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宇宙戦艦ヤマト前史

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宇宙戦艦ヤマト登場前の地球防衛軍の苦闘を描きます。

<   2014年 08月 ( 9 )   > この月の画像一覧

 「敵艦隊発見! 前方十二時方向、距離十万km、五隻が横陣にて高速接近中!」『シャルンホルスト』からの警報が
船団中に響いた。

「敵艦は宙雷戦隊、駆逐艦のみで構成された部隊だ、間もなく魚雷攻撃を仕掛けてくる物と思われるが、各艦、迎撃は
光速兵器のみで行い、反物質弾頭・魚雷は温存せよ!」フローラー・ライニック大佐の凛とした声が船団を護衛している
護送艦隊中を引き締めた。

護送艦隊の最先端に位置した『グナイゼナウ』は三連装のレーザー砲塔を片舷・二段に装備していたが、上段の砲塔と
下段の砲塔を少しずらして角度を持たせるとその状態で二組の砲塔の位置関係はそのままに28cmの大口径レーザーを
放ちつつ、砲塔全体をスイングさせた、光速兵器特有の”撫で斬り”効果だった。

遙か前方の空間で爆光が煌めいた、かなりの数のガミラス・魚雷を迎撃したが、まだ取り溢しの魚雷が船団目指して
迫って来ていた。
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今度は土方の指揮する『コンゴウ』と『ハルナ』が36cm口径三連装高圧増幅光線砲塔三基を使ってその取り溢しの
ガミラス・魚雷を迎撃した。

しかも、今度は”撫で斬り”では無く、一点集中する事で高圧増幅光線砲の欠点、有効射程の短さを補う日本宇宙海軍、
伝統の”狭い散布界”を実現する秘儀を見せ、確実に船団に迫る魚雷を一発、また一発と処理していった。

同じころ距離七万kmまで迫った敵艦隊・本隊の一艦は『シャルンホルスト』からの攻撃を受けていた。

28cmの大口径レーザー十二条による集中砲火である。

しかし、高圧増幅光線砲のビームも受け付けないガミラス艦の装甲は幾ら大口径でも一昔前の兵器であるレーザーの
攻撃など、蚊に刺された程にも感じないはずだった。

しかし、そのレーザーを被弾した駆逐艦は方向制御を失って迷走し始めた。

フローラーは七万kmの大遠距離から敵駆逐艦の艦橋を射抜いたのである、艦体は無事でも艦橋の窓を通して入ってくる
大口径レーザーの威力は大幅に削がれていたとはいってもそこにいた艦橋要員を殺傷するには十分過ぎる力を残して
いた。

土方の指揮・迎撃で、接近する魚雷は四十発以下までに抑えられていたが、その数はまだまだ、脅威だった。

<フレイア、あなたの出番よ、 私は船団防空に専念する! 敵駆逐艦隊本隊の迎撃をお願い!>フローラーが
”念話”でフレイアに告げた。

<待ってました! さっきはこっちの火器管制システムを乗っ取って魚雷を迎撃しやがったもんな、”貸し”は返して
貰うぜ!>フレイアは舌舐めづりをすると操縦桿を握り、姿勢制御して敵艦隊に艦首を向けるとフル・スロットルで
ガミラス艦隊に向かった、慣性制御があるとはいえ、それを上回る加速Gが艦橋を襲う、艦橋の一際高い場所である
艦長席に座らせてある小ぶりの”テディ・ベア”が転げ落ちた。

「艦長! ”大佐”が転げてますよ! Gのかけ過ぎです! 本艦はビンテージ物ですからぶっ壊れますよ!」
コ・パイロット席で身をよじりながら副長が悲鳴を上げた。

確かに『シャルンホルスト』級の建造計画は2169年、艦齢三十年の第一次内惑星戦争の落とし子だった。

「”大佐”は”ぬいぐるみ”だ、床に転がろうが、真空に晒され様が痛くも痒くも無い!放っとけ!」フレイア・
ライニック中佐はそう言い放つと艦を右方向に急ロールさせた、グナイゼナウが今までいた空間をガミラスの
陽電子ビームが舐めてゆく、正に光速兵器の行筋が見えている様だった。
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「前部対艦ミサイル発射用意! 但し、一基だけだ!」フレイアは姉の禁じた対艦ミサイル攻撃を行うつもりだった。

ガミラスの放つ陽電子ビームを上下左右に最少限度の動きでかわしながら、彼我の距離を詰める、『グナイゼナウ』の
艦橋直前の艦体に三ケ所ある対艦ミサイル・ランチャーの内、一か所の長方形をしたそれが僅かに持ち上がり内側に
吊るされた三基の対艦ミサイルが顔を覗かせた。

『グナイゼナウ』の射撃・指揮官、ロン・シュナイダー大尉はフローラー・ライニックに次ぐドイツ艦隊きっての射撃・指揮官
であり、かつ、フローラーと異なって射撃より、ミサイル管制に優れた力を発揮する男だった。

彼が放ったたった一基の『反物質』ミサイルは一隻のクリピテラ級航宙駆逐艦の前方魚雷発射管四基、VLS八基が
集中して装備されている区画にもろに命中した。

反陽子弾頭ミサイルが詰めてあったVLSはプラント攻撃で使い切り、空であったが、発射管の方は接近戦になったら
使うつもりで圧縮陽電子弾頭・魚雷が一連射分残してあった。

この為、『反物質弾頭』と圧縮陽電子弾頭が誘爆をおこし、その爆炎は左右を突撃する僚艦も包み込んだ。

前にも記したが『反物質弾頭』の爆炎は破壊効果を保ちつつ広がる、フレイアはその名の如く、辺りを炎で嘗め尽くした。

これでライニック姉妹は五隻の敵艦のうち、四隻を葬った事になる、残る一隻は転移(ワープ)すると撤退していった。

「すげェな、おい、あの姉ちゃん達、ミネルバ(戦いの女神、軍神マーズの妻)の生まれ変わりかい?」ライニック姉妹の
働きを見た菅野少尉は誰に言うとも無く呟いた。

しかし、自分の乗艦の直ぐ前を航行していた同型艦の後部に背負い式に搭載された12,7cm連装レーザー砲塔が
迅速に回っているのに気が付いて後方監視スクリーンを見た。

彼等、菅野と古代 守の乗艦、艦隊型駆逐艦『さみだれ』の砲塔も虚空の一点を指向しようとしていたが、射撃・指揮官の
古代はそうはさせまいと砲塔の手動操作ハンドルを抑へ込んでいた。

「おい、古代、何をやってるんだ!」菅野は古代の行動を咎めた。

「俺はこの艦の射撃・管制官だ、その俺が操作してもいないのにこの砲塔達は勝手に廻って行きやがる!
それを止めるんだ!」古代は馬鹿正直な応えをした。

「馬っ鹿じゃないの? 何を『お姉ェ』いや、ライニック大佐の邪魔をしてるの! 駆け出しは隅っこにすっこんで
いなさい!」

通信用モノ・クロ・スクリーンに文字通り怒りに髪を逆立てた美女の姿があった。

「誰だあんたは! 何の権利があって俺の指揮権を奪う!」古代 守は彼女の肩章が中佐である事に気付いてはいたが
無視して噛みついた。

「馬鹿もん! 何をしとるか!」美女の映像が消え、沖田宙将の怒声と顔が映った。
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「フローラー・ライニック大佐の射撃は”神技”だ、その技を良く見て覚えるんだ。」沖田は静かに諭した。

「フローラー・ライニック・・・? どこかで聞いた名前だな? あっ!」菅野はその名前に聞き覚えがあった。

<彼女は確か、冬季オリンピック、バイアスロン競技の常勝、金メダリストだったはず、しかし、一隻なら兎も角、これだけ
多数の軍艦の射撃・指揮・管制を行えるとは思えないが・・・。>菅野は沖田の言葉とはいえ個人競技と艦隊戦を同列に
考える事は出来なかった。

「艦隊、各艦、姿勢制御、そのままの位置で進行方向に対し九十度姿勢を変更、全砲門を使って接近する敵・魚雷を
迎撃する!」ライニック大佐の命令は即座に実行に移された。

地球艦はほとんどどの国も両舷に最大火力を集中出来る様に設計されていた、艦隊型駆逐艦『かげろう』型十隻、
12,7cm口径レーザー、六十門、軽巡『エムデン』級四隻、15.5cm口径高圧増幅光線砲八門、『コンゴウ』級戦艦三隻、
35.5cm口径高圧増幅光線砲三十六門の濃密な弾幕がガミラス・魚雷の接近を阻み、ただの一発も船団に辿り着かせは
し無かった。

「すげェ~な。これだけの数の砲、IT制御でもしなければリンクさせる事など不可能だぞ、欧州連合の艦隊はそう言った
システムを積んでいたとしても日本艦隊はそんな装備も訓練もしていなかったんだが、一体どうやってこのリンク射撃を
実現したんだ?」古代 守は自分も砲雷長(火器・管制官)と言う役目がら、彼女のやった事が如何に奇跡的な事なの
かが判った。

しかし、沖田が<よく見て学べ!>と言った事には何をどうやって学べば良いか、見当も付かなかった。

**************************************************

 フレイアは艦橋の床の片隅に浮かんでいた熊のぬいぐるみを手に取って拾い、艦長席に再度、座らせると今度は
急なGの変化にも飛ばされる事の無い様、四点式シート・ベルトで固定してやった。

「”大佐”、さっきはごめんなさい、今度は大丈夫よ、これでもう飛ばされないわ。」先程の戦闘で見せた荒い気性は
どこへやら、やけに少女趣味のある所をみせたフレイアだった。

「艦長、ずいぶんとしおらしいんですね。 見直しましたよ。」副長のケラン・クランケ少佐がからかった。

「し、仕方ないでしょ!私は艦長だけど中佐、本来は軽巡の艦長が精々よ、熊の”大佐”が必要なの!」普段の自分らしく
ない言動に自分でも戸惑った彼女は訳の分からない言い訳をした。

本来、重巡や戦艦の艦長は”大佐”がなるものである、シェーア提督の計らいでフレイアは”中佐”でありながら
重巡『グナイゼナウ』の艦長を任されていた。

「散々、敵・味方のビームの下を一緒に潜った俺達にはあなたが”中佐”だろうが”大佐”だろうが、そんな事はどうでも
良い事です。
あなたは”フレイア・ライニック”であればそれで良い! それが”戦場”でも”銀板の上”でも関係ありません!」初老の
ベテラン副長、クランケ少佐は親指を突き出した握り拳をフレイアの方に突き出してウインクした。

<ケラン、あなたは私の過去を知っているのね・・・。>フレイアは自信に満ちてスケートリンクを滑っていた時の事を
思い出していた。

<あの時の方が遙かに厳しかった、今は敵は倒せばいなくなるけど、フィギャア・スケートの選手権を争っている時は
ビームもミサイルも飛んで来ない代わりに最強の敵、”自分”と戦い続けなければならなかったのだから。>フレイアが
しばし、感傷に耽っているとそれを打ち破るかの様に探査主任の声がガミラス艦隊の接近を告げた。

「ガミラス艦隊出現! 本艦と船団の中間空域です!」思いも依らない空間点に出現したガミラス艦隊にフレイアは姉、
フローラーに”念話”で状況を報告した。

<敵艦の勢力は同じく宙雷戦隊、しかし、数は十個ですって! そんな大量の魚雷、処理し切れないわ!>フローラーは
事態の深刻さに唇を噛んだ。

<大丈夫だ、姉貴、先程、襲って来た宙雷戦隊は一個、こちらの手の内を探る威力偵察だったのは明らかだ。 
だとすればこれが敵の主力、こいつ等を叩けばもう敵の襲撃は無い!>フレイアは勝利を確信した。

『グナイゼナウ』が進行方向を変えぬまま、艦首を後方のガミラス艦隊に向けた、ロン・シュナイダー射撃・指揮・管制官は
『シャルンホルスト』級の最強の武器である『反物質弾頭・対艦ミサイル』を隠していた艦首前方の三連装ミサイル・
ランチャーを三基とも全開にすると同時に九発の対艦ミサイルを宙に放った。

まさか、後ろから攻撃されるとは思っていなかった、ガミラス艦隊は一気に九隻の駆逐艦を失った、しかも彼等は
宙雷戦隊一個毎に鶴翼陣を組んでいたのでロン・シュナイダー大尉は隊長艦を推定して攻撃を加えたのである。

しかし、惜しむらくは最前列で鶴翼陣、先頭をきって突撃していた総司令、ルミナス少将のクリピテラ級を撃ち漏らした事だった。

通常だったら指揮系統をズタズタにされたガミラス艦隊は大混乱に陥った事であろう。

しかし、ルミナスは宙雷戦のベテラン、こうした事態にも充分、対応出来る様、部下を訓練していた。

各宙雷戦隊では二番艦が直ぐに隊長艦を引き継ぎ、混乱は殆ど見られなかった。

そして小ワープによる全艦接近を命じた。

一艦、また一艦と消えてゆく様子は彼等より内惑星に近い宙域にいた『グナイゼナウ』のフレイアより、フローラーに
伝えられていた。

もちろん、『グナイゼナウ』は『反物質ミサイル』を最後の一発まで使って敵駆逐艦の接近妨害を図ったが、残り二十発の
ミサイルで撃沈出来たのは五隻が精一杯だった。

フローラーは敵が接近戦を仕掛けてくる事を予想し配下の『エムデン』級軽巡に船団周囲に『反物質ミサイル』を各艦、
十基、遊弋させておく様、指示した。

かつて、彼女が木星ー地球間の交通路をガミラスの通商破壊艦から『Z』級駆逐艦を用いて守っていた時に多用した戦法だった。
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ガミラス艦はワープが出来る、これはワープの出来ない地球艦にとって決定的なハンデである。

しかし、ガミラス艦がワープして実体化した時にそこに別の物体があったらどうなるか、物質重複を起して大爆発を起し、
全ては光子となって飛び散るのだ。

運よくミサイルと物質重複を起さなかったとしても自艦の至近にある『反物質ミサイル』は自動的にホーミングを始め、
その敵艦を逃す事は無かった。

だが、この迎撃は敵艦のワープ終了点を正確に予想する必要があり、『昏き狙撃手』、フローラー・ライニックと言えども
完全には予想し切れなかった。

十一隻のガミラス駆逐艦が生き残った、ルミナス総司令も悪運強く生き残っていた。

「やってくれたな、我が精強を誇った宙雷戦隊・部隊ももはや十一隻か、テロンの勇者よ、天晴だぞ! だが、ここまで
接近すればこちらの勝ちだ!」ルミナスは勝ち誇った。

「もはや、『Z作戦』に掛けるしかない! 軽巡、艦隊型駆逐艦は持てる全ての『反物質ミサイル』を発射、船団周囲に
『反物質』の弾幕を張れ! 沖田提督! 『Z作戦』の発動指示を!」フローラーは指揮権を沖田提督に戻した。

船団の前後左右を固めた軽巡部隊がその恐るべき破壊力、一艦、九十基、四艦・合計360基の反物質ミサイルを
放った。
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破壊力を秘めた爆炎が辺りの空間に広がってゆく、その様子を満足気に見つめたフローラーだったが、ミサイル
発射後の軽巡部隊の姿に訝しげに眉をひそめた。

「ミューラー中尉、艦体姿勢を攻撃態勢から、航行態勢に戻しなさい! それでは敵ミサイルの良い”的”です!」
フローラーはその艦、『エムデン』の艦長を呼び出した。
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「今までお世話になりました。 あなたの元で働いたのが私にとって人生最良の時でした。 本艦は攻撃力を
使い果たしました。 後は一基でも多くの敵・魚雷を引き付けて船団に辿りつかせない様にするだけです。」
通信モニターに映ったミューラー中尉は告げた。

「私はあなたが”好き”でした。フレイア、意気地の無かった私を許して下さい。」そこまで言うと通信モニターはプツリと
切れて暗黒になった。

「『エムデン』、『ゼーアドラー』、『フランクフルト』、『ケーニヒスベルク』、軽巡部隊、全艦が船団の”盾”となって
爆沈しました。」副長であり、航法士のゲルハルト・バルクホン中尉が悲しげに報告した。

<あの馬鹿! なんでこんな時にコクるの! 卑怯よ!>直接、通信を受けていなかったフレイアがフローラーの
頭の中で感情を爆発させた。

<彼、”あなた”と”私”の特殊な関係に気付いていたみたいね・・・。>フローラーは人の想いの深さがもたらす
底知れぬ力に脅威を抱いていた。

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 <フッ、『小娘』め、やっと音を挙げたか・・・。しかし、相手が『宙雷戦隊』とはいえ、よくぞここまで対抗した。>土方が
口蓋の縁を歪めつつ、微笑したが心の奥では驚愕が渦巻いていた。
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「土方、高圧増幅光線砲の全艦リンク射撃の用意を! 乱戦になるから敵味方識別に注意しろ! 艦隊型駆逐艦は
”特殊ミサイル”を敵艦に叩き込め!」沖田は淀みのない司令を発した。

日本艦隊の艦隊型駆逐艦は『カゲロウ』級だったので『反物質ミサイル』を搭載したVLSは十八基持っていたが、
それは全て先程のフローラーの弾幕形成命令で発射し、既にその中身は空だった。

しかし、『カゲロウ』級十隻はその他に両翼に張り出したパイロンに三基づつ、計六発の『特殊ミサイル』を装備していた。

そして通常は自艦が突撃する事などない艦隊型駆逐艦がまるで猛禽の様にガミラス艦隊に襲い掛かった。

ルミナス総司令はそれを見てニタリとした、<あの”強力弾頭ミサイル”や”反陽子弾頭ミサイル”はこれだけ船団に
近くては使えまい、それ以下の破壊力では我が艦隊の装甲を破る事は不可能だ!>ルミナスは勝利を確信した。

だが、地球・駆逐艦がガミラス・駆逐艦に接近、発射したミサイルは通常の物では無かった。

それはその弾頭に詰められていたものは粘着性の液体だった。

それはガミラス艦の砲塔やミサイル・ランチャーにこびりつき、旋回を妨げ、また、外部監視装置の幾つかを殺した。

「総司令、敵艦のビーム攻撃を受けて、我が艦隊は炎上しています!」副官が信じられないと言った顔で報告した。

「炎上? ここは宇宙空間だぞ! 酸素も無いのにどうして艦が炎上するんだ!」ルミナスは自分達の置かれている
状況が理解出来なかった。

<日本海軍伝統の”水軍戦法”の一つ、”火打ちの計”だ。>沖田は秋山の知恵に感服していた。

日本海軍が戦った戦争の内、勝てるはずの無い戦いが二つあった。

日清戦争と日露戦争である、日清戦争は清が保有する二隻の装甲艦、『定遠』、『鎮遠』の二隻は装甲が厚く、
日本海軍の保有する艦艇の砲ではその装甲を破る事が出来ず、必敗は免れ得ないものと思われた。

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しかもその対策として建造した三隻の特殊防護巡洋艦、『三景艦』はものの見事に役に立たなかった。

だが、日本海軍の使用する砲は最新式の英・アームストロング社製の速射砲だった。

この砲は口径が12cmと小さい代わりに発射速度が11発/分とべらぼうに早く、(当時の標準砲は毎分1発)これで
『清・艦隊』の非装甲部分を炎で嘗め尽くし、戦闘力を奪い、勝利した。

『鎮遠』、『定遠』の装甲内部は全く被害は無かったがそれ以外の部分はスクラップ状態になるまで叩きのめされていた。

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日露戦争時、ロシアのバルチック艦隊は何故あのような大航海を、しかも執拗な英国の妨害を受けてまで成したのか、 
疑問を持つ人も多いと思う。

旅順艦隊が健在だった頃は合流出来れば日本海軍の倍の勢力となり、充分、政治的な道具となるはずであったが、
旅順艦隊が絶滅した後もバルチック艦隊の総司令、ロジェストヴェンスキー中将は何故、ウラジオストック入りに
拘ったのであろうか?

それは当時の装甲の防御力と砲の攻撃力が全くバランスしておらず、当時の砲戦距離八千~一万m付近では
装甲の防御力が圧倒的に勝っており、当時の常識では戦艦は砲では沈められないと思われていたからだ。

だから彼は日本海軍から逃げ切ってウラジオストックに入港し、日本海に睨みを利かす第二の旅順艦隊に
なれるつもりでいたのだ。

実際、日本海海戦でも日本側が徹甲弾を用いだしたのは彼我の距離が二千mを切ってからである。

しかし、日本側が砲戦を開始したのはかの有名な”敵前大回頭”を行った後で砲戦距離は約六千mであった。

先程記した様にこの距離では徹甲弾は使えない、だから、日本海軍は着発信管(伊集院信管)を付けた榴弾を用いて
「焼き討ち」戦術に出た。
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榴弾には日本独自の新発明「下瀬火薬」が詰められ、バルチック艦隊は文字通り炎に包まれた。

ロシアの水兵の一人は自艦の主砲が鉄製にも関わらず、炎を上げて燃えている様を見て戦意を喪失した。

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実際は砲が燃えていた訳では無く、砲身を塗装したペンキが燃えていただけなのだが、敵そのものでは無く、
敵の「人心」を攻める事を旨とした日本海軍の方針が間違っていなかった事を示す逸話である。

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 ガミラス艦隊にも同じ事が起こっていた、真空中での火災というありえない事態に遭遇した十一隻にまで減じていた
クリピテラ級航宙駆逐艦は各艦、ルミナスの命令も無いまま、勝手にゲシュタム・ジャンプしてこの場を離れ、炎から
逃れようとした。

しかし、艦体に張り付いた粘着物質は適度な酸素を含み、ゆっくりと燃焼しながらガミラス艦の艦内温度を上昇させ
続けていった。

<ぬう、腰抜け共め!>敵前逃亡を図る部下達の姿に怒りを隠せないルミナスだったが、眼前に広がる光景に息を
呑んだ。

一隻のクリピテラ級・駆逐艦が敵・船団の只中にゲシュタム・アウトし、そのままエンジンの耐熱限界を超えたのであろう、
数隻の脱出船を巻き添えに爆発して果てた。

ルミナスは勿論、艦橋に居た全員はそのクリピテラ級・駆逐艦(最早、名前も判らなかったが)の奮戦ぶりに敬礼して
いた。

「本艦の状況を報告! ゲシュタム・ジャンプはまだ出来るか?」ルミナスもまた、かの艦と同じ様に船団中央に転移、
船団を巻き添えに爆沈する覚悟だった。

「駄目です! 機関室の温度が上がりすぎて最早、ゲシュタム・ジャンプは出来ません! 一刻も早く突撃命令を!」
機関長はルミナスの心を読んでいるかの様に一斉突撃命令を促した。

「ようし、皆、行くぞ、最後の突撃だ! テロンに目に物を見せてくれるわ!」唯一隻残ったルミナス艦は魚雷は
使い尽くしていたので280mm連装陽電子ビーム砲、133mm陽電子速射砲、防御ミサイル発射ランチャーから
辺り構わず破壊を振りまきつつ、突撃した。

燃える粘着物質に絡め取られていたのでその照準は出鱈目だったが、少しでも最後の目標に辿り着くための助けに
なればそれで良かった。

そして彼、ルミナス総司令が最後の目標に選んだのは『シャルンホルスト』だった。

『シャルンホルスト』は最早、反物質ミサイルは使い尽くしていた。

突入態勢を完成させた今レーザーでブリッジを射抜いても敵艦の突撃は止める事は敵わなかった。

<フレイア、今まで有難う、後は宜しくね。>フローラーは覚悟を決めていた、<お姉ェ、諦めるのは早いぜ、艦体を
ロールさせてやり過ごせ!>フレイアの悲鳴に似た”念話”がフローラーの頭の中に響いた。

<駄目よ! 私がよけたら奴は船団に突っ込んで甚大な被害が出る! 幸い、敵は本艦を狙って突撃して来ている。 
本艦は『盾』の役を降りるわけには行かないのよ!>フローラーの決意は固かった。

フレイアは直ぐにでも姉の元に駆けつけたかったが、冷徹な物理法則はそれを許してはくれなかった。

ここで減速しては再度船団の速度に合わせるのに新たに推進剤が必要になるのだが、その推進剤は既に先程の突撃で
使い切っていたのだ。

欧州人であるフレイアはこうした事を冷静に分析し、姉の為に部下の命まで懸けさせる訳には行かないと決心し、
唇を噛むのだった。

「お姉ェ!」”念話”では無く、フレイアは実際に悲痛な叫びを挙げていた。

「『重力震』確認! 何者かがワープ・アウトして来ます!」情報士官の言葉にフレイアの顔は凍りついた。

地球艦にワープ出来る艦は無い、ワープ・アウトして来る艦はガミラス艦なのは間違いなかった。

<ここまで来て戦局がひっくり返されるのか!>沖田も苦渋の表情を浮かべた。

だが、ワープ・アウトして来る艦艇は無く、代わりに一条の極太・陽電子ビームが煌めき、『シャルンホルスト』の真近まで
迫っていたルミナス艦を貫き爆沈させた。
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だがその陽電子ビームを放った艦はワープ・アウトする事無く、『重力震』もいつの間にか消えていた。

<一体、何が起こったんだ・・・。>フレイアは事態を飲み込めずにいた。

<あの陽電子ビーム、色がガミラスの物と異なっていたわ、地球艦なら我々を助けてくれた意味は判るけど・・・。>地球艦でワープの出来る艦は未だ無い、フローラーも思考が混乱していた。 

そんな中、記録映像を繰り返し見た沖田と土方は一つの結論に達していた。

あの陽電子ビームの色は地球製の高エネルギー密度・陽電子砲のものだ、しかも複数のビームに縁りを掛けて一本に
絞った様なビームは『フソウ』の物に間違い無いと。

しかし、秋山艦隊は敵戦艦隊との戦闘で敵艦隊を全滅させるも僚艦は全て全滅、『フソウ』も行方不明になっていた。

<死んだものと思っていたが、我々の戦いをどこからか見てくれていたんだな・・・。秋山真彦>沖田は手元の写真から
顔をあげて静かになった宇宙を見つめつつ言った。

「その智謀、湧くが如し。・・・か。」<正にあの日本海海戦を完全勝利に導いた作戦を立案した『秋山真之』作戦参謀の
子孫に相応しい男だった。>最後の攻撃はどの様に行われたものか、沖田や土方にも不明だったが、その方法が
どうあれ、秋山真彦参謀総長ならどんな不可能も可能にしただろうと沖田は信じて疑わなかった。

そして『扶桑』はもはや失敗戦艦の代表ではない、人は言うだろう、奇跡の戦艦、いや、時空さえ越えて見せた

『夢幻の宇宙戦艦 「扶桑(フソウ)』 と。


                                  
                                 155.夢幻の 宇宙戦艦・・・『扶桑』 (フソウ) ー (20)→ この項 了

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by YAMATOSS992 | 2014-08-27 21:00 | ヤマト2199 挿話 | Comments(22)
 <フッ、テロンの連中、こんな戦局の展開は考えて居なかったろう、さあ、全艦、前方のテロン・拠点・要塞に
持てるだけの反陽子弾頭・魚雷を叩き込め!>ルミナス司令は力強く命令した。

五十余隻のクリピテラ級航宙駆逐艦が前方魚雷発射管四門、後方魚雷発射管二門、前上甲板VLS八門、計十四門の
発射管から反陽子弾頭を付けた魚雷が地球陣営が経営していたエネルギー・プラントに吸い込まれて行った。
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猛烈な爆炎が木星赤道軌道上に存在していた地球側エネルギー・プラント群の上に煌めき、全てを破壊して行った。

その光景を見つめ、恍惚とした表情を浮かべたルミナスだったが、彼の座上した艦の艦長が声を掛けた。

「テロン艦隊が急迫して来ます! 迎撃命令を!」

「反陽子弾頭・魚雷は使い切った! 敵艦隊の迎撃は陽電子ビーム砲で行う、圧縮陽電子弾頭魚雷はまだ使うな!」

普通なら艦首方向四門、艦尾方向二門の魚雷発射管に残弾があれば、それを使って攻撃すべきところだが、ルミナスは
テロン艦隊なら陽電子ビーム砲の方が敵の正体不明の強力弾頭・魚雷を迎撃するのに相応しいと考えたのだ。

しかし、地球艦隊はこちらに正面を見せる立体梯形陣で接近してきた。

一列に横並びしていてくれればビームを薙ぐ攻撃で同時に何隻も葬れる、しかし高度を一隻毎に変えてこられては
その戦法も通用しない。

余程、熟練した射撃指揮官なら斜めにビームを薙ぎ払う神業で一網打尽にする事も考えられたが辺境のさほど
重視されていない本戦線にはそうした熟練兵はあまり配属されていなかった。

何の躊躇いも無く急接近する地球艦隊、陽電子ビームを喰らえばたちまち爆沈する事は目に見えているのに彼等は
そんな事にはお構いなく接近を続けた。

<こいつら、鬼神か!>ルミナスは交錯する陽電子ビームを物ともせず突撃してくるテロン艦隊に背筋が寒くなった。

しかし、次の瞬間、ルミナスは自分が重大な過ちを犯した事に気が付いた。

彼はテロン・拠点・要塞攻撃の為に艦隊を散開させて、拠点を取り囲む様な態勢を取らせていたが、これではテロン
艦隊が梯形陣で急迫してくるのに対し、散発的な攻撃しか出来ない、兵器で勝ち、数で勝っていても有効な打撃を
与えられないのは明らかだった。

それにクリピテラ級航宙駆逐艦の陽電子ビーム砲は攻撃も出来るがどちらかと言えば防御用であり、後部の
133mm速射・陽電子砲と艦底の280mm連装陽電子ビーム砲を両方とも活用するのには艦尾を敵に向けて戦うという
軍艦乗りなら最もやりたくない戦い方をしなくてはならなかった。

<今から慌てて陣形を整えるより、現在位置と向きのまま、敵艦隊を迎え撃つ方が混乱の中、自分(達)を見失って
戦うよりは、ずっとましだ!>ルミナスは各艦長の判断を信じる事にした。

「間もなく敵艦隊は我々のいる宙域を通過する、各艦、現在位置のまま、最適な迎撃を遂行せよ!」ルミナスは簡潔な
命令を発した。

確かにゾル星系派遣軍には経験の少ない新兵が多かった、しかし、その反面、彼等を指導する意味で老練な指揮官も
少数ではあるが派遣されていた、そして艦の要である艦長は優秀な男か、経験豊富か、どちらにしても揺ぎ無い指揮を
執れる者が配置されていた。

「司令! 態勢を整えないと効率的な迎撃は出来ません!」副官が悲鳴を挙げた。

「慌てるな! 非効率でも防御・迎撃が出来れば良い、こちらはもう目標である敵の要塞・拠点は破壊した、
後は引き上げるだけだ。」戦略目標を破壊出来た事にルミナスは満足だった。

しかし、地球艦隊は団子になったルミナス艦隊の一部と砲火を交えただけでさっさと地球方面に逃走していった。

ガミラス艦隊は陽電子ビームを振り回したが戦果を得る事は無かった。

反対に地球艦隊の高圧増幅光線砲は威力は少なかったが照準は正確で何隻かの駆逐艦が中破、戦闘不能になった。

だが、地球艦隊それ以上に戦果を拡大しようとはせず、直ぐに母星の方に向かって一路、帰投軌道に乗って行った。

ルミナスは怪訝な顔をしたが、副官は単純に喜んだ。

「司令! 見て下さい、敵は守るべき拠点・要塞を失って尻尾を巻いて逃げて行きますよ!」彼は子供の様に喜んで
いた。

しかし、ルミナスはテロン艦隊の動きにはあまり疑問を感じなかった、拠点防衛に失敗した以上、防衛艦隊は出来るだけ
無傷で帰還し様とするだろう、何も不思議はない、だが、彼は別の点が気になった。

<我々が攻撃したのは敵の”拠点・要塞”だな? では何故、我々が反陽子弾頭・魚雷の攻撃を行った時、要塞側から
何の迎撃も無かったのだ? これはおかしい!>ルミナスは情報士官を呼び寄せると協議し始めた。

**************************************************
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 ヒッパー中将は玉砕してまでガミラス軍を叩くつもりはさらさら無かった。

戦病死したシェーア大将は大事なのは人材だと常々言っていた。

だから、プラントの技術要員は早めに脱出させた。

そして、今、現在、生き残っている防衛艦隊も極力、多くを、脱出させるつもりだった。

<秋山国連宇宙海軍総参謀長、奴は『モ』号作戦の実態がプラント要員の撤退作戦だと言いおった、まさか本当に
そうなるとは思いもしなかったな・・・。>

ヒッパー中将はシェーア提督にあの秋山三等宙将を紹介された時の事を思い出して苦笑した。

彼は秋山があまりにも若い将官だったのでその能力に疑問を持つと同時に嫉妬の炎に胸を焦がした。

欧州連合艦隊次席の誇りも大きく傷つけられた。

しかし、数日後、そんなヒッパーの元に秋山は訪ねて来た。

ヒッパーは彼の顔を見るのも嫌だったが、任務上は上官である、仕方なく自分のオフィスに通すと秋山はいきなり
敬礼した。

戸惑いながら敬礼を返すと「欧州艦隊副指令ヒッパー中将、アジア連合宇宙艦隊参謀秋山三等宙将、意見具申に
参りました。」と秋山は言った。

ヒッパーが無言でいると秋山は「ご多忙のようです。 失礼します。」と言って退室しようと廻れ右をした。

「待って下さい! 国連宇宙海軍総参謀長秋山少将、お話を聞きましょう。」ヒッパーは慌てて秋山を止めた。

ここには別の部下もいる、総参謀長を話も聞かずに追い返したとあっては今後の士気に関わる、指揮官としてここまで
上り詰めたヒッパーにはわざわざ秋山がもう一つの顔、アジア連合宇宙艦隊参謀を名乗った意味が判った。

「今、アジア連合では未成艦三隻の陽電子砲・搭載計画が進んでいます。」秋山は仇敵に手の内を明かした。

本当は『金剛』型四隻、ファースト・コンタクトで中破した『キリシマ』もその中に入っていたのだがそこまで明かす必要は
今は無いと秋山は踏んでいた。

「欧州連合でも新型艦の建造が計画されており、それらの新型艦には当然、陽電子ビーム砲を搭載するつもりだと
推測しています。」と秋山は相手の顔を立てたが本当は欧州連合の新鋭艦はまだ図面も出来上がって居なかった。

「しかし、我が国の南部重工業の開発によるとガミラスのエネルギー発生方法が判らぬ以上、エネルギー密度は低いが
破壊効果の高い陽電子ビーム砲の製造は不可能だそうです。

しかし、エネルギー密度が高くても良ければ開発は可能ですが、南部重工業では数年掛るとの予想が出ました。」

「何が言いたいのかね? 総参謀長。」ヒッパーは皮肉な笑みを浮かべた。

「国連宇宙海軍は英・アームストロング社、ヴィッカース社、独・クルップ社と大砲製造の老舗全てに同時発注を
掛けたいのです!」秋山は大胆な提案をした。

「三社に競争させると言うのかね! それは駄目だ、彼等の誇りを傷つけ兼ねない!」ヒッパーはにべも無く撥ね付けた。

「いえ、私は『競争』では無く、『協力』を望んでいます。 ガミラスは何時襲って来るか判らない、時間が無いのです。」
秋山の瞳は真剣だった。

「それなら、シェーア国連宇宙軍総司令に頼めば良いでしょう。 総参謀長殿。」出来た陽電子砲を今建造中の自国の
艦に搭載しようとしているのは明らかだった、<こんな、要求呑んでたまるか!>ヒッパーは心の奥で毒づいた。

「いえ、あなたでなければ駄目なのです。 シェーア提督はガミラス戦が始まってから出来た国連宇宙海軍の総司令、
つまりにわかづくりのお飾りです。
勿論、かつては欧州連合宇宙軍にその人ありと謳われた猛者であるのは否定しません。 
しかし、現役を離れて何年も経つ提督が軍需産業に影響力を発揮出来るとは私は思えません。」秋山は言ってはならぬ
事を言った。

「シェーア提督が『お飾り』だと! だったら、その『お飾り』に指名されて国連宇宙軍総参謀長、つまりNo.2の地位にいる
お前は何者だ!」ヒッパーは立ち上がって秋山を指さし強弾した。

「はてさて、『道化』ってところですかね。 『滑稽な仕草』で将兵全ての目を見るべき所に導くのが私に出来る精一杯の
事です。」秋山は下を向いて照れ臭そうに嗤った、しかし、次の瞬間、ヒッパーの顔を見つめると鋭く言った。

「そして『道化』が示した『方向』にどの様に艦隊を導くか、それが『指揮官』であるあなたの役目です。
米ソの連合艦隊は土星会戦で全滅しました! 残るは欧州連合艦隊、アジア連合艦隊、太平洋合同連合艦隊が
大きな勢力として残っていますがその内で最大の戦力を保持しているのは欧州連合です。 
そして、その実質最高司令官はあなたです。 あなたはかつての上司、シェーア提督を慕っておいででしょうから
気付かないでしょうが、外部から見ればやはり欧州連合の最高司令官はあなたなのです!」秋山の目には炎が
宿っており、ヒッパーは己の小ささを思い知らされた。

「よし、了解しました。三社には友人も多くいます。 確かに私が頼めば連携して陽電子砲を開発する事も不可能では
ないでしょう。
そして、陽電子砲を開発・製造する時間を稼ぐ為、土星宙域に通商破壊艦隊を派遣します。」ヒッパーは二十歳も年下の
漢に快い敗北を感じていた。
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「では私はその陽電子砲を使いこなせる乗組員を養成して置きます。 どの道、砲塔に搭載出来る様になるまでの
小型化は出来ないのです。  戦艦を単座戦闘機の様に扱える様にして見せます。」秋山は力強く約束したが、
ヒッパーは秋山が<戦艦を単座戦闘機並みに扱える様にする>と言った言葉の、その覚悟の強さに言葉を失った。


                                 155.夢幻の 宇宙戦艦・・・『扶桑』 (フソウ) ー (20)→ この項続く
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by YAMATOSS992 | 2014-08-25 21:00 | ヤマト2199 挿話 | Comments(0)
 「さて、そろそろこちらも迎撃準備を始めようか? 土方、用意は良いか。」沖田は欧州艦隊の生き残りと
純粋な人員輸送船を護衛、一路、地球に向かいつつ陣形を整え始めた。

中央に人員輸送船団を置き、その外周を欧州艦隊の生き残り(というか、ヒッパーが艦隊決戦に向かない艦として敢えて
外した通商破壊艦群)が固め、更にその内側を艦隊型駆逐艦で抑え、その輪形陣の最先端、右翼に戦艦「コンゴウ」、
左翼に「ハルナ」、そして最後尾は「キリシマ」が守っていた。

 <何だか、普通の船団護送の陣形とは逆の様な気がするな、お姉はどう思う?>これまで、ガミラスのエネルギー
輸送船団を襲っていた重巡航艦(通商破壊艦)『グナイゼナウ』の艦長、フレイア・ライニック中佐は同型艦、
『シャルンホルスト』の艦長、”双子の姉”であるフローラー・ライニック大佐に”念話”で話掛けた。

一卵性双生児の彼女らは”心”が一つに繋がっており、その戦術・連携は他の追従を許さなかった。

また、”念話”は二人の間だけで成立する物であり、インカムを通す必要などないので、私語(?)もし放題だ。

<あなたって本当に馬鹿ね。 敵は空間転移(ワープ)が出来るのよ。後ろから馬鹿正直に追ってくる訳ないじゃない。>
射撃能力に秀でた姉のフローラーは”昏き狙撃手”と呼ばれるほど射撃照準に勝れていた。

そして、彼女はその能力を買われ、今回の待避船団の護衛艦全ての射撃・指揮・管制を任され、最後尾の「キリシマ」の
直ぐ前に陣取り、全天・全周に目を光らせていた。
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対するにフレイアは”虚空の舞姫”の二つ名を持つ操艦の達人だった、だからその任務は輪形陣の先頭に位置して襲来
した敵艦隊を攪乱、襲撃の妨害をして時間を稼ぐ事だった。

これは陽電子ビーム砲を持つ敵艦に接近するという危険な任務だったが、彼女は今までも何度となく敵の弾幕を
かわして接近、「反物質弾頭」ミサイルを叩きこんで戦果を挙げてきた、それはまるで光速で走るビームの行筋が
見えているようだと評されていた。

最後尾の『キリシマ』に陣取った沖田はフローラーが配下の軽巡部隊、艦隊型駆逐艦部隊を整然と整えて防御陣形を
完成させてゆくのを見て満足しつつ、思った。

<若い”力”はやはり洋の東西を問わぬ様だ。 さて、こちらも敵艦隊の迎撃作戦の細部を打ち合わせするとするか。>

沖田は”土方”と”菅野”、”古代”を含む日本艦隊諸艦長と迎撃・戦闘の詳細を再度確認した。

”迎撃”これは常に”受け身”の作戦である事を運命づけられている、何時、戦闘が始まるか、それは”攻撃”側に
主導権がある・・・と思われがちであるが、攻撃して来る敵を兵器の射程外で発見し、逆に攻撃を仕掛けて戦闘の
主導権を奪い取る事は充分可能である。

第二次世界大戦時の”バトル・オブ・ブリテン”などこの先制攻撃型迎撃戦の代表である。
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英国は接近するドイツ空軍機をドーバー海峡沿岸に設置したレーダー・サイトで遠距離から察知、スピット・ファイアや
ハリケーンと言った迎撃機を早期に空中待機させて迎え撃ち、そしてドイツの英国上陸を目指した『アシカ作戦』を
断念させる事に成功した。

また、同じく第二次世界大戦中、米海軍は日本の特攻機対策として二つの効果的な作戦を取った。

1. レーダー・ピケット艦による哨戒

  艦隊の周囲に大型のレーダーを装備した駆逐艦やフリゲートを配置し、一早く特攻機の接近を探知した。
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2.戦闘空中哨戒(CAP)
  戦闘機の編隊を艦隊上空に交代で待機させ、ピケット艦からの情報をもとに直ぐに特攻機の迎撃を行うと言う極めて
  効率の良い戦術であった。
  (しかし、これは金満国家、米国だから採用出来た戦術でもあった。)
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しかし、この”警戒線を引く”と言う考え方は非常に応用の効く効果的な戦術であった。

太平洋戦争末期、日本本土は硫黄島から発進する超重爆撃機B29の脅威に晒され続けていた。
(B29の発進基地はサイパン島でした。sengokuさん、ご指摘ありがとう御座いました。)
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しかも迎撃に当たる日本戦闘機の上昇限度である高度一万mを余裕で侵入して来たのである。

日本機の方も上昇限度であるから昇れはするものの、その高度に達するには何十分も掛り、昇った時にはB29の投弾は
終わり地上は火の海、悔しいから送り狼になろうとしてもとても追いつかない、日本はそんな情けない状況に追い込まれ
たのである。
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しかし,日本機は上昇出来ない訳ではない、充分に前もってB29の侵攻を知っておけば迎撃機を空中に待機させておいてたった一度の正面攻撃ではあるが迎撃は不可能ではない事に気が付いた人がいたのである。

しかし、常時、戦闘機を交代で空中待機させておく戦闘空中哨戒(CAP)は貧乏な我が国には実施不可能だったが、
もう一つ解決の方法があった。

それは直接の戦力には成らないが日本近海の海を知り尽くした漁師達が乗った漁船で日本近海の洋上の彼方に
哨戒線を引くと言うものであった。
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冗談の様な戦術だが海を知り尽くした彼等は何十日もの間、海上で粘り続け、B29接近の情報を本土に送り続けた。

この漁船からの通報を元に本土防空戦闘機隊は素早く離陸出来、B29を待ち伏せ攻撃した。

彼等、名も無き勇者達がいたからこそ本土防空隊のエース達も活躍出来たのだ。

この戦術が有効な事に気付いた米軍は潜水艦による漁船攻撃と言う非人道的な行為も厭わなかったし、哨戒船攻撃
専門のB24哨戒機や75mm砲を装備したB25襲撃機を戦線に送り込んで殆ど非武装に等しい漁船を冷酷に沈めまくった。

この様に守るべき物の回りに警戒線を引き、そこからの情報をリアル・タイムで知る事が出来れば大変、有利になるので
ある。

但し、ガミラスとの戦闘では敵が空間転移(ワープ)の技術を持っている以上、どの空間から襲ってくるか、検討も
付かず、こちらは受け身に成らざるを得ないと考えられた。

しかも今回、日本・欧州残存艦隊が護送するのは民間船、リ・アクティブ・アーマーはおろか、索敵用の長距離レーダーを
装備いている船など、皆無であった。

だから、沖田と土方は三隻の『金剛』型戦艦と『グナイゼナウ』をピケット艦として使い、ピケット艦から得た情報を使って
どこをどう攻撃するのか、判断、司令を下す中央・指揮・戦略艦として『シャルンホルスト』を指名、独自の戦闘情報網を
敷いた。
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攻撃の主体は独・第一特務戦隊・軽巡『エムデン』級四隻、日・艦隊型駆逐艦『陽炎』型十隻の”反物質弾頭ミサイル”である。

この他、元々、通商破壊艦であった『シャルンホルスト』級も”反物質弾頭ミサイル”を搭載していた。

『金剛』型戦艦の内、最も艦齢の古い『コンゴウ』、『ハルナ』は”反物質弾頭ミサイル”運用のアビオニクスを搭載して
おらず、”反物質弾頭ミサイル”は使用不能だった。

『改・金剛』級の『キリシマ』は元々運用可能だったが、ファースト・コンタクトで中破した際、アビオニクスの有った区画に
大損傷を受け、その後、修理もされないまま、陽電子砲射撃訓練に駆り出されたのでこれまた戦力外に成っていた。

<全く、主力戦艦をピケット艦に使うのに何の躊躇いも無いとは、流石、土星宙域でガミラス艦隊を半年も
足止めした艦長だ。>土方は船団右翼を固めた『コンゴウ』の艦橋で更に前方の空間を航行する『グナイゼナウ』の姿に
感無量だった。

だが、スクリーンに写るその姿に何か違和感を感じた。

『グナイゼナウ』は直進方向に艦首を向けてはおらず、横方向に推進していた。

民間船を多数連れているので速度は比較的遅く、軍艦である『グナイゼナウ』は姿勢制御スラスターでもその速度は
維持出来た。

しかし、土方が疑問に思ったのは『グナイゼナウ』の姿勢であった。

本来、通商破壊艦として建造された『シャルンホルスト』級はレーダーの様なアクティヴな探知装置は最小限度しか
持たず、変わりに光学式(パッシヴな)の探知システムは日本艦隊のどの艦も持っていない程、充実したものだった。

<確か、『シャルンホルスト』級の主探知装置は艦橋の直下、主装甲板を挟んだ下にある装甲球に覆われた
カールツァイス製大望遠鏡だと聞く、しかし、今『グナイゼナウ』はその通商破壊艦としての生命とも言える
その大望遠鏡をこちらに向けている、あれでは接近するガミラス艦隊を発見出来ない・・・何を考えてる!>土方は
スクリーンを操作して後方を固めた『シャルンホルスト』を映し出した。

「むう・・・。」土方はそこに映っていた『シャルンホルスト』の姿に一声唸って自分の考えが浅かった事を恥じた。

土方の考えでは後方に位置した『シャルンホルスト』は『グナイゼナウ』と反対に艦底を後方に向け、後方宙域に監視の
目を向けているはずだった。

しかし、現実には『グナイゼナウ』と同じ様に大望遠鏡は船団内部方向に向けられていた。
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この配置では船団外部の探査は出来ない様に思える、しかし、船団の位置より低めの位置に『グナイゼナウ』、高めの
位置に『シャルンホルスト』が位置していると前方監視は『シャルンホルスト』、後方監視は『グナイゼナウ』と一見、
矛盾した配置だが、前方にいる『グナイゼナウ』が前方監視を、後方にいる『シャルンホルスト』が後方を監視する
常識的な配置にすると周囲の監視は出来るかも知れないが船団内部の監視は出来ない。

しかし、前方監視は後方に位置する『シャルンホルスト』が、後方監視は前方に位置する『グナイゼナウ』が行う態勢に
すると船団内部まで監視の目が行き届く、確かに敵は空間転移(ワープ)を実用化しているガミラスだ、突如として船団の
直近に現れる可能性も考えられる、そこまで考慮した監視態勢である事に気付いたから土方は唸ったのだ。
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<『背中を預ける仲』とは言うがここまで大胆な預け方を俺は知らない、余程、相方の技量と心を信じていなければ
執れない『預け方』だ。>土方は二人が姉妹である事を知らなかった、そして当然、彼女達の心が”念話”で一つに
繋がっている事も、だが、もし真実を聞いたとしても堅実な彼はそんな”超常現象”は信じ無かったに違いなかった。

<さすが、通商破壊戦に長けたドイツ(宇宙)海軍、船団護衛に回ってもその戦術は高度なものだ。>土方はかつての
日本海軍が日清、日露の両大戦時は通商保護を重視した作戦計画を執ったのに対し、太平洋戦争では支配圏を
拡大しすぎて補給線を守り切れず、また米国の潜水艦隊の存在を軽視し、補給線を荒らし廻られても何の対策も
執れず、最終的には”敗戦”に繋がった事を思い出し苦笑した。




                                 154.夢幻の 宇宙戦艦・・・『扶桑』 (フソウ) ー (19)→ この項続く

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by YAMATOSS992 | 2014-08-22 21:00 | ヤマト2199 挿話 | Comments(3)
 木星の赤道付近の衛星軌道上に眩い光点が幾つも煌めいた。

ガミラスの反陽子弾頭魚雷が無人になった、地球側エネルギー採掘プラントを破壊してゆく光だった。

「くそっ、ガミラスめ!」古代 守は唇を噛んだ。

<プラント・がやられたと言う事は、それを防衛していた国連宇宙軍・欧州艦隊も全滅したと言うことだ。>史上最年少の
提督、秋山実彦三等宙将の同窓生だった古代 守は小憎らしい友人も失った事に落胆を隠せなかった。

「古代、どうしたこんな事位でへこたれていたら、またあの秋山に笑われるぞ!」艦隊型駆逐艦『さみだれ』の操艦席に
座った同窓生の菅野一郎一等宙尉が射撃指揮装置を扱う古代 守に声を掛けた。

「なぁ、菅野、俺達も死ぬのかな・・・。」古代 守がポツリと言った。

「ああ、死ぬ、確実にな。 だが、それは「いつか」だ! 今はその時じゃない、秋山は陽電子・衝撃砲が間に合わなかった
場合に備えて最後の一手を残してくれた、それが、お前や俺が木星プラントで受けていた特訓だ。」菅野が力強く応えた。

『いい加減にしろ! お前達の私語は艦隊中にダダ漏れだぞ! 今は無線封鎖中だと言う事を忘れるな!」残り少ない
国連宇宙海軍の艦艇を率いている土方司令が喝をいれた。
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戦闘配備中の艦艇の内部は慣性制御を切っており、空気はあるが何時機密が破られるか判らないので気密服の着用が
義務付けられている。

だから直ぐ隣りの人ともインカムで話をせざるを得ず、そうすると会話の内容は全艦隊中に筒抜けになるのだった。

古代と菅野の私語を叱った土方だったが、ヒッパー総司令から木星からの撤退戦を命じられた時、彼自身、
陽電子・衝撃砲も無い自分達がガミラスを撃退して地球船団を無事に地球に送り届ける自信はなかった。

しかし、秋山はこの時を予想していたかの様に陽電子・衝撃砲に頼らない作戦を立案していたのだ。

勿論、秋山は陽電子・衝撃砲を搭載した戦艦の整備に全力を挙げ、なんとかガミラスの侵攻作戦に間に合わせた。

だが、陽電子・衝撃砲を使わない作戦(仮に『Z作戦』と呼ぶ。)も訓練は続けさせていた。

<秋山の予想が最悪の形で実現してしまった訳か・・・。しかし、史上最年少の提督、真に『智謀、湧くが如し』だな。>
沖田はシェーア総司令の元に秋山を送り出した時の事を思い出していた。

**************************************************

ガミラスのテロン(地球)・ズッピスト(木星)・要塞・拠点(エネルギー・プラント)攻撃作戦はルミナス総司令によって
一部内容が変更されていた。

”デストリア”級による防衛艦隊の釣り出し、防衛艦隊の居なくなった敵・拠点にズッピスト(木星)の陰から反陽子弾頭
魚雷の雨を浴びせる計画だったのだが、どうやら敵も陽電子砲を入手し、”デストリア”級艦隊を阻止したのみ為らず、
殲滅させたらしい事が判ると、ルミナスは最早、”囮”作戦の意味が無くなった事を悟って方策を変える事にした。

<やはり、”奇策”に頼るのは軍人の本分ではない! それにしても敵の最高司令官、天晴な奴だ。自軍にキッチリ役割
分担を設け、”デストリア”級艦隊迎撃と、拠点防衛とを分けて混乱を生まない様配慮している! 私もそこまで
信じられる部下を持てたら良かったのだが・・・。> ルミナスは自分の優柔不断さは棚に上げて作戦を変更せざるを
得なくなった責任を部下に押し付けていた。

だが、彼も一応、一軍の将である、艦隊の陣頭指揮を執るとなるとその指揮は冴えわたっていた。

「全軍、横陣で前へ、ズッピスト(木星)の陰から出る! 敵艦隊に探知されるから加速を続けて的に成らない様に
気を付けろ! 敵艦隊直前まで迫ったらそこで手持ちの反陽子弾頭・魚雷を全て敵拠点に叩き込め! 敵艦には
構うな! 敵の拠点・要塞の破壊が目的だ!」ルミナスの指令にガミラスの将兵は今まで内に秘めていた闘志を
燃やしズッピスト(木星)の陰から踊り出し、テロン・要塞・拠点に向かって突撃を開始した。

ガミラス艦は”クリピテラ”級駆逐艦が装甲が薄弱とは言ってもそれは陽電子ビームに対しての事である、地球艦隊の
高圧増幅光線砲では地球艦は駆逐艦クラスはおろか、巡洋艦クラスの物でも通用せず、辛うじて戦艦クラスの
高圧増幅光線砲が損害を与えられると言う状況だった。

だから、ヒッパー新司令はシェーア提督の生前、戦艦部隊を前面に押し出し、駆逐艦、巡洋艦は後方からVLSによる
反物質ミサイル攻撃を掛ける事を打ち合わせていた。

このミサイルは陽電子と反陽子で出来たを『反水素』を磁場で弾頭に無理やり詰め込んだとんでもないしろものであった。

反陽子爆弾と陽電子爆弾が同時に炸裂する様なものである、破壊力は既存の兵器のどれよりも勝っていた。

破壊力から言えば反陽子弾頭で充分なはずであったが、地球の兵器開発の伝統は『破壊力』に満足する事は無かった。

**************************************************

ズッピスト(木星)の陰から躍り出たルミナス提督のガミラス宙雷戦隊十個はいきなり目の前に弾幕が張られて驚いたが
その突撃速度は全く鈍る事は無かった。

と、その爆炎のまだ濃い所に艦首を突っ込んだクリピテラ級航宙駆逐艦が何隻か大爆発を起こして吹っ飛んだ。
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「何!」突然の出来事にルミナスの頭は真っ白になったが、軍人の本能はすぐさま艦隊の減速を命じていた。

これが『反物質弾頭』の恐るべき特性の一つであった。

通常、圧縮・陽電子・弾頭も、反陽子弾頭も爆発して飛び散り、その飛散粒子に当たったものが対消滅反応を起こして
光子に変換されるがその反応は迅速であり、爆発危険範囲はさほど大きくない、しかし、『反物質弾頭』は反物質とは
いえ、一応安定した(反)水素の形態を保っている。

勿論、通常物質の『水素』より遙かに寿命は短いが、反陽子や陽電子とは比べ物になら無い位、半減期は長いので爆発したその空間付近には危険な反物質(反水素)が漂い、破壊半径は反陽子、陽電子弾頭の比ではない。

そんな『反物質』弾頭が作った『爆炎』に突っ込むなど自殺行為なのだ。

だが、これは既に『土星会戦』で使われており、ガミラスの木星侵攻を遅らせた大きな要因だった。

ルミナスは『土星会戦』後に着任した補充要員であり、地球側の”強力弾頭魚雷”の存在を知ってはいたが実戦で
出会ったのは初めてであった。(だが、その正体が『反物質』弾頭魚雷である事までは思いも依らなかった。)

<敵も”反陽子弾頭”を使っているか! よし、それならば、こうしてやる!>ルミナスは突撃する自艦隊、各艦の間隔を
大きく採る様、指示を出した、個艦の損失は仕方が無いが、複数の艦が誘爆する事を避けようと考えたのである。

<敵の防御線を突破出来ればこちらの勝だ!>彼は地球人の好戦的性格を甘く見ていた。

こちらが乱戦に持ち込めば敵は同士討ちを恐れてあの”反陽子(?)弾頭・魚雷”は使えないと踏んだのである。

「司令、あの爆発は”反陽子弾頭”では在りません。 もっと強力な弾頭です!」誘導弾・指揮・管制官が進言した。

その声にルミナスが振り向くと初老のザルツ人が座席から立ち、敬礼していた。

一等ガミラス人に二等ガミラス人が意見を言う、普通なら処刑処分も有り得る不敬罪だった。

だが、ルミナスはザルツ人の勇猛さと戦闘に関するセンスを高く買っていた。

「判った、それでは 本艦隊は、敵陣の強硬突破は止め、ゲシュタム・ジャンプで敵艦隊と敵要塞・拠点の間に跳ぶ!」
ルミナスは先程のザルツ人の覚悟に心を動かされ、冷静に状況を分析した。

<確かに彼の言う通りだ、あのミサイル攻撃は強力過ぎる、あの戦艦部隊から行われた物では無い。
幾らこちらが強硬突破しようとしても後方に布陣した別の艦隊からのミサイル攻撃では避け切れない。
ミサイルの誘導は目前の戦艦部隊が行っているからだ。
だったら敵要塞・拠点と防衛艦隊の間にジャンプし、まず敵要塞・拠点に”反陽子弾頭・魚雷”の雨を叩き込んでやる。
残った防衛戦艦隊は慌てて引き返してくるだろうが、そちらの相手は陽電子・ビーム砲で沢山だ。>ルミナスは
ほくそ笑んだ。




                                 153.夢幻の 宇宙戦艦・・・『扶桑』 (フソウ) ー (18)→ この項続く
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by YAMATOSS992 | 2014-08-19 21:00 | ヤマト2199 挿話 | Comments(14)
 地球艦隊の残存艦、三隻がそれぞれロケット・アンカーで捕らえたガミラス艦は間も無く各艦の陽電子・衝撃砲の軸線に
乗り、艦の機関部を撃ち抜かれて宇宙の塵となった。

自由になった地球艦は十六点回頭も成し遂げ、残る一隻のガミラス艦を追った。

しかし、このガミラス艦の艦長、次席士官リッヘル中佐はザルツ人らしい屈強な勇者だった。

僚艦が次々と撃沈され、戦隊長のガット大佐も戦死したと言うのに眉一つ動かさず、彼らの任務、”囮役”を忠実に守る
決意だった。

何があっても敵の最終防衛ラインまで辿り着き、そこに張り付いている敵の防衛艦隊を引きずり出して本隊の拠点
攻撃を成功させねばならない。

だが、自分達の”囮”としての役目は艦隊が殆ど壊滅した以上、最早、意味が無くなったと彼は考えた。

<強力な”デストリア級”十隻による”威圧”は最早出来ない、だったら本艦一隻でも出来る”威圧」”は何だろうか?>
彼は目を閉じて考えた。

スクリーンにはたった五隻で自分達より大きい艦体をもつ、ガミラスの”デストリア”級十隻をたった一隻になるまで
追い詰めた強敵の姿が映っていた。

先程、見せたアンカーを使った十六点回頭などガミラス人はもとよりザルツ人でも行わない冒険的な戦術だった。

<あいつら、「死ぬかもしれない。」とは考え無いのか・・・。これは単なる”勇敢さ”じゃない、ここまで来ると単なる
”蛮勇”だ!>リッヘルはそう考えるとサァッと血の気が引くのを感じた。

<テロンは決して降伏しない・・・、ザルツ人は勇敢ではあったがガミラスとの力の差を冷静に分析、降伏した方が
お互いの未来のためだと考えてガミラスに降伏した。 
しかしテロンは力の差があっても敵本体に打撃を与える事に腐心する恐るべき性癖を持っているらしい。
ガミラスが早急にテロンを殲滅出来れば良いが長引くとガミラスですら、とんでもないしっぺ返しを食らう事に
なりかねない。>リッヘルは秋山の率いる特別遊撃艦隊をもう相手にするのは止め、短距離ゲシュタム・ジャンプで
プラント防衛艦隊の正面に出る『奇襲』で防衛艦隊をプラントから引き剥がそうと考え方を変えた。

「リトル・ジャンプだ! 目標、敵拠点正面!」リッヘルがそう命じると共に猛烈な衝撃が”デストリア”の端から端までを
貫いて走った。

「何だ、何が起こったか!」リッヘルが問い質した。

「また、例のアンカーです! 今度は真後ろから打ち込んで来ました。」情報士官が報告した。

「何!なんでこんな近距離まで敵の接近を許した!」リッヘルは部下の無能さに呆れ果てた。
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<急激に相対距離が縮まる反航戦ならともかく同航戦、しかも敵は後ろに居るのが判っているのに迎撃しないとは!
全ての判断は艦長がやれと言うのか!>リッヘルは怒りに身を震わせたが、今、自分が何をすべきか、思い出し、
反撃を命令した。

「後部主砲塔、底部主砲塔、後部側面カノン砲、全てを使って敵艦隊を撃滅、敵のアンカー・チェーンを切断せよ!」

「航法士、チェーン切断を確認後、直ぐに予定空間点へゲシュタム・ジャンプだ!」

リッヘルの命令通り”デストリア”級の後部三連装陽電子砲塔、底部三連装陽電子砲塔、後部側面陽電子カノン砲が
火を噴き、後部空間を薙ぎ払った。

『ヒエイ』、『チョウカイ』はリ・アクティヴ・アーマーの限界を迎えていたので、陽電子ビームに耐え切れず、
爆沈して果てたが、”デストリア”級の真後ろの死角に入っていた『フソウ』だけは被弾せず無事だった。

そして反対に『フソウ』はアンカー・チェーンで位置が特定出来ているので『ヒエイ』、『チョウカイ』の仇とばかりに三連装
・陽電子・衝撃砲をリッヘルの座上する最後の、”デストリア”級に叩き込んだ。

しかし、『ヒエイ』、『チョウカイ』を撃沈し、死角に居た『フソウ』を見逃したリッヘルの”デストリア”級はリトル・ジャンプを
同時に敢行していた。

リッヘル艦は『フソウ』を引き摺ったまま、ジャンプしたので『転移(ワープ、ゲシュタム・ジャンプ)』の経験の無い
秋山宙将を初めとする『フソウ』の将兵には何が起こったのか、理解出来ないまま、二隻の艦はワーム・ホールへ
消えて行った。

**************************************************

<遅い! ガットの奴、一体何をしているのだ!>ルミナス総司令は陽動部隊である”デストリア”級・艦隊の末路についてまだ何の情報も得て居なかったので苛立ちを募らせるばかりだった。

「偵察部隊が戻りました。」情報士官が側に来て耳打ちした。

<何でこんな簡単な事をコソコソと報告する! 『ウッ!』>ルミナスは情報士官が何故、偵察部隊の帰還をこっそり
報告したのか、その意味に気付いたのだ。

ルミナスが艦長室に戻ると彼のデスクの前には既に二人のガミラス人が居た。

先程、情報士官が言っていた『偵察部隊』の指揮官と副官であった。

「ガーレ、デスラー、自分は・・・」偵察隊・指揮官が名乗ろうとするのを制してルミナスは報告を促した。

「今は貴様達が誰か?なぞ、どうでも良い、直ぐに偵察結果を報告したまえ!」
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偵察隊の二人は顔を見合わせたが、今回の偵察結果を報告した。

「予定軌道上に”デストリア”級・艦隊の姿は有りませんでした。 しかし、周辺空間には多数のデブリが観測出来ました。

そして・・・。」そこまで言って彼は言い淀んだ。

「どうした! 今更何を聞いても驚かんぞ!」ルミナスは作戦計画の大幅変更を覚悟した。

**************************************************

シェーア国連宇宙海軍総司令、宇宙海軍大将が死亡した。

だが、戦死では無く、戦病死だった。 (脳溢血による突然死)

だが、木星に陣を敷いた国連宇宙海軍の指揮は直ぐにアルフレッド・ヒッパー中将が引き継ぎ、混乱は最小限度に
留められた。

本来の次席司令官はシェーア自身が指名した秋山真彦・日本宇宙海軍・三等中宙佐であったが、彼は最新の陽電子・
衝撃砲・搭載・戦艦隊を率いて木星衛星軌道の只中にあり、その消息は不明だった。

沖田と土方の元にシェーアの戦病死の件と秋山艦隊の消息が不明である旨の連絡がヒッパー新総司令直々の通信で入った。

「何ですと! ヒッパー総司令、我々に逃げろとおっしゃるのですか!」土方は一筋も剣を交えず撤退するのが
悔しかった。

「私は君達に『逃げろ!』とは言っていない、プラントに残っている非戦闘員を乗せた船団を”護衛”して地球まで
送り届けて欲しいのだ。」秋山が居なければ本来シェーア提督の元で辣腕を振るっていたであろう男の声は冷静だった。

憤懣やるかた無い土方の肩に手を置いて沖田は血気に逸る古き友を諌めた。

「土方、これは我々が人類の未来を繋げるかどうかの戦いなのだ。 多分、ガミラス艦隊は無人になったエネルギー・
プラントを容赦なく破壊するだろう、しかし、あそこで働いていた技術者達が生き残っていればいつの日か、必ず、
プラントは再建出来る! だが、全員死亡してしまったら全ては一からやり直さなくてはならない。 
そうなれば我々はガミラスに追い詰められる一方だ。 ヒッパー提督、この任務、日本艦隊の総力を挙げて
実施します!」沖田はさっと敬礼した。

沖田より五歳位若く見える総司令は何も言わず微笑しつつ、敬礼を返した。

通信用のモノクロ・スクリーンの映像が消えると土方は沖田に詰め寄った。

「あの人は死ぬ気だぞ! 沖田、本気で見捨てて帰るのか!」

「総司令は地球を守る為に『未来を送り届ける任務』を我々に下した。 しかし、ガミラス艦隊は強大だ、簡単に還して
くれると思うか?」沖田は土方をジロリと横目で見た。

「残るも地獄、帰るも地獄、・・・と言うわけか・・・。」土方は沖田が突然、目前に差し出したメモリー・スティックに戸惑った。

「秋山の置き土産だよ。 さてはて、あいつは今頃、特別遊撃隊を指揮して最前線を駆けているのだろうな。」沖田は感慨
深げに天を仰いだ。

土方は上着の内ポケットから小型のタブレットを取り出すとおぼつかない手つきでメモリー・スティックをそれに差し、普段こうしたIT機器に慣れていないのがバレバレな一本指操作をした。

彼も若い現役バリバリの頃はこうしたIT機器の操作を何の苦も無く出来たのだが、歳を取り、高官になるとこうした機器の操作は部下の仕事になってしまって使う事が無くなっていたからだ。

「なんだ、こんな物も満足に扱えんのか! 二十世紀人じゃあるまいし、貸してみろ!」沖田はスティック毎、土方の
タブレットを奪い去った。



                                 152.夢幻の 宇宙戦艦・・・『扶桑』 (フソウ) ー (17)→ この項続く
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by YAMATOSS992 | 2014-08-16 21:00 | ヤマト2199 挿話 | Comments(3)
 「そう言う事なら、尚更、我々、特別遊撃艦隊は”囮”の敵艦隊を迎え撃たなければなりません。」秋山はシェーアの
制止を振り切ってデストリア級七隻が待ち受けるガリレオ衛星群の軌道・外縁に向かった。

<『ミョウコウ』を待っている暇は無い! あの訓練の最終段階でスポット・照準・射撃を訓練しておいて良かった。>
秋山は最後の一手を繰り出すつもりだった。

「各艦に告ぐ! 『ミョウコウ』を待っている時間は無くなった! これより各艦は個別にスポット・照準・射撃をして貰う。」
秋山の言葉に全艦の乗組員は覚悟を決めた顔になったが、慌てたり、不安な表情を見せる者は居なかった。

しかし、単艦で照準・射撃出来るなら『ヨシノ』や『ミョウコウ』の存在は一体、何だったのだろうか、特に『ヨシノ』など、
陽電子・衝撃砲の搭載を見送られ、それまでの主砲、”高圧増幅光線砲塔”を二基も降ろさせられ、挙句、敵に
取り囲まれて奮戦も虚しく宙に散った。

また、まだ秋山達は知らなかったが『ミョウコウ』も木星の裏側、大気圏上層部でガミラス駆逐艦の餌食になっていた。

この二隻の存在意義は『フソウ』を除く、射撃指揮・管制システムが貧弱な『ヒエイ』、『チョウカイ』の射撃指揮・管制を
補う事だったはずだ。

秋山が言った様に個艦での射撃が可能なら、何故、初めからその射撃方法を執らなかったのであろうか?

それは最後の技『スポット・照準・射撃』は最早、達人の技の領域に達する高度な射撃・技術だったからだった。

**************************************************

 大砲の照準の方法は大まかに言って直接照準と間接照準に別れる。

間接照準は山の向こうにある敵陣地などを攻撃する場合、山の上に居る着弾観測者が着弾の様子を逐一、砲側に
連絡して弾着点を修正、敵陣地を破壊するやり方である。 (日露戦争の二〇三高地争奪戦はこれのため。)
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然るに直接照準は狙撃手が標的を狙う様に直接、照準望遠鏡に敵を納めて攻撃するやり方を言う。
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これは単眼式、双眼ステレオ・スコピック式、スポッティング・ライフルと順次進化して来た。
(艦艇はこれにレーダー・照準射撃が加わる。 だが、砲戦距離が遠いので射撃システムは間接射撃のそれに近い。)

現在(21世紀)ではレーザー・照準が主流である、レーザーなら大気中でも重力下でも直進するので目標に
レーザー・スポットを当てて、距離を測り、それを砲にフィードバックすれば命中率は格段に上がる。

射撃毎の熱による砲身の歪みを考慮した照準など、ベテラン砲手の勘に頼る部分が大きかったがそれも今では
AI 処理で賄う事が可能になって来た。(10式戦車などタッチ・パネルで戦闘するらしい?)

秋山の特別遊撃艦隊が射撃・指揮・管制艦『ヨシノ』や『ミョウコウ』を必要としたのは、陽電子・衝撃砲を搭載するのに
精一杯で十分な射撃・指揮システムを搭載出来なかった、『ヒエイ』や『チョウカイ』の射撃指揮を代理で行うためだった。

しかし、両艦とも失われた以上、その支援は期待出来なくなったが、秋山はそうした事態にも備えて
『スポット・照準射撃』を訓練させていた。

なんと、それは高圧増幅光線砲の射撃指揮システムを使い、高圧増幅光線砲をレーザー照準システムとして用いる
大胆なものだった。

高圧増幅光線砲のビームはガミラス艦の装甲に弾かれる事は明らかだったが、命中したか、どうかは判別出来る、
そして、命中していればその空間点に艦首を指向させ陽電子ビームを叩き込もうと言う奇策中の奇策だった。

<だが、問題は砲塔の旋回と艦の姿勢制御を同期させるプログラムが間に合わなかった事だ。>秋山の心に一瞬、
不安がよぎった。

あの猛訓練の中、砲手の勘だけではこの射撃・方法が成功した事は一度もなかったからだ。

しかし、秋山は特別遊撃隊の将兵達が”凛”とした”決意”でこの反航戦に臨もうとしているのを感じた。

<いける! これならいけるぞ!>秋山自身も先程感じた不安を払拭して敵に向かって艦隊を進めて行った。

**************************************************

<おかしい? 何故、奴らは動かない?>木星の裏側に潜んだがミラス艦隊本隊を率いているルミナス総司令は
地球艦隊がガッチリとエネルギー・プラントの前から動こうとしないのに疑問を抱いた。

確かに地球艦隊の前衛はガット副指令率いる”囮”のデストリア級の艦隊相手に善戦していた。

だったら、ここで全戦力を投入して敵を叩く、これがガミラス、地球を問わず一般的な用兵者のセオリーのはずだ。

戦力の逐次投入は一番やってはならない愚かな戦術であると用兵者が教えられるのは地球ーガミラスどちらでも
同じだった。(士官学校で教えられる基礎中の基礎。)

<今、我々が出て行けば、あの防衛艦隊を殲滅するのは容易い、しかし、それでは本来の目的である敵基地に打ち込む
反陽子魚雷も使い切ってしまう事になる、そうなれば本作戦は戦術的には勝利出来るかもしれんが、戦略的には
敗北だ!>ルミナスは腐っても総司令官だった。

「第二艦隊の戦況はどうか? 敵本隊はまだ動かないのか?」ルミナスは自分の意図が読まれているのかも
知れない・・・と感じ始めていた。

**************************************************

 「副指令殿、前方から接近して来る敵艦隊は先刻交戦した地球艦隊です!」情報士官の報告にガットは信じられんと
言う顔を隠せなかった。

<もしかしたら、奴らも(ゲシュタム)・ジャンプ出来るのか! そうで無くてはこんなに早く回頭して来れるはずは無い!>
ガット副指令は”囮”と言う役目が恐ろしくなって来ていた。

先程の戦闘では反航戦の初期に一隻、すれ違う一瞬の間に更に二隻の僚艦を失った、 これだけでも充分な
脅威だったが、反航戦なのでジャンプが出来ない相手ならもう遭遇するはずは無いとガミラスは高を括っていたのだ。

「敵艦隊は一隻、勢力が減っています! こちらの攻撃が後で効いた様です。」情報士官は更に吉報を告げた。

「敵艦隊は射撃・指揮・管制艦を全て失った模様! リンク信号が一切、感知されません!」ガットはその報告に勝利を
確信した。

<ジャンプは出来てもこの遭遇戦には関係無い! それよりリンク射撃が出来なくなった奴らは単なる烏合の衆だ!」
ガットは思わず自分の喜びを言葉に出していた。

「敵艦隊、距離三万kmまで接近! 敵艦、発砲! しかし、これは、例の””豆鉄砲””です。 陽電子砲ではありません!」
情報士官が訝しげに報告した。

<フッ、奴ら、やはり陽電子砲の射撃システムを完全に失ったな! これでこちらの勝利は確実だ。>ガットは
デスラー勲章を夢見て陶然とした。

しかし、そんな思いを打ち砕く様に『フソウ』の陽電子・衝撃砲がガット副指令の座上する旗艦の装甲を打ち破った。

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『フソウ』は他艦と違い、第二砲塔に装備された大測距儀を中心とする光学照準システムを持っており、
射撃・指揮・管制艦の支援が無くても攻撃出来るのだ。

「機関大破、このままでは爆沈します!」副長が絶望的な報告をした。

「他艦の損害はどうか! 作戦続行は可能か?」流石にガットもガミラス軍人だった、自艦の安全より作戦続行の可否が
重要なのだ。

「一、二番艦、爆沈、これは・・・陽電子砲による攻撃です。 残留・金属イオンの反応がそれを示しています。 
残存艦数4!」情報士官は混乱しつつも、事実だけを報告した。

「それなら、まだこちらの優勢は崩れん! 次席士官リッヘル中佐! 本官の後を次いで敵艦隊を撃滅せよ!」

<敵ながら『あっぱれな連中』だったな・・・。最後にお前たちと戦えた事を”誇り”に思うぞ!>ガット大佐は腕組をすると
自艦が爆沈する白光と共に宇宙に消えた。

**************************************************

「攻撃・成功しました。残敵は四隻です!」『フソウ』艦長が秋山に声を弾ませて報告した。

「ロケット・アンカー用意! 各艦、直近の敵艦にアンカーを打ち込め! ここで再度十六点回頭をする! 
一艦とて木星最終防衛ラインに辿り着かせてはならん!」またしても秋山は”奇策”を打とうとしていた。

確かにロケット・アンカーを使えば推進剤を使う事無く、反転する事は可能だ、しかし、ロケット・アンカーのチェーンは
長くて数百m、こんな短い半径の旋回をすれば『フソウ』艦内に掛るGは旋回によって厖大なものとなる、乗組員の生存は
まず望めなかった。
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「私は反対です! これでは”特攻”と何も変わりません! 生きて帰っての”勝利”です!」『フソウ』艦長は秋山に喰って
掛った。

「復唱はどうした! これは”命令”だ!」秋山は断固、再度の回り込み戦闘を仕掛けるつもりだった。

「安心しろ、”G”は掛るが致命的なものにはならん。」それだけ言うと秋山は薄く嗤った。

「はっ、了解しました!ロケット・アンカーによる十六点回頭、実施します。」『フソウ』艦長は秋山の言わんとする事を
理解した様だった。

確かに惑星や衛星、大き目の小惑星などにロケット・アンカーを打ち込み、そこを起点として十六点回頭をしようとすると
膨大な長さ(何千km?)のアンカー・チェーンがなければ艦内を生存可能なG荷重に保つ事は出来ない。

しかし、今回、アンカーを打ち込むのは自艦とあまり大きさの違わないガミラス艦である。

アンカーを打ち込むと同時に『フソウ』が推進力を全開にして回り込みに入った時、ガミラス艦も『フソウ』に振り回される
格好になり、互いが互いの回りを廻る運動になるはずだった。
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この時に掛る”G”は大きくなるものの、地球艦は”慣性制御”を持っているので旋回時に掛る”G”は生命維持可能な
レベルに抑え込めると秋山は踏んでいた。

「ロケット・アンカー敵艦に命中! ロックしました。」航法士が報告する。

「よし、三十秒間だけ主機関全力噴射! 慣性制御、艦首方向に向かい、マイナス方向で最大出力運転をしろ!」秋山が
命令するまでもなく、『フソウ』艦長は的確な命令を下していた。

「艦首軸線に敵艦が乗り次第、陽電子・衝撃砲を発砲します!」砲手も秋山の意をしっかりと汲んでいた、あの苦しかった
艦隊訓練を通して確かに国連宇宙海軍・特別遊撃艦隊は将兵個々と各々の艦が一体の物として結びつき一個の生物と
化して機能しているのを秋山は実感した。



                                 151.夢幻の 宇宙戦艦・・・『扶桑』 (フソウ) ー (16)→ この項続く

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by YAMATOSS992 | 2014-08-13 21:00 | ヤマト2199 挿話 | Comments(0)
 「前方から高速で接近する物体群、あり、 敵艦隊と思われます。」情報士官がガット副指令に報告した。

<何? 敵艦隊は深縦陣防御をとっているのか!>ガットはテロンの用意周到さにまたまた驚かされた。

今までのガミラスの侵攻作戦はほぼ一方的な殲滅作戦であり、曲がりなりにも頑固な抵抗を示したのは
皮肉にも彼の部下の大半をなす「ザルツ人」の星、惑星「ザルツ」位であったからだ。

そのザルツの宇宙艦隊でも旗艦と他、数隻の主力艦が撃沈されると直ぐに抵抗を止め、”和平交渉”を持ちかけて来た。

だが、テロンは違う、最初の接触こそガミラスの完勝だったが、ゼダン(土星)宙域での艦隊戦ではガミラスは
勝ったものの、少なからず損傷艦を出していた。

木星圏(ズッピスト周辺宙域)への侵攻が遅れたのはこの戦闘時の損傷艦の修理と補給に手間取ったからであった。

だが、この時の損害の大きさからガミラスはテロンに対して徹底的な殲滅作戦を決意していた。

テロンに対するガミラスの方針が”殲滅”になったのは先制攻撃よりも土星圏(ゼダン周辺宙域)での抵抗の執拗さに
テロン人の手強さを感じ今の内に”殲滅・排除”するのが一番安全と大本営が判断したからであった。

<また殲滅戦か・・・。 ガミラスは最終的には地獄に落ちるぞ・・・。>ガット副指令は一等ガミラス人であったが、
デスラー総統の就任以来、異星文明は”併合”するより”殲滅”する事の方が多くなって来ている事に批判的であった。

<エーリク 大公時代はもっと”話し合い”で異星文明を”同化”させる事が多かったと聞く・・・。統治者が変わるだけで
こうも文明は凶暴になるものなのか?>ガットは執拗な抵抗を続けるテロン人に何故か同情し始めていた。

**************************************************

「ガミラス艦隊ガリレオ衛星群の軌道に達します。 『モ』号作戦発動して良いですか?」シェーア国連宇宙海軍総司令の
補佐役、アルフレッド・ヒッパー中将が提督の思惟を正した。

本来なら、この場には秋山真彦三等宙将が総参謀長としてシェーアの脇に控えているべきだったのだが、陽電子
・衝撃砲の開発・運用責任者もであった彼は虎の子の陽電子・衝撃砲装備艦を率いて宇宙の彼方にいた。

「まだだ、アルフ、まだ敵の意図がはっきりしない、それにまもなく遊撃艦隊も参戦出来る、今、仕掛けるのは危険だ。」
老獪なシェーアはガミラス艦隊の侵攻速度の遅さに疑問を持ったのだ。

ガミラス戦艦隊は地球艦隊が用いる速度の1/3位の低速・巡航しながら接近を図って来ている。
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最初はシェーアも幕僚達もガミラスが用心深くこちらの様子を探査しながら接近しているため、侵攻速度が遅いのだと
思っていた、しかし、ここまで接近し、エネルギー・プラントの細部まで探査出来るであろう距離まで近づいたのに
ガミラス艦隊は速度を上げようとはしなかった。

「そうか!判ったぞ!」シェーアは椅子から立ち上がると命令を発した。

「アルフ! 今、正面から接近してくる敵は”囮”だ! 必ずや敵本体は別のところにいて襲撃の機会を
狙っているはずだ! ありったけの早期警戒艦を使って周辺空域、特にここからは見えない木星の裏側の宙域を
探査させろ! 敵艦隊が必ず隠れているはずだ。」シェーアは今、ガリレオ衛星群の軌道を突破しようとしている艦隊に
普通なら随伴して来る護衛艦の姿が無い事に気付いた、そしてある仮説を立てた。

<奴ら、ガミラス艦隊の戦艦は強力だ。 こちらの戦艦で奴らにダメージを与えられるのは陽電子・衝撃砲搭載艦だけだ、
そして今の時点ではその陽電子・衝撃砲搭載艦はここにいない、こちらは高圧増幅光線砲搭載戦艦で立ち向かう
しかない、だが、主砲の威力に差がある以上こちらの戦艦はガミラス戦艦の弱点を突くしかない、それには残存兵力の
全部を投入する必要がある。 つまり、木星エネルギー・プラントを守る艦は居なくなると言う事になる! 目の前の
戦艦隊は我々を引きずり出す”囮”なのだ!>

「特別遊撃隊は今どこか?何処に居るのか? 参謀次長、応えろ!」シェーアは焦っていた。
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「繋がりました! 秋山総参謀長、出ます。」通信士が特別遊撃艦隊との回線を確保した。

「遅くなりました。 ガミラス戦艦隊にこれから第二撃を掛けます!」秋山は船外服に身を固めた姿でシェーアの問いに
応えた。

「何! 貴官はどうやって十六点回頭をしたんだ、貴官の艦隊、帰還用に用意した無人タンカー船団はまだランデブー
予定点に到着していないはずだぞ!」シェーアは驚愕を隠せなかった。

「申し訳けありませんが、今は説明している暇はありません! 間も無く敵艦隊と再度の会敵です。 直ぐに戦闘に
入ります。」秋山は通信を切ろうとした。

「待て! これは罠だ!」シェーアは見す見す罠と判っていて部下をその中に放り込める程、非情では無かった。

「罠?・・・でありますか?」秋山は眉をしかめた。

**************************************************

 <やはり、大幅に遅れてしまった。 本艦のせいで戦機を逸する事がなければ良いのだが・・・。>
『ミョウコウ』の石田艦長は焦っていた。

『ヨシノ』を失った今、『フソウ』を除く、『ヒエイ』、『チョウカイ』は陽電子・衝撃砲の射撃指揮システムを持たず、
『ミョウコウ』が敵艦の位置をフェースド・アレイ・レーダーで探知、位置情報を送らなければ有効な連携射撃は
望めないのだ。

<急げ、『ミョウコウ』何としてでも本隊に追いつくんだ!>十六点回頭に手間取り、本隊に遅れた『ミョウコウ』の乗員は
石田艦長以下、皆、焦って前しか見て居なかった。

これが『ミョウコウ』の不運だった、『ミョウコウ』が駆け抜けて行く、木星大気圏上層部の更に上空 高度三千kmに
クリピテラ級航宙駆逐艦隊で編成されたガミラス・ズッピスト(木星)テロン(地球)大拠点(エネルギー・プラント)攻撃隊の
本隊が隠れていた。
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「良い獲物だ! 行きがけの駄賃に沈めてしまえ! 全艦主砲斉射であのテロン艦を沈める!」ルミナス総司令は
クリピテラ級航宙駆逐艦が艦底に装備している280mm陽電子連装ビーム砲一基での攻撃を命じた。

『ミョウコウ』は先程のデストリア級との反航戦の時、射撃・指揮艦を務めた、その為、『ヨシノ』ほどでは無かったが、

アクティヴなレーダー照準をした結果、敵にも位置を特定され、陽電子ビームを他艦より多く受けていた。

リ・アクティヴ・アーマーのおかげで艦の本体には傷一つ無かったが、リ・アクティヴ・アーマーはもう殆どその効果が
期待出来ない位、損傷していた。

しかも悪い事に『ミョウコウ』のフェーズド・アレイ・レーダーは前方の空間は広く視界に収めていたが、後方は
高圧増幅光線砲を主砲としていた時から積んでいた光学式探知・照準装置しか無かった。

そんな状態の『ミョウコウ』単艦にガミラスの攻撃隊の本隊が後ろ上方から襲い掛かった。

数十条の陽電子ビームが『ミョウコウ』を貫き、『ミョウコウ』は攻撃された事も気付かないまま爆沈した。



                                 150.夢幻の 宇宙戦艦・・・『扶桑』 (フソウ) ー (15)→ この項続く
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by YAMATOSS992 | 2014-08-10 21:00 | ヤマト2199 挿話 | Comments(4)
 一瞬の反航戦で更に二隻の僚艦を失ったガミラス艦隊の艦隊副指令は噂話を信じるものでは無いとつくづく思った。

今、剣を交えた相手は噂のファースト・コンタクト時のテロン艦とは違い、豆鉄砲で武装したブリキ船などでは決して
無かったからだ。

<確かにテロンの技術は我々には及ばない、しかし、その戦闘力、応用力は決して侮れない・・・。  先行している
ルミナス総司令にこの事を伝えねばなるまい。>ガット副指令は超光速通信回路を開かせた。

「なにっ!敵は陽電子砲を手にしたのか! それに十隻のデストリア級のうち、三隻もがやられたのか! 
敵艦隊は全滅させたろうな!」ルミナス総司令はガット副指令を問い質した。

「残念ながら早期警戒艦一隻を撃沈しましたが、敵本隊は摩訶不思議な装甲を持っており、被害を与える事は
出来たのですが撃沈には至りませんでした。」バツが悪そうにガットは答えた。

リ・アクティヴ・アーマーの概念の無いガミラスには日本遊撃艦隊の防御方法は魔法の様にしか見えなかったのだ。

もともとガミラス人は防御の観念が薄い、陽電子砲は大抵の装甲なら貫いてしまう超兵器だったからだ。

そして、対ビーム用として装甲板に帯磁特殊加工(ミゴヴェザー・コーティング)を施す事はしたものの、陽電子ビームを
完全に防ぐ事は出来なかった。
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こうした個艦の防御力の薄弱さはガミラスの政治にまで影響していた。

つまり、ガミラス艦、個艦の防御が不足しているため、ガミラス帝星を防衛する艦隊は出来るだけ遠くで侵略者を討つ
必要があると考えられたていたのである。

他の要因も勿論、あったが、これがガミラスの急速な版図拡大に一番影響のあった要因であった。

「我々に帰順すれば寛大な措置が与えられる、そうでなければ殲滅するだけだ!」これは後ににメルダ・ディッツ少尉が
古代一尉に言った言葉だが、ここにガミラスの本音が隠れている。
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出会いが敵の先制攻撃で始まったとしても艦の防御力に絶対の自信があれば相手の攻撃は無視し、交渉開始の
手続きを執るはずである。

本当に強く、相手の攻撃を受け付けないのであれば反撃する必要すら無いのである。

しかし、ガミラスは彼等も異星文明が怖かったのだろう、地球側の先制攻撃に対し反撃してしまった。

地球ーガミラス大戦はこうした”弱さ”と”弱さが”出会ってしまったために起こった「悲劇」であった。

**************************************************

 先程、反航戦で交戦したガミラス艦隊が追って来ないのを確認した秋山は残った艦隊に回頭命令を発していた。

「全艦、左十六点回頭、残敵を掃討する!」その命令は各艦の艦長を唖然とさせた。

十六点回頭、それは180度の方向転換を意味していたからである。

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「司令、お気持ちは判りますが、先程の戦闘で各艦大なり小なり傷ついています。
それに手持ちの推進剤では百八十度の方向転換は出来ません、一度、基地に帰るべきです。」 副官が恐る恐る
意見具申した。

「俺たちの基地はどのみち百八十度、方向転換しなければ帰れない、途中で奴らと再戦するのは何の不思議も
無い事だ。」秋山は平然と言った。

「推進剤の不足は木星の大重力を使ったフライ・バイでなんとかならないか? 航海長、どうか?」

「いけます! 但し、木星の重力圏に捕まって二度と太陽を拝めなくなる位、低高度まで降りる必要がありますが・・・。」
航海長は眼前の計器では無く、自分専用のタブレットを操作しながら応えた。

「なら決まりですね、司令。本艦はこれより左十六点回頭を木星の重力を利用して行う。航海士は軌道計算を行へ!」
『フソウ』艦長が命令を発し、『ミョウコウ』、『ヒエイ』、『チョウカイ』もそれに続いた。

しかし、このフライ・バイはかなり無茶な作戦であった。

本来、フライ・バイとは大重力源を掠める様に航行する事で航行速度を推進剤を使わず飛躍的に上げる技術であった。

それを方向転換に利用しようと言うのであるからその無茶ぶりが判る。

一度完全に木星の重力圏に入り、どんどん高度を下げながら大重力によって加速、木星の周囲を半周した所で
木星の大重力圏の脱出を試み様と言うのだ。

正に「奇法」である、戦闘には「正法」と「奇法」がある、「正法」は正面から実力でぶつかる方法、「奇法」は敵の
思いも依らない方法で奇襲を賭ける事を言う、先程の戦闘でガミラス艦隊に反航戦を挑んだのは「正法」、左八点回頭で
敵艦隊に陽電子・衝撃砲を打ち込んだのは「奇法」であった。

秋山は更に木星という大重力源を利用して通常では考えられない回り込み戦を敵の背後に掛けようとしていた。
(これも立派に「奇法」である。)

地球上や大気のあるところなら舵が使えるから回り込み戦闘を仕掛けるのは容易である。

しかし宇宙の何もない所でそれをやるには膨大な量の推進剤を必要とする、何故なら、一度、戦闘速度に加速した
戦艦の速度を逆噴射でゼロにし、向きを180度変更した後再び元の戦闘速度まで加速しなおすというプロセスが
必要だからである。

艦首のバーニャで方向転換すれば良いと考えるかもしれないが、それでは艦の向きが変わるだけで進行方向は
何も変わらないのだ。

秋山は先程の反航戦ではこれを利用して艦全体を一個の砲塔として運用、ガミラスの度胆を抜いた、しかし、今度は
本当に180度の方向転換が必要となった。

平時なら加速を止め、補給用無人タンカーを使って推進剤を補給、帰途に付けば良いだけの話なのだが今は戦時、
のんびり慣性航行をして補給タンカーを待つなどと言う悠長な事をしている暇は秋山達にはなかった。

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 「あの大赤班が目標だ! 但し、近づき過ぎない様に注意しろ! 大重力で木星内部まで引き込まれるぞ! 
特に『ミョウコウ』は大気抵抗が大きい、本艦隊より深く木星内部に入らないで済む軌道計算をしろ!」

秋山は木星の内部まで降り過ぎない様、目標基準を大赤班に選んだ、これなら安定した固形物が無い木星でも
自分達の位置判断が出来る、また、フライ・バイで方向転換しつつ、木星の大重力圏から離れるために必要な速度を
得る事が出来る高度では『ミョウコウ』の様に艦首にアンテナや外装式陽電子・衝撃砲を備えていると大気抵抗が
大きすぎて失速、木星内部に引き込まれる恐れがあったからだ。

「了解しました。 ただ、木星侵入高度が浅いと十六点回頭の半径が本艦隊より大きくなってしまい、本隊に遅れて
しまいます。

それでは本艦が居ないまま、ガミラス艦隊と戦闘になる可能性があります。」『ミョウコウ』の石田艦長が異を唱えた。

「大丈夫だ、本隊は『ミョウコウ』を待ってガミラスの残敵を掃討する! 安心しろ、今は自艦の安全だけを考えろ!」
秋山はこの冒険的な作戦で更なる無理を部下にさせたくなかった。

それに秋山は既に『ミョウコウ』が戦闘に遅れた場合の策も考えていた。



                                 149.夢幻の 宇宙戦艦・・・『扶桑』 (フソウ) ー (14)→ この項続く

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by YAMATOSS992 | 2014-08-07 21:00 | ヤマト2199 挿話 | Comments(18)

 「『ヨシノ』から入電!敵艦隊こちらの陽電子・衝撃砲の有効射程内に入りました!」通信士が報告する。

「本艦の射撃・指揮システムも敵艦影を捕らえました!」砲雷長も報告する。

「あっ、敵艦隊は横隊から単従陣に陣形を変えました。」情報士官が敵の状況変化を伝える。

単従陣、それは艦隊を一列縦隊に組む事を言う、日本では遠く鎌倉時代の水軍が『長蛇の陣』として用いていた
歴史ある戦法である。

この戦法は攻防どちらの場合にも簡単に運用出来、優れた効果を発揮するので有名だった。

ガミラスがこちらとの接触を前に陣形を横陣から単従陣に変えて来た事で秋山は敵司令官が唯者では無い事を
感じ取っていたが部下にそれを知られると士気が下がる恐れがあったので自信たっぷりな顔をして新たな命令を発した。

「構うな。こちらは鶴翼陣のまま突撃を続行する。 距離一万kmまで接近したら敵一番艦に向かって陽電子・衝撃砲を
発射する。」

本来、地球が試作に成功した陽電子・衝撃砲は有効射程距離はガミラス陽電子ビーム砲より長かったが、
それを敵に知られないため、また、砲撃の精度を上げるため、秋山は敵の有効射程ギリギリまで接近して砲撃戦を
開始するつもりだった。

「敵艦発砲! こちらも反撃します!」砲雷長が落ち着いて報告した。

「よし、砲撃戦開始! 『ヨシノ』から送られる敵位置情報を充分に活用せよ!」秋山は戦闘開始の命令を発した。

『ミョウコウ』、『ヒエイ』、『チョウカ』は射撃指揮・管制艦『ヨシノ』との射撃リンク・システムを利用し、艦の進路を微妙に
調整し、艦首に装備したたった一門の陽電子・衝撃砲の弾道(?)を同調させ、まるで一隻の艦の砲撃の様に単従陣で
迫るガミラス艦隊の先頭艦に直撃を与えた。

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このデストリア級航宙重巡洋艦は艦首の一番装甲の厚い部分を貫徹され、航行不能になった。

今まで簡単に蹴散らしてきた地球軍艦艇の思わぬ反撃にガミラス側の司令官は驚愕したが、それでも尚、ベテランの
彼はこの射撃が射撃指揮・管制艦の誘導である事を即座に見抜き、電波発振源が近傍にないか、走査させた。

『ヨシノ』が正確な敵位置情報と各陽電子・衝撃砲搭載艦の姿勢制御までコントロール出来るのはそれまで主砲だった
高圧増幅光線砲塔を降ろしてまで搭載した2基の合成開口レーダーによるものだった。

宇宙空間には大気が無いので光学照準の方が迅速な照準が出来る、しかし、その精度でははやはりレーダーの様な
アクティヴな探知システムが勝るのだ。

しかし、この長所は同時に短所でもある、敵にレーダー電波を逆探されたらこちらの位置はバレバレなのだ。

案の定、ガミラス艦隊はクリピテラ級航宙駆逐艦五隻で構成された宙雷戦隊を『ヨシノ』へ差し向けて来た。

こうした事態は秋山も予想していたのでガミラス艦に対してはで非武装に近い『ヨシノ』は遙か後方に置いて安全を
確保したつもりだったのだが、ガミラスがワープ(ゲシュタム・ジャンプ)を利用してその距離を一瞬で詰めれる事までは
予想出来なかった。

『ヨシノ』はガミラスの魚雷を受けて今度こそ「爆沈」してしまった。

「『ヨシノ』との射撃・リンクが切れました!  撃沈されたものと思われます!」砲雷長が不安を押し殺しつつ、報告した。

「フォーメーション ”B” に移行、射撃・管制は『ミョウコウ」に移せ、作戦を続行せよ!」秋山は次策を用意していた。
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だが、『ヨシノ』と違い、合成開口レーダーを装備していない『ミョウコウ』では『フソウ』、『ヒエイ』、『チョウカイ』、全艦の
射撃・指揮管制を行う事は出来なかった。

だが、秋山はこの問題に対する解決手段も用意していた。

実は建造途上で陽電子・衝撃砲の搭載が決まった『ヒエイ』、『チョウカイ』、『フソウ』と異なり、就役して何年も経つ
『金剛』級は改装に時間が掛り、『モ号作戦』に間に合わないと考えられ、最初は改装が見送られた。

しかし、ファーストコンタクトで中破した『キリシマ』が、その修理と陽電子・衝撃砲搭載改修の両方を行うと更に時間が
掛ると判った時、秋山は国連宇宙海軍上層部に意見具申した。

陽電子・衝撃砲を持たない最古参の『コンゴウ』、『ハルナ』、中破して戦力としての期待の出来ない『キリシマ』の三隻を
陽電子・衝撃砲の射撃訓練、それも高速運動中の射撃訓練に使い、残りの『金剛』級、『ヨシノ』、『ミョウコウ』には
外装式で陽電子砲を搭載すると言うものであった。

しかし、訓練を続ける内に射撃・指揮・管制を専門に行う艦の必要性が出て来て改装途中だった『ヨシノ』の改装を
再度方向転換する事になった。

これにより国連宇宙海軍・遊撃艦隊は射撃・指揮・管制艦『ヨシノ』、外装式陽電子砲搭載艦『ミョウコウ』、内装式陽電子砲搭載艦『改・金剛』級の『ヒエイ』、『チョウカイ』を第一部隊とし、建前上、『改・金剛』級であったが、大幅な設計変更を加えた内装式陽電子砲を三門持つ『フソウ』を第二部隊とした。
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『フソウ』が単艦なのに一部隊を成すのはこの艦が他の艦とは違い、一隻で射撃指揮も出来る、何よりも火力が他艦が陽電子砲一門の装備なのに対し三門と非常に強力なものになっていたからだ。
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<光学系照準装置が充実している『フソウ』は単独でも戦える! 探知システムを降ろしておらず、逆に強化してある
『ミョウコウ』が射撃・指揮を執れば他の艦も一艦の様に連携して戦えるはずだ!>秋山はリンク射撃の要、『ヨシノ』を
失っても尚、屈する事は無かった。

**************************************************

「敵艦隊の射撃・指揮艦を撃沈しました。」砲雷長がガット副司令にに報告した。

先程、テロン艦隊に向かって発射した魚雷は新型の反陽子弾頭魚雷だった。

しかし、その大半はテロン艦に迎撃され、命中した一発も作動不良を起こし敵艦を屠る事は出来なかった。

だが、射撃・指揮艦『ヨシノ』を襲ったクリピテラ級一個宙雷戦隊は旧来のガミラス艦の主兵装、圧縮・陽電子弾頭を
備えた魚雷を使って『ヨシノ』を葬った。

「よし、敵の射撃・管制艦は処分した、これで次の反航戦は我々に有利になる! 全艦砲塔を左舷に回し、敵艦隊と
並んだ時、ビームの雨を浴びせてやれ!」彼は”勝った”と思った。

<まだまだ反陽子弾頭の実用化は時期早尚だったかもしれん。 圧縮陽電子弾頭でも充分に効果は上がるか?>

圧縮・陽電子弾頭、それは先程、ガミラス艦隊が使った反陽子弾頭と似ていた。

但し、使っているのは反陽子ではなく、お馴染みの陽電子を磁場で包み込んだものだった。

勿論、ビーム砲とは桁違いの密度で陽電子が詰められており、その威力は比べるものでは無かったが、より高威力を
求めるのが軍の常、陽電子の約1,000倍の大きさを持つ反陽子を使った反陽子弾頭を搭載する新型魚雷が配備され
始めていた。

そして、今回のテロン(地球)のズッピスト(木星)エネルギー・プラントの”殲滅”は反陽子弾頭の使用を前提として
立てられたものだった。

<圧縮・陽電子弾頭の魚雷では敵プラントの壊滅は難しい、かと言って性能が不安定な兵器で勝負するのは無謀だ、
これは総司令に報告し、兵器の選択の判断は司令に任せよう。>ガットは所詮、小物だった。

**************************************************

 <敵艦隊が横陣から単縦隊に陣形を変えたのは隊列を一本に絞り、被弾率を避けるためか・・・。 しかし、それは
こちらも想定済みだ!>秋山は自分の読みが当たっている事に自信を持っていた。

彼が先に下した命令は”フォーメーションB”、これは鶴翼陣から梯形陣に陣形を変える事だった。

敵艦隊は完全に一列に繋がった単従陣だが地球艦隊は右前方の僚艦に続き、左後方に僚艦を置く梯形陣を
取っていた。

これは敵艦隊が左右上下に位置を変えても追従出来る隊形だった、<これもあの猛訓練の成果だ!>秋山は接近する
ガミラス艦隊を見つめつつ、その時を待った。

両艦隊の距離は十万kmまで詰まり、ガミラス艦隊は必殺の陽電子ビームを放ち、地球艦隊はそれを
リ・アクティヴ・アーマーで防ぎつつ更に接近した。

ガミラス艦隊のデストリア級は陽電子ビーム砲を三連装砲塔四基に別けて積んでいる、真横こそ全火力を集中出来る
ベストな態勢なのだ。

しかし、地球艦隊にとっては真正面に固定装備された陽電子・衝撃砲が使えない、回転砲塔に三連装に装備された
高圧増幅光線砲はガミラス艦に追従出来るがガミラス艦には効果が無い、最悪の態勢のはずだった。

だが、秋山には訓練で磨きに磨いた艦隊運動があった。

「『ミョウコウ』、敵艦隊残り九隻は全艦、照準範囲に入ったか!」『ミョウコウ』の艦首に装備されたフェーズド・アレイ・
レーダーがドップラー効果を利用して敵の位置情報を的確に各艦の射撃システムに流してゆく。

「敵艦、全艦照準域に収まりました!」『ミョウコウ』の情報士官が奮り立つ心を抑え切れず上擦った声で報告した。

「宮島、焦るな!反航戦だ! 交戦時間は短いがそのためのあの猛訓練だった事を忘れるな!」秋山は血気に逸る
情報士官を諌めた。

「『ミョウコウ』、『ヒエイ』、『チョウカイ』は先頭艦に火力を集中しろ! 本艦は最後尾の敵を狙う!」秋山は勝利の瞬間を
待っていた。
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「僚艦、被弾多数! リ・アクティブ・アーマーも限界です!」情報士官が悲鳴をあげた。

「敵艦隊との距離、十kmを切りました。 陽電子・衝撃砲、発射準備完了!」砲雷長がその時を告げた。

「よし!各艦左八点回頭(90度方向転換)、進路そのまま!」秋山は普通の人には理解不能な命令を発した。

艦隊の進路は変えずに八点回頭する、それは海上を走る艦船では考えられない運動だった。
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しかし、ここは宇宙、艦の回りは真空が支配している、当然、空気の抵抗も水の抵抗もない、だから艦の進行方向と
艦の向きは関係が無くなる。

秋山はこれを利用して艦首に固定装備するしか、無かった地球製陽電子・衝撃砲を艦全体を砲塔として運用出来る様、
乗組員全体にあらゆる艦隊運動の種類を訓練、習得させていたのだ。

全艦が進路を変えないまま、艦首を左に振り始めた所で秋山は陽電子・衝撃砲の発射を命じた。

地球艦隊の陽電子ビームが振り回される鞭の様にガミラス艦を襲った。

秋山は直撃では無く、ビームを薙ぐ様に使い命中率を上げたのだ。

予定通り、敵・二番艦(一番艦は既に撃破していた。)を大破、戦闘不能にさせる事に成功した。

そして『フソウ』が狙った殿艦は三本の陽電子ビームがよりを掛けた様に捩じり合わさり、一本のビームとなったものが
突き刺さり、たちまち爆沈した。

『フソウ』艦橋のみならず、全艦隊が、国連宇宙海軍本部がある木星プラント全体で歓声が上がった。

何しろ初めて目の当りにしたガミラス艦の撃沈である、木星圏いる人類は『フソウ』が挙げた戦果に狂喜した。

<敵の戦力はまだまだ残っている・・・。 この傷だらけの艦隊でどう対処するのか・・・。>

秋山には残り七隻のガミラス艦の動向が気掛かりだった。




                                 148.夢幻の 宇宙戦艦・・・『扶桑』 (フソウ) ー (13)→ この項続く

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by YAMATOSS992 | 2014-08-03 21:00 | ヤマト2199 挿話 | Comments(2)