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宇宙戦艦ヤマト前史

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宇宙戦艦ヤマト登場前の地球防衛軍の苦闘を描きます。

<   2012年 12月 ( 5 )   > この月の画像一覧

  「一体何が起こったのでしょう。」ゲシュ=タム・ジャンプを設定した航宙士は戸惑っていた。

「EX-178」は基地を出航してから1週間たった時点で異常に見舞われていた。

あと2回ゲシュ=タム・ジャンプをすればバラン基地に到着出来るというのに、ジャンプを終わっても通常空間に
戻れないのだ。

辺りにはこの空間から脱出出来ずに死滅した難破船が多数漂っていた。

「次元断層・・・。」ラング艦長は腕組みしたまま、ひとり呟いた。

パレン・ネルゲ親衛隊大尉が血相を変えて艦橋に飛び込んで来た。

「艦長! 一体どうしたのだ。 あの無数の難破船はなんだ。 バラン基地とも連絡が取れないが、ここは一体
どこなのだ。」

「大尉、どうやら我々は次元断層に落ち込んだらしい。」ラング艦長は搾り出す様に言った。

「私は若いころ次元潜航艦乗りだった。 その昔、潜航した艦から見た光景と今、見ている光景はそっくりだ。」
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「じゃあ、脱出できるんだな。」ネルゲ大尉は喜んだ。

「悪いが大尉、この艦には次元潜航艦がもつゲシュ=ヴァール機関の様な特殊機関はない。」

「それじゃ、脱出は不可能ということか?」大尉は蒼くなった。 

「今のところはそうだ。」ラングは落ち着いた声で言った。

「ああっ、だから俺は二等ガミラスの艦なんて乗るのは嫌だったんだ。 新型艦なら難なくぬけだせたろに!」
ネルゲは頭を抱えた。

「一等ガミラスの新型艦でも抜け出せはしない、いや、新型艦ほど脱出は難しいだろう。

この空間から抜け出せる可能性のあるのは前にも言ったが次元潜航艦くらいだ。」ラングは悔しそうに言った。

「次元潜航艦なんてそんな旧式な兵器が役に立つのか。」ネルゲが不審げに尋ねた。
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次元潜航艦が旧式兵器か・・・。 確かに今の充実した航宙艦隊を持つ今のガミラスにとっては無用の長物かもしれない。

だが、ガミラスが大マゼラン星雲の征服に懸命だったころ、周辺の星系国家の通商路を脅かし、その経済を破綻させて降伏に追い込むのに力があったのが次元潜航艦だった。

敵の勢力圏内に長期に渡って留まり続けても発見されず、敵の輸送船のみならず軍艦艇にも脅威を与える
恐るべき兵器だったからだ。

特に集団で敵の船団や艦隊を襲う群狼戦術は効果が高く、幾つもの星系国家を屈服させて来た。

しかし、反面次元潜航の技術は難しく、その空間特有の設定を見出さないと次元潜航したは良いが通常空間に
戻れない事も珍しくなかった。

ただ、この辺りの事情は長距離航行に用いるゲシュ=タム・ジャンプでも同じでジャンプしたまま行方不明になる艦も後を絶たなかった。

もっともゲシュ=タム・ジャンプはガミラスの勢力拡大戦略の中心技術だったので日々の改良が行われ、
ジャンプ距離の延長と共に性能の安定化が図られ、長短自在のジャンプが可能になったため、通商破壊の
任務はケルカピア級航宙高速巡洋艦に移ってしまった。
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こうして次元潜航艦は過去の兵器としてガミラス艦隊の第一線から消えた。

<俺も旧式ってことか・・・。 まっ、旧式なら旧式ならではの対策を考えるまでだ。>そう思った艦長は自室に
戻って何冊かの多次元物理学の本を引っ張り出すと真剣に読み始めた。

**********************************************

「やはり、無理です。 確かに艦長のおっしゃる通り、本艦に3基あるゲシュ=タム・ジャンプ用のジェネレーターを交互運転してゲシュ=ヴァール機関として運用する事は可能だと思います。 

しかし、それにはかなり大幅な改造になり、ドック規模の改造設備が必要となります。」機関長は艦長に意見を
言った。

ゲシュ=タム・ジャンプ機関を次元潜航艦用のゲシュ=ヴァール機関に改造出来ないか、艦長は機関長に
相談しているのだ。

「3基のジェネレーターをそれぞれ単独で運転出来る様に制御プログラムを変えれば良いのではないかね?」
艦長は3D表示されたゲシュ=タム・ジャンプ機関の模式図を示しながら言った。

「それでは、次元断層を脱出した後、通常のゲシュ=タム・ジャンプが出来なくなります。」機関長は反論した。

「次元断層から脱出、通常空間に復帰出来れば、いくらでも救援を呼ぶ事が出来る。 ここから脱出する事が
最優先なんだ。」 艦長は1つ1つ問題を片付けてゆく考えなのだ。

「ウーム。」しかし、機関長に着いて来た最古参の機関兵は難しい顔を崩さなかった。

「どうした。 ウイリッヒ、何か問題があるのか?」ラングは老機関兵に話しかけた。

「誰がプログラムを書き換えるのですか?」ウイリッヒ・バンデシュトルム機関兵は艦長の顔を見た。

「ゲシュ=タム・ジャンプのプログラムは非常にデリケートです。
 
通常は造船部でプログラムしてその後は他の者が手を加えられない様、ブラック・ボックス化されています。

残念ながらこの船にはゲシュ=タム・ジャンプのプログラムを変更出来る技量を持った人間はいません。」
彼は下を向いて頭を左右に振った。

ラング艦長は目を瞑って腕組みし、しばらく考えていたが、ハッと気が付いた様に顔を上げると副長に命令した。

「パレン・ネルゲ親衛隊大尉を呼んでくれたまえ。」副長は敬礼するとネルゲ大尉の部屋に向かった。

ガミラス人が蒼い顔をするというと変な表現だが次元断層の脱出を検討している会議に自分が呼ばれた意味が
分からなかったパレン・ネルゲ大尉はおどおどしていた。

しかし、そんな事には構わず艦長は言った。「ネルゲ大尉、君は親衛隊情報将校だな。」 

「そうだが・・・。」 戸惑いつつ、ネルゲは答えた。

「だったら、コンピュータの専門家と考えて良いな。 このプログラムは解析出来るか、どうだ?」

ラングはネルゲをモニターの前に座らせるとゲシュ=タム・ジャンプ機関のプログラムを映し出した。

確かに情報将校は情報戦のプロであり、敵地のコンピューターから密かにデータを抜き出したり、
ハッキングしてプログラムを書き換えたり、と、情報操作においては専門家と言えた。

ラングは情報将校のネルゲにシステム・プログラムを解析させようとしているのだ。

「この作業は次元断層の脱出に必要なのだな。」 ネルゲはさすがに親衛隊将校だった。

ラングが黙って頷くとネルゲは猛烈な早さでキー・ボード操作を行い始めた。

「これは相当重要なシステムだな。 幾重にも侵入防止ブロックが掛けられている。」額の汗を拭きながら
ネルゲはプログラムに取り組んだ。

数時間後、ネルゲは解析を終了させた。

「艦長。 これは、もしやゲシュ=タム・ジャンプ機関のプログラムではなかったのか?」ネルゲは顔を
しかめながらラングにたずねた。

「これは超一級の軍事機密だとだけ答えておこう。 この次元断層の脱出後に君が親衛隊情報将校として
機密漏えい罪で私を告発するのは君の自由だ。」ラングはニヤリと顔を崩した。

「そして私も同罪という訳か!」ネルゲは嵌められたと言う顔をした。

「大丈夫です。 解析作業を行ったのは機関部の責任でです。 それに実際に解析したのは長期に渡って
機関の細部に渡ってあらゆる事を知り尽くした、この老骨、ウイリッヒ・バンデシュトルム機関兵です。 

親衛隊大尉のあなたにこんな細かい解析は不可能だといえば誰も疑う者はいません。」老機関兵は笑った。

「どうしてだ! どうしてそこまで自分を犠牲に出来るんだ! 貴様等、皆、偽善者だ!」ネルゲは顔を
ゆがめると立ち上がった。

「生きるためだ。 今を生きるためには我々は何でもする・・・、それだけだ。 さあ、ネルゲ大尉、仕事は
まだ終わっていないぞ!」 ラングはネルゲの肩を押さえてコンソールの椅子に押し戻した。

**********************************************

「ネルゲ大尉はどうしてる。」ラングは座り込んで肩を落していた。

「あれから三時間、部屋に篭りっきりです。 ・・・。」副長が仕方なさそうに答えた。

「酒びたりにでもなっているのか・・・。 監視カメラでの様子はどうだ。」ラングは再度、尋ねた。

 あれから、ネルゲはゲシ=タム・ジャンプ機関をゲシュ=ヴァール機関に使えるプログラムに変更する
作業に没頭した。

もちろん、ネルゲには航行や機関の専門知識はなかったのでそれらの専門家と意見を交わしながらの作業
だった。

だが、自分本位な性格のネルゲにとって他人と協力して進めるこの作業は苦痛以外のなにものでも
なかった様だ。

そして、プログラム変更がほぼ完成しかけた時、悲劇は起こった。

長時間の作業に疲れたネルゲはキーボード操作を間違い、変更したプログラムを全て消去してしまったの
である。

この艦に付いている主コンピューターのメモリーはもともとのゲシュ=タム・ジャンプ・プログラムの
バック・アップに全てまわしていたので変更プログラムの方はバック・アップを取れなかったのだ。

消えてしまったデータも通常ならある程度サルベージ出来るものだが、悪いときには悪い事が重なるもので、
この艦にはサルベージ・ソフトなどあるはずもなく、また、ネルゲの持っていた個人用のソフトではとてつもなく
長い時間がかかる事が予想された。

「少し、休む・・・。」それだけ言うとネルゲは部屋に戻ってしまった。

ラング達も落胆したが、ラングはネルゲの落胆が誰よりも大きい事を承知していた。

副長がネルゲの部屋を監視カメラで覗いてみるとやはり、ネルゲは酒瓶を抱えてベッドに腰掛けていた。

<やはり、すこし、そっとしておこう・・・。>副長は艦長にネルゲの様子を報告した。

「一度やった作業だ。 再現するのはそう難しくあるまい。 ただ、今は一晩、ゆっくり休ませてやろう。 幸い、

ここには大きな危険はなさそうだ。」 <時間だけはたっぷりある・・・。>ラングは長期戦を覚悟した。

「副長、ネルゲ大尉を除いた本艦にいる将校と各部門の長を会議室に集めてくれないか。」ラングは意を
決して言った。

                                             漢(おとこ)の艦(ふね)ー(6) に続く
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by YAMATOSS992 | 2012-12-31 21:00 | ヤマト2199 挿話 | Comments(0)
  メルダが部屋に案内されるとそれは想像していたのとは全く違ってすごく奇麗な小部屋だった。

飾り気はなかったが、床も壁もきちんと磨かれており、少しも不快感を感じる事はなかった。

ベッドに敷かれたシーツも洗濯したての真新しいものだった。

メルダはパイロット・スーツから将校服に着替えようとしてふと自分の愛機の事が気になった。

昔なじみのオルグ・シュバッハが整備すると言っていたのだ、間違いはなかろうが、それでも長年実戦で感じた
二等ガミラス兵への不信感はなかなか消えるものではなかったのだ。

メルダが格納庫に戻ってみると格納庫の中は無重力だったが、与圧され、ヘルメットの必要はなかった。

メルダは愛機に遊泳して近づいていったが何か違和感があった。

<これが私の機か・・・?> そこにあった空間格闘戦闘機DWG262ツヴァルケはまるで新品かのごとき
輝きを放っていた。

コクピットを開けると計器やレバーの隅々まで磨かれ、一番気になっていたペダルや床の粘着汚れも全て
落されていた。
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「少尉も苦労されたようですな。」後から声を掛けられ振り向くとオルグ・シュバッハ軍曹が浮いていた。

「オルグ!!」メルダは張り詰めていた糸が切れた様にオルグに抱きつき一筋の涙を流した。

「少尉・・・。誰かが見ています。」そんなメルダを両手で肩をつかんでそっと引き離した。

「エンジンが大分やれていますな。 ツヴァルケの仮配属を聞いてエンジン周りの予備部品を揃えておいて
良かった。」

「私の配属転換を知っていたのか?」メルダは驚いた。

「まさか、配属転換は軍機です。 でも今度来るパイロットが赤いツヴァルケに乗っているという噂は流れて
いましたけどね。」 オルグは片目を瞑って見せた。

「明朝は出航です。 今晩中にはエンジンのオーバー・ホールを完全に終わらせておきます。 明日からは
全力で飛べますよ。」

オルグの言葉にメルダは困惑した。 

オルグだけでは完全なオーバー・ホールなど出来はしない、何人もの優秀な部下がいてこそ、初めて出来る
ことだったからだ。

今まで彼女がいた空母の二等ガミラス人達には考えられない勤勉さだった。

「オルグ、昔なじみのよしみで教えてくれないか・・・。何故、そこまで出来るのだ?」メルダは心の底に溜まった
疑問を打ち明けた。

「それは皆、自分の仕事に誇りを持っているから・・・でしょうな。」オルグはエンジンのメンテナンス・ハッチを
開けながら言った。 

「少尉の居られた空母の二等ガミラス人達は信用されていないのに命をかけさせられていると感じてやる気を
なくしていたのでしょう。

直接戦闘をしなくても空母が撃沈されでもしたら宇宙の塵になってしまうのは同じですから直接戦闘に
係われない分、不安も大きかったのかもしれません。

おっと、こんなセリフ、親衛隊の連中にでも聞かれたら、ただじゃすみませんな。」

オルグの周りにはいつの間にか部下達が集まってきてメルダのツヴァルケのエンジンをオーバー・ホールし
始めていた。

誰ひとり、言葉を発することなく、かといって仕事は流れる様に見る見る進んでいった。

メルダはしばらくその様子を見ていたが、何だか、彼等の仕事を監視している様で自分が恥ずかしくなって
その場を立ち去ろうとした。

しかし、メルダは黙ってその場を立ち去るのは嫌だと言う思いが胸のうちを駆け抜けるのを感じた。

次の瞬間、メルダは両手をひろげ、自分でも思いもよらない言葉を大声で発していた。

「私はメルダ・ディッツ!これは私の翼だ! みんな、よろしくたのむ!」 自然と頭も下がった。

「オーッ」と整備兵達も歓声で応えてくれた。

<それでいいんですよ。お嬢様。> オルグは手をふりながら格納庫から出てゆくメルダの後ろ姿を目を
細めて見送った。

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自室に戻る際、通路でパレン・ネルゲ親衛隊大尉に出合った。 彼は今度も二人の女性随行員を連れていた。

メルダは敬礼すると同時に道を開けた。 
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「なんだ。まだ着替えていないのか、少尉?」ネルゲ大尉はメルダの身体を嘗め回す様に見詰めた。

そして後に廻って尻にさわった。

メルダの着ているパイロット・スーツは後から見るとまるでヌードであるかの様に見え、艶っぽかった。

「大尉・・・。 お止め下さい。」メルダは悪寒が走るのを我慢してやっと搾り出す様に言った。

「フム、分かった。 ガミラス標準時21:00に我が部屋に出頭せよ。話がある。わかったな。これは命令だ。」
ネルゲ大尉は笑い声と共に去って行った。

二人の女性随行員はメルダに感謝と悲しみのこもった眼差しを送りつつ、ネルゲ大尉に従って通路の奥に消えていった。

 メルダは自室に戻ると直ぐにシャワーを浴びた。

今までの汚れを落したかった事もあったが、一番落したかったのはネルゲ大尉に尻を触られた感触だった。

将校服に着替えるとそれを待っていたかの様に食事が運ばれてきた。

「粗末なものしかお出し出来なくて申し訳有りません。航宙艦隊提督御令嬢、メルダ・ディツ様。」給仕役の兵が言った。

「お嬢様は止めてくれ。 自分は一介の少尉に過ぎない。 食事だって君達と同じものが食べられればそれで
充分だ。」 メルダはお嬢様扱いされるのが苦手だった。

自分がディッツ家の名跡を継がねばならない、その思いがメルダに必要以上に男性的な行動をとらせていたのかもしれない。

食事が終わって給仕兵がワゴンを下げようとするとメルダはそれを呼び止めた。

「次の食事は他の士官達と共に士官食堂でしたい。 主計長に許可をとればいいのかな?」メルダは軽い
気持ちで聞いた。

しかし、給仕兵は慌てた。 この艦に来た一等ガミラス人で二等ガミラス人と食卓を共にしたいと言った者は
いなかったからだ。

「か、艦長の許可が必要と考えます。 主計長では一等ガミラス人の方々同士での会食を計画するのが
精一杯かと・・・。」

「そうか・・・。 判った。 忘れてくれ。 これからも今日と同じでかまわない。」メルダは給仕兵の困惑ぶりに
かえって慌てた。

<あの親衛隊大尉と顔を付き合わせて食事をするのでは旨いものも不味くなる・・・。 私が士官食堂で食事を
する様になるとあの大尉も士官食堂で食事をする様になるかもしれない、見栄っ張りな様子だったからな。 
それでは返って他の乗員の迷惑になるに違いない。   他の兵との親睦は別の方法でとるとしよう。>

ふと顔を見上げると壁には時計が掛っていた。 それはガミラス標準時20:50を指していた。

<いけない! パレン・ネルゲ大尉の部屋にいかなくちゃ!>メルダは立ち上がると部屋を飛び出していった。

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メルダは廊下に出ると左手首に巻いた情報端末に<パレン・ネルゲ・部屋>と入力した。

情報端末の画面に部屋番号と方向表示が出た。

メルダの部屋は艦載機に搭乗する必要上、艦尾にあったが、パレン・ネルゲの部屋はなんと艦橋の中に
設けられた貴賓室だった。

元々は軍の上級幹部が乗艦、滞在する場合使う部屋であり、いくら親衛隊・情報将校とはいえ、大尉風情が
使って良い部屋とは思えなかった。

頑丈な大扉にとまどいながらメルダはノックした。

「パレン・ネルゲ大尉、メルダ・ディッツ少尉、命令により、参上しました。」

「おおっ、ディッツ少尉、来たか、入れ、入れ。」メルダはなんだか酒に酔ったようなろれつの廻らない言葉で
入室を促された。

「ザ、ザー・ベルク、そ、総統万歳・・・。」部屋に入ったメルダは狼狽した敬礼をするのが精一杯だった。

部屋はメルダの部屋の倍位の広さだったが、その部屋の真ん中にはWベッドとしても大型な豪華なベッドが
しつらえてあった。

だが、メルダが驚いたのはそのベッドの上に乗っている全裸の美女二人と彼女達を左右にかしづかせて腰掛ている腰布を巻いただけのネルゲ大尉の姿だった。

「今夜は大いに楽しもう!」ネルゲは目の前にあるテーブルからガミラス・ワインのグラスをとるとメルダに
渡そうとした。

「自分は酒は嗜みません。 お話とは何でしょうか?」メルダは嫌な予感を感じながらネルゲに問うた。

「女が居て酒があり、ベッドもある、 しかも今は夜だ。やる事は一つだろう。 パーティさ。」ネルゲは両手を
広げつつ、辺りを示した。

「私は軍の重責を担う家系の一員です。 この様な淫らなパーティには参加出来ません。 失礼します。
ザー・ベルク、総統万歳!」

それだけ告げるとメルダはその場を去ろうとした。

「命令だ!」ネルゲは唐突に言った。 「 ディッツ少尉、このパーティへの参加は私の命令だ!」 

『命令』という言葉に軍人気質が骨の髄まで沁みこんでいるメルダの足は止まってしまった。

「艦長も言っていたろう、ここは軍だ、階級が全てを決める。 私はしがない商人の息子だが親衛隊大尉。 
メルダ・ディッツ、おまえは航宙艦隊総司令の娘かもしれんが少尉、将校の一番下っ端だ。 どちらの意志が
通るか判るだろう?」ネルゲは嫌らしく笑った。

<ひきょうな!!>メルダは心の底からこの大尉を軽蔑した。

「ネルゲさま、こんなお堅い少尉さんなんていなくたって私達が十分楽しませて差し上げますわ。」左にいた
美女がネルゲの肩に顔を埋めた。

「そうですわ。 今宵は3人だけの時間に・・・。」もう一人の美女がネルゲの唇に自分の唇を合わせた。

だが、ネルゲはその二人を振り払うと立ち上がってメルダの顎に手を掛けた。

「白い肌の女はもうたくさんだ。 自室へ下がれ! 俺は高貴な青い肌の女を抱きたいんだ!」ネルゲは
下舐めずりした。

「さあ、メルダ少尉。 命令だ。 衣服を全部脱いで俺の前に立て!」

名誉臣民の女達が衣服を持って慌てて出てゆくのを確認するとメルダは将校服の上着を脱ぎ始めた。

ネルゲはその様子をにやけた顔で見詰めていたが、次の瞬間、その顔は凍りついた。

メルダは上着の内側から小ぶりのナイフを取り出したからだ。

「ま、まて・・・。」ネルゲは後ずさった。

しかし、メルダはナイフの切っ先をネルゲには向けず、自分の頚動脈に何の躊躇いもなく切りつけた。

ネルゲは辺りに飛び散る鮮血を避けようと飛び退った。

だが、血の匂いはせず、代わりに辺りを圧する別の気配が伝わって来た。

ネルゲが恐る恐る顔を上げるとメルダのナイフの刃は後からがっしりした男の手で握られており、メルダは
生きていた。

メルダも困惑した顔でその男の顔を見上げていた。

ヴァルス・ラング艦長だった。

彼は非難する様にネルゲの顔をにらんだ。

「な、なんだ。 自分はあんたが命令は絶対だと言ったから少尉を呼んだんだ。 何も悪い事はして
いないぞ!」ネルゲは言い訳した。

だが、ラング艦長は穏やかに言った。

「大尉、勘違いしてもらっては困る。 命令が絶対なのは任務に関してだ。 部下は決して召使いでも奴隷でも
ない。

少尉もだ。 あまり自分の命を粗末にするな。 さ、上着を着て自分の部屋に戻りたまえ。」

ラングは床に落ちていたメルダの将校服の上着のホコリを払うと彼女の肩にかけてやった。

「ザー・ベルク、総統ばんざい!」ネルゲが敬礼したが、ラングは応えず代わりに彼の肩に手を置き、耳元で
囁いた。

「敬礼はなしだ。 大尉、君は今、軍服をきていない。 それに今の出来事は無かった事にしたい。
 
ディッツ少尉の名誉のためにも、君の経歴のためにもな。」そう言われてネルゲは悔しさに顔をしかめた。

<何故、こいつはこんなにタイミング良くここにあらわれたのだ・・・。>ネルゲは、「はっ」と気が付いた。

「艦長! 貴様等、二等ガミラス人のクセに一等ガミラス人の私の部屋に監視カメラを仕掛けたな!!」ネルゲは
怒り狂ってラングに詰め寄った。

ラングはメルダの肩を押しながら大尉の方を振り返って事も無げに言った。

「軍人にプライバシーなどあると思っているのかね。 ガミラス艦では艦長の部屋も含めて全部の部屋を
監視するのが決まりなのだ。

これは貴賓室のお客とて例外ではない、いや、むしろ保安の必要上、お客さまこそ監視の第一対象になるのだよ。 大尉。」

「ただ、女性の部屋は音声のみで映像は切ってある。 もし、君が随員達とお楽しみをしたいのなら、君の方から
彼女達の部屋を訪ねるんだな。」ラングは今度は振り返りもせずネルゲに告げた。

背後でネルゲが腹立ち紛れに扉を閉める大きな音を聞くとメルダはラングに礼を言った。

「・・・ありがとうございました。」

そして「艦長。右の掌は大丈夫ですか? ナイフの刃は入りませんでしたか?」と聞いた。

ラングはメルダに掌を開いて見せた。 そこには薄っすらとスジがついているだけだった。

「私の掌は皮が厚くてね。」片目をつぶりながらラングは冗談を言った。

だが、少女時代、護身術を習っていたメルダは知っていた。

刃物で切りつけられた時、刃そのものを強い力で押さえてしまえば切れなくなる事を。

だが、それはよほどの技量と強い覚悟がなくては出来ない荒業だった。

ラングはメルダを彼女の部屋まで送ってくれた。

<一体、この男は何者なんだろう。>去ってゆくラングの背中を見つめてメルダは思った。

**********************************************

 パレン・ネルゲの随行員の名誉臣民の女性二人が死んでいるのが翌朝、発見された。

お互いを短刀で突き合っての自殺だった。 現場には「申し訳ありませんでした。」とだけ書かれた遺書が
残されていた。

メルダは前の晩の事件以来、ネルゲに付き従っているこの二人を名誉臣民の名を汚す売女として軽蔑して
いた。

しかし、メルダは二人が自分の前でネルゲに媚を売って見せたのは自分を守ろうとしての事だったと気付き
愕然とした。

現場を途中で去らざるをえなかった彼女達はメルダがネルゲの犠牲になったものと思い詰め、自らの命を
絶ったのだ。

海兵隊員にこっそりと運びだされる二人の遺体にメルダは涙が止まらなかった。

「名誉臣民とはいっても権利だけが一等ガミラス人になるわけではありません。 義務もまた一等ガミラス人と同じになるのです。

彼女達は二人とも夫が戦死して二階級特進し、その家族として名誉臣民になった様です。

ですが、戦死した夫の階級が低かったので二階級特進しても尉官にならず、もらえる軍人恩給だけでは
高い税金を払いきれずに、他の家族のため身体を売る様なまねをせざるを得なかったのでしょう。

しかし、それでも、彼女達は誇り高いザルツの女でした。」現場処理にあたっていた海兵隊のベラダ・トゥング
中尉は言った。

「やるべき事は何か、守るべきものが何か、それを我々に思い出させてくれたのです。」

メルダには彼女の言った意味が判らなかった。 

<私の貞操? 私の命? そんなものは彼女等には関係ない・・・。>

「私には判らない・・・。」メルダは下を向いて首を左右に振った。

大柄なザルツ人女性海兵隊長、ベラダ・トゥング中尉は膝まづいてメルダの肩を掴み、言った。

「今は判らなくて良いのです。 でも、いいですか、これだけは覚えておいて下さい。 

今は一介の少尉に過ぎないかもしれませんが、メルダ様、あなたは何時か人の上に立つべきお方です。

何があろうとも、どんな屈辱を受けようとも絶対、死んではなりません。

そして生きて返って我々を導いて下さい。 お願いします。」それだけ言うとベラダ・トゥング中尉は自分の仕事に
戻っていった。

                                             漢(おとこ)の艦(ふね)-(5) へ続く
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by YAMATOSS992 | 2012-12-30 21:00 | ヤマト2199 挿話 | Comments(0)
 そんな日々を送るメルダの元に一通の辞令と命令書が届いた。

それは銀河方面軍第707航空団への転属命令とそこへゆくために航空機運用能力のあるメルトリア級巡洋戦艦
「EX-178」への仮配属命令だった。

下調べをしたメルダは「EX-178」が二等ガミラス人だけで運用されている二線級の船である事を知って
愕然とした。

<これから2~3週間はあの汚くて不潔な空間で過ごさなくてはならないのか!>だが、命令とあれば仕方が
無い、メルダは諦めて愛機を「EX-178」へ向けた。

「EX-178」の着艦口は艦尾上甲板にあった。

メルダの愛機は誘導ビームに乗って簡単に着艦出来た。 

しかし、驚いた事にちゃんと誘導員がいて駐機場所まで誘導してくれたのである。

着艦後の誘導なんて訓練の時に受けて以来の事で、直前まで配備されていた空母ですら着艦後の駐機場所は
決められた所まで自分で移動しなければならなかったが、メルダは実戦部隊ではそれが当たり前だと思って
いた。

キャノピーを開けてコクピットから出たメルダは無重力の駐機場で愛機が不要に動かない様に固定しようと
機体の下に回りこんだがその時はすでに整備員によって固定作業は済んでいた。

恐る恐る固定索を握って揺すってみたが、緩すぎもせず、きつ過ぎもしない理想的な張力で愛機は固定されて
いた。

「大丈夫ですよ。 後は我々にお任せ下さい。ディッツ少尉。」後から声を掛けられたメルダは振り返った。

そこには二等ガミラス、ザルツ兵の軍服を着た男が立っていた。

「おまえは?」 メルダは聞き返した。

「オルグ、オルグ・シュバッハ軍曹です。 お忘れですか?」宇宙服の狭い開口部から見えた顔は確かに見覚えのあるものだった。

「オルグ! 懐かしい! お前も乗艦しているのか?」

「はい、この艦に配属されて2年になります。」

オルグ・シュバッハはメルダが士官学校時代に彼女の練習機の整備担当責任者だった男だ。

二等ガミラス人だったが、その整備の腕は半端ではなく、また士官候補生にも厳しいのでも有名だった。
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     (メルダも新任の少尉の頃は通常塗装の機体で飛んでいた。)


メルダが前の空母で自分で愛機の整備・点検を細かく出来たのもオルグが厳しくしこんでくれたからだった。

「最前線では整備兵も不足しています。 パイロットも自分の機体くらいは整備する知識と技能を持って下さい。」とオルグは教えた。

最初こそ<二等ガミラス人のくせに!>と反発したメルダだったが、訓練をくりかえすうち、そんな壁はどこかへ行ってしまった。

「きさまになら安心してまかせられるな。 艦長に乗艦の挨拶をしてくる。」メルダはわずかな荷物を背負うと
駐機場を後に与圧区画に入っていった。

**********************************************

メルダがエアロックをくぐると数人の人間がかたまっていた。  何か、揉めている様だった。

一人は乗組員、他は親衛隊の服を着た男とその連れと思しき2人の女性、女性達は二等ガミラス人だったが
青い肩当をつけていた。

これは名誉臣民といって一等ガミラス人と同等の権利をもつ証だった。

「主計長! だから、こいつらは俺の私物だ。持ち込んで何が悪い!」親衛隊員はこの艦の主計長に噛み付いていた。

「この艦は軍艦です。 戦闘に関係ない女性の乗艦は認めかねます。」主計長は困りきっていた。

メルダはツカツカと歩み寄り親衛隊員に敬礼した。

「ザー・ベルク、総統万歳! 自分はメルダ・ディッツ少尉、航空隊員です。任地に向かうためこの艦に乗艦しました。

大尉殿もどこかに向かわれるのでしょうが、随行者の方を物呼ばわりはないでしょう。 しかも彼女達は
名誉臣民、一等ガミラス人として扱われる権利を持っています。」

「何っ! 少尉風情が生意気な! この事はギムレー長官に報告するぞ!」親衛隊大尉は凄んだ。

「報告されるのは君のほうだ。 パレン・ネルゲ大尉。」低いが辺りを圧する声がした。

「き、貴様は・・・。」パレン・ネルゲと呼ばれた親衛隊大尉はその声のした方を見た。
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そこには中肉中背、ちょっと観には何の変哲もない中年男が立っていた。

だがそこには百戦練磨の戦士だけが持つ異様な迫力があった。

「私はヴァルス・ラング中佐、この艦の艦長だ。」男は静かに名乗った。 

「そしてそこに居られるのは航宙艦隊総司令ディッツ提督のご令嬢だ。」

「ザー・ベルク! 総統ばんざい!」ネルゲ大尉はメルダに最敬礼した。

「あのっ、大尉。敬礼する順番が違うのでは?」メルダのたしなめに非礼に気付いたネルゲ大尉は乗艦の申告をした。

「し、失礼、ザー・ベルク、総統ばんざい、自分はパレン・ネルゲ親衛隊大尉、バラン基地駐在を命じられた。」
しかし、大尉の顔は二等ガミラス人に頭を下げる屈辱に歪んでいた。

「ネルゲ大尉。 君の不満は判る。 

しかし、ここは栄光あるガミラス軍の軍艦だ。 

軍では階級が全ての判断基準になる。

君は親衛隊といえども大尉、私は二等ガミラス人といえども中佐で艦長だ。
 
悔しいだろうが命令は聞いて欲しい。 

それとそちらの女性二人だが、ネルゲ大尉の随行員という事で乗艦を認める。 

但し、今、言った様に本艦は軍艦だ。 何時撃沈され、その命を失うかもしれん。 

それを承知して貰えるのなら、だが。」

二人の女性は顔を見合わせたが、頷いた。

「それでは主計長、皆を部屋に案内してくれたまえ。」艦長が命令した。

                                             漢(おとこ)の艦(ふね)-(4) へ続く
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by YAMATOSS992 | 2012-12-29 21:00 | ヤマト2199 挿話 | Comments(0)
 メルダ・ディッツは独房に造りつけのベッドに腰を下ろしていた。

パイロット・スーツは脱がされ、男もののランニング・シャツとズボンに着替えさせられていた。

そのシャツの胸にはヤマトの官給品である証の様に錨のマークが入っていた。

何んとも粗末ななさけない格好だが、メルダ自身は「ヤマト」を訪れた時の凛とした気高さを
少しも失っていなかった。

独房のベッドのメルダから少しはなれた位置に腰をおろした古代は言った。

「メルダ・ディッツ少尉、君を尋問しに来た。」 メルダは即座に応えた。「メルダ・ディッツ、階級は少尉、認識番号3817529.」

古代は苦笑いした。 「昔、観た映画にもこんな場面があったっけな・・・。 あれ、そういえば君の星にも映画は
あるの?」
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<何を言ってるんだ、この男は?>メルダは古代の問いには答えなかったが、心の底では古代に対して
妙な親近感を抱き始めていた。

 古代はメルダの尋問を始めた。

「君の母星、ガミラス星の位置を教えて欲しい。 我々は無用な戦闘を望んでいない、だから、ガミラス星を
避けるために知りたいんだ。」

「私の名前はメルダ・ディッツ、階級は少尉、認識番号3817529.」メルダは同じ言葉を繰り返した。

古代は急に話題を変えた。

「君の母艦、『EX-178』の艦長は立派な軍人、いや『漢』だった・・・。」古代は遠い目をした。

「私の名前はメルダ・ディッツ、階級は少尉、認識番号3817529.」メルダは再び同じ言葉を繰り返した。

「いや、これは尋問じゃない。 ぼくの想いだ。 彼も憎い敵の一人だった・・・。

でも、ぼくはあんな『素晴らしい漢らしい漢』に出会った事はない。」

「しかも、彼は、ラング艦長は沖田艦長との『漢と漢の約束』を守り通して味方の艦隊の砲火に散った・・・
残念という他はない・・・。」
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古代の頬に涙が一筋流れたのを見たメルダは驚いた。

<卑怯なテロン人の間でも『漢』は絶大な評価をされるのだ。>メルダは意外な発見をした思いだった。

**********************************************

 <ヴァルス・ラング中佐・・・。>メルダは「EX-178」での短かったが興味深かった旅を思い出しいた。

メルダは「EX-178」には配属された訳ではなく、銀河方面第707航空団へ転属するための乗艦だった。

それまでメルダは本国の防空隊はおろか、最前線での激闘を何度も経験し、エースにまで成長していた。

だが、彼女がそこに見たものは一等ガミラス人と二等ガミラス人の間の不協和音だった。

普通、一等ガミラス人達は二等ガミラス人を軽蔑し、信用していなかった。

彼女の見た二等ガミラス人達もまた必要最低限の事も満足に出来ない怠け者ぞろいだった。

この前まで彼女のいた空母でも一等ガミラス人と二等ガミラス人の居住区画は厳重に区分され、パイロットは
全員、一等ガミラス人、二等ガミラス人は機体整備や、補修、空母の運用に必要な雑務に当たっていた。

そして空母の推進機関の管理や、航法、探知通信システムなどの重要な任務は全て一等ガミラス人が
握っていた。
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メルダの居住していた区画から格納庫に出るまでの通路には一部、二等ガミラス人の居住区を通らねばならないところがあったが、彼女はそれが不快でたまらなかった。

難破船の様にカビだらけの壁、何年も掃除されていない床は彼女の靴底に軽く粘着して嫌な音を立てた。

酒瓶が転がっている事すら珍しくなかった。

彼女が格納庫に上がるという事は出撃命令が出ているからである。

一刻も早く出撃しなければならない、しかし、この艦では武装やエンジンなど重要な部分はパイロットが自分で
再度点検しなければ危なくて出撃どころではない事をメルダは上官から聞かされていた。

<エンジンは・・・、よし! 機関砲は・・・?>メルダは舌打ちした。 機首の30mm機関砲の弾丸が補充されて
いなかったのだ。

残りは2門で10発か・・・、まっ、なんとかなるだろう。 左右の兵装ポッドの30mm機関砲やミサイル、13mm機銃には異常がなかった。

そのまま出撃したメルダのツヴァルケは縦横無尽に活躍し戦果を上げる事が出来た。
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だが、帰艦して飛行甲板に降りようとした時、左の着陸脚が下りていないのが計器に表示された。

普通なら着艦は諦めて近傍の空間に漂泊して母艦からの回収を待つのだが、メルダは左翼のバーニャを総動員して着艦してみせた。

重力の働いていない宇宙空間ならではの離れ業だった。

格納庫に降ろされた愛機を再度点検したメルダは驚いた。

左主脚の収納孔に工具が置き忘れられており、その工具が引っ掛かって主脚が下りなかったのだ。

呆れて怒る気にもならなかった。

それ以来、愛機の整備が終わる毎に報告させ、その仕事を自分で更に細かく再点検する様になっていた。

点検する度に些細ではあるが整備ミスが見つかった。

<これだからやはり二等は信用出来ん!!>その事を空母の航空団長に報告すると彼は言った。

「二等ガミラス人は被征服民。 元々は敵だった存在だ。 信用する方がおかしい! それより旨く使いこなす
方法を考えたまえ!!」

<旨く使いこなす方法・・・。>そう言われても若いメルダにはまだ判らなかった。

<ドメル中将は名将軍として名を馳せている。 しかし、彼の軍にも大勢の二等ガミラス兵がいるはず。 

それでもドメル中将は彼等と一等ガミラス人を一つに束ね、疾風怒濤の様な艦隊運用で戦果を上げている。
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一体、どうしたら彼の様な指揮官になれるのだろう・・・。>メルダはやがて継がねばならないディッツ家の名跡を
継ぐ事を思うと気が重かった。

                                             漢(おとこ)の艦(ふね)-(3) に続く
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by YAMATOSS992 | 2012-12-28 21:00 | ヤマト2199 挿話 | Comments(0)
 古代進がその部屋の前に立つと衛兵がわりの保安部員が直立不動の姿勢で彼を向かえた。

「『メルダ・ディッツ』を尋問する、開けてくれたまえ。」古代が目的を告げると保安部員はすぐさま扉を開けた。

古代が中に入ると扉は直ぐに閉じられ、保安部員の緊張が伝わって来た。

なにしろ、史上初のガミラス人捕虜である、多分、あの保安部員も怒りと恐怖の入り混じった複雑な思いであそこに立っているのだろう。

古代自身も複雑な想いだった。

彼、個人としてはガミラスは兄、守を含め、家族全員の仇であり、地球を滅亡させんとする、憎んでも憎み
きれない存在だった。

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  イソカゼ型突撃宇宙駆逐艦「ユキカゼ」で戦艦「キリシマ」の撤退を殿軍として援護、戦死した古代進の兄、古代守

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     ガミラスの遊星爆弾攻撃によって無残に破壊され荒涼たる風景になってしまった地球。
     失われた命は人類だけでなく生けとし生けるもの全ての生命に及んだ。




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ただ、古代にとってメルダ・ディッツは次元断層を協力して突破した仲間であり、その母艦「EX-178」は
他のガミラス艦隊からヤマトを守る盾となって散華していった借りのある存在だった。
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  次元断層に落ち込んだ「ヤマト」 辺りには脱出出来ず死滅した難破船の残骸が漂っている。


次元断層を突破するには「ヤマト」の波動砲で突破口を形成し、エネルギーを使い果たして動けなくなった
「ヤマト」を「EX-178」が曳航して次元断層を突破する計画が立てられ、実行された。
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途中、一時、牽引ビームが切られ、「EX-178」から怪無電が打たれるという「裏切り行為」ともとれる行動も
あったが、直ぐに牽引ビームは再接続され、2隻は何とか脱出に成功したのだった。
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結束の固い「ヤマト」幹部の内でも今回の協力には否定的な見方があった。

しかも、「ヤマト」に波動砲を撃たせて脱出口を形成させた以上、ガミラス艦「EX-178」の方では敵である
「ヤマト」を牽引してやる必要は全く無かったのだ。

たぶん、あの時、ガミラス艦内では「ヤマト」協力派と単独脱出派の間で争いがあったのだろうと古代は想像
した。

だが、ガミラス艦「EX-178」の艦長、ヴァルス・ラング中佐は『漢』だった。
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どんな犠牲を払ったかは判らなかったが沖田艦長との『漢と漢の約束』を守り通した。

そして脱出直後に出現したガミラス艦隊から「ヤマト」への射線上から退去する様に求められた時、メルダが
まだ帰還していない事を理由に退去を拒み、ガミラス艦隊の集中砲火を浴びて爆沈して果てた。
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<『漢の中の漢』・・・>古代はその言葉を実際に見せ付けられた思いだった。 しかも敵であるガミラス人に・・・。

だから、今回のメルダへの処遇にはやりきれない想いがつきまとっていた。

だが、これも任務なのだと自分を納得させ、部屋の奥に進んだ。

                                             漢(おとこ)の艦(ふね)-(2) へ続く
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by YAMATOSS992 | 2012-12-27 21:00 | ヤマト2199 挿話 | Comments(0)