ブログトップ

宇宙戦艦ヤマト前史

yamato2199.exblog.jp

宇宙戦艦ヤマト登場前の地球防衛軍の苦闘を描きます。

<   2014年 07月 ( 5 )   > この月の画像一覧

 ヒマリア衛星群の軌道を離れた日本艦隊、国連宇宙海軍特別遊撃隊の五隻は二群に分かれた。

「敵艦隊はアナンケ衛星群を突破し、高速でこちらに接近しつつあります。」 『フソウ』 のC.I.Cに敵艦隊の動向が
報告される。

「敵艦隊の構成は判るか?」秋山は情報士官に問うた。

「大型艦は十隻、どれも地球戦艦を大きく凌ぐ超弩級戦艦です。 その他、護衛艦と思しき中型艦が二十隻余付き従って
います。」情報士官が状況報告を続けた。

この大型艦がガミラスではデストリア級と言う航宙重巡洋艦である事はまだ地球側は知らなかった。

また、ガミラス艦隊の回りを固めている中型艦はガミラスでは小型艦の部類になるクリピテラ級航宙駆逐艦で艦隊決戦の
主力だったがこれも地球側は単なる護衛艦だとの認識しかして居なかった。

「よし、敵艦隊が三十万kmまで接近したら、本艦『フソウ』を中心にして、『ヒエイ』、『チョウカイ』、『ミョウコウ』の各艦は
鶴翼陣を形成して敵艦隊に突撃を掛ける! 陽電子砲・管制・指揮艦『ヨシノ』は現在位置に留まり敵艦の位置情報を
本艦隊に送り続けろ!」秋山が訓練通りの司令を発した。
e0266858_21243497.jpg
本来、「金剛」型戦艦だった『ヨシノ』であったが、艦隊が陽電子砲を効率的にそして正しく管制・指揮出来る様に敢えて
陽電子ビーム砲の搭載は見送り、更に第一、第三の高圧増幅光線砲塔も降ろして大型の合成開口レーダーに積み替えていた。

そして、秋山の指示通りの突撃隊形が整った時、早期警戒艦も務める『ヨシノ』から緊急通信で報告が入った。

ガミラス艦隊はまだ彼我の「陽電子ビーム砲」の射程外だと言うのに多数の空間魚雷を発射、多数の空間魚雷が
接近してくるのが観測されたとの事だった。

「魚雷なら高圧増幅光線砲が効くかもしれん! 全艦主砲で前方から接近する敵魚雷を迎撃しろ!」 秋山は魚雷の
迎撃命令を発した。

流石に幾らガミラス製とはいえ、魚雷まで対ビームの処理はして居なかったが、クリピテラ級航宙駆逐艦は
前方魚雷発射管四門、VLS型魚雷発射管八門と一隻で一度に十二本の魚雷を発射出来るのだ。

ただ前方魚雷発射管四門は次発装填が出来るが、VLSの八門は次発装填出来ないので今回はVLSは発射して
来なかったがそれでも二十隻余のクリピテラ級が発射した魚雷の数はそれでも八十余射線となり、その全てが鶴翼陣で
突撃する日本艦隊を襲った。

それに対し、日本艦隊の各艦は『陽電子衝撃砲』を装備しているとはいえ、固定装備のその砲は対魚雷迎撃には不向き
であった。

しかし、『コンゴウ』級だった時代からの主砲、高圧増幅光線砲は三連装砲塔四基に分けて搭載されており、前方に
指向出来る第一~第三砲塔をビームを発射しながら素早く砲塔を大きく振ってビームを薙いで接近する魚雷を殆ど
迎撃してみせた。
e0266858_19491395.jpg
しかし、それでも二十数本の魚雷がビームの扇を潜り抜け、日本艦隊を襲った。

被害を受けたのは鶴翼陣の左端に位置していた『チョウカイ』である。

被弾したのは新たに設置したバルジ、左舷の部分だった、着弾と同時に爆炎が上がり『チョウカイ』は煙を曳きながらも
突撃は続行していた。

秋山を含め、誰しもが『チョウカイ』の爆沈を覚悟した。

しかし、『チョウカイ』は被弾の名残の煙をたなびかせてはいたものの、それ以上の損害は無かった様だった。

「敵の空間魚雷、弾頭は陽電子爆弾だった様だ。 でなければ、対陽電子ビーム砲用に追加装備したリアクティヴ・
アーマーが有効に働くはずは無い!」秋山はすぐさまこの驚異的な現象を分析してみせた。

**************************************************

リアクティヴ・アーマー、それは1970年~90年代に各国の戦車に装備された装甲板の常識を180度覆す画期的な
防御システムだった。

原初から軍艦や戦車の装甲は鉄で出来ており、その厚みと装甲に傾斜を付ける事で敵弾を弾き返す事を旨としていた。
(帆船時代の戦列艦は分厚い木製の舷側板を持っており、それが装甲板の役目も果たしていたのが、これは装甲とは
言えない。)

しかし、海戦では戦艦が航空機の威力の前に無力化し、装甲を持つ意味があるのは陸戦で使われる戦車だけになって
しまった。

だが、戦車の徹甲弾も当初こそ、運動エネルギーを直接、装甲貫徹力に結び付ける徹甲弾(AP)が主流だったが、
当然これにはより大きな口径の砲と長い砲身が必要とされ、戦車はどんどん大きく重くなっていった。

しかし、第二次大戦中、モンロー(ノイマン)効果という特殊な爆発形態が再認識され、化学エネルギー(爆発方向の
コントロールをする)弾が使用出来るようになり、歩兵が運搬出来るバズーカやパンツァーファースト等が戦車相手に
善戦する場面が見られた。
e0266858_18384580.gif
そして、このモンロー(ノイマン)効果は装甲板に対して適切な距離で炸薬が爆発した時のみ、戦車装甲を貫徹出来る
高温ジェット噴流を発生させる事が出来るのでかえって弾速は遅い必要があり、旧式化した小口径対戦車砲や中口径
短砲身砲にも使えるので当時劣性だった独軍や対戦車・火器が不足していた連合軍双方に普及した。

だが、この成形炸薬弾は戦車の車体に薄い鉄板のスカートやシェルツンで簡単に防ぐ事が出来たため、独戦車など
シェルツンで囲まれた不格好なシルエットが標準装備になった位であった。

しかし、攻勢に出ていた連合軍は機動性を確保する必要から無駄な重量増加によって機動性が落ちるのを嫌い、
こうした戦車・補助装甲の装備は採用され無かった。

そして、この補助装甲の一番の問題点は、装甲板自体が薄いので運動エネルギー弾に対しては効果がほとんど
無い事であった。

また、大鑑巨砲が命の戦艦と違って戦車は多目的に使われる兵器であり、対戦車兵器に特化する事は避けなければ
成らなかった。

第二次大戦が終わると巨砲・重装甲の戦車は機動性が悪過ぎ野戦には向かない事が問題となり、東西両陣営とも
砲は大き目の物を搭載するが装甲はある程度の薄さで我慢し、機動力や射撃指揮装置を充実させた「標準型戦車」
(MBT)を大量に配備した。

 世界大戦は終わったものの、世界的に見れば各地で紛争は続いており、特に中東はイスラエルとアラブ諸国の
紛争が深刻だった。

イスラエルはユダヤ人ネット・ワークの厖大な資金源を持ち、大量の兵器を高価で輸入出来たが、アラブ諸国は
オイル・マネーの恩恵をまだふんだんには受けて居らず、成形炸薬弾を用いた対戦車兵器を多数導入する事で
イスラエル戦車に対する対策とした。

イスラエルにしてみれば高価な戦車が安価な対戦車兵器の餌食になってしまうのではたまったものでは無い。

この為、新しい戦車・防御システムの研究を始めた。

その結果、中空装甲、複合装甲、爆発反応装甲等が実用化された。

しかし、中空装甲は古くからあった物の改良で、複合装甲は中空装甲の空隙部にセラミック等の固い異物を挟み込み、
徹甲弾、成形炸薬弾双方に効果があるとされたが幾ら内容が変わっても装甲板と言う受け身のシステムである事に
変わりは無かった。
e0266858_20315970.gif
だが、爆発反応装甲は今までの装甲とは全く違った考え方で作られたものだった。

対戦車兵器に革命を起した成形炸薬弾はその名の通り、炸薬が成形された状態を保ち、爆発した時、爆発力を
前方に向かってメタル・ジェット噴流として集中する事で敵戦車の装甲を溶かして穴を空け、車内に高温のジェット噴流を
吹き込んで乗員を殺傷する兵器だった。

では成形炸薬弾が戦車の装甲に命中した途端、装甲表面が爆発すればどうなるか?

成形炸薬弾の成形が崩れるか、爆発しても破壊力を持つ高温メタル・ジェット噴流は装甲板表面の爆発によって
吹き散らかせれてしまい装甲板を貫徹する事は出来なくなる。

命中したのが徹甲弾だった場合は成形炸薬弾の時程の効果が無いが、それでも同じ厚みのただの装甲板よりは強い
耐弾性を示した。

ただ、爆発反応装甲が作動すると戦車と行動を共にする味方歩兵も殺傷してしまう、機銃弾で撃たれた位でも爆発して
しまう等の問題もあったのだが・・・。

とにかく、今までの装甲板の概念を覆す装甲、『爆発反応装甲』が実用化したのであった。

**************************************************

地球陣営、特に日本宇宙海軍はガミラス艦の主兵装が陽電子ビーム砲だと思い込んでいた。

だから反物質である陽電子を防げる装甲は無いと判断した。

だからといって何も防御手段を講じなければ土星会戦で全滅した米ソ連合艦隊の二の舞になる事は確実だった。

しかし、軍技術部の老士官が爆発反応装甲の事を思い出した。

艦の両舷に大き目のバルジを取り付けその内側に水を満たしておくのである。

陽電子ビームがこのバルジに命中するとその外皮はとても装甲とは呼べない程、薄い金属板なので簡単に
陽電子ビームは貫通するがバルジの内側には水が満たされており、急激な減圧でその水は気化する。

当然、通常物質である気化した水(水蒸気)は陽電子ビームと対消滅反応を起こす。

そして、その水蒸気は貫通口から外の真空宇宙に広がりつつ、雲状に艦体に纏わり着き、陽電子ビームを戦艦本体に
辿り着かせない、そんな考え方だった。

勿論、バルジの内側は細かく細分化された上で水が満たされており、複数の被弾があってもバルジ内の水を一編に
失う事の無い様、工夫されていた。

試作品の陽電子ビーム砲で試作装甲を射撃してみると、確かに効果がある事が確かめられ、演習に明け暮れていた
「コンゴウ」、「ハルナ」、「キリシマ」以外の「モ号」作戦・改装を受けた「金剛」級、「改・金剛」級には全て
バルジが装着された。
e0266858_21545280.jpg
この新型装甲はリ・アクティヴ・アーマー(反応装甲)と呼ばれていた。

”爆発”反応装甲(エクスプロージョン・リ・アクティヴ・アーマーと呼ばれないのは陽電子と言う反物質とバルジ最外皮金属の対消滅反応を防御作用の切っ掛けとしており、積極的な爆発を起こす必要が無いからだった。

<少なくとも、リ・アクティヴ・アーマーは実戦でも役立つ事が判った訳だ。
さて次は地球製の陽電子・衝撃砲がガミラス戦艦に通じるか、敵艦の運動に付いていけるかどうかが問題だな・・・。>

だが、秋山はまだ先程「チョウカイ」に被弾したガミラス空間魚雷の弾頭が陽電子爆弾だと信じていたが、
本当は反陽子弾頭であった。

陽電子の重量の1千倍の重さを持つ反陽子を使った爆弾である、その破壊力は陽電子ビームの比では無かった。

先程、ガミラス魚雷を被雷した「チョウカイ」の損害が軽微だったのはその魚雷の反陽子弾頭が動作不良を
起こしていたからだった。

もし正常に働いていたら「チョウカイ」は”轟沈”では無く、”消滅”、両隣の艦も最低でも大破していたのは確実だった。

ガミラスの兵力の真の大きさに気付かないまま、国連宇宙海軍・特別遊撃隊は陽電子砲交戦領域に分け入って行った。



                                 147.夢幻の 宇宙戦艦・・・『扶桑』 (フソウ) ー (12)→ この項続く


[PR]
by YAMATOSS992 | 2014-07-30 21:00 | ヤマト2199 挿話 | Comments(4)

 木星は”太陽に成り損なったガス惑星” と呼ばれるだけあってその直径は14万3000kmもある巨人である。

衛星も65個と非常に多い、その内最外殻のパシェフェ衛星群には国連宇宙海軍の監視衛星が紛れ込ませてあったが、
実用化したばかりの陽電子砲搭載艦は更に内側のヒマリア衛星群で『ガミラス』の侵攻艦隊を待ち受けていた。

「敵艦隊の侵攻速度に変化はないか?」秋山は『フソウ』の艦橋・情報士官に尋ねた。

「早期警戒艦からの報告ですと進路、速度とも変化ありません。」彼は即答した。

<よし、まだ時間はあるな・・・。>秋山は戦闘準備完了後の”訓示”で伝え切れなかったこの艦が何故『フソウ』と
命名されたかその理由を告げようと思い再びマイクを取った。 

「国連宇宙海軍特別遊撃隊司令、秋山だ。 諸君の内には本艦の艦名が『フソウ』である事に不満を持っている者も
多いと思う。・・・」秋山はかつて彼の副官が疑問に思った事の回答を全乗組員に伝えておこうと思ったのである。

************************************************** 

 日本(宇宙)海軍に『扶桑』と言う名の艦は今度の艦番No.588で三代目である。

初代『扶桑』は明治海軍が英国へ発注した汽帆・装甲コルベット艦であった。

e0266858_13574992.jpg
この艦は大きさこそ欧州列強の装甲艦が平均排水量1万tあったのに対し約4,000tと半分弱の大きさしかない
ささやかな艦であったが、『清』が『定遠』級の装甲艦を装備するまで東洋随一の装甲艦として睨みを利かし、
国威の発揚に絶大なる力を発揮した。

また、汽走一本に絞った近代化改装をした後は日清・日露の両大戦にも参加し、旧式艦ながら奮戦、
勝利に貢献している。

時代は下がり、日露戦争後、英国は日本海海戦の戦訓を大幅に取り入れた戦艦『ドレッドノート』を建造し、世界中の
海軍の戦艦を(自国艦も含め)一気に旧式にしてしまった。(ドレッドノート・ショック)
e0266858_20572220.png
日本も英国に発注していた戦艦『香取』、『鹿島』が就役と同時に旧式化して大慌て、更には建造中の初の純国産戦艦
『薩摩』級二隻も完成前から旧式艦になってしまった。
e0266858_19103175.jpg
e0266858_19110017.jpg
そこで泥縄式に純国産弩級戦艦「河内」級を二隻建造するも各国の弩級戦艦に比べると片舷斉射時、全砲門を
効果的に指揮統率出来ないなど性能的に見劣りがする艦しか造れなかった。
e0266858_19123772.jpg
仕方が無いので再び英国から技術導入する事を目論み、超弩級巡洋戦艦『金剛』を発注したのだ。(記事No.144参照)

この時、建造元の英・ヴィッカース社からは『金剛』の図面提供は元より、建造中の造船所に研修員を多数派遣し、
技術導入の徹底を図った。

そして『金剛』の同型艦、『比叡』は海軍横須賀工廠、『『榛名』、『霧島』の各艦は民間の造船所で建造するという

日本船界自体の飛躍的造船技術レベル・アップを図る施策であった。

e0266858_21201568.jpg
 だが、世界最大最強の砲力(45口径35.6cm砲×8)を備え、世界最速を誇った『金剛』級であったが、所詮は防護力の
低い巡洋戦艦でしか無かった。

当然、海軍としていや、大日本帝国として『金剛』により学んだ最新の造船技術を生かした真の意味での超弩級戦艦を
保有する必要があった。

そして生まれたのが戦艦史上初めて排水量三万トンを超え、世界最強の35.6cm(45口径)砲を12門も搭載し、
速度も22ノット毎時と高速を発揮する世界最大最強の戦艦『扶桑』である。
e0266858_20122270.jpg
e0266858_20134287.jpg


(同型艦は『山城』のみ、『伊勢』、『日向』は問題点改修の目的で改設計され『伊勢』級となった。)

**************************************************

 日本の軍艦には命名法に慣習がある。

一等巡洋艦(装甲巡洋艦)には「山」名を。(「榛名」、「比叡」など)

二等巡洋艦(軽巡洋艦)には「河川」名を。(「利根」、「筑摩」など)

そして戦艦には「旧国名」をあてる事になっている。(「山城(京都)」、「武蔵(関東)」など)

しかし、『扶桑』と言う名の旧国名はどこにも存在しない、では『扶桑』とは一体、どの地方の事を指す名称なので
あろうか?

実は『扶桑』とは『日本国』の別称なのである。

だから『扶桑』と言う名は特別な艦にしか付けられない。

初代『扶桑』は明治海軍が初めて保有出来た、当時、東洋随一の装甲艦だった。

二代『扶桑』は『金剛』で導入した新技術を日本なりに消化した結果、建造出来た当時、世界最大最強最速の戦艦で
あった。

だから『扶桑』は時代を先取りした有力な性能を持ち、国民の期待が大きく掛った艦だけに用いられる
”特別な” 艦名なのである。

**************************************************

「本艦は過去の『三景艦』の様な巨砲を艦首に三門、固定装備すると言う変則的な設計で建造された。

『ガミラス』が使用している『陽電子ビーム砲』を上回る性能を出すためには砲の大型化が避けられなかったからだ。」
秋山は事実を告げた。

虚言を吐いて士気を高揚してもそれは一時の事で事実が知れ渡った時、落ちる士気の大きさを彼は知っていた。

「だから、この艦も他の『陽電子衝撃砲』搭載艦も全て艦首に固定装備するしか無かった。

そして、私は諸君「コンゴウ」、「ハルナ」、「キリシマ」を使ってにかなり無理な訓練をさせて来た。

この訓練は艦首固定の『陽電子衝撃砲』を有効活用するための訓練だった事を今、明らかにしたい。
あの”訓練”を成し遂げた諸君は必ずや戦果を挙げられると私が保障する。」秋山宙将は『フソウ』乗組員に
勝利を断言した。

ワシントン条約を生き残った日本帝国海軍の戦艦の内、最旧式の『金剛』級は元々、砲の搭載数が少なかったので
主砲の斉射時の爆風は大きな問題に成らなかったが、『扶桑』級は艦全体に連装砲塔をばら撒いた様な配置であり、
主砲斉射時の爆風は上部構造物に被害を与えるため、一斉射撃の変法である『交互打ち方』を主要せざるを
得なかった。

『交互打ち方』とは連装砲塔に装備されている二基の砲を交互に発射する方法であり、一回の射撃時の弾量は
『一斉射撃』の半分の弾量になってしまい、当時は公算射撃で照準を行っていたから『扶桑』、『山城』の
射撃命中率は大きく下がった。

しかし、元々、十隻しかない戦艦の内、二隻も戦力に成らないのは海軍として許容出来る事では無かった。

公算射撃の最低必要弾数は六発であったので、『扶桑』、『山城』の『交互打ち方』でも公算射撃の必要最小限度の
弾数は満たしていた。

だから海軍は『扶桑』、『山城』の乗組員に猛訓練を課して『交互打ち方』でも一斉射撃に劣らない命中率を得るまでに
乗組員の錬度を上げ、対米戦に臨んだ、そして当時の日本艦隊は米国戦艦隊の砲弾・散布界の1/3に狭まっていた
事が報告され、これが開戦に消極的だった海軍をして対米戦を決意させた一因であった事が伝えられている。

*「砲弾・散布界」:全砲門を発射した時その弾が落ちる範囲の事。この範囲を小さく出来れば命中率はあがる。

*「公算・射撃」:全力射撃の前に試射を行う、全砲門の半数の砲を用いて目標よりやや遠方に弾群を落とす、
          着弾時の水柱(一分以上立っている)を測距し、距離の補正を行なう。(第一射目)
          第一射目の距離データを元に今度は半数の砲で目標よりやや手前に弾群を落とす、
          再び着弾時の水柱を測距し、距離の補正が正しかった事を確認する。(第二射目)
          そして確定した距離で全砲門を開き散布界の内にどんどん砲弾を送り込めば(夾叉すると言う、)
          次々と命中弾を得、敵艦は轟沈する。(散布界が大きいとこの時の命中率が大きく下がる。)

**************************************************

「練達した諸君の技量が名誉ある艦名を汚さぬものである事は諸君自身が一番良く知っているはずだ。」秋山は凛とした
口調で訓示を終えた。

その時である、通信士から報告があった。

「照準・管制艦『ヨシノ』から入電! 『ガミラス』艦隊が最外殻防衛ラインに達しました。」

「よし!全艦、戦闘態勢で突撃! まず敵艦隊正面から攻撃、次に反航戦を挑む!」秋山司令の命令は常識に
反するものだった。

通常、反航戦は交戦時間が短く、一瞬で終わってしまうので、敵艦への攻撃を成功させることが難しいからだ。

たが、あの猛訓練を潜り抜けて来た兵達には秋山の”意”は一瞬で理解された。


 
                       


                                 146.夢幻の 宇宙戦艦・・・『扶桑』 (フソウ) ー (11)→ この項続く


[PR]
by YAMATOSS992 | 2014-07-26 21:00 | ヤマト2199 挿話 | Comments(0)
 <フソウ・・・? 艦番No.588号の名前は寄りにも依ってあの失敗戦艦『扶桑(フソウ)』の名を引き継ぐのか!」 秋山の
副官は呆れた。

「何で『扶桑』なんだと考えていたろう。」 秋山真彦は副官の方を振り返りもせず言った。

「判りません! なんで『改・金剛』級の中の最新鋭艦、艦番No.588号の名前があの失敗戦艦の名前なんですか!」
副官は納得往かなかった。

「君は大きな誤解をしている。 決して『扶桑』の名前は縁起の悪い物では無い。」 秋山は自分も『フソウ』の
最終チェックを手伝いながら言った。

「ではどう言う理由ですか! 私は納得いきません!」 副官は秋山に食い下がった。

「後にしろ! 今は『フソウ』の出撃準備に集中しろ!」 秋山は作業を続けながら副官を一喝した。

「りょ、了解しました。 最終チェックを続けます!」 副官は敬礼すると作業に戻ったがまだ納得していないのは
明らかだった。

軍艦乗りは縁起を担ぐ、特に自分の乗る艦の名前には皆大きな拘りがあった、これは軍艦が海上艦から宇宙艦に
変わっても同じだった。

<出撃準備が整ったところで、この艦の名前が何故『フソウ』なのか、乗組員全員に訓示しなくてはなるまい。>秋山は
長らく使われなかった名前の由来を思い出していた。

**************************************************

最今、注目を浴びる様になった大日本帝国海軍艦艇であるが、その戦艦群の中で『扶桑(フソウ)』、『山城』の姉妹艦は
失敗戦艦、残念戦艦とか、散々な評価を受けている。
e0266858_20290300.jpg
e0266858_05383349.png

確かにこの二隻は第二次大戦開始の時期では最古参の旧式艦と言われる事が多い。
(1941年の開戦時、1915~17年就役の艦齢約30年のベテラン艦だった。)

だが、第二次世界大戦(太平洋戦争)で最も活躍した戦艦群は『扶桑』級より更に艦齢の古い『金剛』級(1913~1915年
就役)であった。

日本戦艦12隻の内、八隻の虎の子戦艦が使い道のないまま後方任務に甘んじていた時、『金剛』級は空母を基幹とする
機動部隊に随伴、護衛として東奔西走していた。

夜陰に乗じてガダルカナル島の敵飛行場に接近し三式弾による艦砲射撃で滑走路に大損害を与えた事もあった。

何故、そんなオンボロ艦が『大和』、『武蔵』、『長門』、『陸奥』の新型艦を差し置いて活躍出来たのであろうか?

ここに用兵の妙があるのである。

 『金剛』級は本来、『巡洋戦艦』、英国流に言えば『バトル・クルーザー(戦闘巡洋艦)』として設計されていた。
e0266858_21482361.jpg
即ち、『速力こそ最大の防御』とする思想の元に建造された最後の『外注・軍艦』であった。 (完全外注は『金剛』のみ、
残り三隻は図面を譲り受けて『国内・建造』をした。

そして生まれた『金剛』級四隻による「世界最大、最強(当時世界最大の巨砲を持っていた)、最速」の巡洋戦艦部隊は
各国の羨望を集め、太平洋の平和を守る抑止力として実に三十年間に渉って君臨したのである。

これは後の戦艦『大和』、『武蔵』が世界最大の巨砲、46センチ砲を持っていたにも関わらず、秘密主義に徹したため、
抑止力としての効果は何も果たせなかったのと好対照であった。

しかし、そんな『金剛』型にも問題はあった。

それは『巡洋戦艦』であるため、その装甲板による直接防御力は『装甲巡洋艦』並みでしか無かった事である。

1916年、ユトランド沖海戦の結果、英国の巡戦は三隻も爆沈し、『速力こそ最大の防御』と言う思想が幻想である事が
明らかになった。

そこで海軍は新型」の主力艦(戦艦・巡洋戦艦)に水平・水中防御の強化を中心とする大改装を行った。

しかし、その結果、『金剛』級の速度は減じ、艦種分類は『巡洋戦艦』から『戦艦』に変更されてしまった。 (舷側装甲など
巡洋戦艦時代のままなのに、である。)

その後、国際的な海軍軍縮政策に基づく海軍戦略の変更により、高速・重火力の艦艇が求められた。

この艦艇は決戦に先立ち、魚雷戦巡洋艦となった重巡洋艦と駆逐艦からなる水雷戦隊に敵艦隊を攻撃させる時、
その防害に出てくるであろう米重巡洋艦隊を圧倒的な火力で排除出来る性能が求められた。

しかし、当時の日本には早急にその様な高速・重火力の艦艇を建造している余裕は無かった。

だから散々使い倒して後は廃艦を待つだけだった『金剛』級に更なる改装(第二次改装)を施してその任に充てたのだ。
(沈んで元々と考えた訳ではないだろうが・・・?)

その結果、30ノット毎時の高速を得た『金剛』級は『高速戦艦』(防御力は就役時と大して変わっていなかったのだが・・・)
として戦場を駆け巡る事が出来た。
e0266858_05093761.jpg
<要は軍艦は常に政治の道具だったと言う事だ。 しかし、今回の『対ガミラス』戦は少し様子が違う、文明の発達程度に
大きな差があって兵器の威力が違い過ぎる・・・。 奴らは我々に『戦争』を仕掛けて来ているのではない、『駆除』しに
来ているのだ。>秋山は悔しさのあまり唇を噛んだ。

<これを何とか『戦争』のレベル、『交渉』の余地のある『レベル』にするのが我々の任務だ。 それには我々の力を
ガミラスに認めさせる必要がある。>秋山の決意は悲壮だった。

「戦闘用意が整いました。 訓示をお願いします。」副官が報告した。

「よし、判った。」それだけ言うと秋山は艦内伝達放送のマイクを手に取った。


                                 145.夢幻の 宇宙戦艦・・・『扶桑』 (フソウ) ー (10)→ この項続く


[PR]
by YAMATOSS992 | 2014-07-21 21:00 | ヤマト2199 挿話 | Comments(3)

  漆黒の宇宙空間を疾駆する三つの影があった。

「リンク射撃の準備用意よいか?」戦隊長が確認命令を発する。

「三番艦リンク状態良好、二番艦もリンク射撃可能状態になりました。」砲雷長が報告をする。

「よし、艦長、進路そのまま、艦首を右舷90度に振れ!」司令席に着いた秋山は面室に指令を発した。

「進路そのまま! 姿勢制御面舵90度!」艦長の命令のまま、巨大なGに艦体を軋ませつつ、艦は大きく艦首を右舷に
向けた。

「二番艦、三番艦の射撃リンクはまだ成立しているか?」艦長が砲雷長に尋ねた。

「駄目です。 両艦ともリンク状態から外れてしまいました。」砲雷長が冷静に報告した。

「あっ、三番艦の射撃指揮装置が再接続、二番艦も復帰しました。」砲雷長が報告を訂正した。

「遅い・・・! 一撃目はともかく、二撃目は攻撃の本命だ。 チャンスは一度きりだぞ!」秋山は苦り切っていた。

何度訓練しても三隻が一体となった完全なリンク射撃の態勢を作れないのだ。

<シュミレーターでの訓練は順調だったのだが・・・。 やはり実艦での訓練は思うようにはいかない・・・、か。>訓練の
模様をプラントの防衛司令室のモニターで観察していた沖田宙将は隣にいた土方宙将の方を見やった。

「索敵・照準専門の艦を用意しよう、幸い我々にはまだ二隻の予備役戦艦がある。」土方が思いもかけない事を言った
ので沖田は驚いた。

「『ヨシノ』と『ミョウコウ』か、しかし、あの二隻も陽電子砲搭載改装をする予定で準備に入っとるぞ。」沖田は土方の
考えを計り兼ねた。

「幾ら数が揃った処で統率がとれなければ、烏合の衆、各個撃破されるだけだ。」土方はなおも必死で訓練を続ける
秋山の艦隊を見つめた。

「それこそ『三景艦』の轍を踏む訳にはいくまい?」土方は左後ろに居た沖田の方を見やった。

**************************************************

 『三景艦』それは明治海軍が必要に迫られ建造した三隻の中型『防護巡洋艦』だった。

『松島』、『橋立』、『厳島』と言う『日本三景』(日本の美しい名所)の名が付けられた事にこの艦艇群に対する当時の
日本国民の期待の大きさが判る、しかし、その設計思想は当時としてはそれなりに素晴らしいものであったが実現出来る
技術力が日本には未だ無かったのは残念な事であった。

 明治初頭、『大日本帝国』は中国大陸を支配する『清』王朝と朝鮮半島の利権を巡って対立していた。

そして『清』は独国に二隻の30センチ連装砲塔二基を装備した甲鉄艦を発注、保有する事に成功した。

だが、明治維新を成し遂げたばかりで経済力に乏しい『大日本帝国』にはその様な財力は無かった。

そこで国産で出来る最大級の船体に清国艦『鎮遠』、『定遠』の備砲を上回る32センチ砲、しかも砲の口径は『定遠』級の
砲が20口径であるのに対し38口径と約二倍の砲身長を備えた強火力の砲を一門だけ備える対『定遠』級を目指した
特異な防護巡洋艦であった。

e0266858_20192086.jpg
しかも『橋立』、『厳島』は巨砲を前方向けて一門を搭載し、『松島』は後方に向けて一門を積むと言う艦隊を組んで
やっと一隻の戦艦に成ると言う机上の空論を体現してしまったクラスであった。

元々、対『定遠』クラスを目指して造られた『三景艦』は敵の射程距離の外から攻撃する事を前提とした訳ではないの
だが舷側装甲は無く防護甲板と言って機関部や水線下の部分を守る水平装甲甲板が唯一の防御手段だった。

『鎮遠』、『定遠』と放火を交えたのは『黄海海戦』唯一度であったが、『三景艦』の巨砲は全く役に立たず、代わりに
副砲の12センチ速射砲が『清国』艦隊を焼き尽くした。

役に立たなかったカネー砲は水圧を利用した半自動砲であり、当時としては画期的なものであったが、当時の日本の
造船技術が稚拙でこの砲を積むに相応しい大きさの艦体を用意出来なかったのが大きな理由であった。

何しろ、このカネー砲を旋回させると艦体が傾き、発砲すると艦の進行方向がズレ、一々、進路を戻さねば成らなかったと言われている。

しかも発射速度が遅く、のべ4時間半の海戦で発射された回数は松島4・橋立4・厳島5の合計たった13発だったと
言われる。

いくらなんでも一時間約一発と言うのは当時としても遅すぎる発射速度であった。

「機動砲」と名付けられたこの新型砲は水圧駆動を主に動力源としていたが、当時の技術ではそれをまともに動かす事
すら出来ず、また動いても直ぐ故障するという惨憺たる有様であった。

この軍艦造船技術の未熟さは「機動砲」に限らず、推進機関である三段膨張式レシプロ蒸気機関にも現れ、
「黄海海戦」では本来、殿艦を務めるはずの『松島』が『連合艦隊』旗艦として先陣を切って戦った、『橋立』、『厳島』は
機関が不調で後方に下がらざるを得なかったのである。

**************************************************

日本宇宙海軍の諸士官が今回の『コンゴウ』型、『改・コンゴウ』型に対してガミラスに対抗する手段として『陽電子砲』
一門を艦首に搭載する案を聞いた時、真っ先に思い出したのがこの『三景艦』建造の失敗であった。

だが秋山真彦三等宙将は『三景艦』が失敗したのは「建造技術の未熟さ」の他に「運用・技術の非確立」が大きかったと
考えていた。

そしてその「運用」に必要な「乗員の訓練」が不足していた事も看破していた。

だから沖田宙将の「キリシマ」を修理半ばで借り出し、土方宙将が回航して来た『コンゴウ』、『ハルナ』も加えて実戦
訓練を繰り返していたのである。

<やはり、彼は天才だ、普通の指揮官ならシュミレーターでの訓練で満足してしまい実艦を用いた訓練までしてみよう
とまでは思うまい。>訓練の状況報告を聞いた国連宇宙海軍総司令ギュンター・シェーア大将は思った。

確かに今のシュミレーターは単に映像だけでなく艦の進路変更に伴う”G”の再現、ダメージを受けた状況の再現などが
忠実に行われる、しかし、やはり実艦での訓練は絶対必要な事を今回の実艦訓練結果は示していた。

だが、それ以上にシェーア提督が気掛かりだったのはガミラスの動向だった。

秋山達、ガミラスが来襲しないのは日本宇宙海軍の新造戦艦の改修とその乗員の訓練が続けられるので
僥倖と言えたが、土星会戦から二月が経とうとしているのに何故か、ガミラス艦隊の姿が木星近傍に現われないのは
不気味だった。

<ガミラスは既に木星に地球陣営の拠点であるエネルギー・プラント群が在るのを掴んでいるはずだ。

それなのに、何故、襲って来ない? 何故、我々に時間をくれる様な事をする?>やはり異星生命体のやる事は
理解出来ないとシェーア提督は思った。 
e0266858_15423811.jpg
木星衛星群の内、最外殻軌道を廻るパシェフェ衛星群の軌道に光学探知式の早期警戒衛星が紛れ込ませてあった。

衛星は完全に岩塊に偽装されていたため、電波発信さえしなければ『ガミラス』に発見される恐れは少なかった。

光学探知がレーダー探知に劣るのは大気のある場所での話である。

探知に必要な時間を考えれば光学探知はレーダー探知の半分の時間で敵を見つけられるのである。
( 但し、射撃指揮に用いる場合はレーダー照準の方が精度では勝れる。)

その衛星の一つが侵攻してくる『ガミラス』艦隊を探知した。

その主力艦の勢力は十隻と少なかったが地球陣営にとっては充分すぎる脅威であった。

秋山は直ちに迎撃用の艦隊の出撃を命じた。  

それに呼応して第一戦隊の「ヨシノ」、「ミョウコウ」、「ヒエイ」、「チョウカイ」が迎撃のため出撃して行く。

「第二戦隊、「フソウ」の出撃準備はまだ整わぬのか?」秋山は『改・金剛級』八番艦、艦番No588号の名を呼ばわった。

「只今、最終チェック中です。あと少し、ほんのチョットで良いから時間を下さい。」造船部から悲鳴の様な返事が来た。

「それなら機関回りのチェックを重点的に行ってくれ、それが終わったら即、出撃だ。 砲頓・射撃指揮装置回りの
チェックは航行しながら乗組員で行う。」それは秋山の悲壮な決意が垣間見えた瞬間だった。


                                  144.夢幻の 宇宙戦艦・・・『扶桑』 (フソウ) ー (9)→ この項続く


[PR]
by YAMATOSS992 | 2014-07-17 21:00 | ヤマト2199 挿話 | Comments(0)

 「『あれ』ってやはり『ヤマト』ですか? 世界最大最強の戦艦・・・。 やはり『ヤマト』しかないですよね。」副官は目を
輝かせた。

「フッ、世界最大最強の戦艦『大和』・『武蔵』か、『戦艦の時代』に幕引きをした戦艦だ、縁起でもない、『大和』・『武蔵』の
名は使えないな。」秋山は副官の言葉をにべもなく否定した。

「はぁ、じゃぁ何と名づけるんです!」副官は意外だと言う顔をした。

「今、日本が保有する宇宙戦艦の名前を全部言えるか?」秋山は当たり前の事を聞いた。

「はい、今、実働しているのは『コンゴウ』、『ハルナ』、『ヨシノ』、『ミョウコウ』、修理・改修中の『キリシマ』、建造中なのが
『ヒエイ』、『チョウカイ』、そして艦番588号です。・・・ あっ。」その全ての名が『山名』である事に副官は気が付いた。

今の日本には本当の意味での宇宙戦艦は存在しないと考えられているのだ。

本来なら日本の戦艦(宇宙戦艦)なら『長門・陸奥』の様な『旧・国名』が与えられるはずなのだから・・・。

日本の海軍(宇宙海軍)は最初の宇宙戦艦を保有出来た時、それがまだ列強に肩を並べられる艦か、自信が無かったのかもしれない。

だから、代わりに『準主力艦(装甲巡洋艦、巡洋戦艦、重巡洋艦)』に付ける名前の内、最高の名前である『コンゴウ』を
選んだ。

e0266858_09590009.jpg
「これも『明治・海軍』以来の伝統かもな・・・。」秋山は悪戯っぽく笑った。

「じゃぁ、秋山さんは艦番588号にも『山名』を考えておられるのですね! となれば、霊峰『富士(フジ)』ですか?」
明治時代の前弩級戦艦以来の名を告げた。
e0266858_09525233.jpg
「・・・フフッ、さてな。 俺の一存では決められん、上の意向も聞いてみないとならんしな。」秋山は副官をその場に残し、
ゲルハルト・フォン・ベア少佐が居る、『試製・陽電子ビーム砲』の到着現場に向かった。

**************************************************

カコーン・・・鹿威しの音が響いて辺りの静寂さを強調した。 ここは木星・プラントで働く人々が疲れを癒せる数少ない
休養施設『料亭・富士』の日本庭園だった。

小さな池に掛った橋の上で秋山は私服姿(とは言っても背広姿だったが)である人物を待っていた。

程なく和装姿の女将に連れられて二人の男がやって来た。

女将は皆に一礼するとその場を去り、後には二人の男が残されていた。

一人は柿渋色の和服に黒い帯を締めたこの庭園に相応しい出で立ちだったが、もう一人は日本宇宙海軍の制服を身に纏っていた。

「沖田さん、『お一人で』とのお約束だったはずですが・・・。」秋山はただ相手が二人連れだったから眉をしかめたのでは
ない、軍服姿の男が土方三等宙将だったからだ。

「我々は、君も含めて常に誰かの監視に晒されている、今更、変装しての密談などと無意味だ。」土方は鼻を鳴らした。

「やれやれ、この密談は『土方提督の説得』を沖田さんに頼むためのものだったのに、『本人』に来られてはこの会談の意味は無くなりましたね。」秋山は沖田の方に顔を向けて微笑んだ。

「そんな事はあるまい、お前が真実、人類のためだけに働いているのなら・・・な。」目深に被った日本宇宙海軍制帽の
陰に土方の鋭い目が光った。

長い、長い沈黙が三人の間に流れた。

「沖田さん、『キリシマ』を私に下さい。」秋山は沖田にとんでもない要求を突き付けた。

「馬鹿な! 史上最年少の提督とは言え、実戦経験も無い若造に大事な艦や乗組員を預けられるものか!」沖田では
無く土方が吠えた。

「言いたくありませんでしたが、沖田さん、貴方は第一次、第二次内惑星戦争では英雄でした。 
でも今回のファースト・コンタクトでは『ガミラス』に惨敗しました。
これは『ガミラス』との戦いが今までの人類同士の『和やかな戦争』とは違っている事を表しています。 
もはや指揮官が老錬だろうが新米だろうが状況に適切に対処出来る者が求められているのです。」秋山は傲慢とも
取れる発言をした。

「まぁそう言うな、土方。 秋山君、君の目論見を言ってみたまえ。単純な戦力増強ではないだろう。」沖田は秋山の
思惑を見抜いていたが、敢えて尋ねた。

「はい、今、『改・金剛』級の戦艦が急ピッチで建造されつつあります。  但し、この三隻は新たに『陽電子砲』を積む事に
なりました。

しかし、残念な事にアームストロング社とクルップ社の技術を合わせても砲塔に搭載出来る程に小型化する事は
出来ませんでした。」秋山は冷徹な事実を告げた。

「それで艦首に一門だけ搭載する設計にした訳か? しかし、それでは『三景艦』の再現になりかねんぞ。」土方も鋭く
切り込んだ。

「明治時代じゃあるまいし、リンク射撃の技術はハード・ソフト共に充分に発達しています。  三隻で戦隊を組めば
ガミラス艦一隻分位の戦力にはなるでしょう。」秋山は自分の計画を述べた。

「『戦隊』と言ったな? まさか、三隻、一個・戦隊で終わりではあるまい?」沖田は全てを見通していた。

「艦番No.588号は設計を大幅に変更して『陽電子砲』を三門束ねて」艦首に装備します。

これで少しはガミラス艦に近づけるでしょう。」秋山は秘策を明かし始めた。

「これで”形”だけは”戦艦二隻の一個戦隊”と言う訳か、だが、それではガミラスの圧倒的戦力には及ばない、 まっ、
元より寡兵なのは覚悟の上の作戦だがな。」沖田は下を向いて皮肉な笑みを見せた。

「欧州連合の力を借りて試製・陽電子砲の量産化は進めています、そして艦齢の新しい艦から優先して陽電子砲の
搭載を進めています。」秋山は説明を続けた。

「ですが、一番艦齢の古い『コンゴウ』、『ハルナ』、ファースト・コンタクトで中破した『キリシマ』の修理・改装は一番
後回しになります。」 折角戦力の一助になればとの考えで木星まで回航してきた土方宙将、中破した『キリシマ』の
ダメージ・コントロールを指揮して奮闘・帰投した沖田宙将には酷な言葉だった。

「ですが、新造艦の就役を待つ間、『コンゴウ』、『ハルナ』、『キリシマ』を遊ばせて置く訳には参りません。」 秋山が
それだけ言うと沖田と土方は顔を見合わせてニヤリとした。

「そう言う事なら喜んで儂の『キリシマ』を渡そう。 土方が持ってきた『コンゴウ』、『ハルナ』もな。」 沖田の返答に土方
宙将は承知しないと秋山は思ったが、案に反して土方は黙ったままだった。


                                  143.夢幻の 宇宙戦艦・・・『扶桑』 (フソウ) ー (8)→ この項続く


[PR]
by YAMATOSS992 | 2014-07-08 21:00 | ヤマト2199 挿話 | Comments(0)