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宇宙戦艦ヤマト前史

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宇宙戦艦ヤマト登場前の地球防衛軍の苦闘を描きます。

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  「ヤマト」は「UX-01」が放出した警告ブイを拾っていた。

「複合次元断層・・・。 そんなものが発生しているとは・・・。」真田副長は深刻な顔をした。

「なんです。 それは?」太田航海長補佐が訪ねた。

「この前、我々が飲み込まれ、『EX-178』との共同作戦で脱出した次元断層が複雑に幾重にも重なりあったものだよ。

これに飲み込まれると例へ次元潜航艦でも容易には脱出出来ない。」真田は難しい顔をした。

「助かりましたね。 この位置情報によると、『ヤマト』が次回ワープする予定の地点はこの複合次元断層の直ぐ
そばでした。 

これを避ける様に航路計算をやり直します。」太田航海長補佐は第一艦橋から航路計算室へ行こうとした。

「まて、太田。」島航海長が太田を止めた。

「『船乗りは決して仲間を見捨てない・・・。』これが俺の死んだ親父の残した言葉です。」

「俺は『仲間』とは地球人の事だけを指すものだと思っていました。 

でもガミラスの「UX-01」は自分達が複合次元断層に落ち込んで絶対絶命の状態にあるにも係わらず、 
その危険、複合次元断層の存在を「あまねく、その宙域を航行する船舶全てに警告を発してくれました。

我々も彼等も各々の星に所属する『戦士』ですから『戦場』で出会えば全力で戦います。

しかし、そうでない時、我々も彼等も『宇宙を往く船乗り』です。

『宇宙人とも友達になれるさ・・・。』これが俺の父が最後に残した言葉です。」島は一端、言葉を切った。

「その言葉を裏付けるかの様に、『UX-01』は自らの危険を顧みず、『宇宙を往く船乗り達』に警報を
発してくれました。

『船乗りは決して仲間を見捨てない・・・。』、俺は自分が今までどれだけ小さかったか、思い知らされました。

ガミラスは俺の親父を殺した憎い敵です。

 でも、もう既に死んでしまった親父と違って今、彼等は、『UX-01』はまだ生きているのです。

俺達が手を差し伸べさえすれば助かる可能性が大きいのです。」島航海長はその願いを強く述べた。

「だが、島、『UX-01』が落ち込んだのは複合型の次元断層だ。

『ヤマト』の『波動砲』でも全ての次元境界面を突き破る事が出来るとは限らないぞ。

それに『波動砲』を撃ってしまった『ヤマト』は自力航行出来ず、助けには行けない。」真田副長が異論を唱えた。

「それならば心配いりません。 

『波動砲』が造った『回廊』の中の次元断層の性質は通常の宇宙船が航行出来る位均一です。

そして、もともと次元断層内を行き来する様に出来ている次元潜航艦ならその『回廊』の中に出る事が
出来ます。」太田航海長補佐が言った。

「しかし、『UX-01』に脱出口が形成された事をどうやって知らせる? 

それに脱出口は長時間、開いてはいないぞ。

前に『ヤマト』が次元断層を突破出来たのはヴァルス・ラング艦長の『X-178』の協力があったからこそだ。」
副長は尚も反対した。

「行く! それでも行く!」静かだが断固たる声が第一艦橋に響いた。

「『船乗りは決して仲間を見捨てない!!』 これは戦時でも変わらない、そして、そこには敵味方の区別などは
ない!」まだ胸に包帯を巻いたままの沖田艦長だった。

「それにわしにはあの船に大きな『借り』があるしな・・・。」沖田はその胸に手をやった。
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「真田君。 君の事だ、どうしたら良いか、もう作戦は考えてあるのだろう?」沖田は不敵に笑ってみせた。

「艦長にはかないませんな。 確かにやれる事もやらないで嘆くのは愚者のする事です。」真田は作戦室に
主要スタッフを集めた。


そこには通常の作戦では呼ばれる事のない主砲塔要員や航空隊員の山本玲まで含まれていた。

真田副長は作戦の概要を説明し始めた。

「本作戦は三段階に分かれる・・・。」

真田副長の説明が進むにつれ、その困難さと大胆さに皆、声を失っていった。

**********************************************

フラーケンは艦の前方を写しだしていたスクリーンがいきなり閃光と共に真っ暗になったのに驚いた。

調べさせると船外カメラが焼きついていた。

<一体、何が起こったのだ?>フラーケンは記録してあったカメラが焼きつく寸前の映像を分析させた。

「艦長! 何か物凄く大きなエネルギーの束がスクリーンを左から右へ横切ったようです。」探査主任が
分析映像をスクリーンに映し出した。

それは、可視化出来る様に光度を大幅に落した映像だったがそれでもなお、彼等の目を焼く凄まじい光の帯
だった。

「これは『ヤマトのあの武器!』・・・。間違いない!」メルダが呟いた。
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「『ヤマト』が、『ヤマト』が助けに来てくれたんだわ!」メルダは微笑んだ。

「ゲシュ=ヴァール機関全速!! あの光の通過点へ向かえ!」フラーケンはメルダの言葉に反射的に命令して
いた。

「あの光の通過は一瞬でしたからね。 正確な場所までは特定出来ません。」探査主任が残念そうに言った。

「大体で良い! とにかく前へ進むんだ。」フラーケンは部下を叱咤した。

UX-01がしばらく進むとコォーン、コォーンという次元ソナーの音が艦内に響いた。

「これは、『ヤマト』の次元アクティヴ・ソナー・・・ではないな?」フラーケンの耳は確かだった。

「へえ、『ヤマト』がこっちの魚雷を撃てども撃てども迎撃しやがった時、響いていたアクティヴ・ソナー音でっせ。」
ハイニ副長が忌々しそうに言った。

「とにかく、ソナーの発振されている空間へ向かえ! それが脱出回廊だ。」フラーケンは直ぐに指示した。

「大将・・・。そんなに簡単に信じて大丈夫なんですかい? 相手はテロンですぜ!」ハイニは懐疑的だった。

だが、フラーケンは「ヤマト」を信じる気になっていた。

何しろアイツとの約束を信じた「船」だ。

<俺も信じてみよう・・・。>「UX-01」は「波動砲」が造った「次元回廊」に浮上した。

「UX-01」が「次元回廊」に出て見ると幾つもの「次元断層」が貫かれ、その先には「通常空間」が開けていた。
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「ゲシュ=ヴァール機関停止!! 通常機関全速いっぱい!! 『開口部』を目指す!」フラーケンは命じた。

「直ぐそばに、敵機がいます。周囲を旋回しています。」探査主任が報告した。

「映像は写せる?」メルダは探査主任にたずねた。

「映像出ます。」探査主任はスクリーンを操作した。

そこに映った機体は機首をオレンジ色に塗ったコスモ・ゼロだった。

旋回を続ける機体の周りにはコスモ・ゼロがバラ蒔いたソノ・ブイが浮かんでいた。

「山本!! あなたが来てくれたのね!」メルダは思わず叫んでいた。

「あの機体には次元断層の航行能力があるんですか?」フラーケンはメルダに訪ねた。

「フフッ、ただの宇宙戦闘機よ。 彼等はゲシュ=ヴァール機関の存在すら知らないわ。」メルダはテロン人の
勇敢さが自分の事のように誇らしかった。

山本玲のコスモ・ゼロ・アルファ2は「UX-01」が回廊に浮上出来たのを確認すると軽くバンクを振って
「UX-01」を先導する様に斜め前上方に位置した。

<何故、さっさと脱出しない?>フラーケンが疑問を持ったその時である、探査主任が緊急事態を告げた。

「次元断層の脱出回廊が急速に閉じつつあります。 

このままでは本艦が通常空間に戻る前に再び複合次元断層に飲み込まれてしまいます。」探査主任は冷徹な
事実を告げた。

メルダは通信席を奪い取ると山本に直ぐ脱出する様、警告を放った。

しかし、山本から返ってきた応えは驚くべきものだった。

「私は逃げない。 私の機を基準点としてこれから『ヤマト』は『UX-01』の周囲に『ショック・カノン』の弾幕を張る。

『ショック・カノン』では次元回廊を造るだけの力はないが、今出来ている次元回廊が閉じる速度を遅くする
効果がある事は判っている。

これから我々は『ヤマト』からの猛烈な艦砲射撃を受けるが、どうか『ヤマト』を信じて欲しい。 唯の一発も
貴艦に当てはしない。 もし、『ヤマト』がしくじる様なら私が真っ先に死ぬだけだ。」

フラーケンもハイニもそしてメルダも声が出なかった。

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「撃ち方始め!!」 沖田艦長の命令が第一艦橋に轟いた。

ただ、通常の戦闘の時とは違い、あえて三基の主砲を統一してコントロールする射撃指揮システムを使ず、
各砲塔が山本機が発している位置ビーコンを基に自分の射撃すべき位置を割り出し、何も無いと思われる
空間を射撃した。

第一砲塔には古代進戦術長が、第二砲塔には南部康弘砲雷長が、第三砲塔には北野哲也宙雷士が特別に
直接指揮を執る様、命じられて配置されていたが、三人とも部下の砲塔要員の腕を信じて特別な命令は
出さなかった。

<やるべき事は判っている!>各砲塔要員は一撃毎の着弾点を少しずつづらし、「UX-01」の周りの空間を
円形状に切り取ってみせた。

「ショック・カノン」の砲撃による「円」が完成すると同時に「UX-01」を複合次元断層に再び引き込もうとして
いた力が突如、失われ、「UX-01」は通常空間にダイヴする様に投げ出された。

「助かったのか?」フラーケンはその目で確認するためブリッジに登った。

フラーケンの目に飛び込んで来たのは、今まで自分達が捕らえられていた複合次元断層に「ヤマト」が作った
次元回廊が閉じ様とする最後の名残の赤い空間亀裂だった。
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脇にメルダも来ていた。

彼女は地球式の敬礼をしていた。

フラーケンがその敬礼先を見ると山本玲のコスモ・ゼロ・アルファー2が旋回していた。
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山本機は「UX-01」の無事を確認すると軽くバンクを振り、「ヤマト」に帰艦していった。

その先に小さく「ヤマト」の姿が確認出来た。

気が付くとフラーケンはメルダと同じ地球式の敬礼をしていた。

ゴル・ハイニもそれに倣っていた。

「ヤマト」の第一艦橋の全員も脱出に成功した「UX-01」に対し敬礼していた。

「UX-01」の艦橋後部から発光信号が送られてきた。

相原通信士がそれを読んだ。

「ア・リ・ガ・ト・ウ」 それだけだった。

しかし、それで充分だった。

「本来の航路へ戻る! 機関 第二戦速、『ヤマト』発進!!」沖田艦長の命令が響いた。

二隻の船は全く別の航路を取って分かれていった。

                                                   57.烈光の使者 (項了)
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by yamatoss992 | 2013-06-07 21:00 | ヤマト2199 挿話 | Comments(2)