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宇宙戦艦ヤマト前史

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宇宙戦艦ヤマト登場前の地球防衛軍の苦闘を描きます。

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「またやられたよ・・・。」 沖田十三・三等宙将は昔馴染みの土方竜・三等宙将に呟く様に言った。

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「とうとう我々は土星宙域も失った訳だ。 

今度の敵は今までの火星独立派や地球上の各国の勢力争いの時とは戦闘のレベルが大きく違う様だな。」

土方は手にした盃を思い切りあおった。

「ああ相手は確かに手強い、儂が、儂があの時、力づくでも軍令部の『先制攻撃命令』を止めていればこんな大損害を
各国の宇宙艦隊に与える事も防げたかもしれん・・・。」

沖田は手にした盃を口に運ぶ事もせず、ただ手を震わせていた。

「味方艦、それもあの 『 島 大吾 』 一等宙佐の指揮する 『 カコ 』 を撃沈してでも、か?」土方はジロリと沖田の方を見、
そして言った。

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西暦2190年、外宇宙からの侵入者を天王星観測ステーションが捕捉した。

そして、太陽系外縁部を哨戒していた、沖田の戦艦『 キリシマ 』、島大吾の巡洋艦『 カコ 』、カゲロウ型駆逐宇宙艦
数隻にその謎の侵入者への威力偵察が命じられた。

沖田は相手を刺激し過ぎない様、巡洋艦 『 カコ 』 単艦での接触を試みた。

(ヤマト2199の物語の中では島大吾の巡洋艦は『 ムラサメ 』になっていますが、古来からの日本艦艇の命名法では
巡洋艦は”山名”又は”河名”が使われる事になっています。

このため、駆逐艦の名称である ”天候気象名” 『 ムラサメ 』 は用いず、本来の巡洋艦の名称、”山名”である
『 カコ(加古)』に変更しました。)
(『カコ(加古)』は『山名』では無く、『川名』でした。 sengokuさん、御指摘有難う御座いました。)

数度に渡る呼びかけにも相手は何の反応も示さず、沈黙したままだった。

 その時である、エーリアンの侵略行動に過敏になっていた国連はアジア管区の宇宙海軍軍務局長であった
『 芹沢虎雄 』一等宙将に 『 先制攻撃 』 をする様、圧力をかけた。

実は十年前に戦闘で破壊されたと思しき難破船の一部が冥王星近傍で回収されていたのだ。

「異星勢力同士の紛争が太陽系近傍で起こっている!」と判断した地球は国連宇宙海軍を結成、異星人の侵略に
備えた。

この事から国連はこちらの呼びかけに答えず、『 ダンマリ 』 を続けるエーリアンが侵略目的の艦隊と判断したので
あった。

芹沢軍務局長はこの事を知る数少ない国連宇宙軍幹部のひとりであり、『 先制攻撃』 には何の躊躇いも無かった。

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反対に一艦隊司令に過ぎなかった沖田十三・三等宙将はこの事実を知らず、『 先制攻撃 』に反対して現場で艦隊司令を
解任されると言う屈辱を味わった。

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<異星人同士の抗争の件を知っていたら儂はどうしたろう・・・。 それでも『 先制攻撃 』に反対しただろうか・・・。>
沖田は黙って揺れる盃の表面を見ていた。

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「『 平和裏 』 に事を運ぼうとする連中がこちらの巡洋艦を一撃で撃破出来る軍艦でやって来るものか! 例え最初の
接触は平和裏に行えたとしても次には奴らは我々の喉元に剣を突き付けて来たことだろう。

 
 そして、我々『人類 』はそんな脅しを受けたら反撃しなければ気が済まない『 好戦的な人種 』だよ。 タダでは
返さん!」 土方は小さく笑った。

「お前も島一等宙佐も悪くない。 あの芹沢もな。 相手は初めからこちらと事を構える気、満々で戦艦部隊を送って
来たんだ。 今の状態は成るべくして成った結果だよ。」土方は再び手酌で注いだ酒をチビリと舐めた。

「過ぎた事はもう良い、それより 『 木星圏 』 の防衛をどうするか、、それが問題だ。 国連宇宙海軍総司令、
シェーア提督は 『 木星衛星軌道 』 上に点在している各国のエネルギー・プラントを出来るだけ一ヶ所に集めさせ、
アジア連合、つまり、我々に防衛を任せるつもりの様だ。

我々が奴らを引き付けている間に、本隊である 『 欧州連合・南半球連邦 』 は両翼から侵攻して来る敵艦隊の側面を突く
作戦だと聞く。

しかし、俺には敵戦艦が全砲火を使用可能出来る併行戦は危険過ぎると思うのだが、お前はどう見る? 沖田。」土方は
沖田の顔をじっと見据えた。

「儂はシェーア提督を信じておる。 かつて第一次内惑星戦争時、儂はまだ若造だったが、シェーア提督の指揮する
独(ドイツ)・艦隊と戦った事がある。

日本艦隊を含む国連宇宙海軍艦隊は五隻いた独・戦艦と八隻いた宇宙巡洋艦の殆どを沈め、残るはシェーア大佐の
指揮する戦艦 『 ラインラント 』 のみと言う所まで追い詰めた。

しかし、ラインラント艦長だったシェーア大佐は我々の降伏勧告を拒み、僅かに残った配下の宙雷戦隊を効果的に使って
国連宇宙海軍艦隊の旗艦を沈め、その混乱に乗じて生き残った独・艦隊を本国まで撤退させる事に成功した。

若かった儂は彼が次々と繰り出す奇跡の様な艦隊運動と攻撃方法に敵ながら魅了されたものじゃたよ。」沖田は何か
楽しそうに在りし日の戦闘を思い出していた。

「だが、今度の敵は第一次内惑星戦争の時と同じ気持ちで臨んでは絶対に勝てない強敵だぞ。 シェーア提督は既に、
一度退役した老提督だ。 

頭が固くなっていないかな。」 土方はそれが一番心配だった。

だが沖田は眼光鋭く告げた。

「大丈夫さ。 あの人の信条は 『 臨機応変 』 。 あと 『 手駒を生かす! 』 だ。

 

儂の所属していた艦隊と戦った時など自分の座乗艦、戦艦 『 ラインラント 』 を盾に使い、残り少ない宙雷戦隊を
国連宇宙海軍艦隊旗艦の直ぐ傍まで誘導し、全力で我々の旗艦だけを叩いた。

伝統的に独・戦艦は通常の戦艦より武装は少ないが防御力は一クラス上の装備を持っていた。

そして防御力の真の要は装甲の厚さでは無く、乗員のダメージ・コントロールの能力にある事も教わったよ。」

第一次内惑星戦争後、沖田はかつての旧敵に直接教えを乞う機会を得ていたのだ。

国連宇宙軍もシェーア提督の活躍に感じ入り、今回の謎の宇宙人侵略艦隊の迎撃のため、一度は退役していた
シェーア提督を国連宇宙海軍総司令に招聘した。

彼はその招聘に応じ、すぐさま、ジュネーブの国連宇宙海軍総本部に出頭した。

驚いた事に彼の着ていた軍服は第一次世界大戦当時のものだったと言う。

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総司令官への任命式が終わり、その服装について訊ねられると彼は微笑して言った。

「これは我が家に伝わるちょっとした 『 宝 』 でね。 それだけ言うと自分に宛がわれた総司令官室に消えていった。

「ユトランド沖海戦・・・。」土方はあまりにも古い歴史的な言葉を呆然と口にした。


                              137.夢幻の 宇宙戦艦・・・『扶桑』 (フソウ) ー (2) → この項、続く


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by YAMATOSS992 | 2014-05-27 21:00 | ヤマト2199 挿話 | Comments(4)