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宇宙戦艦ヤマト前史

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宇宙戦艦ヤマト登場前の地球防衛軍の苦闘を描きます。

<   2016年 05月 ( 4 )   > この月の画像一覧

 「第112駆逐宇宙艦隊の任務は第11輸送船団を護衛して積荷をゴトランド星系を攻略中の第六空間機甲師団に届ける事にある。」幕僚団を集めたラング司令はここで一端言葉を切った。

スクリーンから目を離してガミラス人とザルツ人の混成幕僚団を見渡した。

案の定、ザルツ人はキチンとラングの言葉を聞いていたが、ガミラス人は二等臣民の言葉なぞ聞いてたまるか!と言う態度でそっぽを向いていた。

だが、ラングはこうした場合の一等臣民の気持ちと態度は次元潜航艦学校と実戦で経験済みだった。

「フォムト・バーガー中尉、君は純粋ガミラス人で一等臣民だ。そして、私、ヴァルス・ラングは被征服国民、ザルツ人で
二等臣民だが少佐だ。

当然、君は征服者であるガミラス人と征服されたザルツ人の間には差があるべきだと考えているのだろう。

しかし、ここはガミラス軍の内、命令系統は階級のみで決まる。

もし、これに他の要素を加えたら命令系統は複雑になり過ぎて伝えるべき命令がきちんと伝わらなくなってしまうからだ。

だから先程基地司令が申し渡した通り、悔しいだろうが私の命令を聞いて欲しい。

それが今回の作戦を成功させひいてはガミラス版図の拡大に繋がるのだ。」ラングは正面からバーガーを説得した。

「へいへい、俺より二階級も上の少佐殿の命令じゃ仕方ありませんな。

指令には従いますよ、心配しなすって!」バーガー中尉は不貞腐れ切っていた。

「ところでバーガー中尉、君の前歴を聞かせてくれないか?」ラングは気さくに話しかけた。

「今更、俺の悪歴を聞いて笑おうってんですかい・・・。先に自分の経歴を話すのが礼儀ってもんでしょ!」バーガーが
昏い目で凄んだ。

「私か、私はしがない次元潜航艦乗りだ。 ついこの前まで UX-01と言う艦の副長をしていた。」ラングが懐かしそうに言った。

「UX-01・・・って、もしかして艦長はヴォルフ・フラーケンか!」バーガーですらフラーケンの名は知っていた。
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「ああ、彼は大した漢だよ。これからの次元潜航艦隊の行く末は彼の肩に掛かっていると言っても過言では無い。」
ラングはバーガーがフラーケンの名を知っていた事が嬉しかった。

「あんたは "猟犬" の尻尾ってわけか! 二等臣民に相応しい卑怯な戦い方だな。」バーガーは異次元に潜み一方的に
敵を攻撃、撃滅する次元潜航艦を快く思って居なかった。

「それで君は、ここに来る前には何をしていたのかね?」ラングがバーガーの挑発に乗る事は決して無かった。

「ほとんどずっと宙雷戦隊だが、大した戦歴は残せなかったぜ・・・。大事な物も守れなかったしよ・・・。」バーガーの眼に
哀しみの光が宿ったのをラングは見逃さなかった。
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<やはり”メリア・リッケの死”を引き摺っているな・・・。>ラングはバーガーの心が沈んでいる理由を知っていたが
ここでその事に触れる事はしなかった。

「そこなんだ、バーガー中尉。 私は次元潜航艦乗り一本でやって来た男だ。 いくら護衛艦といっても駆逐艦は
ズブの素人だ。

しかし、君の経歴は宙雷屋一本だ、そこで私が率いている第112駆逐宇宙艦隊の駆逐艦三隻の指揮を君に任せたい。
どうだろうか?」ラングの申し出にバーガーは二の句が継げなかった。

**************************************************

「良いんですか? 我々が護衛艦隊ですよ。 軍令部の指示も仰がないで勝手に輸送艦隊と護衛艦隊の乗組員を
入れ替えるなんて前代未聞ですよ!」ラングの副官が憤懣やるかたない気持ちをぶちまけた。

「大丈夫だ、責任は私一人で取る。 君は抗命し続けたと報告すれば良い事だ。」ラングが張り切って訓練に勤しむ
バーガー艦隊の襲撃・運動を見つめた。

「司令、何を考えているんですか!もし、それにこの配置換えを認めたとしても彼等が実施すべきなのは襲撃・訓練では
無く、船団護衛の訓練ではないんですか?」副官の不満はまだ続いていた。

そのころバーガー中尉は有頂天になっていた。

それもそのはず、彼は確かに宙雷屋一筋の軍務を歩んで来ていたのだが、戦隊長はおろか、艦長なども務めた事は
無く、最高でも宙雷長止まりだったからだ。

それを艦を任されただけで無く、規模が小さく、非公式とはいえ戦隊の長に任命されたのだ。

但し、バーガーの率いる少数の幹部以外は駆逐艦乗りでは無く、輸送艦乗りだったので彼等を駆逐艦乗りとして
使い物になる様、護送任務が始まっても訓練を続けているのだった。

「カウト君、輸送艦隊に残った乗員全ての経歴を用意してくれたまえ。」ラングは副官に今更なな命令を下した。

「何て顔をしている、輸送艦隊の方も護衛艦におんぶに抱っこと言う訳には行かないんだぞ、やる事は山ほどある!」

ラングは困惑している副官に言葉を掛けた。

「『一手先を読め!』だよ、一手先をな。」ラングは副官に笑いかけた。

**************************************************

「戦隊長!右舷10,000にある小惑星帯の中に敵艦らしい反応があります!」探査主任が艦長であり
第112駆逐宇宙艦隊、戦隊長であるバーガー中尉に報告した。

<ゴトランド・ゴースの交通破壊艦の待ち伏せか!>バーガーはすぐさま襲撃・運動に入った。

<先手必勝だ! 敵の交通破壊艦の砲力は多分、こちらより優れている、肉薄して宙雷攻撃を決める!>味方の
護衛艦の数は少ない、船団に張り付く消極的な作戦よりも敢えてこちらから撃って出る積極策をバーガーは選んだのだ。

そのころ小惑星帯の中に潜んだゴトランド・ゴース交通破壊艦の艦長はガミラス輸送船団から護衛の駆逐艦隊が離れて
自艦の方に向かって来るのを確認し、ニヤリと微笑した。

「ガミラスの護衛は三隻だけか?」艦長は情報士官に確認した。

「はい、こちらの作戦通り、全艦こちらに向かって来ています。」情報士官の報告に艦長は別動隊の行動開始を
指示した。

ラングはバーガーの素早い判断を評価していたが、反面、護衛艦の駆逐艦の数の少なさによる本体の護衛が
手薄になる事が気懸りだった。

「司令、バーガー隊が敵艦に攻撃をかけます!」副長が指摘した。

「待って下さい!輸送艦隊後方の空間5,000に敵・駆逐艦隊ゲシュタム・アウト!襲撃態勢に入りました!」探知主任が
警告した。

「輸送艦隊散開! 被害を極限する事に努めよ!」ラングは落ち着いて命令した。

確かに護衛の艦の数が十二分にいて、それらが輸送艦隊を近接護衛出来るなら輸送艦隊を散開させる必要は無い。

しかし今のラングが指揮する輸送艦隊は護衛のバーガー艦隊を囮に釣り出され全くの無防備状態に
なってしまっている、しかもこの輸送艦隊の主な積荷は第六空間機甲師団に向けた弾薬、空間魚雷や各種ミサイルで
あったからもし単艦が被弾、爆発しても近接して別の艦がいると誘爆する可能性が高いのだ。

「司令、護衛艦隊を呼び戻しましょう!」副長が進言した。

「駄目だ、今、護衛艦隊を呼び戻すと戦線が混乱する!幸い我々輸送艦隊を襲って来たのは駆逐艦、直ぐには
こちらの艦を撃沈出来まい。」ラングの判断はこうだ。

敵の大型交通路破壊艦と闘っているバーガー隊を戦闘が終わる前に呼び返すとガミラス艦隊は敵の大型交通路破壊艦と駆逐艦隊の双方から挟み撃ちを受ける格好となってしまう。

特に大型交通路破壊艦の接近を許してしまうとその強大なビーム砲の威力で艦隊は全滅させられてしまう恐れが
あった。

かと言って個別に短距離ゲシュタム・ジャンプで戦場から逃れようとしても敵は既にこちらの位置を特定している、
その状況下で短距離とはいえジャンプをすれば空間航跡をトレースされどこまでも追跡され、ついには撃沈されて
しまうだろう。

こうした場合、船団を解き、輸送艦をばらばらの方向に退避させるのが一般的だ。

そうすれば艦隊が全滅すると言う最悪の事態は避けられる。

しかしラングはそうした定法だけに頼る事をしなかった。

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「戦隊長、敵輸送船団の内、二隻が落伍します。 後四分で魚雷射程に入ります。」ゴトランド・ゴース・駆逐艦隊の
情報士官が状況の変化を告げた。

「機関が故障したか!ガミラスめ!俺達を舐め切ってオンボロ船を使っているからだ。」戦隊長がチャンスを得た事に
狂喜した。

「直ぐに攻撃しましょう!」戦術士官が勇んで叫んだ。

「まぁ、まてブンナム君、あの二隻は最早、我々の砲・雷撃の射程内に入っている。
しかし、加速して逃げようとしない、いや機関が不調で逃げられないのだ。
だから、放って置いてもこの宙域から大きく移動する事は出来ない。
青息吐息の獲物は後回しで良い、生きの良い獲物から片付けよう。」戦隊長は落語した二隻にビーコンを
打ち込んで先行する輸送艦を追撃する様、指示した。

<掛かったな!>ゴーン、敵のビーコン・ミサイルが自艦に着弾する音を聞きながらラングは会心の笑みを浮かべた。

同じ頃、バーガーの宙雷戦隊はゴトランド・ゴースの放った交通破壊艦にてこずっていた。

航宙艦艇の基準からすれば取り立てて有力な砲力を持つ訳では無く、加速力も戦艦より優れてはいたが駆逐艦には
遠く及ばなかった。

<交通破壊艦はやっかいな存在だとは聞いていたが、これほどとは思わなかった!>バーガーは心の内で舌打ちした。

砲力は戦艦には及ばなかったが駆逐艦のそれを大きく上回り、更に対魚雷防御用の小口径・近接防御火器を無数に装備していたのである。

加速力も駆逐艦には大きく劣るとはいえ輸送艦を容易に捕捉出来るだけのものは備えていた。

即ち、バーガー隊がゴトランド・ゴースの交通破壊艦を仕留めようと接近すれば中口径のビーム砲の洗礼を浴び、
離れた所から雷撃を加えても近接防御・火器で防がれてしまうのである。

かと言ってバーガー隊が交通破壊艦を放り出して船団を襲撃しつつあるゴトランド・ゴース駆逐艦隊を迎撃しようとすれば交通破壊艦はてんでんバラバラに逃げる輸送艦を一隻づつ捕捉、撃沈してしまうだろう。

<自分より砲力の強い敵からは強力な加速力で退避し、自分に追いつける加速力を持つ敵には卓越した砲力で
沈黙させる・・・か。 確かに厄介な敵だ、だが、ガミラスの宙雷戦術の奥義を見せてやる!>バーガーは実戦では
一度も使われた事の無い戦術を使う事にした。

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「艦長!敵・駆逐艦隊が隊列を一本に絞って艦首方向から突撃を掛けて来ます。」情報士官の報告にスクリーンに目を
凝らした艦長は訝しんだ。

「敵・駆逐艦は三隻いたはず、それが一隻にしか見えないとは随分と訓練したものだ。主砲、副砲で歓迎してやれ!」
艦長はバーガー隊の奮戦をあっぱれだとは思いつつ迎撃の手を緩める事は無かった。

「艦長!敵は艦首方向上方二度の方向から突っ込んで来ます!」再度、情報士官が報告した。

「何!」艦長は自艦の置かれた状況の悪さに気が付いた。

ゴトランド・ゴースの "リペーリア" 級交通破壊艦は三連装250mmビーム砲塔四基、単装140mmビーム砲十六基を備える
重装備艦である。

しかし、単艦よく長躯出撃して交通破壊を行うためその武装は周囲を万遍無く射界に収められる様、設計されている。

だが、艦の前後方向、特に敵が首尾線軸を僅かに外して突撃して来た場合、周囲を万遍無く射界に収める様に
砲を配置したが故に敵の突撃に対して指向出来る砲は三連装主砲塔一基、単装副砲二~四基と使える兵装の数が
激減してしまうのだ。

「面舵一杯、側面の火器を使用出来る様にしろ!」艦長の命令がとぶ。

「それは駄目です! 間も無く敵のビーム砲の射程圏内に入ります!」情報士官が畳み掛けた。

「落ち着け!敵の砲の口径はこちらより更に小さい、敵の砲の有効射程距離に入る前にこちらの砲の必中圏内に
入る!」しかし、艦長はガミラス駆逐艦の主砲の口径が自艦より大きいのを知らなかった。

「間も無く主砲の射程距離に入ります。」測的手がバーガーに報告した。

「戦隊長、今の一列縦隊のままでは先頭艦が邪魔になって二、三番艦が発砲出来ません。」副長が隊列の
変更を求めた。

「一列縦隊のまま、全艦が主砲を使える様にする隊形などにわか宙雷戦隊の俺達には無理だ。 
しかし、魚雷なら一番艦がロック・オンした目標データを二、三番艦に送れば同じ敵艦に全魚雷を叩き込める!」
バーガーは生粋の宙雷屋だった。
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<あれは本艦と同じか少し大口径の砲だぞ! このままでは打ち負けるかもしれん!>ゴトランド交通破壊艦の艦長は
バーガー艦が牽制で放つビームの太さに驚愕した。


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by YAMATOSS992 | 2016-05-28 21:00 | ヤマト2199 挿話 | Comments(0)
 ゴトランド・ゴース艦隊の司令官はちっぽけなガミラス艦隊が自分達の方に向かって突っ込んで来るのを見て鼻で
笑った。

「奴らは自殺する気かのう! これだけの戦力差を物ともしない武勇は買うが、何の工夫も無く突っ込んで来るだけとは
武人としては落第じゃな。」司令官は副官を見て顎をしゃくった。

確かに彼の目算は当たっていた。

ゴトランド・ゴース艦隊は戦艦十隻、巡洋艦五隻、駆逐艦二十隻、その他補助艦艇数隻からなる大艦隊なのに比べ、
ガミラス艦隊は中型輸送艦一隻、駆逐艦二隻の小艦隊、しかも艦隊の構成艦艇からしてこの艦隊が輸送艦と
その護衛・駆逐艦からなる戦闘を目的としないものである事は明らかだった。

「敵艦隊に異常! 艦隊の規模が数倍に膨れ上がりました!」探知主任が驚いた様に声を上げた。

「そんな馬鹿な! 敵艦隊を拡大投影せよ!」司令のゴアン・アルトムは歴戦の戦士らしく落ち着いて現状を捕まえ、
正しい判断を下そうとした。

スクリーンに映った敵艦隊は最初に探知した時と同じく駆逐艦二隻と輸送艦一隻だった。

しかし、歴戦の戦士は何かとてつもなく嫌な予感に眉をしかめた。

「敵艦隊の周りに何かデブリの様な物が見えないか?」旧式な単眼望遠鏡でスクリーンを見つめたアルトムは
探知主任に問いかけた。

「光学探知では何も異常が発見出来ないのですが、アクティヴ・電磁波・探知では艦隊の規模が
どんどん膨れ上がっています。」探知主任は事態が理解出来ないのか、言葉を濁した。

「こちらの駆逐艦を接近させて敵艦隊の情報を取れ!」 現状が不明のままでは艦隊の士気が下がってしまう! 
これは艦隊司令の沽券にかかわる事なのだ。

「偵察に出た駆逐艦からの映像が入りました。 こ、これは・・・。」情報士官の声が上ずった。

「何がどうした! はっきり報告するのじゃ!」アルトムは焦れて情報士官の手元の小スクリーンを覗いた。

「むう・・・。」彼もまた情報士官と同じく言葉に詰まってしまったがその映像を艦橋の大スクリーンに映し出させた。

艦橋にいた全員が同じく言葉を失った。

そこに映し出されていたのは輸送艦が積載していたと思われる無数の大型魚雷が群れをなしてガミラス艦隊を
包み込み、更にはゴトランド・ゴース艦隊に向けてその矛先を向けようとしている姿だった。
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「戦術士官! 何をしている! 全艦隊のATM(対魚雷ミサイル)を使って迎撃するのじゃ! ATMのスクリーンを
抜けて来る敵魚雷は近接火器で撃ち落とせ!」アルトムの命令は簡潔だった。

**************************************************

 「それは命令ですか。」フラーケンは上司であるガル・ディッツ提督の目を正面から見つめた。

「そうだ、嘘偽りの無い大本営からの転属命令だ。」ディッツ提督はフラーケンの気持ちが痛いほど判っていた。

「貴様がラング少佐の転属に反対する気持ちは判る、有能な副長を失うのは貴様にとっては手足をもがれるに
等しいからな。 しかし・・・。」フラーケンはディッツに最後まで言葉を紡がせなかった。

「あいつが二等臣民だからですか? この配転はどうせ大本営上層部が彼の出自を気に入らなくて危ない最前線に
飛ばして始末しようと考えての事でしょう!違いますか!」フラーケンは誰に対しても斜めに構えて対していたが
性格自体は一本気だった。

フラーケンの無礼な振舞いにディッツ提督は僅かに眉をしかめたが、次元潜航艦ドックの暗闇に目を移すと
フラーケンに背を向けて独り言の様に呟いた。

「確かに大本営の上層部はエーリク大公時代を懐かしむ貴族主義者で占められている・・・。」提督は溜息と共に語った。

また、大本営に勤務する者で貴族出身者で無い者は純粋ガミラス人である事だけを心の拠り所にして居る者も多い・・・。

だからヴァルス・ラング少佐が二等臣民、ザルツ人の一員であっても、彼が大きな戦績を積み上げるとそれを
評価しなければならなくなる事を不快に思っている輩がいるのだ。
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<つまらん拘りを持つものだ。奴等はラングが誰の為に働いていると思っているんだ。>フラーケンには大本営の
人事権を持つ者の心の狭さが許せなかったがかつてはフラーケン自身もまた勇猛さで名を轟かせるザルツ人を最後まで
抵抗しなかった腰抜けの集団と評価いていたのだ、しかし実際に出会ったザルツ人、ヴァルス・ラングは彼の予想を
超えた漢だった。

次元潜航艦学校での練習艦沈没事件しかり、実戦ではUX-01の副長としてフラーケン艦長を支えた件しかり、
アッカイラでのガミラス初となる対次元潜航艦戦での活躍しかりである。

いずれの場面もラング無しでは切り抜けられない物ばかりだった。

だからフラーケンとしてはラングが転属になって自分の元を離れるのは辛かった。

だが、ラングはヴァルツ・ラング少佐は淡々とその命令を受け入れた。

フラーケンはラングが何故そんなに簡単に転属命令を受け入れるのか解らなかった。

しかし、フラーケンの問いにラングは「自分はザルツ人ですから・・・。」と僅かに嗤っただけだった。

**************************************************

「ゴトランド前線基地到着はガミラス標準時20:00(フタマルマルマル)です。」
ガミラス航宙駆逐艦 ZR-101の副長は艦橋の中央に仁王立ちしている艦長に報告した。

「宜しい判った、カウト君、有難う。ゆっくり休めたかね。」艦長は報告した副長を労った。

「有難う御座います、艦長。非番、ゆっくり休まさせて頂きました。 しかし間も無く入港ですので艦橋に上がりました。」
副長が艦長に微笑み返した。

「前線基地からの接岸ビームを捉えました。進路との誤差ー5度。進路修正します。」航宙士が舵を操ったがその腕前は
熟練したものだった。
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ゴトランド前線基地はガミラスが今勢力下に収めようと政治的・軍事的に攻勢を掛けているゴトランド星域の辺境、最外縁軌道にある人工惑星である。

ガミラスはここを拠点に艦隊をこの星系の文明活動領域である内惑星系に派遣し、この星系国家の政府に圧力を掛けて
いるのだ。

しかし、ゴトランド側も決して無抵抗な訳では無く、ゴトランド・ゴース艦隊を星系各地に派遣し、ガミラスの侵攻を頑強に阻んでいた。

彼等の使う艦艇は何と言うか、『硬い』のだ、破壊出来た艦艇の残骸を調査してみても特にガミラス艦と大きく違うところは見られなかった。

「敵さんは『ダメ・コン』に勝れている様だな。」この宙雷戦隊を預かる事になったヴァルス・ラング少佐は独白した。

「艦長、『ダメ・コン』はダメージ・コントロールの事ですよね。 ビーム兵器全盛のこの時代、『ダメ・コン』なんて間に合う
ものですか?」副長は艦長の言葉に疑問を持った。

「死にたく無ければ出来る事は全て遣り尽くす、それが私の居た次元潜航艦隊で学んだ事だ。」ラングは当たり前の様に
その信条を口にした。

「ゴトランド・ゴースの艦艇・乗組員はその『ダメ・コン』に勝れていると言う訳ですか?」副長はラングに畳み掛けた。

「判らん! 私はただ、装備面(ハード)に差が無いのに防御力が強いのはその装備を運用する乗員(ソフト)が
優れていると考えただけだ。 さて接舷が済んだら一度、司令部に上がるぞ! 今回の作戦とそれに参加する我々の
任務について良く聞いておかねばな。」ラングは小さいが一艦隊の指揮官であった。
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 司令部に着くとラングとその幕僚達は会議室に通された。

そこには初老の高官が一行を待っていた。

「、第112護衛駆逐宇宙艦艦隊、ヴァルス・ラング少佐、作戦スタッフと共に着任いたしました。」初老のガミラス軍人は
無表情のまま、ラングの敬礼に答礼した。

ラングの隣で敬礼していた副長の後ろに並んでいた情報長はその無表情さが気に入らなかった。

<この司令も俺達がザルツ人なのが勘に触ったのかな・・・。>まだ若い情報士官はこれから先の任務に不安を
感じていた。

しかし、司令は敬礼が済むとニコッと微笑むとラングの手を両手で握って言った。

「ヴァルス・ラング少佐、次元潜航艦隊での活躍、聞いておるよ。 しかもあの悪名高きヴォルフ・フラーケン中佐の手綱を
執っての戦果だ。 今度の船団護衛の任務も難なくこなしてくれると期待して居るよ。」次元潜航艦隊の任務は当然秘密
(特にアッカイラの対次元潜航艦戦は極秘)であり、辺境の前線基地にまでフラーケンはともかく、ラングの名が
知られているのは驚きであった。

「入るぜ!」一際大きな声で呼ばわりながら一等ガミラス人の将校がやはり幕僚団を引き連れて会議室に入って来た。

彼等は先に入室していたラング達の前に割り込んで基地司令の前に立つと着任の報告をした。

「第11輸送船団司令、フォムト・バーガー中尉、第六機甲師団向けの補給物資を受け取りに参りました。」
フォムト・バーガー中尉と名乗った若い一等ガミラス人将校は横目で見下す様にラング達を見つめた。

基地司令はバーガーの無礼な行いにさすがに怒りを感じた様だった。

「フォムト・バーガー中尉、上官の着任申告に割り込むとは良い度胸だ。

しかも、彼はザルツ人とはいえ次元潜航艦隊のエースだ、みくびってはいかん!  

さらにラング司令の階級は少佐、君よりも二階級も上となる。

従って第11輸送船団の司令は君、フォムト・バーガー中尉だが、君達を護衛する第112護衛駆逐宇宙艦艦隊の司令、
ラング少佐が今回は輸送船団、護衛艦隊を合わせて指揮をする事になる。 心して任務に当たりたまえ!」

基地司令の言葉を聞いたバーガー中尉は信じられぬと言う顔をしてラングの顔を見た。



                                         205.疾風の漢(おとこ)ー(2)この項 続く

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by YAMATOSS992 | 2016-05-21 21:00 | ヤマト2199 挿話 | Comments(0)
通常空間に戻ったUX-01は目の前の空間に浮かぶ敵艦の小山の様な大きさに圧倒された。

「なんてでかいんだ!こんなのと我々は戦っていたのか!」潜航士官が皆の気持ちを代弁した。

「降伏を呼びかけろ、言語はこちらが知っている限り全てを使え!」フラーケンの指示で降伏勧告が行われたが敵潜は
沈黙したままだった。

<気に入らないな・・・。>ラングはスクリーンに映る敵潜の様子に何か胸騒ぎを感じていた。

と言うのもUX-01が完全浮上して通常空間に浮かんでいるのに、敵潜は艦体の半ばをまだ次元断層に残し、赤い航跡を
曳きつつゆっくりとUX-01に近づいてきていたからである。

「まだコンタクトは取れないか?」ラングは通信士に確認した。

「駄目です。 全く応答しません。 最早悪あがきをしても仕方ないでしょうに・・・。」通信士も敵潜の挙動に
不審を表明した。
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指呼の間に敵潜が接近した時、フラーケンは突然、危機感に襲われた。

「緊急潜航だ! 急げ!」フラーケンの剣幕に潜航士官はわけも分からないまま急潜航を指示した。

次元断層の波間に吸い込まれて行くUX-01。

その時、敵潜からアンカーがUX-01に目がけて放たれた。

フラーケンの勘によっていち早く潜航に入ったUX-01だったが、敵潜の思わぬアンカー攻撃に司令塔を絡み取られて
しまった。

敵潜はアンカーがUX-01に絡まったのを確認したのか、再び次元断層に潜り始めた。

UX-01はそれに引き摺られて亜空間の中を進んでいたが潜航士官は疑問を疑問を呈した。

「奴は何をしたいのでしょう。 このまま本艦を引き摺って次元断層の深みに入っても何も変わらないでしょうに・・・。」

「機関・後進強速!アンカーを陽電子砲で切るんだ!早くしろ!」フラーケンが切羽詰まった声で命令を出した。
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「落ち着いて下さい!艦長!この空間ではビーム兵器は無効です!」ラングは艦長がパニクッたと思って思わず制した。

「大変です! 敵潜は更に下の次元断層に潜ろうとしています。 このままでは我々も道連れです!」探知主任が悲鳴を上げた。

「砲手、何をしている!ワイヤはまだ切れんのか!」フラーケンが督促した。

「駄目です!敵ワイアは本艦の側面から艦底に沿って敵潜に向かっています!陽電子砲の射界に入りません!」
砲手(雷撃手の兼任)が報告した。

「陽電子ビームは発射出来るか!」ラングが誰何した。

「砲口から少しの間はビームは収束していますが直ぐに拡散してしまって破壊力を失っています。やはりこの空間では
陽電子ビームの使用は不可能です。」砲手は状況を分析した。

「艦長、陽電子ビームは拡散してしまって使用不可能です。また、今の態勢では陽電子ビームの射界に敵ワイアを
捉える事が出来ません。」ラングが落ち着いた口調でフラーケンに報告した。

「艦長!敵潜完全潜航、本艦も引き摺られています。何か手を打つなら早くしてください!」測的手が悲鳴を上げた。

それを聞いたフラーケンは<今だ!>と思った。 そして命令を下した。

「上下反転180度! 敵ワイアが陽電子砲の射界に入るからビームを薙いで確実に切断しろ!」

「ザー・ベルク!」操舵手が空間ジャイロを反転させると共に慣性制御(人工重力)の方向も同調して変化するのだが
艦の姿勢と慣性制御の軸は完全に一致していなかったので軽い衝撃があった。

UX-01は軍艦、乗り心地は二の次なのだ。

「目標捕捉! ビーム攻撃を試みます!」砲手がワイヤ目がけて陽電子ビームを薙ぎかけた。

しかし、どんな材質で出来ているのであろうか、ワイヤはびくともしなかった。

「砲手! 艦首側では無く、司令塔側のワイヤを切断しろ!」ラングが思いも依らない命令を発した。

「それでは本艦も損害を受けます!」砲手にはとんでもない命令に聞こえたのだ。
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「何を言う! このまま複合型次元断層に引き込まれた方が良いとでも言うのか!」フラーケンの叱責が飛んだ。

「はっ」砲手は蒼ざめた顔でUX-01の司令塔先端に照準を合わせ引き金を引いた。

今度は九九ミリ単装陽電子ビーム砲は今度は司令塔の一部と共にワイヤを確実に切り飛ばした。

フラーケンの読み通り、次元断層内ではビーム兵器は無効とはいっても砲口を離れた直後のビームは破壊力を
残していたのだ。

綱引き状態にあったUX-01と敵潜はワイヤが切れると同時にお互い反動で弾き飛ばされた。

着席して居なかったフラーケン、ラング、潜航士官の三人は床に投げ出されてしまった。

<イタタタ・・・。大きな獲物の釣り糸は切れたか!>ラングは床から立ち上がると艦長を補助して立ち上がらせた。

「敵艦、ワイアの切れた反動で一度この次元断層内にその姿を現しましたが、直ぐにまた下位次元断層に
沈む模様です。」測的手がスクリーンに前方の次元断層内空間を映し出した。

そこには赤く光る次元断層の裂け目に艦首を立てて艦尾から沈没する敵潜の姿があった。

フラーケン達、UX-01の乗組員達は誰からと言うでも無くその敵潜の最後の姿に敬礼していた。

**************************************************

通常空間に浮上するとフラーケンは今度は最優先で補給艦を呼んだ。

まだ別の敵潜が潜んでいる可能性も無くは無かったが、主要兵器である亜空間魚雷が空っ欠では戦い様が
無かったからだ。

部下達が補給艦の酒保で乱稚気騒ぎを繰り広げていた頃、フラーケンは魚雷の積み込み作業を司令塔の上から
見守っていた。

作業は専用のプログラムを施したガミロイドが行うので監視する必要は無かったのだがフラーケンはどうにもガミロイドと
言う物に嫌悪感を拭い切れなかった。

普段なら彼は司令塔の先端部分の壁に肘を預けるのだが、先程のワイア戦で陽電子ビームでワイア毎、司令塔の
先端を切り飛ばしてしまったので足元近くまで司令塔先端は壁を失っていた。

「アレ、アレ、これじゃ補給艦より工作艦を先に呼ぶべきでしたね。 司令部のお偉いさんが我々の報告を
信用してくれれば問題ないんですが・・・。大丈夫ですよね?」何時の間にかラング副長が傍に来ていた。

「貴様の報告なら誰でも疑わんさ・・・。」フラーケンは胡乱な目をラングに向けた。

「それじゃ駄目ですよ。この艦の艦長は貴方なのですから貴方が報告しなければいけません!」ラングは鯱ばって
主張した。

無言で疑いの目を向けて来るフラーケンにラングは両手を振って否定した。

「大丈夫ですって! もし艦長の報告が信じて貰えなくても我々乗組員は全員艦長の味方です! 地獄の底までついて
いきますよ!」ラングは孤独感に打ちのめされているフラーケンを励ました。

「有難う・・・と言うべきなんだろうな。 しかし・・・。」自分に否定的な気分になっていたフラーケンだったが、
ラングが手元に携えている物に興味を持った。

「これですか? これは『ザルツの竜』です。 手慰みです。」ラングが照れて嘘を言った。

「これは・・・紙を折った物か? ザルツではこれで何をするんだ?」フラーケンは折り紙を持ったラングの手を掴み、
ためすがめす見回した。

「『弔い』です。 勇敢に戦って散った勇者の魂の『鎮護』です。」ラングが宇宙の地平を見つめながら遠い目をした。

「本来は味方陣営の勇者を『弔う』ためのものですが、今回、アッカイラで出会った敵潜の勇猛さは半端無いものでした。 特に最後のワイア戦、多分あの時点で敵潜も魚雷が尽きていたのでしょう。 それでもなお、降伏勧告を無視して
我々に喰らい付き、自艦と一緒に我々をも複合次元断層に引き込もうとしました。 
艦長にはうざいだけの敵だったかもしれませんが私、ザルツの武人にはその尚武は讃えるべき物なのです。」ラングは
手にした『ザルツの竜』をそっと宇宙の彼方へ向けて飛ばした。
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「結局、彼等はどこの誰だったんでしょうね・・・。」ラングが飛び去りゆく『ザルツの竜』を見つめながら言った。

「フン!上の奴らは敵潜の所属に拘るだろうが、直接、刃を交わした俺達にとっては『彼等が恐ろしく手強い
勇者だった』と言うだけで充分さ。」それを聞いたフラーケンが応え、そして続けた。

「戦死した勇者は星を伝って故郷に還えるのだろ? それが船乗りの心得だからな。」

「さすが艦長、『ザルツの船乗りの心得え』をご存知だったのですね。」ラングももはや見えなくなる位遠く小さくなった
『ザルツの竜』を見つめながら言った。

 
                                       203. アッカイラ 鮫達の狂宴 ー(4) → この項了





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by YAMATOSS992 | 2016-05-14 21:00 | ヤマト2199 挿話 | Comments(0)
「艦長! 勝算がおありなのですね! 作戦をお聞かせ下さい!」ラングが身を乗り出した。

「ああ、だが敵は四連装魚雷発射管二基を備えた化物。 加えてこちらは修理したてのポンコツ魚雷一本だ、
真面から噛み合ったら確実にこちらが負ける!」フラーケンは現状を皆と共有した。

「だから、鬼手を使う。 この次元断層の更に下の次元断層に潜り、そこで亜空間魚雷を発射、
敵潜が予想しない次元境界面から雷撃するんだ。」フラーケンの言葉に一同、息を呑んだ。

次元断層は幾つもの空間が折り重なっている部分の境界面に出来た裂け目だ。

人工的にその "裂け目" を作り出し亜空間に潜むのが次元潜航艦である。
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しかし、通常空間で次元断層を作るから敵艦船の攻撃に意味があるのであって次元断層に居ながら更に一層下の
亜空間に潜るなど正気の沙汰では無かった。

いや、通常空間の直ぐ下の亜空間だからこそ次元潜航艦は安定して留まれるのであってその下の亜空間となると
一度そこへ降りたが最後、もはや再び通常空間に戻れるか、どうか怪しい物であった。

「艦長は相打ちになってまで敵を葬るつもりなのですね・・・。」潜航士官が蒼ざめた顔で言った。

「心配するな! ベッラ少尉、この艦長は "猟犬" と呼ばれる男だ。 必ず "主人"の元に還る !
相打ちなんて考えてもいないさ。」ラング副長が潜航士官の背中をどやしつけた。

<チッ、二等が!>潜航士官が蔑みの眼差しを向けたがラング副長は彼には構わず作戦の戦術について語った。

「確かにベッラ少尉の危惧の通り、完全に下の亜空間に潜ってしまったら再度浮上出来る可能性は殆どない、
しかし、敵潜を攻撃するのにはどのみち次元潜望鏡を上げて敵の動きを探る必要がある、つまり今いる亜空間に
足掛りを残さざるを得ない。 そうですね、艦長!」ラングはフラーケンに念を押す様に聞いた。

「潜航用意! 潜望鏡深度まで潜る、なるべくゆっくりとな・・・。」フラーケンはラングの緻密な戦術に舌を巻いていた。

本来の彼の作戦は敵潜に極力接近し残った一本の魚雷を叩き込む単純な物だったからだ。

「深度、司令塔を越えます。」潜航士官が報告する。

「潜航中止! メイン・タンク・ブロー! 」潜望鏡を覗いたフラーケンが叫んだ。

「どうしました、艦長?」ラング副長が恐々る聞いた。

「次元潜望鏡の視界が真っ暗だ。 恐らく先程の敵潜の攻撃にやられたのだろう。」フラーケンは悔し気に次元潜望鏡の
鏡体を叩いた。

通常、次元潜航艦による襲撃は次元潜望鏡による各種諸元(データ)の取得から始まる、敵速、敵方位、射距離、自速、自方位等々だ。

これらのデータは艦長が次元潜望鏡を覗いて目標にピントを合わせるだけで自動的に魚雷方位盤
(雷撃用コンピュータ)にデータが送られ、さらに方位盤から魚雷に必要な制御データが送られる様になっていた。

それが行えない今、UX-01は絶対絶命の危機の内に居ると言えた。

「測的手! 魚雷方位盤に異常はないか?」艦内の士気が落ちる間を与える事無くラングは指示を出した。

「はっ、魚雷方位盤に異常はありません! しかし、雷撃に必要な諸元はどうやって入手するのです?」
測的手が訝しんだ。

「心配はいらん! メイン・タンク・チョイ・ブロー、司令塔深度まで浮上する!」フラーケンはラングの意図を読み取り
浮上を指令した。

司令塔深度、これは普通めったに取らない潜航位置である、司令塔だけを通常空間に出し、艦体は次元断層に留めると
いう難しい操艦が要求された。

更に今回は次元断層に司令塔を残しながら更に下層の次元断層に艦体を潜らせると言う高度な操艦なのだ。

「落ち着け、おまえなら出来る。」潜航士官の耳元でフラーケンが囁いた。

「測的手、携帯測距義と手動魚雷方位盤を出せ!俺と副長で司令塔に上り、雷撃に必要な諸元を手動で取って
それを連絡するから、測的手も手動で方位盤に諸元を入力しろ!」フラーケンの命令は衝撃的だった。

次元潜航艦乗りと言っても宇宙船乗りであるから宇宙服を着て船外作業する事には慣れっこである。

しかし、次元断層潜航中に船外に出る事など考えるだに恐ろしかった。

「艦長・・・。」潜航士官が言葉に詰まった。

「皆、何を心配しているんだ。この艦は次元潜航する為の特別な防御装置など持って居ないぞ。 
無防備で次元潜航出来るなら宇宙服でも充分耐えられるさ。」ラングが自信たっぷりに言った。

「それはそうですが・・・。」潜航士官は淡々と作戦準備を行う艦長と副長に思わず敬礼していた。

**************************************************

< ふん! いつ見ても薄気味悪い光景だ。> 司令塔ハッチを潜り、艦外に出たフラーケンは亜空間特有の浅海の様な
光煌く光景に鼻を鳴らした。

「艦長、グズグズしないで測的をお願いします。」ラングはフラーケンに携帯測距義を渡した。

「距離八百、的速三十・・・。」フラーケンが測距義を覗いて距離を測りつつ、時計の針を見つめて敵の速度を測った。

「方位角二十、雷速五十、境界面突破角度0・・・。」ラングがそれを手動式魚雷方位盤に入力し、出力した答を雷撃手に伝えた。

<しかし、次発装填装置付き四連装魚雷発射管を二基も持っているだけあって敵潜はでかいな!>フラーケンは
測距義のレンズを覗きながら思った。

「確かに大きいですね。こちらの倍、重巡クラスはあるでしょうか? こちらの魚雷は一本、艦長、奴のどこを狙います?」
ラングはまるでフラーケンの心の中を覗いているかの様に作戦指示を仰いだ。

「雷撃手、魚雷・射角180!」フラーケンの命令にラングは感心した。

「射角180!・・・ですか! 成程、艦長、さすがです!」ラングが驚いてみせた。

亜空間魚雷は敵艦より一層下の亜空間を航走するがどこかで次元境界面を突き破って敵艦と同じ空間に戻らなければ
雷撃の意味は無い。

しかし、次元潜航艦は魚雷が戻る位置を敵艦と自艦の相対位置に無関係に選べるのが特徴であった。
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即ちフラーケンは敵艦の後方直後に魚雷を出現させ様としているのだ。

「敵艦、転舵、こちらに接近します!」ラング副長が冷静に報告した。

<何!こちらは司令塔深度潜航中だ。 目標が小さくなっているから敵艦からは殆ど探知出来ないはず?>
フラーケンはハッとして司令塔の縁に手を掛け直下にある司令塔が次元境界面に作る赤い航跡を見た。

それは赤く輝く長い尾を曳いていた。

「これでは、頭隠して尻隠さずだ! 機関停止!航跡を消せ!」フラーケンは即座に機関停止を命じた。

「敵艦、魚雷発射!雷数八!真っすぐこちらに向かって来ます!」ラング報告した。

<こちらの位置は知られている、速度を変えても敵はそれを加味した魚雷の射角を選んでいるはず、どうする!>
フラーケンは一瞬、躊躇った。

「艦長!潜りましょう。今のままではどう回頭しようが速度を変えようが敵の魚雷の網からは逃れられません!」
ラングが進言した。

「潜航士官! 深度を潜望鏡深度まで下げろ!大至急だ!」フラーケンが吠えた。

「艦長!それでは艦長達を見殺しにしてしまいます! それに潜望鏡は使えません。潜望鏡深度をとる意味が
解りません!」潜航士官が抗議した。

「議論している暇は無い!魚雷に当たりたくなければ潜るんだ!」フラーケンは部下を怒鳴りつけた。

UX-01はゆっくりと更に下の次元断層に向かって降りていった。

普段の単なる緊急潜航と違い、司令塔深度から潜望鏡深度に潜る深さを変える事は難しく慎重な操作が必要なのだ。

フラーケンやラングのいる司令塔頂部に次元境界面が達し、彼等の宇宙服の胸から下は次元境界面を異物が
押し分ける時に出来る赤く輝く航跡に浸っていた。

「艦長! 魚雷が来ます! 右舷三十度、雷数八!」ラングが測距義を覗きつつ報告した。

「敵魚雷接近!降下やめ!」フラーケンは必要以上に下部次元断層に足を突っ込む事は避けたかった。

敵の魚雷はUX-01に到達した時、司令塔はほぼ下部次元断層に潜り、フラーケンとラングは宇宙服の頭部を残している
状態だった。

魚雷が一本、本来ならUX-01の艦首に当たる部分をすり抜ける、二本目は艦首上部を擦過して行った。

残り五本の魚雷は後部や下部を大きく外れた位置で擦過していったのでUX-01が回避行動を起こした時にそれを狙った射線だと考えられた。

しかし、最後に残った一本はUX-01の司令塔目指して一直線に走って来た。

先程、UX-01が司令塔深度で測的作業を行っていた時に曳いていた赤い航跡の発生部位に何かあると踏んでの
攻撃だと思われた。

迫りくる魚雷、その光景にフラーケンは魂も凍る思いだった。

だがそんな中、ラング副長は手動魚雷方位盤を敵艦に向けていた。

「魚雷、発射射角、修正-5!」迫りくる魚雷に立ち向かう様にラングは方位盤を向けて叫んだ。

「雷撃手! 射角修正したら直ぐに魚雷を発射しろ!」フラーケンが最後の魚雷発射命令を下した。
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<当たってくれよ!>と祈る間も無く敵魚雷がUX-01の司令塔を直撃した。

しかし司令塔は一つ下の次元断層に殆ど潜っていたため、魚雷は爆発する事無く、フラーケンやラングの身体ごと亡霊の様に司令塔を擦り抜けていった。

<フ ~ ッ、肝を冷やしたぜ、あっ、こちらの魚雷はどうした!>フラーケンが敵潜の居る方へ頭を巡らした。

<敵潜、後部に魚雷命中! 奴は深度を上げ始めました。相当大きな損傷を与えた模様です。」ラングが報告した。

敵がすぐそこに居るのに形振り構わず緊急浮上するのはそうしなければ沈没してしまうからに他ならない。

「よし、こちらも浮上だ。潜航士官、メイン・タンク・ブロー! 敵潜の正体を確かめる!」フラーケンはこの戦闘が
終了した物だと思い込んでいた。


                                         203. アッカイラ 鮫達の狂宴ー(4)→この項、続く

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by YAMATOSS992 | 2016-05-07 21:00 | ヤマト2199 挿話 | Comments(0)