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宇宙戦艦ヤマト前史

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宇宙戦艦ヤマト登場前の地球防衛軍の苦闘を描きます。

<   2014年 01月 ( 9 )   > この月の画像一覧

 眼下の乾ドックからゆっくりと上昇してくる艦を見つめて 『ガル・ディッツ』 提督は言った。

『美しい、実に美しい船』 だ・・・。 そうは思わんか、メルダよ。」

『確かに美しい、これが」ハイゼラード級一等航宙戦艦、しかも、『魔女』 の艦だったとはとても思えません。」 娘の
メルダは答えた。

おりしも 上昇を続ける『アヲ・スイショウⅡ(ア・ルー)』 は二人の目線の高さを越えようとしていた。
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「しかし、武装をほとんど降ろして後部の副砲と後部魚雷発射管四基と言うのは少し少なすぎて心配です。」メルダは
素直な感想を言った。

「お前もまだまだだな、ユリーシャ様の方が余程、 『戦艦の本質』 を理解しておられる。」ディッツは小さく笑った。

「良いか、戦艦の本質は 『防御力』 だ、『攻撃力』 ではない。」ディッツの発言の意味をメルダは図りかねた。

「はぁ? 『戦艦』 の価値は 『攻撃力』 ではないのですか?」メルダは再度、父に訊ねた。

「 『防御力』 だ。 それに 『皇室ヨット』 に相手を殲滅する能力は必要ない・・・。」ディッツは自分達が犯してきた 『誤ち』 に
思いを馳せた。

**************************************************

 ガミラス女皇の皇室のヨット 『アヲスイショウⅡ(ア・ルー)は惑星オルタリアへ向かっていた。

惑星オルタリアはデスラー政権時代、過酷な重税に怒りを発し、反乱を起こしたが親衛隊の無慈悲な攻撃を受け、焦土と
化した惑星だった。

だが、そんな廃墟の惑星にも僅かではあったが、生き残った住民がいた。

ユリーシャはガミラス帝星の暴挙を謝罪し、共栄圏・再建の援助をする為にまず、この惑星を選んだのだ。

「二回目のゲシュタム・ジャンプの用意が出来ました。」航行士が告げた。

「よし、ゲシュタム・ジャンプ!」ドメル船長の命令が飛んだ。

「ですが、よろしいんですか? このまま跳んで・・・。 ドメル船長・・・。」別の航行士が船長に訊ねた。

艦橋の前面上方にある大型スクリーンは四分割されて 皇室ヨット の前後左右の空間が映し出されていたが、そのどの
画面にもクリピテラ級駆逐艦とデストリア級重巡が跳梁跋扈し、皇室ヨットに砲火を浴びせ続けていたのだ。
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「それに船長は戦闘はされないと宣言されていました、ここは 『艦長』 の出番かと・・・。」

「あら、ちょっと強い風が吹いているだけじゃない。 『戦闘』 なんてする必要は無いわ。」ドメル船長は涼しい顔だった。

皇室のヨット 『アヲスイショウⅡ(ア・ルー)は『ゲシュタム・フィールド発生装置』 を三基も積んでいる、しかも『ヤマト』や
『シャングリ・ラー』と違い、メインのゲシュタム機関(波動エンジン)からエネルギーを取っているのでは無く、三基ある
『ゲシュタム・フィールド発生装置』 それぞれに専用の小型のゲシュタム機関(波動エンジン)が設置されているので
通常出力ならほぼ無限の展開時間を持ち、最大出力でも1時間は防御フィールドを展開出来るのであった。

(『ゲシュタム・フィールド発生装置』 は 『ヤマト』の 『波動防壁』 と同じ物である。)

これは魚雷発射管を大幅に減らした為、その空いた空間を利用してクリピテラ級のゲシュタム機関を三基、設置出来た
のが大きかった。

スクリーンの隅に映っているフィールドの稼働率を示す”ゲージ ”は 1/3も示していなかった。

撃沈・大破するどころか、反撃すらしてこない 『皇室ヨット』 に 馬鹿にされたと勘違いした攻撃部隊の隊長は全艦
体当たり攻撃を命じた。

四方ハ方から突撃してくるクリピテラ級駆逐艦とデストリア級重巡、しかし、彼らが衝突する寸前に 『皇室ヨット』 は
ゲシュタム・ジャンプに入り、忽然と姿を消した。

突撃を敢行したクリピテラ級駆逐艦とデストリア級重巡は何も無くなった空間を虚しく通過するだけだった。

お互い接触した艦もあったが、幸いにも小破しただけで航行には支障が無かった。

「おのれ、『ユリーシャ・ガミロニア』 次は唯では済まないぞ! 」攻撃隊長は歯軋りをしつつ、撤退命令を出した。

その様子を監視用 『宇宙塵』 が見ていた、『ドメル船長』 がジャンプ前に落としていった物だった。

その八個の監視用 『宇宙塵』 は観測したデータを超光速通信でガミラス本星に送った。

「やはり、来ましたね。」ガデル・タランが嫌な予想が当たったので眉を曇らせた。

「さてはて、何処の誰が裏で糸を引いているのか・・・困ったものだ。」ガル・ディッツも溜息をついた。

「ユリーシャ様の方針に反対しているのは旧貴族の連中です。  マルド・ヴォッテル官房長、ダール・ヒステンバーガー
大本営作戦部長、そして、私の上司、ネルン・キーリング大本営参謀総長あたりが怪しいかと思います。」タランは情けない思いで一杯だった。

「タラン君、そう早く決めつけてはいかんよ。 儂や君だって元貴族だ。 軍縮で困るのは何も旧貴族だけではない、
名も無き一般の兵士達だって不満を持っている者は数多くいるはずだ。

それに、さっきの襲撃艦隊、撤退していったのは惑星ザルツの方面だ。 これをどう考える・・・?」 ディッツは首を横に
向けてタランの顔を真っ直ぐ見た。

「惑星・・・ザルツ・・・ですか?」タランは問題の複雑さに頭を痛めた。

**************************************************

「我等の指導者は『デスラー総統』、唯一人だ! イスカンダル人の 『女皇』 なんて断じて認めん!」惑星ザルツの
統括官・カノン・バーレルは自分の机を叩いた。

彼はザルツ人だったが、名誉臣民として一等ガミラス人扱いを受ける身分であり、惑星ザルツの最高統治者でもあった。

もし、ガミラス・勢力圏の拡大が止まると言う事は戦争が無くなると言う事であり、住民の多くをガミラス軍に供出している
ザルツは糧を奪われるに等しい、それ程、ザルツはガミラス本星に依存しているのだ。

「『皇室ヨット、アヲスイショウ』 なんて可愛い名前を付けているから、どんな小舟かと思ったら駆逐艦の魚雷も重巡の
陽電子ビームも跳ね返す 『化物』 だったのか!」バーレルは今度は自分の椅子も蹴とばした。

「はぁ、しかも全く反撃もしなかった様で、こちらの送った艦隊も駆逐艦と重巡が接触事故を起こして小破した位で殆ど
損害は在りませんでした。」次官が報告を付け加えた。

「何だと! 次は 『ガイデロール級戦艦の一個・戦隊』を送ってやる! 何としても惑星オルタリアに『皇室ヨット』 を
辿り着かせてはならん!」

「統括官閣下、残念ですが、ザルツには故シュルツ大佐の 『シュバリエル』 しか、 『ガイデロール級戦艦』はありません
でした。
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その艦もドメル閣下の御配慮でシュルツ大佐のゾル星系」遠征の餞別として特別に贈られたものです。 

いくら二等航宙戦艦と言っても、我々、二等臣民には簡単に与えられる艦ではありません。」次官はバーレル統括官の
怒りを鎮め様とした。

「フフッ、大丈夫だ、当てはある、お前は乗組員の手当てだけしておけ、 『シュバリエル』 の時の人選記録や配置表は
残っているだろう。」バーレルは不敵に微笑んだ。

「ザー・ベルク!」<統括官も・・・。無茶を言い寄る。> 次官はそう思いながらもガミラス式の敬礼をして統括官室を後に
した。

惑星ザルツの歴史は長い、そして、惑星ザルツはデスラー総統が就任した時にはもうガミラスの属国になっていた。

しかも、単なる属国ではなく、資源も丸々吸い取られる酷い扱いを受けていた、しかし、デスラー総統が就任すると彼の 『イスカンダル』 主義に基づき、待遇は大幅に改善された。

しかも、『武勇に優れた星』 との評価をしてくれ、『精兵』 を次々と採用、彼の 『イスカンダル』 主義に基づくガミラス
帝星圏 膨張政策に適応させた。

更に、戦線で 『勇猛に戦った者』や 『戦死した者の家族』は名誉臣民として一等ガミラス人扱いしてくれると言った厚遇
ぶりだった。

こうしたデスラーの占領政策は惑星ザルツの最高指導者もザルツ人である事を許したので表面上は自治惑星になった
様に思えた。

このため、惑星ザルツにおいてはデスラー総統の人気は絶大なものがあった。

だから、デスラー総統の死が確認されてもいない、地位を譲る意思表示をしたわけでも無いのに、幾らイスカンダル人が
ガミラス人にとって高貴な存在だったとはいえ、デスラー総統の意思に関係なく、ユリーシャ・イスカンダルがガミラスに
皇室を勝手に開くなどもっての他だった。

「ガーレ・ガミロン、『女皇』 の件でお願いがあってご連絡しました。」 次官が退室するとバーレルはどこかに連絡を
始めた。

「あの 『新・魔女』 の話はこちらでも聞いた。 その件だね?」 通信 モニターの向こうの人物は後ろ向きで顔は
見えなかった。




                                   119.かの名はアヲスイショウⅡ(ア・ルー)(6)→ この項、続く
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by YAMATOSS992 | 2014-01-29 21:00 | ヤマト2199 挿話 | Comments(2)
 「本当に私で良いのですか? 高貴なる女皇(ルード・ガミロニア)・ユリーシャ様、私は船の運航なんて全くの素人
です。」

『皇室ヨット』 に生まれ変わった 『シャングリ・ラー』 の船橋で新任船長候補がユリーシャに訊ねた。

「しょうがないでしょ、ガミラスには 『艦長』 はいても 『船長』 はいないんだから・・・。

この船は、いくら 『皇室ヨット』  とは言っても最小限度の武装はしている・・・、『艦長』 経験者じゃ、どうしても 『戦闘』 に
向かってしまうわ。

それに・・・。」ユリーシャは言い淀んだ。

「それに?」船長候補は問い返した。

「長い航行の間、ずっと顔を就き合わせるのよ。 私、『ムサイ小父さん』 は嫌よ、かと言って 『若い男』 では何かと噂に
なっても困るわ。

しかし、貴女は 『女』、しかも、 『外交官』 の娘、だから遠隔地へ出かけて交渉する術も私より長けていると踏んだの。」
ユリーシャは本音を言った。

「高貴なる女皇(ルード・ガミロニア)・ユリーシャ様、過分なるお言葉、有難う御座います。 

しかし、私は本当に戦闘は出来ませんよ?

『何か』 や 『誰か』 に襲われた時はどうするおつもりです?」新任船長候補のドメルは訝しげな顔をした。

「大丈夫! 『ディッツ提督』 が歴戦の強者を護衛に付けてくれるわ。 戦闘になったら 『その男』 が指揮を執る事に
なっているから心配要らないわ。」ユリーシャは太鼓判を押した。

「私はその 『歴戦の強者』 の指揮に従って 『船』 を動かせば良い・・・と言う事ですか? でも私は 『戦闘』 その物が
出来ないのです。」ドメル船長候補は丁重に断った。

「エリーサ・・・、辛い事を思い出させてしまった様ね。 御免なさい。 でも今回の 『行幸』は デスラー達が荒らした宙域に
『平和と秩序』 が 『確保』 された事を示す為にどうしても必要な事なの。 貴女には決して戦闘はさせない! 
もし、戦闘が始まってしまったら貴女は船長室にこもってしまって構わない、その時はこの船の指揮も『ディッツ提督』 が選んだ 『歴戦の強者』 が執る事になっている、艦隊Netはこういう時の為にあるのよ。 
貴女は航行と外交に徹してくれれば良いの、いえ、そうして欲しいわ!」ユリーシャは懇願した。

エリーサ・ドメルはしばらく瞑目していたが、もう一度目を開くと決意を込めて言った。

「高貴なる女皇(ルード・ガミロニア)・ユリーシャ様、判りました。 私には過ぎた大任ですがお受けさせて頂きます。
但し、本当に戦闘は出来ません! それだけは御勘弁して下さい。」エリーサ・ドメルは船長に就任する事を承知した。
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ユリーシャは無言で手を差し伸べた、エリーサはその唐突な行為にどうしたら良いか解らずとまどったがユリーシャは
左手でエリーサの右手首をつかみ、自分の差し伸べた右手を握らせた。

「なんて恐れ多い・・・。」エリーサはそれ以上言葉が出なかった。

「これは 『握手』 と言うの、『テロン』 の習慣よ。

『全て合意した証』 に行うの、そしてこれはお互いが 『友人』 になった 『証』 でもある・・・。』ユリーシャは握った手の力を
少しだけ強めた。

女皇の手に触れるなどあまりにも恐れ多いと震えを感じたエリーサだったが、こうしたユリーシャの分け隔てない行動がガミラスの将来を変えて行く物だと考え直し、自分も手を握り返した。

**************************************************

「キャプテーン、やっぱり宇宙海賊(宙賊)に転職しましょうよ。

平和になっちまったガミラスに俺たちの居場所はありませんぜ。」根っからの戦争屋、ゴル・ハイニ大尉は上司に詰め
寄った。

「俺も出来たらそうしたいところなんだが、エネルギーや食糧は他の船から奪えるとして艦の補修や修理、特にこの艦は
次元潜航艦だ、頻繁なオーバー・ホールは欠かせない、でないと安心して 『潜る』 事なんて出来はしないぞ。」ハイニの上司であるフラーケン中佐は血気にはやる部下を抑えるのに懸命だった。

<それに本艦の主兵装、亜空間・魚雷は戦艦級の大型魚雷だ、戦艦を襲って魚雷を奪うなど正気の沙汰ではない。>
これを言うとかえってハイニは面白がって戦艦に対する略奪行為をしたがると困るのでフラーケンは黙っていた。

だが、フラーケン自身も気が付いていなかったが、亜空間・魚雷は次元境界面を越える為の装置が積まれていた。

亜空間・魚雷、こればかりはガミラス本星か、そこから送られる補給艦に頼るしかなかった。

次元潜航艦 UX-01 艦長、ヴォルフ・フラーケン中佐は 『猟犬』と呼ばれ、恐れられていたが、『ガル・ディッツ提督』 は
しっかりと 『猟犬』 のその首に首輪と鎖は付けていた。
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「それから、今度、イスカンダルから来たユリーシャって女皇、『ヤマト』 から拉致した美女でしょ、『惑星・レプタポーダ』
での啖呵、格好良かったですね。」ハイニ達はあの時のユリーシャが森・雪であった事を知らなかった。

「ああ、男でもなかなか、ああ言う有無を言わせない威圧感のある行動はとれない・・・、俺達なんか危うく 『ボーゼン』
所長を殴って軍事法廷送りになるところだった。」フラーケンは苦笑いをした。

「彼女の新しい方針は極力、政治体制は変えないが、軍備は縮小するって事らしいですけど、デスラー総統が
いなくなって 『総統府』 はなくなったんでしょ。
『総統府』 付きの俺たち 『次元潜航艦』 も失業って訳ですよね。」ハイニにはそこが一番不満なところらしかった。

「いや、『ガル・ディッツ提督』 によれば、俺達は今度は 『皇室』 付きになるそうだ。」フラーケンもあの小娘の下働きかと
思うと何か、面白くなかった。

「平和になるのがそんなにご不満?」開いていたUX-01のハッチから女の声がした。

「誰だ! ここは機密区画、簡単には入って来れないはずだぞ!」フラーケンは拳を握りしめ、緊張して声をかけた。

「『ディッツ提督』から通信が入っています。」メッツェ一等通信兵曹がフラーケンに言った。

「繋いでくれ!」フラーケンはハッチからの謎の声に注意を向けながらメッツェに答えた。

「あーっ、何だ、女皇・ユリーシャ様が、そっちに行っておられるから案内して差し上げて欲しい、
それと少し、話があるそうだ。」 『ガル・ディッツ提督』 が極まり悪そうに話した。

ユリーシャの訪問が事後承諾であるのは明らかだった。

「ずいぶんと急なお話ですな、『提督』、女皇が単身、こんな秘密ドックに来る事など考えられない!
何か裏があるのですか?」フラーケンは詰め寄った。

「何も裏なんてないわよ。 早く中に案内して頂戴。」ハッチの外からまた、声がした。

フラーケンはハイニに <迎えに行け!> と目で合図した。

ハイニはヤレヤレといったポーズをするとハッチに繋がるタラップを昇って行った。

彼がハッチから頭を出すと機嫌の悪そうな顔をしたユリーシャが一人で立っていた。

「全く、ドックを警備しているガミロイド達は直ぐに私を認識して扉を開けてくれたのに、あなた達はなんて疑い深いの!」
ユリーシャはいつもマイ・ペースだった。

ハイニはハッチから出るとそこにいるのが自分達が ヤマト』 から拉致した 『ユリーシャ』 姫に間違い無い事を確認すると
『礼』 をした。

「高貴なる女皇(ルード・ガミロニア)・ユリーシャ様、歓迎致します。」 ハイニ自身は決まったと思っていたが、
彼は軍隊式の右手を曲げて掲げる敬礼をしていた。

**************************************************

「しかし、本当に一人で来られたのですか? 護衛も付けずに?」フラーケンはまだユリーシャが大胆にも単身で行動している事が信じられなかった。

「ええ、皇居から一人で車を運転してここまで来たわ。 大丈夫、私には 『守護天使』 が付いているから、心配無用よ。」
ユリーシャは得意のオトボケで誤魔化した。

「それより、この艦の中枢コンピュータはどれ?  私が直接、この艦の艦内 Netワークにアクセスして必要な情報を
とるわ。」ユリーシャは当たり前の様に言ったが、この行為は相手を心の中まで裸にする非常に失礼な行為だった。

「高貴なる女皇(ルード・ガミロニア)・ユリーシャ様、残念ですが、本艦は非常に古い艦です。 中枢コンピュータも艦内 Netワークも存在しません。

ですから、各機器の配置・機能と性能は御自分でお確かめ戴くほかありません。」フラーケンはやんわりとユリーシャの
要求を断った。

本当は中枢コンピュータは原始的な物であったが在るにはあった、しかし、艦内 Netワークは本当に存在して居なかった
から、まんざら嘘ではなかった。

「そう、分かったわ、雑っとでいいから艦内を案内して頂戴。」ユリーシャはハイニに先導され、フラーケンに後押しされる
形で艦内を巡って歩いた。

「しっかし、狭い艦ね。 しかも汗臭いわ。 『ヤマト』艦内の の清潔さが夢の様だわ。」ユリーシャは遠慮が無かった。

「古い艦ですからね。 昨日、今日出来た『ヤマト』 の様には行きません。 これが次元潜航艦の環境です。 我々は我慢して戦わねばなりません。 まっ、それももう終わりのようですが・・・。」フラーケンは彼女の言葉に反発した。

「その点は大丈夫よ。 残念ながらあなた達の力はまだまだ必要なの。」ユリーシャは肩を落とした。

「 『軍縮』 を推し進める貴女に何故 『戦闘』 しか能の無い我々が必要なんですか?」フラーケンは訳が分からなかった。

「それはね・・・。」ユリーシャは次元潜航艦の乗組員全てを集めて今回の訪問理由を語った。

しかし、それは皆を唖然とさせるとんでもない事だった。

「 『皇室ヨット』の 『艦長』を 『私にやれ!』 と言うのですか?」フラーケンは次元潜航艦を降りるつもりなど、更々
無かった。
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「正確に言うと 『皇室・巡航・戦艦』 だけど、細かい事はどうでもいいわ。 そして、UX-01を降りる必要は無い、いや、
むしろ、UX-01の艦長も続けて欲しい。 俗に言う兼任って奴よ。」ユリーシャはまた、無茶苦茶を言った。

「どうやって、二隻の艦を同時に指揮するんです! 私にはそんな能力はありません、あればとっくに 『提督』 になっています!」フラーケンはそう言ったが、ある事を思い出した。

彼は若き時代、親友だった 『ヴァルス・ラング』 と 『次元潜航艦・戦隊』 を組み、宇宙狭しと暴れ回った経験があった
のだ、そして、その時の戦隊長はフラーケンだった。

<ラングが生きていてくれれば、この話、快諾出来るのに・・・。>フラーケンはラングが戦死した事を心から悔しいと
思った。

「艦隊・Netを使うのよ。 そうすれば、フラーケン、貴方はUX-01にいるまま、『皇室・巡航・戦艦』に色々な命令が出せるはずよね。 メッツェ一等通信兵曹。」いきなり話を振られたメッツェは慌てて答えた。

「艦隊・Netは平時には有効ですが、戦時には敵のECM(電波妨害としておく。)に依って使えなくなる恐れが強いです。 また、こちらのNetに敵の侵入を許す恐れがあり危険です。」

その話を聞いたユリーシャは<こいつら、全く、みんな、馬鹿正直なんだから!>と思ったが、ここで切れては話が進まないと考え、ヒントを出す事にした。

「次元ソナーを扱っているのは誰?」乗組員の皆の顔を見回しながら言った。
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「私ですが、・・・。 あっ!」メッツェ一等通信兵曹はある事に気が付いたのだ。

「次元振動波を使った通信システムを構築し、それで二隻の間に艦隊・Netを張れば、妨害や傍受される心配も外から侵入される心配もありません。」とユリーシャに得意げに報告した。

「『人』 のやる事だから、『完璧』は在り得ない・・・、そうやって貴方達も敵の裏を欠いて戦果を上げてきたんでしょ。 
油断をしては駄目よ。」ユリーシャは釘を刺した。

「この艦は次元潜航艦で次元断層内に、『皇室・巡航・戦艦』は通常空間にいる・・・、そして二隻は艦隊Netで一つに
繋がっている、極端な場合、完全に同じ座標にいてもお互い違う空間にいるのだから何も問題は無い、外部からNetに
侵入される恐れも大幅に減る・・・、いけますよ、この案。」フラーケンは再び 『戦隊』を指揮出来る喜びに打ち震えた。

「高貴なる女皇(ルード・ガミロニア)・ユリーシャ様、 『皇室・巡航・戦艦』の 『艦長』お引き受け致します。」フラーケンは
謹んで 『艦長』 の任を引き受けた。

「有難う、フラーケン、でも、 『ちょっとだけ、悪い事をしたなぁ』 って思うことがあるの。」ユリーシャは申し訳けなさそうに
言った。

何の事だかわからず、怪訝な顔をしたフラーケン達にユリーシャは再びとんでもない事を言った。

「私の船、実は顔が二つあるの、一つは外交用の 『皇室ヨット』、もう一つは何がしかの理由で戦う必要が出来た時の
『皇室・巡航・戦艦』、この二つの顔を使い分けて今回の 『行幸』は行うつもりなの。

『皇室ヨット』の時の 『船長』 はエリーサ・ドメル、戦死したドメル将軍の未亡人よ。 『皇室・巡航・戦艦』の時はフラーケン、
貴方に 『艦長』をやってもらうわ。」

「はぁ! 都合の悪い時だけ助けろって言うんですか? そんな勝手な事、皆が承知しません。」フラーケンは乗組員に
同意を求めた。

しかし部下達はニヤニヤ笑いをするだけだった。

「ユリーシャ様の『皇室ヨット』はきっと 『女』が 満載ですぜ、大将! 自分だけそんな天国に行こうとしても 『神様』 が
許してくれないって事ですよ。」ハイニがフラーケンの肩を叩いた。

<確かに艦隊Netで一体化していれば態々、 『皇室・巡航・戦艦』 に乗り移る必要もない、住み慣れたUX-01にいた方が
気楽かもしれない。>どのみち、 『皇室ヨット』 の護衛は 『提督』 から命じられた事だった。

<完敗だ!ユリーシャ様はあの 『魔女』 より食えないお方だ。>フラーケンは負け惜しみの様にユリーシャに言った。

「ユリーシャ様の『皇室ヨット』?『皇室・巡航・戦艦』?の艦船名は何と呼べばいいんですか?」

「私のフネの名前は 『アヲスイショウⅡ(ア・ルー)』 。」ユリーシャは誇らしげに言った。
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「初代の 『アヲスイショウ』 は地球着陸時に失ったわ、だからこのフネはⅡ世、(ア・ルー )よ。」

「これが 『アヲスイショウⅡ(ア・ルー)』 の性能・兵装の諸元よ。後で詳しく見てこの内容で出来る戦術と戦略を良く研究
しておいてね。」ユリーシャは小さなデータ・スティックを取り出してフラーケンに渡した。

「これは超最高機密ではないですか! 私なぞ、単なる護衛にこんなに簡単に明かして良いのですか?」フラーケンは
困惑した。

「違うわ、あなたは 『皇室・巡航・戦艦』『アヲスイショウⅡ(ア・ルー)』の艦長、『戦闘』 の最高責任者よ。単なる護衛では
ないわ。 この艦の全てを知っておく義務がある!」ユリーシャの言葉にはフラーケンとその部下に対する絶大な信頼が
込められていた。



                                   118.かの名はアヲスイショウⅡ(ア・ルー)(5)→ この項、続く
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by YAMATOSS992 | 2014-01-27 21:00 | ヤマト2199 挿話 | Comments(2)
 ユリーシャは艦橋に上がるとまず、艦長用のコンソールに 『パスワード』 を入力し、艦内 Net に侵入した。

しかし、ヘルダー中佐が言った通り、艦内中枢のコンピューター・システムの一部にどうしても侵入出来ない部分が
あった。

自分の船に不透明な部分を残したまま、『行幸』 に出かける訳には行かない・・・。 ユリーシャは最後の手段を取る事に
した。

この船には 『シャングリ・ラー』 だった時代には無かった 『玉座の間』 があった。

艦橋内部は元々のガミラス風の無骨なインテリアだったが、『玉座の間』 の内部だけは 『イスカンダル風』の優雅な
ものに変わっていた。

そしてその中央にはこの船が航行中、彼女が座る 『玉座』 があった。

しかし、普通の椅子とは異なり、リクライニング機能も付いており、仮眠も取れる様になっていた。

いや、実は、これはその様に見せ掛ける為の装置であり、本当は彼女が 『ヤマト』 に搭乗していた時、
最初は 『自動航法室』 の中枢として 『ヤマト』 の艦内 Netワークに接続されていた時と同じ様にユリーシャ自身の
精神が直にこの船の艦内 Netワークに侵入出来る様にする為のものだった。
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この 『玉座』 をフルに活用すればユリーシャ一人でもこの船を操れる・・・。

ユリーシャは 『玉座』に座ると直ぐに頭の後ろに艦内 Netワーク接続用の端子を取り付け、ネットワークの奥深くに
文字通り『潜って』 行った。


艦内 Netワークの内で各々の装置がユリーシャにはどの様に見えているのか、我々には分からない。

しかし、アクセス出来ない部分は ”黒い箱” の様に見えたと表現するのが一番、相応しいと考えられる。

ただ、ユリーシャがその”黒い箱”の外見を隅々まで点検すると一か所だけ小さな◎があり、そこだけ色が少し明るく
なっていた。

<ここが 『アクセス・ポイント』 だわ!>ユリーシャはその箱に手(?)を伸ばしたが直ぐにその手を止めた。

<これは地球人が言っていた 『パンドラ』 の箱かもしれない・・・。 ここで開くのは危険だわ・・・。>

迂闊に開くと 『災い』 が撒き散らされてしまう・・・、この場合は 『コンピュータ・ウイルス』 である可能性が高かった。

ユリーシャはヘルダー中佐を呼び出した。

中佐は 『玉座の間』に入ろうとしたが、部屋の前の扉の所で二人の女性衛士に止められてしまった。
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「私はユリーシャ様のお召で参上したのだ、そこを開けて通して欲しい。」ヘルダー中佐は訪問の理由を述べたが
女性衛士達は頑固だった。

「ユリーシャ様は誰も入れるな! との仰せです。」女性衛士達はデスラー親衛隊の生残りだったにも係らず、自分達を
救ってくれたユリーシャに全てを捧げる覚悟なのだ。

「何を下らない押し問答をしてるの!」ヘルダー中佐の後ろからユリーシャの叱責が飛んだ。

「高貴なる女皇(ルード・ガミロニア)!」 女性衛士は二人とも両手を胸の前で交差させ、片膝をついて礼をした。

ヘルダー中佐が振りかえると艦橋の前面上方に設置されているメイン・スクリーンに非常に乱れた雑音だらけの
ユリーシャの映像が映っていた。
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「高貴なる女皇(ルード・ガミロニア)! ヘルダー中佐、お召により、参上しました。」ヘルダー中佐も両手を胸の前で
交差させ、片膝をついて礼をした。

「そんな儀礼はいいから、直ぐやって貰いたい事がある、これから示す中央コンピューターの記憶部分を 艦内 Net から
切り離して隔離して欲しいの。

それも電子的にだけで無く、完全に物理的に切り離して欲しい。 わかった?」ユリーシャは一方的に命令した。

ヘルダーは艦橋のメイン・スクリーンに今度は綺麗に映し出された模式図を凝視した。

ヘルダー中佐はコンピュータについては元々、素人だったが、 『シャングリ・ラー』 の改装に当たっての作業指示の
必要上、彼も玄人裸足の専門家になっていた。

ユリーシャが示す模式図は次第に深い階層に降りて行ったが、ヘルダー中佐はキチンと理解し、ユリーシャの指示した
場所を特定すると部下を連れて中央コンピュータ室に向かって行った。

**************************************************

ユリーシャは艦内 Netワークの内から ”パンドラの箱 ” が完全に取り去られたのを確認すると 『玉座』 を降りて
ヘルダー達が待つ情報分析室に向かった。

その手には万一に備え、自分の頭に繋ぐ艦内Netワーク接続』用の端子を手に持っていた。

彼女が到着すると机の上に置かれた問題の ”パンドラの箱 ” の周辺には幾つかの情報処理端末が置かれており、
各々の機器はケーブルで繋がれていたが、”パンドラの箱 ” 本体にはまだ何も接続されていなかった。

「やるわね、ヘルダー中佐! 疑似 Netワークを構築してくれたのね。」ユリーシャはヘルダー中佐が自分のやろうと
している事を的確に予想してくれたのが嬉しかった。

「はい、単純に端末に接続しただけでは Netワークを検知せず、真に ”箱 ” を開く事は出来ないでしょう。

ですが、最小限度の Netワーク を接続してやればそれを艦内 Netワーク と勘違いして ”箱 ”は開くと思いました。」
ヘルダー中佐は実に有能だった。

「『コンピュータ・ウイルス』 を検知する機器もその 疑似 Netワーク の中に接続してあるわね? ヘルダー。」ユリーシャは
にこやかに聞いた。

「もちろん、最新型ハード・ウイルス検知装置を組み込んであります。」ヘルダーは颯爽と答えた。

<この男は使える!>有能な部下は何にもまして重要な 『宝』 だった。

これで自分が、 ”パンドラの箱 ” に 直接、アクセスしなくて良くなったと、ユリーシャは胸を撫で下ろした。

「それでは ユリーシャ 様、 ”箱 ”と 疑似 Netワーク を接続してよろしいですか?」ヘルダーはユリーシャに許可を
求めた。

その問いにユリーシャは無言で頷いた。
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”箱 ”と 疑似 Netワーク は接続され、電源を入れると ”モニター ” にパスワードを要求する画面が出て来た。

「 『パス・ワード』 は私が入れるわ。」ユリーシャはこの入力だけは ”ガミロン ” にやらせるのは気の毒だと考えた。

それはこの 『パス・ワード』 が例の 『呪われよ! スターシャ・イスカンダル』 だと考えられたからだ。

実際、ユリーシャがこの 『パス・ワード』 を入力してみると Netワーク が接続され、案の定、『コンピューター・ウイルス検知装置』に次々と 『ウイルス』 が顕われた。

その種類は多様で ”データ消去型 ”、”データ増殖型 ”などと言った、矛盾するもの、果ては何処にデータを送るのか? 『トロイの木馬』 型 など考え付く限りの 『ウイルス』 が閉じ込められていた。

「危なかったですね。 船に取り付けたまま、この ”箱 ” にアクセスしていたらとんでもない事になっていました。」
ヘルダー中佐が顔を引きつらせた。

ユリーシャは有象無象の 『ウイルス』 の群れの中に一つの 『フォルダ』 がある事に気付いた。

「あれは何かしら? ヘルダーはどう思う?」ユリーシャは画面に映っている 『フォルダ』 を指さした。

「この ”箱 ”は『 魔女 』が残した物です。 その『フォルダ』 も 碌なもんじゃ無いに決まっています。 他のウイルス共々、消去してしまいましょう。」ヘルダーは削除を求めた。

「あら、ヘルダー、あなた、もしかして、この外した部品をクリーニングして元に戻す気だったんじゃないでしょうね。」
ユリーシャは横目でヘルダー中佐を睨んだ。

「いえ、他の 『ハイゼラード級』 から同じ部品を取り寄せて交換するつもりでした、『 魔女 』 の ”箱 ”が入っていた部品など危なくてもう二度と使えません、廃棄すべきです。」

ヘルダー中佐はしゃちほこばって応えた。

「戻さないんだったら、開いてみましょうよ。 とんでもない物が出てきても閉じられた Net だし害は無いわ。」ユリーシャは
好奇心が抑えられないようだった。

<しょうがない女皇、いや、姫様だな・・・。>ヘルダー中佐は苦笑いするとその『フォルダ』 を開く操作をした。

さて、何が起きるか、ユリーシャだけでは無く、ヘルダー中佐とその部下達も息を呑んだ。

しかし、現れて来たのは極普通の文章、たぶん、『デスラー』総統 の『演説原稿』 だったのだろう、幾つものバージョンが
あり、ミーゼラが如何にデスラーに尽くそうとしていたかが窺われた。
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「やっぱり、『 魔 女 』も 一人の 『女」 だった様ね。」ユリーシャはいつの間にか涙を流していた。

「この ”ユニット ” を彼女の遺体として埋葬して頂戴。 但し、墓碑に 『魔女』 の言葉は使わないでね。 お願いよ。」
ユリーシャは、いつの間にか、ここに辿り着いたヒス首相にポツリと言った。

「分かりました。葬儀は密葬、墓は共同墓地でよろしいですか?」ヒスが了承した。

「ええ、それで構わないわ・・・。」彼女も自身に確認する様に言った。

ヘルダー中佐とその部下はユリーシャの心に深く感じ入る物があったらしく、無言で素早く敬礼した。

**************************************************

数日後、ガミラスの共同墓地に真新しい ”墓” が一つ建っていた。

その墓碑銘は 『ミーゼラ・セレステラ』 元デスラー政権、宣伝情報相 ”愛に生き愛に死ぬ” 』 と 刻まれていた。



                                    117.かの名はアヲスイショウⅡ(ア・ルー)(4)→ この項、続く
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by YAMATOSS992 | 2014-01-25 21:00 | ヤマト2199 挿話 | Comments(0)
 ガデル・タランは執務室で忙しく仕事をしていたが、そこに 『シャングリ・ラー』 改装の直接指揮を取っているヘルダー
中佐から連絡が入った。

謎の装備が再び発見されたとの事で撤去すべきかどうか、判断に迷っている旨の連絡だった。

「分かった、映像を送れ。」 タランはヘルダー中佐に指示を出した。

間もなくヘルダーから映像が送られてきた。

「我々はユリーシャ様の指示、通り主砲の撤去を行っていました。」 ヘルダーは解体の進む第一、第二の陽電子ビーム・カノン砲塔群を映し出した。

「しかし、艦底の第 三 陽電子ビーム砲塔が外見は陽電子ビーム砲塔ですが、中身は正体不明の機構が詰まって
いました。」 映像は陽電子ビーム砲塔内部に切り替わった。

タランもその機械に見覚えは無かった,しかも機械その物は大分、小ぶりで砲塔の内壁との間には大きな隙間が
あったが、これは砲塔と見せかけるカモフラージュの為だと推測された。

<あの 『魔女』 め一体、何を考えていたのか・・・。>気は進まないが、これはユリーシャ皇女に相談するしかない事と
判断したタランだった。

**************************************************
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「何? 謎の装備が見つかったの? 面白そう!」タランの報告を聞くとユリーシャは政界再編成の打合せを閣僚達としていたのだが、それを放り出して現場に駆け付けて来た。

艦内に入り、艦底の第 三 陽電子ビーム砲塔の所に来るとその機械を見るなり、彼女は言った。

「なぁんだ、『ゲシュタム・フィールド』 発生装置じゃないの!こんなもの珍しくないでしょうに!」 ユリーシャは不機嫌に
なったが、思い直してタランに聞いた。

「あなた達、もしかして、この機械を見るのは初めてなの?」

「はい、この様な装置、今まで見た事も聞いた事もありません。」ヘルダー中佐が率直に応えた。

しかし、タランは 『ゲシュタム・フィールド』 発生装置・・・。」と呟くと、何かに気づいてはっとした。

「だいぶ以前ですが、兄が、そう、この 『シャングリ・ラー』 が建造されている時、 『セレステラ』 情報相から
『ゲシュタム・フィールド』 発生装置の製作を頼まれたと言っていました。

何でも 『波動エネルギー』 を用いたエネルギー障壁だそうですが、 『持続時間に制限があるので実用的ではない。』 と申しておりました。

だから私も実物は見た事はありませんでしたのでこれがそれだとは見当もつきませんでした。」とタランは言い訳した。

「しかし、ユリーシャ様は何で 『ゲシュタム・フィールド』 発生装置の事をご存知だったのですか?」逆にタランはガミラスで
さえ一般的でない物を何故、ユリーシャが知っていたのか、不思議だった。

「えっ、・・・ それは 『ひ・み・つ』 女の子に聞く事では無くってよ。」 ユリーシャは軽くいなした。

本当は 『ヤマト』 の艦内 Netワークに潜って艦内を隅々まで探索していた時、『波動エネルギー』を 使った障壁、
『波動防壁』 の存在に気が付いていたからだった。

<本当の事を話したら私、 『 覗 魔 』 にされちゃうじゃない! ダメダメ、ここはとぼけて置こうっと!>まだまだ少女的な
ところを残していたユリーシャだった。

「で、どうします? やはり、撤去しますか?」ヘルダー中佐は実直な軍人だったが、ユリーシャに対する態度が
タランには不遜に思えた。

「ヘルダー中佐! ユリーシャ様に対してその口の利き方は何だ! 無礼 だとは思わぬのか!」

「タラン、いいのよ。 私はいくら、イスカンダルの第三皇女でもここ、ガミラスでは所詮、新参者よ。  軽んじられても
仕方ないわ・・・。」ユリーシャはヘルダーを庇ってやった。

「しかし、私は指導者として、ここに来た。 だから 『私の意思』 は尊重して頂戴! 二人ともわかった?

それと 『ゲシュタム・フィールド』 発生装置は絶対撤去しては駄目よ! 更に同じ物をあと二つ作って、第一、第二砲塔の
跡に設置して頂戴。

この大きさなら第一、第二砲塔の跡に設置しても装置が甲板の上に出る事は無いわ。

下部の装置はそれを隠せる位、最少の覆いを頼むわ。 砲塔には見えない様に気を付けてね。」 ユリーシャはその鉄の
意志を垣間見せた。

**************************************************

 レドフ・ヒス首相は今回の 『ユリーシャ様のご行幸』 が心配で堪らなかった。

軍艦に守られていては 『平和使節』 として 『被征服惑星』 に受け入れられないとのユリーシャの主張は最もな事だと
ヒスも思った。

しかし、今まで戦火が乱れ飛んでいた宙域を無防備な 『皇室ヨット』 がたった一隻で航行するなど、正気の沙汰とは
思えなかった。

今回の政変の立役者の一人、ガル・ディッツ提督に相談すると警護を付けるから心配いらない、それも飛び切りの猛者を
選んだとの返事が来た。

「首相、『皇室ヨット』 の改装が終了しました。」軍需省から連絡があった。

改装の指揮は大本営総参謀本部次官・補佐・カウルス・ヘルダー中佐が務めたが、管轄は軍需省だったのでそこから
改装終了の連絡が来たのだ。

「分かった、女皇、ユリーシャ様と一緒に拝見させて貰う。 用意して待て。」 ヒスは軍需省にそう伝えるとユリーシャに
連絡を取った。

ヒスとユリーシャは別々の車を連ねて 『皇室ヨット』 の待つ乾ドックに向かった。

乾ドックに着くとヒスは顔をしかめた、そこに在ったのは 『魔女の艦』 だったからである。
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「君、何かの間違いではないのかね? ここにあるのは 『魔女の艦』 ではないか!」 ヒスは自分の高官用高級車の
運転手に訊ねた。

「間違いありません。ここが指定された 『乾ドック』 です。」 運転手は戸惑いながら答えた。

ヒスが運転手と押し問答をしているのを尻目にユリーシャは自分の車を降りて一人でさっさと乾ドックに向かった。

「女皇、お待ち下さい、あれは 『魔女の艦』 です。 ご行幸には使えません。」 ヒスはユリーシャを止めようとした。

「ヒス首相、何を根拠も無い事を恐れているの。 ちゃんと手なずけてあるから、心配しないで、これから艦内を案内して
上げるわ。」 ユリーシャは屈託のない微笑をヒスに向けた。

ヒスが概観観察用のモニターでざっと外周を点検すると、主砲を含め、大半の武装が撤去されていた。

<これなら、ほとんど無武装の 『皇室ヨット』 に見える、しかも後部の武装は残して最小限の自衛力は確保している!>

ヒスはユリーシャの理想と現実を上手く居りあわせる能力に感心した。

「どうしたの? 私のエスコートではご不満?」 ユリーシャが冗談めかして言った。

「あなた、御自身で御案内ですか? そんな、恐れ多すぎます! おい、改装の責任者はおるか?いたら女皇を御案内
しろ!」 ヒスは大声で呼ばわった。

「はっ、それでは自分が御案内します。 私はカウルス・ヘルダー中佐、改装の責任者です。」 ヘルダーが名乗りを
上げた。

<私が艦内 Net に潜ればたちどころに全てが解るのに・・・。>ユリーシャは自分の足で歩いて艦内を巡るのは
面倒臭かった。

ユリーシャはヘルダー中佐に質問をした。

「艦内巡視をする前に一つ、聞きたい事があるの。 ヘルダー中佐、艦内設備の内、艦内 Net に繋がっていない部分は
なかった?」

「はぁ、それが中央コンピューターの極一部ですが、アクセス出来ない部分があります。

ただ、私用で使うコンピュータ程度の容量だったので、問題ない、と判断し、そのままにしておきました。」ヘルダーは
率直に答えた。

「しまった! 『魔女』 め ・・・。」 それを聞いたユリーシャは顔色を変えた。
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「ユリーシャ様! 何処へ行かれるのですか!」 ヒスは何が起こったのか解らず、ユリーシャを止めようとした。

「艦橋! 艦内 Net に潜るの!」 ユリーシャはヒスに短く答えると艦橋に向かって消えていった。



                                   116.かの名はアヲスイショウⅡ(ア・ルー)(3)→ この項、続く
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by YAMATOSS992 | 2014-01-23 21:00 | ヤマト2199 挿話 | Comments(0)
 ガミラスの首都、バレラスの郊外の乾ドック郡は緊張に包まれていた。

新しいガミラスの指導者、ユリーシャ・イスカンダル・皇女が行幸に使う艦を選びに来ているのだ。

「全くもう、ガミラスには軍艦しかないの?」 ユリーシャ・イスカンダルは足早に歩きながら案内役の大本営参謀次長、
ガルデ・タラン次官に文句を垂れた。
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「いい、判ってる? 今度の領内巡行はデスラーが去り、領内に自由と平和が確保された 『証』 の為に行うの!

艦隊引き連れてなくても軍艦で訪問したんじゃ今までデスラーの圧制に苦しんでいた惑星の人々はいくら私が
イスカンダル人でも信じてくれないわ。」

「はぁ、しかし、我々も拡大政策を執り続け、侵入して来る外敵とも戦う必要上、軍艦を作り続けるしかなかったのです。

また、既に破壊されつくしましたが、 『第二バレラス』 の建造にも大きく力を裂かれました。

『無いものは無い』 のです。 ご理解下さい。 姫様。」

ガデル・タラン参謀・次官はデスラー総統が去って暴君はいなくなったものの、どのみち、 『支配者』 は家来に
『無理難題』を押し付けて来るものだとつくづく思った。

本来はネルン・キーリング大本営参謀総長が出てくる場面だったが、ある理由からユリーシャは敢えてタランを
指名したのだ。

ふと、ユリーシャの足が止まった。

「タラン、私、あの船が気に入ったわ。」彼女が指差す先にはかつて、デスラー統治時代、『魔女』 と忌み嫌われた情報相 『ミーゼラ・セレステラ』 の専用艦 『シャングリ・ラー』 があった。
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「あれは駄目です。 『ジレルの魔女』 の船だった艦です。 何がしかけてあるか、判りません。」タラン長官は即座に
反対した。

当然、ガミラスの領内に響き渡っていた 『ジレルの魔女』 の悪名とその象徴であるパープル色のハイゼラード級
一等航宙戦艦がこれからユリーシャが訪れようとしている被征服惑星で反感を買うのは目に見えていたからだ。

「タラン、かつての 『悪』 の象徴を飼いならした様を見せ付けるのも効果的な 『外交』 よ。

さ、ともかく、内を案内して。」 それだけ言うとユリーシャはさっさと 『シャングリ・ラー 』 の搭乗口に向かって歩いて
いった。

**************************************************

 勝手に艦長用の操作盤を操作してこの艦の機能を確認してゆくユリーシャをタラン達は唖然として見つめていた。

「確かにこの艦は面白い装備を持っているわね。 この艦はたった一隻でも一艦隊を相手に出来るのよ。

ますます、私の船に相応しい。しかし、少し改良が必要ね。 タラン、この船を中央工廠に運んで改装して頂戴。

内容は主砲の撤去、ビーム砲、カノン砲共にね、 前方に向かって開いている魚雷発射管も全部撤去して頂戴。

但し、後部の副砲と後部方向を向いている発射管は全て残して。

また、撤去した発射管用の魚雷貯蔵庫は残して、貯蔵している物を後部発射管へ送れる用に改造してね。」

本来、艦長だけが知っている艦を起動出来る様にするためのパスワードをユリーシャは簡単に割り出すと 『シャングリ・ラー』 の艦内ネットワークに潜り込み艦内施設を隅々まで点検したのだ。

その様子を見ていたタランはその手際の良さにデスラーと運命を共にした兄、ヴェルテ・タランを思い出して涙した。

ヴェルテ・タランは国防相ではあったが優秀な技術者でもあり、第二バレラスの建造責任者を任されていた位であった。
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「これで 『足』 の充ては付いた・・・と。後は随行員の人選とスケジュールね。これはヒスと相談するわ。」

ユリーシャは 『シャングリ・ラー』 のシステムを全てダウンさせるとさっさとブリッジを後にしようとした。

 艦のシステムを全てシャット・ダウンされたので、ガデル・タランは慌てた。

『シャングリ・ラー』 のシステム立ち上げパス・ワードをまだ聞いていなかったのだ。

このままでは命令通りに 『シャングリ・ラー』 を改装しようにも乾ドックから出す事すら出来ない。

「ユリーシャ様・・・。」彼は彼女に呼びかけた。

その時、同時にユリーシャが振り返った。

「そうそう、この艦に積んである 『光の花園』 をもう少し量産しておいてね。

今は二セット分しか積んでないから、三セット追加して。  五セットは欲しいの。」

「『光の花園』 ・・・? 五セット・・・?」タランは自分が聞きたい事も忘れてユリーシャの注文に当惑した。

「知らないの? 全く 『ヤマト』 の乗組員じゃ考えられない 『セクト主義』 ね。」

ユリーシャはあきれ顔になったが、思い直した様に言った。

「ま、多分、あの 『魔女』 、この装備の事は秘密にしていたでしょうけどね。

あの『魔女』は劣勢時に例え、『シャングリ・ラー』一隻になってでもデスラー総統の 『デウスーラ』 を守り切るつもりだったのよ。
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ミーゼラ・セレステラ、 『ジレルの魔女』 と陰口を叩かれても 『総統に対する忠誠心』 は本物だったわ。」

ユリーシャはデスラー総統に尽くし抜いたあげく、総統脱出時には簡単に切り捨てられた哀れな忠臣を思った。

「『光の花園』 はこの艦の後部魚雷発射管とその弾庫に積まれているわ。 見ればその正体は直ぐに判る。

それとあなたが知りたいこの艦の起動パス・ワードは 『呪われよ! スターシャ・イスカンダル』 ・・・よ。」 とユリーシャは
続けた。

「はぁ? なんですって! 『ガミロン』 にはその言葉の入力は無理です。 恐れ多過ぎます。」 タランは途方に暮れた様に言った。

「だから、あの 『魔女』 はパス・ワードにしていたのよ。

安心なさい。私が新しいパス・ワードに書き換えておいたわ。

新しいパス・ワードはこれよ。」 ユリーシャは 『共栄圏・万歳』 と掌に書いてタランにだけ見せた。

『共栄圏・・・、か・・・。』 デスラー政権下では建前でしかなかったその言葉がユリーシャが示すと不思議と本当に異星人
とも宙を越えて手を取り合う事が出来そうにタランには思えた。

ユリーシャはイスカンダルの使者としてガミラスと交戦、滅亡寸前のテロンに赴き、星の海を渡る術を伝え、テロンの
『ヤマト』 は敵であるガミラスの首都 『バレラス』 をデスラーの暴挙による壊滅から救ってくれた。

その実績は異星人同士でも理解し合える事を表していた。

「タラン長官、私は総統府いや総合庁舎に戻るけどあなたはこの艦の改装に早速、掛かってちょうだい。

改装の期限は一週間。 その後、公試を行って完熟訓練には三日もあれば十分でしょ。

使う船はハイゼラード級、同型艦はたくさんあるわ。 操艦要員や内部運営要員に問題はない。

後は 『光の花園』 の運用要員をどうするかね。 ま、これはおいおい、考えましょう。 

あっ、宙雷戦の要員だけはベテランで固めてね。」 さっさと自分の注文だけ言うとユリーシャは去っていった。

「やれやれ、ユリーシャ様も無茶苦茶おっしゃりますね。

『シャングリ・ラー』 の改装だけで1ヶ月は掛かりますよ。 それを一週間でやれとは!

デスラーでもここまで無茶は言わないでしょう。」 ユリーシャがドアの向こうに消えると同行していた部下がこぼした。

「ヘルダー君。 私はそうは思わない。 確かにユリーシャ・イスカンダルは大したお方だ。

ガミラスの未来を託すに相応しい。 さすがにディッツ提督はお目が高い。」 ガデル・タランは感心して見せた。

「ヘルダー君、ガミラスは膨張政策を止め、むしろ、領土の縮小政策に転換した。

そうなると何が変わると思う?」 タランは実直そうな壮年の士官に質問した。

「軍縮・・・って事ですよね? あっ、そうなると兵器はともかく、軍人が大勢、余ります。」 ヘルダー中佐は的確に答えた。

「そうだ。直接戦闘に当たる軍人は喜んで転職する者が多いと考えられるが、砲火を直接浴びる事の無い後方任務の
整備兵や造艦屋達にとっては職を奪われるに等しい暴挙と感じるかもしれん。

だから、ユリーシャ様はその余剰人員を旨く使って改装の工期を早めろとおっしゃっているのだ。

それに三交代制にすれば一週間でも工事を休み無く続けられる。」

「三交代ですって、もう各戦線は講和条約を結んで撤退が進んでいるんですよ。

そんな突貫工事を命じたら現場は何事が起こったのかと困惑しませんかね。」 もともと第707航空団参謀だった
カウルス・ヘルダー中佐は慣れない業務に戸惑っていた。
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「大丈夫さ、それよりも我々もユリーシャ様に頼ってばかりいないでこれからの雇用の確保に尽力する必要がある。」
タラン達は先程、ユリーシャが言った『光の花園』 の正体を確かめる為、艦尾方向に歩きながら話し合った。 

ユリーシャ・イスカンダル・皇女が 『シャングリ・ラー』 の改装やそれを使ってのガミラス圏内の御行幸するのはなにも
外交のためだけでは無かったのだ。

雇用を作り出し、臣民の生活を保障するのも政権を預かる者の使命だとタランやヘルダーは肝に命じた。

**************************************************

 二人が魚雷が後部魚雷格納庫に着き、内部に入ると戦艦用の大型魚雷がギッシリと格納されていたが、その内の
八発は従来の魚雷やミサイルとは全く異なった形をしていた。

敢えて言えば四枚の花弁を持つ 『花の蕾』 の様だった、タランは兄の兵器開発局で以前、良く似た物を見た事が
あったが、ヘルダー中佐は全く見た事がなかった様だった。

「・・・これは一体、何でしょう? タラン次官。 」戸惑いながらヘルダー中佐はタランに訊ねるしかなかった。

「反射衛星・・・。」 タランは 『魔女の悪知恵』 と 『ユリーシャの応用力』 に関心するしかなかった。



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by YAMATOSS992 | 2014-01-21 21:00 | ヤマト2199 挿話 | Comments(5)
 スターシャ・イスカンダルは自室である問題に頭を悩ませていた。

今、彼女は今、ここ、イスカンダルに向かっているであろう、『地球艦』、『ヤマテ』 に渡す約束の品、『コスモ・リバース・
システム』 を 『ハード』 的には完成させていた。
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しかし、『ソフト』 的に一つ、問題があった。

『コスモ・リバース・システム』 は 『イスカンダル』 のある 『サレザー恒星系』 内ならば問題なく作動出来た。

しかし、遠距離、特に 『地球』 などは十六万八千光年も遠方にあった、これでは停止状態から作動させる事
など望み様が無かったのである。

しかし、一つ、解決方法があった。

『人の魂が持つ生命の記憶』 さえ手に入れば、『ヤマテ』 が『地球』 に帰還するまでの間、『システム』 を『アイドリング』
状態にして運転させ続け、『ヤマテ』 が 『地球』 に帰還したら 『星の記憶を持つもの』 の『生命の記憶』 を再インストール
してやれば 『コスモ・リバース・システム』 は立派に機能する。

だが、その為には誰かの 『命』 を奪う必要があった。

そして、この事実が 女王・スターシャ・イスカンダル を苦しめていた。

最初、古代 守 を救出した時は彼の 『命』 を 『魂が持つ生命の記憶』 として使わせてもらう、つもりだった。

そして、彼が 『使命の神託』を 持つ者なら 『ヤマテ』 が 『地球』 に着いた時、『生命の記憶』 を再インストールする必要も
無くなる・・・。

だが、この前、「あなたの 『使命の神託 』 は何ですか?」 と言うスターシャの問いに守は充分な応えをする事が出来
なかった・・・、彼女は彼が 『使命の神託』 を受けていないと判断せざるを得なかったのである。

そして、何よりもサーシャ・イスカンダルを 『地球』 に送り出して以来、たった一人の生活を続けて来たスターシャ・
イスカンダルにとって 古代 守 は掛替えのない存在に成りつつあったのも確かだった。

**********************************************

スターシャは 『ゲルド(三つ目のガミロイド)』 が 古代 守 に持たせ 『たメッセージ・カプセル』 を手に取った。
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(追記: 『ゲルド』が 『三つ目』 なのは 『ガミロイド』 の視覚構成による、上段の二つは普通に物を立体視するための
もの、下段の右は 『暗視カメラ』、下段の左は 『ガミラス・ネット・カメラ』 であった。
普通の 『ガミロン』 は 『PC等、何がしかのインターフェース』 を使わなければ 『Net』 にアクセス出来ない。
だから、 『直接Netアクセス権』 を奪う事で、 『ゲルド』 が 『ガミロイド』 ではない 『証』 にしたのである。)


このカプセルは本来、『ゲルド』 がもはや単なるガミロイドではなく、魂を持つ 『ガミロン』 である事をガミラスの上層部に 『証明』 するために持たせた物だ。

だから、映像もスターシャ本人の物だった。
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ゲルドはその映像の上に自分の映像とメッセージを無理やり上書きしていた。

その強引なやり方から、状況が余程、切羽詰った物であった事が伺われた。

その時、イスカンドロイドから 古代 守 の容態が急変した旨、連絡があった。

スターシャが守の病室に駆けつけてみると、彼はベットの上で寝ていたがその顔に生気は無かった。

「守!」 スターシャは思わず叫んでベットに駆け寄った。

そして彼の頬に手を当て、体温がいつもより下がっているのを感じるとイスカンドロイドにベッド表面の温度を
更に上げる様に支持した。

「スターシャ猊下、これ以上、寝床の温度を上げるのは危険です。

猊下が御自身の体温で古代様の身体を温める事をお勧めします。」 イスカンドロイドはとんでもない事を当たり前の様に
言った。

「・・・判ったわ。」 スターシャは一瞬、戸惑いを見せたが薄いドレスのまま、古代 守 のベットに滑り込んだ。

<あまねく、知的生命体の救済、それが『イスカンダル』の進む道・・・。

異星人だろうと何だろうと、死に掛けた知的生命体がいれば、そして救済する道があればそれを進むのみ>、サーシャ・
イスカンダルと彼女の旅立ちの時、抱き合って以来、感じる人肌だった。

しかし、スターシャが抱き付いた時、感じる 古代 守 の体温は以前、彼の手に触った時に比べても異常に低かった。

そして、彼女が抱き付いても彼は僅かに身じろぎしただけだった。

<守! また私を一人にしないで! 神よ、お救いを!> スターシャは自身が女神扱いされているのにも関わらず、
イスカンダルの 『古き神』 に祈っていた。

**********************************************

 数日後、古代 守 は何とか峠を越えて回復に向かっていた。

しかし、スターシャの心は晴れ無かった。
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検査の結果、古代 守 は身体の衰弱が激しく、一旦は回復したが、今度、体温が下がるともう回復しないと判断せざるを
得なかった。

いくらイスカンダルの科学・医学が 『ガミラス』 や 『地球』 を凌ぐものでも今回ばかりは手の施し様が無かった。

「あなたの回復は残念ですが、もう、望めません。

イスカンダルに 『ガミラス捕虜護送船』 が不時着し、あなたが脱出時に負った傷は重症で輸血が必要でした。

しかし、地球人の血液など入手不能でした。

そこで、『生命』 を繋ぐのに必要な最低限の成分を含んだ人工血液(地球流にいえばリンゲル液)を処方し、当座は
それでしのぎ、その間にあなたの血液のサンプルを元に 『代替用人工血液』 を 『クローン培養』 して輸血しました。

しかし、やはり 『クローン培養』 など神をも恐れぬ 『禁断の技術』 でした。

たぶん、後から輸血した 『代替用人工血液』 が多分、本来のあなたの血液を再現し切れなかったのでしょう、

今、あなたの血液中には 『未知の抗体』 が、多量に発生しています。

それがあなたの血液中に入り込んだ 『代替用人工血液・成分(赤・白・血球、血小板)』 を攻撃・破壊しています。

もちろん、あなた本来の 『造血作用』 は無事なので 『新しい血液・成分(赤・白・血球、血小板)』 は造られていますが、『抗体』 による破壊作用の方が早いのであなたの寿命はそう長くありません。」 スターシャは守の『寿命』 がもう長く
無い事を敢えて率直に告げた。

もし、このまま 古代 守 が助からないとしても、彼には本当に 『死』 が訪れるまで 『前』 に進み続けて欲しいと願ったから
だった。

また、スターシャは本心では守が死亡したら 『ガミロン』 の 『ゲルド』 の『魂の記憶』 を 『ガミロイド』 に入れた様に守の 『魂の記憶』 を抜き出して 『イスカンドロイド』 に埋め込みたい誘惑にかられていた。
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しかし、『イスカンドロイド』 は女性形、守が好むとは思えなかった・・・。

このため、彼女はこの件は彼には黙っている事にした。

**********************************************

「そうですか・・・。」 流石に 古代 守 も天を仰いでしばらく沈黙していたが、覚悟が決まった様にスターシャの方に
向き直って言った。

「ま、もう、とっくに何度も死んでいるはずの 『生命』 です。

とうとう、運が尽きたって訳ですな・・・。 

それと 『イスカンダル』 の 『クローン培養』 の技術は素晴らしいものです、決して 『悪い技術』ではありません。

あなたは私を助けるために 『クローン培養』 を使いました。

おかげで私は 『失うはずの命を拾う』 事が出来ました。

『技術』 は 『失敗』 して 『進歩』 する物だと 『地球』 では 『子供達』 に教えています。

『ガミラス』 では 『親衛隊』 に 『クローン兵』 を使っているそうですね。

<しかし、『ガミラス』 のクローン兵は非常に短命で、二十歳を越える事はなかった。

だが、この事はスターシャも知らなかった。>

『ガミラス』 に出来る事が 『イスカンダル』 で出来ないはずはありません。

『この結果』 は、必ずや、役に立つ時が来ます。 お気を落とされぬ様、お願いします。」 古代 守は最敬礼し、
そして、言った。

「それでは一つ、お願いがあります。」

「何の願い・・・ですか?」スターシャは不思議そうな顔をした。

「私の 『生命』 が尽きる前に、ここにやってくるはずの 『地球の船』 に宛ててメッセージを残したいのです。」 守は照れ
くさそうに言った。

「判りました。言いたい事を簡潔にまとめて下さい。用意が出来たら直ぐ記録を始めます。」スターシャは即座に
了解すると直ぐに記録を始められる事を守に告げた。

すると古代 守 は自分のベッドから降りてベッドから少し離れた床にあぐらをかいて座った。

「守さん! 床に直に座ったりすると身体が冷えます。 ベッドに戻って下さい。」スターシャが心配してベッドに戻る様、
促した。

しかし、守は笑顔で 『OKサイン』 を出したが、ここがイスカンダルである事を思い出して記録の開始を言葉で告げた。

「私はこんな有様ですが、一応、『戦士』 です。 寝床の上で 『メッセージ』 を送るなど 『戦士の誇り』 が許しません。 

平和主義の女王陛下は私の事を軽蔑されるかもしれませんが、『最後の我が儘』 だと思って許してやって下さい。」と、
守はスターシャに許しを請うた。

「しかたありませんね。 『最後の我が儘』 では・・・。」 スターシャは悲しげに微笑むと守の肩に国連宇宙軍の制服である
紺色のコートをそっと掛けてから、目でイスカンドロイドに記録開始の合図を送った。

「守さん、始めて下さい。」スターシャは守に記録の開始を告げた。

「私は国連宇宙軍 駆逐艦 『ユキカゼ』 艦長、古代 守 だ・・・。」 短い『メッセージ』だった。
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しかし、彼女にはそこに、二つ、気に掛かる部分があった。

一つは守が告げた事の内、彼が 『ガミラス』 の捕虜となった事は本当だったが、その理由として彼が『生体サンプル』
として『ガミラス』に送られたと告げた事だった。

記録が終わった後、彼女が彼にその事を聞くと、「私達が『プラートの雷神』 などと呼ばれて 『ガミラス』 本土に召喚され
たなんて恥ずかしくて言えませんでした。」と守は頭を掻いた。

もう一つは 『弟』 、『進』 と言う名前らしかったが、今まで兄弟がいると言う事を何故、黙っていたのか?その理由を
聞いた。

「あなた方、三姉妹は三人しか、居ない最後のイスカンダル人です。

にも係わらず、その内、二人をも十六万八千光年も離れた 『地球』 に 『救済の使者』 として派遣して下さった・・・。

その間、あなたはたった一人で孤独に耐えなければならないのを承知で・・・。

気丈に振舞っているあなたも私に兄弟が居ると知ったら、お二人の姉妹の事を思い出してしまい、あなたの『気持ちが
折れる』 様な気がして、私にも弟が居ると言う事を告げられませんでした。

意気地の無い私を許して下さい。」守は再び、彼女に頭を下げて侘びを言った。

<自分が『死に掛けている』 のに係わらず、私の事までも気に掛けてくれていたとは・・・。

彼はやはり、『使命の神託』 を持っている、自覚していないだけ・・・。 これで彼の死も無駄にはならないわ。>
スターシャは確信した。

これで古代 守はその身体こそ死してもその魂は 『地球』 の 『生命の記憶』 の基礎として永遠に残るのだ。
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スターシャはそれが嬉しくて思わず守に抱きついた。

守は一瞬、戸惑った様子を見せたが、何も言わずスターシャを抱き返した。

**********************************************

数日後、イスカンドロイドから守が再び昏倒したと、スターシャに報告があった。

スターシャが急いで守の病室に駆けつけたが守の顔は前回より青褪めており、スターシャが添い寝すると守の身体の
冷たさは絶望を感じさせた。

スターシャは、しばらく、守を抱いていたが、その身体は冷たくなるばかりで、手足を微動させる事も無かった。

彼女は黙って起き上がり、ベッドの外へ出た。 

そして、『コスモ・リバース・システム』 を 『完成』 させるため、古代 守の脳内の 『魂の記憶』を 複写する作業を
イスカンドロイドに命じた。
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                                               星、越えし先の君 → この項、了
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by YAMATOSS992 | 2014-01-18 23:00 | ヤマト2199 挿話 | Comments(4)
 スターシャは守にとって驚くべき事を告げた。

「ベルク・レクター大佐はこうも言いました。『死亡した”テロン”はイスカンダルの大地に埋葬して遣って欲しい、
”敵地”に埋葬されるより、ここに葬られる方が彼等も安らげるだろう。』・・・と。

失礼しました。『テロン』と言うのは『ガミラス』が、あなた方『地球人』の事を呼ぶ時の呼名です。」
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「確かに 『親衛隊』とはいえ、 高潔な漢(おとこ)ですね。 矜持溢れる処置です。

あなたのおっしゃった事は本当だった、『親衛隊』にも高潔な漢(おとこ)がいる。

気持ちが良い話です。 ラストフ中尉の船を味方だと判っていて攻撃した 『親衛隊』にも 『漢』(おとこ)がいた。
 ハ、ハ、ハッ」 古代 守は高笑いした。

「では、石津一尉と山根三尉の遺体はイスカンダルに埋葬されているのですか? ここに?」守は激しく手を
上下させながら床を指差した。

「正確にはここではなく、郊外にある墓地ですが、確かに埋葬させて頂きました。」スターシャはそばに居た
イスカンドロイドに目で合図を送った。

守のベッドの足元の方向の壁に3D映像が映し出された。

イスカンダルの墓地には異国風の墓標が並び、その数は地平線まで埋め尽くしていた。

それは『地球人』も『イスカンダル人』も区別されていない事も現していた。

ただ、守は『地球人』の墓標だけ墓標正面に四角い枠だけが刻まれており、その内は空白な事を不審に
思った。
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守の疑問はスターシャが解決してくれた。

「お二人の御名前が判らなかったので後で古代さん、あなたが回復されたらあなたの星の『文字』で墓碑銘を
刻もうと考えておりました。」スターシャの言葉に守は驚きを隠せなかった。

「おおっ、それでは書道一級の腕を見せるとしますか! しかし、ここはイスカンダル、墨も筆も無いですよね。」
守は張り切ったが、ここが異星である事に気づき、当惑した。

「文字を書くのに何か道具が必要なのですか? でしたら、これをお使い下さい。」スターシャは一本の棒状の
もの(シルーロ)を渡した。

「どう使うのです?」守は素直に操作方法を聞いた。

「あなたが書きたい文字を脳内に思い浮かべ、そのシルーロの脇にある細長いスイッチを押さえながら文字を
書いてみて下さい。 結果は3Dで前方の空中に示されます。」

守はスターシャに言われた通りにイスカンダルの筆(シルーロ)を使って、まず自分の名前を書いてみた。

空中に現れた文字は『古代 守』、これは今まで自分が書いた内で一番達筆だと自分でも感心した。

「これはどちらの方の御名前ですか?」スターシャが遠慮がちに聞いた。

「これは練習です。  まず、自分の名前を書いてみました。  これはリセットして下さい。

本番を始めます。」守は大きく深呼吸すると副長『石津 英二』(一等宙尉)と航海士『山根 章』(三等宙尉)の
名を大書した。
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「初めて見る文字ですが、”美しい”、流れる様な形をしているんですね・・・。」スターシャは感銘した様だった。
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「最初に書いた『石津 英二(いしづ えいじ)』は背丈が低く、頑強な”遺体”です。

次に書いたのは『山根 章(やまね あきら)』は背丈が高く、痩せている”遺体”の名前です。

これで二人も安らげるでしょう・・・御配慮、感謝します。」守は ”シルーロ”をスターシャの手に返しつつ再び礼を
言った。

「実はあなたに先日の非礼をお詫びした後、『お願い』 をしようと思っていたのは石津と山根、この二人の遺体は
無いと思っていたのでせめて 『墓標』 だけでも建てて貰おうと思っていたのです。」守は思わぬ展開を喜んだ。

「出来ましたわ。」スターシャが唐突に言った。

イスカンドロイドが墓地の3D映像を再び映し出した。
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守は先ほどは□しか表示されていなかった『石津 英二』と『山根 章』の墓に墓碑銘が綺麗に刻まれているのを
見た。

<充分に発達した科学は魔法と区別が付かない。>・・・、かつて親友の真田 志郎が教えてくれた二十世紀の
SF作家の言葉を守は思い出し、確かにその通りだと実感した。



                                       113.星、越えし先の君(8)→この項、つづく
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by YAMATOSS992 | 2014-01-16 21:00 | ヤマト2199 挿話 | Comments(4)
 それから数日が経ったがスターシャ・イスカンダルが古代 守のもとを訪れる事はなかった。

守はスターシャを怒らせてしまったと勘違いしたが、本当はテロンから遣って来るはずの『ヤマテ』に託す
コスモ・リバース・システムの建造を始めたからだった。

スターシャがテロン艦の艦名を 『ヤマト』 ではなく 『ヤマテ』 だと思ったのは 『ガミラス』 の平文の通信を傍受
してテロン艦の艦名を知ったからだ。

この頃には恒星グリーゼ581でデスラー総統の罠を喰い破ったテロン艦 『ヤマテ』 の噂はガミラス文化圏を
駆け巡っていた。
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『ヤマテ』 がまだ壊滅戦や虐殺を行ったと言う情報は入って来てなかったがデスラーの罠を破るのに超兵器を
使ったと言う未確認情報もあり、スターシャに嫌な予感を感じさせた。

<サーシャやユリーシャが一緒なのだから、波動エネルギーの悪用はさせないはずだわ。>スターシャは
その嫌な予感を頭の内から追い出した。

「スターシャ猊下、古代 守様から訪問を要請する旨の連絡が入っておりますが、如何いたしましょう。」
コスモ・リバース・システムの組立を直接行っていたイスカンドロイドの内の一台が訊ねた。

イスカンドロイドは 皆、王都の内部Netに繋がっているのだ。

病室の守からの連絡など簡単に中継出来る。

「一(アルウ)時間後にこちらから訪ねる旨、連絡して頂戴。 私も少し休みたいわ。」スターシャはそれに応えた。

**********************************************

スターシャが守の部屋を訪ねると守は床に正座してスターシャを待っていた。

そして、彼女がドアをくぐると両手を床について土下座した。

「イスカンダル女王、スターシャ様、先日の無礼、お許し下さい。 何が悪かったのか、愚かな私には未だ判りま
せんが、御気に触ったのは確かです。 重ねてお詫びします。」守は再度深く頭を下げた。

『土下座』 という謝罪方法を知らなかったスターシャであったが、守が本気で謝罪しているのはその気迫で
判った。

「私は別に何も怒ってなんかいませんよ。

地球の船 『ヤマテ』 がここに向かって長躯、十六万八千光年の旅をしています。

その船に渡す地球の環境を回復させるためのコスモ・リバース・システムの用意をしているんです。

しばらく、会いに来なかったのはそちらの作業に時間を執られていただけです。

別にあなたを避けていたわけではありません。」スターシャは守の肩に手を掛け、その謝罪に笑顔で
訂正した。

「実はお願いがあるのです。でも、その前に誤る事は誤って筋を通しておかなければ気が済みません。」

守はしゃちほこばってスターシャに尋ねた。

「私達を輸送していた捕虜護送船の乗組員はどうなりましたか?」

スターシャは悲しげに目を伏せた。
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「船長の 『サターニャ・ラストフ中尉』、副官の 『ゲルド』、あなたのお仲間も二人とも全て死亡しました。
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残念ですが、助かったのは 『古代 守』 さん、あなただけです。」

「・・・四人の遺体はどうなりました。」守は憂鬱な顔で聞いた。

「『三つ目のガミロイドの身体を持つ”ゲルド”』 は直ぐ区別がつきましたが、生身の三人の身体は
それは損傷が酷く、判別不能でした。

ですが、『サターニャ・ラストフ中尉』 はガミラスが遺伝子情報を持っていたので照合して確認、ラストフ中尉と
ゲルド副長の二人はガミラスの親衛隊が船の残骸と共に回収していきました。」スターシャは目を伏せたまま
だった。

「我々は 『ガミラスの親衛隊』 に攻撃されたんですよ。

良く私の事を追及してきませんでしたね。」 守は驚いて思わずスターシャに尋ねた。

「大丈夫。 回収部隊を指揮していたベルク・レクター大佐は本来の親衛隊員です。 古参兵なのです。」
スターシャは応えた。

「古参兵だと何が違うのですか? 親衛隊は親衛隊でしょうに・・・。」 守はいぶかしんだ。

ラストフ中尉やゲルド副長の話では親衛隊は血も涙も無い冷血漢の集まりだ と聞いていたからだ。

「ガミラスも昔は今ほど膨張政策に夢中ではなかったのです。

だから親衛隊員も武勇に優れているだけでなく、人格的にも高潔な人が選ばれ、それが彼らの誇りでも
ありました。」

スターシャは自分の進めるイスカンダル主義を曲解して武力による膨張政策を執るデスラー総統が恨めし
かった。

「しかし、今は『親衛隊』は純血でなければならないと言う考えを推し進め、とうとう総統側近を固める
『親衛隊員』は皆、『クローン兵』 になってしまった様です。」スターシャは守に驚くべき事を言った。
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「『ガミラス』では 『クローン培養』 で 『兵士』 を作っているんですか?

地球では倫理的に問題があると 『人間のクローン培養』 は禁止されているんですよ。

『神』をも恐れぬ所業ですね、『ガミラス』 らしい。

そのくせ、艦船にはまともな医療設備や器具すら装備していない。」守は肺炎になったのに充分な治療を
して遣れなかったサターニャ・ラストフ中尉の事を思い出だし、無念さを噛締めた。

守には 『クローン兵士』 が造れるのにも関わらず、注射器も存在しない世界なんて考えられなかったのだ。

スターシャも 『ガミラス』 の医療技術の偏りの異常さには問題を感じていた。

しかし、『イスカンダル』 の『医療技術』をこれ以上、『ガミラス』 に提供する事には躊躇いがあった。

どんな 『兵器転用』 をされるか、判らなかったからだ。

しかし、スターシャは古い知り合いであるベルク・レクター大佐を信頼していた。

「ベルク・レクター大佐は 『クローン兵』 ではありません。

彼は『親衛隊員』が誇り高く、尊敬される存在だった頃の数少ない生き残りです。

しかし、老齢という事もあるでしょうが、『下位の親衛隊員』 が犯した犯罪の後始末を遣らなければならないとは
全く気の毒な事です。」スターシャは折りしも空に昇って来た 惑星『ガミラス』 を睨み付けて言った。

そしてスターシャは一番肝心な事を守に話始めた。

                                       112.星、越えし先の君(7)→この項、つづく
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by YAMATOSS992 | 2014-01-14 21:00 | ヤマト2199 挿話 | Comments(0)
 イスカンダルの王都イスク・サン・アリアの外れにある『展望区画』に古代 守は来ていた。

古代 守の故郷、神奈川の海とは風景、趣きは異なってはいたが潮の香りは同じだった。

古代 守は自分の病室で3D映像と共に再生された潮の香りを嗅いではいたが、やはり本物の香りを嗅ぐと
自然と涙が出てきた。
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「また病室を抜け出してこんなところに・・・。」古代 守の後ろから声がした。

イスカンダルの女王『スターシャ・イスカンダル』だった。

「病室を抜け出させたくないならこんな物、与えない方が良いのでは?」古代 守は自分が座った移動用
慣性制御椅子の肘掛をポンと叩いた。

この宙に浮く椅子のおかげで古代 守は広い王都イスク・サン・アリアを自由に移動出来るのだ。

「これは本来、あなたの治療に必要な場所がこの広い王都イスク・サン・アリアのあちこちに散っているので、
あなたにも無理なく移動してもらうために使ってもらっています。

それに、あなたはこれ(慣性制御椅子)を取り上げても、這ってでもここに来るでしょう? 古代さん・・・。」

しょうがない子といった感じでスターシャは微笑んだ。
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「しかし、この都市は静かですね。 それともここは王族の占有フロアなんですか?」守は何気なくスターシャに
聞いた。

「私には二人の妹がいます。 二人とも『テロン』・・・失礼、 『地球』 に使者として送っていますが・・・。

今頃は 『地球』 に二人が運んだ技術で作られた 『船』 で二人ともここを目指して航行している事だと信じて
います。

しかし、それだけです。今、イスカンダルにいる者は私一人です。」 スターシャは悲しげに目を伏せた。

「他のイスカンダル人は、・・・臣民は、庶民はいないのですか!」 守は驚いた。

「ええ、イスカンダルは古い星です。 種族の寿命が尽きかけていたのでしょう。 出生率は減り、どんどん
人口は減ってゆきました。

そして生き残ったもの達は自然と王都イスク・サン・アリアに集まって暮らす様になりました。

しかし出生率はどんどん低下して出生しても生き残れる新生児の数はほとんど零になってしまったのです。

そのためでしょう。ある時から新生児のうち、生存出来る生命力を持ったものは 『奇跡』 として自動的に
『皇族扱い』 される様になりました。

私達、三人姉妹も本当の親はそれぞれ別々ですが、今となってはその様な事は瑣末な事です。

私達、姉妹の結びつきには微塵も綻びはありません。
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ですが、悲劇はユリーシャが生まれて王族として 『皇室』 に迎えられた年に起こりました。

原因不明の疫病が流行り、皇室は全力を挙げて対処しましたが、国民は結局、全て死に絶えました。

父王と母王妃は私達、三姉妹をクリスタル・パレスに隔離すると星を蝕む病魔に立ち向かいました。

そして病原菌を排除する薬剤を合成する事に成功しましたが、時、既に遅く二人とも感染、病状が進んで崩御
してしまいました。

でも私達は父母が発見した病原菌に対する抗体を体内に発現させていますからもうその病気を恐れる事は
ありません。

ですが、もはや三人になってしまった私達、幼い三姉妹に何が出来るでしょう。

一時は放心した様にただ漠然と日々を送っていました。

しかし、私達は祖先達の歴史と業績の研究を時間潰しに始めました。

そして約二十年、研究を進めてゆく内に私達は 『あるもの』 を得ました。

その証拠に 『地球』 の救済のため、二人とも喜んで旅立ってくれました。」スターシャは誇らしげに天を仰いだ。

「二人・・・? ユリーシャさんだけではなかったのですか?」 守はイスカンダルからの使者 『ユリーシャ』 の
名前だけは聞いていた。 

そして彼女がもたらしてくれた新技術を使った新戦艦が建造されているという噂も知っていた。

しかし、ここイスカンダルにいては二人の安否は知りたくても知りようがない。

と、すれば二人が地球に向かった目的は全く別々のはず・・・、と、その時、守は 『メ号作戦』 の真の目的を
悟った。

あの戦場の反対側をサーシャ・イスカンダルの宇宙船が太陽系に進入したのではないかと想像された。
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<アマノイワト ヒラク・・・か。>あれは 『作戦・成功』 を告げる暗号だったのだ。

『メ号作戦』 は陽動だった・・・、しかし、古代 守の心に怒りは不思議と起こらなかった。

代わりに涙が頬を伝わった。

「妹達の身になにかあったのですか!」その涙を見たスターシャは顔色を変えた。

「いえ、違います。 これは嬉し涙です。」 守は涙を見られて照れ臭そうにいった。

自分がガミラスの捕虜になったのは太陽系最外周の冥王星近傍だった事。

旗艦の撤退を援護して踏み留まったが、結局、ガミラス艦隊に乗艦を撃破されて捕虜になった事。

普段は『逃げの沖田』とまで陰口を叩かれるほど無理をしない指揮官が旗艦と守艦の二隻になるまで奮戦した
事。

この事から自分達の作戦はサーシャ・イスカンダルを安全に地球へ導く為の『陽動』だったと考えられる事を
伝えた。
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「サーシャ・一人の為に何人の方が死んだのですか・・・。」 スターシャは震える手を押さえつつ聞いた。

「あなたが気になさる事ではありません。 我々は我々で生き残る努力をしただけです。 それに・・・。」 守は
言い切った。

「『陽動作戦』は 『武人』 の 『誉』 です、これは古来より 『地球人の伝統』 です。 

まぁ、『作戦』 に参加した者の全てが私の様に『陽動』を『誉』と感じるとは限りませんが・・・。」守は頭を掻いた。

スターシャ・イスカンダルは守の座っている慣性制御椅子の背面に付いている操作盤のタッチ・パネルを操作
すると守を病室に戻そうとした。

守はもう少しここに居たかったので左手肘掛に付いている操作スイッチで元に戻そうとしたが背面に付いている
操作盤の方が優先度が高く設定されていたので否応もなく病室に戻されてしまった。

ベットに守を寝かすとスターシャは黙って部屋を出て行こうとした。

「すみません。何か余計な事を言った様ですね。」守は何か怒らせる様な事を言ったと思ってスターシャに
詫びた。

「あなたの 『使命の神託』 はなんですか?」振り向き加減に守の方を向いたスターシャ・イスカンダルは訊ねた。

「『使命の神託』 ・・・? 何ですか、それは・・・。 『使命』 なら答えられますが・・・。」守は戸惑った。

「それは何ですか?」スターシャが短く問い掛けた。

「『ガミラス』 の侵略を退け、地球を復興させる事です。」守は自信をもって応えた。

「そうですか・・・。判りました。」 だが、スターシャは守に背を向けるともう振り返へる事なく、部屋を出て行った。

<駄目・・・。 この人は 『使命の神託』 を受けてはいない。>

スターシャは本当に落胆した。


                                       111.星、越えし先の君(6)→この項、つづく

**********************************************

お待たせしました。  『星、越えし先の君』、再開させて頂きます。 また読んでやって下さいませ。
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by YAMATOSS992 | 2014-01-12 21:00 | ヤマト2199 挿話 | Comments(4)