ブログトップ

宇宙戦艦ヤマト前史

yamato2199.exblog.jp

宇宙戦艦ヤマト登場前の地球防衛軍の苦闘を描きます。

<   2013年 08月 ( 8 )   > この月の画像一覧

 「行ってしまうのね? フォムト・・・。」バーガーの胸に顔を埋めたイルダ・ディッツは呟いた。

「ああ、しばらく後方勤務だったが、最前線の小マゼラン雲方面の防衛を命じられた。」バーガーも呟く
様に応えた。

小マゼラン雲は殖民惑星も被征服惑星も殆どない、不毛の星雲だったが、近年、謎の宇宙艦隊の侵攻が
何度と無く繰り替えされていた。
e0266858_2075054.jpg

これはガトランティスという侵略集団である事が後に判るのだが、今はまだその正体は不明であり、その
軍事力は多大な脅威をガミラス帝星に与えていた。

そのため、小マゼラン雲防衛軍が増強される事になり、後方任務で休息していたバーガー大尉にも召集が
掛ったのだ。

イルダは父親にバーガーの転属を取り止める様に頼んだ。

しかし、イルダやメルダの父、ガル・ディッツ提督は娘の願いを聞き入れてはくれなかった。

それどころか、メルダにも最前線に向かうガイペロン型多層空母の戦闘機隊勤務を命じた。
e0266858_1892432.jpg

「ディッツ家はガミラス帝星とデスラー総統の為に戦って死ぬのが定め、イルダ、お前も士官学校を卒業
したら直ぐにも前線に行ってもらう。

そして、フォムト・バーガー大尉も優秀な、そして勇気ある士官だ。

当然、今度の蛮族の大侵入阻止には絶対必要な人材だ、外す訳にはいかん!」とにべも無かった。

「ねえ、フォムト、お願いがあるの。 最後のお願い・・・。」イルダはバーガーにベタベタに甘える様に
なっていた。

「何だい、改まって、お前らしくもない・・・。」バーガーはイルダの肩を抱きながら尋ねた。

「私、あなたの子供が欲しい。」イルダはとんでもない事を口走った。

自分が妊娠すれば、その父親であるバーガーは後方勤務に回されると踏んだ浅知恵だった。

だが、バーガーはやはり、根っからの戦士だった。

「それは良い。 戦士の務めの第一は家族と仲間を守る事。 父親になればより任務に励みが出ると言う
ものだ!」そう言うとバーガーはイルダの衣服を脱がしに掛った。

野外でいきなり事に及ぼうとするバーガーにイルダは慌てた。

「ちょ、ちょっと、もう、アンタにはムードって物がないの! ああっ、もう、これだから戦闘馬鹿は嫌よ!」
イルダは乱れた衣服を手早く整えるとバーガーの前から立ち去って行った。

後に残されたバーガーは夜空に浮かぶイスカンダルに照らされながら去ってゆくイルダの後姿を
見つめながら思った。
e0266858_17394860.jpg

<これで良かったのだ・・・。 俺は今度の出陣で多分、戦死する・・・。 あの娘に涙は相応しくない。>

フォムト・バーガー大尉、二十五歳の決断だった。


                                                         ( この項、了 )
[PR]
by yamatoss992 | 2013-08-14 21:00 | ヤマト2199 挿話 | Comments(5)
 イルダは愛機を殆ど垂直に上昇させてバーガー機の頭を抑えようとした。

しかし、脇を見るとバーガー機は殆どイルダ機と同じ高度を取り続けていた。
e0266858_1110192.jpg

<クソッ、何で戦闘機と同じ上昇力を急降下爆撃機が持っているんだ!>イルダは焦り始めていた。

確かにツヴァルケは戦闘機だが大気圏内外両用とはいっても、やはり大気の有る所は苦手だった。。

しかし、スヌーカは急降下爆撃機であり、大気圏内専用の設計だった。

それにイルダは気が付いていなかったが、急降下爆撃機は一度、急降下爆撃をすれば攻撃が終わるとは
限らなかった。

何度も敵戦車隊の上を襲う戦い方をする場合も有り得たのだ。

つまり、急降下の次は急上昇するのは当たり前の運用だったのである。

イルダが焦って高度を取ろうとしているのを嘲笑うかの様にバーガーのスヌーカはバンクを打つと
急降下の態勢に入った。

<舐めた真似を!>イルダはスヌーカの後下方に専位すると一緒に急降下を始めた。

この位置ならスヌーカに付いている後部旋回パルス・ガンも死角に入って打てないはずだった。

もっとも、バーガー機には後部銃手が搭乗していないので打たれはしないとは思ったが、イルダはバーガーが
後部旋回パルス・ガンを固定照準で使う可能性を考えての後下方専位だった。

<仲々、頭を使った戦闘をするじゃないか!>バーガーはイルダの戦術が通り一変の物で無い事に感心
した。

<だが、それが油断になるって事も覚えてもらおうか!」バーガーは急降下の態勢のまま、機体を捻って
背面飛行に入ると後部旋回パルス・ガンを使ってイルダ機を射撃した。

しかも固定照準では無く、本来の旋回銃として使い、イルダ機を執拗に追尾、射撃した。

「約束が違うわ! アンタ一人との勝負のはずよ!」イルダは無線で抗議した。

「約束は破っちゃいない! 射撃しているのはガミロイドだ!」バーガーはほくそ笑んだ。

確かにその射撃は通り一変の物でイルダ機には掠りもしなかった。

が、イルダは自分が挑んだのがとんでもない曲者だった事に薄々気付き始めていた、が、もう後には
引けなかった。

バーガーは愛機を背面飛行のまま急降下させ続けた。

その先の地上にメルダがガミロイドに運転させている戦車が土煙を上げて疾走していた。

しかし、戦車の走る速度など、航空機の速度に比べれば這っている様なものである。

たちまち、バーガー機は爆弾の投下範囲まで迫っていた。

だが、爆弾は機体下面に懸荷されていたが機体は仰向けだった。

そのままでは投下出来ない。

だからイルダはバーガーの投弾はまだ先だろうと判断し、スヌーカに対する追尾を続けた。

後部監視モニターに目をやったバーガーはイルダの無謀な追尾に「ヌゥ」と呻き声を上げた。
e0266858_113017.jpg

スヌーカは急降下爆撃専用に造られた機体である。

急降下し、投弾、機体の引き起こしを行うに必要な機体強度と急降下速度制限をするための設計がなされ
ていた。
e0266858_1944529.jpg

一番、顕著にそれが判るのは主脚のタイヤは飛行時にカバーが掛るものの、脚柱は固定式になっており、
急降下時に機体速度が上がり過ぎない様、エア・ブレーキの役目を果たす様になっている事だった。

しかし、ツヴァルケは大気圏内外両用の戦闘機ではあっても、そのような急降下速度を制限する装備など
持っている訳はなかった。

バーガーのスヌーカと同じ急降下をすれば、スヌーカが引き起こせる高度でもツヴァルケは引き起こしが
出来ず、地上に激突するのは明らかだった。

「イルダ・ディッツ少尉候補生! 引き起こせ! 今ならまだ間に合う!」バーガーは叫んでいた。

だが、イルダは何が何でもバーガーを撃墜するつもりで追尾を続けた。

もはや、ツヴァルケの急降下制限速度は大幅に越えていた、このままではイルダは墜落死してしまう。

<しょうがないジャジャ馬だ!>バーガーは急降下爆撃のベテランだけが出来る秘儀を見せる事にした。

眼下にメルダが操る戦車が迫って来ていた。

投弾の瞬間が来た。

普通なら機体を通常の急降下に戻して投弾するだろう、しかし、バーガーは背面飛行のまま無理やり
機体を引き起こし、機体が上昇に移る寸前に爆弾を投下した。

さすがに頑丈なスヌーカの機体もこの無理な操縦に悲鳴をあげ、ネジが2~3本吹っ飛んだ。

バーガーが投弾した爆弾は中型の物二発と小型のもの三発だった。

しかし、その五発の爆弾は戦車には当たらず、戦車の後部、少し離れた地上に着弾、大爆発を起こした。

そしてその爆風は急降下制限速度を越え、もはや引き起こし不能になっていたイルダのツヴァルケをも
吹き飛ばし、地上に激突する事を回避させていた。

バーガーはイルダを救出するため、金属破片を生じない様、わざと戦車から照準を外したのだ。

そして、バーガーはイルダ機の無事を確認すると一度、急上昇に移ったが直ぐに機首を下げた。

それは小さなループを描く連続技だった。

バーガーは再び急降下で標的の戦車に迫ると一発だけ残していた小型爆弾を投下した。

今度は戦車の砲塔上部にある乗員用のハッチを直撃し、戦車は外観に全く異常は見られなかったが
内部を徹底的に破壊され、当然、操縦していたガミロイドもスクラップとなり、停車した。

だが、搭乗しているツヴァルケがバーガーの投下した爆弾の爆風で吹き飛ばされ、機体の乱れた飛行状態を
安定させる事に夢中になっていたイルダは勝負がついた事にも気が付いていなかった。

そして、機体の安定を取り戻すと憤怒に燃えて着陸態勢に入ったバーガーのスヌーカに襲い掛かった。

「おいおい、勝負は付いたぜ、お嬢ちゃん。」バーガーはどこまでも負けん気なイルダに苦笑した。
e0266858_11325173.jpg

メルダも眉をしかめながら、何処かと通信していた。

「まだ勝負はついていないわ! 私はまだ飛んでいる!」イルダはヘッドアップ・ディスプレイからはみ出す位、
間近に迫ったスヌーカ目掛けて引き金を引き絞った。

しかし、イルダのツヴァルケの機関砲や機関銃は沈黙したままだった。

<アレ?>何度も引き金を引くイルダ、しかし、発砲される事は無く、イルダのヘルメットにメルダの
声が響いた。

「好い加減になさい! 勝負はついたわ。 アナタの負け! これはハイデルン大佐も私も同じ判定よ!」

「お姉ェ、私の機に細工をしたな!」イルダは歯軋りをした。

メルダは妹の往生際の悪さを良く知っていた。

確かに実戦ではその方が生き残れる確率は高くなる。

だが、今はお互いの誇りを賭けた勝負の場、往生際を悪くされてはディッツ家の名誉に係わる。

だから、メルダはイルダが勝負がついた時、まだ戦闘を止めようとしないイルダ機の火器管制装置を
遠隔操作で切れる様に整備員に依頼しておいた。

さっき、メルダが連絡を取っていたのはその遠隔操作を担当している整備員だったのだ。

火器管制装置が死んでしまってはもはや戦闘の続行は不可能だった。

まずバーガー機が着陸、停止した。
e0266858_11453991.jpg


しかし、イルダは着陸するための侵入アプローチに入った時、駐機しているバーガー機の上を掠めて
着陸した。

それはまるで特攻機が突っ込んで来たかと思う様な激しい着陸だった。

一同はイルダ機が着陸する時に起こった猛烈な噴射風が収まると顔を上げて驚いた。

バーガー機のV字型尾翼の片方が無くなっていたのである。

直ぐそこに着陸したイルダは右翼端の無くなったツヴァルケのコクピットから身を乗り出しガッツ・ポーズを
して見せていた。


                                   81. 灼熱のデート・スポット (4) → この項、続く
[PR]
by yamatoss992 | 2013-08-13 21:00 | ヤマト2199 挿話 | Comments(0)
 バレラスから少し離れた演習場の片隅に一台の車が止まっていた。

その日は風が強く、砂漠に造られた演習場は砂塵が舞って目も開けていられない位だった。

しかし、メルダ・ディッツ少尉は車の外で将校服のまま、飛行用ヘルメットを被り、手元のリモコンと
いうか、標的の戦車(古くなったサルバーーSーⅣ型戦車、標的用なので砲の中身は取外されていた。)を
操縦しているガミロイドへ操縦司令を送る指令機を操作していた。
e0266858_18321863.jpg

また、妹のイルダ少尉候補生とフォトム・バーガー大尉の勝負を見極めるイルダ側の立会人も勤めていた。

直ぐ脇にはバーガー側の立会人であるヴェム・ハイデルン大佐が砂塵に目を細めながら戦場(?)に目を
凝らしていた。

「すみません、大佐、妹の我儘にお付き合い戴いて本当に申し訳ありません。」メルダは大古参兵の
ハイデルンが立会人として来てくれた事に恐縮していた。

「何の、あのバーガーが仕出かした事、昔、奴の教官だったわしには見届ける義務がありますわい。
しかし、当の本人達は一体どうしたのですかな。 一向に姿をみせませんが・・・。」ハイデルンは
いぶかしんだ。

と、大空の一点に一機の機影が現れ、どんどん近づいて来た。

イルダ・ディッツ少尉候補生のDWG262ツヴァルケだった。
e0266858_18363969.jpg

その機首を黄色に塗られた機体はメルダとハイデルンの佇む滑走路に降りて来た。

「ゴメン、お姉ェ、遅くなった。」イルダはメルダ達の傍に機体を着けるとヘルメットも脱がずに挨拶した。

「イルダ! ハイデルン大佐に失礼だぞ! ディッツ家に恥を掻かすつもり!」メルダは妹のあまりの
非礼に妹を叱りつけた。

「ヘイヘイ、ハイデルン大佐、立会いご苦労さまです!」ヘルメットを取るとイルダはまるで人事の様に
ハイデルンに挨拶した。

「ハハハッ、少尉候補生でこの貫禄、妹君は大物になりますな。メルダ様。」ハイデルンは笑って許して
くれた。

メルダはヘルメットのバイザーを上げると黙ってハイデルンに深々と頭を下げた。

「お姉ェ、どうしてそこまで卑屈になるの? 家は航宙艦隊総司令の家系よ。一番偉いんだからこれで
いいのよ。」イルダはメルダがハイデルン大佐に気を使う意味が全く判らない様だった。
e0266858_18452796.jpg

「偉いのは父上だけよ! 同じ家系でも私達はガミラス軍のまだ下っ端なの!」メルダは妹の世間知らず
にも程があると呆れて怒る気力も失せてしまった。

「そうこう言っている内にもう一人、ヤンチャ坊やがやって来た様ですな。」ハイデルンが空を見上げて
呟いた。

惑星ガミラスは古い星である、表面の侵食が進み、内殻と外殻の二つの表面を持つ様になっていた。

首都バレラスは内殻の表面にあった。

メルダ達の居る演習場はバレラスの近傍ではあったが、外殻の方にあった。

住民はその殆ど全部が内殻に住んでいたので、外殻は本土防衛の為の軍事施設に当てられていたのだ。

内殻表面で戦う場合、背景が入り組んでいたのでお互いに相手を識別するのが難しく、戦闘は経験豊かな
バーガー大尉に歩があったが、バーガー本人はそんなハンデを喜ぶ男では無かった。

また、演習には墜落も付き物であり、住民の安全を考えると演習は自然と外殻表面で行われる様に
なっていった。

メルダはハイデルンが見上げた方向を見たが、そこには小さく輝く母星、サンザーしか無かった。

と、一拍置いてサンザーの輝きは急降下してきた航空機に隠され消えてしまった。

その機体はメルダ達のいる場所の直ぐ傍まで急降下で接近すると衝突の危険を感じとったメルダが身を
反らすのを嘲笑うかの様に引き起こして水平飛行に移ると着陸態勢をとった。

メルダが恐る々ハイデルンの方を見るとその姿は泰山の様に微動だにしていなかった。
e0266858_184924.jpg

<さすが、古参の軍人の内でも豪胆を持ってなるハイデルン大佐、腹が据わっている・・・。>メルダは
改めて感心した。

そして、妹の方を見ると彼女も負けじと降りて来たバーガー機を見つめていたが、その機体が退役寸前の
大気圏内用急降下爆撃機DWE87スヌーカなのに気付くと眉をしかめた。

機体から降りて来たバーガー大尉はさすがに軍人生活が長かったのでそつなく一同に挨拶した。

しかし、イルダはバーガーが乗って来た機体が旧式なのが不満だった、馬鹿にされた様な気がした
からだ。

「イルダ様、バーガー大尉はこの機体と共に成長してきました。今では手足の様に操れます・・・。」
彼女の不満を感じ取ったハイデルンが意味深長に言った。

「それは私が負けるって意味? ハイデルン大佐!」イルダがハイデルンに噛み付いた。

「あまり先輩を舐めるなって意味よ。イルダ!」メルダが諌めた。

「まだるっこしいのは苦手です。 宜しければ勝負を始めたいのですが?」バーガーはさすがに
ハイデルン大佐の前では大人しかった。

「バーガー大尉、まさか、本気でスヌーカでツヴァルケと空戦するつもりではあるまいな。」
ハイデルンはバーガーに今日の決闘のルールの説明を求めた。

「まさか! 幾ら小娘が操縦する機体でも戦闘機と急降下爆撃機では勝負になりませんよ。」バーガーは
両手を広げながら頭を振った。

そして続けて説明した。

「戦闘機の目標が航空機である様に、急降下爆撃機の目標は地上に有ります。」バーガーが言った。

「それで私に戦車を動かせって訳ね。」メルダが司令機を指し示した。

「そうです。ガミロイドが一体、操縦しているはずです。 メルダ様には戦車を私の機から爆撃されない
様、逃げ回らせて下さい。 そして、そこのお嬢ちゃんには戦車を俺に破壊されない様に守って貰えれば
結構です。」バーガーの挑戦的な物言いにイルダは怒りを押さえ切れないようだった。

「それってアンタの機を撃墜しても良いって事? 私の機は実弾を積んでいるのよ?」イルダは意地悪く
微笑んだ。

「やれるもんならやってみな! 御嬢ちゃん。 実戦の恐ろしさ、骨の髄まで思い知らせてやるぜ!」
バーガーも負けていなかった。
e0266858_19502185.jpg

二人は一瞬、顔を付き合わせると直ぐにそれぞれの機に向かって走っていった。


                                   80. 灼熱のデート・スポット (3) → この項、続く
[PR]
by yamatoss992 | 2013-08-12 21:00 | ヤマト2199 挿話 | Comments(0)
 「こっちだ。」無愛想な店員がフォムト・バーガー大尉を案内した。

ガミラスでは基本的に歓楽街と言うものは公には存在しない。

当然、飲食店も無く、酒保の延長線上、というか、軍の組織の一端としてのみ、存在していた。

だから、サービスなど皆無であり、給仕する者は食事をする人が自分で連れて来るか、自分で厨房から
料理を運んで来る必要があった。

バーガーは大尉であったから普段なら従兵を連れており、その従兵に給仕させるのが普通だったが、
今日は誰一人従兵は同行しておらず、たった一人での来店だった。

いわゆる「お忍び」での来店である。
e0266858_18125892.jpg

従兵を連れていなかったせいもあって店員は下っ端の士官と勘違いして扱いがぞんざいだったのだろう。

だが、いつもは強気のバーガーも今日は少し勝手が違っていた。

店員に案内された奥の部屋には既に一人の女性とその召使いと思しき女性二人がいた。

その女主人(と言ってもまだ少女だったが・・・。)はバーガーの来店を待たずに食事を始めていた。

「フォムト・バーガー大尉ですね。 お腹が空いたので勝手に初めさせてもらいました。」
その少女は皿から目も上げず、バーガーの方を見る事も無く告げた。

「名乗りも無く、食事も勝手に始めるとは随分と偉い御身分ですな。 イルダ・ディッツ少尉候補生!」
短気な事では誰にも負けないフォムト・バーガー大尉は相手が航宙艦隊司令ディッツ提督の末娘と判って
いてもその尊大な態度には我慢が成らなかった。

「私は強い男が好きです。 今まで私が引き合わされた男達の中で私の態度に怒りを露にしたのは
バーガー大尉、あなたが始めてです。」イルダ・ディッツは初めて上目遣いにバーガーを見た。

その答えにバーガーは自分が試されたのを感じ更に怒りを募らせた。

「お嬢さん、これは俺が馬鹿正直なだけだ。 今までにお前さんと「お見合い」させられた中には俺より
ずっと強い男がいたかもしれないぜ!」こんな事で男の力量を測られてはたまらん、とバーガーは思った。

「それにな、選ぶ権利は俺の方にもある。手前みたいな おじゃうさん はこっちでお断りだ。」バーガーは
そのままきびすを返すと店を出て行こうとした。
e0266858_18152378.jpg

「逃げるのですか! このまま私から逃げるのですか!」イルダはバーガーを呼び止めた。

バーガーは馬鹿々しくなって、いきなりイルダを抱きしめると強引に「接吻」をした。

テーブルがひっくり返り、イルダの食していた料理が辺りに飛び散った。

「逃げやしない、何時でも墜せる、そう言っているだけさ。」バーガーは腕の内にいる少女に告げた。

イルダが連れていた二人の女官はボディ・ガードも兼ねていたのであろう、バーガーに襲い掛かって二人を
引き離した。

そして、その内の一人は小ぶりのナイフをかざしてバーガーに切りかかった。

バーガーは済んでの処でそのナイフを避けたが、左頬から顎にかけて傷を負ってしまった。

「待ちなさい!ドーラ!」凛とした声が部屋に響き、ナイフを握っていた女官は位を正すと後に下がった。

「これはイルダが悪い! 失礼しました、フォムト・バーガー大尉、私はメルダ・ディッツ、妹の非礼を
深くお詫び致します。」メルダはバーガーの頬に自分のハンカチを押し当てて溢れ出る血を押さえた。

「全く、『見合い』の席で殺されそうになるとは思いもよらなかったぜ!」バーガーがぼやいた。

「こっちも前触れも無く『接吻』されるとは思わなかったわ! おあいこよ!」イルダが吼えた。

「お互い『戦士』を名乗る身、この上は『決闘』で決着を着けるしかないわね。」

「何を訳の判らない事を言っている! 『何の』決着をつけるんだ?」バーガーは当惑した。

「お前は私の唇を初めて奪った男だ。 何が何でも私の夫になってもらわねばならない・・・。

しかし、航宙司令の命令だとしても力づくで結婚させられたのではお前の方が面白くなかろう。

だから、勝ったら私を娶るも捨て去るのもお前の好きにするがいい。 

だが、私が勝ったら、一生、私に仕えて貰う。 どうだ、この条件では。 バーガー大尉。」イルダは
ワクワクしながら「決闘」の意を伝えた。

メルダはクラクラする頭を抱えて妹の馬鹿げた挑戦に口を挟もうとした。
e0266858_18262282.jpg

しかし、バーガーもその上を行く馬鹿だった。

「面白い! その話、受けよう。 但し、命の遣り取りは御法度だ、ルールは俺に決めさせてもらう。」

<やれやれ、「見合い」の席が「果し合い」の段取りの場になるとは・・・。>

メルダはどっちもどっち、いい勝負だと思った。


                                   79. 灼熱のデート・スポット (2) → この項、続く
[PR]
by yamatoss992 | 2013-08-11 21:00 | ヤマト2199 挿話 | Comments(2)
 「メ」号作戦では実質上、第一艦隊の主力であった「磯風」型突撃宇宙駆逐艦の設計思想について考えて
みたいと思う。
e0266858_1036211.jpg

「メ」号作戦では強力なガミラスの陽電子ビーム砲の餌食となり、次々と撃沈される悲壮な姿が描写されたが、
唯一、戦果を挙げたのも「磯風」型突撃宇宙駆逐艦「ユキカゼ」であった。

「ユキカゼ」は後の宇宙戦艦「ヤマト」に搭載する目的で開発された試製空間魚雷を搭載していたため、戦果を
挙げられたと「設定資料集」ではっきりと語られたが、「磯風」型突撃宇宙駆逐艦の空間魚雷は非常に全長の
短い「短魚雷」で「ヤマト」用の試作品だったとしてもその弾頭だけが試作品と交換されていたと思われる。

つまり、この宇宙駆逐艦は搭載する兵器の交換が非常に簡単に行え、目的に応じた兵装を選択出来た事を
この事は物語っている。

もし、単に試製魚雷を試しに積んで「メ」号作戦に参加させるなら「村雨」型宇宙巡洋艦の方が相応しい。

それを敢えて「ユキカゼ」に搭載したのは「ユキカゼ」が先遣艦に指定されており、ガミラスと最初に戦闘を
交える可能性が高かった事もあるが、搭載兵器の融通性の高さも理由として挙げられる。

 こうした兵装の戦術目的による交換は20~21世紀初頭の軍用機の運用に近い物を思わせる。

F/A-18E・F 戦闘・攻撃機
e0266858_12144041.gif

F/A-18E (単座、防空任務が主。)
e0266858_1217549.jpg

F/A-18F (復座、攻撃任務が主。)
e0266858_1218582.jpg

e0266858_12193862.jpg


また、公式設定資料集[EARTH]によれば地球艦隊の内でも小型のコルベットに分類される艦であり、
戦艦、巡洋艦とは異なり、内惑星戦争時に活躍した宙雷艇の設計思想を受け継いで開発されたとある。

つまり、戦艦や巡洋艦とは全く違う設計思想で設計された艦なのである。

 そして小型のコルベットという設定だが、小型=短航続力であり、内惑星戦争時の宙雷艇が基本となっている
という事であるが、この内惑星戦争時に使われた宙雷艇は一体、どんな艦だったのであろうか?

少なくとも第一次内惑星戦争の戦場は主に火星ー木星軌道と遠方であり、短航続力の宙雷艇が活躍する
余地は無い。

では第二次内惑星戦争ではどうであろうか?

第二次内惑星戦争では火星陣営は地球に対して遊星爆弾攻撃を行った。

これは日本に地下シェルターを多数、建築させる程激しく脅威的なものだった事が分かる。

地下シェルターによる防衛はあくまで受動的なものに過ぎない。

当然、能動的な防衛、即ち遊星爆弾の迎撃が行われたと考えられる。

内惑星戦争時に使われた宙雷艇とはこの地球の防空を担う迎撃艦だったのでは無いだろうか?

だからその思想を受け継いで建造された「磯風」型突撃宇宙駆逐艦もその主な任務はガミラスの遊星爆弾の
迎撃だったと考えられる。

但し、ガミラスの遊星爆弾による戦略攻撃が行われる前に行われたカ号作戦(第二次火星沖会戦)にも
地球艦隊の一翼を担って参加している様なので迎撃専用に建造されたのでは無いかもしれない。
e0266858_20464560.jpg


後、「磯風」型突撃宇宙駆逐艦に特徴的なのは前部に三門の空間魚雷発射管と127mm対艦砲、そして
艦橋を守る装甲翼を備えている事である。

空間魚雷は対遊星爆弾用と考えられるが、127mm対艦砲は一体、何の為に装備している物であろうか?

敵艦の至近距離から攻撃を加えるために付いている様だが、ガミラス艦にそこまで接近するのは至難の
技だったのではないだろうか?

だから、私はこれも対遊星爆弾用の装備だったと推測する。

 遊星爆弾の迎撃は必ずしもそれを破壊する必要はない、地球に落下する軌道から外しさえすれば良いので
ある。

127mmの砲弾でも当たり所によっては遊星爆弾の軌道を変える事が可能だ。

 但し、「ヤマト2199」の物語の内では語られないが、ガミラスによる遊星爆弾による戦略攻撃が初まった時、
当然、地球側は迎撃作戦を展開したが、ガミラスも初期には遊星爆弾を艦艇で護衛して迎撃を阻止する戦術を
執ったと思われる。

「磯風」型はそうしたガミラス艦の妨害を退けて遊星爆弾を迎撃しなくてはならなかった。

だから、前部を集中的に守る装甲翼を装備しているし、駆逐艦にしては重装備である127mm高圧増幅光線
三連装砲塔を装備しているのもこうした戦術的運用をするためであろう。

そして進行方向に攻撃力と防御力を集中した配置は航空機型であり、突撃型と呼ぶに相応しい設計である。

 だから、「磯風」型突撃宇宙駆逐艦は本来、「金剛」型宇宙戦艦や「村雨」型宇宙巡洋艦と艦隊を組む設計
思想の艦ではなかった。

それが、、「金剛」型宇宙戦艦や「村雨」型宇宙巡洋艦と艦隊を組んで冥王星まで遠征せざるを得なかった
メ号作戦がいかに切羽詰まったものだったか、想像に難くない。


      「宇宙戦艦ヤマト2199」 世界における航空宇宙兵力の位置付けと意味→ この項、とりあえず了。
[PR]
by yamatoss992 | 2013-08-07 22:30 | 考察 | Comments(0)
 ガミラスの艦艇は「濃緑色」の軍艦らしい迷彩色を採用している。

 ガイデロール級航宙戦艦 (二等航宙装甲艦のうち最大の艦)
e0266858_15554196.jpg

 デストリア級航宙重巡洋艦 (二等航宙装甲艦だが、地球では「戦艦」に分類する位、強力。) 
e0266858_1622032.jpg

 ケルカピア級航宙高速巡洋艦 (二等航宙装甲艦。 地球でいう軽巡的な役割を持つ。)
e0266858_1682099.jpg

 クリピテラ級航宙駆逐艦 (二等航宙装甲艦中で最小の駆逐艦。 しかし、実質的な主力艦である。)
e0266858_16125547.jpg



しかし、何故か、地球の艦艇は「赤」や「黄色」、「白」、「灰色」といった宇宙で使うには不似合いな派手な色を
多用している。

 宇宙戦艦「キリシマ」 (メ号作戦時は地球艦隊で唯一残った戦艦だった。「金剛」型宇宙戦艦。)
e0266858_1918049.jpg

 宇宙巡洋艦「ムラサメ」 (メ号作戦にも同型艦が多数が参加したが、活躍の機会も無く、全滅。)
e0266858_19182584.jpg

 突撃宇宙駆逐艦「ユキカゼ」 (メ号作戦では唯一、戦果を上げた艦。他の同型艦は活躍せず。)
e0266858_19185619.jpg


常識的に考えてもこの塗装の差異は異常である。

普通、「濃紺」とか、「漆黒」とか、暗い色が宇宙戦闘艦には相応しい。

それが証拠に宇宙戦艦「ヤマト」の塗装は暗灰色で艦底部も暗赤色である。
e0266858_19192466.jpg

この塗装なら深宇宙を航行していても目立つ事はない。

 では、どうしてそれまでの地球艦艇の色は目立つ色を採用していたのであろうか?

それは地球の宇宙艦艇が活動していた場所が、大きく関係する。

第一次内惑星戦争も第二次内惑星戦争も艦艇が活動したのは 地球 ⇔ 火星 ⇔ 木星 の通商路だった。

そして、火星も木星もその色は赤系の色で占められていた。

当然、その近傍で作戦を行う艦艇の色もそれに合わせた迷彩色として赤黄灰白を組み合わせた塗装と
なったのである。

 戦艦「フレードリッヒ・デア・グロッセ」 (ドイツ連邦艦隊旗艦、下図は対ガミラス戦で木星軌道上の
                             エネルギー・プラントの防衛戦で奮戦する姿。 記事No.13 )
e0266858_1844714.jpg

 そして「戦艦」は単色だが、巡洋艦や駆逐艦が複数の色の塗り訳になっているのは艦隊戦ではなく、独航して
いる時に戦闘しなければならなくなった場合、高機動運動をしなければならないが、その時、塗装が複雑に
塗り別けられていると辺りの背景に紛れ安くなり、迷彩の効果が上がるのである。

 また、迷彩は決して背景に完全に溶け込む必要はない、遠方から見た時、その動きや隻数、大きさの誤認
とかを誘うものであればそれで良い。

多分、メ号作戦以前は地球艦隊は木星より外の軌道で戦う事はなかったと考えられる。
(土星宙域の通商破壊戦を戦った、第一、二特務戦隊は例外。 記事No.8、33 )

 だから、地球艦隊の塗装は昔の第一次、二次の内惑星戦争時のままメ号作戦を戦わざるを得なかった。

また、地球の第一艦隊の本当の任務はイスカンダルからの使者を無事に向かえる為の「陽動」だった。

この事を考慮するとわざと目立つ塗装のまま、作戦に赴いたとのでは? とも考えてられる。

 だとしたら、艦隊の大部分の乗組員は「陽動」だという事を知らされなくても、目的地が冥王星なのに塗装の
変更命令が無い事で「何か、有る・・・。」と、薄々気が付いていたのではないか? それを承知で死地に赴いたのではないか? 

と、悲壮な事を考えてしまったりする。


 次回は今までの地球艦艇とは一見、設計思想に差異がある様に見える「磯風」型突撃宇宙駆逐艦について
分析してみたいと思う。


      77, 「宇宙戦艦ヤマト2199」 世界における航空宇宙兵力の位置付けと意味(19) → この項、続く
[PR]
by yamatoss992 | 2013-08-03 21:00 | 考察 | Comments(0)
 第一次内惑星戦争に使われた宇宙駆逐艦とはどんな艦だったのであろうか?

ここでは日本艦隊の艦隊型駆逐艦「陽炎」型とドイツ艦隊の船団護送駆逐艦「Z」級を紹介する。

 <艦隊型駆逐艦「陽炎」型>
e0266858_2023874.jpg

 第一次内惑星戦争時、日本は当初、傍観を決め込んでいた。

しかし、ドイツが無制限通商破壊戦を宣言すると日本の補給船団もドイツ通商破壊艦の攻撃対象となった。

そこで村雨型戦時急増巡洋艦が計画されたが、日本も宇宙戦力を全く持っていなかった訳ではなく、少し
旧式ではあるが艦隊型の駆逐艦「陽炎」型を装備していた。
e0266858_20231164.jpg

e0266858_20281352.jpg

 この艦の特徴は対艦ミサイルのプラット・ホームに徹して設計されていた事である。

そして増装を着ければ木星ー地球間の往復も問題なく出来た。

この艦は駆逐艦とは言うものの、前方固定武装(5inレーザー砲×6門)がある事や増設した対艦ミサイルの
搭載方法など航空機の設計を色濃く残している。

これが、地球の航空宇宙戦闘艦艇の基本設計思想であり、ガミラス戦闘艦艇が艦艇型の設計だったのと
対象的であった。              (後の「磯風」型突撃宇宙駆逐艦も完全に航空機型の設計。-後記)

 ただし、艦橋以外全くの無装甲だったので消耗も激しく、戦時急増型の巡洋艦「村雨」型が計画された。

対艦ミサイルを主兵装としているのでガミラスの航空宇宙戦略について分析した時に語った様に、実質上の
艦隊宙母として機能する艦であった。

当然、対艦ミサイルとその運用システム(ソフト)を積み替えれば簡単に戦力のアップ・トウ・デートが出来たの
である。

このため、この艦型は第一次内惑星戦争はおろか、第二次内惑星戦争、果ては対ガミラス戦まで使われた。

                                                      ( 記事 No.15 参照 )

**********************************************

< Z級・駆逐艦 > ドイツ艦隊 通商保護戦闘用艦艇
e0266858_20564470.jpg

e0266858_20565791.jpg

どちらかと言うと通商破壊戦より、自国の補給路を防衛する為に建造された。

その為、対艦ミサイルのVLSは「陽炎」型と同数もっているが、軽巡なみのレーザーを砲塔形式で搭載していた。

この配置ならほとんど全方位に全レーザー砲を集中出来るのだ。

これによって襲ってきた敵の対艦ミサイルはおろか、その母艦まで射程に収める事が出来、光速兵器の
迅速性を最大限に生かした戦闘をする事が出来た。

この艦も日本の「陽炎」型と同じく、多数の対艦ミサイルVLSを積んでいたので、ミサイルとその運用ソフトを
アップ・トウ・デートする事で長く使われ続け、対ガミラス戦も旧式艦ながら良く戦った。 ( 記事 No. 5, 7 参照 )

 次回はガミラスの艦艇が「濃緑色」と言った軍艦らしい迷彩色を採用しているのに何故、地球の艦艇が「赤」や
「黄色」、「白」、「灰色」といった宇宙で使うには不似合いな派手な色を多用しているのか、を中心に宇宙で
戦われる情報戦について語ってみたい。

      76, 「宇宙戦艦ヤマト2199」 世界における航空宇宙兵力の位置付けと意味(18) → この項、続く
[PR]
by yamatoss992 | 2013-08-02 21:00 | 考察 | Comments(0)
 <第一次内惑星戦争>

 この戦争については「ヤマト2199」の物語のなかで唯の一度も名前すら出てこない謎の戦争である。

しかし、<第二次内惑星戦争>については僅かながらに語られている。

当然、<第二次・・・>があった以上、<第一次内惑星戦争>が存在したものと考えなければならない。

前記事で「村雨」型巡洋艦は戦時急増型の設計がなされている事を述べた。

その要求は大航続力と隻数を揃える事であった。(量産性の考慮はこの為である。)

この要求が出されるもっとも大きな理由として考えられるのは通商破壊・保護作戦に使用する事である。

 第二次内惑星戦争の要因の一つに地球側が火星側に独立を許すと木星にある資源・エネルギー・プラント
から地球に資源やエネルギー(メタンや水素)を運ぶ補給線をブッタ斬る形で火星に反地球勢力が存在する
形になるのを地球側が嫌った事が大きい。
e0266858_1128118.jpg

そうでなければ、さっさと独立させて自治を認めた方が地球側にとっても余計な経費が掛らず都合が良い。

しかし、堂々と反地球を叫んでいる連中が地球ー木星間の補給線に手を出さないはずは無かったからである。

**********************************************

 第一次内惑星戦争はまだ地球外にそうした反地球勢力の存在は無くても、国家間の争いはまだ続いていた
時代に起こった。

しかし、地球内部で再び核戦争を画策する程、人類は馬鹿ではなかった。

そのかわり、戦争の形態は大きく変わり、物理的な破壊力をぶつけ合う戦争は影を潜め、代わりに情報戦、
サイバー・テロが日常的に行われる様になった。

昔の様に宣戦布告してから戦争を行うという、ある意味のんびりした時代ではなく、1年365日、ありとあらゆる
時が戦時となってちょっと気を緩めると姿の無い敵にインフラを破壊されたり、重要な国家機密を盗んだり、
盗まれたりと気の休まらない戦闘が今でも続いている。 (2013年現在の現実も同じ。)

但し、直接、血が流れないので戦争をしている実感は国民にはなかった。

第一次内惑星戦争はそうした情報戦の果てに一つの国家が昔ながらの通商破壊戦を周辺国家に挑んだ事が
発端である。

2168年、EUの加盟国の一つ、ドイツの政権がネオ・ナチスに奪われ、ドイツはEUを脱退すると同時に周辺国家に対し宣戦を布告した。

慢性的に何十年も続いた不況は再びナチスの悪夢を呼び覚ましたのだ。

2169年、慢性的に続いていた、情報戦では埒が明かない事に気が付いたドイツは戦略を大きく転換した。

木星ー地球間の補給線を襲って敵を干上がらせる伝統的な戦略に切り替えたのである。
e0266858_1271289.jpg

地球上では未だにPGM技術に裏打ちされた核攻撃戦力を互いに維持していたので地上では物理的戦争を行う
のは自殺行為であったが、宇宙でなら核兵器も使い放題、比較的小型の船舶でも核武装すれば立派な通商
破壊艦として機能したのである。

 そうして最初は普通の民間船に核武装させた仮装巡洋艦が活躍したが、英国を初めとする他のEU諸国は
正規の巡洋艦を通商路保護の為に投入して来た。

ドイツも通商破壊作戦を始める前に仮装巡洋艦ではなく、正規の通商破壊艦たる装甲艦「ドイッチェ・ランド」級を
4隻と軽巡洋艦「エムデン」級を8隻、建造してこの任に充てた計画で、2169年には実戦投入した。

しかし、装甲艦「ドイッチェ・ランド」級は「自艦より砲力の強い敵よりは早く、自艦に追いつける敵よりは砲力が
強い!」事が売りだったが、米ソや日本がこの通商保護の為にEUに協力して艦艇を送り込む様になると、特に
米国の「レキシントン」級の巡洋戦艦に対しては砲力、速度共に劣り、旧式化してしまった。(2169年末)

当然、ドイツ側も米国の参戦と「レキシントン」級の投入は予想しており、新型通商破壊艦「シャルンホルスト」級を
計画、建造した。
e0266858_12452848.jpg

4隻計画されたが2隻、「シャルンホルスト」は完成、「グナイゼナウ」は完全に作戦可能なまでに慣熟訓練まで
済んでいた。

しかし、後の2隻「デアフリンガー」と「リュッツオー」は建造途中で終戦となり、完成しなかった。
                                                      ( 2171年初、終戦 )

ドイツが破れたのは別にドイツが通商破壊戦で破れたためではなく、ドイツ本国、首都ベルリンに米ソの空挺
部隊が北と南から同時に送り込まれ、実力で制圧されてしまったからである。

米・ソは対立はしてはいたが、ネオ・ナチスの様な無法者を世界の警察を自任する米とそれに負けじと対抗する
ソ連が許しておく訳はなかったのである。

ネオ・ナチスが建造した通商破壊艦は全て廃艦となった。

これが後の対ガミラス戦で役に立つ事になるのだが、それは別の話とする。(記事No.8)

何故、今まで情報戦やサイバー・テロだった戦争が宇宙戦とは言え、実力行使の物理戦闘になったのか?

それは長引く世界的不況と戦争がサイバー化してしまって今まで栄えてきた軍需産業が干上がってしまった
事に大きな原因がある。

戦争とは全く非生産的な破壊行為であり無用の物であるべきだが、実際はそれを糧として来た人々がいた事を
忘れてはならない。

ミサイルにしても銃弾にしても消耗品であり、何を生むものでもないのだが、実際の戦争では莫大な量のそれら
消耗品が使われる事は軍需産業にとって必要な事だったのだ。

これは勿論、艦艇や航空機などそれらの消耗品を消費する存在も同じく軍需産業を潤すものだった。

日本国防軍の「村雨」型宇宙巡洋艦の量産などもEUとドイツの戦争なのだから、本来、無関係で必要なかった
はずであるが、国内の軍需産業の維持の為、無駄を承知で自国プラントと補給線の確保の名目で少数が建造
された。

(大量に量産されたのは戦争の当事国だった、第二次内惑星戦争時と考えられる。)

もちろん、自国プラントの防衛も必要だったので「金剛」型戦艦も4隻、建造された。

2隻づつ、1個の戦隊を組み、交替でエネルギー・プラントを防衛する計画だったが、「金剛」型戦艦の完成は
1971年までかかり、第一次内惑星戦争には間に合わなかったのである。

 しかし、この戦争がその舞台だった木星ー地球間の宇宙空間は完全に外惑星空間であったのにも係わらず、
「内惑星・・・」と呼ばれるのは紛争当事国が地球上にあった為である。

これは「第二次内惑星戦争」でも同じ事で敵が「火星」であり、「外惑星」であっても、「地球」は「内惑星」だから
「第二次内惑星戦争」と呼ばれるのである。

次回は第一次内惑星戦争に用いられた駆逐艦について考えてみたい。


追伸:今日 「宇宙戦艦ヤマト2199 公式設定資料集 [EARTH] 」 が届いた。

ウーム、私の設定とかみ合っていたり、いなかったり、と随分楽しませて(悩ませて)もらった。

ここまで詳細な設定が出来るのはやはり「ヤマト」だからに他ならない。

製作者達の「ヤマトとその世界」に対する「愛」がこんな形で凝結する時が来ようとは誰が考えたであろうか?


      75, 「宇宙戦艦ヤマト2199」 世界における航空宇宙兵力の位置付けと意味(17) → この項、続く
[PR]
by yamatoss992 | 2013-08-01 21:00 | 考察 | Comments(0)