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宇宙戦艦ヤマト前史

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宇宙戦艦ヤマト登場前の地球防衛軍の苦闘を描きます。

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 次元断層内は真空である。 次元潜航艦の中で如何に音を立てようともそれが敵艦に伝わるはずは無いと考えるなら
その者はたちまち魚雷を喰らってしまうであろう。

確かに音そのものは伝わらないが次元潜航している艦が周りの次元断層に与えている微振動が艦内で音を立てる事によって大きく変わり、それが敵艦に探知されてしまうのである。

だから潜艦が無音潜航するのは今も昔も変わらない戦術だった。
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「副長、潜航士官(ダイヴ・オフィサー)、こっちに来てくれ。」フラーケンは次の戦術を今の内に決めておこうと思った。

とはいえ魚雷を使い果たしてしまった今、取れる戦術は一つしか無かった。

 UX-01の主な任務は敵の交通路の破壊、通商破壊戦である。

だから小柄な艦体に不釣り合いな戦艦級の魚雷を多数積んでいる。

しかし、次元潜航艦の数は少なく、相手にすべき敵商船の数は多い。

そこでここぞと思しき宙域に機雷をばら撒く戦術を取る事もある。

もちろん単純な接触型の物では無く、近接信管を備え敵商船が接近したらブースターをふかして懐に飛び込んで行く
短魚雷とでも言うべきものなのだが、たまたまUX-01は今度の作戦時、機雷を積み込んでいたが使う機会が無く、
五基全てがまだ残存していたのである。

「成程、機雷か! これなら機械音を出さずに敵潜に接近出来るやもしれませんね!」フラーケンやラングより二つ下の
潜航士官が感心した。

「ですが、ただ浮上させるだけでは敵艦に当てる事は難しいのではありませんか?」ラング副長が問題点を指摘した。

「ウム、確かにそこがこの戦術の弱点だ。 何時、敵が真上を通るかをどうやって知るか、それさえ出来ればこの戦術は有効なのだが・・・。」フラーケンは腕組みして考えた。

「探知主任、敵潜の位置は掴んでいるか?」ラング副長が敵の位置を確認した。

「駄目です。 敵も音響管制に入っている様で機械音、その他の雑音、一切、聞こえません。」探知主任が絶望的な事を
伝えた。

<音響管制・・・。そうか!>フラーケンは敵の正体に思い当たった。

潜艦の音響管制の考え方は第二次大戦の独海軍Uボートの運用上で完成された。

それは大英帝国の生命線である海上交通路を脅かすものであったが、英国はUボート狩りを駆逐艦だけでなく
護送空母、対潜哨戒機を動員して大々的に行った。

対するUボートは駆逐艦に見つからない様、静粛性を増し、航空機のレーダーに捕まらない様、シュノーケルや
対レーダー電波警報機を備えて極力浮上する事無く作戦出来る様に工夫した。

この様に実戦で鍛え上げられた独のUボートに対し日本の伊号潜水艦は対米作戦の要である漸減作戦の主役としての役割を与えられていたため、水上高速力を求めて機関をフル回転する事にのみ注力し、静粛性はお世辞にも良いとは言えなかった。
(これは大戦中五回行われた潜水艦による遣独使節が二回しか成功しなかった事でも解る。)

フラーケンは敵潜の静粛性に着目した。

もし敵潜の目標が通常宇宙にいる艦艇ならここまで静粛性を求める事は無いだろう。

何故なら幾ら探知されても敵に攻撃手段が無い以上、静粛性はそれほど必要の無い性能なのである。

しかし実際の敵潜は非常に静粛性に優れている、これは敵潜の目標が音響管制に勝れた艦、
即ちガミラスの次元潜航艦だと言う事だ。

「対潜攻撃型の潜艦だと言う事ですか!」ラング副長が驚きの声を上げた。

「上方から接近する小物体が多数あります!」測的手が警告した。

「深々度潜航!」フラーケンが命じた。
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「反対だ!メイン・タンク・ブロー、深度を上げろ!」ラングがフラーケンの頭越しに命令した。

潜航士官はどちらの命令に従ったらよいか、戸惑った。

しかし、フラーケンはただ頷いて見せた、それはラングの指揮を優先しろとの指示だった。

UX-01は浮上を始めた、そして今までいた深度とそれ以下の深度に爆轟が渦巻き、もし今までの深度を維持していたら、更に深度を下げていたらどうなっていたか皆が背筋を寒くした。

確かに水中だったらこの局面で深度を上げるのは自殺行為であったが次元断層中でも真空で在る事は変わらず、
深度を上げても下げても敵爆雷から艦を守る事は変わらなかったが敵潜はUX-01が深度を下げる事を予測、次発の
爆雷の爆発深度を下げて設定していたのだ。

「艦長の見立て通り、相手は対次元潜航艦・攻撃型次元潜航艦ですね。」ラング副長が感心して見せた。

「どうしてそう思う。」フラーケンはラングのあからさまな持ち上げが不愉快だった。

「敵潜は我々に対して爆撃?を行いました。これは通常空間においては考えられない攻撃です。
敵味方同じ次元断層内にいるからこそ有効な攻撃です。次元断層に居る艦艇は次元潜航艦以外に考えられませんから
先程の爆撃?は対次元潜航艦兵器に違いありません。」ラングの分析は適確だった。

「あっ、敵艦が左舷を後方から前方に擦過して行きます。」測的手が報告した。

「何!」フラーケンは測的手のレシーバーをひったくると自分で敵潜の音を聞こうとしたが何も聞こえなかった。

「艦長、グランはプロです。プロの耳を信じましょうや」ラング副長は艦長の行為を嗜めた。

艦長からレシバーを取り戻すと測的手はムッと顔付を変えた。

「魚雷接近! 方位十、雷数八!僅かに扇状に開いた雷跡です。」測的手は報告した。

「取り舵十、魚雷群と正対しろ!」フラーケンは今度は適確な命令が出せた。

しかし前方から来て舷側を擦過する八本の魚雷の航走音は気持ちの良いものでは無かった。

「あ、再度、魚雷発射音、雷数八!」測的手が驚いた様に報告した。

それはそうである、雷撃戦に熟達したUX-01ですら全魚雷発射後、次発装填して再び全門斉射を行うには地球時間で
六~八分掛かるのであるから敵潜の次発装填の速さは驚異的な物だった。

<奴は一体何本魚雷をもってやがるんだ!>フラーケンは心の底で毒づいた。

「艦長、敵潜の前甲板に四連装大口径ビーム砲塔が背負い式に二基装備されていましたよね?」ラング副長が
関係ない事を言った。

「それがどうした?」フラーケンはイラつきつつ応えた。

「あれは多分ビーム砲塔ではありません、旋回式四連装魚雷発射管です。」ラングは誰も予想しない事を言った。

次元断層に潜む攻撃艦から発射された魚雷は次元境界面を突破する位置を指定しておけば通常宇宙にいる敵艦を
全方位どこからでも攻撃出来る。

しかし次元断層内での戦闘では亜空間魚雷も普通の魚雷としての機能しか持たない。

だから敵潜は次発装填装置を持った旋回式の魚雷発射管二基で魚雷を連射し目標を雷撃して来るのだ。

UX-01は前方、後方にしか雷撃出来ない訳ではない。

魚雷方位盤によって敵艦の速度と進路から敵艦の未来位置を割り出し、こちらの雷速と魚雷の進路、舵角の調整など
様々なデータを入力する事で真横にいる目標に前部、後部の全発射管の魚雷を導く事も出来る。

但し、相手が通常宇宙にいる通常艦艇ならばの話である、今回の様に双方とも次元断層内に居て、速度が速く、
運動性も良い艦艇相手に魚雷方位盤で魚雷を命中させるのは至難の技と言って良かった。

「こちらがもう一層深く次元潜航出来れば亜空間魚雷の全方位雷撃が可能になるのだが・・・。」フラーケンは腕組みして考えた。

次元潜航艦は次元断層潜航中に更にもう一層、次元境界面を突破して深く潜る事は出来た。

しかしそれを行ったが最後多次元断層に落込み二度と浮上出来なくなる事は目に見えていた。

<それに本艦の攻撃手段で残っているのは機雷のみ・・・。一層下からの攻撃は不可能だ・・・。>フラーケンは
追い詰められていたが、突然、ラング副長の前に手を差し伸べた。
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「魚雷を出せ!」フラーケンの要求は唐突だった。

<は? 何の事です?>と言いたげに戸惑った表情をするラングにフラーケンは重ねて問い質した。 

「先程敵潜に向けて残りの魚雷を斉射した時、故障で打てなかった魚雷だ。修理はもう済んでいるのだろう?」
フラーケンはラングが何か企んでいると踏んでいた。




                                     202. アッカイラ 鮫達の狂宴ー(3)→ この項続く


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by YAMATOSS992 | 2016-04-30 21:00 | ヤマト2199 挿話 | Comments(0)
 「あ、ホイッと、魚雷命中!最後の一隻、片付きましたぜ!大将!」次元潜望鏡に取り付いていた副長のゴル・ハイニが
勝鬨を上げた。

しかし艦長のヴォルフ・フラーケンは俯いたまま「ああ」と頷いただけだった。

「ゲール艦隊の処理、完全に終わりましたぜ。」ハイニが再び声を掛けたがフラーケンは手元で指を躊躇う様に動かし
続けていた。

ハイニはそれを見て顔をしかめた。

「大将、戦いに勝ったから"散って行った魂" を弔う用意をするのはわかりやすが、相手はあの卑怯で卑劣、冷血漢の
ゲールですぜ! 弔うには値しやせん!」

フラーケンは横目でハイニの方を見やるとそれまで折っていた折り紙を見せた。

その小さな折り紙にハイニの目は引付けられた。

「『ザルツ の 竜』・・・。 それでは弔う相手は・・・。」
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「そうだ、ヴァルス・ラング・・・、ゲールの奸計にはまって殺された俺の親友だ。」フラーケンはやっとその時が来たとの
感慨で一杯だった。

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バラン星空域のデブリはゲール艦隊を全て呑み込んでも左程増えた様には見えなかった。

フラーケンはその乗艦、UX-01を比較的デブリの濃度が薄い安全宙域に漂泊させ乗組員を全員上甲板に整列させた。

この時、普段なら艦長であるフラーケンは司令塔の上に陣取り部下達を見下ろして訓示を行うのだが、
今回は彼もハイニと共に上甲板の乗組員の列に加わっていた。

彼は両掌で大事そうに包んで持っていた『ザルツの竜』の折り紙を高く掲げ、乗組員に示した。

そしてそれを隣に立っていたゴル・ハイニ大尉に渡した。

ハイニはそれを一端、目の高さに掲げ持って一礼すると隣にいたベルン機関長に渡した。

その折り紙は次々と乗組員達によって手から手へ渡されていった。

最後にそれを手にしたのはヤーブ・スケルジ(藪 助治)だったが彼は手渡されたその折り紙を見るやあまりの不細工さに
思わず折り紙を開いて折り直し始めた。

「おい!ヤーブ!何をしている!」言葉がまだ不自由なヤーブの面倒を見て居るヨーヘン機関・兵曹長が止めようと
したが、それを制する手があった。

「大将・・・?」ヨーヘンはフラーケンの行動が一瞬、理解出来なかったがヤーブが折り直した折り紙を見るとその簡素で、
それでいて優美で力強いその姿に心を奪われた。

ヤーブはその『折鶴』をフラーケンに手渡そうと差し出したが彼は首を横にふり舷側の彼方を指差した。

ヤーブはフラーケンの想いを全て感じ取った訳では無かったが、自分に何が求められているのか、
それを感じ取れる位の感性はあった。

彼は手にした『折鶴』を宇宙の彼方へ届けとばかりに力一杯投げつけた。

宇宙空間には当たり前だが空気は無い、当然空気抵抗も無い。

大気中では飛ばす事の叶わぬ『折鶴』でも失速する事無く慣性の法則に従って初速を維持したまま飛び続けるのだ。

みるみる小さくなってゆくその姿を見つめつつ、フラーケンは心の中で叫んでいた。

<ヴァルス! お前の仇は確かにとったぞ! 安らかに眠れ!>

こうしてフラーケンの親友、ヴァルス・ラング中佐の葬儀は簡素ながらも武人に相応しい荘厳さの中で行われた。

**************************************************

「とにかくアッカイラ星域に飛んでくれ! あそこで何か問題が起こっているらしい。」
ガル・ディッツ次元潜航艦隊総司令が緊迫した面持ちで連絡して来た。

「その問題とやらは一体何ですか?」フラーケンは一艦長に過ぎない自分に総司令が直接連絡を取って来た事が
不思議だった。

「判らん、唯一判っているのは味方の次元潜航艦が次々と消息を絶っている事だけだ。
君には味方艦の消息不明の原因と出来得ればその排除を頼みたい。」総司令はフラーケンにとんでもない難問を
いとも容易い事の様に命じた。
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「どう思う、ラング大尉。」フラーケンは総司令との通信が切れると副長に尋ねた。

アッカイラ星域には先住民が居たが文明のレベルが低く、ガミラスを天空から来た神と崇めたので平和的にガミラスの
支配下に入った。

しかしこの星系は交通の要所で様々な星域の宇宙船が行き来していた。

ガミラスはそれらの宇宙船を止め、通行税を取っていたが幾つかの星系はそれに猛反発し宇宙艦隊を送って来た。

ガミラスはまだ通常艦艇で構成された航宙艦隊が充実しておらず代わりにガミラスだけが持つ技術、
ゲシュ・バール機関を備えた次元潜航艦でこれに対抗していた。

次元潜航艦は通常宇宙にいる艦艇を攻撃出来るが通常の軍艦は異次元にいる次元潜航艦を攻撃出来ない。

確かに次元潜航の技術は難しい。

ガミラスでも次元潜航に失敗して行方不明になる艦は後を絶たなかったがそれは実戦前の訓練期間の話である。

鍛え上げられて次元潜航艦学校を卒業した者には最早そんな失敗をする奴は居ない。

フラーケンもかつて学校時代次元潜航艦で遭難しかかった経験を持っていたが、今の副長、ヴァルス・ラングの補佐を
受け得難い生還を期し一人前の次元潜航艦乗りになったのだ。

<どこかの星系が対次元潜航艦技術を考案したのか・・・?>まだ若かったフラーケンは敵が通常空間に居ながら
次元断層の奥に届く兵器を開発したと言う思いに囚われていた。

「艦長、この命令を受けるのは良いんですが、今までの作戦行動で魚雷を消費してしまい、前方発射管ー連射分六本
しかありません。 後方発射管に到っては皆無です。

一度補給を受けた方が宜しいかと考えます。」ラング副長が進言した。

「ヴァルス、この指令は時間が命だ、何、相手を撃滅する必要は無い、何が起こっているのか、
それだけを掴んで報告すれば良い。
敵艦の撃滅は航宙艦隊の戦艦の仕事だ。
まずはアッカイラ星域に跳んで侵入、生き残りの僚艦に連絡を取って情報を得よう。」フラーケンは事態を
軽く考えていた。

ラング副長は一度言い出したら他人の意見など聞かないフラーケンの性格を良く知っていたので魚雷補給の進言は
それ以上行わず代わりに別の指示を出しに艦橋をこっそりと抜け出した。

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「フーム・・・。怪しい物は見当たらないが・・・。」アッカイラ星域ににゲシュタム・アウトしたUX-01をフラーケンは即座に
次元潜航させ次元潜望鏡や亜空間ソナーによる情報収集にあたらせた。

「アッカイラ駐屯艦隊旗艦 "チラン・ケラン" より入電!」通信士が報告した。

<チラン・ケラン?だと・・・。>フラーケンが訝し気な顔を向けるとラング副長も「頭がグラグラする様な名前ですね。」と
おどけてみせた。

しかし、その通信内容は深刻なものだった。

『アッカイラ星域にはガミラス以外の他星系が送り込んで来た艦艇が出没、交通破壊戦を挑んで来ているので厳戒を
求む!』その通信が終わるか終らない内に探知主任が叫んだ。

「魚雷が次元境界面を突き破った反応を探知! 雷数八!」

「何! 発射艦の方位は判るか?」フラーケンは次元境界面の突破反応があったと言う事は敵艦の目標は通常空間に
居る "チラン・ケラン" だと判断し、次元潜望鏡をその方向に向けた。
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次々に被雷する "チラン・ケラン" 、八個の光球が消えた時、そこには威風堂々としたガミラス戦艦の姿は既に無かった。

<八射線・・・か。本艦は六射線、敵の火力は本艦の1.5倍のと言うところか・・・。>フラーケンは冷静に分析した。

と、 "チラン・ケラン" が最後を遂げた通常空間から少し離れたところにに赤い裂け目が生まれ、ガミラスの次元潜航艦と全くデザインの違う次元潜航艦が浮上して来た。

次元潜望鏡でそれを見ていたフラーケンはその姿に見入ると「おかしい・・・。ラングこれを見てみろ!」と言って
次元潜望鏡の眼視孔をラングに譲った。

「前甲板に大口径四連装ビーム砲塔2基ですか? これは確かにおかしいですね。」ラングも首をひねった。

次元潜航艦は自ら次元断層を作り出してそこに潜んで敵を攻撃する艦艇だ。

通常空間にいる敵は次元潜航艦の居場所が解らず、また敵が偶然にこちらを探知出来たとしても攻撃手段を
持たないのでこちらは一方的に攻撃出来るのだ。

だから次元境界面を越えられない通常のビーム兵器など幾ら装備しても何の意味も持たない。

更には次元断層内は "ゲシュタムの門" の "回廊" と同じくビーム兵器は無効である。

そして敵は "チラン・ケラン" を撃沈するのに亜空間魚雷を使った。

明らかに戦艦である "チラン・ケラン" とビーム兵器を撃ち合う愚を避けた事は明らかである。

「敵は今、通常空間にいる、我が方は次元潜航中だ、亜空間魚雷の射角を六十度ずつずらして敵艦を包囲する様に
発射すれば確実に仕留められるぞ! 前部発射管全門斉射!」フラーケンは勝利を確信して命令した。

「艦長、敵艦の出現で報告が遅れましたが魚雷が一本推進器が不調で発射出来ません。」ラング副長が
申し訳なさそうに報告した。

「五本で構わん!グズグズするな!」潜望鏡から目を離すとフラーケンは再度攻撃命令を発し、発射された五本の魚雷が次元境界面を突き破った。

「ん!」フラーケンが潜望鏡に目を戻すと漂泊していた敵次元潜航艦が動き始め、みるみる内に次元境界面を越え
次元断層の奥に消えていった。

UX-01の発射した五本の魚雷は目標を失って宇宙の彼方に消えていった。

しかし敵潜は次元潜望鏡の有視界面からは消えたが亜空間ソナーや次元断層振動波検出器には捕らえられていた。

<しまった!敵潜はこちらの攻撃を誘っていたのか! まんまと引っ掛かってしまった。>フラーケンは自分の判断の
甘さに歯噛みした。

「艦長、あなたのせいではありませんよ。敵はこちらの魚雷を消耗させようとしただけです。」ラング副長がフラーケンの
耳元で囁いた。

「だがおかげでこちらには魚雷は一本も無くなってしまった!反撃などおぼつかんぞ!」まだ若かったフラーケンは
焦りまくっていた。

「ここで焦って脱出を図れば敵の思う壺です。 敵は確かにこちらの魚雷を浪費させましたが、
こちらが丸腰になっている事までは気付いていません。」ラングは冷静に状況を分析してみせた。

「敵艦、右舷より接近! あ、奴が右へ転舵しました!」探知主任が報告した。

<魚雷発射管は艦首と艦尾に装備しているはず・・・・何故それが使えなくなる方向に転舵するのだ?>フラーケンには
この敵潜の行動は解らない事だらけだった。

「操舵手!敵潜に艦首を向けろ! 急げ!」ラング副長が切羽詰まった声で命令した。

UX-01はガミラス艦の中では小型の部類に入るがそれでも空間戦闘機の様なきびきびとした運動性は無い、のろのろと
艦首を敵艦の方に廻している内に敵潜が魚雷を放って来た。

その数、八射線、先程 "チラン・ケラン" を撃沈した時と同じ雷数である。

UX-01はラングの命令で向かってくる魚雷と正対しており被雷する確率は低かったが真面に魚雷に正対する事は並の
胆力で出来る事では無かった。

全ての魚雷とすれ違うとフラーケンはラングの作ってくれたチャンスを生かすべく次の命令を発していた。

「ベント開け、深々度潜航、最大!」幾ら次元潜航艦といえども本来いるべき空間で無い次元断層に潜っているのである、自ずとその深度には限界があった。

「最大深度に達しました。」潜航士官が報告する。

「よし、無音潜航。 各部、音を立てるな。 測的手は敵潜から目を離すな!」フラーケンは自分の最も苦手とする
我慢比べをする覚悟を決めた。


                                     201. アッカイラ 鮫達の狂宴ー(2)→ この項続く


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by YAMATOSS992 | 2016-04-23 21:00 | ヤマト2199 挿話 | Comments(0)