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宇宙戦艦ヤマト前史

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宇宙戦艦ヤマト登場前の地球防衛軍の苦闘を描きます。

<   2014年 11月 ( 5 )   > この月の画像一覧

 メルダ達の乗ったハイゼラード級航宙宇宙戦艦は目的地、第十七収容所惑星レプタポーダのある星域外延部の
大分離れた所にゲシュタム・アウトした。

重要政治犯を多く収監している第十七収容所の警戒が厳重であろうとの判断が”真ガミラス同盟”幹部の間でなされ、
敢えて遠方から惑星レプタポーダの警備状態を観測する事になった。

通常、宇宙戦の情報収得は光学探知などパッシブな物が多用され自艦の被発見率を高める様努力するものなので
この惑星系内に”レーダー電波”や通信電波が飛び交っていなくても既に彼らは敵に発見されている可能性が高かった。

しかし実際は彼らの艦が惑星レプタポーダの衛星軌道に達しても収容所側からは何の誰何もなされずまして迎撃などの
敵対行動は皆無であった。
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「如何に辺境の惑星とはいえこの無警戒振りは何だ? 弛み切っている!」メルダは同じ軍人として恥ずかしかった。

「まあ、おかげで我々の仕事は楽になります。」オルト・ドルメン大尉がニヤリとした。

「先行侵入班を先に潜入させ、我々の手引きをさせる手筈になっています。」ランス・ラーキン中尉がこれからの手筈を
説明した。

「我々先行侵入班はディッツ提督の収監場所を特定する事が主な任務ですが、特定後は収容所内に混乱を引き起こして
ディッツ提督の解放の一助とします。」スキンヘッドで看守の制服を着た男が言った。

危険な任務である、しかし彼等はガミラスの未来を見据えてその命を賭けようとしていた。

「ガーレ・ガミロン!」別れの言葉はそのまま作戦開始の合図だった。

先行潜入班が小型上陸艇で出発すると”ギルティ”の気配も消えているのにイルダは気が付いた。

<奴はいつも姿を見せないのに気配だけは強烈なんだな。  奴は自分は”多個体一精神生物”だと言っていたが奴は
自分が”ジレル人”だとはっきり認めた。 しかしジレル人はもう滅びた民族だし、幾ら彼らが心理操作に長けていたと
しても個人々は独立した精神を持っていたはずだ。 現に最後のジレル人、ミーゼラ・セレステラ宣伝・情報相は個人と
して活動している・・・。>イルダは自分が”ジレルの光”と呼ばれ心理操作に長けて行くのが怖かった。

<今は父上の救出に全力を尽くさねば、気を抜くと全てが台無しになる・・・。>疲労に挫けそうになる自分にイルダは
喝を入れた。

<しかし奴は気になる事を言っていたな・・・「最後のジレル人・ミーゼラ・セレステラは”囮”だと・・・、どう言う意味だ?>
イルダはジレルとガミラスの確執を”ギルティ”から聞いていたがその意味までは判らなかった。

**************************************************

ガミラスにとっては因縁のあるテロンのヤマッテが丁度、立ち寄って来た事もあり、収容所の混乱は“真ガミラス同盟”の
計画よりも収容所側の囚人管理態勢が影響を受け思ったより作戦計画は順調に進んだ。
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またそれに収容所・幹部の無能さ、管理能力の無さが混乱に拍車を掛け混乱は恐慌に達した。

このため本来は提督だけを脱出させれば作戦目的は達成されたのだが収容所の混乱をこのままにしておいては延々と
囚人同士の殺し合いが続き無駄な血が流れるのは明白だった。

ディッツ提督は事態を放置せず秩序の回復に努め囚人だけで無くガトランティスの捕虜までも救済する路を模索、
捕虜たちには船を与えて帰還を許す事で混乱の収拾に成功した。
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**************************************************

テロンのヤマッテと真ガミラス同盟は共にデスラー政権を敵としていたので両者は会談を持ち共闘の道を探ったが、
ヤマッテはイスカンダルへの旅を急いでおり、真ガミラス同盟は各所に分散されて投獄されている同志の解放を急務と
していた。

このため会談は物別れになったが将来の平和親交条約の締結の布石としてまた、ユリーシャ殿下の護衛の意味も
兼ねて連絡将校としてメルダ・ディッツ少尉が指名されヤマッテに乗艦、イスカンダルへ同行する事となった。

<私、ホントは姉きと一緒にヤマッテに乗りたいんだが、”ギルティ”君はそれを許す気は無いんだろう?>イルダは
ダメ元で彼に聞いてみたが、やはり返事は否定的な物だった。

<君の気持ちは判らんでもない、何しろガミラスを憎むテロン人の集団の内に姉上を一人で行かせるのだから確かに
不安になるのも仕方が無い。>彼はイルダの不安に理解を示した。

<だが君をヤマッテに行かせ、私が真ガミラス同盟の面倒を看るといった手分けをする事は出来ないからだ。>彼は
核心に迫る思考をした。

<どうして手分けが出来ないのだ? 私も”心理操作”に熟達した、手分けして支援した方がガミラス、テロンどちらの
利益にも繋がるはずではないのか?>イルダはまだ自分が”ギルティ”に御守されている事に気が付いていなかった。

それにテロン人は一度は最後のジレル人ミレーネル・リンケの心理操作によって制圧された物のミレーネルの油断に
よる”遊び”の所為で心理操作を脱する者が出てそのため遥か数万光年を離れて飛ばしていたミレーネルの精神体は
波動エネルギーの渦に巻き込まれ消滅、ミレーネル本体も死亡した。
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”ギルティ”はテロン人の心理操作を試みたがガミラス人と同じ様に操作出来た、しかし、彼等がジレル人の内でも強力な
能力を持っていたミレーネルを打ち破ったのは事実だった。

彼はそんな強力で危険なテロン人達と同行するなどまっぴら御免だった。

<次の段階の”ジレル”の秘密を伝える時が来た様だ。 前に私は君が”星さえ滅ぼす力を持つ存在”だと伝えた。>
彼は既に滅んだはずのジレル人が何故何億人もいる?事になるのかその秘密を語ろうとしていた。

<前に最後のジレル人、ミーゼラ・セレステラは”囮”だと言った意味は判ったかい?>彼はイルダに意地悪く聞いた。

<本当はジレル人は滅んでなんか居ないんだろう? 全滅したと報じられたしても「もしかしたら生き残りが居るかも
しれない・・・。」と考える奴が必ず出て来る。>イルダの指摘は的確だった。

<だがセレステラの様に”最後のジレル人”と呼ばれる存在が居れば人々は他の生き残りの可能性を考えない。>
イルダの長い思慮の果ての結論に”ギルティ”は感服した感情を示した。

<ほう、あの短時間の内にそこまで考え尽くすとは、やはり”ジレルの光”の名に相応しい戦士に育ったな。>彼は喜びと
悲しみの入り混じった複雑な感情を返して来た。

しかしイルダは「多個体一精神生物」の概念は仲々理解出来なかった。

しかしそれは仕方の無い事かもしれない戦友と共に軍に所属しガミラス帝星に仕える事が当たり前だった彼女にとって
唯一人でガミラス帝星を守って闘う事など”総統”が行うとしても遣り過ぎだと感じられたからだ。

<そんな”軍”は独善的になり挙句は”暴走”して自滅する可能性が高い。>イルダは”ジレルの技”を身に着けても
普通の人間が”個体”という”檻”に”精神”が”閉じ込められた存在”だと言う彼の説明が理解出来なかったのだ。

<普通の人間は”個体”という”檻”に”精神”が”閉じ込められた存在”だが、今のジレル人はその”精神”が”檻から
解放された状態”にある。 つまりは以心伝心と考えるのが一番近いかな。>彼はイルダに判り易い様に噛み砕いて
説明してやった。

<以心伝心って相手の心が瞬時に判るって事だろ? それじゃ今のお前と私の関係がそうじゃないか? 
でも私とお前は別の個体だ。 これはどう説明するんだ?>イルダはやっと少し理解が進んだ様だった。

<本来なら君ほど心理操作能力が上がって来れば私の精神と君の精神は一つに溶け合ってしまうはずだったん
だけどね。 一体何が邪魔しているんだろうね。>彼はイルダを怯ませる思考を発した。

<それは一体どう言う事だ・・・>>イルダの心に冷たい物が触れて来た。

                                                165.イルダ・走る!-(10)→この項続く
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by YAMATOSS992 | 2014-11-29 21:00 | ヤマト2199 挿話 | Comments(2)
<お詫び> 11月13日にコンピューターがクラッシュしてしまいました。

      その関係か、書き欠けの最新記事が勝手にUPされてしまいました。(イルダ・走る!-(12))

      執筆中の記事は予約投稿にして安全を期して月末の月日を指定日にしております。

      KAZUさんの御指摘を受けて初めてトラブルに気が付き、設定を確認したのですが問題はありませんでした。

      やはりコンピューター・トラブルに関連した事故としか考えられません。

      ただ、これは読者の皆様には関係の無い、こちらの都合です。

      ともかく、皆様には醜態を晒してしまい、恥ずかしい限りです。

      「皆様、申し訳けありませんでした。 お詫びして今後の鑑と致します。」

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<本編>

 <それで、エーリク大公は「自分が負けた物理的証拠」を手に入れたのかい?>イルダは興味津々で”ギルティ”に
尋ねた。

<ああ、尊大な王であった彼も流石に”敗北”を認めざるを得ない”物理的証拠”を彼はバレラス上部の外郭上から
見つけた。>”ギルティ”の思考は勿体ぶったものだった。

<それは何だ! 焦らすな早く教えろ!>イルダの性格は途轍もなくセッカチだった。

<百六十発の核ミサイルの残骸だ。 しかも核弾頭は抜き取られ重量合わせのダミー弾頭が詰められていた。 
さらにその弾着位置はバレラスを取り囲む大クレーターの外周上にほぼ均等に着弾していた。>イルダは”ギルティ”の
言葉に当時、エーリク大公がどんな顔をしたか、見てみたかったと思った。

もし、そのミサイルに本物の核ミサイルが搭載されていれば、最初のジレル人の宣言通り、バレラスは核の炎で焼き尽く
されていたのは明らかだったからだ。

”ジレル人”が”報復”を”警告”に留めてくれたのをエーリク大公は”ジレル人”に”嘲笑された”と感じ、
惑星ジレルの封鎖の厳重化と共にガミラスやザルツ等植民星に潜伏しているジレル人を”心理操作”されない
ガミロイドを使って徹底的に捕獲しようとしたが、大人のジレル人が先に侵入してその殆どを生還させる事に
成功していた。
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唯一つの例外を除いて・・・それはこのジレル人誘拐事件の比較的初期の被害者でジレル人としても保護したいのは
山々だったが、彼女達はガミラスの地で拙いながらも”心理操作”を行い、闇社会で”ジレルの魔女”として恐れられる
存在となっていた事が問題となった。

”ジレルの掟”では本来、他の星人に”心理操作”する時は上級幹部の了承が必要であり、勝手にガミラスで
”ジレルの魔女”を演じていた二人には”追放”処分が決定された。

この二人こそ誰有ろう、後のミーゼラ・セレステラ宣伝・情報相とミレーネル・リンケ特務官であった。

彼女達は母星に災厄をもたらした元凶としてジレルからは切り捨てられ、ガミラスからはガミラス社会を混乱に陥れた
”ジレルの魔女”として幽閉すべき危険な存在として惑星レプタポーダの収容所に収監される事となったのだ。

<ずいぶん酷い話だな。 ガミラスから追われたのはともかく、母星からも見捨てられたんだなあの”魔女”は・・・。>
イルダは父の失脚に一枚噛んでいたと思われるセレステラを敵視していたが、今の話を聞くと孤立無援であるが故に
”救済”の手を差し伸べてくれたデスラー総統に忠誠を尽くしているのも判らない話ではないと思った。
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<しかし、あの二人にはジレル人の為の重要な”役割”があるんだ。 本人達は知らないがね。>彼は含みの
ある発言をした。

<あの二人の”役割”・・・? それは一体なんだ?>イルダは”虜囚”の役割など見当も付かなかった。

<後でゆっくりと考えるが良い。 さあ、姉上いや、”収容所・査察官”の新造艦の検収が終わるぞ! 最後まで
心理操作の気を抜くなよ。>”ギルティ”が最後の気合いを入れた。

<この心理操作ってやり方は血を流さず強大な力を発揮出来るが猛烈に疲労するのが敵わんな。>イルダは
もう三時間もメルダ一行が、”収容所・査察官”に見える様、周囲の人々に働き掛けていた。

イルダは自分が眩暈を感じる程に疲労しているのに”彼”が疲労の色を全く見せないのを不思議に思った。

**************************************************
 

数日後”収容所・監察官御一行”に成り済ましたメルダ達はラーキン中尉がNetハッキングで得た情報に基きディッツ
提督の収監先が惑星レプタポーダにある第十七収容所である事を割り出していた。

メルダ達がバレラスを発つと直ぐに”親衛隊”の「メルトリア級航宙巡洋戦艦」に率いられた「デストリア級重巡」三隻が
艦名と行先を誰何して来た。

「我が艦名はガル・レダート、行先は惑星レプタポーダ、目的はそこで行われているらしい不正の摘発だ。
死刑囚が大半のはずなのに第十七収容所は膨大な物資を消費している、これは物資の横流しが行われていると見て
間違いない、もし、これが本当ならガミラスに対する重大な裏切り行為だ、私はギムレー長官から勅命を受けて事の
真偽を確かめるために調査に向かうのだ。 不審な点があればバレラスに問い合わせてくれて結構だ。」
メルダは恐れも怒りも顔に出さず”親衛隊”と対峙して見せた。

「ちょっとお待ちを・・・」”親衛隊”の将校が艦長の元に書類を持って来た。

艦長は書類を受け取ると険しい表情でスクリーン上からメルダを見据えた。 

「何か問題でも?」メルダが涼しい顔で”親衛隊”艦隊司令に問うた。

「いや、お恥ずかしい、監察官殿があまりにお若いので少々戸惑っただけです。 書類に不備は有りません、出航を許可します。 それでは良い航行を!」それだけ言うと”親衛隊”艦隊はメルダ達の艦から離れていった。
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「さて、それでは偽装をときますか・・・。」オルトドメルン大尉が艦体表面に着けてある青色粒子の拡散レバーに
触れようとしたがメルダに止められた。

「偽装解除は一回目のゲシュタム・ジャンプ終了後にしよう、折角ここまで”親衛隊”を欺き通したんだ、詰めは慎重に
行こう。」ドメルンは不満そうだったがメルダの言い分には賛成せざるを得なかった。

**************************************************

「レプタポーダが見えたぞ!」誰かが叫ぶ声にイルダは起こされた。

<クソッ、もう着いたのかよ。 後、 二~三日休ませて欲しかったな・・・。>つい、イルダは弱音を吐いてしまった。

彼女は連日の心理操作に疲れ切っていたからだ、しかし、彼女以上に働いている相棒(先生?)の”ギルティ”には
全く疲労の色は感じられなかった。

<”ギルティ”お前本当に一人なのかよ。 そうだったら化物だな。>イルダは疲れを知らぬ彼がうらやましかった。

<そうだね、もう明かしても良いころだ。 私は多数の個体を一つの精神で操る「多個体一精神生物」だ。
確かに君からすれば「化物」以外の何物でもない。 心は一つでもそれを支える肉体は億の単位で存在するから
この程度の心理操作行動では殆ど疲労はしないんだ。>彼はペロリと舌を出す信号を送って来た。

<おっ、先行潜入部隊が出発する様だ。 私は彼らの作戦が成功する様に援護に廻る、イルダ、君は姉上とその部下
二人の潜入をサポートしてやってくれ。>”ギルティ”の気配が消えた。

<いよいよガル・ディッツ提督救出作戦の始まりだ。>イルダは自分も気密服に着替えながら気を引き締めた。

ジレル人、”ギルティ”には大きな謎と訳の分からない恐怖はあったが今の所、裏切りの気配は感じられなかった。

<信じるしかないか・・・。>彼女は彼が今まで彼女を色々な局面で助けてくれた事に嘘は無いと思いたかった。

                                                 164.イルダ・走る!-(9)→この項続く

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by YAMATOSS992 | 2014-11-22 21:00 | ヤマト2199 挿話 | Comments(0)
 <ガミロイドは機械に過ぎない、言わば”自動人形(オート・マタ)” だと私は理解している、
”心”などあってたまるものか!>イルダは如何にも馬鹿々しいと言った感情を”ギルティ”に伝えた。

<確かにガミロイドはAIを搭載した”自動人形(オート・マタ)” である事は否定しない。>彼は素直に応じた。
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<そしてガミロイドが”心理操作”の出来る”ジレル人”に対抗した兵器として開発されたのも事実だ。>
彼は再び”ガミラスの歴史の闇”について語り始めた。

**************************************************

ガミラスの闇社会に溶け込んだジレル人達はまだ少年少女、ないしは幼児と呼ぶしかない幼い世代の子供”でしか
無かった。

当然、効果的な能力の使い方が出来ず、悪戯に”ジレル人”の”恐怖”を”闇社会”だけでなく”表社会”にも広げて行く
結果となった。

この為、ガミラス政府は切り札としてガミロイドをジレル人摘発に使った、まだ、若く、幼いジレル人達はガミロイドの
司令・コントロール者の心理操作までは出来ず、次々と捕縛、虐殺されて行った。
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しかし、ガミラスの闇社会はジレル人工作員を欲していた。
エーリク大公が指導するガミラス帝星は惑星ジレルへの宇宙船の立ち寄りを厳しく制限していたがその網を潜っての
ジレル人誘拐は後を絶たなかった。

結果、恐ろしい事態が起こってしまった。 ガミラス人と”接触”を重ねる内にジレル人の物質文明の程度が飛躍的に
上がり、惑星ジレルを封鎖していたガミラス艦隊、重巡洋艦四隻、駆逐艦二十隻が丸々ジレル人に乗っ取られたのだ。

彼等はそれまで連れ去られた同朋の返還を要求し、それが入れられない場合、ガミラスの帝都バレラスへの攻撃を
表明した。

そして彼等が本気である”証”としてサレザー星域外縁部での決戦を申し入れた。

ジレル人に操られた大勢のガミラス人から声高に発せられたこの”挑戦”にはもはや政府もジレル人の存在を
否定出来ず、エーリク大公もその体面上、”挑戦”を受けざるを得なかった。

当日、エーリク大公が率いる四百隻の重巡洋艦隊が指定された空域にゲシュタム・アウトするとジレル人の艦隊は
既に布陣を終わっていた。

それもたった四隻の重巡洋艦隊である。(識別の為か、淡いパープル調の派手な塗装に塗替えられていた。)
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エーリク大公の座上する旗艦、戦艦「Gardola・Eerariku」の艦橋前面にある大スクリーンに粗末な貫頭衣に身を包んだ
男の姿が写った。

「通信士! 通信接続の許可は出していないぞ!」戦艦「Gardola・Eerariku」の艦長はエーリク大公の手前、外部通信を
勝手に受け付けた通信士を叱咤した。

「良い! ジレルの方々の話を伺おうではないか。」この時点ではエーリク大公もまだジレル人の本当の恐ろしさを
思い知って居なかったのだ。

「良くぞ参られた、エーリク大公殿、我等は戦火は望まないが我等ジレルの民を不正に利用させ続ける訳には行かない。
また、公がジレルの民を不正に利用する事を禁じ、その様な悪業の摘発を行なっている事も知っている。
しかし、残念ながらその法や防止策は未だ大きな効果を挙げていない。

だから今回の”力のデモンストレーション”の場を設けさせて貰った。」ジレル人の代表はそこで言葉を切った。

「”力のデモンストレーション”だと! たった四隻の重巡洋艦隊で四百隻の艦隊を相手にすると言うのか! ガミラスを
馬鹿にするにも程がある! 全軍、敵艦隊を包囲殲滅せよ!」怒り狂ったエーリク大公が吠え、ガミラス艦隊は
攻撃態勢に移行し、ジレル艦隊に襲い掛かった。

蹄鉄金具の様なU字型の隊形でジレル艦隊を包み込む様に機動するガミラス艦隊、そのU字型隊形の根本に
戦艦「Gardola・Eerariku」は位置していた。

<彼我の勢力は圧倒的にこちらが有利だ。 ”妖怪共め”ここで誰が”主人”か思い知らせてくれるわ!>エーリク大公は
勝利を信じて疑わなかった。

**************************************************

<しかし、エーリク大公は負けた・・・。 そうだろう”ギルティ”>イルダは核心を突いてきた。

<いや、単純に”敗北”したと言うより”弄ばれて敗北”したと言うべきかな。>彼は更に恐ろしい事を言った。


ガミラスとジレルの決戦は完全に一方的なものであった。

しかも物理的には”ジレル”側の圧倒的不利という信じ難い状況下においてである。

ガミラス艦はお互いに同志撃ちを繰り返し次々と爆沈していった。

しかもジレル側の艦艇は一発の魚雷も一条のビームも発しないままである。

ジレル人の”認識を歪める力”や”記憶改竄能力”など”心理操作能力”が存分に力を発揮した結果だった。

また、ジレル人が”心理操作”出来ない”ガミロイド”も本星での艦隊編成時にこの艦隊に組み込まれない様、バレラスに
侵入したジレル人工作員が手配りしていた。

ただ、何故かエーリク大公の座上する戦艦だけは操艦不能になっては居たが同士討ちの嵐には巻き込まれ無いで
済んでいた。

動く事もままならず、自艦の発したビームは”敵艦の幻”を貫くだけで何の戦果も挙げられないまま情報士官が
絶望的な事を艦長に伝えた。

「エーリク大公、真に、真に、残念な報告をしなければなりません。 本艦隊はこの戦艦「Gardola・Eerariku」を除き
全滅しました。」艦長は悔し涙を流し俯いて呟く様に報告した。

「・・・良い。 貴公が悪い訳ではない。 下らぬ”体面”を気にしてこの挑戦に乗った私が悪いのだ。 ただこれだけ多数の
戦死者をだしながら何の成果も挙げられなかったのは確かに悔しいな・・・。」エーリク大公はつくづく支配者の孤独と
苦悩に苛まれていた。

その時、旗艦・艦橋の大スクリーンに再び最初に接触してきたジレル人の姿が写り,語り始めた。  

「エーリク大公殿、いかがですかな我が艦隊との戦闘は・・・?」その初老の温厚そうに見える男は皮肉な目をエーリクに
向けた。

「判った、骨身に沁みてそなた達の力の大きさは思い知った。 もう絶対に”ジレル”には手を出させん! 
何人たりともだ! また償いに私の命が欲しければそれも捧げる! だから唯一隻残ったこの戦艦の乗組員の命だけは
助けてやって欲しい!」(物理的な)”力”を自在に揮って大ガミラス帝星の礎を築いたエーリク大公だったが、
いや、自分が物理的な”力”の在り様に精通していたからこそエーリク大公はジレル人の前に素直に膝を付いた。

「気付くのがちと遅すぎましたな。 大勢の幼子を奪われ、殺された我らの恨み、思い知って頂こう!」ジレル人はそう
告げるとスクリーンから消えた。

「皆、落ち着け! 取敢えず動くな! 早急な動作は反逆と看做す!」ベテランの艦長が艦の秩序を守ろうと必死だった。

「大変です! バレラスが、バレラスが・・・。」情報士官が上擦った声で報告した。

「バレラスがどうした! スクリーンに出せ!」エーリク大公が苦り切った顔で命令した。

バレラスは核攻撃の最中にあった、ジレル人に奪取されたガミラス艦は重巡四隻、駆逐艦二十隻だった。

先程エーリクの艦隊を壊滅させたのは重巡四隻であったが、駆逐艦二十隻は塗装も変えず友軍艦に紛れてバレラスに
接近、その持てる火力を存分にバレラスに叩き込んだ。
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紅蓮の炎に焼き尽くされる帝都バレラスの姿が大スクリーンに浮かび上がり、エーリクは自分が迂闊にも誘い出され、
兵だけでは無く、臣民までも殺してしまった事に”ジレル人誘拐”問題を徹底的に取締る事の出来なかった自分を恥じた。

**************************************************

スクリーンから目を逸らし俯いているエーリク大公に艦長が近づいて来て言った。

「定刻に成りましたが”ジレル人”共の艦隊は姿を見せません。 撤収すべきかと考えますが、如何いたしましょう。」

あまりの驚きに声も出せなかったエーリク大公はスクリーンを切替させ、座上艦の周囲を映し出させた。

そこには全く無傷な姿で四百隻の大艦隊が写っていた。

<これは一体どう言う事だ。 私はまだ”ジレル”の術中にいるのか?>エーリクは疑問を残しながらも一旦、撤収、
事実確認をする事にした。

ガミラス本星は何時もと変わらぬ佇まいでイスカンダルの隣で鈍く輝いていた。

そしてエーリクの艦がバレラス上空に差し掛かると核攻撃の嵐にあった事など嘘の様に都市は繁栄していた。

<やはり、あれは単なる目眩ましだったのか・・・。ジレルの奴らは遊び好きだと聞くが私は”遊ばれたって訳”か・・・>
エーリク大公は兵や臣民が無事だったのは嬉しかったがそのプライドはズタズタに傷つけられてしまった。

<いや、貴方は良くやったよ。 私も”遊び”じゃなく本気で戦わさせて貰った。>先程スクリーンに写ったジレル人と
同じ声がした。

<”精神感応”か! また私をペテンに掛ける気か!>エーリク大公は周囲の臣下に気付かれない様に気を付けた。

<あなたは”物理世界”の”王”だ。 だから先程の艦隊戦が本物だった事が信じられない、当然、敗北した事も。>
ジレル人は冷徹な事実を告げた。

<そうだ、何の損害も無い”敗北”など信じられる訳が無い。>エーリクの脳裏には次々と爆沈してゆく四百隻の
艦隊の姿や核攻撃に焼かれるバレラスの姿がハッキリと残っていたが客観的事実ではその様な事は無かったのだ。

<フフッ、やはり”物理的証拠”が欲しいか。 だったらバレラス周囲の外郭表面を調べてみるが良い、貴公の欲しい
”物理的証拠”が手に入るぞ。>それだけ告げるとジレル人の精神感応の気配は消えた。


                                                 163.イルダ・走る!-(8)→この項続く

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by YAMATOSS992 | 2014-11-15 21:00 | ヤマト2199 挿話 | Comments(0)
 「フム、新造艦はいつ見ても良いものだ。 ただ、塗装が”親衛隊”仕様なのが気に入らないが・・・。」メルダ・ディッツは
眼下の広がる乾ドックに収まった完成間近のハイゼラード級航宙戦艦を見ながら呟いた。

「メルダ様、御心配無く。この外部塗装はパウダー・コーティングです。 青色の粒子を磁力でくっつけてあるだけです。」
オルト・ドルメン大尉が説明した。

「パウダー・コーティング・・・だと?」メルダは訝しげな顔をした。

「ですから、宇宙空間に出て磁力を反転させればたちどころに外皮塗装は四散し、本来の航宙艦隊仕様の塗装が
出現します。」ドルメン大尉が得意げに語った。

それを聞いたメルダは辺り構わず高笑いした。
「それは愉快だ、出来たら”親衛隊”艦隊の目の前で早変わりしてやりたいものだな。」

「面白い! やりますか!」ドルメンも悪戯は大好きだった。

「お二人とも! ここで危険を冒して新造艦を用意してくれている同志達の努力を何だと思っているのです! 
不謹慎極まり無いですぞ!」黙って聞いていたランス・ラーキン中尉が激怒した。

「判っているわよ。 各収容所惑星を査察して歩く”監察官”に成りすまして父上、ガル・ディッツ提督を救出し、
反体制・運動の御神輿に担ぎ上げるんでしょ。」メルダは不貞腐れて言った。
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「悪く言えばその通りです! ですが、現ガミラス政権で一番人望が厚いのはディッツ提督なのは確かです。
”デスラー政権”に反対する政権を樹立するとしてその首班に相応しいのは御父上しかいないのです。」ラーキン中尉は
熱く語った。

<全く、あの連中、反体制派を捜してその”心”の内まで覗いて”忠誠”を確認し信用のおける乗組員を選抜したのは
一体誰だと思っているのかね。>イルダは”ギルティ”と共にメルダとその側近(?)の周りに居るガミラス人達の”認識”を
歪めてそこにいるのが”死んだはずのメルダ・ディッツであるのを隠しながらぼやいた。

<まあ、そう言うなよ。 これは”君”が立てた計画だ、この”黒幕”が誰だか知られない事も含めてね。>”ギルティ”が
精神的に苦笑い(?)しながら彼女を窘めた。

<ところで私は乗組員幹部の人選には参加したけど、下部乗組員やこの艦の建造を行う工廠員の選抜は
どうしたの?>イルダの質問に彼は意外な言葉を返して来た。

<ああ、それなら”全然心配ない”、彼等は全部”ガミロイド”だ。>

<何! それはどう言うことだ!>これにはイルダが慌てた、それもその筈、ガミロイドは機械、心理操作は効かない、
しかも全ガミロイド間でネットワークが形成され情報は共有化される、当然、ガミロイドの顔に付いた四つの目の内、
向かって左下の一つはNETカメラなのだ。

これでは幾ら二人が”親衛隊”や”一般ガミラス人”の”心理操作”や”認識誤認”を駆使しても全く意味が無い。

<何て恐ろしい事をしてくれたんだ! やっぱりお前は私の”敵”か!>イルダは彼から心理的に飛び退いた。

<そんなに慌てなくても良いよ。 そろそろ次の段階の説明をする時期が来た様だ。>彼はイルダを見詰めた。

<君も薄々気づいていると思うが私は”ジレル人”だ。>一番秘密にして置きたいであろう、自分の正体を”ギルティ”は
イルダに告げた。

<やっぱり・・・。他の”ジレル”は何処に隠れている? 今までの仕事ぶり、とてもお前一人で行えたとは思えない。>
イルダは身構えながら質問を続けた。

<いや、今、生き残っているジレル人は三人、もっとも、一人はヤマトとの戦闘で死亡したから今は二人だけだ。>
彼の答えは意外だった。


<じゃあ、お前は”ジレルの魔女”、あのミーゼラ・セレステラ宣伝・情報相の心とも繋がっているって事だな。>イルダは
一番恐れている事を尋ねた。
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<もちろん君の推察通り、セレステラの”心”と私の”心”とは繋がっている、但し、セレステラは私を知らないし、まして
我々が何をしようとしているのかは知りはしない。 なにしろ彼女は”囮”に過ぎないからね。>彼はイルダの思いも
よらない事を告げた。

**************************************************

 現ガミラス宣伝・情報相・ミーゼラ・セレステラによれば彼女が所属していた惑星”ジレル”の住民は”人の心を読む事が
出来る能力”を持ち、その”力”を周辺惑星・勢力から疎まれ、滅ぼされたと言う事であった。

しかし、もし本当にジレル人に”読心力”を始めとする”心理操作能力”があったのであれば、物理的攻撃手段しか
持たない勢力など全く敵し得ないのは今までの出来事で御理解頂けると思う。

じゃあ、そうした”能力”を持った者は極一部しか居らず、大概のジレル人はそうした能力を持って居なかったとしたら逆に
”民族殲滅”などと言う大袈裟な悲劇は起こらなかったろう。

では真実は一体どの様な出来事だったのであろうか?

時代はエーリク大公時代に遡る、ガミラス軍の領地・探査隊が惑星”ジレル”とその住民を発見した。

原住民達は一見すると中世風の文化程度の物質文明しか持って居なかったが、その精神文明は非常に高度であった。

彼等はガミラス探査隊に”心理操作”を行い、惑星”ジレル”の発見の記憶を消す事に成功した。

だが、物質文明においてはガミラスに大きく劣っていたジレルは物理的データの消去の必要性に気が付かなかった。

探査隊全員の記憶にない惑星の記録・・・これはガミラス本星でも問題になり再度、宙母を基幹とする機動部隊を送り
込んだ。

結果は前回と同じく探査隊員全員の記憶には残って居なかったが多数飛ばした艦載・偵察機や上陸した探査員の
持参していた記録装置には”ジレル人”の姿や街が写っていた。

この探査結果にガミラス本星、特にエーリク大公は恐れを抱き、”惑星ジレル”の存在は最高機密の一つとなった。

しかし、ジレル人の”人の心”を思いのままに操作出来る能力は”政財界”の”陰謀”を生業とする輩には魅力的に写り、
何とかその力を手に入れようとする動きがあちこちで観測された。

もちろん、そうした愚かな試みはことごとく失敗したのだがこうした状況に危機感をつのらせたエーリク大公は
心理操作されないガミラス兵の代理人を開発させ、惑星ジレルの警備に当たらせた。

これが、ガミロイドの原型である、しかしまだ個々のガミロイド間を結ぶNETワークは設定されていなかった。

この為、”闇の仕掛人”達は秘密裡にガミロイドを入手し、やはり”闇”で仕入れた宇宙船を使って惑星ジレルに
ガミロイドを送り込みジレル人、特にまだ心理操作に長けていない幼児を誘拐し、政財界で暗躍する工作員に
育て上げる事が計画・実行された。

エーリク大公は剛腕をもってなる独裁者であったが徒に武力に頼らず叡智を巡らす名君でもあった。

だが、それだけに敵も多く、ジレル人工作員を差し向けられた場面が何度かあった。

しかし、エーリク大公が強靭な精神力の持ち主であった事とジレル人工作員がまだ未熟な少年、少女だった事も手伝って
エーリク大公に対する心理攻撃は失敗、首謀者は悉く検挙された。

ところがジレル人工作員は逮捕に来た警官や親衛隊員を心理操作し、”ガミラスの闇”に消えて行った。

ジレル人逮捕にガミロイドが使われ無かったのは逮捕の現場担当者のジレル人の能力に対する脅威の認識の甘さが
原因であった。

この後、長きに渡りガミラスは”ジレルの魔女”の脅威に怯える事となった。

**************************************************

<今の説明だとやっぱりガミロイドは我々の天敵じゃないか! それがどうして今は”安全”なんだ?>イルダが
”ギルティ”に疑問をぶつけた。

<それは彼等、ガミロイドが単なる”自動人形”ではなくなったからさ。>彼は思いもかけない言葉を返した。


                                                 162.イルダ・走る!-(7)→この項続く

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by YAMATOSS992 | 2014-11-08 21:00 | ヤマト2199 挿話 | Comments(0)
 雨の中、帝都バレラスから飛び立って行く艦隊があった。

ゼーリック国家元帥が座上する”ゼルグート”を旗艦とし、ハイゼラード級航宙戦艦で周りを固めた艦隊だった。
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メルダはこの艦隊がどこへ向かっているのかは知らなかった。

今、彼女に出来るのは去って行く艦隊を悔しそうに見つめ続ける事だけだった。

<ゼーリック国家元帥、あいつが父を陥れた張本人に違いない。 他の高官と父の間に確執があったとは
思えない・・・。>本当はセレステラ宣伝・情報相とギムレー親衛隊・長官も一枚噛んでいたのだが、政治に
疎いメルダにはそこまで考えが及ばなかった。

航宙港の周りを囲むフェンス越しに色々の光景を見ていたメルダが、目の前で繰り広げられる”親衛隊”の”暴虐”に臍を
噛んでいる時、イルダは様々な”人”とこっそり”心理的・接触”を果たし、今後の作戦・計画を煮詰めつつあった。

<やっぱり、”親衛隊”の奴らあちこちで恨み買い捲りだぜ、しかし、残念ながら奴らがばら撒いた”恐怖” の”力”も
”反乱”の抑止力として充分に機能してやがる。>イルダは爪を噛んだ。

<そうだね。人の”心”は個体の”檻”に閉じ込められた存在だ。 強烈な”恐怖” をばら撒けば人々は勝手に”保身”に
走る。 そして”親衛隊”は人心のコントロールに成功する訳だ。 だが、この方式には大きな弱点もある。>

<”親衛隊”のやり口に反発する人や組織が生まれて来るって事だな。 しかし、”反感”は持っても”反体制・運動”まで
起そうと言う気骨のある奴はまだ見つからないな。>イルダは留置場の寝台に腰かけながら頭を垂れつつ、バレラスに
居る人々の心を飛び歩きながら思った。

<待て! それらしい人物が引っかかって来たぞ!>最初に”反体制・運動”と言う大胆不敵な行動を起そうとしている
人物を見つけたのは”ギルティ”の方だった。

<何! ほう、この”親衛隊”に対する”憎しみ”は半端では無いな。 名前は・・・ランス・ラーキン・・・中尉か!>イルダは
将校に”反体制派”が居ようとは思っても見なかった。

何しろ父、ディッツ提督でさえ、”親衛隊”の跳梁跋扈を見て見ぬ振りをしていたのだ、将校の中にはっきり
”反体制・運動”を具体的な行動として起そうとしている者がいるとは信じられなかった。

<おっ、もう一人、仲間が居るみたいだな。>”ギルティ”がランス・ラーキンの”心”の内を覗いて言った。

<オルト・ドルメン・・・こっちは大尉か!・・・しかし、残念ながら他の”親派”はいない様だな。>イルダはちょっと失望した。

<なあに、調査を始めて間もないと言うのにもう”反体制・運動家”が見つかったんだ、他にもまだ沢山いると期待して
良いと思うよ。>”ギルティ”の感情は安堵していた。

<さて、彼らは”親衛隊”にどんな恨みを持っているんだ・・・。>イルダは二人の”反体制・運動家”の心に忍び込みその
心の闇を覗こうとした。

<やめて措きなさい。 人の心は”深淵”だ、何が入っているか判らない。 特に”恨み”の感情は時としてとんでもない
魔物を生み出すものだ。 覗き込んだ君の”心”が反対に”恨みの深淵”に引き摺り込まれる恐れが大きい。>
”ギルティ”はイルダの無謀な挑戦を諌めた。

<それに心への干渉は必要最小限度に留めないと相手が心理操作されている事に気付いてしまい、全て元も子も
無くなってしまいかねない。>彼は現実的なリスクも付け加えた。

<確かに”今”は余計な好奇心で全てを失う時では無いな。 悪かった。 謝る。>イルダは意外と素直に自分の非を
認めた。

だが次に出した彼女が出した要求は”ギルティ”さえ顔(?)をしかめる程、法外なものだった。

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<今日も来てしまった・・・。 成すべき事も判らないと言うのに・・・。>メルダは再び航宙港をフェンス越しに眺めていた。
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眼前の囚人の列から家族と思しき一団が脱走し”親衛隊”に撃たれて全滅した。

だが、今の彼女にはどうする事も出来ないのが辛かった。

<”親衛隊”に逆らう事は”デスラー総統”に逆らう事、だが、今のバレラスの状況は異常だ。 まるで破滅願望が
”デスラー総統”を支配しているとしか思えない。 だが、私の知っている総統は常に”未来”を見据えていた、破滅願望
なんて決して持つお方ではなかった。>メルダは世の移り変わりに付いて行けず戸惑っていた。
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そんな彼女の後ろ姿を左程遠くない路地裏に停められた車が見ていた。

「彼女か?」男の声が短く尋ねた。

「ああ」もう一人の男が短く応えた。


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by YAMATOSS992 | 2014-11-01 21:00 | ヤマト2199 挿話 | Comments(0)