「地球艦隊を食い止めろ!」ヒルデン大佐は屈辱に顔を歪めていた。

訳の判らない内に重巡6隻を失い、裏をかいたつもりの侵入作戦も見破られてしまった。

『ヤマト』出現以来、神はどこまでもガミラスを見放しているようだった。

「司令、落ち着いてください! まだ、軽巡部隊の奇襲作戦が残っています。」グルト少佐は軽巡部隊に
別行動を取らせていた。

地球艦隊もガミラス艦隊も主力は宙雷戦隊であった。

そして、宙雷戦隊は艦隊護衛の役も果たしていた。

だから、どちらの艦隊も宙雷戦隊を放った以上、護衛をなくして丸裸の状態なのだ。

グルト少佐はそこに勝機を賭け、軽巡には地球艦隊が丸裸になったら、ワープで一撃離脱攻撃
(ヒット・エンド・ラン)をかける様、命じてあった。

このため、ガミラスの宙雷戦隊の任務は地球宙雷戦隊の阻止であった。

「よーし! 地球艦を思い切りひきよせるんだ!」ヒルデンは地球艦隊の前で単縦陣をつくり、丁字戦法を
とった駆逐艦隊に命じた。

ガミラス駆逐艦が地球駆逐艦を食い止めている内にガミラスは主力である駆逐型デストロイヤーの砲撃で
地球宙雷戦隊を殲滅、浮き足立った地球主力艦隊を軽巡部隊が一撃離脱攻撃(ヒット・エンド・ラン)攻撃で
仕留めるというのがグルト少佐の作戦だった。

しかし、彼は地球主力艦隊の主砲が自分達のフェーザーより長射程のショック・カノンだという事を
知らなかった。

まだまだ砲撃戦に入る距離ではないと、たかをくくっていたヒルデン艦隊はいきなり超長距離からの
大口径フェーザー砲の射撃を浴びて驚いた。

しかも、地球宙雷戦隊の前に立ち塞がったガミラス駆逐艦を一隻、また一隻と的確に破壊して見せたのだ。

地球駆逐艦とガミラス駆逐艦の距離は1000mを切っていた。

それを敵味方をきちんと区別して砲撃した地球側はこの任についた時とは比較に成らない位、錬度が
上がっていた。

「旨くいきましたね。」広瀬艦長は土方提督にいった。

「こっちは大分、稽古したからな・・・。 しかし、勝負は終わっていない。 これからだ。」

土方の言葉が終わるか、終わらない内にガミラス軽巡が出現した、そして、フェーザーを一連射、撃ちかけると
直ぐにワープして消えた。

『英雄』は艦首部分に3箇所、被弾し、艦首ミサイルが4門使えなくなった程度だったが、『あたご』は艦橋の上に
載せた巨大なコスモ・レーダー・アンテナに被弾し、一時的ではあるが策敵が出来なくなってしまった。

<やはり、ガミラスは侮れん、 海千山千の司令官がまだまだいる様だ。>土方は怒号渦巻く艦橋で唇を
噛んだ。

**********************************************

その頃、ガミラス主力艦隊の駆逐型デストロイヤー4隻も地球の宙雷戦隊2個、10隻の猛撃を受けていた。

地球駆逐艦隊はまず艦尾船体上部に設置された8門のVLS(垂直発射管)から反物質ミサイルの雨を
ガミラス艦隊に浴びせた。

10隻分、80基の反物質ミサイルがガミラス艦隊を襲う、反物性ミサイルは脱エネルギー系の武器だが、
反物質ミサイルは予エネルギー系の武器なので爆発時には猛烈な爆光を伴っていた。

しかも、ガミラス主力艦隊は先の第1偵察戦隊との戦闘で外部監視カメラを失い、今は予備のカメラで戦って
いたのだが、その予備カメラも今の爆光で機能を失ってしまった。

「予備カメラに切り替えろ!」ヒルデン大佐が叫んだ。

「駄目です! 探査主任! 光学探知システムから電磁波探知システムに切り替えろ!」グルト少佐が
訂正した。

メイン・スクリーンの画面がレーダー画面に変わったが、そこに写っていたのは数え切れない無数の光点だった。

それが何を意味するのか、理解したヒルデン大佐の顔が恐怖に引きつった。

ガミラス艦隊が探知システムの切り替えでもたついていた隙に地球宙雷戦隊は更に距離を詰め、艦首に
ある3門の大型反物性ミサイル(空間魚雷と仇名される)を3連射したのだ。

1隻3門、3基、10隻で30基、3連射で90基の「空間魚雷」がガミラス艦隊を襲った。

いくらガミラス艦のフェーザー砲が強力でも近距離から発射された90基もの「空間魚雷」は防ぎ様がなかった。

ガミラス艦隊主力、駆逐型デストロイヤー4隻はそれぞれ重力崩壊を起こして重力井戸の底に消えていった。

地球主力艦隊に一撃離脱攻撃(ヒット・エンド・ラン)をかけて来た軽巡部隊は戦場から少し離れた宙域を
地球主力艦隊に第2撃をかけるべく、用意をしていたが、自分達の主力艦隊が先に撃滅されてしまったので
おおいに慌てた。

しかし、彼等に撤退は許されなかった。

絶滅寸前まで追い込んだ星系の反撃で前線基地を奪われ、更にそれを奪還すべく向かった艦隊も
ほぼ全滅したのだ。

このままバラン星に返ってもゲールに処刑されるのがおちだった。

そんな不名誉な死より勇士としての死を選ぶしかない彼等なのだ。

それにワープの出来る彼等はまだワープの出来ない地球の主力艦隊より優位に立っていると言えた。

最後まで戦う決意を軽巡艦隊の司令官が固めた時、僚艦が猛烈な光を放った、

たちまち旗艦のスクリーンはブラック・アウトしてしまった。

予備カメラは使いきっていたので外部探査を電磁波探査に切り替えたが、そこには何も写っていなかった。

もちろん、そこには写っているべき僚艦の姿はなかった。

<先ほどの正体不明の攻撃か・・・。>司令は額に汗を滲ませた。

<いかん!>司令は次は自分の艦の番だという事に気が付き、直ぐにワープして現在の位置から脱出する
事を考えた。

しかし、彼がワープの命令を発する直前に『シャルンホルスト』が放った転移砲(ワープ・カノン)が彼の艦に
命中した。

たちまち、彼の軽巡はワープで送り込まれて来た物質と物質重複を起こして光子となって飛び散った。

ガミラス軽巡の艦長は自分がやられた事も判らないまま、常世の世界に旅立っていった。

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重巡(装甲艦) 「シャルンホルスト」 (大改装後) 国連宇宙軍 欧州艦隊所属
                                       同型艦「グナイゼナウ

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 地球艦隊主力はダメージ・コントロールに必死だった。

<くそっ、今、攻撃されたらひとたまりもないぞ・・・。>土方は油断していなかったつもりであったが、ワープを
使った戦術にまだ慣れていなかった自分が腹立たしかった。

と、その時、『あたご』の艦橋の窓から稲光の様に猛烈な光が2閃、差し込んだ。

「今のは一体・・・。」広瀬艦長は戸惑って土方の顔を見た。

「転移砲(ワープ・カノン)だ。 第1偵察戦隊がやってくれたんだ。」土方は微笑した。

『あたご』のコスモ・レーダーが応急修理が出来て探査が可能になって周囲の空間を探査してみても既に
ガミラス軽巡艦隊の姿はなく、代わりに第1偵察戦隊の姿があった。

「一体、転移砲(ワープ・カノン)ってどんな兵器なんです?」戦術士官が広瀬艦長にたずねた。

「それはワープを利用した兵器さ・・・。」広瀬はさらっと答えたが、土方は広瀬が本当には理解していない事を
感じて微笑した。

転移砲(ワープ・カノン)はワープを利用して敵艦に物質を送り込み、物質重複を起こさせて全てを光子に変えて
飛散させる兵器だった。

しかし、ライニック姉妹と大山技官が開発していた時は目標と弾の質量中心をどうしても一致させる事が
出来ず、実験は失敗続きだった。

だが、今は連続使用による過熱の問題はあるものの、実用の域に達していた。

それは大山技官の逆転の発想によるものだった。

ライニック姉妹はかつてのガミラスとの戦闘でガミラス艦がワープ出来る事を逆手に取ってガミラス艦が
ワープしてくるであろう予想空間に反物性ミサイルを待機させ、ガミラス艦が纏っているワープ・フィールドに
ミサイルが引き寄せられる形で物質重複を起こさせていた。

それはレースでレーサーが自分の前を走るライバルのスリップ・ストリームに入り、自車を引っ張らせるのに
似ていた。

つまり、ワープ終了直前のガミラス艦はまだ量子論的に言って丁度、気体の状態に近いものがあり、
固体のミサイルの質量中心に引っ張られる様にガミラス艦の質量中心が合わさり物質重複が
起きていたのだ。

しかし、転移砲(ワープ・カノン)の場合、的は通常空間にいてその質量中心は完全に固定している、
このため、弾をワープさせて質量中心を一致させようとしても弾かれてしまって的を破壊する事は
出来なかった。

大山は反対にワープさせる弾の方を気化させたらどうなるかと考えたのだ。

だが、単にガスをワープさせるのではガスが拡散し過ぎて物質重複の効果が出ない可能性があった。

そこで、大山は『ヤマト』に積んだもう一つの新兵器、『三式融合弾』に目を付けた。

目標にワープ終了点を照準する事はそれ程難しい事ではない事が冥王星会戦の裏で行われた地球独自の
ワープ実験の結果、判っていた。

大山は敵艦にワープ終了照準をつけておき、『三式融合弾』をワープ・ゲートを通してワープさせるが、
『三式融合弾』はワープ・ゲート突入直後に爆発させて気化した状態にしておく、爆発開始状態のまま敵艦の質量中心にワープさせれば『三式融合弾』の質量中心は敵艦の質量中心に引き寄せられて
物質重複を起こし、全ては光子になって飛び散るという理論だった。

 そして、大山の理論は間違っていなかった。

その証拠に今回のガミラス艦隊の再来襲に絶大な力を発揮し、地球艦隊の勝利に貢献した。

<だが、この兵器は地球防衛軍の主力兵器にはなるまい・・・。>土方は感無量だった。

彼は、かつて、この転移砲(ワープ・カノン)は波動砲の対極にある兵器だと言った。

それはどちらも防御不能の兵器だと思われがちだが、波動砲のビームは通常空間を走る以上、地球級の
惑星を貫いて敵を撃破する事は出来ない。

だが、転移砲(ワープ・カノン)は目標との間にどんな障害があろうとも確実に仕留められるのだ。

そして、波動砲はその砲口から出るビームの拡散度をコントロールする事で一撃で1艦隊を葬る事も可能だが、
それは必要の無い目標まで破壊してしまう大量破壊兵器である事を意味した。

転移砲(ワープ・カノン)は波動砲と異なり、目標を選んで破壊出来る特性を持っていた。

それは大量破壊兵器ではない事を意味していたが、反面、一撃で1艦隊を撃滅する力は無かった。

すなわち、波動砲は防御兵器として使う時、その特性を一番良く発揮出来、反対に
転移砲(ワーープ・カノン)は攻撃兵器、悪く言えば侵略目的の攻撃兵器として使った時、
一番良くその特性を発揮するのだ。

倒したい敵、壊したい目標だけを選んで攻撃出来るからである。

地球はまだ復興していないが『ヤマト』がその任務を果たし、地球が救われても地球はガミラスの様な
侵略国家にだけはなってはいけないと心に誓う土方だった。


                                        ヤマト発進から4ヶ月 人類滅亡まで242日
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by YAMATOSS992 | 2012-07-24 21:00 | 本文、追記 | Comments(0)
 「ガミラス艦隊探知! 戦艦4、重巡航艦2、軽巡航艦2、駆逐艦10、輸送艦と思しき大型艦を2隻伴って
います。」

広瀬艦長は土方提督の顔を見た。

土方は目をつぶって下を向き、靴先で床を突いた。

これは彼が何か、不満を持っている時のクセである。

「探知主任! ガミラスの巡航艦の区別がここからつくのか?」広瀬は探知主任にツッコミを入れた。

「はい、探知出来た巡航艦の数は4隻です。 しかし、伴っている駆逐艦の数は10隻、これはガミラスの
標準的な宙雷戦隊2個分です。

宙雷戦隊の旗艦は軽巡、すなわち探知出来た巡航艦の内、2隻は軽巡のはずです。 

そして残りの巡航艦2隻はガミラス艦隊が標準編成なら威力偵察用の重巡のはずです。」

「はず・・・か。 君の推論はいい、探知機器から得られる情報だけを伝えたまえ!」広瀬は訓練学校を優秀な
成績で出てきたはずの新しい士官にうんざりとした顔で注意した。

「まあいい、 訓練を続けたまえ。」土方は広瀬と同じ気持ちだったが、贅沢は言っていられない。

本来なら傍らにいるはずの優秀な士官候補生達は「ヤマト」に乗って宇宙の彼方だ。

土方のとりあえず、手を付けるべき任務は更に若い士官候補生達を一刻も早く使い物になる様にする事だった。

<さあーて、次はどう出る、ワルキューレよ・・・。>土方はたった2隻しかいないはずの装甲艦で仮想敵を
演じているライニック姉妹の手腕に舌を巻いていた。

幾ら新米で経験が少ないと言っても一応、訓練を積んだ探知手達である。

それを全て欺いて標準的なガミラス艦隊が本当に来襲してきたかの如く、誤情報をさりげなく流しているのだ。

これは単なる電波妨害(ECM)とは違う、電波欺瞞(EMD)と呼ぶべき高等戦術だった。

戦力的に圧倒的に劣っていた通商破壊艦隊、装甲艦2隻と軽巡4隻で土星空域を荒らしまわり、1年半に渡って
ガミラスの通商路を脅かし続けたのも判る気がした。

地球艦隊が木星のエネルギー・プラントを守り切れず、地球艦隊の行動範囲は火星以内に押し込められた
ために活躍の場を失って地球で不慮をかこっていたが、冥王星会戦を陽動として地球独自の技術だけで
行われたワープ実験に協力して後にイスカンダルから送られた波動エンジンやワープ理論の確率に
大きな貢献をしたのも彼女達だった。。

 しかし、ライニック姉妹は今回の遠征には軽巡は連れてこなかった、というより、もはや、欧州艦隊に軽巡は
いなかった。

木星会戦の緒戦等、今までの長い戦いのなかで全て失われてしまっていた。

装甲艦「シャルンホルスト」と「グナイゼナウ」の2隻が欧州艦隊の大型艦、最後の生残りだった。

この2隻だけでガミラス艦隊を演じて見せているのだ。

「ガミラス艦隊、更に接近、ショック・カノンの射程距離に近づきます。」探査主任が報告する。

「ショック・カノン、射撃用意! 射程距離に入り次第、『英雄』とのリンク射撃を始めろ!」土方提督が命令した。

「提督! これは訓練ですぞ! 本気で撃ったら同士討ちになります!」広瀬艦長が注進した。

「かまわん! 見ていたまえ、本物の『戦士』の戦いを!」土方はライニック姉妹の実力を先程の接触で
看破したのだ。

「敵艦隊に照準完了! 『英雄』との射撃リンク良好! いつでも射撃できます!」測的手が言った。

「撃ち方始め!」戦術長の命令が艦橋に響いた。

リンク射撃、それは複数の艦が射撃データを共有し、あたかも1隻の船が射撃する様に精度良く攻撃する
方法だ。

「英雄」の艦首と「あたご」の艦首から3本づつの18インチフェーザー・ビームが更に高エネルギーを与えられて
白色に輝きながら仮想ガミラス艦隊を襲う。

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  ( ショック・カノン砲 の リンク射撃を行う重巡・『あたご』と戦艦・『英雄』 )


「なに!」広瀬は目を疑った、先頭艦はあたかもそのビームが見えているかの様に船体をひねってかわした。

光速で走るフェーザー・ビームの射線を見切る事など人間に出来る業ではない。

それでも「英雄」と「あたご」のリンク射撃は止まず、探知している目標に次々とビームを送りこんだ。

しかし、それらの目標の位置はことごとく、「シャルンホルスト」が送り込んだ欺瞞データであった。

ビームは次々と空しく宙を切って宇宙の彼方へ消えていった。

「うぬ・・・。」闘志を剥き出しにした、広瀬艦長だったが土方はおもむろに別の命令を発した。

「全艦、対ショック、対閃光防御! 光学探知装置のスイッチは全てオフにしろ!」

「まさか、波動砲・・・って、こちらは持っていません。 敵が撃ってくるのですか!?」戦術長はあおくなっていた。

「いいから黙って命令に従え!」広瀬艦長が部下の不手際に再び切れた。

「ガミラスは波動砲をまずは持ってはこまい、安心しろ。」土方は諭す様にいった。

全員が準備を終えたその時である。

艦隊が潜んでいた小惑星の集団の、(といっても外洋より少し小惑星の比率が高いといった程度の空間
だったが・・・。)小惑星の一つが猛烈な光を発して消滅した。

「ヒエ~ッ 今のはなんです。 光学探知機器の電源を落としていなかったら全艦隊の光学探知能力が
やられる所でしたよ。」
広瀬艦長はゴーグルをかけたままだったが、今まで見た事のない爆発に驚いているのは明らかだった。

小惑星が一つ確実に消えていた、しかし、その爆発で起こるであろう爆圧は全くなく、艦隊はピクリとも
揺さぶられなかった。

その小惑星の全質量は全て光子に変換されて飛び散ったのである。

光子に質量はない、だから爆風を生む事はないが、もし、光学探知装置が生きていたらその受光部は
たちまち焼けきれていただろう。

「これが『転移砲(ワープ・カノン)』だ。 波動砲の対極にある兵器だよ。」土方は感慨深げだった。

**********************************************

 「判っておろうな! ヒルテン大佐、冥王星の基地奪還は我が帝国の名誉に係わるのだ。 幸い、基地を
落した「ヤマト」は今、我がバラン星基地を目指して航行中だ、太陽系内にはもはや我々に抵抗するだけの
戦力は残っていまい!

必ずや冥王星基地を奪還し、速やかに地球に対する遊星爆弾攻撃を再開するのだ。」
銀河方面軍作戦司令長官、ゲールは新たに太陽系方面司令に任ずる予定のヒルテン大佐に激をとばした。

「はっ! デスラー総統万歳!」ゲールの命令に敬礼で応えるヒルテン大佐だったが、部下の作戦参謀であり、
副指令予定のグルト少佐はこの作戦は慎重をきすべきだと思っていた。

あの冥王星基地をたった1隻で滅ぼし、脱出したガミラス艦隊も悉く沈めた「ヤマト」を作った地球陣営・・・。

絶滅寸前のところで、この反撃である、他の勢力の助けがあったとしか、思えなかった。

かと言って、ガミラスが今、戦っている他の勢力は有力なものでもとても他星系の援助を出来るものは無い。

と、すれば、地球に救援の手を差し伸べたのは全く未知の勢力だという事になる・・・、それもかなり強大な
勢力だ。

これは「ヤマト」などとは比較に成らない大問題だった。

<ともかく、冥王星の奪還作戦は相手の出方を良く見極めて行う必要がある・・・。>グルトは重巡による偵察を
まず行う様、進言した。

しかし、ヒルデンは違っていた。

「もはや、太陽系は青気吐息だ。 『ヤマト』がいれば話は別だが、今の状態で我々に抵抗出来る力などあろうはずがない!」そう言って艦隊を航行編成のまま、堂々と太陽系の方面へ進めていった。

確かにヒルデン艦隊は大型戦艦こそ、いなかったが、駆逐型デストロイヤー4隻、重巡6隻、軽巡に率いられた
宙雷戦隊4個とかなり有力な艦隊で「ヤマト」がいない今、普通に考えれば、冥王星を再奪還するには
充分な戦力と言えた。

グルト少佐は他星系勢力の干渉の可能性を訴えたが、<そんな兆候は何処にもない!>と相手にして
もらえなかった。

<ともかく、油断せず、王道を歩むしか、あるまい・・・。>グルト少佐は艦隊編成をしっかりと見直した。

**********************************************

 「ガミラス艦隊発見、これは訓練ではない!座標・・・。」早期警戒艦の装備をそのまま残している「あたご」から
地球艦隊全軍に警報が走った。

予てからの計画通り、ライニック姉妹の第1偵察戦隊が飛び出してゆく。

2隻の装甲艦は他の艦とあまりに設計思想が違うので土方は偵察艦隊として使う事にしたのだ。

また、「転移砲(ワープ・カノン)」を含めた新装備も機動力があってこそのものだと彼は思っていた。

「あっという間に消えていきましたね。 まるでワープしたみたいに・・・。」戦術長が感心して言った。

「お前はまだ、実際のワープを見た事がないんだな、 今のがそうだ。」広瀬艦長が得意げに言った。

「えっ、ワープは『ヤマト』しか出来ないはずでは・・・。」戦術長は戸惑っていた。

「確かに、人類史上初めてワープを成功させた船は『ヤマト』だ。 しかし今は他の船でも出来る艦もある。

特に、『シャルンホルスト』、『グナイゼナウ』の様な機動力を武器にする艦には真っ先に装備したんだ。

ただし、『ヤマト』の様に1千光年なんて大遠距離をジャンプする必要はない、1光時も跳べれば充分だがな。」広瀬は親指を立てて見せた。

しかし、1光時といったら約11億kmである、それを一瞬で跳ぶとは、今までの地球艦では考えられない
航行力だった。

「シャルンホルスト」と「グナイゼナウ」はその能力を目一杯使って、ガミラス艦隊の後方にワープして専位した。

<ガミラス艦隊はこちらに気付いている様子はないわね。>フローラーはフレイアに心の声で話かけた。

<確かにな、こいつら俺達を舐めきっている様だな。 少し、遊んでやるか・・・。>

<適当にしておきなさいよ。 でも、転移砲(ワープ・カノン)の射撃リンクだけは成立させておいてよ。>

<了解! じゃ、行ってくるわ!>フレイアはそう言い残すと「グナイゼナウ」をガミラス艦隊の前にワープ
させた。

**********************************************

 「地球艦出現! まるでワープして来たみたいです!」戦術士官が驚きの声を上げた。

「馬鹿な! 地球艦で辛うじてワープ出来るのは『ヤマト』だけだ。 探知手! お前が接近を見逃したのだろう!」ヒルテン大佐は部下を叱咤した。

「司令! 敵艦が突撃してきます。 迎撃命令を!」グルト少佐が迎撃を促した。

しかし、部下達は「グナイゼナウ」の突撃の凄まじさに耐えられず、迎撃命令が出る前にフェーザー砲を
撃ちかけた。

だが、フレイアは「グナイゼナウ」を単座戦闘機の様に操って次々とビームを避け、あっという間に
ガミラス艦隊の只中に侵入していた。

こうなるとガミラス艦隊は同士討ちを恐れて攻撃出来ない。

反対に「グナイゼナウ」にとっては周り中、的は選び放題だった。

しかし、「グナイゼナウ」は沈黙したままだった。

「そうか! 『ヤマト』以外の地球艦はこちらの装甲を破れるフェーザー砲を持っていないんだな!」
ヒルデン大佐は狂喜した。

「右舷の艦艇の相対位置を下げさせます。 そして、左舷の艦艇に攻撃させましょう。」グルト少佐が進言した。

「よし、それで行こう! 地球艦め、お前の運命もこれまでだ、覚悟しろ!」ヒルデン大佐はグルト少佐の意見を
始めて取り入れた。

右舷のガミラス艦隊が相対位置を下げ始めたのを見て、フレイアはガミラスも地球も考える事は同じだと思った。

<姉貴、用意はいいか、ガミラスはこっちの思う様に行動してくれているぜ。>フレイアは姉に呼びかけた。

<判ったわ、敵艦の位置情報はリンク・システムで全部把握したわ。 そちらも光学探知装置を閉まって。>
フローラーが応えた。

<よし、全部閉まった、いつでもいいぜ!>フレイアの思考が終わるか、終わらない内にガミラス艦の砲撃が
始まった。

フェーザーを撃ちかけて来たのはガミラス艦の中でも大口径の砲を持っている重巡航艦であった。

そのフェーザーの口径は39.9cmもあった、しかし、「グナイゼナウ」も主装甲面、一番装甲の厚い艦底部を
そちらに向けていたのでガミラス重巡のフェーザーも弾き返した。

だが、さすがのフレイアも大口径フェーザーの命中で艦が揺さぶられるのは気持ちの良いものでは無かった。

<姉貴! 早くしてくれよ! こっちはそう持たないぜ!>

フレイアの悲鳴に応えるかの様に攻撃を加えてきていたガミラス艦隊の先頭艦が猛烈な光に包まれた。

ヒルデン大佐は自分の艦のスクリーンがいきなり、真っ黒になり、何も写らなくなったのに驚いた。

「一体、どうしたのだ! あの地球艦はどうしたんだ!」

「判りません! 外部監視カメラを切り替えてみましたが、外周のカメラは全部、死んでいます!」

<あの光がカメラを殺したのか・・・。 それにしても反対舷の右舷のカメラも殺すとはなんと強い光なんだ。>
グルト少佐は驚嘆したが、まさか、カメラだけではなく、艦隊そのものに損害が出ているとはさすがの彼も
思わなかった。

5分後、ヒルデン艦はようやく、予備カメラに切り替える事が出来たが、そこに写った物を見たヒルデン達は
その目を疑った。

艦隊の外周を固めていた、重巡航艦、6隻が全て姿を消していたのだ。

艦隊通信で呼びかけてみたが応答は全く無かった。

しかし、地球艦の姿もなかった。

<こちらがめくらになっているうちに相打ちになったのか・・・。 しかし、一体、何が起こったんだ?>
グルト少佐は眉をしかめた。

6隻の重巡が地球艦と戦闘をし、相打ちになったとしたら、何らかの戦闘の痕跡があるはずだった。

いくら、ヒルデン艦が外部監視カメラを破壊されていたとはいえ、外部で6隻の重巡が破壊される様な戦闘が
あれば僅かでもそれが感じられる衝撃があったはずだ。

それに人体には感じられなくても計器にはなんらかの記録が残るはずだった。

しかし、そこには、何の記録も残されてはいなかった。

何か、不気味なものを感じつつ、ヒルデン艦隊は冥王星を目指して最後のワープに入っていった。


                                        ヤマト発進から4ヶ月 人類滅亡まで243日
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by YAMATOSS992 | 2012-07-20 21:00 | 本文、追記 | Comments(0)
宇宙戦艦「ヤマト」が発進して2ヶ月が経とうとしていた。

人類初のワープ、木星、浮遊大陸での激戦、土星圏でのガミラス地上部隊との初戦闘、そしてガミラス
冥王星前線基地との死闘と、宇宙戦艦「ヤマト」は善戦しつつもガミラスの侵略に次第に追い詰められて
いった地球防衛軍の怨念を晴らすかの様に次々と勝利を重ねていった。

特に冥王星前線基地を落せたのは大きな戦果だった。

人類の滅亡を加速する、遊星爆弾の戦略核攻撃を止める事が出来たからである。

しかし、後に残された人々は「ヤマト」が遠くなるにつれ、その旅のあまりの長さと困難さに絶望を抱き初めて
いた。

「ヤマト」との通信は途絶えた、「ヤマト」よ、お前は今、どこにいるのか?どこまでいったのか?
そして健在なのか?

そうした狂おしい想いが人々の間に広がっていた。

**********************************************

「しかし、我が国民は逞しいあるね・・・。」中華連合の李中将は得意そうに言った。

ヤマト発進後の太陽系全域を対象とした戦略防衛会議が始まる前の事である。

「何か、困った事でも?」土方少将は<逞しい?>と言う言葉に疑問を抱いた。

中華連合は本体の中華人民共和国がほぼ99%の人口を失って大打撃を受けたはずであった。

それが<逞しい?>とは一体どういう事だろう、土方は歴史上、常に日本の先生であった中国の考え方に
興味を持った。

「今、中華連合の生き残り達は何をしようとしていると思うかね?」 土方は判らないとジェスチャーで示した。

「地球防衛軍への大量志願よ。 確かに朕のところには駆逐宇宙艦隊がかなりの隻数、残っているよ。 
でも、それを3交代勤務で運用しても追いつかない数の志願者が殺到しているよ。」

「宇宙勤務の方が放射能汚染による危険少ないとの考えでしょうか?」

「確かに、朕も最初はそう考えたよ。 でも我が国民はそんな消極的な民族ではないよ。」

「と、言うと?」土方がそこまで言った時、戦略防衛会議の議長が到着し、会議が始まった。

議長が会議の口火を切った。

アメリカ副大統領だった。 しかし、壇上には人影は無く、代わりに鷲の置物が置かれていた。

「現在、極東方面軍の「ヤマト」が・・・「放射能除去装置」を手・・に入れるべく、イスカンダルへ向かって・・・
困難な旅をしている・・・。

後に残った・・・我々が・・・、ただ、座して「ヤマト」の帰りを・・・待っていていいのだろうか!」その声は
途切れ々だったが力強かった。

土方はその声の元が壇上の机の上置かれた鷲の置物からしているのに眉をひそめた。

しかも、声の元はその壇の下には置かれたカプセルからしているらしかった。

土方の予想通り、カプセルの中には米副大統領、ヘリー・トルーマンが半死半生の身を横たえていた。

<ホワイト・ハウスは遊星爆弾の直撃を受けて全滅したわけではなかったのか・・・。 しかし、こんな姿に
なっても世界を牛耳ろうとする、アメリカはやはり逞しい国だ。>

土方がそんな想いを胸に同席していた藤堂長官の方を見やった。

その時、北欧のスエーデンの代表が発言を求めた。

スエーデンは巨大な岩盤の上に国家が乗っている国だった。

そして、ガミラス侵略前でも、中立を維持する必要上、強固な武装をしているので有名な国でもあった。

しかも、その武器、航空機や船舶は1970年代ごろには既に地下基地に収納されているのは当たり前であった。

ガミラスの遊星爆弾攻撃にもいち早く反応し、国民の多くを地下に避難させる事に成功していた。

各国はスエーデンから地下基地の設営、運用を学び、ガミラスの執拗な遊星爆弾攻撃に耐え続けてきたので
ある。

スエーデン代表は言った。

「『ヤマト』が出発して放射能除去装置を受け取って帰ってくるまでこの地球上で我々がなせる事は残念ながら
ありません。」

「黙って『死』を待つべきだと言うのか!」血の気の多いイタリア代表が噛み付いた。

「確かに、スエーデン代表のおっしゃる通り、この地上では我々は何も出来ませんな。」英国代表が
スエーデン代表に同調した。

「我々、ラテンの血を持つ者はこのまま黙っている事など出来ないぞ!」スペイン代表もイタリア代表に組した。

「最後までお聞きなさい。 我々は「地上では・・・」と言ったのです。」英国代表は大英帝国の末裔らしい言葉で
英国の考える計画を話した。

地球や火星の地表は放射能汚染で人の住める環境ではなくなっている、しかし、宇宙空間は「ヤマト」が
ガミラスの冥王星前線基地を叩き、太陽系からガミラスの勢力を一掃してくれたのでとりあえず、宇宙は安全
である。

幸い、月面の工業地帯もほとんど無傷で生き残っている。

この二つから我々太陽系に残された者が為すべき事は、第1に現在の生存者を安全な宇宙空間そのものに
避難させる事ではないかと考えたのだ。

第2にガミラスに破壊された木星プラントの再建も必要だった。

いまは、放射能にまみれた地球の資源を仕方なく使っているが、それも残り、僅かだった。

であれば、木星プラントの再建工事を始めれば、大量の労働者と技術者が必要となる。

地球に残った者の内、働ける者はこの工事に従事してもらえば、雇用も居住も確保出来、一石二鳥だという
意見だった。

アフリカ代表が一つの懸案を挙げた。

太陽系からガミラスを一掃出来たとはいえ、「ヤマト」帰還前に再び襲来するかもしれない、その用意は
どうするのか、と言う意見だった。

それに応えたのは欧州連合艦隊総司令、ヒッパー少将だった。

「宇宙空間居住のためのスペース・コロニー建造や木星プラントの再建にはイスカンダルからもたらされた
オーバー・テクノロジーは積極的には必要ありません。

どちらかと言うと、再来襲するかもしれないガミラスやその他の好戦的勢力の排除に用いる必要があるでしょう。

生き残った各艦隊の技術部には急ぎ、新兵器を開発させています。

とりあえず、今、生き残っている大型戦闘艦で艦隊を組み、補給船を付けて冥王星付近を警戒させます。

その間、地球本土や木星プラントはアジア艦隊が比較的大量に持っている駆逐宇宙艦で防衛、その間に
新造艦を建造する、と言う案ではどうでしょうか?」

いやがおうでもなかった。

ほとんどそれ位しか、出来る事はなかったのだ。

とはいえ、地上で、放射能の脅威に脅え、ただ、死を待つのに比べたらやる事があるというのは幸せだった
かもしれない。

会議が終わり、退出しようとした李中将は土方少将に呼び止められた。

「判りましたよ。提督、確かに貴国の国民は耳が良いですね。」

「別に彼等は今の結果を知ってはいなかったよ。 こうなると判っていただけよ。」李は心外だと言わんばかりの
口調だった。

「だから、航宙士の資格を取っておけば、後の就職が楽になるというわけですか。」土方も負けていなかった。

「違うよ。『日本人如きのみに名をなさせたくない!』と皆、思っているだけよ。」土方は自分の国名に
「世界の華」と名付けて恥じない誇り高い民族の真髄を見た想いがした。(「中華人民共和国の「中華」とは
「世界一」という意味である。)

特に中国、明の時代の宦官武将、鄭和による7度に渡る南海大航海は中国人の誇りである。

鄭和はアフリカ、ケニアのマリンディに達し、珍しい動物としてキリンを持ち帰り、時の皇帝、永楽帝を喜ばせた。

鄭和の船団は大宝船と呼ばれる大型船(約、全長140m、排水量3000t?)を中心に1700隻もの船で構成
された大船団だった。

彼は一説によると六分儀による航海術を持ち、世界1周をも成し遂げ、南極大陸にも足跡を残したという。

そういう偉人を持つ中国にしてみれば「ヤマト」は地球のため、ひいては民族のために支援しなければならない
対象ではあるものの、やはり感情的には悔しさがつのるのも無理からない事ではなかった。

「その感情を良い方向に導くのが朕達、上に立つものの仕事よ。 とりあえず、航宙士は中国が調達するよ。

船の方はソ連、米国にまかせるある。」そう言って李中将は笑って見せた。

**********************************************

 「と言うことは、とりあえずの防衛は大型戦闘艦を持つ我々の仕事という訳ですな。」欧州連合の
ヒッパー少将は土方に言った。

「イスカンダルからもたらされたオーバー・テクノロジーは全て開示していますが、そう、簡単に新造艦は
造れますまい。

当然、冥王星を再びガミラスの手に渡らせないためには早急な艦隊派遣が必要となります。

しかも、現有のガタが来た旧式艦ばかりでね。」土方は途方にくれていた。

「沖田提督がメ号作戦で大敗を喫した時とは違って今回、我々は大型補給船を伴って出撃する事が出来ます。

そう悲観したものでもない、と思いますよ。」ヒッパー少将は楽観的だった。

「冗談じゃない! 今ある大型艦艇でガミラス艦と一寸でも戦えるのははショック・カノン3門を艦首に
固定装備した『英雄』ただ1隻だけだ。

後の戦力は全て突撃駆逐宇宙艦でまかなうつもりですか!」土方は少し焦っていた。

少ない戦力を小出しにするのはかえって損害を大きくする愚策だと判っていたからだ。

「アジア連合、日本艦隊の早期警戒艦は何隻残っています?」ヒッパーは突然、何も関係ない様な事を
聞いてきた。

「開戦時と変わらず、2隻ですが、それが何か?」少しの間をおいて、土方はヒッパーの言わんとする事に
気付いて膝を手で打った。

「そうか! 他国も早期警戒艦の損害は非常に少なく、太陽系全域に哨戒網を張るには充分な隻数だ!

しかも、今、我々が保有している早期警戒艦「たかお」、「あたご」は元々、重巡!

それも準戦艦と言って良い位の砲数と装甲を持っている、機関も「英雄」並に出力を増やすのは不可能では
ない!

と、言う事はどちらか一隻でもショック・カノンを3門搭載すれば、「英雄」と再びリンク射撃が出来る戦隊を
組める!」

ヒッパー少将はさすが、カミソリ土方と言われた男の勘の良さに感じ入っていた。

「しかし、ヒッパー少将、これでもまだ『ヤマト』1隻の戦闘力に遠く及びませんが、欧州連合には何か策が?」土方はヒッパーと言う男の奥深い知恵に、まだ何か、考えている・・・、と踏んだのだ。

「ええ、その件なら、うちの所の「跳ね返えりども」とそちらの「大技術者」が何か、開発しているみたい
ですよ。」

<欧州連合の跳ね返えりども・・・?>、<日本の大技術者?> 一体、誰の事だ? これはさすがの
土方にも判らなかった。

**********************************************

「よーしっ、もう一回やってみよう、フローラー、用意はいいか?」大山は「ヤマト」を送り出して暇になった訳
ではなかったが、

直々、空きを見つけては欧州連合の技術部を訪ねていた。

「いいも悪いも、やるしかないんだろ!」フレイヤのやけっぱちなチャチャが入った。

「試験弾頭、発射!」大山の合図でフローラーの目の前にある射撃管制盤のモニターに発射された試験弾頭の
航跡が写っていた。

そしてその弾頭は『ヤマト』がワープする時の様にワーム・ホールに突入、消えていった。

「やっぱり駄目だ・・・。」別の観測器のモニターを見ていたフレイヤが言った。

試験弾頭は超空間の中で行方不明になっていた。

「何が悪いんでしょうね、ワープの照準ってピンポイントでは設定出来ないんじゃない?」フローラーが溜息を
ついた。

「姉貴でも命中させられないんじゃ、どだい、ワープ・カノン(転移砲)なんて誰にも扱えないんだよ。 
俺はもう疲れたぜ!」フレイヤはもう嫌気がさしていた。

「この兵器、ワープ・カノンが実用化出来れば、「ヤマト」の波動砲より高威力で、しかも、目標物以外の損害は
最小限になる、画期的な兵器になるんだが・・・。」大山はまた、頭を掻き毟ってフケを飛ばした。

その有様を見てフレイアはしかめっ面をしたが、フローラーは何かウットリとした目で大山を見ていた。

フレイアはフローラーの「心の声」を聞こうとしたが、訳の判らない雑音で満たされ、とても「声」を聞くどころでは
なかった。

姉、フローラーが大山に恋しているのは明らかだった。

<俺が古代守に惚れた時でもここまで自分を失わなかったぜ・・・。>フレイアは呆れた反面、一途に恋が
出来る姉が羨ましかった。


ワープ・カノン、それはメ号作戦を陽動として行われたガミラス冥王星前線基地を地球側の遊星爆弾で狙う
作戦をベースにした新兵器であった。

当時、地球側は波動エンジンは手にしていなかったが、ガミラスから手に入れた準波動エンジンと独自の
理論でワープ機関を試作していた。

つまり、メ号作戦は「箱舟」計画に用いるワープ機関の実証実験を隠す為に行われた陽動作戦でもあった
のである。

この時、ガミラスに地球側がワープの実験をしているのを悟られないために、ワープさせる遊星爆弾には
ワープ機関を積まず、宇宙空間にワーム・ホールを形成するワープ・ゲートを作って、そこに攻撃用遊星爆弾を
潜らせ、冥王星付近の空間に出現させる、後はシャルンホルストの砲撃で進路を微調整して冥王星基地を
直撃させる作戦だった。

結果的にはガミラス側は反射衛星砲でこの遊星爆弾を迎撃し、地球側の攻撃は失敗に終わったが、
本来の目的であったワープの実験は充分なデータが得られ、成功であった。

このデータは直後に入手出来たイスカンダルからのオーバー・テクノロジー、波動エンジンの解析と理解に
大いなる助けとなった。

彼等はワープさせる物体にワープ機関を載せないでワープ・ゲートを使って外部操作的にワープさせ、
飛翔距離を殆ど無くして時間を短縮すると同時にフェザー・ビームなどが目標に辿り付くまで飛翔空間に
撒き散らす無駄なエネルギーをカットして破壊効率を上げる事が出来ないか、ひいては目標物質と飛翔弾丸が
物質重複を起こして大爆発してくれる事を願っていた。

確かに、「ヤマト」が装備した「波動砲」は史上最強の大砲である。

しかし、巨大なエネルギーを蓄積、放射して目標を破壊するという、光速兵器本来の特性は変わっておらず、
光速兵器が持つ最大の弱点、「距離の二乗に比例して威力が落ちる」という、点は変わっていない。

また、ビームが目標に向かう時、その進路上にある全てのものに破壊効果をもたらすのも見方を変えれば
弱点であった。
(無駄な破壊をもたらすだけでなく、強固な盾の様なものを敵が用意してきた場合、威力が大幅に減じる恐れが
あったのである。)

大山やライニック姉妹が今、取り組んでいるワープ・カノンはそうした光速兵器の弱点を全く持っていない、
画期的な兵器なのである。

しかも、物質重複による爆発は、物質内部から起こる爆発であり、装甲など幾ら厚くても防げない究極の
攻撃方法だった。

だが、その試験は思いのほか旨く行っていなかった。

この兵器が最大の威力を発揮するのは着弾時に目標の質量中心と発射弾頭の質量中心が完全に一致して
物質重複の状態になった時である。

ところが、地球一の射撃手、フローラー・ライニックでさえ、ことごとく、質量中心の一致はさせられず、実験は
失敗続きであった。

「この実験が成功すれば『ヤマト』のもう一つの新兵器、『三式融合弾』の普及も可能になるんだが・・・。」大山は
焦っていた。

このままではライニック姉妹は通商破壊艦のままで「シャルンホルスト」、「グナイゼナウ」を発進、冥王星近辺の
警備に付かなければならなくなる。

この2隻はいままでは通商破壊戦だったからこそ、戦果を上げれたが、艦隊戦となると事情が違ってくる。

他の大型艦と艦隊を組むのは「シャルンホルスト」型が最も苦手とする戦い方なのだ。

せめて、偵察艦隊として本隊と別行動をとらせてもらえれば・・・少しは事情が変わるのだが、偵察時、敵艦隊に
遭遇した場合、敵艦隊来襲の報を送ると同時に、敵艦隊に攻撃を仕掛け、その前進を阻み、かつ、その実力を
威力偵察する必要がある。

しかし、このためには、「シャルンホルスト」型の攻撃力を大幅に増す必要があったが、スペースの関係上、
あまり無闇に大型の波動エンジンは積めなかった。

そこで、あまり機関出力に頼らない兵器、「三式融合弾」の応用、ひいてはワープ・カノンの実用化を大山は
考えたのだ。

「今まで、俺達は何度となく、ガミラス艦のワープにこちらの反物性ミサイルを巻き込ませ、物質重複を
起こさせて撃破したぜ。」フレイアは大きな疑問を口にした。

「もしかしたら、カー・レースの時に使われるスリップ・ストリームみたいに相手のワープ・フィールドに
引っ張られる形でないとうまく物質重複は起こらないんじゃないか?」

「でもそうだとしても私達が経験したガミラス艦の物質重複による撃破は理論的に説明のつかない確率で
成功しているわ。

しかも、ガミラス艦がワープしてくるであろう予想宙域にミサイルを待機させて物質重複を起こさせた時も
あったし・・・、

本当にどうしたらいいのかしらね。 冥王星宙域でのワープ実験はワープ・ゲート型でもちゃんと成功した
のに・・・。」フローラーは自分の射撃技術に絶大な自信があったのだが、それは脆くも崩れてしまっていた。

「冥王星でのワープ実験・・・。そうか!」大山は何か閃いた様だった。

**********************************************
 
 「でかいなぁ~っ。」月軌道上で組み立てが終わった冥王星遠征用の補給母艦を見てフレイアが感嘆した。

<何いってるの、さんざんこの船と同クラスの船で木星と地球を往復したくせに・・・。>確かにフレイアの初陣は
輸送船の副長だった、フローラーはそれを指摘したのである。

<でもよ。 あの時は輸送船は自力で航行出来たぜ。 今度は木星まで俺達が引っ張る事になるとは
思わなかったぜ。>フレイアが愚痴った。

今の地球本土にはエネルギーがほとんど残っていない、ガミラスが去ってから衛星軌道上には多数の
太陽光発電衛星が再び並び、地球本土に生き残った人達の生活を賄う電力はかなり増えたがそれでも
充分とは言えなかった。

だから、今回の冥王星駐屯艦隊の派遣に関しても地球では超大型輸送船の建造は出来ず、月の工業力の
力でやっと建造に成功したのが現実だった。

そして、月にもこれだけ大きな輸送船と派遣軍を自力で航行させられるだけのエネルギー備蓄はなかった。

しかたないので、今回の作戦に参加する艦艇、全てで輸送船を木星まで曳航、仮のエネルギー・プラントから
採取した水素とメタンをその船体に満たしそこから初めて、自力で冥王星を目指す計画となったのだ。

もちろん、曳航するとは言っても海上で船同士が行う曳航とはちがう。

巨大な輸送船の表面にドッキング・ポイントを艦隊参加隻数分、設けそこに軍艦をドッキングさせてエンジン
代わりに使うのだ。

幸い、宇宙空間では空気抵抗がないが慣性は働くので弱い推力でも長時間に渡って噴射し続ければかなりな
高速が得られるのである。
 
<こんな、情け無い格好のところをガミラスに見つかったらたちまちアウトだぜ・・・。>フレイアの心の中は
不安で一杯だった。

巨大な輸送船の表面に豆粒のような軍艦が24隻張り付いているのだ。

その存在は目を凝らしてよく見ないと判らない位、小さかった。

「出航!」冥王星派遣艦隊の旗艦、「あたご」の艦橋に航海の始まりを告げるお馴染みの言葉が響いた。
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しかし、「あたご」は一向に動き出す気配も無かった。

探査主任が当惑した顔で航宙士の方を見やった。

しかし、航宙士も艦長もそして土方提督も落ち着いて前を向いたままだった。

考えてみれば当然である、今、派遣艦隊の各艦は自艦が単独で航行する時の巡航状態でのエンジン噴射しか
していない、これでは、ものすごく大きな足枷である輸送船を伴って動きだせるまでには時間がかかるのは
当然だった。

だが、数時間がたってもほんの僅かしか動かない艦隊に土方提督も少し、しびれをきらしてか、短時間の
最大戦速噴射を命じた。

やっと、その牛の様な歩みを始めた輸送船に土方提督は先人の苦労を思った。

<かつて人類が宇宙に飛び出し、木星に橋頭堡を作ろうとしていたころ、もう既に地球人同士ではあったが
宇宙戦はあった。

 その時はこんなレスポンスの悪いエンジンを使いこなして戦っていたのだ。>彼は先人の偉大さと共に
地球人の好戦的性格の凄まじさに身震いがする想いだった。

<この好戦的性格からくる誇りの高ささえなければ地球は今の苦境をむかえなくても済んでいた
かもしれない・・・。>土方はかつて藤堂長官が考えた事と同じ事を考えていた。

<だが、ガミラスの軍門に下る事は俺には絶対に出来ない!>やっぱり自分も骨の髄まで地球人だと思った
土方は自嘲しつつ、宇宙の彼方を見やった。


                                        ヤマト発進から2ヶ月、人類滅亡まで304日
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by YAMATOSS992 | 2012-07-10 21:00 | 本文、追記 | Comments(0)
 比較的緻密に設定され、説得力の高いガミラス側の艦艇の設定に比べ、地球側の艦艇の設定には矛盾が
多く、その差は驚くべきものがある。

 これはもはや地球防衛艦隊が組織的行動をほとんど出来なくなった、冥王星会戦しか描かれなかったので
仕方のない事かもしれないが、それを踏まえて地球防衛艦隊の諸艦艇を分析してみたい。

宇宙戦艦「キリシマ」
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この艦の命名法の誤りについては第28章で既に取り上げたのでここでは述べない。

この艦の主砲配置は宇宙戦艦として理想的と言って良い勝れた設定である。

特に艦橋と第2砲塔を一体化し、艦橋による死角の発生をなくした発想は後世にまで残る秀作である。

だが、その主砲が高圧増幅光線砲という内容の良く判らない兵器なのはどうした訳であろうか?

冥王星会戦ではどうせガミラスに通用しないのであるからどんな兵器でも良かった・・・といえるが、

それなら尚の事、陽電子衝撃砲にして波動エンジンを持たない地球側はガミラスの様に大出力が出せず、

ガミラスの軽巡にすらそのビームが弾かれてしまったとした方が説得力があったのでは?と疑問を持った。

また、艦首に36cm陽電子衝撃砲を1門、固定装備しているが、この兵器を積んでいるが故に、主砲の種類を
高圧増幅光線砲としたなら、なぜ、冥王星会戦ではそれを積極的に使う場面を用意しなかったのか、疑問を
持つ。

何故なら、冥王星会戦で地球艦隊は大敗を喫するものの、陽電子衝撃砲で多少なりとも戦果を挙げていれば、
後に「ヤマト」がそれを主砲として装備して登場した時、その威力に説得力が増すからである。

陽電子衝撃砲は艦首に装備されているのでガミラスが挑んできた併行戦では使う機会がなかったか・・・と
言うとそうでもない。

ガミラス側は第2次火星沖会戦でその威力を示した地球艦隊の陽電子衝撃砲を封じるため、地球艦隊の
後方4時の方向から接近、併行戦を挑んでくるが、地球側は両艦隊が並んだ所で、前方推進を止め、
艦首を右に振って陽電子衝撃砲をガミラス艦隊に向けて発砲、撃沈とまでいかなくても何隻かのガミラス艦に
損傷を与える事は出来たはずである。

もちろん、この態勢を作るまでの間、地球艦隊はガミラスに攻撃されまくりなので多大な損害を出すし、
この反撃の成功も一時のもので艦首を向けなければ戦えない地球艦隊は自由に回る砲塔から陽電子ビームを
発射出来るガミラス艦に次々と撃破されて行く結果になるはずである。

また、高圧増幅光線砲であるが、過去の戦いでガミラスに通じないのは判っていたはずで、沖田は
何故それをわざわざ使って味方を苦境に追い込んだのか、理解に苦しむ。

第1次火星沖会戦の時、既に使って無効なのは判っていたはず、出力増加の改良でもしたのであろうか?



また、これは本編とは離れるが、沖田は第2次火星沖会戦でガミラスの地球直接侵攻を防いだ英雄だと
語られる。(この時、地球艦艇の艦首に装備された陽電子衝撃砲が威力を発揮したと考えられる。)

しかし、それならば、第1次火星沖会戦の内容は一体どの様なものだったのであろうか?

もし、ガミラスが一方的に勝利したとするなら、第2次火星沖会戦は行われない、そのまま地球侵攻作戦に
移行してしまうと考えられるからである。

もし、地球艦の艦首装備陽電子衝撃砲が既に威力を発揮して互角の勝負をした結果、ガミラスが一時退却、
戦線を立て直して再度、来襲して来た時のみ、第2次火星沖会戦は起こりうる会戦になる。

であれば、この時すでにガミラス側は何らかの陽電子衝撃砲対策を行っていたはずでそれを打ち破ったと
すれば確かに沖田は名将であり、英雄にふさわしい男となる。

宇宙巡洋艦「ムラサメ」
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この艦の命名法の間違いについては第28章で既に述べたので割愛するが、それにしてもその存在の意味が
良く判らない艦である。

内惑星戦争時、戦時計画によって量産された艦というふれこみだが、武装は一応、大口径の光線砲塔を
持つが、20cm2連双砲塔3基と最小限のものしか、持っていない。

内惑星戦争は結局、地球側が火星側より艦隊勢力で勝っていたため、地球側の勝利となったらしいが、
この最小限度の武装を持つ「ムラサメ」型宇宙巡洋艦を多数量産した事が勝因だったとは地球、火星側
双方にとってなんとも情け無い話である。

語られないので判らないがこの宇宙巡洋艦の特徴は一体、何なのであろうか、速度か?航続力か?はたまた
偵察力なのか?全く判らない。

冥王星会戦の地球艦隊の艦隊らしさを演出するためだけに設定されたとしか思えない凡庸な艦である。

しかし、この艦とて艦首の陽電子衝撃砲は持っている設定になっているので戦艦「キリシマ」のところで述べた
様に、ガミラス艦隊と併行戦をしつつ、沖田の号令一下、艦首をガミラス艦隊に向けて陽電子衝撃砲で
反撃するといった、映像があれば、この凡作にも見せ場が出来たのでは?と残念でならない。

突撃宇宙駆逐艦「ユキカゼ」
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地球艦隊の内、唯一、ガミラス艦隊に一矢を報いる突撃艦「ユキカゼ」・・・。それはそれで絵になるのだが、
それでは何故、他の突撃駆逐艦は艦隊の列から出ようとはせず、一方的にやられてしまうのであろうか?

これは私が本文で書いた様に航続力が大きく影響していたとしか、考えられない。

本来、「イソカゼ」型突撃宇宙駆逐艦は艦隊行動をするための設計がなされていない。

このデザインから感じ取れる用兵思想は航空機型の戦術を多様する設計だという事である。

すなわち「メ号作戦」は陽動作戦であったものの、その遂行は本気でなされており、出来る事ならガミラスの
冥王星前線基地に攻撃を加えるはずであった。

その時、主力となるのは戦艦「キリシマ」ではなく、多数引き連れていた突撃艦であったはずである。

基地などの施設破壊にはビームなどの光速兵器より爆発物を仕込んだ実体弾(ミサイル含)の方が向く。

となればおのずと主力は突撃艦なのだ。

ただし、本来、地球近傍の宇宙空間での使用が前提の突撃艦は後続力が短く、増装を着けて、搭載ミサイルの
量をガミラス基地攻撃の1連射のみに絞って初めて冥王星までの往復が可能になったのである。

したがって、「ユキカゼ」以外の突撃艦はその最後の突入を目指してただ一方的なガミラスの攻撃を耐えて
いたとすれば、あの悲壮な艦隊戦も納得のいくものとなるのである。

劇場で売られたパンフには「ユキカゼ」が「試製空間魚雷を積んでいた。」とあったようだが、1隻だけ特別な
兵器を積んでも大した効果は挙げられないのでもともとの「ヤマト」の設定の通り、「光速兵器はガミラスに
通用しないが、ミサイルなどの実体弾は通用する。」という設定の方が説得力があると思う。

色々矛盾の多い地球艦隊だが、もはや壊滅してしまったので何を言っても始まらない。

後はガミラス艦と「ヤマト」そのものの設定に期待するだけである。
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by YAMATOSS992 | 2012-07-08 21:00 | 考察 | Comments(2)
 2199に登場するガミラス側の艦艇はいままでのどんなアニメ作品より良く考えられている。

それは単純な戦艦、巡洋艦、駆逐艦という大雑把な分類ではない。

ガイデロール級航宙戦艦 全長 350m 二等航宙戦艦 
                 33cm 3連双陽電子ビーム砲塔 3基、(主砲)
                 28cm 2連双陽電子ビーム砲塔 2基X2 (副砲)
                 ミサイル発射管 33基(前方向29基、後方4基)
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デストリア級航宙重巡洋艦 全長 270m 二等航宙装甲艦 
                  33cm 3連双陽電子ビーム砲塔 4基、(主砲)
                  28cm 3連双陽電子ビーム砲 2基(副砲?)
                  ミサイル発射管(艦首下面) 4基
                  標準戦闘艦として用いられる。
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ケルカピア級航宙高速巡洋艦 全長 240m 二等航宙装甲艦 
                    33cm 3連双陽電子ビーム砲塔 3基(主砲)
                    ミサイル発射管(艦首) 10基                     
                    通商破壊活動目的に用いられる軽巡洋艦。
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クリピテラ級航宙駆逐艦 全長 160m 二等航宙装甲艦 
                28cm 2連双陽電子ビーム砲塔1基(主砲)
                13.3cm 2連双陽電子速射砲塔 1基(後部甲板)
                ミサイル発射管(艦首) 4基
                4連双ミサイル・ランチャー 2基(艦橋後方)
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注目すべきはガイデロール級航宙戦艦からケルカピア級航宙高速巡洋艦まで主な艦種の主砲が
33cm3連双陽電子ビーム砲塔に統一されている事だ。

これは明らかに量産性の考慮だが、その搭載数や搭載方法に艦種の違いが表れているのも興味深い。

いっその事クリピテラ級航宙駆逐艦も33cm3連双陽電子ビーム砲塔1基にすれば統一が取れたのだが、
それでは戦艦の副砲のサイズの根拠がなくなる・・・と考えたのであろうか?

しかし、ガイデロール級航宙戦艦とデストリア航宙重巡洋艦との主砲数を比較すると、ランクが下なのにも
係わらず、デストリア級の方が砲塔数で1基多い。

但し、副砲数はガイデロール級の方が多く、ミサイル発射管にいたってはガイデロール級はデストリア級の
約8倍の門数を持っている。
(このあたり、地球流に言えば、ガイデロール級はド級戦艦ではなく、準ド級戦艦になってしまっている。)

また、正確に測定する術はないが多分、どの艦種も搭載ミサイルのサイズは統一されているものと思われる。

このあたりまでキチンと設計された艦艇群は今まで無かったと私は思う。

ただ、残念なのはガイデロール級の副砲塔の装備方法である。

旧作のシュルツ艦の設定を引き摺ったためか、非常に死角の多い装備位置になってしまっている。

また、他の艦艇も下面砲塔はこのままでは死角が多すぎる、舷側方向射撃時には支筒が伸びて砲塔が
側面の巨大なヒレの外を指向出来る様にでもなるのだろうか?

ただ、過去にあった艦艇でも「えっ!これで戦えるの?」と言いたくなる艦もあったのでいちがいに否定は
出来ないが、それでもこれだけ他の設定がキチンとしているとオシーイッと言いたくなるのもしかたがない。

まぁ、後はどこまでこの設定を本編が生かせるかにかかっていると言う事でしょうか?

追記

1)過去にあった艦艇で 「えっ!これで戦えるの?」 と言いたくなる艦の例

 カイオ・デュリオ級揚陸戦艦(?) (イタリア 1876年~1909年)
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舷側装甲は550mmもあったが、装備範囲は極めて限定されており、実戦では効果を発揮できたか、
疑問であった。

また、砲の発射間隔も15分に1発と極めて遅く、実質戦力としての価値は低かった。

これでもとりあえずの要求には間に合ったのだ。



2) 砲の口径設定からガミラスの長さの単位がある程度、分析できる。(ガミラスも十進法を使っている。)

33cm(陽電子砲) → 25ガミラス・インチ(33.25cm)

28cm(陽電子砲) → 21ガミラス・インチ(27.90cm)

133mm(陽電子砲) → 10ガミラス・インチ(13.3cm)

1 ガミラス・インチ → 1.33cm

と、いう関係があるのに気が付きました。 設定者の方はここまで考えているんですね。
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by YAMATOSS992 | 2012-07-07 21:00 | 考察 | Comments(7)