ブログトップ

宇宙戦艦ヤマト前史

yamato2199.exblog.jp

宇宙戦艦ヤマト登場前の地球防衛軍の苦闘を描きます。

<   2013年 05月 ( 15 )   > この月の画像一覧

  メルダは艦橋の縁に張りついて「ヤマト」に別れの信号を送り続けていた。

フラーケンは黙ってその発光信号機を取り上げた。

「メルダ様。 もはや、『ヤマト』に信号が届く距離を越えてしまいました。

『ヤマト』のテロン特使からガミラス軍人に戻る時が来たのです。」

メルダは口をあけてはいたが黙ったまま、ゆっくりと左右に頭を振りつつ、フラーケンの腰に抱きついた。

気丈なメルダのそんな姿を始めて見たフラーケンは驚いた。

「そんなにあのテロン艦に未練があるですか! 航宙艦隊総司令、ディッツ提督の御令嬢がどうなされたの
です!」

驚いたフラーケンは自分も膝を付き、メルダの肩を掴み、顔を覗き込んだ。

メルダの顔は涙でくしゃくしゃだった。 そしてフラーケンの胸に顔を埋めて嗚咽を始めた。

「すまん、フラーケン。 私はただ、ただ、悔しいのだ。 情け無いのだ。」

「悔しい・・・。 情け無い?」フラーケンはその意味が解らず、ただメルダの肩をだきしめてやるのが精一杯
だった。

メルダは語った。

「EX-178」での一等ガミラス人、パレン=ネルゲの恥ずべき横暴の数々を。
e0266858_1633961.jpg

ボロボロだったメルダの愛機をたった一晩で新品同様に蘇らせてくれた二等ガミラス人の整備士達を、
特に彼等は何週間も前にツヴァルケの配備を知ってその交換部品を用意するという、周到さを見せてくれた
事を。

また、「EX-178」が次元断層に陥った時、機関部が脱出方法を模索する中、他の乗組員はパニックに陥る事も
無く、主砲のジェネレーターのオーバー・ホールや備蓄品の大整理など普段出来なかった大仕事を行い、
時間を無駄にする事がなかった事を。

そして、「EX-178」と「ヤマト」は次元断層で運命の邂逅を果たし、メルダが停戦と脱出方法の提案の使者と
して「ヤマト」に送られ、共同作戦の実施が即決、実行された事を。
e0266858_16103283.jpg

だが、「ヤマト」側でも「EX-178」側でも相手を信じきれない者がいたのは事実だった。

「EX-178」では誰だか判らないが「ヤマト」の波動砲で形成された次元断層の脱出口を「EX-178」だけで脱出する事を画策、「ヤマト」を曳航していた牽引ビームを切るという、裏切り行為が行われた事を。
e0266858_15575581.jpg

真実は不明だったがメルダはこの犯人は一等ガミラス人、親衛隊情報将校のパレン=ネルゲ大尉であると
確信していた。

牽引ビームが切られた時、「ヤマト」艦内ではメルダの監視役だった女性航空兵がメルダに銃を向けてきたが、
メルダはその銃を奪い、反対にその銃を返す事で戦意の無い事を示し、その女性航空兵もそれを受け入れて
くれた。
e0266858_16132499.jpg

そして「EX-178]の方でも、誇り高いラング艦長はそんな裏切りを許すはずもなく、反乱は直ぐに鎮圧されたの
であろう、牽引ビームは再接続され、二艦は文字通り手を携えて脱出に成功した。
e0266858_15553462.jpg

だが、脱出直後、裏切者が呼び寄せたガミラス艦隊に「EX-178」は撃沈されてしまった。
e0266858_15534059.jpg

しかも、古代戦術長から聞いた話ではあったが、ラング艦長はメルダがまだ「ヤマト」にいるという理由だけで
退去を拒み、友軍の集中砲火を浴びてまで「漢と漢の約束」を守りきった事を。

「何故、一等ガミラス人達は尊大で卑怯で事なかれ主義の奴ばかりなんだ !!

 ザルツ人を始めとする二等ガミラス人や好戦種族の癖に弱いと馬鹿にされていたテロン人の『ヤマト』は
何であんなに強く、そして、その乗員は気高いんだ !!

私は自分が一等ガミラス人である事を恥ずかしいと思う日が来ようとは思わなかった !!」

メルダはUX-01の甲板を泣きながら叩き続けた。

フラーケンも「友」の死の真相を知らされ憤懣やるかたなかった。

<敵の敵は味方・・・というが、『ヤマト』と停戦したのは正解だったのかもしれない。>フラーケンは「友」が
「漢」と認めた相手と正々堂々と戦えたのを幸運だったと思った。

<さて、この後の始末、どうしてやるか、慎重に考えねばなるまい・・・。>フラーケンは「猟犬」と仇名されて
いたが、決して頭の悪い「猟犬」ではなかった。

**********************************************
「大将・・・。まずいですぜ。さっきから小規模な次元振を多数観測してやす。」部下のボルト・グランが報告した。

「複合次元断層が発生する予兆・・・と看るか?」フラーケンはグランの豊富な経験を信じていた。

ボルト・グラン曹長は黙って頷いた。

複合次元断層、それは次元断層の中にまた次元断層があると言う複雑怪奇なものだった。

例え、落ち込んでも、通常の次元断層なら次元潜航艦は難なく通常空間に戻れる。

しかし、複合次元断層の場合、幾つもの断層を越えなければならず、また、複数の同じ断層を堂々巡りする
はめに陥る可能性が高かった。

対策は簡単、一刻も早くこの場を立ち去る事だ。

「ゲシュタム・ジャンプ用意! 1光年も飛べば安全だ!」フラーケンが命令を発した直後、「UX-01」は猛烈な
振動に見舞われた。

「しまった!! 間に合わなかったか!」フラーケンは歯噛みした。

「UX-01」はその姿を通常空間から次元断層に移していた。

「ゲシュ=ヴァール機関始動! 次元ターンッ・ブロー!!」 「UX-01」は脱出を試みた。

しかし、次元断層境界面を何度越えても次元断層から逃れる事は出来なかった。
e0266858_20583424.jpg

ついにフラーケンは一つの命令を発した。

「前部魚雷発射管全門から亜空間魚雷を発射せよ。 

但し、炸薬は抜いて代わりに我が艦の遭難地点情報を発振する発振機を搭載せよ。」

命令は実行され、対「ヤマト」戦で残った魚雷、8発が次元断層の闇に消えていった。

「これは救助要請が目的なの?」メルダが気丈に訪ねた。

「いえ、これは、他艦への警告・・・。 次元潜航艦乗りの仁義です。」フラーケンは笑って応えた。

                               56.勇者の砦ー(3)(項了) → 57.烈光の使者 へ続く
[PR]
by yamatoss992 | 2013-05-30 22:00 | ヤマト2199 挿話 | Comments(0)
 そこには既に「ヤマト」からの使者が待っていた。 

テロンの船からの使者なのにそのパイロットはガミラスのパイロット・スーツとヘルメットを着用していた。
e0266858_11542775.jpg

「ヘルメットを脱がないのは艦内の空気が身体に合わないのからなのかね?」フラーケンがたずねた。

その言葉にパイロットは黙ってヘルメットを外した。

現れた真っ赤な髪、青い肌の美少女にあたりはどよめきに包まれた。

「ガーレ・デスラー、総統ばんざい!!」フラーケンが思わず敬礼した。 

その場にいた全員がそれに習った。

しかし、彼女は真っ直ぐのばした右手の指を顔の脇に当てる地球式の敬礼で応えた。
e0266858_19572057.jpg

「メルダ様、それは・・・。」フラーケンは非難したわけではなかったが、見た事の無い敬礼にとまどった。

「私は、テロンの宇宙戦艦『ヤマト』の特使として今、ここにいる。 

父上には申し訳ないが使命が終わるまで私はテロン人だ。」

「わかりました。それでは用件をうかがいましょう、特使どの。」

次元潜航艦戦術の父、ディッツ提督の愛弟子であったフラーケンは幼い時からメルダを良く知っていた。

そして、負けず嫌いで正義と名誉を何よりの美徳と考える彼女の並々ならぬ決心を感じ取っていた。

「今、『ヤマト』の中には緊急手術を必要とする重病人がいる。 貴艦と戦闘していてはその手術が出来ない。 
だから、手術の間だけでいい、停戦して欲しいのだ。」

ガミラス艦の乗組員達はお互い顔を見合わせた。 まだ事態がまだ良く飲み込めないのだ。

「だめだ!・・・といったら?」腕組みしたフラーケンは不敵に微笑した。

「お前ならそう言うと思ったよ。 フラーケン・・・。」メルダは悲しげに目を伏せた。

しかし、次の瞬間、彼女は右手を高く上げた。

そして手にしたちいさなリモコン・スイッチを皆に示した。

「フラーケン中佐。 ガミラスの軍人ならガミラス艦や軍用機には必ず自爆装置があるのは知っているな。」

「私の『ツヴァルケ』を後上甲板に固定したのは失敗だったな。 あの下にはこの艦の主機関がある。」

「へっ、そんな事をすればあんたの命もありませんぜ!!」副長が堪らず叫んだ。

「『命』? 私にとっては『名誉』の方が重要だ。『ヤマト』のテロン人は私がガミラス人である事を承知で
ガミラス艦に停戦特使として派遣したのだ。

私にはこの『信頼』に応える義務がある。 さあ、フラーケン中佐、もう一度聞く。 停戦するか !!」

メルダはフラーケンの鼻面に自爆用リモコンを突きつけた。

「私にもこの艦の120名の命を預かっている責任があります。 無駄死させるわけにはいかない。 判りました。

停戦に応じましょう。」

メルダの顔にほっと安堵の微笑が浮かんだ。

「ただし、こちらにも条件があります。 あなたにはこのまま本艦に残り、帰国して頂きたい。 

折角生きておられたのです。
 
お父上のディッツ航宙艦隊総司令にお顔をお見せになってください。」

「それとも、父上にまともに顔を合わせられない理由でもおありなら話は別ですが・・・?」フラーケンは鋭く切り込んできた。

メルダは空を見詰め、やがて顔をフラーケンの方に戻すと自爆リモコン・スイッチをその手に渡した。

「わかった。 それ位の事で停戦が成立するならこちらも願ったり適ったりだ。 発光信号機をかりるぞ。」

メルダは副長から信号機を受け取るとタラップを上って司令塔のキャノピー越しに停戦成立の信号を「ヤマト」に
送った。

**********************************************

「敵潜から信号! メルダからです。 『停戦成立』!」相原が弾んだ声で報告した。

「やった!! さすが『赤騎士』だ。」太田が歓声を上げた。

「待って下さい。 信号には続きがあります。『ヤマトのテロン人達よ。私は停戦の条件としてガミラス本星に
帰国しなければならなくなった。
 
今まで敵である私を『EX-178』からの使者として、『EX-178』が撃沈された後も変わりなく使者として遇して
くれた事を決して忘れない。

短い間ではあったが私は宇宙戦艦『ヤマト』に乗り込めた事を一生の誇りに思う。」

「やっぱり、あいつ、裏切るつもりだったんだな!」南部がいきり立った。

「南部君 !!」森雪がたしなめた。

ガミラス人の宇宙作業者達が「UX-01」にからみついたロケット・アンカーとその鎖を外したので島はそれを艦内に収容した。
e0266858_9491424.jpg

相原は続けて信号を読んだ。 「沖田十三、真田志郎、古代進、島大介、森雪、南部康雄、・・・・」メルダの知る
限りの「ヤマト」乗員の名前が続いた。

南部は自分の名前までメルダが知っていた事に嬉しいような悔しいような複雑な感情にかられた。

「わ、いや、岩田新平、やま・・・ 駄目です。 判読不能なまでに距離が開いてしまいました。」相原が双眼鏡を
古代に返した。

「最後の名前は遠山清だ。 岩田と遠山は第三格納庫でメルダの機体の面倒を見ていたからな・・・。」古代は
何か大事なものを失った様な喪失感にかられていた。

「でもこれで良かったんじゃないかな。 彼女も故郷に帰れるんだし・・・。」島がポツリと言った。

『ガミラス憎し』の塊だった彼もメルダの堂々とした戦士の生き様に感じ入るものがあった様だ。

「これはまず間違いなく、彼女の計画だ。 彼女は沖田艦長の、いや俺達のために時間を稼いでくれている
んだ。」古代は第一艦橋を見渡した。

古代の頭の中には次元潜航艦への使者の役目を快諾してくれた時、メルダの決意を読み取れなかった後悔が
渦巻いた。

<最初のこちらの計画では沖田艦長の手術の時間だけ停戦する予定だった。

だが、それでは手術は成功しても弱った身体の艦長を戦禍に晒してしまう。

それに、次元潜航艦と再戦したとして、今度はどうやって相手の位置を特定する・・・。 

また、ロケット・アンカーが通用する程、相手は甘くない・・・。

メルダは多分、相手が停戦に応じなかった時は愛機を自爆させても次元潜航艦を葬るつもりだったのだろう。

また、停戦が成立してもそれが短時間では沖田艦長の手術は成功しても回復には至らない。

次元潜航艦を「ヤマト」から出来るだけ長時間引き離すにはどうしたら良いか、メルダは知恵を絞ったに違いない。

メルダは次元潜航艦に自分をガミラス本国へ強制送還させれば大幅な時間稼ぎが出来ると考えたのだ。

もちろん、別の船に移されるとか、途中の基地に降ろされる場合もあるかもしれない。

だが、ガミラスにしてみれば「奇跡の船 ヤマト」に長期滞在した初めてのガミラス人将校・・・、少しでも早く、
直接情報を聞きたいに違いない。

だからメルダは自分はそのまま、次元潜航艦でガミラス本国に強制送還されると考えたのだろう。

その後に何が待っているかを承知の上で・・・。>古代は次元潜航艦が消えた空間をいつまでも見詰めていた。



                                                56.勇者の砦ー(3) へ続く
[PR]
by yamatoss992 | 2013-05-30 21:00 | ヤマト2199 挿話 | Comments(0)
2013.05.28 タイトル変更 「烈光の使者」→「勇者の砦」

 次元潜航艦をロケット・アンカーで捕らえる事に成功した「ヤマト」のC.I.Cは歓喜に溢れていた。

「騒ぐな!! まだ戦闘は終わった訳ではない!」真田副長が騒ぎを鎮めた。

「終わったも同然じゃないですか! 後は艦首を敵次元潜航艦に向けて『波動砲』を打てば簡単にケリは
付きます。」 南部砲雷長が我が意を得たりとばかりに発言した。

「『波動砲』は例えそれが敵でも『生きているもの』には向けてはいけない。
e0266858_19464329.jpg

e0266858_19493771.jpg

これがあの『木星の浮遊大陸』で私達が得た教訓よ。」森探査主任が低い声で発言した。

「森さん、何を理想論を言っているんです。 僕達は何が何でも勝ち進まなければならない!

地球が滅んでもいいんですか!」南部も負けていなかった。

彼は木星での試射の後、「波動砲」が常に脱出するために使われ、本来の兵器として使われないのが
不満でしょうがなかった。

「滅べばいいんだわ!! 私だって他の生き物の命を貰わなければ生きていけない罪深い身体を持っているわ。

でも、何もかも破壊する力を解放して、全ての命を奪って、私達だけが生き残って何の意味があるの!」 

普段の森船務長からは考えられない激情の迸りだった。
e0266858_19475589.jpg

「いいかげんにしろ!! 二人とも、まだ戦闘継続中だぞ!」真田副長が叱咤した。

「で、どうする。 戦術長・・・。」真田は古代の戦術運用に賭けてみようと思っていた。

古代はその権限委譲を目で受け取った。

「島、取り舵いっぱい!! 艦首を次元潜航艦に向けろ!」

「南部! 『波動砲』射撃用意!!」

「『波動砲』射撃準備に入ります!」その言葉に南部は有頂天になった。

「古代くん!」森船務長が古代を睨んだ。

「『波動砲』は使う・・・。 でも撃たなければ良いんだろう。」古代は悪戯っぽく微笑した。

「えっ、どういう事・・・。」森船務長は古代の真意を計りかねた。

「南部、『波動砲』発射準備に『強制注入機』を使う事を禁ずる。」古代は思いもかけない事を言った。

「何故です! 強制注入機を使わないと『波動砲』が撃てる様になるまで1時間以上かかりますよ!」
南部は古代が「波動砲」を取引材料にしようとしているのが判らなかったのだ。

<なるほど、次は彼女の出番って訳か・・・。>さすがに副長の真田は古代が何を考えているのか直ぐに
判った様だった。

**********************************************

フラーケンが固定式次元潜望鏡で除いた先には艦首をこちらに向けた「ヤマト」が映っていた。

そして噂の大規模破壊兵器の砲口と思しき巨大な開口部には光がどんどん集まって来ていた。
e0266858_19573598.jpg

<直ぐに移動しなければあの大規模破壊兵器の餌食になってしまう。 

・・・多分あの兵器は次元境界面など簡単に突破してしまうだろう。

しかも、今の様に次元境界面の直ぐ傍にいたのでは致命的だ。>

<しかし、本艦はどうして行動不能になったのだ? >フラーケンは潜望鏡をぐるりと一回りさせた。

その視界に突然鎖の列が飛び込んで来た。

その鎖の連なりの先には「ヤマト」がいた。

<馬鹿な!! 本艦は錨に絡め取られたと言うのか! 原始時代じゃあるまいし! ディッツ閣下に何んと
言って釈明すればいいんだ!>フラーケンは馬鹿々しくなった。

しかし、次の瞬間には自分がこの世から吹き飛ばされるのだと言う現実に気が付き覚悟を決めた。

一分位の時間がたったろうか、何も起こらないのに不審をいだいたフラーケンは再び潜望鏡を覗いた。
e0266858_20302930.jpg

「ヤマト」 の巨体が黒々とそびえ、アンカー・チェーンもしっかりとUX-01を捕らえて離してはいなかった。

だが、「ヤマト」の艦首にある大規模破壊兵器の発射口に集まっていた光の渦は消えていた。
e0266858_20295281.jpg

代わりに「ヤマト」の第一艦橋の脇から発光信号が送られていた。

フラーケンはいぶかしんだ。

それが、ガミラス式のモールス信号だったからだ。

<何故、「ヤマト」がガミラス語を知っている?しかも、発光信号だと?>
e0266858_21411870.jpg

フラーケンは潜望鏡を覗きながらその信号を読み上げ、ハイニ副長に書き取らせた。

「貴艦と停戦したし、使者を送る。・・・だと? 大将、罠ですよね?罠。」ハイニははなから信じる気は無い様
だった。

<奴等は確実に勝った、あのままあの「破壊兵器」を打ち込めば確実に勝利していた、なのにここに到って
「停戦」だと・・・どう言うつもりだ。>フラーケンは自分がコケにされた様で腹が立ってしかたがなかった。

「ヤマト」の舷側の格納庫扉が開き、一機の戦闘機が飛び出した。

その機体を見たフラーケンは目を剥いた、それはガミラス機、しかもその機体は「真紅」に塗られた「ツヴァルケ」
だった。

「緊急浮上!! 使者を受け入れる!」フラーケンは命じた。
e0266858_18421768.jpg

「キャプテン、今、浮上したら『ヤマト』の陽電子ビーム砲の良い餌食ですぜ!!」ハイニ副長は反対した。

「やって来る『使者』は機首から尾翼まで真っ赤に塗られたツヴァルケに乗っている。

この事の意味がお前には判らんか?」フラーケンは事態が思いもかけない展開になっているのに戸惑っていた。

ツヴァルケはUX-01の直ぐ傍まで来て停止した。

UX-01は小さい艦なのでそのままツヴァルケが着艦出来る訳ではなかった。

UX-01から作業者が多数でてツヴァルケを後甲板に固定する作業をしているのを見つめながら副長の
ハイニが言った。

「機首から尾翼まで紅く塗った『ツヴァルケ』は航宙艦隊総司令、ガル・ディッツ提督の娘、メルダ・ディッツ
少尉の搭乗機ですよね。

確か、あの跳ねっ返りは乗艦した『EX-178』と共に戦死したと聞いていますぜ・・・。」

前にメルダが「ヤマト」航空隊に説明した「赤い囮」の話は決して嘘ではなかったが、メルダはその卓越した
技能を持つ様になっても敢えて「赤い囮」の任務を続ける事で敵に対する威圧と味方の士気鼓舞を図る
任務についていたのだ。

本来の「赤い囮」の任務に就く機体は機首だけを赤く塗っており、他は標準塗装のままであり、全面真紅に
塗った機体はメルダ機だけであった。

「会ってみればわかるさ。  使者はもう既に艦内に案内済みだな。 ハイニ。」フラーケンは艦内に通じる
ハッチに身体を押し込みながら言った。

「へえ、女のパイロットだと言う事は間違いない様で・・・。」ハイニは女性が苦手だった。


                                               55.勇者の砦ー(2) へ続く
[PR]
by yamatoss992 | 2013-05-26 21:00 | ヤマト2199 挿話 | Comments(0)
 「やむをえん!! 『戦術F』を使う!」フラーケンは切り札を出す事にした。

「えっ、あれをやるんですかい、大将・・・。」生粋の戦争屋、ゴル・ハイニ大尉も唾を飲み込んだ。
e0266858_201613.jpg

「戦術F」、これは様々な戦術をもって戦われる航宙戦においても次元潜航艦だけが出来る高度な戦術だった。

地球防衛軍が兵器の威力がガミラスに劣っているのを補うため、ガミラス艦がワープ出来るのを利用してその
ワープに反物性ミサイルを巻き込ませて撃破するという戦術を多用していたが、それに思想的には似ていた。

しかし、「戦術F」は次元断層に潜んだ次元潜航艦が発射した亜空間魚雷が通常空間に戻る点を極力、敵艦に
近寄せ、迎撃出来る余地を与えない事を目的とする戦術だった。

しかし、もし、亜空間魚雷の通常空間出現点が敵艦の内部だったらどうなるか?

当然、物質重複が起こり、全てが光子になって飛び散る事になる。

地球防衛軍が利用したワープ時の物資重複はそれが狙いだったが、「戦術F」ではいくら次元断層の中に
いるとはいえ、至近距離で次元境界面をも貫く物質重複爆発が起こるのである。  

多分、次元潜航艦も爆発に巻き込まれ爆沈するか、生き残れても永久に浮上能力を失って次元断層の底に
沈む運命にあるのは明らかだった。

<それでもやる!! ヴァルス、お前の敵は俺の敵にも相応しいぞ!!>フラーケンは併走する「ヤマト」の姿に
闘志を燃やした。

「操舵手、速度を少し抑えろ!! 絶対『ヤマト』の前には出てはならん!」フラーケンは指示した。

フラーケンは「波動砲」を恐れていた。

もちろん、彼は「波動砲」の名を知っていたわけではない、しかし、グリーゼ851で太陽フレアさえなぎ払った
というあの兵器は次元境界面を貫く威力を持つものと判断したのだ。

これはフラーケンの親友、「EX-178」のヴァルス・ラング艦長が次元断層で見せたのと同じ判断だった。

二人は一緒に死線を潜り続け、戦友を越えて戦兄弟(いくさきょうだい)と呼べるものになっていた。

奇しくも「波動砲」に対する評価も一緒だった。

「キャプテン、なんで馬鹿正直に真横から接近するんです。 

ここは宇宙空間なんですから、『ヤマト』の武装のない、下面から攻撃した方がいいんじゃないですかい?

たぶん、奴等も下面からの攻撃はないものと油断してますぜ。」 ハイニ副長が進言した。

「ハイニ、『ヤマト』の下面に砲塔が突出していないからと言って無武装と考えるのは早計だ。

それに『プラート』での戦いの記録は断片的ではあったが送られて来ている。

その時、『ヤマト』は氷結したプラートの海に強行着水し、無事着水に成功している。

何らかの理由で『ヤマト』の底部の装甲は非常に厚く造ってあるのは明らかだ。

たぶん、本艦の魚雷程度では虫に刺された位にも感じないだろう。」フラーケンは続けた。

「かといって、『ヤマト』を上面から攻撃するのは論外だ。

『ヤマト』が針の山の様に備えている対空火器が右舷・左舷同時に使える様になってしまう。

だから、一撃して大破口を作る事に成功した、左舷から接近するのさ。」フラーケンは潜望鏡を覗きつつ、
ハイニに説明した。
e0266858_11152954.jpg

フラーケンが覗く次元潜望鏡に「ヤマト」の舷側が大きく写っていた。

一番最初に命中弾を与えた時の破口が大きく口を開けていた。

<あそこにもう一度、魚雷を喰らわせれば俺達の勝ちだ。>フラーケンはほくそ笑んだ。

「一番、二番発射管、魚雷発射!!」次元潜望鏡の視界が「ヤマト」の映像で埋め尽くされるまで接近した
UX-01は必殺の亜空間魚雷を放った。

そして、亜空間魚雷は「ヤマト」の艦体に吸い込まれていった。

だが、爆発は起こらず、しばらくすると「ヤマト」の反対舷から通常の宇宙魚雷にもどったUX-01の亜空間魚雷が
宇宙の彼方に向かって飛び去ってゆくのが見えた。

<しまった!! 接近し過ぎたんだ。 魚雷が『ヤマト』を通り抜けてしまった!!>フラーケンは自分の技に対する
過信を悔やんだ。

**********************************************
e0266858_15401444.jpg

古代戦術長のコスモ・ゼロ・アルファ1をを駆って今回の対潜哨戒の任に当たっていた北野哲也宙士長は
「ヤマト」左舷約200mに次元潜航艦の潜望鏡を発見した。
e0266858_1512315.jpg

北野宙士長はすぐさまその位置データを「ヤマト」に送った。

「島! 今だ! 左舷ロケット・アンカー発射! 次元潜航艦のプローブを絡めとれ!」真田副長の命令がとぶ。

「了解! ロケット・アンカー諸元入力良いか! 入力済み次第発射せよ!」島航海長がロケット・アンカーの
操作室に指示をだした。

元々戦闘用でないロケット・アンカーだったが、小惑星へ投錨する場合などを考え、方位制御の能力は
与えてあったのだ。

UX-01の次元羨望鏡は見事に絡み取られてしまい、内部の機構も破壊されて何も見えなくなってしまった。
e0266858_15535662.jpg

フラーケンはプローブは砲撃を受けて破壊された物と思い、一度、戦場を離れて出直そうと思った。

「反転180度、一度戦場を離れる!」フラーケンは操舵手に命令した。

しかし、操舵手は狼狽して悲鳴を上げた。

「艦長!! 本艦は操舵不能です。 何かが絡み付いて本艦の躁艦を妨げています。」

「何! 危険だが浮上して固定式潜望鏡で外界を見てみる必要があるな。 ハイニ、第二潜望鏡深度まで
浮上だ!!」フラーケンは嫌な予感を感じていた。

「次元タンッ・ブロー、第二潜望鏡深度まで浮上!」ハイニ副長の命令が艦内に響いた。
e0266858_169465.jpg

固定式の潜望鏡が使える深度に達するとフラーケンは潜望鏡を上げ、周囲を観測した。

そして、そこに血も凍る様な光景を見て思わず呟いた。

「『ヤマト』め! ここまでやるか・・・。」



                          53・次元潜航艦との死闘ー(3)→54.勇者の砦ー(1) へ続く
[PR]
by yamatoss992 | 2013-05-24 21:00 | ヤマト2199 挿話 | Comments(0)
 「どうですか? 真田副長、この作戦、僕は勝れていると思いますが・・・。」古代戦術長の作戦計画を聞いた
島航海長が作戦案を支持した。

亜空間アクティヴ・ソナーの準備を終えて「C.I.C」に真田副長と新見情報長が戻ってきたのだ。

「だめです。 こんな宇宙塵が濃密な空間に艦載機を飛ばすなんて自殺行為です。」新見情報長が反対した。

「確かに亜空間ソナーとは言ってもそれがアクティヴでは、敵に自分の位置を知らせる事にもなってしまう。

だから、シーガルが使えれば、亜空間ソノ・ブイをばら撒いて探知作業をしても「ヤマト」の位置は知れずに済むのだが・・・。」真田は腕を組んで右手で顎をなで擦った。

「別にシーガルは飛ばす必要はないんじゃないですか?」珍しく相原通信士が口をはさんだ。

新見情報長が余計な事は言うなと言わんばかりに相原を睨みつけた。

だが、そんな事は無視して相原は続けた。

「シーガルは第三格納庫にアームで吊り下げて駐機してありますよね。

そして発進時には一度、アームで艦外に吊り出してから発進させています。

だから、シーガルをアームから離さない状態のまま、ソノ・ブイを放出、展開させた後、シーガルは『ヤマト』
艦内にアーム毎引き戻せば危険は最少に押さえられます。」
e0266858_18413335.jpg

「よし、判った。 

ソノ・ブイの展開方法はそれで行こう。 

君の案にある全艦載機の展開は何の為に行うのかね。』真田は古代に問うた。

「シーガルの発進さえ、行えない危険な宙域に全艦載機を展開するなんてあなた正気?」新見情報長は
古代のあまりに無謀な提案に大反対した。

「全艦載機を飛ばすのは、『ヤマト』を観測しているであろう、敵『次元潜航艦』の索敵プローブを発見するため
です。

次元断層にいる「次元潜航艦」にとってこのプローブは唯一の通常空間との接点です。

発見されない様、最少限度の大きさでかつ、レーダーなどには捕まらない様、ステルス化が図られていると
考えて良いでしょう。

私の考えでは「肉眼での発見」以外、これの探知は不可能だと考えます。」古代は力強く意見具申した。

「アイ・ボール・センサーMk.1(肉眼の事)ってわけか、今も昔も変わらんな。」真田は自分の目を指差した。

「もちろん、いくら最微速に速度を抑えても今、『ヤマト』がいる空間で艦載機の展開を図るのは無謀な事です。

これについては新見情報長の判断は全く正しいと思います。」古代は新見の顔を立てるのも忘れなかった。

「ですから、『ヤマト』は微速でこの星系を離れ、宇宙塵の濃度が危険でなくなった所で全艦載機を艦の
周囲に球状に展開させます。

そして、準備が整ったところで亜空間アクティヴ・ソナーを打ちます。」古代はスタッフの顔を見渡した。

「作戦開始の狼煙ってわけだ。 これは面白くなって来た。」南部砲雷長が腕をさすった。

**********************************************

「艦長、『ヤマト』の奴、デコイにも引っ掛からない、もう死滅してるんじゃないんですかい。」次元潜航艦
UX-01の副長、ゴル・ハイニ大尉は艦長のヴォルフ・フラーケン中佐に進言した。
e0266858_11154585.jpg

「いや、必ず奴は生きている・・・。 そして反撃の機会を窺がっているのさ。」フラーケンは慎重だった。

また、親友、ヴァルス・ラング中佐の仇、『ヤマト』は確実に仕留めた所をその目で確認しない事には気が
収まらなかった。
e0266858_1295288.jpg

<しかし、しぶとい・・・。 こんな敵はアッカイラ星系の次元潜航艦戦以来だ。

あの時も辛い戦いだった、しかし、あの時は、俺の傍らにはアイツがいてくれた・・・。>つい、フラーケンが
感傷に浸りそうになっていると探査手が「ヤマト」のピンガーを探知した事を報告した。
e0266858_15453188.jpg

「亜空間航跡はトレースしているな。 

潜望鏡深度へ浮上、次元潜望鏡を展開しろ!!

さあ、狩りを始めるぞ!」フラーケンは残忍な笑みを浮かべた
e0266858_15492896.jpg

次元潜望鏡のプローブを繋ぐケーブルが延ばされ、次元潜望鏡は次元境界面を越えて通常空間に
観測ユニットを突き出した。

フラーケンが次元潜望鏡を覗くと「ヤマト」が低速で星系外へ脱出し様としている様が映し出された。
e0266858_1644148.jpg


<バカな奴だ。 ボルト319星系でもう少し辛抱すれば、また違った結果になったかもしれないものを・・・。>
フラーケンは自分の思い通りに作戦が運んでいると信じきっていた。

もし、彼が次元潜望鏡の全天監視装置を働かせていたらそこには驚くべき光景が拡がっていたろう。

しかし、新鋭艦でないUX-01は全天監視装置が自動ではなく、艦長の判断で作動させるマニュアルだった。

目の前の目標しか見えていないフラーケンとUX-01は「ヤマト」が張った罠に落ちていた。

「ヤマト」と次元潜航艦UX-01のプローブの周りはコスモ・ファルコン36機、コスモ・ゼロ2機、100式偵察機
2機、合計40機の艦載機が球状に取り囲んでいたのだ。

「ヤマト」艦載機群はプローブを発見しても決して攻撃しない様、指示されていた。

次元断層にいる本体の次元潜航艦との接点が失われるからだった。

<一度、捕まえたお前を逃がしはしない!>古代は艦長の手術の事が気がかりだった。
e0266858_19363733.jpg

かねての作戦通り、第三格納庫からアームに抱えられたままシーガルがソノ・ブイを放出した。
e0266858_178481.jpg

e0266858_1810119.jpg

次元潜航艦の放つ亜空間魚雷の出現点を特定するためだ。

そのため、榎本掌帆長は第三格納庫の扉を半開きにしてソノ・ブイからの情報を拾い安くしていた。
e0266858_18164792.jpg

e0266858_10301527.jpg

「ほうれ、早速、魚雷のお出ましなんだな。」遠山宙士長が亜空間魚雷の出現データをC.I.Cへ送った。
e0266858_10273944.jpg

e0266858_10282583.jpg

そのデータに基づき、南部砲雷長は的確な迎撃を行った。

「クソッ、奴等はこちらの魚雷を的確に迎撃しやがる。」フラーケンが唸った。

「敵ながらアッパレってやつですかい? ハハ・・・。」ハイニがふざけてフラーケンに睨まれた。
e0266858_19433712.jpg



                                          53.次元潜航艦との死闘ー(3) へ続く
[PR]
by yamatoss992 | 2013-05-23 21:00 | ヤマト2199 挿話 | Comments(0)
 はじめに

 この物語は宇宙戦艦「ヤマト」2199をベースに私なりの解釈を加えたものです。

公式設定や実際の物語と異なっていたり、以前に私が書いた物語と食い違いを生じている部分もあります。

それを承知で楽しんでいただければ幸いです。 (YAMATOSS992)

**********************************************
e0266858_12521263.jpg

 「なんとか、原始星系に逃げ込む事に成功した。

今のところ、敵もこちらの位置を掴めなくなっているはずだ。 

森君、敵の反応はまだ掴めないか?」真田副長は倒れた沖田艦長に代わり、全艦の指揮をとっていた。

「空間魚雷出現!! 雷数4!」森探査主任は報告した。

しかし、魚雷は「ヤマト」まで届かず、次々と宇宙塵に衝突して爆発した。
e0266858_12544326.jpg

「魚雷の来た方向に敵艦の姿はありません・・・。」森探査主任は蒼ざめた顔で報告した。

「艦長が倒れる前、微弱な次元振動を観測した。

新見くん、今の魚雷が来る直前、その振動が僅かでも増えなかったかね?」副長は新見情報長に尋ねた。

「はい、本当に僅かですが一度増えて、また減りました。

そして、次元振動波が減ったのは空間魚雷の探知とほぼ同時です。」新見情報長は報告した。
e0266858_1313886.jpg

「やはり、今、相手にしている敵は、この前、『ヤマト』が落ちた次元断層に自在に出入り出来る次元潜航艦と
考えて間違いはない。

自分は安全な次元断層の中に留まり、そこから魚雷攻撃を仕掛けてきているんだ。」副長は腕を組んだ。

「『ヤマト』に対潜装備なんてありませんよ! どうやって戦んです。」南部が浮き足だった。

南部砲雷長は家が南部重工業という兵器の専門家の息子だったが、かえってこういう突発事態には弱かった。

「落ち着け!! 南部、諦めなければ勝機はいつでもあるさ。」古代戦術長が諌めた。

その様子を見た真田副長は古代戦術長の成長に感心した。

新見情報長が意見具申をした。

「敵の位置が掴めないのはこちらにとって圧倒的に不利です。

しかし、本艦にはワープ航法をする前に目標空間の安全性を確認する為のコスモ・レーダーがあります。

そして、その中心となる機構は亜空間トランス・デューサーです。

これを単独で運用すると近距離の次元断層内にピンガーを打つ事が可能になります。」

「亜空間アクティヴ・ソナー・・・と言うわけか。

この前、次元断層に落ちた時かなりのデータが収集出来たから、それは充分に可能な方法だ。

だが、必要なパラメーターは入力してあるのか?」真田副長が尋ねた。

「いえ、それはまだです。」新見情報長は申し訳なさそうに言った。

「魚雷接近!! 雷数1 近くの宇宙塵に着弾します!」森探査主任が報告し終わると同時に「ヤマト」は猛烈な
爆風に揺さぶられた。
e0266858_19202846.jpg

「何をやっとるんじゃ。 こんなに艦が動揺しては危なくて艦長の手術など出来ん! 

一度、艦長の体温を絶えられるギリギリまで下げて、戦闘が終わるのを待つから、それまでに何とかしろ!」
佐渡医師が「C.I.C」に怒鳴り込んできた。

「佐渡先生、どれ位、手術までの時間は待てますか?」逆に真田は佐渡に許容時間を聞いた。

「良いとこ、2時間が限度じゃな。 それを超えたら戦闘中でも何でも手術は始める。」佐渡はツカツカと出て
行こうとしたが振り返るとこう言った。

「でも時間がないからと言ってあせるなよ。 わしは君等を信じとるよ。」そう言うと引きつった笑いを顔に
浮かべた。 

<着弾が確実に近づいて来ている。 このまま何もしないと次はやられるかもしれない。>真田副長は心の
中で思ったが、それを部下達に悟らせるわけには行かなかった。

「亜空間アクティヴ・ソナーを実現しよう。 新見君、一緒に来てくれ。」真田は艦長席から立ち上がった。

「待って下さい。真田副長!あなたが出て行っては、ここ『C.I.C』の指揮は誰が執るんです。」古代戦術長が
言った。

「君が執るんだ。 こと戦闘に関しては単なる技術者の私よりよほど専門家だろ。 ただし・・・。」真田は
釘を刺した。

「波動砲の使用は禁ずる。 

敵の亜空間魚雷によると思われる次元振の発生が不規則だ。  

この前の様にまた、次元断層の裂け目を生じる可能性が高い。 判ったな。」それだけ言うと真田副長と
新見情報長は艦首のコスモ・レーダーの作動・心臓部に向かって行った。
e0266858_17482028.jpg

**********************************************

動かない「ヤマト」に痺れを切らしたフラーケンはガミラス艦の推進機、特有の電磁波を放つデコイを星系外へ
向かって放出した。

森探査主任がこの星系を去ってゆくガミラス艦がある事を報告した。

「しめた!! 奴さん、諦めてくれたな!」太田次席航海士が喜んだ。

「駄目だ! これは罠だ。」古代はこの展開を信じなかった。

「どうしてだ? 古代、これは明らかにガミラス艦の反応だ。 根競べに負けて撤退したんだよ。」島航海長も
敵艦の撤退を信じた。

「俺だったら、こんなあからさまな撤退はしない。

今、俺達は戦闘をしている、戦闘とはどれだけ相手を痛めつけられるか、の比べ合いみたいなものだ。

お互い、相手の存在を特定出来ないまま、何かの理由で自分が撤退しなくてはならなくなった時、島、お前
だったらどうする・・・?」古代は聞いた。

「あっ、そうか、撤退した事を気付かせない様にする、そうすれば、敵は何時までもいない敵に神経を
使わなくてはならなくなって疲れ果てる。 これだって立派な攻撃だ。」島はさすがに古代の同期生だった。

「接近する時は自分の存在を消せるのに撤退する時は堂々と姿を現すなんてどんな親切な敵艦だよ。」
南部砲雷長が混ぜっ返した。

だが、<これは使える! 逆に罠に嵌めてやる!!>と古代戦術長はほくそ笑んだ。


                                         52.次元潜航艦との死闘ー(2) へ続く
[PR]
by yamatoss992 | 2013-05-22 21:00 | ヤマト2199 挿話 | Comments(0)
 はじめに

 この物語は宇宙戦艦「ヤマト」2199をベースに私なりの解釈を加えたものです。

公式設定と異なっていたり、以前に私が書いた物語と食い違いを生じている部分もあります。

それを承知で楽しんでいただければ幸いです。 (YAMATOSS992)

**********************************************

 フラーケンは自室にある、目の前の小さな机、というか、本が1冊置けるかどうかの僅かな出っ張りに小さな
グラスを二つのせ、ゴルケン(ガミラス産の蒸留酒)を注いだ。

そして、その一つを手に取ると一気にあおった。

<ウ~ッ カビとオイルの味がする・・・。 だが、これが次元潜航艦の味だ。 

ヴァルス、貴様との約束、結局、果たせなかったな・・・。>

もう一つのまだゴルケンが注がれたままのグラスを見やって、フラーケンは戦いの無情を思った。

 ヴォルフ・フラーケン中佐、彼は精強を持って鳴るガミラス航宙艦隊の中では珍しい、次元潜航艦という特殊
艦艇の艦長だった。
e0266858_20391735.jpg

次元断層を人工的に作り出し、その中の艦体を潜ませて敵艦に近づき、至近距離から魚雷攻撃を行うその艦は
「異次元の狼」と恐れられていた。

ガミラスの勢力がまだ弱く、周辺の惑星国家群が大きな力を持っていたころ、ガミラスの次元潜航艦は敵の
主力艦隊や輸送船団にとって見えない敵として非常にやっかいな存在だった。

しかし、今はガミラスの勢力は拡大し、通常の航宙艦隊も非常に充実してきている・・・。

 また、次元潜航の技術は極めて精密な操作を要求される微妙なものだった。

そしてやはり危うい技術だったゲシュ=タム機関は改良され安定したジャンプが出来る様になり、長短自在の
ゲシュ=タム・ジャンプが出来る様になると次元潜航艦の担っていた通商破壊、通商保護の役割は軽巡に
移っていった。

その結果、大型の艦は造れない、また、一度、次元潜航すると再び通常空間に戻ってこれられる保証はない、
という次元潜航艦はもはや新造艦は作られない旧式兵器と化してしまっていた。

フラーケンの艦、UX-01はその最後の生き残りなのだ。
e0266858_8535522.jpg

<そんな俺が生き残って、巡洋戦艦乗りのお前が逝くなんて・・・。>フラーケンは信じられないと言う風に頭を
左右に振った。

 戦死した彼の親友の名はヴァルス・ラング中佐、メルトリア級航宙巡洋戦艦<EX-178>の艦長だった。
e0266858_20404662.jpg

フラーケンは1等ガミラス人だったが、ラングは被征服惑星、ザルツ出身の2等ガミラス人だ。

士官学校自体も1等ガミラス用と2等ガミラス用で区別されていたので本来なら親友どころか、友人になる事も
有り得ない組み合わせだった。

だが、ヴァルス・ラングは違っていた、成績があまりに優秀なので1等ガミラスの士官学校へ編入されたのだ。

最初のうちこそ、2等ガミラス人という事で差別を受けたラングだったが、その高潔な人格はしだいに慕うものを
増やし、士官学校の教官ですら「ラングの進言なら・・・。」と動かすまでになっていた。

 だが、フラーケンは1等ガミラス人であるにもかかわらず、素行が悪く、校則を度々破って悦に入る典型的な
不良だった。

当然、優等生のラングは大嫌いであった。

しかし、ラングの方はフラーケンの素行を咎めはしたが、別に不良扱いは決してしなかった。

フラーケンにしてみればそれが更に燗にさわったともいえたが・・・。

**********************************************

 事件は卒業を真近に控えた次元潜航艇躁艦訓練で起こった。

フラーケンが艦長、ラングが副長を務める訓練用次元潜航艇が浮上不能になってしまったのだ。
e0266858_93840.jpg

「次元タンッ、ブローッ」艦長役のフラーケンは思いっきりベテランを装って命令を発した。

こんな時、指揮官が自信を失っていると乗組員が思ったらこの艇の士気は崩壊してしまうからだ。

「やめとき、やめとき、艦長、何度繰り返しても同じ事や、わしら、沈没したんや。」副長のラングがザルツなまり
丸出しのガミラス語でしゃべった。

「ラング、おまえ、その言葉使いはなんだ。」フラーケンは馬鹿にされたと思いラングを睨みつけた。

「言葉使い・・・。 あ、失礼しました。 怖くてついザルツ言葉が混じってしまいました。」ラングは鯱ホコばって
敬礼した。

あまりの落差に艦内のそここで失笑が漏れた。

「いくら成績優秀でもやはり2等ガミラス人だな。 死ぬのがそんなに怖いか、それでもガミラス軍人か!」
フラーケンはラングの頬を張った。

「コ、コワイものは怖いだ。1等でも、2等でもコワイものは怖いはずじゃん!! みんな!」ラングは両手を
広げて狭い艇内を見回した。

訓練用次元潜航艇に乗り組んでいたのは6名、その内、ザルツ人はラングだけだった。

フラーケンはもちろん、他の4人もラングの無様な姿を見て軽蔑し、自分だけはそうなるまいと決心し、今、
自分の出来る事に邁進し始めた。

3日が過ぎた。

彼等は希望を失いそうになるとうずくまるラングの惨めな姿を見て気持ちを奮い立たせた。

「フラーケン、いや、艦長、次元羨望鏡を上げてみたらどうでしょう。 うまくすれば次元境界面を突破して
通常空間に通信アンテナを出せるかもしれません。 そうすれば救助を呼べます!」探査主任が提案した。

艦長、探査主任と役割には上下はあるが、訓練生は皆、士官候補生なので階級は一緒だった。

「ムダ、ムダ、この深さじゃ次元境界面まで次元潜望鏡はとどきゃないさ」ラングはまたザルツ弁丸出しで
否定的な事を言った。

「黙れ!! 2等! 何事もやってみなければ判らん! それに少しでも境界面に近づければ通信も通じ易く
なる!」フラーケンは隔壁の傍にうずくまって文句をたれたラングを蹴飛ばした。

「艦長・・・。 そんな臆病な2等に構わず、次元潜望鏡を上げてみましょうよ。」探査主任が言った。

「判った。 次元潜望鏡を上げろ!」フラーケンは命じた。

次元潜航艇の潜望鏡は過去、地球にあった潜水艦の潜望鏡と違って超小型の次元潜航艇に索敵プローブや
通信アンテナを取り付け、本体とそれを有線で繋ぎ、それを浮上させて通常空間との接点を作るものだった。

地球の単位で言えば約300mの長さのプローブを繰り出したが、通常空間には達しなかった。

「ダメか・・・。」フラーケンはつい、潜望鏡を覗きながら呟いた。

「そーれ見ろ! これじゃ上部監視用のカメラを開いても通常空間は拝めやしないーさ。」ラングが囃し立てた。

「!」それを聞いたフラーケンはラングの真意に気付いてしまった。

「ラング・・・、お前。」フラーケンはラングに声を掛けた。

しかし、ラングは微笑んだが首を左右に振った。

フラーケンも何も言わず、首を縦に振った。

そして、「探査主任、上部監視カメラを作動させろ!」とフラーケンは命じた。

そしてその画面には通常空間がボヤケてはいたが写っていた。

次元境界面は厚い、通常空間がすぐそこにある位置までプローブが伸ばせたのは奇跡に近かった。

ここで通信を送れば救助される確率が高い。

「通信士、直ぐに救助信号を送れ!」そして、フラーケンは言った。

直ぐに捜索隊の返信が来た。

「喜べ!! 皆んな! 助かるぞ!」フラーケンは仲間に伝えた。

**********************************************

 訓練用次元潜航艇は救助された、遭難から5日目の事だった。

「ヴォルフ・フラーケン士官候補生、この困難に良く艇内をまとめ、対処してくれた。感謝する!」 次元潜航艦隊総司令(当時)ガル・ディッツ提督が訓練用次元潜航艇の面々を謁見した。
e0266858_14412876.jpg

「いえ、私の力など微々たるものです。 

本当に讃えられるべきはいつ助かるか判らない長時間の遭難にも係わらず、自分の任務を遂行し続けてくれた
乗員達です。

そして・・・。」と言いかけた時、ラングが横からフラーケンを突いて首を横に振った。

「なんだね?」ディッツ提督は訝しげに訪ねた。

しかし、フラーケンは「いや、何でもありません!失礼しました。」と応えた。

 ガル・ディッツ提督との謁見は終わった。

フラーケンはラングの事を讃えようと思ったのだが、ラングは何故か、それを断わった。

<どうしてだ?>フラーケンは思いを巡らした。

そして、彼が、パニックに陥る寸前の艇内を纏めるために自分だけが2等ガミラス人である事を利用したのに
気が付いて愕然とした。

あの場には乗組員達が自分達より劣っていると思える存在が必要だったのだ。

ヴァルス・ラングにとっては自分が2等ガミラス人であった事は好都合だったに違いない。

しかし、その事が周囲に知られればザルツ人全体の立場が悪くなりかねない。

だから、ラングはフラーケンに口止めしたのだ。

フラーケンは自分が差別されている立場の2等ガミラス人である事さえ、指揮に利用出来るラングと言う男に
心底、敬服した。

そして、この時からフラーケンはラングに一目置く様になり、それはいつしか、友情に変わっていった。

士官学校を卒業して実戦に配備されるとフラーケンは次元潜航艦UX-01の艦長にラングはその副長に
選ばれた。

二人の息はピタリと合い、次々と戦果を上げていった。

しかし、5年前、ヴァルス・ラングは中佐に昇進すると同時に航宙艦隊へ転属になってしまった。

その時、二人は、また、何時か、それぞれが指揮する次元潜航艦で戦隊を組んで戦う約束をした。

だが、、次元潜航艦は旧式艦としてどんどん退役し、とうとう総統府の特務艦としてUX-01だけが残る事に
なってしまった。

 ヴァルス・ラング中佐はドメル少将(当時)の下に配属され、クリピテラ級航宙駆逐艦の艦長に任じられたが、
その勝れた指揮、勇猛な戦いぶりからケルカピア級航宙高速巡洋艦2隻をを与えられ、全艦隊の先頭をきる
強行偵察戦隊の戦隊長に任じられた。
e0266858_8495799.jpg

そして2年前、新型の陽電子カノン砲を積んで航空機運用能力もあるメルトリア級航宙巡洋戦艦が就航すると
そのテスト運用の任務が与えられ、「EX-178」の艦長になった。
e0266858_8303533.jpg

この時、現在はUX-01の副長をしているゴル・ハイニ大尉が「EX-178」の副長に選ばれ、一騒動起こすの
だが、これはまた、別の話としたい。

**********************************************

「EX-178」はテロンの戦艦、「ヤマト」との戦闘で沈んだとの報告が銀河方面軍司令官ゲール少将から
なされていた。

テロン艦!? 「ヤマト」? フラーケンは不審に思った。

ゾル星系の惑星テロンは確かにしぶとい敵ではあったが、とても光速を超えるゲシュタム・ジャンプの技術など
持っていないはずだった。

それどころか、陽電子ビーム砲に有る程度、耐性のあるガミラス艦の装甲と違い、陽電子ビームで紙の様に
貫かれる装甲しか持っていないブリキ船ばかりではなかったのか?

だが、彼は思い出した、テロンの本星に侵攻しようとした艦隊が大敗を喫し、その後のテロン本星への攻撃は遊星爆弾によるロング・レンジ攻撃に切り替えられた事を・・・。

 テロンにはまちがいなく名将、知将がいる! その男がゲシュタム・ジャンプの技術を何らかの方法で
手に入れたのだ。

 そして、そいつがアイツを殺したのは間違いない!  『ヤマト』・・・この名を忘れまい!

フラーケンは目の前に残ったもう一つのグラスを手に取ると思い切り激しく飲み干した。


                                                       
                                                      友よ・・・。ー(項了)
[PR]
by yamatoss992 | 2013-05-21 21:00 | ヤマト2199 挿話 | Comments(2)
 「彼女にはチャイナ・ブルー、私はロイヤル・スマイルを・・・。」山本玲がバーテンダーに注文をいった。

「かしこまりました。」バーテンに扮した主計科員がスッと粋にそれぞれの前にカクテル・グラスを置いた。

「これは何だ?」メルダは初めて見るカクテルに目を見張った。

「カ・ク・テ・ル! 大人の飲み物よ。 もっとも私達、パイロットはアルコール抜きだけどね。」山本玲三尉が
得意げに説明した。
e0266858_20291727.jpg

「『高貴な青』・・・。 とても 『ガミラス』 では許されない『飲み物』だ。 

しかし、お前は何故、自分の色 『赤』 の飲み物を選ばないんだ?」メルダは不思議そうにたずねた。

「フフッ ブラッディ・マリーも一つちょうだい。」山本は追加注文をした。

すぐに『ブラッディ・マリー』が出てきた。

それは名前の通り、血の様に赤い飲み物だった。
e0266858_2121845.jpg

「・・・これは血か?」メルダはその色に気色ばんだ。

ガミラス人は肌の色こそ青いが、流れている血液の色は地球人と同じ「赤」色だった。

遺伝子情報のDNA配列まで同じなのだから当然といえば当然なのだが、なかなか実感出来ない事でも
あった。

しかし、少し考えれば、地球人でも黒色人種は肌が黒い、しかし、血液の色は「赤い」ヘモグロビンの色だ。

ガミラス人の肌の色が青いのは肌の色素の問題であり、どうして青い色素が必要なのかは今後の研究に
待たなければならなかった。

山本はそんな理屈は抜きにして剥き出しの「血」の色に嫌悪を示したメルダに自分と同じ感覚を感じて彼女に
更に親近感を抱いた。

「でしょ・・・。 本当の血ではないけどこの色、私は駄目だわ。」山本はグラスを摘むと一気に飲み干した。

メルダは山本の真似をして一気にグラスを煽った。

「ウッ 何だこれは! お前達はこんな苦いものを喜んで飲むのか!」メルダは思い切り顔をしかめた。

「御免、御免、 これはこうして舐める様に楽しむものよ。 もう一つチャイナ・ブルーを・・・。」
山本は自分のロイヤル・スマイルをチビチビ舐める様に少しづつ飲みながら言った。

メルダも山本を真似て、出てきた『チャイナ・ブルー』を今度は舐めるように味わった。

「これは、不思議な味だ。 何んとも表現の使用の無い初めての感覚だ。」今度はメルダも味を堪能した様
だった。

メルダもガミラス本星では特権階級のお嬢様だったが、ディッツ家では武門の家として嗜好品や娯楽は堅く
禁じられていた。

「EX-178」でも親衛隊の将校が酒を持ち込んでいたが、本来はガミラス艦では飲酒は禁じられていた。

メルダは戦争をする戦艦の内に、こうした快楽を堂々と持ち込むテロン人にかえって畏怖を感じた。

**********************************************

 「やはり、お前では無理だった様ね。」通路の物陰で天海聖子一曹と工藤明菜二曹が話していた。

「はい、ディッツ少尉は私が右斜め後に立っただけで『殺気』を感じ取りました。 

しかも銃に手を触れてもいないのに私の特技が抜き打ちである事まで見抜かれました。 

申し訳けありません。」工藤二曹は無念そうに下を向いた。

やはり、男性保安部員と工藤二曹が入れ替わったのは作為的なものだったのだ。

「確かに、暗殺はそれが相手に気取られただけで失敗よ。

しかし、その後は旨く誤魔化したわね。 これでアイツはお前に対しての警戒心を解いたと見ていいわね。」
天海一曹は物凄く残忍な笑みを浮かべた。

「では、私に再度、襲撃しろと・・・。」工藤二曹は天海一曹に問うた。

彼女はメルダに自分の気持ちを伝えて警戒心を解かせたが、しかし、その気持ちに嘘、偽りは無かった。

だから、いくら上司の命令とはいえ、再度襲撃するのは辛かった。

そんな工藤二曹の心を見透かす様に天海一曹は言った。

「いや、次は私がやるわ、お前は私がしくじった時の切り札よ。」
e0266858_87273.jpg

「工藤二曹、不満そうな顔をしているわね。

いい、ディッツ少尉は尊敬すべき『ガミラス人』かもしれないけど、所詮、地球の敵、家族の敵、『ガミラス』の
一員だと言う事を忘れないで!! アイツは敵よ! 敵は許しちゃダメ! 敵は殺せ! これが地球の伝統よ。」

それだけ言うと天海一曹は工藤二曹の前を離れていった。

<敵は許すな! 敵は殺せ! これが地球の伝統・・・。>工藤二曹の胸に空しい風が吹き抜けていった。

**********************************************
山本三尉はメルダと共にスポーツ・ジムに来ていた。

宇宙空間で生活するものはすべからく、運動を義務づけられていた。

そうしないと、直ぐ体力を失って任務に耐えない身体になってしまうからである。

これはガミラスとて同じ事でメルダもこの「体力維持訓練所」の存在には疑問を持たなかった。

しかし、ガラス張りの壁の向こうで行われているフット・サルや剣道、柔道が何か、理解出来ない様だった。
e0266858_16502130.jpg

「山本! 彼等は何をしているのだ。 

あの棒を持って打ち合っている連中や格闘している連中は戦闘訓練をしている様に思えるのだが、

あの球を足だけで取り合っている連中はなんだ、遊んでいる様にしか、見えないのだが?」メルダは率直な
疑問を口にした。

「スポーツをしているって言ってしまえばカッコイイけど、あなたの言うとおり、遊んでいるのよ。」山本は言った。

そしてスポーツの意味を教えた。

「対戦型のスポーツはルールのある戦闘って言えば判ってもらえるかしらね。

例えばあの棒、竹刀っていうんだけど、元々は人を斬る刃物だったのよ。 大昔の戦闘の一形態ね。

でも練習の度に本物の刃物を使っていたら、死人、怪我人の山が出来ちゃうでしょ。

だから、切れない木刀となり、打たれてもダメージの少ない竹刀を使う様になっていったわ。

しかし、それでも本気で打ち合えば怪我人は出る、だから頭には面、ヘルメットね、身体には胴、ヨロイ、腕には
篭手、防護手袋を付けて防具のない場所を打ってはいけない決まりになっていったわ。」

メルダは納得いかない様だった。
「何故、防具のないところを攻撃してはいけない? 相手が戦闘不能になってしまえば勝ちではないか?」
彼女にしてみたら素朴な疑問だったのかもしれない、でも山本は怒った。

「手段を選ばず、相手を攻撃する! それはもう『戦争』よ! そう、『ガミラス』みたいにね。」山本三尉は頭に
血が上って自分のタオルを引っつかむとジムを後にした。

<折角、少し判りあえて来たと思ったのに! メルダめ、剣道の神聖さを何だと思っている!>と
そこで山本は自分の過ちに気が付いた。

<ガミラス人の彼女に『剣道の神聖さ』なんて概念が判る訳がない!>慌ててジムに引き返した。

すると、その場にはメルダが気を失って倒れていた。

**********************************************

 怒った山本三尉が出てゆくのをあっけに取られて見ていたメルダだったが後ろから忍び寄って来た影に
気付かず、口を手で押さえられ、ピアノ線の様なもので首を絞められた。

「そうよ。 ルールの無いスポーツは『戦争』よ。 そしてあなたは今、『戦死』するの。」天海一曹だった。

天海一曹は良く言えば情報部の特殊部隊、悪く言えば暗殺部隊の出身だったのだ。

メルダはもう何も考えられなくなっていた。

だが、その時、一条の光のスジが走り、天海一曹の握っていたピアノ線を切り飛ばした。

「 チッ!! 」舌打ちすると天海一曹は即座に撤収した。

<くそっ、もうチョッとだったのに、あいつめ、どう言うつもりだ。>天海一曹には暗殺の邪魔をした相手に
心当たりがあるらしく、真っ直ぐ保安部の控え区画へ戻って行った。

**********************************************

剛力彩三曹は与えられた罰当番として保安部が出動する時に使う自動小銃の手入れをしていた。

「ヤマト」の航海中、保安部員全員の銃を一人で手入れする役割を与えられていたのだ。

その武器庫に工藤二曹が入ってくると言った。

「剛力ちゃん、大変でしょう・・・。 手伝ってあげるわ。」工藤二曹は剛力三曹の傍らにしゃがむと一丁の銃を
手に取った。

工藤二曹はその銃を即座に分解すると手入れを始めた。

そこに天海一曹が怒も露なすごい形相で武器庫に入って来た。

「工藤二曹! チョッとこい!」天海一曹は工藤二曹を連れ出した。

暗闇で細いピアノ線だけをコスモ・ガンで狙撃出来る腕前を持っているのは工藤二曹くらいだったからだ。

「あなた、なんで私の邪魔をしたの。 返答次第ではただではおかないわ!」ゴツイ軍用ナイフを構えると
天海一曹はその背をペロリと舐めた。

「・・・自分でも判りません。 でも強いていえば「心の声」に従っただけ・・・です。」工藤二曹は応えた。

工藤二曹は武器庫に逃げ込んだ時、妨害工作について惚けきるつもりだったが、いざ問い詰められると
誤魔化す気は失せていた。

<自分のやった事に恥じる事何もはない!>そう思えたからだ。

「そうだよ。天海お姉、あの人は自分を殺そうとした私の助命も嘆願してくれたんだよ!」 剛力三曹も加わった。

「剛力三曹! お前までメルダを庇うのか、 あんなにガミラスを憎んでいたお前が・・・。」天海一曹はナイフを
降ろした。

「ふっ、『神』に会えば『神』を切り、『仏』に会えば『仏』を切る・・・か、私は『ヤマト』の旅は『修羅』の旅だと決めて
かかっていた。 でも、それでは我々の体力は続かないかもしれないな。」天海一曹は自嘲した。

そして、医務室の方へ歩きだした。

「どこへゆくのです。 天海一曹・・・。」工藤二曹が心配化にたずねた。

「ケジメよ。 メルダ・ディッツ少尉に詫びてくる。 その上で伊東部長のところに出頭する。」天海一曹は当然の
様に言った。

「それは順番が逆では・・・。」工藤二曹はそう言って「はっ」と気が付いた。

保安部によるメルダ・ディッツ少尉暗殺未遂事件は今度で二度目になる。

伊東保安部長の面子は丸潰れだ。

彼がことの顛末を先に聞いていたら事件を何とか揉消そうとするだろう。

そうすればメルダに謝罪するチャンスは永久に失われる。

「ケジメ」さえつけておけば、伊東保安部長が事件を揉消そうが、自分を「処理」しようが天海一曹にとっては
どうでも良い事だった。

**********************************************

「ヤマト」は大きな衝撃に見舞われた。

「どうした!探査主任!報告せよ!」沖田艦長が命じた。

しかし、「判りません! 左舷にミサイルを被弾しましたが、当該方向に敵艦の艦影はありません。』探査主任の
森雪船務長が報告した。

「直ちに波動防壁展開! 第一艦橋要員は戦闘艦橋に移動!」沖田艦長の命令一下、戦闘準備が
進められた。

「島! 近くに星系はあるか?」沖田は命令した。

「あることはありますが、誕生したての星系の様です。 宇宙塵だらけです。」島航海長が報告した。

「よし、その星系に逃げ込む! 但し、ワープで接近する時は細心の注意を払え!」沖田は大胆な命令を
放った。

一歩、間違えれば宇宙塵と「ヤマト」が物質重複を起こして大爆発しかねない行動なのだ。

「これって、ほとんど賭けじゃないですか?」太田三尉は島にコソッと言った。

「その生存確率を上げるのがお前の仕事だ。頑張れ!」島は冷たく言い放った。

「判りましたよ。 思い切りその星系に接近するワープ計算をします。」太田も意地になっていた。

**********************************************
e0266858_1046259.jpg

「ん!」 次元潜望鏡を覗いていたフラーケン中佐は眉をしかめた。

「大将!!どうしましたい。 『ヤマト』の奴、爆沈しましたかい?」副長のゴル・ハイニ大尉が聞いた。

「ハイニ、『ヤマト』がゲシュタム・ジャンプした。 

直ぐに、どこに跳んだのか、空間航跡をトレースしろ!!」フラーケンが命令した。

「これは・・・。」探査員の後に行ったハイニは眉をしかめた。

「どうした。 ハイニ?」フラーケンは副長に聞いた。

「へえ・・・。 それが『ヤマト』の奴、ボルト319星系にジャンプしやがりました。」

「なんだって!? あそこは宇宙塵だらけだぞ!まともにジャンプしたら物質重複でドカン!だぞ!」フラーケンは
「ヤマト」のあまりに大胆な行動に舌を巻いていた。

「航宙士が余程優秀か、艦長が大馬鹿なのか、運が良かっただけなのか、とにかくやっかいな所に逃げ
込まれっちまった。 艦長どうしやすかい。」ハイニはお手上げだと言うジェスチャーをした。

「逃がしはせん!! 『ヤマト』はアイツの仇だからな!」フラーケンは物凄い笑みを浮かべた。


                      孤高の「赤騎士」ー(項了) → 51.次元潜航艦との死闘 (1) へ続く
[PR]
by yamatoss992 | 2013-05-19 21:00 | ヤマト2199 挿話 | Comments(0)
 「この前の『実戦訓練』の時、ファルコン全機で一斉攻撃したのは見事だった。 加藤隊長。」

メルダはあの大胆な作戦に加藤隊長に一目おいていた。

「いや、なに単機なのは判っていたからロッテ(二機)編隊を組む必要はない、だったら多量の弾を浴びせて
一気にケリを付け様と思っただけだ。 

しかし、あの弾雨の中、アンタが機首を上げずに直進するとは思わなかった。

弾雨から逃れようと機首を上げればがら空きの背面をこちらに見せる事となる。

そうすればこっちの思う壺だったんだがな・・・。」加藤三郎は頭を掻いた。

「本当は私も、ファルコン隊に撃たれるまま撃たれて死ぬつもりだった。

でも訓練で染み付いた習慣からは逃れられないものだ。

機載のコンピュータがファルコン隊の接近を告げると同時に身体は戦闘モードに入ってしまった。」

メルダも恥かしそうに下を向いた。

「ディッツ少尉。 それが訓練の意味じゃありませんか、何も恥かしがる事はありませんよ。」篠原三尉が
フォローした。
e0266858_209124.jpg

「それで俺達の技量を上げるにはどうしたらいいんだ?」加藤二尉が質問した。

「ファルコン隊の面々が、まず、マスターすべきは『パルス撃ち』だ。

戦闘機につめる弾薬には限りがある。

一機、撃墜するのに全弾使ってしまったら戦力がガタ落ちになってしまう。 

特に『ヤマト』は単艦で長い航路を行く船だ。

兵力の無駄使いは物資・人心共に避け無ければない。」メルダは鋭い指摘を行った。

「具体的にはどんな訓練が有効なんだ?」古代戦術長が聞いた。

「簡単な事だ。 『イメージ・トレーニング』が一番効果的だ。 但し、暇さえあれば、常に行う、歩いていても
『イメ・トレ』を欠かさない位の覚悟は無いと上達は望めないがな。」メルダはサラリと言った。

「戦術面ではどうか?  『パルス撃ち』が出来た加藤と篠原が『デス・サークル』を試みた様だが、
君は簡単に突破してしまった。  あれはそんなに幼稚な戦術なのか?」古代はメルダに聞いた。
e0266858_15444735.jpg

「能力的に劣った機体が勝れた能力の機体に襲われた時の防御陣形としては悪くない。

だが、最新鋭の戦闘機がとる戦術としては消極的過ぎる。」メルダは容赦無かった。

「敵が攻撃してくるのを待つ戦術などおよそ戦闘機の取るべきものではない。

先手必勝、敵より先に相手を見つけ、敵がこちらに気付かない内にその大半を落す、これが空戦の鉄則だ。

その点、次に山本三尉と加藤二尉の見せたサッチ・ウイーブ・・・?か、これは勝れた戦術だ。」
e0266858_16313732.jpg

「これは『攻撃』にも『防御』にも有効な方法だ。 

ガミラスには編隊行動と言う概念がない。

だから『赤い囮』などという無残な事をする必要がある。

テロンでは古くから『ロッテ』と呼ばれる二機編隊を戦闘の最少単位としていると聞いた。

リーダーとウイング・マンで『攻撃』と『策敵・防御』を分担する考え方だ。 素晴らしい。 感心した。」

メルダはテロン人がいかに昔から戦い続けていたのだろうか、と内心、震えを感じた。

「しかし、そのサッチ・ウイーブでさえ、君はかいくぐった。 我々には何が足りないんだ?」古代は率直に
聞いた。

「戦術長、これ以上、ディッツ少尉に協力して貰っては彼女が『利敵行為を働いた』事になりませんか?」
篠原三尉が心配した。

「有難う、篠原三尉。 構わん。 私は生きてガミラスに戻るつもりはない。

それに『利敵行為』は『ヤマト』に『停戦の使者』として来たときからもう始まっていた。」メルダは遠いものを
見つめる様に言った。

確かに「ヤマト」に波動砲を撃たせて次元境界面を破ったあと「ガミラスの利」では「EX-178」は「ヤマト」を
置き去りにして単艦で脱出すべきだったのだろう。

だが「EX-178」の面々は「ガミラスの利」より「漢と漢の約束」の方を選んだ。

独房での尋問では決して自分の認識番号しか、言わないメルダだったが、「漢と漢の約束」を信じてくれた
「ヤマト」には絶大な敬意を払っていた。

「さて、さっきの古代戦術長の質問だが、何がたりないか?だって。 

お前達は大きな考え違いをしている。

貴様達の殆ど全てがテロンの防空隊の出身だそうだな。 大気のある場所を戦場としていたのだろう。

しかし、ここは宇宙空間だ。 大気は無い。  

大気が無ければ戦闘機の機動方法も変わる、その事を良く研究してみるんだな。

次の研究会はあさってだ。 

それまでに宇宙空間独自の機動方法を各自考えておく様に!」メルダは一方的に宣言すると教壇を
降りてしまった。

**********************************************

高空隊のブリーフィング・ルームを出ると監視・護衛役の保安部員が待っていた。

メルダの部屋からブリーフィング・ルームまで監視・護衛して来た男性保安部員ではなく、女性保安部員だった。

「工藤明菜二曹であります。 腹痛を起こした山中一曹に変わり護衛任務を行います。」敬礼しつつ、彼女は
申告した。

「判った。 宜しく頼む。」メルダも地球式の敬礼を返すと歩き始めた。

工藤二曹は右後にピタリと付いて歩いていた。

いつでも腰に下げたコスモ・ガンをメルダに打ち込める態勢だった。

「君の得意技は射撃か・・・。 そんなに『ガミラス』が憎いか?」メルダは前をむきつつ、工藤に問うた。

「『ヤマト』の内に『ガミラス』を憎いと思っていない人はまずいません。

でも、あの日、判ってしまったんです。 私。」工藤二曹はメルダの思わぬ事を言った。
e0266858_16261559.jpg

「航空隊の実戦訓練」がガミラス人、メルダ・ディッツ少尉を相手として行われるという事はたちまち艦内の噂に
なっていた。

当然、当日、非番の乗組員は左舷展望室に詰め掛けた。

そして、最初の内こそ、航空隊に声援を送っていた観衆達だったが、メルダが航空隊全機が放った弾雨を
避けきり、デス・サークル、サッチ・ウイーブと、航空隊が繰り出す戦術をメルダが次々と破った時、観衆は
沈黙していった。

しかし、最後に残った山本機との壮絶なドッグ・ファイトとその結果の山本機の自爆から、メルダが身を挺して
山本三尉を救出した時には大歓声が挙がっていた。

「赤騎士! 赤騎士!」とメルダの「ヤマトでの仇名」がいつまでも連呼された。

「あの時、私もあの場にいました。

そして、あなたが山本三尉を死なせたくなかったのを知った時、『ガミラス』は地球を滅亡に追いやろうとして
いるけれど、『ガミラス人』が皆、それを望んでいるわけではないのでは?と思う様になりました。」

工藤二尉は続けた。

「私も肉親、全てを『ガミラス』に殺されています。

『ガミラス』は憎んでも憎みきれない『敵』である事になんら変わりはありません。」

苦悩する様に下を向いた工藤二尉だったが、キッと顔を上げると言った。

「でも『ガミラス人』は違う、あなた等も私達と同じ人間です。

良い人も悪い人も、正義漢も卑劣な奴もいるのでしょう。」いつの間にか振り向いていたメルダに微笑んだ。

「それに私達、地球人の歴史は約1万年ありますが、語るのもおぞましい程、全てが血塗られたものです。

『ガミラス』の事を今更、責める事など出来はしません。」工藤二尉は目を伏せて、自嘲するのだった。

メルダは『ガミラス』はとんでもない『竜』を目覚めさせたのでは?と言う思いに捕われてしかた無かった。



                                            49.孤高の「赤騎士」ー(8) へ続く
[PR]
by yamatoss992 | 2013-05-18 21:00 | ヤマト2199 挿話 | Comments(0)
 「抗議を始める前に言っておく。 私を『赤騎士』などと呼んで讃えないでくれ!  『赤』はテロンでは撃墜王が
使う色だそうだが、ガミラスでは違う!

ガミラスでは機体を赤く塗られるのはその部隊で一番腕の悪い新米の証だ。」メルダはこう言い放った。

「教官・・・でいいんですよね。 ディッツ少尉。 何であれだけの腕を持ちながらあなたは『新米』なんですか?」
根本三尉が質問した。
e0266858_18144759.jpg

「貴様は『パルス撃ち』も出来ん『ヘボ』だな。 お前の機体はピンクにでも塗ってやろうか?」メルダは言った。

根本三尉は恥かしそうに頭をかいた。

「ガミラスではパイロットは実戦に配備されるまでに徹底的にしごかれる、やっと実戦に出られる様になっても

一番最初に与えられる役割は『囮』だ。 

だから自分の愛機を『赤く』塗られて一番目立つ様にされて実戦に臨むのだ。

そして先輩達は『赤く塗られた新米』に群がる敵機を順番に始末すると言う寸法だ。

しかし、次から次へと襲ってくる敵機を避け、撃墜してゆく内に「赤いヒヨコ」もめきめきと腕は上がる。

そして、新しい『新米』が補充されて初めて『囮』の任務から解放される。 

まあ、それまで生きていられればの話だが・・・。」メルダはサラリと言ってのけた。

この前の「実戦訓練」の時のメルダの技量は神掛ったものだった。

それでも「ガミラス」では「ヒヨッコ」扱いなのだ。

その事実に加藤隊長も篠原三尉もその他の飛行隊員も言葉が無かった。

地球での防空戦、冥王星での制空戦闘、どちらも地球の航空隊は圧勝して来た。

だが、その慢心はメルダとの「実戦」訓練」で無残にも打ち砕かれた。

いくら弾数に制限があったとはいえ、三十六対一の戦いに敗れたのだ。

この大敗北は僥倖かもしれない、これだけ叩きのめされたのに「戦死者」は無かった。

そして、そのメルダが自分から航空隊の教育をしたいと申し出たと聞く。

加藤三郎は考えられ無いこの幸運に思わず、「仏」に感謝していた。

**********************************************

「ヤマト」の士官室は基本的に二人部屋だ。

山本玲は唯一人の女性航空兵だったのでその士官室を唯一人で独占していたのだが、メルダが独房から
解放されるとメルダと相部屋になる事になってしまった。

「お前と一緒の部屋で暮らす日が来ようとは思わなかったな。 しかし、寝首を掻かれるのは御免だぞ! 
勝負は宙だけにしたい。」メルダは山本に右手を差し出して握手を求めた。

「ガミラスは憎い。 家族や親戚、友達はもちろん、明生兄さんまで殺した憎い敵だ。 だが、あなたは、
あの壮絶な空戦の果て、自分のミスで愛機を自爆させてしまった愚かな私を自分の身の危険を顧みず、
助けに駆けつけてくれた。 しかも一寸、前まで私はあなたの命を取ろうとしていたのにだ。

私は恥かしい。 私はガミラス全体とガミラス人個人の区別も出来なかった愚か者だ。

こんな私で良ければ一緒に暮らす事をゆるして欲しい。」山本は両手でメルダの手を握り返した。

それを見ていた保安部長の伊東真也は言った。

「話は決まりましたね。 今まで付けていた女性保安部員は外します。 

山本三尉、代わりにディッツ少尉の面倒を看てあげて下さい。

ただ、ディッツ少尉の『捕虜』という立場は表向き変えるわけには行きませんので部屋の外に男性保安部員の
歩哨を一人つけさせて頂きます。

ディッツ少尉が部屋から出る時にはこの歩哨が同行します。

もちろん、必要に応じて山本三尉にも同行して貰う場合もあるでしょう。 

その時はよろしく! では。」伊東二尉は敬礼すると部屋を出て行った。

扉が閉まる直前、歩哨に立っている男性保安部員の顔が見えたがその男はキチンと敬礼しつつ、二人に
ウインクをして見せた。

**********************************************

 情報長の新見薫一尉はほくほく顔で情報の整理にあたっていた。

「新見君、君の作戦は当たりだった様だね。」声を掛けたのは副長の真田三佐だった。

「当たりも何も大当たりですわ!
 
私がメルダの『処刑』を『実戦訓練』に切り替えてもらったのはガミラスの航空戦術の一端を垣間見るつもり
だけでした。

でもメルダはファルコン隊を全機退けてガミラスの航空戦力の強大さを教えてくれたばかりか、自分を『撃墜』
出来る様にファルコン隊を教育しなおさせてくれと申し出てくれました。

この講義や訓練はガミラスの情報を多量に含んでいます。

更に山本三尉と一緒に暮らす事で日常会話の中にガミラスの習慣や考え方の情報をつぶさに収集する事が
出来ます。」

新見情報長は新しいおもちゃを貰った子供の様だった。

「しかし困った問題が一つある・・・。 彼女の服装だ。 

航空隊の艦内服を支給するのが一番てっとり早いがそれではジュネーブ条約違反になる。
(敵国の軍服を着て戦闘行動をするとスパイ行為と見做されて即座に銃殺の対象となる。)

かといって囚人服のまま教壇に立たせるなんて『礼』を失した行為は我々の『誇り』が許さない。

どうしたものか・・・。」真田副長は妙に頭の硬い男だった。

「原田真琴 衛生士に『メイド』服でも借りたらいかがですか?」新見情報長は冗談を言った。
e0266858_18244698.jpg

「ご主人様、敵機はこうやって捻ってやって下さい・・・、ってか! 冗談いうな! 私は本気で心配して
いるんだ。」真田副長は受けない冗談で切り替えしたが、新見情報長は黙って目の前のモニターを操作した。

そこには囚人服に航空隊のジャケットを羽織ったメルダがいた。

「囚人服とはいえ『錨マーク』が入っていては軍服扱いになります。  『錨マーク』は『ヤマト』のシンボル
だからです。 

しかし、元々、あの囚人服は艦内服の下に着るアンダー・ウエアとして作られました。

ですから、一般の乗員に支給されているアンダー・ウエアに錨マークは入っていません。

だから、メルダにも『錨マーク』の入っていないアンダー・ウエアを支給すれば良いと思います。

そしてアンダー・ウエアだけでは格好がつかないので航空隊に支給しているフライト・ジャケットを羽織って
貰います。」新見情報長が説明した。

「フライト・ジャケットだって立派な軍服だぞ?」真田副長は懐疑的だった。

「階級章さえ外せば、フライト・ジャケットは軍服ではありません。 

あれは航空隊の士気を高めるために用意された伝統的なコスチュームです。

だから、階級章や『ヤマト』航空隊関連のワッペンを外せば、問題なく使えると考えます。

航空隊のマークを外したあと、『ガミラス』の国章をワッペンにして付ける事を考えましたが、さすがにそれは
一般乗組員の感情を逆撫でしかねないのでやめました。

しかし、メルダは愛機にパーソナル・マークと思しきものを付けています。

ですからそれを主計科でワッペンにして貰ってフライト・ジャケットに付ければいいんじゃないかと思います。」
新見情報長はモニターを真田副長に示して微笑んだ。
e0266858_17314517.jpg

「私のマークだ!! これを着て良いのか?」メルダは至急された新しいフライト・ジャケットに自分の
パーソナル・マークのワッペンが着けられているのを見て喜んだ。

「星は違えど同じパイロットだ。 フライト・ジャケットくらい無くっちゃ話にならない。 平田主計長の
心使いね。」山本三尉がメルダの新しい衣服と着替えを持ってきた岬准尉に言った。

「ええ・・・そうです。」岬 百合亜はこれが新見情報長のコーディネイトだという事は伏せておく様に
言い含められていた。

さすがに心理学の博士号を持つ彼女はメルダの心を開かせるのには何が必要か、充分心得ていた。


                                            48.孤高の「赤騎士」ー(7) へ続く
[PR]
by yamatoss992 | 2013-05-16 21:00 | ヤマト2199 挿話 | Comments(0)