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宇宙戦艦ヤマト前史

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宇宙戦艦ヤマト登場前の地球防衛軍の苦闘を描きます。

<   2014年 02月 ( 8 )   > この月の画像一覧

 「私は『デスラー』が”廃した『貴族制度』”の”復活”を『宣言』します!」ユリーシャの言葉は衝撃的だった。

スターシャが同じ事を告げてはいたが、『女皇』自身の言葉でそれが告げられると会場は驚きと興奮の喧噪に包まれた。

「それでは、貴方々の 『新・貴族』 としての 『権利と義務』 について、お話します。」 喧噪が一段落すると、 ユリーシャが
そこにいる全員を見回して言った。
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旧貴族達はお互いの顔を見渡しつつ、ユリーシャの次の言葉を待った。

「まずは皆さまが一番聞きたいであろう 『権利』 についてお話します。」ユリーシャは 『新・貴族』 の 『権利』 について
語った。

1. 『新・貴族』 は現領地・現財産をそのまま維持出来る事。

2. 『新・貴族』 は現在の政府・軍での地位を維持する事が許される事。

3. 旧・貴族から今まで保持してきた 『軍備』 も 『保有』 を許す事。 但し、その 『保有』 に必要な『維持費』は『自費』で
  賄って貰う事。

4.領民から徴税する事が許される事。 但し、税額は国税を上回る事の無き事。また、臣民が各領主からと国からの
  両方から重複して徴税される事が無き様に配慮する事。

5.『新・貴族』の『身分』は 現政権が維持され続ける限り、『永久保証』されるものである事。

「基本的『権利』については以上、五項目です。この『権利』は どれか一項目でも、全項目でも 『破棄』出来ます。 

まぁ、全項目『権利の破棄』を行うという事は『貴族』を『止める』と言う事になりますが・・・。」ユリーシャはもったいぶって
言った。

「では、『新・貴族』 たる 『義務』 として 『皇室』 は我々に何を 『要求』 するのですか? 莫大な『税』 ですか?」あまりにも
旨い話にマルド・ヴォッテル・大将が恐る恐る訊ねた。

「求める『義務』 は唯一つです。」ユリーシャはもはや『スターシャ・イスカンダルの妹』 ではなく、『女皇・ユリーシャ・
ガミロニア』の顔になっていた。

「『貴族』の果すべき『義務』 は今も昔も変わりありません。 これはたぶん原初の昔から変わっていない事でしょう、
それは 『貴族が貴族たらん事』 です。」ユリーシャは自信ありげに言った。

「『女皇・ユリーシャ・ガミロニア』、それは一体・・・どう言う事ですか?」それまで沈黙を託っていたネルン・キーリング・
上級大将が思わず、訊ねた。
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「キーリング・上級大将、貴方は二十三代続く名家の出ですね。 では初代の方は何をされて居たのですか?」
ユリーシャはキーリングに対して微笑んだ。

「そんな昔の事、今となっては知りようもありません・・・。」キーリングはうつむきながら答えた。

「大昔、1万年以上も前の話ですが、ガミラスもイスカンダルも人々は農耕を知らず、狩猟採集生活を送って各地を転々と
旅していました。

当然、食糧は狩りの獲物と木の実が主体でした。

ですが農耕が始まると事態は一変しました、定住して作物を作る農民が出現したのです。」ユリーシャは大きく手を
振った。

そこには金色に輝く”畑”と働く”農民”の姿が3D映像で映し出された。
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「そして ”狩猟採集民”の”人々”はその ”獲物” を ”農民とその生産物”に変えました。」ユリーシャは悲しげに眼を
伏せた。
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「しかし、そんな ”狩猟採集民 ”の ”人々”の中にもこれが ”不当な略奪”であると考え、”野盗と化した狩猟採集民” から
”農民” を守ろうとする ”一派”が生まれて来ました。
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それが、貴方々、『貴族』の始まりです。」ユリーシャはここで一端、言葉を切った。

「彼等は”野盗の襲来時 ”僅かな部下を率いて農民達の防衛部隊を指揮して ”防衛戦 ”を戦い、”村とその財産 ”を
守り切りました。

だから、”平時 ”には ”農民 ”から ”お礼”として」生活物資が提供されました。 これが、今の『税』の原型です。

そして、今、残っている『貴族』の方々の御先祖達は実に賢明でした。

『戦時』には」『貴族』はその武力を持って『存在意義』を示す事が出来ます、しかし、『平時』にはどうしたら『人々の心を
繋ぎ止めておけるか・・・、』その事に心を砕かれたのです。」

「常に清廉潔白、公明性大である事、清貧に甘んじる事、『事ある時は先陣』を切って戦う事、彼等が己に課した責務は
膨大な物があります。」

「『女皇・ユリーシャ・ガミロニア』、そんな膨大な法律、とても果たし切れるものではありません。」キーリングは絶望的な
顔で言った。

「私も旧・総統府の書庫で『貴族』の歴史を調べていた時、各家に伝わる家訓を調査したのですが、とてもその量は
膨大で整理し切れるものではありませんでした。

つまり、この法律は『成文化』したとしても守り切れない事を意味します。 だから、決めたのです。」ユリーシャは決然と
言い放った。

「『貴族』の『義務』は『貴族たらんとする事』だと!   皆様は『何か』をなさろうとする時、その自分の行動が『貴族』に
相応しいか、どうか、『御自分』で『御判断』下さい。この『重責』に耐えうる者だけが『貴族』と呼ばれ、尊敬を集める事が
出来るのです。」

ユリーシャの言葉に諸侯はうろたえ、考える力を失ってしまった。

気まずい沈黙が諸侯と女皇の間に流れた。

「私は高貴なる女皇(ルード・ガミロニア)の御言葉を支持しますぞ!」ユリーシャの後ろから男の声がした。
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「ヒステンバーガー! 無事だったのか?」ネルン・キーリングは思わず叫んでしまった。

「ネルン・キーリング・上級大将、マルド・ヴォッテル・大将、ドラム・ボシュレム・国防次官、我々の謀略は全て高貴なる
女皇(ルード・ガミロニア)に阻止されました。 

そして、双方、戦死者は皆無です。 我々は完敗しました。 ですが、高貴なる女皇(ルード・ガミロニア)は我々を罪に
問う事は無いと仰られました。」ヒステンバーガー・大将が自分達の陰謀を暴露した。

「ここまで証拠が挙がっているのに・・・か?」ネルン・キーリングは訳が判らなかった。

デスラー・政権下なら、親衛隊に即、逮捕、処刑される状況だったからだ。

「ヒステンバーガー・大将から『襲撃・理由』は窺いました。

貴方々は私がガミラスに『皇室』を開く事で『貴族の誇りが傷つけられた』と感じられたから『皇室ヨット』を襲撃したの
ですね。

そこに『私心は無かった』事は明らかです。 『罰』を与える必要はありません。」ユリーシャの度量の深さは襲撃事件を
起こした四人組以外の諸侯にも感銘を与えていた。

次々と『皇室』を『支持』する『新・貴族』に名乗りを上げる者が現れた。

その場にいた諸侯の殆どが『新・貴族』に名乗りを挙げてもネルン・キーリングだけは沈黙を守っていた。

「ネルン・キーリング・大将、貴方は参加してくれないの?」ひざまずいたまま顔を伏せていた彼にユリーシャは近づいて
声を掛けた。

「高貴なる女皇(ルード・ガミロニア)、判ってはいるのです!しかし、私の誇りが『皇室』に従う事を許さないのです。」
キーリングは絞り出す様に言った。

「それなら、『貴族』をやめ、『議員』となって『皇室・廃止』法案を提出、臣民の議決を取り付けて私を追い出せば良い
のよ。」ユリーシャは事も無げに言った。

「でも、私は貴方が『貴族』を止める事を許さない!」ユリーシャはキーリングの頬を張っていた。
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「な、何を・・・、成されます!」ヒステンバーガー・大将が止めに入った。

「キーリング、貴方が何度、私の命を狙おうと構わない、しかし、貴方は貴方を慕う多くの『領民』を見捨てるつもり!
そんな事は私が許さない!」ユリーシャは決然として言った。

キーリングはあれ程、嫌っていた『女皇』に頬を平手打ちにされたのに何故か口惜しさは無かった。

そして、訳の分からない『涙』がその頬を伝っていた。

                                          かの名はアヲスイショウⅡ(ア・ルー)→ この項、了
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by YAMATOSS992 | 2014-02-22 21:00 | ヤマト2199 挿話 | Comments(17)
 大ガミラス帝星の元・総統府、今は統合庁舎の元・総統専用執務室でヒス首相は次々と入って来る 『皇室・ヨット』
襲撃・事件の報告に 『女皇・ユリーシャ・ガミロニア』の安否が気が気では無かった。
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レドフ・ヒスは内務省の小役人から出世してデスラー政権時代は副総統にまで上り詰めた。

『総統府の茶坊主』、『お飾りの副総統』 などと陰口を叩かれながらもまともな 『政治手腕』の無いデスラーを支え、
政権を維持して来たのは実質上、彼だった。
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だから、辣腕だが、カリスマ性が皆無の指導者にはイスカンダル王室からガミラスに向けて、皇女を差し向けるから
『皇室』 を開いたらどうか?との申し出は渡りに舟だったのだ。

そして、驚いた事にやって来たイスカンダル・第三皇女・ユリーシャ・イスカンダルは 『立憲君主制』・ 『君臨すれども
統治せず』を宣言した。

これは自分は大ガミラス帝星の表の顔として外交や内政の矢面に立つが、実質上の支配はガミラス臣民が憲法を決め、
それに従って政治は行うべし、との宣託だった。

『皇室』をどう操ろうか、画策していたレドフ・ヒスはこの宣言を聞いて自らの小ささを思い知った、 そして、本気で
『皇室』 と 『ガミラス・政府』の二人三脚の実行に奔走し始めた。

デスラー政権下でもデスラー自身は政治、特に内政には無関心で 『君臨すれども統治せず』の状態になってはいたが、
非公式なものだったので内政面はヒスが一人でしょい込む形となり、当然、細部まで目が行き届かなくなり、その事が、
秘密警察とも言える 『親衛隊』 の跳梁跋扈を許す事になってしまい、惑星オルタリアの惨劇を代表とする惨禍の原因と
なった。

また、先のテロン艦 『ヤマト』 との戦いではデスラーは事もあろうに 『ヤマト』 を帝都バレラスに誘い込み、バレラス毎、
『ヤマト』 を破壊しようと企んだ。
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そのあまりの身勝手さにレドフ・ヒスはとうとうデスラーを見限り、政権を掌握、ガミラス帝星をまとめ上げ様としたが、彼の
『人望』 の無さが帝星内部に混乱を呼んだ。
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だが、今度は彼の後ろには 『ガミラス・皇室』 が付いてる・・・、そう考えるだけで自分は何と言われ様と彼は全てを掛けて
政務に邁進する覚悟が出来ていた。

その彼の心の拠り所、『ガミラス皇室・女性皇帝・ユリーシャ・ガミロニア』が宇宙の彼方で正体不明の襲撃者の攻撃を
次々と受けているのだ、心配にならない訳がなかった。

ガデル・タラン中将が入室を求めて来た、本来ならタラン将軍はヒス首相の直属の部下では無かったが、ディッツ提督と
並ぶ 『親・皇室・派』 であり、ヒスの相談役の一人でもあった。

「大変です。 イスラン星系において 『皇室・ヨット』 がまた襲撃を受けました。」それはヒスが一番、聞きたくない報告
だった。

「しかし、『猟犬』 UX-01のフラーケン中佐と ドメル・船長の連携作戦でこれを退けました。

そして、今度は襲撃者がはっきりしました。 ダール・ヒステンバーガー・大将です。 ユリーシャ様は隠して措かれるつもり
だった様ですが、私の潜ませておいた密偵が知らせて来ました。」タランはやはり思った通りだった、と言う顔で報告した。

「して、差し向けられた戦力は、やはり、ガイデロール級戦艦・戦隊か?」ヒス首相は投入された敵戦力を聞いた。

「それが・・・。」タランは口ごもった、自分でもこの戦果は信じられなかったからだ。

「どうした、あの ユリーシャ様の事だ、多少の事ではもう驚かんぞ・・・。」ヒスは机の上で掌を組み、微笑した。

「捕獲したのは 『ハイゼラード級』・戦艦・戦隊・二個、四隻、『ゼルグート級・超弩級戦艦』一隻、ヒステンバーガー大将の
旗艦『バル・ガル』です。」タランは半信半疑で答えた。
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「何だと! 『皇室・ヨット』は確かに 『ハイゼラード級』・戦艦をベースにした艦だが、主砲や魚雷発射管の大半を下した
『丸腰』 の艦だ、それが 『ハイゼラード級』・戦艦はともかく、『ゼルグート級・超弩級戦艦』まで退けたと言うのか、護衛の
フラーケンの働きか!」ヒスは 『猟犬』 の餌食になった多数の命を思った。

「それが良く判らないのですが、『戦死者』は敵・味方とも皆無だそうです・・・。」タランも信じられないと言った顔で首を
横に振りつつ報告した。

**************************************************

『皇室・ヨット』による『共栄圏』 内を 『行幸・視察』し終わったガミラス女皇、ユリーシャ・ガミロニアは『行幸の成果』を
報告する園遊会を催した。

それは質実剛健を旨とし、一杯のグラスしか出さないガミラス風では無く、もてなしの料理もふんだんに用意された
イスカンダル風(実は地球風)だった。

賓客一同はその珍味や美酒に酔いしれていた。

しかしながら、招かれた一部の『旧・貴族』達は生きた心地がしなかった。

三度に渡って行われた 『皇室・ヨット』 襲撃事件については何も報告されず、現場で逮捕されたヒステンバーガー・大将
以外、誰も拘束される事も無かったが返ってそれが不気味だった。

そのヒステンバーガー・大将もどこに拘束されているやら、全くの行方不明だった。

辺りが騒めいて、演壇の右端の方に立っていた者から順に姿勢を低くしたので後ろから見るとまるで波が打つ様に
見えた。

彼等は入場して来たイスカンダルの女王、スターシャ・イスカンダルに対して胸の前で手をクロスさせ、膝を着く最敬礼を
していたのだ。
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「ガミラス『貴族』の皆さん。 私はイスカンダルの女王、スターシャ・イスカンダルです。 今、私がここにいるのは・・・。」
演壇に登ったスターシャはアベルト・デスラーとの捻じれた因縁、それに依ってもたらされた、数々の惨禍と悲劇について
語り、そして詫びた。
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「人口の殆ど居ない、イスカンダルはともかく、ガミラス帝星は吸収した諸惑星を含め臣民は膨大な数に登ります。

 
妹・ユリーシャがとりあえず救援して来た惑星オルタリアなど、まだまだ継続的な支援がなければ滅んでしまいます。

ですから、私は皆さまにお願いしたい、『貴族制度』はデスラー・総統によって廃されました、が、今一度、『貴族制度』を
復活させ、『ガミラス・皇室』 を支えて戴けないでしょうか! ユリーシャ・一人ではこの難局は乗り切れないのです。

どうか、皆様のお力をお貸しください!」 ガミラスの誰もが崇拝する神の如き イスカンダルの女王、スターシャ・
イスカンダルが 『貴族』とはいえ、一般・ガミラス臣民に頭を下げたのだ、これは彼等『貴族』 にとっても衝撃的な出来事
だった。

「勿体無い、我等など、どれ程の力をお貸し出来るでしょう、しかし、ここに居る者、全員、『全力でお仕えする事』 を誓い
まする!」マルド・ヴォッテル・大将が応えた。

「有難う、マルド・ヴォッテル・大将、貴方はデスラー政権時には官房長を務めていたわね、皇室を支えるのに相応しい
『力と経験』 を持っているわ。  ユリーシャをお願いします。」再度、ヴォッテル・大将、個人に頭を下げるスターシャ、
崇拝する女王が自分の事を旧来の職務についてまで記憶してくれていたのだ、彼が感激しないはずは無かった。
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そして他の賓客達にもその感激は津波の様に伝わって行った。

「『高貴なるイスカンダル(ルード・イスカンダ)』、『高貴なる女皇(ルード・ガミロニア)』」の歓声で会場は沸き返った。

「今度はユリーシャ本人が皆様にお話しがあるそうです。 それでは皆さん失礼します。 後はユリーシャ、初仕事
頑張ってね。」歓声が一段落するとスターシャはユリーシャに場を譲る合図をした。



                                  126.かの名はアヲスイショウⅡ(ア・ルー)(13)→ この項、続く
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by YAMATOSS992 | 2014-02-21 21:00 | ヤマト2199 挿話 | Comments(2)
 『皇室・ヨット』としての性質上、外見上、武装は最小限度に抑えていたが、 『皇室・巡航・戦艦』・『アヲスイショウⅡ
(ア・ルー)』 として活動している今、その武装は全周位に渡って並みの 『戦艦』など恐れるに足らない程の威力を発揮
出来る状態になっていたのだが、ドメル・艦長は敢えて相手を油断させるため、退避行動に入った。

しかも『皇室・ヨット』の速度はわざと抑えられていたので彼我の距離はみるみる縮まった。

『ゼルグート』級超弩級戦艦はその大火力、490mm四連装陽電子ビーム砲塔三基、十二条のビームが『皇室・ヨット』の
上下左右を擦過した、威嚇射撃だった。
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それでも 『皇室・巡航・戦艦』の艦橋は大きく揺さぶられた。

直後に敵・超弩級戦艦から通信が来た、連絡して来たのは、ダール・ヒステンバーガー、ガミラス帝星大本営作戦部長
だった。

「高貴なるイスカンダル(ルード・イスカンダ)第三皇女、ユリーシャ様、ご無事を御喜び申し上げます。 
ですが、もう限界です。降伏する事をおすすめ致します。」言葉は丁寧だったが、その内容は降伏勧告だった。

「ヒステンバーガー、貴方は 『ガミラス皇室』・初代女皇・ユリーシャ・ガミロニア様に恐れ多くも 『降伏』しろと言うつもり
ですか!」ドメル・艦長が鋭く強断した。

「ガミラスに 『皇室』 など存在してはならない、イスカンダルの方を敬うのはやぶさかではないが、 『デスラー総統』の
代わりに イスカンダルの方が開いた『皇室』 に従う事など断じて出来ん! これはガミラス独自の問題である!」
ヒステンバーガーは愚直な将軍だった。

「そう言う事なら仕方ありませんね。 私がお相手します。」ドメル・艦長が宣言した。

「おお、そのお顔はドメル・夫人、それでは先ほどの指揮は貴女が! これは面白くなって来た、存分に戦われよ!」
ヒステンバーガーはそれだけ言うと通信を断った。

<ダール・ヒステンバーガーか、ガミラス帝星大本営作戦部長・・・。 旧貴族制度の復活を唱える一派の大物だわ。 
しかし、彼に 『女皇』 暗殺を計画出来る度量は無い・・・。 もし、彼が首謀者だったら今、決して名乗り出る様な真似は
しない・・・。>ユリーシャは次の一手を考えていた、今はドメル・艦長に任せておいて大丈夫との確信があったからだ。

『ゼルグート』級超弩級戦艦はその大火力、490mm四連装陽電子ビーム砲塔三基、十二条のビームが『皇室・ヨット』を
直撃した。

しかし、通常の 『ハイゼラード』 級戦艦には無い、元の 『シャングリ・ラー』 でも一基しか備えていなかった、ゲシュタム・
フィールド(波動防壁)発生装置を三基も備えていた『皇室・ヨット』 は艦体をビリビリ震わせはしたものの、攻撃を完全に
受け流した。

「駄目です! こちらの攻撃は完全に無効化されています!」艦長は唯でさえ、高貴なるイスカンダルを攻撃する事に
躊躇いがあったから、『ゼルグート』級超弩級戦艦の大火力が利かないと判るとたちまち浮足立った。

今度は 『皇室・ヨット』が撃ち返して来た。 後部にある四基の副砲に延長砲身を取り付けてビーム砲では無く、ビーム・
カノン砲として威力を増していた。

しかし、いくらビーム・カノン砲として威力を増していたといっても、所詮、280mm口径の副砲では『ゼルグート』級超弩級
戦艦の正面装甲を破る事は出来なかった。
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<こんな、豆鉄砲が利くものか!>ヒステンバーガーはニヤリとすると、配下の 『ハイゼラード級』 戦艦・戦隊を
呼び寄せようとした。

しかし、配下の二隻の 『ハイゼラード級』 戦艦は主砲塔群と上部魚雷発射管群を使用不能にされ、動けば下部魚雷
発射管群やゲシュタム機関に魚雷を撃ちこむと脅され、その場を動けない状態にされていた。

こちらからは見えない次元断層から常に見張られ、いつ攻撃を受けるか解らない、そんな状況の内、
二隻の 『ハイゼラード級』 戦艦は完全に戦意を喪失していた。

<クソッ、『猟犬』 が一緒にいたのか・・・。 『皇室・ヨット』なのに護衛がないのはおかしいと思った、ガル・ディッツ提督、
喰えない男だ・・・。>ヒステンバーガーは自分達が罠にはまったのではないかと考え初めていた。

**************************************************

「しかし、私はまだ負けた訳ではない! この『バル・ガル』の大質量で押し潰してくれるわ! 幸い、敵は停止している、
良い目標だ!」ヒステンバーガーは衝角戦を挑もうとした。

しかし、これこそ、ドメル・艦長以下、『皇室・巡航・戦艦』 の張った罠だった。

「敵は 『罠』 に落ちたわ! 副砲発射!」ドメル・艦長は余計な支持は出さなかった、ベテラン宙雷員達、エリート揃いの
『光の花園』 操作員達を信じていたからだ。

四基の副砲塔からそれぞれ二条づつの陽電子ビームが四方に放たれたが、そのビームは 『バル・ガル』 を狙っていな
かった。

「何をやっている、ヘタクソめ! あっ」艦長は目の前で起こっている事が信じられない様だった。

陽電子ビーム・カノン砲から発射された強力な陽電子ビームは反射板・誘導弾によってその射線を約百二十度位、
曲げられ、更にもう一度、その射線を曲げられた陽電子ビームはドメル・艦長の指摘した 『ゼルグート』級戦艦の弱点が
ある後部甲板に次々と突き刺さっていった。
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しかし、下部から弱点を狙った二条のビームは装甲に阻まれ、虚しく拡散した。

上部から最後尾の砲塔付近を狙った二条のビームの内、一条は砲塔に当たってしまい、やはり弾かれてしまった。

だが、残る一条は目的の装甲の弱い部分を直撃・貫通する事が出来た、これで六基あるゲシュタム機関の内、一つでも
機能を失わせれれば敵艦は戦闘不能になるはずだった。

しかし、突撃を敢行する 『バル・ガル』 の勢いは止まらなかった。

陽電子ビーム・カノン砲を 『光の花園』 に用いるためには、反射板・誘導弾を新たに展開しなおさなければならない。

カノン砲の強力な陽電子ビームを反射・誘導するのは一回が限度だったからである、始めの攻撃に使用した反射板・
誘導弾は既にスクラップになっていた。

だが、もはや新たに 『光の花園』 を展開している時間はないと判断したドメル・艦長は命令した。

「対艦用大型魚雷を連射せよ! 目標 敵超弩級戦艦の前面装甲中央! 弾のつづく限り撃ちまくれ!」

その命令を聞いた宙雷要員達は驚いた。

まさか、あのドメル・船長があからさまな戦闘司令を発するとは思っていなかったからだ。

だが、「『毒を以て毒を制す!』 か、艦長らしい御判断です。」宙雷士官は命令を復唱すると部下達に連射を命じた。

『バル・ガル』 は 『アヲスイショウⅡ(ア・ルー)』が放った対艦用大型魚雷を主砲・副砲を総動員して迎撃した。

しかし、 『皇室・巡航・戦艦』に乗り組んだ老獪な宙雷要員達は秘儀を駆使して迎撃・ビームを潜り抜け、正面装甲の中央に次々と大型魚雷を命中させた。

<舐めやがって! 何でよりにもよって一番装甲の厚い場所に魚雷を集中して来るんだ、この装甲を破れると本当に思っているのか、ドメル夫人!>ヒステンバーガーはドメル・艦長を素人だと侮り、決定的なミスを犯した。

見ると副砲の射界に一本の魚雷が入って来た、しかしその副砲は沈黙したままだった。

「駄目です! 砲に廻せるエネルギーが足りません! 先ほどゲシュタム機関に受けた損害が広がり続けているものと
思われます。」砲術士官が絶望的な報告をした。

さっさと一度撤退し、ゲシュタム機関を修理してから、再度、『皇室・ヨット』 を襲えば良かったのに 『かすり傷』 だと侮って戦闘を続行したのがヒステンバーガーの読みの甘さだった。

見れば頼りの前面装甲板もグシャグシャに変形しており、貫通されるのは時間の問題だった。

「ゲシュタム・ジャンプはまだ出来るか・・・。」無駄と知りつつ、ヒステンバーガーは艦長に聞いた。

「閣下、砲撃も出来ない以上、残念ですが、それ以上にエネルギーを使う、ゲシュタム・ジャンプはとても出来ません。」
艦長は冷徹な言葉を返すしかなかった。

「そうか・・・。 私が自室に入ったら、この艦隊を降伏させてくれ、エル・ハンノガル艦長、今まで、良く私を支えてくれた。
有難う。」ヒステンバーガーは別れの言葉を告げた。

「駄目よ! 貴方は死んでは駄目! まだまだやって欲しい事があるの! ヒステンバーガー殿」見れば艦橋の中央に
一人の女が立っていた。

身体の輪郭が光っていたのでこれが立体映像なのは明らかだった。
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「私はイスカンダル・第三皇女・ユリーシャ・イスカンダル。」その名を聞いた艦橋に居た者すべてが膝を着いて礼をした。

「そして、ガミラス帝星・皇室・初代女皇・ユリーシャ・ガミロニアでもあるわ。」

ヒステンバーガーの顔が屈辱に歪んだ。 

「私はイスカンダルの方を敬うのは当然だと思います、しかし、総統・デスラーが去った後の支配者を我々貴族の中から
選ぶ事をせず、イスカンダルの方が支配権を握るなどとても承認出来る事ではありません!」ヒステンバーガーは何故、
自分が、ユリーシャ暗殺に加担したのか、しゃべってしまったが、ユリーシャは気が付かないふりをしていた。

「私はガミラスの 『支配権』 を握ろうなんて思ってないわよ。」ユリーシャはとてつもない事を言った。

「はぁ、じゃなんで 『皇室』 を開いたりしたんですか? ガミラスの 『支配権』 を握り、思うがままに振舞うためでは
無かったのですか?」ヒステンバーガーは混乱していた。

「私のモットーは『君臨すれども統治(支配)せず。』 よ。 『支配権』を握れば政治・経済・教育・・・ありとあらゆる問題を
一人でしょい込む事になる・・・。

そんなのメンドクサイじゃない!」ユリーシャも負けじと本音を言ってしまった。



                                  125.かの名はアヲスイショウⅡ(ア・ルー)(12)→ この項、続く
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by YAMATOSS992 | 2014-02-15 21:00 | ヤマト2199 挿話 | Comments(7)
 「まもなく、大気圏を離脱します。」航宙士がドメル・船長に報告した。

「よし、第二宇宙速度に切り替えよ!」船長は指示した。

第一宇宙速度はその星の衛星軌道に乗る為の最低速度、第二宇宙速度はその星の引力圏から完全に離れ、惑星間
空間に出る速度を言う。

慣性制御で航行している 『皇室ヨット』 には第一宇宙速度も第二宇宙速度も本来は関係の無い事だったが、
航行の区切りとしてこの命令は出されるのだ。

それはまるで 『宇宙船乗りの儀式』 の様だった。

ドメル・船長が左耳に着けているイン・カムが鳴った、同時に探査主任が叫んだ。

「左舷より大型魚雷 六十六基、、接近、あっ、右舷からも大型魚雷 六十六基が接近しつつあります。」魚雷の映像を
モニターに映し出させたドメル・船長はムゥと唸った。
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敵はこちらからは見えない水平線の彼方から大気圏上層部をスキップする様に魚雷を撃って来たのだ、しかもその数は
片舷、六十六発、『ガイデロール級』 戦艦が二隻づつ、左右の空間に隠れている事が予想された。

しかもこの魚雷の撃ち方はかなり熟練した宙雷員を擁している事を示していた。

ドメル・船長の着けているイン・カムからフラーケンの声が聞こえた。

「ドメル・船長、UX-01は左舷の敵をまず無力化して来ます。」それだけ言うとフラーケンは通信を断った。

「宙雷要員、迎撃用多弾頭魚雷を両舷より二基づつ発射、後部副砲塔も待機!」ドメル・船長は矢継ぎ早に命令を
下した。

「船長・・・。 戦闘はなされないはずでは?」副長がフラーケン艦長が何時までも現れない事に不安を持っていった。

「これはあくまでも 『迎撃』、『戦闘』 では無い、 しかも、相手は無人の魚雷、遠慮は要らないわ!」しかし、すっくと立った
その姿はもはや、穏やかな 『船長』 の姿では無く、屈強な 『艦長』 の姿で、しかも、したたかさを漂わせていた。

宙雷員達は艦橋からかなり離れた艦底に近い部署にいたが、老齢な彼等はドメル・船長がドメル・艦長に変わった事に
いち早く気が付いた。

「あの娘もやっとやる気を出してくれたようね。」発射した迎撃用多弾頭魚雷を分離、その一発づつを的確に敵魚雷群に
誘導しながら老女(?)宙雷員が呟いた。

「『ドメル・将軍の妻君』 じゃ、こうなるのは時間の問題じゃったな。」別の老宙雷員がやはり迎撃魚雷の誘導を行いつつ
言った。

「儂は『光の花園』を展開するものだとばっかり思っておったが・・・。」別の男が疑問を呈した。

「お前はまだそんな事も解らんのか! ホントに 『宙雷バカ』じゃな!」宙雷要員を束ねる宙雷士官が呆れた。

「こんな大気圏に近いところであんな空気抵抗の大きな反射板を持った誘導弾を放ってもまともな誘導は出来ん!
お前はまだそんな事も解らんのか!」

「かなわんなぁ、『教官』には・・・、あ、儂も 『教官』 引退したんじゃった・・・。ハハハッ。」ここにいる宙雷員は皆、一度は
引退した老兵ばかりだったが、その腕は折り紙付きだった。

彼等の操った迎撃用多弾頭魚雷は一発につき二十発の子弾を持つ、だから、片舷二基の魚雷発射管で敵魚雷は
四十発処理出来る計算になる、しかし、百%命中させたとしても二十六発の未処理敵弾が出る、その処理をするのは
後部副砲の役割だった。

魚雷程度、ビーム砲で充分な対処出来る様に思える、しかし、元々ハイゼラード級戦艦であった
『アヲスイショウⅡ(ア・ルー)』 は四基の連装280mm陽電子ビーム砲塔を持っていたが、一方向にはその半分しか
使えない無駄の多い配置であった。

『光の花園』 はその不備を補うための装備であり、これを展開出来れば四基の砲塔全てを有効活用できるのだったが、
これを使用するには少しではあったが準備時間が必要であった。

だが、その時間が取れない時の場合を改装責任者のカウルス・ヘルダー中佐は考えていた。

通常、ガミラス艦のビーム砲塔は左右旋回と僅かな仰角変化が出来るだけだったが、この艦の副砲塔は球状の形態に
造られ、二重の砲座でシンバル支持されていたので全周はもちろん、全天も射角に収めていた。

もちろん、艦体構造物などの障害で射界は一部制限されたが、それでも通常のハイゼラード級戦艦の後部副砲群の
1.5倍の火力を片舷で得ていたのである。

しかし、今回は処理しなければならない魚雷の数があまりにも多かった、だから砲術主任士官は部下の副主任と右舷と
左舷を手分けして迎撃する事にした。
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上部砲塔と左舷砲塔で左舷から迫る魚雷群を、下部砲塔と右舷砲塔で右舷から来る魚雷をたちまち、処理していった。

迎撃用多弾頭魚雷のを誘導する宙雷要員の技術も相まって、撃ち漏らした魚雷は唯の一発も無かった。

<次はどう来る・・・。>エリーサ・ドメルはこの攻撃がこれで終わるとは思わなかった。

<今の内にジャンプしてここを離れる必要がある!>ドメル・船長はゲシュタム・ジャンプして惑星オルタリアから至急、
離脱する必要を感じた。

もちろん、 『アヲスイショウⅡ(ア・ルー)』 の安全を確保する目的が主体だが、もし、万が一、 『皇室ヨット』 が大気圏
上層部で大破して地上に墜落すればまた、オルタリアに被害を与えてしまう、また、 『事故』 で 「襲撃者の船』 が
落ちても同じ結果を生んでしまう、それだけは絶対に避けなければならなかった。

「全力加速、方位、イスラン星系、最大ジャンプ!」ドメル船長の迷いのない的確な命令が艦橋の響いた。

『アヲスイショウⅡ(ア・ルー)』 のゲシュタム・機関が最大出力を出し、艦の前方にゲシュタム・ホール(ワーム・ホール)が出現した。

しかし、 『ゲシュタム・ホール』 の直後に別の船がゲシュタム・アウトして来た。

その艦は山の様に大きく、しかも 『紅く』 染められていた。

「クソッ、」主任航宙士は減速しようとした、しかし、ドメル船長はそれを止めた。

「駄目よ! 今からジャンプを中止してもあの超弩級戦艦に突っ込むのは避けられない! でもゲシュタム・ホールは
僅かだけれど超弩級戦艦の手前に開いているわ、ジャンプは必ず出来る!」

「了解! 最大加速を維持します。」主任航宙士は不安どころかある種、爽快な気分を味わっていた。

対してゲシュタム・アウトして来た超弩級戦艦の艦橋はパニックに陥っていた。

本来、彼等は惑星オルタリアから飛立って来る、 『皇室・ヨット』 を衛星軌道上で戦艦部隊で迎撃し、それでも仕留められ
なかった時は超弩級戦艦でその進路を塞ぎ、ゲシュタム・ジャンプ出来ない様に足止めした上で撃滅する作戦だった。

だが、ドメル船長の指揮する 『皇室・ヨット』は衝突するかもしれない超接近ゲシュタム・ジャンプを敢行したのだ。

それはほとんど 『皇室・ヨット』 が超弩級戦艦の艦体に吸い込まれてゆく様だった、そして艦がエネルギー球と化して
空間に消える時、僅かに空間を走るのだが、それは超弩級戦艦の艦体に突入した反対側に艦体を貫き、虚空に消えた、
が、超弩級戦艦に損害は全くなかった。

「直ちに空間航跡をトレースしろ! 『皇室・ヨット』を追う、第一、第二・戦艦・戦隊も追従せよ!」提督席に座った男は肝の
据わった男だった。

艦長以下、この超弩級戦艦 『バル・ガル』の艦橋要員がパニックに陥る中、 この男は唯一人、冷静に状況を分析、取る
べき行動を指示していた。

男の名はダール・ヒステンバーガー、ガミラス帝星大本営作戦部長だった。
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**************************************************

次の訪問惑星 『ローム』 のあるイスラン星系に 『皇室・ヨット』は目的地である惑星ロームから遥かに離れた空間で敵を
待ち受けていた。

今度は 『光の花園』 も一セット展開させ、戦闘に備えていた。

これは万が一、戦闘が拡大しても惑星ロームに損害を与えない為の配慮でもあったが、襲撃者を確実に無力化、確保
する為の作戦でもあった。

近くに惑星があると襲撃者に隠れ場を与えてしまう恐れがあったからだ。

「ユリーシャ様、私が小破させて来た 『戦艦・戦隊』 は 『ガイデロール級』ではなく、 『ハイゼラード級』でした。」艦隊Netで
連絡して来たフラーケンは驚くべき事を言った。

「オルタリアで遭遇した先の 『ガイデロール級』と同じく前部主砲塔群と前上部魚雷発射管は使用不能にして来ました、
多分、あの状態ではジャンプは出来ないでしょう。

後はガル・ディッツ提督に救助と責任者の確保を要請をしておきました。」

「フラーケン、 『ハイゼラード級』と言うことは、ディッツ提督がこの一連の 『皇室ヨット』 襲撃事件の裏にいるかもしれ
ないって事になるわよ?」

この 『皇室ヨット』・『アヲスイショウⅡ(ア・ルー)』 も元々 『ハイゼラード級』、ガミラスの戦艦群でも新型の330mm陽電子
ビーム・カノン砲を備え、打撃力では超弩級戦艦ゼルグート級に勝るとも劣らない力を持っていた、加えて三十三門も
ある魚雷発射管は 『ガイデロール級』と同じ航空機動戦力を持っている事を意味していた。

ユリーシャにはそんな新型戦艦を派遣出来る力のある人物はガル・ディッツ提督しか、考えられなかった。

「失礼します。女皇(ルード・ガミロニア)、私の知る限りでは 『ハイゼラード級』や 『ガイデロール級』 を動かせる』人物が
もう一人います。」ドメル船長の発言だった。

「それは・・・?」ユリーシャが質問をしかけた時だった。

「敵艦隊がゲシュタム・アウトしました。 敵は三隻です! 超弩級戦艦1、・・・こ、これは 『ゼルグート』級、
『ゼルグートⅡ世』 です。残る二隻は 『ハイゼラード級』です。」探査主任が報告した。
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「この三隻を一度に相手にするのは私一人では無理です。『ハイゼラード級』二隻は私が引き受けます。
ですが、 『ゼルグート』級のお相手はユリーシャ様、お願い致します。」フラーケンは徹底した現実主義者だった。 

出来ると判断すればどんな困難な任務も遂行するが、無理だと判断した事は決してやろうとはしなかった。

「ユリーシャ様は 『女皇』、如何なる場合も 『戦闘』 などと言う下々の行為をすることなど考えられません! 
『皇室・巡航・戦艦』・『アヲスイショウⅡ(ア・ルー)』 の指揮は私が執ります。」ドメル『船長』が 『艦長』 に変わった瞬間だった。

艦内が歓声に溢れた。 乗組員達も皆、この瞬間が訪れるのを待っていたのだ。

確かにフラーケンは百戦練磨の達人だ、しかし、所詮は実体はUX-01にいて自分達と運命を共にしているわけでは
ない、この部分は艦隊Netではどうしても埋められない溝だった。

だが、エリーサ・ドメルが『艦長』に就任してくれれば、話は別だった、乗組員達はエリーサ・ドメルの 『艦長』 宣言を
絶大な支持の下、受け入れた。

「エリーサ、無理はしないで、私が艦内Netに潜れば、一人でこの船を操る事も不可能ではないのよ。」ユリーシャは
あれ程 『戦闘』 を嫌がっていたエリーサの気持ちの変化が判らなかった。

「高貴なる 『女皇』 (ルード・ガミロニア)有難う御座います。 しかし、我等、乗組員は 『女皇』 のお役に立つ為に乗艦して
おります。 そして 『人の力』 は数が集まる程、大きくなります。

確かに 『女皇』 お一人でもこの 『皇室・巡航・戦艦』を操れるのかもしれません。 でも全乗組員が力を合わせた時の
様には行きません。  『人の力』 を侮り無き様お願い申し上げます。」

ドメル艦長はユリーシャの驕りをさりげなく諌めた。

「判ったわ。ではあの化物、『ゼルグート』級超弩級戦艦をどう料理するつもり? 敵とはいえ、『戦死者』 を出すのは
禁止よ!」ユリーシャが念を押した。

「それは良く存じて居ります。 私が 『艦長』 を引き受ける気になったのもユリーシャ様の 『戦闘においても決して
敵味方、両方に戦死者を出さない』 事を徹底する主義に感銘を受けたからです。

実は私の亡夫、将軍・ドメルも『ゼルグート』級超弩級戦艦 『ドメラーズⅢ』に乗艦していました・・・。

詳細は省きますが、あの艦の重装甲はガミラスに存在する全ての戦艦の砲を弾きます。 魚雷も余程当たり所が良く
なければ損害を与えられないでしょう。

但し、欠点が無い訳ではありません、重装甲故に艦体が重くなり機動性は御世辞にも良いとは言えません。

そして、これが最大の弱点なのですが、最後部の砲塔は六基あるゲシュタム機関の間に無理やり割り込ませる形で設置
したため、付近の甲板の装甲が薄いのです。
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この部分なら本艦の280mm陽電子ビーム・カノン砲でも撃ち抜けるでしょう。 但し、その面積は狭く、狙撃するのは
非常に難しいのですが・・・。」ドメル・艦長は口ごもった。

しかし、次の瞬間、驚くべき、計画を発表していた。「『光の花園』をもう一セット展開、陽電子ビーム・カノン砲のビームを
二段階に屈曲させられれば狙撃は可能です。」

「無理です! 一度は反射出来るでしょうが、その一度目で反射板・誘導弾の反射システムは焼け切れます。」
『光の花園』要員の先任士官が反対した。

「一度、反射出来れば充分よ。 ノヴァル、それでは命中させる自信がなくて?」ドメル・艦長は先任士官を挑発した。

「で、出来ますとも、但し、反射システムが焼け切れますから反射角度が浅くなります。 あっ、そのために・・・。」
ノヴァルと呼ばれた士官は直ぐに全てを悟ったようだった。

「娘っ子も少しは出来る様になったようじゃな。 安心せい! 儂らが反射板・誘導弾の位置は全力で確保する。
 
お前達は心おきなく、反射角度の調整に力を尽くせ!」宙雷管制室から檄が飛んだ。

「副砲はカノン砲身を装着して待機! 百八十度回頭、艦尾を敵、超弩級戦艦に向ける、ゲシュタム・フィールドを最大
出力で艦尾方向に展開、前進半速、こちらに引き付けるのよ!」

ドメル・将軍が軍団の指揮の達人だったらエリーサ・ドメル艦長は個艦指揮の天才だった。



                                  124.かの名はアヲスイショウⅡ(ア・ルー)(11)→ この項、続く
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by YAMATOSS992 | 2014-02-13 21:00 | ヤマト2199 挿話 | Comments(2)
 議会の入り口の大扉を守るパチュとペチュは階段下に止まった車が何だかガミラス製の様な気がして眉をひそめた。

彼等は以前、仕事の都合でガミラス帝星の首都、バレラスに赴いた事があり、その時、走っていた車のデザインが
今、目前に停車している車とそっくりなのだ。

車の扉が空き、イスカンダル・第三皇女・ユリーシャ・イスカンダルが、降車した。

しかし、彼等が驚いたのはユリーシャより先に降車して彼女の補助をしていたのは、女性ではあったが、ガミラスの親衛
隊員の制服を着ていた事だった。

更にもう一人、黒ずくめの服装をした女性が降りてきたが彼女もガミラス人だった。

あの ”呪われた青い肌” は忘れようもない・・・。

イスカンダル・第三皇女・ユリーシャ・イスカンダルが三人を引き連れて議会場の入り口の大扉を守るパチュとペチュの
所に来ると言った。

「イスカンダル・第三皇女・ユリーシャ・イスカンダル、第一回オルタリア講和会議参列の為、今ここに参上した! 
扉を開けなさい。」

「後ろにいるガミラス人は何だ! ”青い肌の悪魔” はここを通すわけには行かない!」パチュとペチュは扉を背に
儀仗用の槍を構えた。

「君たちが任務に忠実なのは良く判ったわ、それにガミラスを如何に憎んでいるのかも・・・。 でも、私達は全てを越えて
前に進まなければならないの。 未来のために!」 ユリーシャの言葉は力強かった。

「良い! お前達は下がっておれ。」何時の間にか扉は開き、中から老人が一人出て来た、そして老人が外に出ると扉は
また閉まってしまった。

「この有様、御説明願いますかな、ユリーシャ様?」長老は前に彼女がオルタリア人とファースト・コンタクトした時に
彼女を救ってくれた男だった。

「まずは、紹介からね。 こちらはムド長老、ここ、ラシュラム市の長老よ。 私の左後にいるのは 『エリーサ・ドメル』、
今回の訪問で使ってる 『皇室・ヨット』・『アヲスイショウⅡ(ア・ルー)の船長よ。そして私の補佐官でもあるわ。
一番後ろの左右を固めているのは元・親衛隊員、エミル・ラストフ少尉とダフラ・ドーラン少尉よ、彼女達は私の護衛、でも気にしないで、私が 『ガミラス・皇室の女皇』 である『証』みたいな物で付いて来てるだけだから・・・。 武装もしてないで
しょ。」ユリーシャはさらっと自分の本当の身分を明かした。

しかし、長老にとっては 『エリーサ・ドメル』 の存在の方が気になった様だった。
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「 『エリーサ・ドメル』・・・『ドメル・将軍』 の縁者の方ですかな。」長老は目を見張った。

「はい、『妻』 です。 残念ながら 『夫』 は戦死しましたので 『未亡人』 ですが・・・。」エリーサが悲しげに応えた。

「ああっ、良い人は皆、早く死んでしまう、おおっ、何て事だ。」長老はその場に泣き崩れた。

惑星オルタリアを征服したのはドメル・将軍の第六空間機甲師団だった、だから本来なら 『征服者』 として憎まれるべき
存在だった。

しかし、彼は敵を降伏に追い込んだ後、抵抗を封じる為、無力になった相手を更に攻撃するのがガミラスの常套手段
だったのにドメルはそれをを行なわなかった。

当時、オルタリアはゲシュタム・ジャンプは行えないものの強力な宇宙艦隊を持っていた。

そして最終的には壊滅させられたものの、ドメル・将軍を、悩ませる程の善戦をした、ドメル・将軍はその事に敬意を
払い、征服後も尊大な態度は執らず、ガミラス帝星から正式な総督が赴任するまで隷下の艦隊でオルタリアを防衛して
くれた。

最初、オルタリアの人々は自分達が威嚇されていると思ったが、別の部隊の艦が、オルタリアが降伏したのを良い事に略奪を行うため、来襲した時、ドメル・将軍は有無を言わさず撃破、オルタリアを守った。 

もし、彼が周辺を固めていなければ、オルタリアは簡単にこうした略奪者の餌食になるところだったのだ。

長老はこの事件があった時、自分の街を襲ったガミラス艦を撃破したドメル・将軍と直接、会っていた。 
ドメルは自軍の非道を詫び、二度と同じ行為をさせない事を誓ってくれた。

ガミラスは憎い、しかし、この行為のおかげでドメル・将軍の名は尊敬すべき者としてオルタリア人全体に伝わって
いった。

「 『ドメル夫人』 なら大歓迎じゃ、さ、オルタリアの代表者が内で待っておる、扉を開けよ!」長老が大声で呼ばわった。

「承知しました。」パチュとペチュが扉を再び開き、一行は内に入ろうとした。
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しかし、ユリーシャとエリーサは簡単に通したが「親衛隊員の入場は認めてたまるか!」とエミルとダフラの入場は
拒否した。

「やめよ! パチュ、ペチュ、この二人はその青い色の肌、憎むべき親衛隊の制服を隠す事無く、我等の前に現れた、
しかも殺されるかもしれないのに丸腰でだ、詳しい事情は後でユリーシャ様がお話し下さるはず、今は何も言わず
この二人の勇者を通しなさい。」長老が命令した。

パチュとペチュは何も言わず、頭を下げると、塞いでいた道を開け、エミルとダフラの通行を許した。

一行が通ると扉は再び閉じられた。

**************************************************

 一行が議会の席場に着くとユリーシャは辺りを見回して言った。 「これだけの机と椅子を手配するのは大変だった
でしょう・・・。」そこにあった机は長大な木製の立派なものだった。

流石に椅子は使える物を掻き集めて来たと見えて造りは立派だったが、形は揃って居なかった。

「お恥ずかしい、しかし、この机はラシュラム市の議会で使われていたものです、あの 『惨禍』 の時、議会の建物は
この通り破壊されましたが、先程の入り口の 『扉』とこの 『机』 は残りました。

 この 『扉』 と 『机』は 『ラシュラム市』 の 『誇り』 です。」長老・ムドは晴々とした顔で言った。

しかし、ユリーシャ一行が案内された議会の部屋の壁や天井は殆ど無くなり、青天井になっていた。

惑星オルタリアの太陽が議会場を明るく照らしていた。

長大な長さの机の長い一辺にユリーシャとドメル補佐官が座り、その後ろに、女衛士、エミルとダフラが立っていた。

反対の机の長い一辺にはオルタリアの生き残り勢力の代表達、八人程が座っていた。

「私はイスカンダルの第三皇女・ユリーシャ・イスカンダル・・・。」ユリーシャはお決まりの挨拶と部下の紹介をした。

オルタリア側の代表もそれぞれ自己紹介をした
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「この方が辛気臭い建物の中で議論するより、余程、良いかもね。」ユリーシャは青天井を見上げて言った。

集まったオルタリアの生き残り勢力の代表達は自分たちが侮辱されたかの様に感じ、険しい表情になった。

「私がこれから話す事、これは厳しい事ですが、事実です。 私はこれまでに起こった事、現状、これから行わねば
ならない事を全て、白日の下にさらします。」

ユリーシャはガミラスのデスラー政権下で何が行われていたか、つぶさに語った。

イスカンダル主義の間違った解釈による周辺星系への侵略が行われ、親衛隊によって一等ガミラス臣民にすら容赦ない
弾圧が加えられた事、イスカンダルが呼び寄せた銀河系ゾル星系の惑星テロンの船、宇宙戦艦 『ヤマト』 を撃破しようと
してデスラーは帝都バレラス毎、 『ヤマト』 を葬ろうと画策、返り討ちにあって行方不明になった事、暴虐の限りを尽くした
親衛隊もその時、大半は宇宙の藻屑になった事を伝えた。

「今や、ガミラスに拠って造られた 『共栄圏』は完全に無政府状態です。 ガミラスのくびきを離れ、自由になるには
今は最高の状況です。」ユリーシャは核心に迷わず触れた。

「しかし、『独立』 出来るのは有難いが、今の状況では、我々に自分で立ち上がる力はもうない・・・。」ベルド地区の
代表が困惑して言った。

「では諦めて、『滅びの道』 を歩むのか?」何時の間にか、ザルツの元・統括官・カノン・バーレルが崩れた壁を越えて
協議の場に入って来た。

「バーレル元・統括官、あなたは呼んでいないわよ!」エリーサが咎めた。

「いいじゃない、別の被支配惑星の現状を語ってもらうのも悪くないわ。 それより、その腕、どうしたの?」ユリーシャは
バーレルの左手首から先が無くなっているのに気が付いた。

「単なる事故です。 お気になさらないで下さい。」バーレルは無くなった左手首を撫で廻しながら言った。

「申し訳ない、バーレル氏は私の居た地区で説得活動中に若者の先走りで行った攻撃で負傷されました。 しかし、
氏の部隊は一発も撃ち返さなかった・・・。代わりに更に説得の言葉を掛けて下さった、おかげで多数いた負傷者は全員
救助され、私も今、オルタリアの未来を語るこの場にいる事が出来ます。」ラッド地区の代表が弁明、感謝した。

「ユリーシャ様、皆様に本当の事を伝える時が来たと私は思うのですが・・・。」カノン・バーレルはユリーシャに迫った。

「フーッ、仕方ないわね。 でも、確かに何時までも ”秘密” にしておく訳にはいかないわ。」ユリーシャは覚悟を決めて
立ち上がった。

「我はイスカンダル第三皇女・ユリーシャ・イスカンダル、これは本当の事でした。 しかし、それはもはや過去の事、
今はデスラーが去り、親衛隊もいなくなってガミラス帝星は平和を取り戻しました。 しかし、デスラー総統のカリスマ性は
強大でそれがいきなり失われた衝撃はガミラス帝星に大混乱をもたらしました。

ヒス副総統だけではこの混乱を収める事が出来ない状況にありました。

そこで私はガミラスに 『皇室』 を開く事にしました。 彼等の 『心の支え』 になるために・・・。

だから今の私の本当の肩書きは 『ユリーシャ・ガミロニア』 です。」その言葉を聞いたオルタリアの代表一同は混乱した。

「惑星ザルツはデスラー総統を支持する勢力の一つだった。

オルタリアと違い、”兵士” を供給する事でデスラー政権下では被支配惑星の内では優遇される立場にあった。

だが、今度の政変でガミラスの膨張政策に歯止めがかかり、反対に 『軍縮』 が必要になった。」バーレルが無念そうに
言った。

「 『軍縮』 と言う事は惑星ザルツの存在意義は無くなったと言う事、すなわち、 『リストラ』 されたと言う事だ。」

「だから、ガミラスに 『皇室』 が出来てユリーシャ様が 『女皇』成られたから, 『軍縮』 の方向になった、と逆恨みした
我等はここオルタリアの救護に向かっているユリーシャ様の『皇室・ヨット』を二度に渡って襲撃したが、見事、
撃退された、しかも、襲撃部隊の人的損害は皆無、と言う、完敗だった。

しかし、女皇・ユリーシャ様は ”我等の罪は問わない” と仰せられた。

『混乱』を最小限度にする為に 『無かった事にする。』 とまでおしゃって下さった。

そして、救助された後、志願してオルタリアに残って居られた皆様の救援とこの会議への招聘を行ったのです。 

さっ、ユリーシャ様、後をお願いします。」カノン・バーレルはそれだけ言うと議場の隅に引き下がった。

 ユリーシャは立ち上がると沈黙したまま、深く頭を垂れた、そして暫くそのままの姿勢でいた。

「ユリーシャ様、頭をお上げ下さい。 確かに、この惑星に大損害を与えたのはガミラスですが、あなたがそれを負い目に
思う必要はありません。

それどころか、貴女は我らに救済の手を差し伸べて多くの民を救って下さった。

すべてはデスラーとその取り巻きが行った愚行です、あなたのせいではありません。」長老・ムドが取り成した。

「私は 『過去のガミラスの罪』を詫びようと思っている訳ではありません、どちらかと言えばこれから、皆様に味わって
貰わねばならぬ苦難についてです。」ユリーシャが思わぬ事を言った。

「私は極力、デスラー総統が作った 『共栄圏』を維持して行くつもりです。 何故なら急激な変化は必ずや政治体制に
歪を生み、その損害は必ず、『弱い者』の上に及ぶからです。

もはや、デスラー総統の愚行を繰り返してはなりません、しかし、彼の全てを否定し、政治を完全に刷新しようとすれば、
必ずや、犠牲が出ます。

だから、変革は少しづつ、ゆっくりとした変化にしたいと考えています。

ただ、一等臣民、二等臣民と言う区別は止めさせます。 人はすべからく平等であるべきだからです。

そして、私が維持しようと思っている 『共栄圏』 が気に入らなければ 『独立』 するのは皆さんの自由です。

ただ、この場合、選択肢は二つあると私は考えています。一つは完全に 『独立』 してガミラスと縁を切る事。

もう一つは 『独立』 はするが、 『共栄圏』 には残る事。 この場合、ガミラス帝星はもちろん、他の『共栄圏』 の惑星の
援助を受ける事が出来ます。

ですが、この場合、僅かですが 『税金』 を頂きます。 『共栄圏』 の 『防衛』は当面はガミラス帝星の責任ですが、
その運営・維持には資源が要りますので。」ユリーシャはビジネス・ライクな口調で壮大なビジョンを語った。

議会上は騒然とした雰囲気に包まれた。

「結論は今すぐ出す必要はありません。 皆さんでゆっくり話し合って決めて下さい。」ユリーシャは立ち上がると一行を
引き連れてオルタリアを後にした。



                                   123.かの名はアヲスイショウⅡ(ア・ルー)(10)→ この項、続く
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by YAMATOSS992 | 2014-02-08 21:00 | ヤマト2199 挿話 | Comments(0)
 惑星オルタリアは衛星軌道上から見る限り、美しい自然の色を保っていた。
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しかし、ユリーシャが着陸艇で地表に向かうと親衛隊によって無残に破壊された都市、それも高度な文明を持っていた
事を表す壮麗な都市だった事が窺われた。

<ハイドレ・ギムレー・・・。 生きていればこの惨状を一緒に見て廻らせ、謝罪させる事が出来たのに、・・・。>
ユリーシャはこの惑星オルタリアの 『殲滅』 を指揮した親衛隊・長官が第二バレラスで戦死したのを残念に思った。

<彼は唯、死刑になるのには重すぎる罪を犯した、一生を掛けてその罪を償って貰わねばならなかった・・・。> しかし、同時に、この罪はガミラス帝星が犯した罪であり、その指導者を引継いだ自分の罪でもある、とユリーシャは認識して
いた。

都市周辺の山河も焼き尽くされ、損害を受けていない人を寄せ付けない険しい山々とその周辺の森林との対比が如何に
親衛隊の破壊が周到で徹底した物であったのかを彼女達に理解させた。
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ユリーシャは何か何時もと違う雰囲気に後ろを振り返った、そこにはいつもの女衛士が二人直立不動で立っていたが、
その頬には涙が伝わっていた。

「貴女達にも判るのね・・・。エミル、ダフラ・・・。」彼女達は沈黙したままだったが、ユリーシャは自分の部下が元親衛隊員
だったとはいえ、この惨状に 『涙』 する人の心を持っていた事が嬉しかった。

普段、衛士は感情を表に出す事など決して許されない、しかし、任務に忠実な彼女達ですら 『涙』 するしかない程、惑星
オルタリアは破壊されていた。

「しかし、住民の姿はまるで無いわね。 本当に親衛隊に殲滅されてしまったのかしら・・・。」 ユリーシャは疑問を口に
した。

「女皇・ユリーシャ・ガミロニア、進言してもよろしいでしょうか?」発言を求めたのは 『惑星ザルツの愛国者』だった。

彼はこの惑星オルタリアで部下と共に 『脱走』 する計画になっていたのでその下見にユリーシャに同行していたのだ。

「何ぁに? 言って御覧なさい。」ユリーシャは実戦経験豊富なカノン・バーレルの意見を聞いてみる事にした。

「もし、味方が少数で敵は大兵力、しかも装備も敵の方が圧倒的に勝れていると考えたら、私だったらじっと隠れて様子を
見ます。 気配は微塵も出さないでしょう。」バーレルは言った。

ユリーシャは確かにこの着陸艇が如何に無力なものでも、今のオルタリア人にとっては戦艦がやって来た様に感じられる
のかも知れない・・・と、考えを改めた。

「オルタリア人に気付かれない様、探査用の超小型ドローンを四方に放って、それが済んだら前の ”広場の真ん中”に
着陸させなさい。」ユリーシャは敢えて姿を見せてオルタリア人の好奇心を煽る事にした。

果せるかな、トンボ位の大きさの ”探査ドローン” が送って来た映像には ”小銃” や ”対戦車ミサイル発射筒” を持っているオルタリア人達がこちらを窺っている様子が写っていた。

そして、更に高い上空から観測した熱線探査映像には熱線を放射している大きな塊が蠢いていた。

可視光線を観測するドローンを潜入させてみると多数の女・子供、負傷した住民達だった。

その地獄絵図には戦闘慣れしているバーレルさえ、嘔吐感を抑えるのがやっとと言う位、酷いものだった。
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**************************************************

  ユリーシャは救急箱を手にすると彼等の元へ向かおうとした。

「高貴なる女皇(ルード・ガミロニア)、危険です。 それにそんな救急箱一つで何が出来るのです。 出直しましょう。」
バーレルが止めた。

「今、苦しんでいる人々がそこにいる! 僅かだけど手当ての手段も私は持っている! ここで行かなければ私は私から
逃げた事になってしまうわ。」ユリーシャの決意は固かった。

そして、こうも言った。

「私達がここに来た事を彼等はもう既に知っている・・・。 私達がここを去ったら、直ぐに移動しようとするでしょう。
その時、足手まといになる者達は切り捨てられかねない・・・。 だから、私が足止めしている間に貴方達は船に戻って
今度は 『アオスイショウⅡ(ア・ルー)』 毎、此処に来て本格的な救難活動をして欲しいの。」 ユリーシャの懇願に皆、
声も出なかった。

ユリーシャが惑星オルタリアの大地を踏むと二人の女衛士も後に続こうとしたが、ユリーシャは二人を止めた。

「エミル、ダフラ、危険を承知で同行してくれるのは有難いわ。・・・でも、気を悪くしないで、貴方達は一等臣民、もはや、
その肩書きに意味は無いけれど、その青い肌はどうしようも無く彼等の憎しみを煽るだけだわ。 私一人で行く方がずっと
安全なの。 御免なさい。 それに、この艇が母艦に戻るのに操縦者が必要でしょ。」ユリーシャが優しく諭した。

「悔しいんです。 過去とは言え自分の上司がここまで非道な男だったとは。 それを疑いもせず、ついて行った自分が
許せない、殺されてもいいから、私も連れて行って下さい!」エミル・ラストフ少尉が懇願した。

「有難う、でも駄目よ。 貴女は貴女の任務を果たしなさい。」ユリーシャは再度、彼女の同行を禁止した。

「エミル、私達の任務は本艦に帰って迅速に救難活動の準備をして、また、本艦毎、此処に帰って来る事よ。
あまり女皇を困らせては駄目よ。」相方の女衛士、ダフラ・ドーラン少尉が諌めた。

着陸艇が広場から飛立つとそこには両手に大振りの救急箱を持ったユリーシャ、一人が佇んでいた。

ユリーシャはその場でまず、大声で呼ばわった、「我はイスカンダル・第三皇女・ユリーシャ・イスカンダル!!、オルタリアの
救援に参りました!」

しかし、先ず飛んで来たのは銃弾の雨だった。

ユリーシャは目を瞑ってそれに耐えた。 カノン・バーレルの時は護身用小口径拳銃だったが至近距離だったので身体が
跳ね飛ばされた。

しかし、今回は距離があったので弾は軍用の大口径だったが何とか耐えて、歩き続ける事が出来た。

次には対戦車ミサイルが飛んで来た、流石に今度はユリーシャも吹き飛ばされて大地に叩きつけられ、持っていた
救急箱の一つの止金」が壊れ、中身が辺りに飛び散った。

次の瞬間、ユリーシャはブチ切れた。

無事だった救急箱を後ろに隠すとつかつかと銃やミサイルを撃って来たと思われる崩れた壁に向かって歩み寄ると言い
放った。
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「意気地なし! いい! 貴方達は自分達の仲間の助かる確率を半分にしたのよ!」ユリーシャは無事な救急箱と
壊れた救急箱を交互に示した。

そして肩を怒らせて壁の割れ目を越えた。

そこには銃を手にしたオルタリア人が多数いたが、ユリーシャは完全に無視して負傷者の所に向かった。

まず、ユリーシャは手前にいた左半身に火傷を負った男の直ぐ側に膝を着くとその重度の火傷の表面に持って来た治療
キットの中から人工皮膚再生ガーゼを取り出すとそっと傷に被せた。

十秒程待つとピンセットでそっと、そのガーゼを引き剥がした。 10×20㎝位の狭い範囲ではあったが、男の火傷は無くなり、綺麗な肌に戻っていた。

「『魔女』 だ・・・、 『魔女』 が来たんだ・・・。」そんな奇跡を受け入れられない男達がユリーシャに再び銃を向けようとした。

ユリーシャは心の中で覚悟を決めた、< 私の『守護天使』、個人用ゲシュタム・フィールドの作動限界はとうに越えて
いる、次に撃たれたらもう防げない、でも私はこの惨禍を生んだガミラスの女皇として最後まで責任を取って治療を
続けるだけ・・・。>

男達のそんな動きを無視して治療を続けるユリーシャと再度、銃撃しようとする男達の間に小さな女の子が両手を広げて
割って入った。

「『女神』 様の邪魔をしないで! 私のおとうさんを助けて!」どうやら、ユリーシャが今、治療している男の娘らしかった。

たぶん、酷い火傷を負ったため、余命はもう無いと思われていたのだろう、それをユリーシャが治療できる可能性を示し
たのだ。

それでもまだ銃を構えた男達は引き下がる気配を見せなかったが、横から男の銃の銃身をむんずと摑まみ、銃を下に
下げさせた者がいた。

「長老!」武装していた男達は慌てて引き下がった。

「高貴なるイスカンダル(ルード・イスカンダ)、伝説は本当じゃった、 『あまねく星々、知的生命体の救済』 、おお、惨禍に
覆われ、滅びの道しかないと思われた時、 『女神』よ、あなたは舞い降りて下さった。 哀れなる我等にお力を!」長老は
正座してユリーシャに祈りを捧げた。

「我は 『イスカンダル第三皇女・ユリーシャ・イスカンダル』、決して ”女神” などではありません。 しかし、皆さんを出来る
限り救いたいと言う気持ちはだけは持っています。

まもなく、私の 『船』 が本格的治療設備と医師団を乗せてここに来ます。 どうか、それを受け入れて我々に貴方々の
治療をさせて下さい。」ユリーシャはペコリと頭を下げた。

「おおっ、もったいない 『女神』さま・・・、いや、 『高貴なるイスカンダル(ルード・イスカンダ)』 、それはこちらからのお願い
です!」長老は再度、ユリーシャを拝んだ。
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「『高貴なるイスカンダル(ルード・イスカンダ)』万歳!」誰かが大声を張り上げた。そしてそれは合唱の様に重なり合い、怒涛の様な歓声となって廃墟の街に響き渡っていった。

**************************************************

 「これから、志願兵を募る!」カノン・バーレル・ザルツ統括官はつい、昨日まで自分が率いていた 『戦艦・戦隊』 の
戦艦・乗組員、三百名に要請を行っていた。

「『任務』は惑星オルタリア全土に措ける生存者の確認と救助、生存集団の把握とその集団とユリーシャ様が交渉出来る
様にする 『下地』 作りだ。

簡単な任務と考えるかもしれないが、最初はユリーシャ様ですら攻撃を受けた。」ここでバーレルは言葉を切った。

「しかし攻撃を受けても、決して反撃はしてはならない! 同僚が殺されても撃ち返さない、自分の身をオルタリアの
自然の猛威から守るのに使えるのはザルツ兵常用の軍用ナイフだけだ。

更にこの 『任務』 には 『報酬』 も 『名誉』 も無い、最悪の 『任務』だ、それでも良いと言う者だけ一歩前に出て欲しい。」
カノン・バーレルは演壇上で一歩前に出た。

しかし、他に誰も一歩前に出てくれる者は居なかった。

「フフッ、当然だな。 さてはて、儂、一人でどこまで出来るか、やってみるしかないな・・・。」バーレルは自嘲した。
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「統括官・閣下、あなたは御一人ではありません! 私も行きます。」最後尾で手を振っている若い伍長がいた。

「私はデスラー総統を今でもお慕いしております。 でもこの惑星オルタリアで 『デスラー総統の名』 を騙って行われた、
親衛隊の暴挙を許す事は出来ません! 女皇の存在は認めたくありませんが、『惑星オルタリアを救済』 しなければ
ならないと考える点はたぶん、『デスラー総統』が健在であられても同じ様に考え、行動なさっていた事でしょう。」
若い伍長が決意を述べた。

「私も参加させて下さい。」最前列の右端にいた士官が一歩前に出た。

「私はガミラス臣民として、同じガミラス臣民を助けたい! ただ、それだけです。『報酬』 も 『名誉』 も必要ありません!」
その言葉は簡潔だった。

「『名誉』 はあります! この惨状を見て見無いふりをしたたら、私は『私自身の名誉』 を認める事が出来なくなります。」
別の士官も歩み出た。

「私も!」、「私も!」、志願者は次々に増えて行き、バーレルが気が付くと全員が志願していた。

「有難う、みんな・・・。」バーレルは涙をぬぐうと言った。 「ザルツ、万歳!(ガーレ・ザルツ)! 小隊編成が出来次第、
出発して貰う、それまで各自待機、惑星オルタリアの情報を出来るだけ叩き込んでおけ!」

「ザルツ、万歳!(ガーレ・ザルツ)」皆が唱和した。

兵士達が講堂を出て行くと次官がバーレルの側に来て言った。

「統括官、ユリーシャ様との打ち合わせではあなたはザルツに帰って政治体制の再編成をする予定だったはず
ですが?」

「お前が帰ってその仕事をやれば良い、元々、儂は何でも次官のお前まかせで何もしとらんかったではないか、独立惑星
ザルツの初代大統領にはお前の方が相応しい。」バーレルは恐ろしい事をヘロッと言った。

「とんでもない、私なぞ、あなたの様なカリスマ性は微塵もありません。」次官は大いに慌てた。

「少しはユリーシャ様を見習って、頭を使え、ヴォルト・ガンツ事務次官。」バーレルはガンツに秘策を授けた。



                                   122.かの名はアヲスイショウⅡ(ア・ルー)(9)→ この項、続く
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by YAMATOSS992 | 2014-02-05 21:00 | ヤマト2199 挿話 | Comments(0)
フラーケンは『アヲスイショウⅡ(ア・ルー)』 を敵の攻撃を物ともせずに接近させた、もとより、330mm陽電子ビームでは
通常出力のゲシュタム・フィールドですら打ち抜けない、だから今度は全艦を包むゲシュタム・フィールドの出力を最大に
し、接近して威力の増した330mm陽電子ビームと、『光の花園』 が撃ち漏らした大型魚雷を防ぐ事にした。

そして一番大きな変化は副砲が長い砲身を持つ 陽電子ビーム・カノン砲に代わっていた事だ。
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その延長砲身は各々の副砲塔の前の甲板に収納されていて、必要に応じて、自在椀によって各ビーム砲に接続される様になっていた。

陽電子ビーム砲と 陽電子ビーム・カノン砲とでは威力が格段に違う、330mm 陽電子ビームより 280mm 陽電子ビーム・
カノン砲の方が貫徹力は1.5倍くらい大きい。

自分の専用艦に高威力を求めたミーゼラ・セレステラは着脱式のカノン砲身を用意し、必要時には副砲にも高威力を
与える様に設計していた。

しかし、前にも言ったがこの副砲、配置が悪く、高威力の 280mm 陽電子ビーム・カノン砲に変わっても十分にその性能が
発揮出来るか、疑問だった。

しかも、 280mm 陽電子ビーム・カノン砲では威力があり過ぎて、『光の花園』 に使うと反射システムが焼け切れてしまう
事が解っていたので、フラーケンは役に立たないシステムとして忘れていた。

だが、今回はその280mm 陽電子ビーム・カノン砲を敢えて使う事をユリーシャは指示した。

敵艦隊左舷より、敵艦隊を突破、分断した直後、 一番艦は左舷の副砲を使って、ゲシュタム機関を、二番艦は
上部副砲塔を使って艦橋の根本を砲撃し、無力化する作戦だった。

だから、通常は突破・分断する作戦を取る場合、突破・分断後、最大戦速で離脱するのが普通だが、この砲撃を的確に
する為、フラーケンは突破・分断直前に最大減速を命じていた。

「副砲要員、準備は良いか? 勝負は一瞬で決まる! だが、訓練通りやれば大丈夫だ。」フラーケンは副砲要員が
『光の花園』 の運用訓練はしていたが、カノン砲の運用訓練をしていないのを知っていた、だから副砲を 280mm 陽電子
ビーム・カノン砲 にした時、確実に命中させられるか、不安を持っていた。
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しかし、<艦長が自艦の乗組員を信じられなくてどうする!>と自分で自分を叱咤激励した。

ゲシュタム・フィールドの利点はその効果を全艦に分散させたり、一部に集中させたり出来る事である、今、フラーケンは
両舷の防御を最大出力で守る様、指示していた。

前部、後部、上下部も通常出力での防御は維持させていた、だから、これはもう、最大出力でゲシュタム・フィールドを
展開しているのに等しい状態だった。

全周方向、最大出力でのゲシュタム・フィールド展開時間は一時間が限度だ、しかも、これまで、前方だけとは言え、
最大出力を出している、もはや、展開限界時間は二十分位が限度だと予想された。

「短期決戦だ! この一瞬に全てを掛ける! 副砲塔、発砲準備は良いか?」フラーケンは副砲塔要員に念押しした。

「大丈夫です! 発砲のタイミングはこちらに任せて下さい!」艦橋にいた若い砲術士官が応えた。

その声は自信に満ち溢れていたが、かえって、フラーケンは気負い過ぎないか、心配だったが、顔には出さず、微笑し、
頷いてみせた。

**************************************************

「こんな・・・。 気違いじみている! あの 『化物』 は我が艦隊を分断する気です!」バーレルの次官が悲鳴を上げた。

「さすが、名将 『ドメル』 の 『妻』に恥じない指揮振りだな!  並みの艦長ではこうは行かない!』 公式には 『皇室・
ヨット』の顔しか発表して居なかったので 『皇室・巡航・戦艦』 の顔とその時の 『艦長』 フラーケン中佐の事は隠していた。

このため、バーレン達は今までの戦闘指揮が全て 『ドメル艦長』の指揮だと思っていた。

「火力を絶やすな! 敵艦に安全距離を割り込ませるな!」バーレンは無駄かもしれないと思いつつ、攻撃続行を指示
した。

<安全距離を割り込ませては、艦隊・分断を許さざるを得なくなる! 何としてもそれまでに沈めてやる!」しかし、そんな
バーレンの気拍も虚しく、『アヲスイショウⅡ(ア・ルー)』 はザルツ艦隊を分断した、しかも通常なら速度を上げて遠ざかっ
ていくはずなのに、敵艦は反対に減速していた。

「くそっ、俺達を舐め切っていやがる! 安全距離の内側に留まり続けるつもりか!」

安全距離とは発射した魚雷が爆発しても母艦に損害を与えない距離である、また、当然、敵艦や僚艦が爆発しても
自艦が損害を受けない距離でもある。

だから、文字通り敵の懐に飛び込む、戦術は有効だった、だが、さすがに大ガミラスと言えども『アヲスイショウⅡ
(ア・ルー)』 程、重防御の艦は存在しなかったのだ。

『アヲスイショウⅡ(ア・ルー)』 は敵艦隊の軸線を通り越した、副砲の280mm陽電子ビーム・カノン砲が強力なビームを
放った、が、敵旗艦のゲシュタム機関を狙った左舷砲塔も、二番艦の艦橋根本を狙った上部砲塔ビームも僅かに外れて
しまった。

<やはり、まだ無理だったか・・・。>フラーケンが次の命令を出そうとした時、二つの砲塔はビームを出したまま、砲塔を
僅かに右に廻した、ビームを薙いだのである。
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旗艦はゲシュタム機関の後部を、二番艦は艦橋根本を切り飛ばされた。

旗艦はゲシュタム機関を使用不能にされて、エネルギー供給を断たれ、 二番艦は艦橋を艦本体から切り離されて
しまい、指揮不能にされて、両艦とも無力化した。

「一発で当てられなかったのは、失態でしたが、ここまで接近出来れば、ガミラス艦といえども、ビームを薙ぐ攻撃が
有効になります。」先ほどの若い砲術士官が説明し、フラーケンがにこやかに頷いた。

「後がうまくフォロー出来たって、失敗したのは事実でしょ! 全く、結果オーライなんだから・・・。貴方達は・・・。」
ユリーシャが複雑な顔をした。

そうこうしている内に敵艦の乗組員、全員の救助が終了した事が報告された。

「敵艦の乗組員は全員無事?」ユリーシャがまず聞いたのは敵兵の安否だった。

「はい、最初のUX-01の雷撃時数名の宙雷員に軽傷者が出た様ですが、ホントのかすり傷です。
その他はカノン・バーレル司令官を含め全員無事です。」救助の指揮を執った士官が報告した。

「カノン・バーレル・・・って、惑星ザルツの統括官ですわ! ここは惑星オルタリア・・・。 なんで惑星ザルツの統括官が
妨害に来るのんでしょう?」ドメル船長が指揮権をフラーケンから返却されて再び艦橋に立っていた。

「はてさて、何故でしょうね。 それは会ってみれば判るわ。」ユリーシャはいくつかある会議室の一つにカノン・バーレルと
その次官を通す様に命じた。

**************************************************

「何でしょう? ・・・尋問ですかね?」カノン・バーレルの次官が不安げに自分の上司に話かけた。
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「何でも構わん! 我々は艦隊戦では負けた・・・。 しかし、儂は生きている!生きている以上、抵抗は止めないぞ!」
カノン・バーレルは気炎を吐いた。

「良い心掛けね。 生き続けていれば色んな事が出来るわ。」  何時の間にか会議室の入り口に女皇・ユリーシャ・
ガミロニアが二人の女衛士を従えて立っていた。

ユリーシャは会議室に入るとカノン・バーレルとその次官が座っている席とテーブルを挟んだ反対側に座った。

「初めまして、私がガミラス皇室の女皇・ユリーシャ・ガミロニアよ。貴方々はどなたですか?」ユリーシャは相手の正体を
知っていたが敢えてトボケて見せた。

カノン・バーレルはニヤリと笑うと腰の後ろに隠していた護身用小口径拳銃を引き抜き、ユリーシャ目掛けて弾を浴びせ
かけた。

ユリーシャの体が着弾の衝撃に踊り、床に投げ出された。

バーレルは、弾が尽きて、拳銃がカチカチと音を立てるまで引き金を引き続けた。

「女皇・ユリーシャ様! おのれ!」女衛士がバーレルに飛び掛かろうとした、しかし、その時、バーレルは満足の笑みを浮かべ、拳銃をテーブルの上に置いて自身は腕組みして座っていた。

女衛士達はそんな彼を拘束しようとテーブルの上を跳ぼうとした。

「お止めなさい! エミル、ダフラ!」床に倒れたユリーシャが起き上がりながら言った。 

小口径とは言いながら至近距離でこれだけ多数の銃弾を受けて立ち上がれるはずはなかった。

バーレル達はおろか、女衛士達達も無事立ち上がって再び席に座った、女皇・ユリーシャ・ガミロニアに開いた口が
塞がらなかった。

「言ったでしょ、私には 『守護天使』 が付いているって、あっ、これはあなた達には言ってなかったわ、御免なさい、
驚かせてしまって。」ユリーシャは凄みのある声で謝罪した。

「『まっ、魔女だ・・・。」バーレルの次官が声を震わせた。

「『魔女・・・。』 失礼ね、 人聞きの悪い、せめて 『小悪魔』 って呼ばれると嬉しいな。」ユリーシャの得意のオトボケが
始まった。

「我々は 『反逆罪で死刑』ですな、しかし、今回の作戦は私の勝手な行動です。 惑星ザルツの住民には何も関係が
ありません。 また出来たら、この艦隊の乗組員も私を除き罪に問わないで頂ければ幸いです。」 バーレルはもう既に
覚悟を決めている様だった。

「『反逆罪』 ? それは惑星ザルツが、 ガミラスの支配下にあるからでしょ、 惑星ザルツが、ガミラスから『独立』して 『独自の惑星国家』 になってしまえば今回の事件は 『反逆』 ではなくなるわ。」

「はぁ、何ですと、『独立』 ?そうしたら、今回の 『事件』 はガミラスに対する 『戦線布告』 になってしまうじゃないですか! 貴女は惑星ザルツを切り捨てるおつもりですか?」バーレルは必死だった。

<ここは何としてでも 『自分だけの責任』 に止めておかねばならない! ザルツの民にこれ以上の悲劇を味あわせたく
はない・・・。>バーレルの気持ちに嘘は無かった。

「惑星間の 『国家間の問題』 になれば最初はまず、当然の事としてガミラスは、『事件の首謀者』の 『引き渡し』 を要求
するでしょうね。ガミラスにも惑星・国家としての体面がありますから。」ユリーシャは至極当たり前の事を言った。

「今のザルツにガミラス帝星を相手に出来る戦力は無い! やはり、私が『事件の首謀者』として処罰された方が双方とも
無駄な血を流さずに済みます。」何時しかバーレルの内に厭戦の気持ちが起き上がってきていた。
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「だ・か・ら、 『国家間の問題』 になれば、ガミラス帝星は直接、惑星ザルツを調べる事は出来ない、ザルツの惑星政府に
『テロの犯人の逮捕』 を依頼するしかなくなるわ。そうすれば、『逮捕したテロ犯』の引き渡しを要求された時、
『犯人は未だ捜査中』であるとか、『逮捕したが取り調べが終わっていない』とか、のらりくらりと引き渡しを先延ばしに
すればいい。その内、ガミラス帝星も 『この事件には強く抗議する!』 とか、 『遺憾の意』 を発表して終わりにするしか
なくなるわ。」ユリーシャは腹黒い提案をした。

「なんでここまでするんです! 私は惑星ザルツの統括・・・。」そこまで言いかけたバーレルはユリーシャに制止された。

「駄目よ。 あなたは 『名もなきザルツの愛国者、そして、惑星オルタリアに着き次第、脱走する・・・。 名前と身分を聞いてしまったら、それが実行出来なくなるじゃない・・・。」ユリーシャは釘を刺した。


                                   12 1.かの名はアヲスイショウⅡ(ア・ルー)(8)→ この項、続く
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by YAMATOSS992 | 2014-02-03 21:00 | ヤマト2199 挿話 | Comments(0)
 ゲシュタム・ジャンプ明けの赤い光に何か嫌な予感を感じたドメル船長は探査主任の方を見た。

それに呼応するかの様に探査主任は報告した。

「ゲシュタム・ジャンプ終了。 惑星・オルタリアの惑星軌道の外縁に到達致しました。 しかし、進路上に妨害者と思しき
艦隊がいます。」

それは 『ガイデロール級二等航宙戦艦』 、二隻で組まれた 『戦艦・戦隊』 だった。
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「相手は 『ガイデロール級戦艦』、装備している陽電子ビーム砲は、先に相手をした 『デストリア重巡級』と同じだから、
こちらのゲシュタム・フィールドを貫く事は出来ない。

しかしながら、その装備している戦艦用大型魚雷がゲシュタム・フィールドを貫く事が出来るか、出来ないか、定かでは
ない!  私は 『戦闘状態』に入った事を宣言する! フラーケン中佐、  『船長』 から 『艦長』 への引継ぎをよろしく
お願いします!」 ドメル船長の決断は早かった。

「了解した。 『皇室・ヨット』 はこれより暫くの間、 『皇室・巡航・戦艦』 として私が預かる!」 艦橋 にフラーケン艦長の
立体映像が現れた。

そして艦橋以外の場所、機関室、火器管制制御室、や『光の花園』 制御室、と言った、 主要な制御室にもフラーケン
艦長の立体映像は出現していた。

『名のみ語られ、誰も会った事も見た事すら無かった ”猟犬 ” 』が今、堂々とその姿を表している、姿をあえて見せる事で
乗組員の士気を最大限に引き出そうとする彼なりの配慮だった。

「敵の状況を報告せよ。」彼が第一声を発した。

「 『ガイデロール級二等航宙戦艦』 、二隻で組まれた 『戦艦・戦隊』 です。 本艦の進路上を左舷を見せて立ち塞がって
います。 他の艦艇は姿がありません。」 探査主任が落ち着いて報告した。

<丁字戦法か、奴らはこれで全部の陽電子ビーム砲塔と三十三基もある戦艦用大型魚雷発射管が全て使える体制だ、
こちらはまず守りを固めよう!>フラーケンの頭脳が目まぐるしく回転した。

「ゲシュタム・フィールド艦首方向に最大出力で展開!  正面からの攻撃はこれで防ぐ、『光の花園』 も 一セット展開! 
フィールドを回り込んでくる魚雷は『光の花園』 で 対処する!」明確な確信に満ちた命令だった。

『光の花園』 の操作員は 『シャングリ・ラー』 時代の操作要員をそのまま採用していた、本来なら 『魔女』 の艦の乗組員
として忌み嫌われ、闇の世界で生きていくしかない運命だったが、それをユリーシャ本人が救いだし、しかも、再び、
『光の花園』 の操作要員にしたのだ。 

その数は四人、一基の反射板・誘導弾の反射方向の制御を一人が行う態勢だった。

「爺っ様達、反射板・誘導弾の位置制御はそちらに任せたわよ。」『光の花園』制御室の先任士官が火器管制室の宙雷戦
担当部員に呼びかけた。

「おうよ、娘っコ共に宙雷戦の奥義を見せてやるわい。」 宙雷戦担当の老兵が応えた、みれば宙雷戦担当者は初老から
ヨボヨボの老人ばかりで固められていた。

これもユリーシャの命令を忠実に守った結果だった、『宙雷戦の要員だけはベテランで固めて』と彼女は言っていた、
そして、ガミラス軍内でも飛び切り勝れた腕を持つ者を選んだ結果、この様な陣容となったのだ。
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陽電子ビーム反射板が装着された誘導弾が四基、発射され、それがそれぞれの定位置に着くと四枚の反射板を
開いた、その様は確かに 四ひらの『花』 が開いた様だった。

そして高速で航行している 『アヲスイショウⅡ(ア・ルー)』の後部四方の上下左右にピタリと付けて相対位置を固定させ
続けているのは宙雷戦のベテランだけが出来る技だった。

ドメル船長はフラーケン艦長に指揮権を譲ったので船長室に引揚げようとした。

しかし、女皇・ユリーシャに 『玉座の間』 に来る様、命令された、彼女にとって 『女皇』 の命令は絶対だった。

『玉座の間』 の前の扉を守る女衛士も 『女皇』 の命令を聞いていたので素直に扉を開けてくれた。

ドメル船長が『玉座の間』 の内に足を踏み入れるとそこは宇宙空間だった。

「大丈夫、単なる3D映像よ。 この艦橋を中心として見た映像だから、床は見えてないだけよ、ちゃんと床はあるわ、
貴女もこちらに来て座りなさい。」と言って自分の左隣の一歩下がった位置にあるシートを勧めた。

「さて、『猟犬』 の戦いぶり、じっくりと拝見しましょう。」ユリーシャは両手の指を組んで合わせると言った、
その姿は 『祈り』 を捧げている様に見えた。

**************************************************

「暫くぶりの軍服だ、この着心地、懐かしい、堪らんな、実戦はやはり良い!」カノン・バーレル・惑星ザルツ・統括官が
嬉しそうに言った。

彼は今でこそ、官邸の奥深く、フカフカの肘掛椅子に座っている惑星ザルツの最高責任者で名誉臣民だが、統括官に
なる前から生前に名誉臣民の資格を実力で得た、数少ない 『猛者』 の一人だった。

「しかし、デストリア級が太刀打ち出来なかったのだから、同じ口径、330mmの陽電子ビーム砲が弾かれるのは予想して
いたが大型魚雷まで通じないとは思わなかったな。」

「とんでもない 『化物』 です、しかし、所詮、人が作った物、どこかに弱点があるはずです。」 副長のまだ若い少佐が
進言した。

「その通りだ!戦闘は 『守っている』 だけでは、いつか、ジリ貧になって押し切られる、その事をあの 『女皇』 に解らせて
やる! 一気に畳みかけるぞ! 二隻揃って魚雷発射管・全門・斉射、陽電子ビーム砲も全門発射しろ! 打ち抜けなく
ても良い、敵のエネルギー・フィールドの負荷を少しでも多く掛けるんだ!」

バーレルの指揮は大胆だった、二隻の 『ガイデロール級戦艦』の全魚雷、一艦、三十三基、二艦で六十六基の大型
魚雷を 『アヲスイショウⅡ(ア・ルー)』の全周方向から狙う形で発射した。

『皇室・巡航・戦艦』のザルツ艦隊に一番近い位置は前方だったので最大出力で前方集中させたゲシュタム・フィールドに
遮られたザルツ戦艦の大型魚雷は次々と爆発した。

エリーサ・ドメルは艦橋で平面なモニターでしか、敵魚雷やビーム攻撃を見ていなかったのでこうして3D映像で見ると
生身の自分が攻撃されている様でとても怖く、堅く目を瞑ってしまった。

「エリーサ、目をお開けなさい! いくら私達が 『平和』 を唱えてもそれを望まない者達も沢山いる・・・。 
この沢山の魚雷の雨はその 『意思』 の現れよ! 私や貴女は外交官として、直接、武器を振るう事は無い、 
でも 『言葉』で 『交渉』 する時にも一歩間違えば相手に 『魚雷』 や 『ビーム』 浴びせてしまう場合もある・・・。 
その事を忘れないで!」

エリーサ・ドメルは何故、ユリーシャが何故、わざわざ、こんな部屋を作ったか、判った様な気がした。

『アヲスイショウⅡ(ア・ルー)』 の側面と後尾を狙って誘導されて来たザルツ戦艦の大型魚雷は 『光の花園』によって
阻止された。
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『アヲスイショウⅡ(ア・ルー)』 は元々ハイゼラード級一等航宙戦艦であった、その主砲や魚雷発射管の大半を撤去し、
代わりにゲシュタム・フィールド発生装置を積んで防御力を飛躍的に上げてあったが、後部の副砲、連装280mm陽電子
ビーム砲塔四基はそのまま残してあった。

 しかし、この四基の砲塔は配置が悪く、全砲塔がフルに使える様にはなっていなかった。

デスラー総統に全てを捧げたミーゼラ・セレステラは自分の専用艦 『シャングリ・ラー』 を建造した時、その欠点を補う
装備を考えだした。

それが 『光の花園』である。 これは 『ヤマト』 が冥王星戦(メ2号作戦)で苦しめられた 『反射衛星砲』 と同じ技術を
使ってはいたが反射板を衛星ではなく、誘導弾に取り付け、高速で航行する母艦の後方、上下左右の少し離れた空間を
併行させて副砲から発射された陽電子ビームを反射、屈曲させてたとえ反対舷にある目標ですら狙える様にした
秘密兵器だった。

『アヲスイショウⅡ(ア・ルー)』 はその装備を全て引き継いでいた。 

そして運用要員も 『シャングリ・ラー』 時代の要員を探し出して再雇用したので運用面の心配もなかった。

加えて反射板を適切な位置に配置させるために必要なベテラン・宙雷戦要員も確保出来、今回、初めての実戦で
六十六基の魚雷を全て阻止する事でその威力を十分発揮した。
(もちろん、ゲシュタム・フィールドによる阻止もあったが・・・。)

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「『魔女』 め、物理法則すら無視し、陽電子ビームまで曲げて見せたわい! しかし、どうやら、あの艦、後部にはあの
防御フィールドは持っていないようだな。」バーレルは顎を擦りながら言った。

「どうして、そう思われるのです?」副長が訝し気な顔をした。

「艦全部に渡ってあの防御フィールドがあればあんな 『手品』 は必要ない。 防御フィールドで守り切れない部分をあの
『手品』 で守っているんだ。 よし、次の魚雷の斉射はあの艦の後部に集中して行うぞ! 二番艦も含め、魚雷の斉射をかける! 主砲はそのまま打ち続けろ! 少しでも敵のエネルギー消費を増やすんだ!」バーレルの指揮は
『アヲスイショウⅡ(ア・ルー)』 単艦に対してだったら適切だった。

しかし、実際には伏兵がいた、次元潜航艦UX-01である、フラーケンの実体はUX-01にいた、そして次元潜望鏡を出すと
直ぐ前にいる、 二隻の『ガイデロール級戦艦』の前部砲塔群に狙いを定めた。

<しっかし、昔の教官があの艦に乗っていようとは思わなかったな・・・、ここでしくじったら、また、あの 『カミナリ』 を
落とされかねない。 艦長が宙雷員に怒られたんでは様にならん!>

フラーケンは苦笑いをすると次元潜望鏡の視野一杯に迫った敵、一番艦の砲塔群に目掛けて魚雷を一発だけ発射した、
敵の戦意を挫く為の攻撃だったので極力、人的被害の出ない攻撃が求められたからだ。

二番艦も同様に上部主砲塔群に一発、魚雷を喰らって使える陽電子ビーム砲塔は下部の一基と副砲である四基の連装
280mm陽電子ビーム砲塔だけになってしまった。

「何が起こったんだ!」バーレルは揺れる艦橋の中でコンソール?に摑まりながら副長に訊ねた。

「判りません! 唯、第一、第二主砲は大破、使用不能です。 あ、上面の魚雷発射管十二基もやられています。 
二番艦も同様の攻撃を受け、損害を出した模様です!」副長が悲鳴を上げた。

「うろたえるな! まだ負けた訳ではないぞ! 下部魚雷発射管と下部陽電子ビーム砲は使えるか? 使えるだけの兵装を使って反撃するんだ!」

フラーケンはあれだけの損害を受けたのにも係わらず、使えるビーム砲塔全てと魚雷を撃ち続ける敵の戦意の高さが
嬉しくもあり悲しくもあった。

<強い敵と戦えるのは喜びだ。 しかし、あまりに強い敵との戦いは倒すか、倒されるかの戦いになってしまう・・・。 
彼等は降伏しようとはしないだろう、止めを刺してやるしかないのか・・・>フラーケンが止めの魚雷発射を命じようとした
時、艦隊Netにユリーシャが割り込んで来た。

「フラーケン艦長、貴方、まさか、あの戦艦に止めを刺すつもりではないでしょうね。 人死には御法度よ。」ユリーシャは
フラーケンの考えを正しく読んでいた。

「ユリーシャ様、ゲシュタム・フィールドは大丈夫ですが、『光の花園』はもう使用限界です。 誘導用の推進剤が尽き
かけています。 新しいセットを展開すれば良いのですが、『光の花園』はこの艦の切札、無駄使いは出来ません。」
フラーケンも必死だった。

「それに、 『ガイデロール級戦艦』 の下部は魚雷発射管で埋め尽くされています。 あそこに魚雷を当てたらまず、
確実に爆沈するでしょう。 後部のゲシュタム機関も魚雷が当たれば大爆発してしまいます。もう、手加減出来る限界は
越えたのです。」フラーケンは言い切った。

「駄目! そんなに簡単に諦めては駄目! 何か、手があるはずよ・・・」ユリーシャは爪を噛んだ。

「ユリーシャ様、差し出がましいようですが、要は敵艦の重要部分を機能しなくなる様にすれば良いのでは? 例えば
ゲシュタム機関とか、艦橋とか。」エリーサ・ドメルが脇から進言した。

「ドメル船長、ゲシュタム機関に魚雷を打ち込めないのは先ほど説明しました。 艦橋に至っては乗組員の大半が
あそこに集まっています。魚雷を打ち込んだら戦死者続出です。」フラーケンが即座に否定した。

「いや、流石にドメル将軍の 『妻』 ね。 フラーケン、攻撃は魚雷ではなく、陽電子ビーム・カノン砲で行う。 このまま最大
戦速で突撃し、敵艦隊を分断、その時、左舷副砲は敵一番艦のゲシュタム機関を、上部砲塔は二番艦の艦橋根本を
攻撃、艦本体から分離、機能しない様にする。」ユリーシャは 『ヤマト』 でテロン人と行動を共にするうち、いつしか、
その大胆な戦闘方法を身に着けていた。

「敵艦隊を 『分断』 するですと! それに本艦には陽電子ビーム・カノン砲は装備されていません!」

「フラーケン・・・。予習はちゃんとやっておく様に言ったはずだけど・・・。」ユリーシャが不機嫌な顔でフラーケンを咎めた。




                                   120.かの名はアヲスイショウⅡ(ア・ルー)(7)→ この項、続く
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by YAMATOSS992 | 2014-02-01 21:00 | ヤマト2199 挿話 | Comments(2)