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宇宙戦艦ヤマト前史

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宇宙戦艦ヤマト登場前の地球防衛軍の苦闘を描きます。

<   2014年 10月 ( 4 )   > この月の画像一覧

 <君の姉上は仲々賢いな。 確かに一度脱出した後、頃合いを見計らって元居た場所に潜伏するとは普通は考えない
からね。>”ギルティ”がしきりに感心した。

<私も合流したいところだけど、これからやろうとしている事を考えると”私”は行方不明の方が都合が良いわね。>
イルダは大胆な事を考えていた。

<まず”本物の反政府・組織”を捜す、そして君はその”組織”と姉上を”接触”させて保護してもらうつもりなのかな?>
”ギルティ”がイルダの考えを見透かす様に言った。

<アンタ本当に私の”心”を読んでるの? 屋敷(うち)を灰にされたのよ! 私はそんなヌルい事じゃ済まさない!>
イルダは別の潜伏先で怒りに心を沸騰させていた。

< ・・・。 >”ギルティ”は今度は沈黙していたが、イルダには”ギルティ”の激しい”悔恨”の感情が感じられた。

イルダにはその”内容”は掴めなかったがその”心の闇の深さ”はまるで底の無い”穴”を覗いている様な錯覚に
囚われる程だった。

<アンタも、もしかして自分の住む家を焼かれたの?>自分の不安を振り払いたいイルダはズケズケと”ギルティ”に
迫った。

しかし、彼は頑なに心を閉ざしていたが、やがてその重い戸張を少しだけ下げて言った。

<・・・ああ、そうだ。 もうずいぶんと昔の事だけどね。 それより君は今夜の宿を捜しをした方が良くないかい。>
彼は取り繕う様に言った。

<確かにそうね。 夜も更けて来た事だし、腹も減った。姉貴の所には行けないし ”ギルティ”どうにかしてよ。>
イルダのお嬢様体質はここに至っても抜けていなかった。

<だめだ。今度は君が”力”を使う番だ。>彼はイルダの我が儘を許さなかった。

<これから君は姉上を助けて”親衛隊”を欺き、父上を救出するつもりだろう、そのためには”自分の力”の使い方を学習
しておく必要がある。 夕食の調達と宿の手配はその”学習”の丁度良い取っ掛かりだ。>

<なるほど、そういう事か、さっきの姉貴の救出の時と違って飯と宿の調達なら命の遣り取りには成らないで済むもんな。
やり方は教えてくれよ。”ギルティ”>イルダは脳天気に考えると住宅街の方に向かって走って行った。

**************************************************

一夜が明け、再び日が落ちるとメルダは池の下に設けられた秘密の地下シェルターで外出する身支度を整えていた。

外に出るのは危険だったが父に何があったのか、まず情報を集める必要性を感じていた。

<今まで待っても、イルダは結局来なかった・・・、あの子も逮捕されたか、あるいは・・・>メルダは最悪の事態を
考えまいと頭を振った。

<あの子も、もう大人、ディッツ家の一員として恥じない行動を執ってくれると信じている!>メルダは地下シェルターに
備わった外部監視装置を駆使して安全を確認すると再び金属柱を池の上に浮上させると夜の闇に消えていった。
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<人間は不便ね。 人一人隠れ潜むだけであんな大袈裟な仕掛けが必要だなんて。>イルダは”姉の意識”にずっと
同調していたのでメルダが何を考え、何をしようとしているのか、手に取る様に判った。

<何を言ってるんだい、私が声を掛けなければ君だって姉上と一緒にあそこに潜んでいたはずだったろうに。>
”ギルティ”が冷やかした。

<しかし、”一夜の宿”としてザルツ人街、警察所の”留置場”を選ぶとは君も随分大胆だな。>彼は呆れていた。

<この区画の警察”留置場”は”空いていた”、 だからここの警察官達は”留置場”を私が使っている可能性を考える
可能性は低い。 しかもここはザルツ人街、警察署とはいえセキュリティは甘々だわ。>彼女は得意げに言った。

<そして食物も贅沢言わなければ簡単に手に入る。>イルダは拘留中の囚人に出される夕飯を搔っ込みながら言った。

<逞しいお嬢様だな、これなら本当にジレルの”光”に成れるかも知れない。>”ギルティ”は意味深な思考を漏らした。

<”ジレル”だって! ジレルは星毎滅んだはずだぞ!>イルダは今、聞いた”忌まわしい名前”に敏感に反応した。

デスラー総統は最後のジレル人、ミーゼラ・セレステラを宣伝・情報相として重用していたが、彼女にジレル人としての
能力は殆ど無いのは既成の事実であった。(もう一人の、そして能力を持つジレル人、ミレーネル・リンケ特務官の存在は
機密扱いになっていた。)

 
<やっ、しまった。 余計な情報を与えてしまった様だ、 でも知ってしまったのでは仕方ない、君や私は”ジレルの業”を
受け継ぐ者だ。>彼はイルダが思いもよらない事を告げた。

<詳しい事はまだ話せない。 でも他人の”心”に勝手に出入りして記憶や認識を操作出来る”力”は”ジレル人の力”と
同じものだとは思わないかい? イルダよ。>彼女は”ギルティ”の意外な言葉に心が震えた。

「嘘だ! 私はイルダ・ディッツ、一等ガミラス人、ガル・ディッツの娘だ!」思わず自分が今居る場所も忘れて大声で
叫んでしまった。

流石に”認識”を操作され、イルダの存在が見えなくなっていたザルツ人の警察官達も彼女の大声に反応して地下の
留置場に集まって来てしまった。

「動くな! お前は誰だ!」警官達は居るはずの無い留置者が手配書が回って来ているイルダ・ディッツでは?と疑いを
持って銃を向けた。

しかし、次の瞬間、彼等は銃を下げ、思いも縁らない言葉を発した。

「おっさん、酒を飲むのは結構だが、あまり騒いで周りに迷惑を掛けるなよ。」そう言うと彼等は談笑しながら詰所に
戻って行った。

<一体何をやったんだ、”ギルティ”>あまりの突然の変化について行けずイルダは戸惑った。

<彼等が君の存在を”認識”してしまったので留置してあった”酔っ払い”が”騒いだ”と彼等の”認識”を書き換えたのさ、
悪いとは思ったが彼等の眼には君が浮浪者として映る様に彼等の”認識を弄った。>彼は問題をどう処理したかを
伝えた。

<酔っ払いの浮浪者? こいつは良い、この貧民街には何処にでも居る当たり前の存在だからな。 さっきは取り乱して
悪かった。 上手く取り繕ってくれて有難う。>イルダは素直に頭を下げた。

< しかし、姉貴を”親衛隊”から救出した時とは随分違った遣り方を取ったものだな、何故だ?>彼女は素朴な疑問を
持った。

<”親衛隊”の下級隊士は下級クローンでしかも感情すら与えられていない。 ”心”も最低限、命令に従う為に与えられ
ている様なものだ。 外からの干渉には非常に弱い。だから一度、”認識”した姉上の存在を簡単に消し去る事が
出来た。 しかし、先程のザルツ人警官達はまともな”人間”だ一度認識した存在を無かった事にするのは至難の技だ。
だから君の存在を前提とした上での”認識”の書き換えが必要だったのさ。>”ギルティ”が説明した。

<私の”力”は”ジレルの力”なのか・・・。 確か”ジレルの民は人の心を操る事が出来た”と言うがこれがそれなのか?>
イルダは疑問をぶつけてみた.

<今私が幾ら言葉をつくしても信じられないだろう。 でも実際に”力”を使って居る内に真実は明らかになってくる、
それまで待ちたまえ。>”ギルティ”は興奮するイルダを諭す様に言った。


                                                 160.イルダ・走る!-(5)→この項続く

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by YAMATOSS992 | 2014-10-25 21:00 | ヤマト2199 挿話 | Comments(0)
<そんな事より、早くお姉さんを助けないと”親衛隊”に連行されてしまうよ。>”声”が「メルダ・救出」を促した。

<でも、どうすれば…?>イルダは突然の指摘に戸惑った。

<今、君が見ている”親衛隊員”は君ではなく、”メルダ・ディッツ”が見ている光景だ。
だから”親衛隊員”の方に”視点”を変えるとホラ、こうなる。>”謎の声”がそう告げると眼前の”親衛隊員”は掻き消え、
代わりに姉、メルダの悔しげな顔が浮かんだ。
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視界がメルダのものから”親衛隊員”のものに切り替わった事でイルダは”声”が本当の事を言っている事が判った。

<どうすれば、姉貴を助けられるんだ! 教えろ!>イルダは激情を爆発させた。

<おいおい、気を付けろよ、君は”星すら滅ぼす潜在力”をその体内に秘めているんだ。 感情は抑えたまえ!」
”声”がイルダをたしなめた。

<”星を滅ぼす力”? 私はそんなもの、望んではいない!>イルダはそれを聞いて取り乱した。

<今は姉上をどう助けるか、それだけを考えたまえ。 君の力なら確実に助けられる。>”声”はイルダに自制を促した。

<判った。大人しくする、姉貴を助けるにはどうすれば良い?>イルダも何時までも姉に頼り切る子供では
無くなっていた。

<今回は簡単だよ。 ”親衛隊員”の”心”に侵入し、”奴らの認識”を書き換えてしまえば良い。 ”ディッツ姉妹は
地下道の崩落に巻き込まれて死んだ。”とね。>”声”がとんでもない事をいとも簡単に言った。

<そんな、仮に奴らの心に侵入出来たとしても”認識”を書き換えるなんて事をしたらたちまち私の存在はバレてしまうん
じゃないのか?>イルダはそんな大それた事が自分に行えるとはとても思えなかった。

<怖いかい? しょうがないな、じゃ今回は私が”書き換え”を行なおう。>そう告げると”声”の気配が一瞬に消えた。

**************************************************

メルダ・ディッツは目の前で銃を突き付けていた”親衛隊”の様子が変わったのに驚いた。

銃を降ろした”親衛隊長”がメルダに背を向けると四人の部下に命令を下していた。

「メルダ・ディッツ、イルダ・ディッツの両名は地下道崩落に巻き込まれ死亡した事を確認。 任務終了、帰隊する!」

四人の部下はまだメルダが目の前に居るのに下された帰隊命令に戸惑った。

「隊長!メルダ・ディッツは、そこに・・・。」部下の一人はそこまで言って目付きがどんよりとした物に変わった。

「ディッツ姉妹の死亡を確認。 帰隊命令を了解しました。」彼は隊長の命令を確認した。

残りの三人もそれに追従してメルダの前から姿を消していった。

<一体、ぜんたい、何がどうなったんだ? ”奴ら”に何が起こった?>メルダは地下道出口の壁に体を押し付け様子を
伺った。

出口の際に人の気配は感じられず、”親衛隊”が帰隊して行く足音がどんどん遠ざかって行くのが感じられた。

メルダは地下道から首を出し辺りを伺ったがもはやそこには”親衛隊”はおろか誰の姿も無かった。

彼女はその事を確認すると地下道の出口があった墓地を抜け、足早に立ち去った。

**************************************************
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<どうだい? 簡単なものだろう、人は”何か”を”認識”し、”行動”を”決定”する、幾ら強力な武器を持っていてもそれは
最後の”行動”を”補佐”する”手段”に過ぎない。 最初の”認識”を狂わされては何の意味も持たなくなるのさ。>
再びイルダの心の内にあの”声”が戻って来ていた。

<お前、一体何者だ・・・。>イルダは幼い頃に感じて以来、忘れていた”恐怖”に身を捩った。

<私は昔から君をよく知っているが、君は”私”を知らない・・・。 これは”フェア”じゃないな。 かと言って
まだ私の”正体”は完全には明かせない・・・、どうしたものか・・・・>イルダには”声”が思案しているのが判った。

<今、私の”思考”は完全にそちらに筒抜けなのだろう? ”ギルティ”?>イルダは悪戯っぽく微笑んだ。

<”ギルティ”(有罪)とは、随分と皮肉な”コード・ネーム”を付けてくれたね。 でもそれで君が今の状態に満足してくれる
なら私は別に構わないよ。>”声”いや”ギルティ”が応えた。

<”満足”なんてするはずないじゃない! 「総統・暗殺」なんて”冤罪”よ! きっと”ジレルの魔女”絡みの陰謀に
違いないわ! 父様は逮捕・拘禁されてしまったけれど取り敢えず姉貴はまだ無事だ。 何としてでも守りきる!>
イルダの強い覚悟を知った”ギルティ”は仕方なさそうに”思考的”に溜息をついた。

**************************************************

空には「イスカンダル」が煌々と輝いていたが地上は夜、闇が支配していた。

メルダは一度は脱出した自分の屋敷に戻って来ていた。

しかし、ディッツ家の屋敷は”親衛隊”によって破壊しつくされていた。

火災は「帝都・消防隊」の手で鎮火させられていたが、焼け残りの建材が未だ燻り続けていた。

だが、幸い、”親衛隊”や”武装警察”の姿は見られなかった。

<爺は逃げおおせられたかな・・・、エフラ、ユミラの二人は無事だったかしら・・・。>消し炭になった建材の山を見つめ
ながらメルダは悲しみにくれた。

<もし、”親衛隊”に拘束されてしまっていたら、ゴメン!今は助けに行けない、でも態勢を立て直したら
必ず迎えに行く!>メルダは長年使えてくれた使用人達に誓った。

そして焼け跡に向かって一礼すると庭の一角にある「池」に向かって歩いて行った。

池の縁に立つとメルダは「認識番号3817529」と呟いた。 と、池の中から水を押しのけて金属の柱が出現した。

金属の柱の水面から30cm位上の壁面にポッカリと楕円形の穴が開き、そこから彼女のいる池の縁までボーディング・
ブリッジが伸びて来た。

彼女は辺りを窺って安全を確認するとそのボーディング・ブリッジを素早く渡って入口の中に消えた。

彼女が金属柱の中に消えるとその入口は再び閉ざされ、金属柱は再び水中にその姿を消した。



                                                  159.イルダ・走る!-(4)→この項続く
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by YAMATOSS992 | 2014-10-18 21:00 | ヤマト2199 挿話 | Comments(4)

  ドドーンッ、又しても爆発の音が頭上で響いた。

「この派手な遣り方は”武装警察”じゃないわね。」メルダが壁に手を付きつつ言った。

「じゃあ、今、ウチに暴れこんで来てるのは”親衛隊 ”って事か? 姉貴・・・。」イルダは自分達を拘束しに来たのが
親衛隊だと聞かされ、父の安否に非常に大きな不安を抱いた。

彼女達は父の直近の部下から、理由は不明だが、父が”親衛隊 ”に逮捕、拘束された旨の連絡を受けていた。

そして彼女達はその様な場合に備えて大昔からあった地下道に身を潜め、屋敷を脱出しようとしていた。

<だが、脱出に成功したとしても”武装警察 ”ならともかく、相手が”親衛隊 ”では父の縁故を頼ったりすればその家の
人達にも迷惑が係る・・・。>メルダは脱出後の身の振り方を心配していた。

イルダは自分達が死地にあるにも関わらず他人を慮るそんな姉の優しさが嬉しかった。

二人は暗い地下道を小型ライトの光を頼りに走った、と、道は東西二本に分かれていた。

この地下道は子供のころからここを遊び場にしていた姉妹にとっては庭の様なものだった。

二人は頷くとメルダは東の通路を、イルダは西の通路をと別れて脱出を図った。

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二人が同行すれば二人とも捕まる危険が増える、分かれて行動すれば生存率が増すとの姉、メルダの判断だった。

イルダは感情的には姉と離れたくは無かったが、ディッツ家が生き延びる為にはどうしても必要な事として割り切って
姉の決定に従った。

イルダは走った、この通路は子供の頃、の遊び場で勝手は良く知っていた、しかし、幾許も進まない内に通路は崩落して
塞がっていた。

この非常脱出用通路の出口は二つしかなかった。

<この通路が塞がっている以上、姉貴の向かった出口を使うしかない!>イルダは踵を返すと元来た道を逆に走り
だそうとした。

しかし、何か違和感を感じて足を止めた、普段、嗅ぎなれていた通路の空気に微かだが異臭が紛れていた、
<この臭い、火薬か!>士官候補生であるとはいえ、軍人のイルダは直ぐにその臭いの正体をかぎ分けた。

この通路は自然崩落などではなく、通風孔から落とされた手榴弾で爆破されたのだ。

<通路を爆破した犯人は今、屋敷に侵入して来ている”親衛隊 ”以外に有り得ない! 姉貴の向かった出口にも
手が回っているはずだ!>イルダはメルダに警告をする為に全速で通路を戻った。

<間に合ってくれ! 姉貴! あまり急ぐと危ないぞ!>イルダは姉が”親衛隊 ”の待ち構えているであろう”出口 ”に
向かって急いだ。

すると大きな眩暈がイルダを襲い、彼女はその場に膝をついてしゃがみ込まざるを得なかった。

<クソ! こんな時に・・・。>イルダは最近、この種の眩暈に度々襲われていた。

これが重大な疾病や障害である恐れもあったが、原因を調べようと医者に掛ると軍に通報されて戦闘機から
降りなければならなくなるのが嫌でほったらかしにしていたのだ。

今までは数分で眩暈は取れ、平常に復帰したのだが今回は様子が違った。

辺りは靄が掛った様に視界は悪かったが彼女の目の前には銃を構えた五名の”親衛隊員 ”がいるのが確認出来た。

イルダは思わず後ろに跳び退い、腰の辺りの銃を探った。

しかし、緊急脱出であったため、護身用の拳銃すら持ち出せなかったのに気付き下唇を噛んだ。

イルダの目の前にいる”親衛隊・隊長 ”が口を開いた、「メルダ・ディッツ少尉、デスラー総統・暗殺・関与の容疑で
逮捕する! 抵抗すれば撃つ!」

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イルダは”親衛隊・隊長 ”の発した言葉の意味を理解しかねた。

<私を姉貴と間違えている・・・のか? ”親衛隊 ”ともあろうものが? それにデスラー総統・暗殺? 父が総統を
何故・狙うんだ? あの政治嫌いのコチコチの軍人が・・・。>イルダは事態のあまりにも急な展開に付いて行けず目前の
”親衛隊 ”の列を強行突破しようとした。

しかし、直ぐ目の前にいる ”親衛隊 ”との距離はイルダが走っても走っても詰まらなかった。

<どう言う事だ? この ”親衛隊 ”は幻か? 私は狂ったのか?>イルダは全身の血が引いて行くのを感じた。

<大丈夫だよ。君は ”正常”さ、君は ”覚醒 ”したんだ、嬉しいよ。>イルダの心の中に無遠慮に全く別の存在が
居座っていた。

<誰だ! 私の心の中で何をしている!>イルダは今まで感じた事の無い恐怖に顔を引き攣らせた。



                                               158.イルダ・走る!-(3)→この項続く


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by YAMATOSS992 | 2014-10-11 21:00 | ヤマト2199 挿話 | Comments(4)


 「この老いぼれに何を期待する・・・。」ガル・ディッツは普段なら粗末な食事が入っているはずのカトゥーンの中に
大型拳銃を見つけ、呟いた。

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ディッツ家はデスラー政権前のエーリク大公時代より更に前から軍事を専門に司る家系としてガミラスの歴史の中、
政権の中央を歩み続けて来た由緒ある家系だった。

しかし、現政権の長であるデスラー総統が暗殺され、その首謀者として親衛隊により拘束、この惑星『レプタポーダ』に
ある第十七収容所に収監されたのだった。

実際はデスラー総統を担ぐ一派と貴族政治の復興を望むゼーリック国家元帥の間で行われた権力抗争に巻き込まれ、
双方から利用された形で失脚したのだが、本来政治力はあっても権謀術数を駆使するのは余り得意では無い
ガル・ディッツは自分が利用された事に直ぐに気付きはしたものの、中央の勢力争いに疲れ、このまま、収容所で余生を
送るつもりだった。

ディッツはカトゥーンの中に収められた大型拳銃を見つめ続けた。

更なる陰謀の可能性を考えると簡単に手に取る気にはなれなかった。

ーガッシュッー、独房の扉が開錠される音が響き、程なく辺りに解放された(らしい?)囚人達の歓声が響き渡った。

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しかし、老練な軍人である彼はすぐさま銃を取ったが、直ぐに解放の喧騒の只中に出てゆく事を良しとしなかった。

これまで厳重に監視され拘束されて来た我が身がこんなに簡単に解放されるとはとても信じられない事だったからだ。

混乱の中、刺客が接近する事は容易に想像された。

<今、暫くは動くまい・・・本当に儂を解放したがっている勢力があれば向こうから接触してくるはず・・・。>支給された
大型拳銃を掌の内で動かし点検しつつ、ディッツは待った。

その顔はもはや先程までの”世捨て人”の顔では無く、老練な軍人のそれに戻っていた。

再び何の前触れもなく、独房の扉が開き、航宙服、航宙ヘルメットに身を固めた四人のガミラス兵が入って来た。

彼等はディッツの前に一列に並ぶとまず両端に立った大男、二人がヘルメットを取り、顔を晒したが、見た事の無い顔だった。

だが、二人よりずっと背の低いパイロット服のガミラス兵がヘルメットを取り、貌を晒すと「お前は!」その顔を見た
ガル・ディッツは思わず声を上げた。

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「お迎えに上がりました、提督。」にこやかに微笑むその顔は愛娘、メルダ・ディッツ少尉、その人だった。

<メルダ!そうだ、イルダはどうしたのだ?>ディッツの心にもう一人の娘の姿が無い事に不安を持った。

しかし、その事を口に出そうとした時、ディッツの頭の中は急に霧が掛った様に何も考えられなくなった。

「どうしました。お父様・・・。」メルダが心配げに駆け寄った。

「いや、何でもない、それより収容所内の混乱をどう収拾するか、それが問題だな。 なにしろ私の様な政治犯だけで
なく、戦争捕虜も多数いる、彼等をどう説得するか、そこのところを良く考えねばな。」囚人服」から軍服に着替えながら
ディッツは一人ごちた。

彼の心からはもう一人の娘、イルダ・ディッツ少尉候補生の存在はその記憶と共に黒板消しで拭い去った様に
消えていた。

「ゆくぞ、」ディッツは最後に将官の証であるマントを羽織ると先頭を切って歩き始めた。

そこには先程までの世捨て人の陰は微塵も見られなかった。

<お父様、無事で良かった・・・。> イルダ・ディッツは先行するガル・ディッツ提督、メルダ・ディッツ少尉、
オルト・ドルメン大尉、ランス・ラーキン中尉のグループから少し遅れて付いていった。

一行の行く手がT字路になっており、左右どちらに進むべきか、一同は迷った。

と、左側の通路からガトランティス人の一団が訳の分からない言葉を叫びながら一行の前を横切って行った。

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一同は身構えたが相手が戻って来ないので彼等は自分達に気付かず通り過ぎたのだと考えた。

「彼等の来た方向は多分、牢獄だ。 中央制御室のあるのは彼等の向かった方向にあると儂は考えるが、メルダ、
お前はどう思う?」提督は愛娘に意見を求めた。

「はい、提督のお考えの通りだと思います。」メルダは躊躇無く父の問いに応えた。

「ウム、お前もそう考えるか? それでは中央制御室に向かおう、諸君も異議は無いな?」やけに素直なメルダに
違和感を覚えつつ、一行を率いてディッツは進んだ。

<そろそろ良いのではないか?>遅れて進むイルダの心に再び”あの声”が響いた。

<まだ駄目。 父や姉の安全が完全に確保されるまでまだ私の”支援 ”が必要よ。>イルダは”声 ”に応えた。

<フッ、私も手伝っているんだがね・・・。>”声 ”はうそぶいた。

<確かに”あの時 ”私が”覚醒 ”し、”この力 ”を得なければ「メルダ姉さま」を助け、「反政府組織、”真ガミラス同盟 ”に
渡りをつけ、ハイゼラード級戦艦を乗っ取り、惑星レプタポーダに幽閉された「父様」を助け出しに来る事など出来は
しなかった・・・。>イルダはここ数週間の破天荒な日々を思い出していた。



                                               157.イルダ・走る!-(2)→この項続く


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by YAMATOSS992 | 2014-10-04 21:00 | ヤマト2199 挿話 | Comments(2)