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宇宙戦艦ヤマト前史

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宇宙戦艦ヤマト登場前の地球防衛軍の苦闘を描きます。

 ゴトランド・ゴース艦隊の司令官はちっぽけなガミラス艦隊が自分達の方に向かって突っ込んで来るのを見て鼻で
笑った。

「奴らは自殺する気かのう! これだけの戦力差を物ともしない武勇は買うが、何の工夫も無く突っ込んで来るだけとは
武人としては落第じゃな。」司令官は副官を見て顎をしゃくった。

確かに彼の目算は当たっていた。

ゴトランド・ゴース艦隊は戦艦十隻、巡洋艦五隻、駆逐艦二十隻、その他補助艦艇数隻からなる大艦隊なのに比べ、
ガミラス艦隊は中型輸送艦一隻、駆逐艦二隻の小艦隊、しかも艦隊の構成艦艇からしてこの艦隊が輸送艦と
その護衛・駆逐艦からなる戦闘を目的としないものである事は明らかだった。

「敵艦隊に異常! 艦隊の規模が数倍に膨れ上がりました!」探知主任が驚いた様に声を上げた。

「そんな馬鹿な! 敵艦隊を拡大投影せよ!」司令のゴアン・アルトムは歴戦の戦士らしく落ち着いて現状を捕まえ、
正しい判断を下そうとした。

スクリーンに映った敵艦隊は最初に探知した時と同じく駆逐艦二隻と輸送艦一隻だった。

しかし、歴戦の戦士は何かとてつもなく嫌な予感に眉をしかめた。

「敵艦隊の周りに何かデブリの様な物が見えないか?」旧式な単眼望遠鏡でスクリーンを見つめたアルトムは
探知主任に問いかけた。

「光学探知では何も異常が発見出来ないのですが、アクティヴ・電磁波・探知では艦隊の規模が
どんどん膨れ上がっています。」探知主任は事態が理解出来ないのか、言葉を濁した。

「こちらの駆逐艦を接近させて敵艦隊の情報を取れ!」 現状が不明のままでは艦隊の士気が下がってしまう! 
これは艦隊司令の沽券にかかわる事なのだ。

「偵察に出た駆逐艦からの映像が入りました。 こ、これは・・・。」情報士官の声が上ずった。

「何がどうした! はっきり報告するのじゃ!」アルトムは焦れて情報士官の手元の小スクリーンを覗いた。

「むう・・・。」彼もまた情報士官と同じく言葉に詰まってしまったがその映像を艦橋の大スクリーンに映し出させた。

艦橋にいた全員が同じく言葉を失った。

そこに映し出されていたのは輸送艦が積載していたと思われる無数の大型魚雷が群れをなしてガミラス艦隊を
包み込み、更にはゴトランド・ゴース艦隊に向けてその矛先を向けようとしている姿だった。
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「戦術士官! 何をしている! 全艦隊のATM(対魚雷ミサイル)を使って迎撃するのじゃ! ATMのスクリーンを
抜けて来る敵魚雷は近接火器で撃ち落とせ!」アルトムの命令は簡潔だった。

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 「それは命令ですか。」フラーケンは上司であるガル・ディッツ提督の目を正面から見つめた。

「そうだ、嘘偽りの無い大本営からの転属命令だ。」ディッツ提督はフラーケンの気持ちが痛いほど判っていた。

「貴様がラング少佐の転属に反対する気持ちは判る、有能な副長を失うのは貴様にとっては手足をもがれるに
等しいからな。 しかし・・・。」フラーケンはディッツに最後まで言葉を紡がせなかった。

「あいつが二等臣民だからですか? この配転はどうせ大本営上層部が彼の出自を気に入らなくて危ない最前線に
飛ばして始末しようと考えての事でしょう!違いますか!」フラーケンは誰に対しても斜めに構えて対していたが
性格自体は一本気だった。

フラーケンの無礼な振舞いにディッツ提督は僅かに眉をしかめたが、次元潜航艦ドックの暗闇に目を移すと
フラーケンに背を向けて独り言の様に呟いた。

「確かに大本営の上層部はエーリク大公時代を懐かしむ貴族主義者で占められている・・・。」提督は溜息と共に語った。

また、大本営に勤務する者で貴族出身者で無い者は純粋ガミラス人である事だけを心の拠り所にして居る者も多い・・・。

だからヴァルス・ラング少佐が二等臣民、ザルツ人の一員であっても、彼が大きな戦績を積み上げるとそれを
評価しなければならなくなる事を不快に思っている輩がいるのだ。
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<つまらん拘りを持つものだ。奴等はラングが誰の為に働いていると思っているんだ。>フラーケンには大本営の
人事権を持つ者の心の狭さが許せなかったがかつてはフラーケン自身もまた勇猛さで名を轟かせるザルツ人を最後まで
抵抗しなかった腰抜けの集団と評価いていたのだ、しかし実際に出会ったザルツ人、ヴァルス・ラングは彼の予想を
超えた漢だった。

次元潜航艦学校での練習艦沈没事件しかり、実戦ではUX-01の副長としてフラーケン艦長を支えた件しかり、
アッカイラでのガミラス初となる対次元潜航艦戦での活躍しかりである。

いずれの場面もラング無しでは切り抜けられない物ばかりだった。

だからフラーケンとしてはラングが転属になって自分の元を離れるのは辛かった。

だが、ラングはヴァルツ・ラング少佐は淡々とその命令を受け入れた。

フラーケンはラングが何故そんなに簡単に転属命令を受け入れるのか解らなかった。

しかし、フラーケンの問いにラングは「自分はザルツ人ですから・・・。」と僅かに嗤っただけだった。

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「ゴトランド前線基地到着はガミラス標準時20:00(フタマルマルマル)です。」
ガミラス航宙駆逐艦 ZR-101の副長は艦橋の中央に仁王立ちしている艦長に報告した。

「宜しい判った、カウト君、有難う。ゆっくり休めたかね。」艦長は報告した副長を労った。

「有難う御座います、艦長。非番、ゆっくり休まさせて頂きました。 しかし間も無く入港ですので艦橋に上がりました。」
副長が艦長に微笑み返した。

「前線基地からの接岸ビームを捉えました。進路との誤差ー5度。進路修正します。」航宙士が舵を操ったがその腕前は
熟練したものだった。
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ゴトランド前線基地はガミラスが今勢力下に収めようと政治的・軍事的に攻勢を掛けているゴトランド星域の辺境、最外縁軌道にある人工惑星である。

ガミラスはここを拠点に艦隊をこの星系の文明活動領域である内惑星系に派遣し、この星系国家の政府に圧力を掛けて
いるのだ。

しかし、ゴトランド側も決して無抵抗な訳では無く、ゴトランド・ゴース艦隊を星系各地に派遣し、ガミラスの侵攻を頑強に阻んでいた。

彼等の使う艦艇は何と言うか、『硬い』のだ、破壊出来た艦艇の残骸を調査してみても特にガミラス艦と大きく違うところは見られなかった。

「敵さんは『ダメ・コン』に勝れている様だな。」この宙雷戦隊を預かる事になったヴァルス・ラング少佐は独白した。

「艦長、『ダメ・コン』はダメージ・コントロールの事ですよね。 ビーム兵器全盛のこの時代、『ダメ・コン』なんて間に合う
ものですか?」副長は艦長の言葉に疑問を持った。

「死にたく無ければ出来る事は全て遣り尽くす、それが私の居た次元潜航艦隊で学んだ事だ。」ラングは当たり前の様に
その信条を口にした。

「ゴトランド・ゴースの艦艇・乗組員はその『ダメ・コン』に勝れていると言う訳ですか?」副長はラングに畳み掛けた。

「判らん! 私はただ、装備面(ハード)に差が無いのに防御力が強いのはその装備を運用する乗員(ソフト)が
優れていると考えただけだ。 さて接舷が済んだら一度、司令部に上がるぞ! 今回の作戦とそれに参加する我々の
任務について良く聞いておかねばな。」ラングは小さいが一艦隊の指揮官であった。
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 司令部に着くとラングとその幕僚達は会議室に通された。

そこには初老の高官が一行を待っていた。

「、第112護衛駆逐宇宙艦艦隊、ヴァルス・ラング少佐、作戦スタッフと共に着任いたしました。」初老のガミラス軍人は
無表情のまま、ラングの敬礼に答礼した。

ラングの隣で敬礼していた副長の後ろに並んでいた情報長はその無表情さが気に入らなかった。

<この司令も俺達がザルツ人なのが勘に触ったのかな・・・。>まだ若い情報士官はこれから先の任務に不安を
感じていた。

しかし、司令は敬礼が済むとニコッと微笑むとラングの手を両手で握って言った。

「ヴァルス・ラング少佐、次元潜航艦隊での活躍、聞いておるよ。 しかもあの悪名高きヴォルフ・フラーケン中佐の手綱を
執っての戦果だ。 今度の船団護衛の任務も難なくこなしてくれると期待して居るよ。」次元潜航艦隊の任務は当然秘密
(特にアッカイラの対次元潜航艦戦は極秘)であり、辺境の前線基地にまでフラーケンはともかく、ラングの名が
知られているのは驚きであった。

「入るぜ!」一際大きな声で呼ばわりながら一等ガミラス人の将校がやはり幕僚団を引き連れて会議室に入って来た。

彼等は先に入室していたラング達の前に割り込んで基地司令の前に立つと着任の報告をした。

「第11輸送船団司令、フォムト・バーガー中尉、第六機甲師団向けの補給物資を受け取りに参りました。」
フォムト・バーガー中尉と名乗った若い一等ガミラス人将校は横目で見下す様にラング達を見つめた。

基地司令はバーガーの無礼な行いにさすがに怒りを感じた様だった。

「フォムト・バーガー中尉、上官の着任申告に割り込むとは良い度胸だ。

しかも、彼はザルツ人とはいえ次元潜航艦隊のエースだ、みくびってはいかん!  

さらにラング司令の階級は少佐、君よりも二階級も上となる。

従って第11輸送船団の司令は君、フォムト・バーガー中尉だが、君達を護衛する第112護衛駆逐宇宙艦艦隊の司令、
ラング少佐が今回は輸送船団、護衛艦隊を合わせて指揮をする事になる。 心して任務に当たりたまえ!」

基地司令の言葉を聞いたバーガー中尉は信じられぬと言う顔をしてラングの顔を見た。



                                         205.疾風の漢(おとこ)ー(2)この項 続く

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# by YAMATOSS992 | 2016-05-21 21:00 | ヤマト2199 挿話 | Comments(0)
通常空間に戻ったUX-01は目の前の空間に浮かぶ敵艦の小山の様な大きさに圧倒された。

「なんてでかいんだ!こんなのと我々は戦っていたのか!」潜航士官が皆の気持ちを代弁した。

「降伏を呼びかけろ、言語はこちらが知っている限り全てを使え!」フラーケンの指示で降伏勧告が行われたが敵潜は
沈黙したままだった。

<気に入らないな・・・。>ラングはスクリーンに映る敵潜の様子に何か胸騒ぎを感じていた。

と言うのもUX-01が完全浮上して通常空間に浮かんでいるのに、敵潜は艦体の半ばをまだ次元断層に残し、赤い航跡を
曳きつつゆっくりとUX-01に近づいてきていたからである。

「まだコンタクトは取れないか?」ラングは通信士に確認した。

「駄目です。 全く応答しません。 最早悪あがきをしても仕方ないでしょうに・・・。」通信士も敵潜の挙動に
不審を表明した。
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指呼の間に敵潜が接近した時、フラーケンは突然、危機感に襲われた。

「緊急潜航だ! 急げ!」フラーケンの剣幕に潜航士官はわけも分からないまま急潜航を指示した。

次元断層の波間に吸い込まれて行くUX-01。

その時、敵潜からアンカーがUX-01に目がけて放たれた。

フラーケンの勘によっていち早く潜航に入ったUX-01だったが、敵潜の思わぬアンカー攻撃に司令塔を絡み取られて
しまった。

敵潜はアンカーがUX-01に絡まったのを確認したのか、再び次元断層に潜り始めた。

UX-01はそれに引き摺られて亜空間の中を進んでいたが潜航士官は疑問を疑問を呈した。

「奴は何をしたいのでしょう。 このまま本艦を引き摺って次元断層の深みに入っても何も変わらないでしょうに・・・。」

「機関・後進強速!アンカーを陽電子砲で切るんだ!早くしろ!」フラーケンが切羽詰まった声で命令を出した。
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「落ち着いて下さい!艦長!この空間ではビーム兵器は無効です!」ラングは艦長がパニクッたと思って思わず制した。

「大変です! 敵潜は更に下の次元断層に潜ろうとしています。 このままでは我々も道連れです!」探知主任が悲鳴を上げた。

「砲手、何をしている!ワイヤはまだ切れんのか!」フラーケンが督促した。

「駄目です!敵ワイアは本艦の側面から艦底に沿って敵潜に向かっています!陽電子砲の射界に入りません!」
砲手(雷撃手の兼任)が報告した。

「陽電子ビームは発射出来るか!」ラングが誰何した。

「砲口から少しの間はビームは収束していますが直ぐに拡散してしまって破壊力を失っています。やはりこの空間では
陽電子ビームの使用は不可能です。」砲手は状況を分析した。

「艦長、陽電子ビームは拡散してしまって使用不可能です。また、今の態勢では陽電子ビームの射界に敵ワイアを
捉える事が出来ません。」ラングが落ち着いた口調でフラーケンに報告した。

「艦長!敵潜完全潜航、本艦も引き摺られています。何か手を打つなら早くしてください!」測的手が悲鳴を上げた。

それを聞いたフラーケンは<今だ!>と思った。 そして命令を下した。

「上下反転180度! 敵ワイアが陽電子砲の射界に入るからビームを薙いで確実に切断しろ!」

「ザー・ベルク!」操舵手が空間ジャイロを反転させると共に慣性制御(人工重力)の方向も同調して変化するのだが
艦の姿勢と慣性制御の軸は完全に一致していなかったので軽い衝撃があった。

UX-01は軍艦、乗り心地は二の次なのだ。

「目標捕捉! ビーム攻撃を試みます!」砲手がワイヤ目がけて陽電子ビームを薙ぎかけた。

しかし、どんな材質で出来ているのであろうか、ワイヤはびくともしなかった。

「砲手! 艦首側では無く、司令塔側のワイヤを切断しろ!」ラングが思いも依らない命令を発した。

「それでは本艦も損害を受けます!」砲手にはとんでもない命令に聞こえたのだ。
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「何を言う! このまま複合型次元断層に引き込まれた方が良いとでも言うのか!」フラーケンの叱責が飛んだ。

「はっ」砲手は蒼ざめた顔でUX-01の司令塔先端に照準を合わせ引き金を引いた。

今度は九九ミリ単装陽電子ビーム砲は今度は司令塔の一部と共にワイヤを確実に切り飛ばした。

フラーケンの読み通り、次元断層内ではビーム兵器は無効とはいっても砲口を離れた直後のビームは破壊力を
残していたのだ。

綱引き状態にあったUX-01と敵潜はワイヤが切れると同時にお互い反動で弾き飛ばされた。

着席して居なかったフラーケン、ラング、潜航士官の三人は床に投げ出されてしまった。

<イタタタ・・・。大きな獲物の釣り糸は切れたか!>ラングは床から立ち上がると艦長を補助して立ち上がらせた。

「敵艦、ワイアの切れた反動で一度この次元断層内にその姿を現しましたが、直ぐにまた下位次元断層に
沈む模様です。」測的手がスクリーンに前方の次元断層内空間を映し出した。

そこには赤く光る次元断層の裂け目に艦首を立てて艦尾から沈没する敵潜の姿があった。

フラーケン達、UX-01の乗組員達は誰からと言うでも無くその敵潜の最後の姿に敬礼していた。

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通常空間に浮上するとフラーケンは今度は最優先で補給艦を呼んだ。

まだ別の敵潜が潜んでいる可能性も無くは無かったが、主要兵器である亜空間魚雷が空っ欠では戦い様が
無かったからだ。

部下達が補給艦の酒保で乱稚気騒ぎを繰り広げていた頃、フラーケンは魚雷の積み込み作業を司令塔の上から
見守っていた。

作業は専用のプログラムを施したガミロイドが行うので監視する必要は無かったのだがフラーケンはどうにもガミロイドと
言う物に嫌悪感を拭い切れなかった。

普段なら彼は司令塔の先端部分の壁に肘を預けるのだが、先程のワイア戦で陽電子ビームでワイア毎、司令塔の
先端を切り飛ばしてしまったので足元近くまで司令塔先端は壁を失っていた。

「アレ、アレ、これじゃ補給艦より工作艦を先に呼ぶべきでしたね。 司令部のお偉いさんが我々の報告を
信用してくれれば問題ないんですが・・・。大丈夫ですよね?」何時の間にかラング副長が傍に来ていた。

「貴様の報告なら誰でも疑わんさ・・・。」フラーケンは胡乱な目をラングに向けた。

「それじゃ駄目ですよ。この艦の艦長は貴方なのですから貴方が報告しなければいけません!」ラングは鯱ばって
主張した。

無言で疑いの目を向けて来るフラーケンにラングは両手を振って否定した。

「大丈夫ですって! もし艦長の報告が信じて貰えなくても我々乗組員は全員艦長の味方です! 地獄の底までついて
いきますよ!」ラングは孤独感に打ちのめされているフラーケンを励ました。

「有難う・・・と言うべきなんだろうな。 しかし・・・。」自分に否定的な気分になっていたフラーケンだったが、
ラングが手元に携えている物に興味を持った。

「これですか? これは『ザルツの竜』です。 手慰みです。」ラングが照れて嘘を言った。

「これは・・・紙を折った物か? ザルツではこれで何をするんだ?」フラーケンは折り紙を持ったラングの手を掴み、
ためすがめす見回した。

「『弔い』です。 勇敢に戦って散った勇者の魂の『鎮護』です。」ラングが宇宙の地平を見つめながら遠い目をした。

「本来は味方陣営の勇者を『弔う』ためのものですが、今回、アッカイラで出会った敵潜の勇猛さは半端無いものでした。 特に最後のワイア戦、多分あの時点で敵潜も魚雷が尽きていたのでしょう。 それでもなお、降伏勧告を無視して
我々に喰らい付き、自艦と一緒に我々をも複合次元断層に引き込もうとしました。 
艦長にはうざいだけの敵だったかもしれませんが私、ザルツの武人にはその尚武は讃えるべき物なのです。」ラングは
手にした『ザルツの竜』をそっと宇宙の彼方へ向けて飛ばした。
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「結局、彼等はどこの誰だったんでしょうね・・・。」ラングが飛び去りゆく『ザルツの竜』を見つめながら言った。

「フン!上の奴らは敵潜の所属に拘るだろうが、直接、刃を交わした俺達にとっては『彼等が恐ろしく手強い
勇者だった』と言うだけで充分さ。」それを聞いたフラーケンが応え、そして続けた。

「戦死した勇者は星を伝って故郷に還えるのだろ? それが船乗りの心得だからな。」

「さすが艦長、『ザルツの船乗りの心得え』をご存知だったのですね。」ラングももはや見えなくなる位遠く小さくなった
『ザルツの竜』を見つめながら言った。

 
                                       203. アッカイラ 鮫達の狂宴 ー(4) → この項了





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# by YAMATOSS992 | 2016-05-14 21:00 | ヤマト2199 挿話 | Comments(0)
「艦長! 勝算がおありなのですね! 作戦をお聞かせ下さい!」ラングが身を乗り出した。

「ああ、だが敵は四連装魚雷発射管二基を備えた化物。 加えてこちらは修理したてのポンコツ魚雷一本だ、
真面から噛み合ったら確実にこちらが負ける!」フラーケンは現状を皆と共有した。

「だから、鬼手を使う。 この次元断層の更に下の次元断層に潜り、そこで亜空間魚雷を発射、
敵潜が予想しない次元境界面から雷撃するんだ。」フラーケンの言葉に一同、息を呑んだ。

次元断層は幾つもの空間が折り重なっている部分の境界面に出来た裂け目だ。

人工的にその "裂け目" を作り出し亜空間に潜むのが次元潜航艦である。
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しかし、通常空間で次元断層を作るから敵艦船の攻撃に意味があるのであって次元断層に居ながら更に一層下の
亜空間に潜るなど正気の沙汰では無かった。

いや、通常空間の直ぐ下の亜空間だからこそ次元潜航艦は安定して留まれるのであってその下の亜空間となると
一度そこへ降りたが最後、もはや再び通常空間に戻れるか、どうか怪しい物であった。

「艦長は相打ちになってまで敵を葬るつもりなのですね・・・。」潜航士官が蒼ざめた顔で言った。

「心配するな! ベッラ少尉、この艦長は "猟犬" と呼ばれる男だ。 必ず "主人"の元に還る !
相打ちなんて考えてもいないさ。」ラング副長が潜航士官の背中をどやしつけた。

<チッ、二等が!>潜航士官が蔑みの眼差しを向けたがラング副長は彼には構わず作戦の戦術について語った。

「確かにベッラ少尉の危惧の通り、完全に下の亜空間に潜ってしまったら再度浮上出来る可能性は殆どない、
しかし、敵潜を攻撃するのにはどのみち次元潜望鏡を上げて敵の動きを探る必要がある、つまり今いる亜空間に
足掛りを残さざるを得ない。 そうですね、艦長!」ラングはフラーケンに念を押す様に聞いた。

「潜航用意! 潜望鏡深度まで潜る、なるべくゆっくりとな・・・。」フラーケンはラングの緻密な戦術に舌を巻いていた。

本来の彼の作戦は敵潜に極力接近し残った一本の魚雷を叩き込む単純な物だったからだ。

「深度、司令塔を越えます。」潜航士官が報告する。

「潜航中止! メイン・タンク・ブロー! 」潜望鏡を覗いたフラーケンが叫んだ。

「どうしました、艦長?」ラング副長が恐々る聞いた。

「次元潜望鏡の視界が真っ暗だ。 恐らく先程の敵潜の攻撃にやられたのだろう。」フラーケンは悔し気に次元潜望鏡の
鏡体を叩いた。

通常、次元潜航艦による襲撃は次元潜望鏡による各種諸元(データ)の取得から始まる、敵速、敵方位、射距離、自速、自方位等々だ。

これらのデータは艦長が次元潜望鏡を覗いて目標にピントを合わせるだけで自動的に魚雷方位盤
(雷撃用コンピュータ)にデータが送られ、さらに方位盤から魚雷に必要な制御データが送られる様になっていた。

それが行えない今、UX-01は絶対絶命の危機の内に居ると言えた。

「測的手! 魚雷方位盤に異常はないか?」艦内の士気が落ちる間を与える事無くラングは指示を出した。

「はっ、魚雷方位盤に異常はありません! しかし、雷撃に必要な諸元はどうやって入手するのです?」
測的手が訝しんだ。

「心配はいらん! メイン・タンク・チョイ・ブロー、司令塔深度まで浮上する!」フラーケンはラングの意図を読み取り
浮上を指令した。

司令塔深度、これは普通めったに取らない潜航位置である、司令塔だけを通常空間に出し、艦体は次元断層に留めると
いう難しい操艦が要求された。

更に今回は次元断層に司令塔を残しながら更に下層の次元断層に艦体を潜らせると言う高度な操艦なのだ。

「落ち着け、おまえなら出来る。」潜航士官の耳元でフラーケンが囁いた。

「測的手、携帯測距義と手動魚雷方位盤を出せ!俺と副長で司令塔に上り、雷撃に必要な諸元を手動で取って
それを連絡するから、測的手も手動で方位盤に諸元を入力しろ!」フラーケンの命令は衝撃的だった。

次元潜航艦乗りと言っても宇宙船乗りであるから宇宙服を着て船外作業する事には慣れっこである。

しかし、次元断層潜航中に船外に出る事など考えるだに恐ろしかった。

「艦長・・・。」潜航士官が言葉に詰まった。

「皆、何を心配しているんだ。この艦は次元潜航する為の特別な防御装置など持って居ないぞ。 
無防備で次元潜航出来るなら宇宙服でも充分耐えられるさ。」ラングが自信たっぷりに言った。

「それはそうですが・・・。」潜航士官は淡々と作戦準備を行う艦長と副長に思わず敬礼していた。

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< ふん! いつ見ても薄気味悪い光景だ。> 司令塔ハッチを潜り、艦外に出たフラーケンは亜空間特有の浅海の様な
光煌く光景に鼻を鳴らした。

「艦長、グズグズしないで測的をお願いします。」ラングはフラーケンに携帯測距義を渡した。

「距離八百、的速三十・・・。」フラーケンが測距義を覗いて距離を測りつつ、時計の針を見つめて敵の速度を測った。

「方位角二十、雷速五十、境界面突破角度0・・・。」ラングがそれを手動式魚雷方位盤に入力し、出力した答を雷撃手に伝えた。

<しかし、次発装填装置付き四連装魚雷発射管を二基も持っているだけあって敵潜はでかいな!>フラーケンは
測距義のレンズを覗きながら思った。

「確かに大きいですね。こちらの倍、重巡クラスはあるでしょうか? こちらの魚雷は一本、艦長、奴のどこを狙います?」
ラングはまるでフラーケンの心の中を覗いているかの様に作戦指示を仰いだ。

「雷撃手、魚雷・射角180!」フラーケンの命令にラングは感心した。

「射角180!・・・ですか! 成程、艦長、さすがです!」ラングが驚いてみせた。

亜空間魚雷は敵艦より一層下の亜空間を航走するがどこかで次元境界面を突き破って敵艦と同じ空間に戻らなければ
雷撃の意味は無い。

しかし、次元潜航艦は魚雷が戻る位置を敵艦と自艦の相対位置に無関係に選べるのが特徴であった。
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即ちフラーケンは敵艦の後方直後に魚雷を出現させ様としているのだ。

「敵艦、転舵、こちらに接近します!」ラング副長が冷静に報告した。

<何!こちらは司令塔深度潜航中だ。 目標が小さくなっているから敵艦からは殆ど探知出来ないはず?>
フラーケンはハッとして司令塔の縁に手を掛け直下にある司令塔が次元境界面に作る赤い航跡を見た。

それは赤く輝く長い尾を曳いていた。

「これでは、頭隠して尻隠さずだ! 機関停止!航跡を消せ!」フラーケンは即座に機関停止を命じた。

「敵艦、魚雷発射!雷数八!真っすぐこちらに向かって来ます!」ラング報告した。

<こちらの位置は知られている、速度を変えても敵はそれを加味した魚雷の射角を選んでいるはず、どうする!>
フラーケンは一瞬、躊躇った。

「艦長!潜りましょう。今のままではどう回頭しようが速度を変えようが敵の魚雷の網からは逃れられません!」
ラングが進言した。

「潜航士官! 深度を潜望鏡深度まで下げろ!大至急だ!」フラーケンが吠えた。

「艦長!それでは艦長達を見殺しにしてしまいます! それに潜望鏡は使えません。潜望鏡深度をとる意味が
解りません!」潜航士官が抗議した。

「議論している暇は無い!魚雷に当たりたくなければ潜るんだ!」フラーケンは部下を怒鳴りつけた。

UX-01はゆっくりと更に下の次元断層に向かって降りていった。

普段の単なる緊急潜航と違い、司令塔深度から潜望鏡深度に潜る深さを変える事は難しく慎重な操作が必要なのだ。

フラーケンやラングのいる司令塔頂部に次元境界面が達し、彼等の宇宙服の胸から下は次元境界面を異物が
押し分ける時に出来る赤く輝く航跡に浸っていた。

「艦長! 魚雷が来ます! 右舷三十度、雷数八!」ラングが測距義を覗きつつ報告した。

「敵魚雷接近!降下やめ!」フラーケンは必要以上に下部次元断層に足を突っ込む事は避けたかった。

敵の魚雷はUX-01に到達した時、司令塔はほぼ下部次元断層に潜り、フラーケンとラングは宇宙服の頭部を残している
状態だった。

魚雷が一本、本来ならUX-01の艦首に当たる部分をすり抜ける、二本目は艦首上部を擦過して行った。

残り五本の魚雷は後部や下部を大きく外れた位置で擦過していったのでUX-01が回避行動を起こした時にそれを狙った射線だと考えられた。

しかし、最後に残った一本はUX-01の司令塔目指して一直線に走って来た。

先程、UX-01が司令塔深度で測的作業を行っていた時に曳いていた赤い航跡の発生部位に何かあると踏んでの
攻撃だと思われた。

迫りくる魚雷、その光景にフラーケンは魂も凍る思いだった。

だがそんな中、ラング副長は手動魚雷方位盤を敵艦に向けていた。

「魚雷、発射射角、修正-5!」迫りくる魚雷に立ち向かう様にラングは方位盤を向けて叫んだ。

「雷撃手! 射角修正したら直ぐに魚雷を発射しろ!」フラーケンが最後の魚雷発射命令を下した。
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<当たってくれよ!>と祈る間も無く敵魚雷がUX-01の司令塔を直撃した。

しかし司令塔は一つ下の次元断層に殆ど潜っていたため、魚雷は爆発する事無く、フラーケンやラングの身体ごと亡霊の様に司令塔を擦り抜けていった。

<フ ~ ッ、肝を冷やしたぜ、あっ、こちらの魚雷はどうした!>フラーケンが敵潜の居る方へ頭を巡らした。

<敵潜、後部に魚雷命中! 奴は深度を上げ始めました。相当大きな損傷を与えた模様です。」ラングが報告した。

敵がすぐそこに居るのに形振り構わず緊急浮上するのはそうしなければ沈没してしまうからに他ならない。

「よし、こちらも浮上だ。潜航士官、メイン・タンク・ブロー! 敵潜の正体を確かめる!」フラーケンはこの戦闘が
終了した物だと思い込んでいた。


                                         203. アッカイラ 鮫達の狂宴ー(4)→この項、続く

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# by YAMATOSS992 | 2016-05-07 21:00 | ヤマト2199 挿話 | Comments(0)
 次元断層内は真空である。 次元潜航艦の中で如何に音を立てようともそれが敵艦に伝わるはずは無いと考えるなら
その者はたちまち魚雷を喰らってしまうであろう。

確かに音そのものは伝わらないが次元潜航している艦が周りの次元断層に与えている微振動が艦内で音を立てる事によって大きく変わり、それが敵艦に探知されてしまうのである。

だから潜艦が無音潜航するのは今も昔も変わらない戦術だった。
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「副長、潜航士官(ダイヴ・オフィサー)、こっちに来てくれ。」フラーケンは次の戦術を今の内に決めておこうと思った。

とはいえ魚雷を使い果たしてしまった今、取れる戦術は一つしか無かった。

 UX-01の主な任務は敵の交通路の破壊、通商破壊戦である。

だから小柄な艦体に不釣り合いな戦艦級の魚雷を多数積んでいる。

しかし、次元潜航艦の数は少なく、相手にすべき敵商船の数は多い。

そこでここぞと思しき宙域に機雷をばら撒く戦術を取る事もある。

もちろん単純な接触型の物では無く、近接信管を備え敵商船が接近したらブースターをふかして懐に飛び込んで行く
短魚雷とでも言うべきものなのだが、たまたまUX-01は今度の作戦時、機雷を積み込んでいたが使う機会が無く、
五基全てがまだ残存していたのである。

「成程、機雷か! これなら機械音を出さずに敵潜に接近出来るやもしれませんね!」フラーケンやラングより二つ下の
潜航士官が感心した。

「ですが、ただ浮上させるだけでは敵艦に当てる事は難しいのではありませんか?」ラング副長が問題点を指摘した。

「ウム、確かにそこがこの戦術の弱点だ。 何時、敵が真上を通るかをどうやって知るか、それさえ出来ればこの戦術は有効なのだが・・・。」フラーケンは腕組みして考えた。

「探知主任、敵潜の位置は掴んでいるか?」ラング副長が敵の位置を確認した。

「駄目です。 敵も音響管制に入っている様で機械音、その他の雑音、一切、聞こえません。」探知主任が絶望的な事を
伝えた。

<音響管制・・・。そうか!>フラーケンは敵の正体に思い当たった。

潜艦の音響管制の考え方は第二次大戦の独海軍Uボートの運用上で完成された。

それは大英帝国の生命線である海上交通路を脅かすものであったが、英国はUボート狩りを駆逐艦だけでなく
護送空母、対潜哨戒機を動員して大々的に行った。

対するUボートは駆逐艦に見つからない様、静粛性を増し、航空機のレーダーに捕まらない様、シュノーケルや
対レーダー電波警報機を備えて極力浮上する事無く作戦出来る様に工夫した。

この様に実戦で鍛え上げられた独のUボートに対し日本の伊号潜水艦は対米作戦の要である漸減作戦の主役としての役割を与えられていたため、水上高速力を求めて機関をフル回転する事にのみ注力し、静粛性はお世辞にも良いとは言えなかった。
(これは大戦中五回行われた潜水艦による遣独使節が二回しか成功しなかった事でも解る。)

フラーケンは敵潜の静粛性に着目した。

もし敵潜の目標が通常宇宙にいる艦艇ならここまで静粛性を求める事は無いだろう。

何故なら幾ら探知されても敵に攻撃手段が無い以上、静粛性はそれほど必要の無い性能なのである。

しかし実際の敵潜は非常に静粛性に優れている、これは敵潜の目標が音響管制に勝れた艦、
即ちガミラスの次元潜航艦だと言う事だ。

「対潜攻撃型の潜艦だと言う事ですか!」ラング副長が驚きの声を上げた。

「上方から接近する小物体が多数あります!」測的手が警告した。

「深々度潜航!」フラーケンが命じた。
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「反対だ!メイン・タンク・ブロー、深度を上げろ!」ラングがフラーケンの頭越しに命令した。

潜航士官はどちらの命令に従ったらよいか、戸惑った。

しかし、フラーケンはただ頷いて見せた、それはラングの指揮を優先しろとの指示だった。

UX-01は浮上を始めた、そして今までいた深度とそれ以下の深度に爆轟が渦巻き、もし今までの深度を維持していたら、更に深度を下げていたらどうなっていたか皆が背筋を寒くした。

確かに水中だったらこの局面で深度を上げるのは自殺行為であったが次元断層中でも真空で在る事は変わらず、
深度を上げても下げても敵爆雷から艦を守る事は変わらなかったが敵潜はUX-01が深度を下げる事を予測、次発の
爆雷の爆発深度を下げて設定していたのだ。

「艦長の見立て通り、相手は対次元潜航艦・攻撃型次元潜航艦ですね。」ラング副長が感心して見せた。

「どうしてそう思う。」フラーケンはラングのあからさまな持ち上げが不愉快だった。

「敵潜は我々に対して爆撃?を行いました。これは通常空間においては考えられない攻撃です。
敵味方同じ次元断層内にいるからこそ有効な攻撃です。次元断層に居る艦艇は次元潜航艦以外に考えられませんから
先程の爆撃?は対次元潜航艦兵器に違いありません。」ラングの分析は適確だった。

「あっ、敵艦が左舷を後方から前方に擦過して行きます。」測的手が報告した。

「何!」フラーケンは測的手のレシーバーをひったくると自分で敵潜の音を聞こうとしたが何も聞こえなかった。

「艦長、グランはプロです。プロの耳を信じましょうや」ラング副長は艦長の行為を嗜めた。

艦長からレシバーを取り戻すと測的手はムッと顔付を変えた。

「魚雷接近! 方位十、雷数八!僅かに扇状に開いた雷跡です。」測的手は報告した。

「取り舵十、魚雷群と正対しろ!」フラーケンは今度は適確な命令が出せた。

しかし前方から来て舷側を擦過する八本の魚雷の航走音は気持ちの良いものでは無かった。

「あ、再度、魚雷発射音、雷数八!」測的手が驚いた様に報告した。

それはそうである、雷撃戦に熟達したUX-01ですら全魚雷発射後、次発装填して再び全門斉射を行うには地球時間で
六~八分掛かるのであるから敵潜の次発装填の速さは驚異的な物だった。

<奴は一体何本魚雷をもってやがるんだ!>フラーケンは心の底で毒づいた。

「艦長、敵潜の前甲板に四連装大口径ビーム砲塔が背負い式に二基装備されていましたよね?」ラング副長が
関係ない事を言った。

「それがどうした?」フラーケンはイラつきつつ応えた。

「あれは多分ビーム砲塔ではありません、旋回式四連装魚雷発射管です。」ラングは誰も予想しない事を言った。

次元断層に潜む攻撃艦から発射された魚雷は次元境界面を突破する位置を指定しておけば通常宇宙にいる敵艦を
全方位どこからでも攻撃出来る。

しかし次元断層内での戦闘では亜空間魚雷も普通の魚雷としての機能しか持たない。

だから敵潜は次発装填装置を持った旋回式の魚雷発射管二基で魚雷を連射し目標を雷撃して来るのだ。

UX-01は前方、後方にしか雷撃出来ない訳ではない。

魚雷方位盤によって敵艦の速度と進路から敵艦の未来位置を割り出し、こちらの雷速と魚雷の進路、舵角の調整など
様々なデータを入力する事で真横にいる目標に前部、後部の全発射管の魚雷を導く事も出来る。

但し、相手が通常宇宙にいる通常艦艇ならばの話である、今回の様に双方とも次元断層内に居て、速度が速く、
運動性も良い艦艇相手に魚雷方位盤で魚雷を命中させるのは至難の技と言って良かった。

「こちらがもう一層深く次元潜航出来れば亜空間魚雷の全方位雷撃が可能になるのだが・・・。」フラーケンは腕組みして考えた。

次元潜航艦は次元断層潜航中に更にもう一層、次元境界面を突破して深く潜る事は出来た。

しかしそれを行ったが最後多次元断層に落込み二度と浮上出来なくなる事は目に見えていた。

<それに本艦の攻撃手段で残っているのは機雷のみ・・・。一層下からの攻撃は不可能だ・・・。>フラーケンは
追い詰められていたが、突然、ラング副長の前に手を差し伸べた。
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「魚雷を出せ!」フラーケンの要求は唐突だった。

<は? 何の事です?>と言いたげに戸惑った表情をするラングにフラーケンは重ねて問い質した。 

「先程敵潜に向けて残りの魚雷を斉射した時、故障で打てなかった魚雷だ。修理はもう済んでいるのだろう?」
フラーケンはラングが何か企んでいると踏んでいた。




                                     202. アッカイラ 鮫達の狂宴ー(3)→ この項続く


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# by YAMATOSS992 | 2016-04-30 21:00 | ヤマト2199 挿話 | Comments(0)
 「あ、ホイッと、魚雷命中!最後の一隻、片付きましたぜ!大将!」次元潜望鏡に取り付いていた副長のゴル・ハイニが
勝鬨を上げた。

しかし艦長のヴォルフ・フラーケンは俯いたまま「ああ」と頷いただけだった。

「ゲール艦隊の処理、完全に終わりましたぜ。」ハイニが再び声を掛けたがフラーケンは手元で指を躊躇う様に動かし
続けていた。

ハイニはそれを見て顔をしかめた。

「大将、戦いに勝ったから"散って行った魂" を弔う用意をするのはわかりやすが、相手はあの卑怯で卑劣、冷血漢の
ゲールですぜ! 弔うには値しやせん!」

フラーケンは横目でハイニの方を見やるとそれまで折っていた折り紙を見せた。

その小さな折り紙にハイニの目は引付けられた。

「『ザルツ の 竜』・・・。 それでは弔う相手は・・・。」
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「そうだ、ヴァルス・ラング・・・、ゲールの奸計にはまって殺された俺の親友だ。」フラーケンはやっとその時が来たとの
感慨で一杯だった。

**************************************************

バラン星空域のデブリはゲール艦隊を全て呑み込んでも左程増えた様には見えなかった。

フラーケンはその乗艦、UX-01を比較的デブリの濃度が薄い安全宙域に漂泊させ乗組員を全員上甲板に整列させた。

この時、普段なら艦長であるフラーケンは司令塔の上に陣取り部下達を見下ろして訓示を行うのだが、
今回は彼もハイニと共に上甲板の乗組員の列に加わっていた。

彼は両掌で大事そうに包んで持っていた『ザルツの竜』の折り紙を高く掲げ、乗組員に示した。

そしてそれを隣に立っていたゴル・ハイニ大尉に渡した。

ハイニはそれを一端、目の高さに掲げ持って一礼すると隣にいたベルン機関長に渡した。

その折り紙は次々と乗組員達によって手から手へ渡されていった。

最後にそれを手にしたのはヤーブ・スケルジ(藪 助治)だったが彼は手渡されたその折り紙を見るやあまりの不細工さに
思わず折り紙を開いて折り直し始めた。

「おい!ヤーブ!何をしている!」言葉がまだ不自由なヤーブの面倒を見て居るヨーヘン機関・兵曹長が止めようと
したが、それを制する手があった。

「大将・・・?」ヨーヘンはフラーケンの行動が一瞬、理解出来なかったがヤーブが折り直した折り紙を見るとその簡素で、
それでいて優美で力強いその姿に心を奪われた。

ヤーブはその『折鶴』をフラーケンに手渡そうと差し出したが彼は首を横にふり舷側の彼方を指差した。

ヤーブはフラーケンの想いを全て感じ取った訳では無かったが、自分に何が求められているのか、
それを感じ取れる位の感性はあった。

彼は手にした『折鶴』を宇宙の彼方へ届けとばかりに力一杯投げつけた。

宇宙空間には当たり前だが空気は無い、当然空気抵抗も無い。

大気中では飛ばす事の叶わぬ『折鶴』でも失速する事無く慣性の法則に従って初速を維持したまま飛び続けるのだ。

みるみる小さくなってゆくその姿を見つめつつ、フラーケンは心の中で叫んでいた。

<ヴァルス! お前の仇は確かにとったぞ! 安らかに眠れ!>

こうしてフラーケンの親友、ヴァルス・ラング中佐の葬儀は簡素ながらも武人に相応しい荘厳さの中で行われた。

**************************************************

「とにかくアッカイラ星域に飛んでくれ! あそこで何か問題が起こっているらしい。」
ガル・ディッツ次元潜航艦隊総司令が緊迫した面持ちで連絡して来た。

「その問題とやらは一体何ですか?」フラーケンは一艦長に過ぎない自分に総司令が直接連絡を取って来た事が
不思議だった。

「判らん、唯一判っているのは味方の次元潜航艦が次々と消息を絶っている事だけだ。
君には味方艦の消息不明の原因と出来得ればその排除を頼みたい。」総司令はフラーケンにとんでもない難問を
いとも容易い事の様に命じた。
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「どう思う、ラング大尉。」フラーケンは総司令との通信が切れると副長に尋ねた。

アッカイラ星域には先住民が居たが文明のレベルが低く、ガミラスを天空から来た神と崇めたので平和的にガミラスの
支配下に入った。

しかしこの星系は交通の要所で様々な星域の宇宙船が行き来していた。

ガミラスはそれらの宇宙船を止め、通行税を取っていたが幾つかの星系はそれに猛反発し宇宙艦隊を送って来た。

ガミラスはまだ通常艦艇で構成された航宙艦隊が充実しておらず代わりにガミラスだけが持つ技術、
ゲシュ・バール機関を備えた次元潜航艦でこれに対抗していた。

次元潜航艦は通常宇宙にいる艦艇を攻撃出来るが通常の軍艦は異次元にいる次元潜航艦を攻撃出来ない。

確かに次元潜航の技術は難しい。

ガミラスでも次元潜航に失敗して行方不明になる艦は後を絶たなかったがそれは実戦前の訓練期間の話である。

鍛え上げられて次元潜航艦学校を卒業した者には最早そんな失敗をする奴は居ない。

フラーケンもかつて学校時代次元潜航艦で遭難しかかった経験を持っていたが、今の副長、ヴァルス・ラングの補佐を
受け得難い生還を期し一人前の次元潜航艦乗りになったのだ。

<どこかの星系が対次元潜航艦技術を考案したのか・・・?>まだ若かったフラーケンは敵が通常空間に居ながら
次元断層の奥に届く兵器を開発したと言う思いに囚われていた。

「艦長、この命令を受けるのは良いんですが、今までの作戦行動で魚雷を消費してしまい、前方発射管ー連射分六本
しかありません。 後方発射管に到っては皆無です。

一度補給を受けた方が宜しいかと考えます。」ラング副長が進言した。

「ヴァルス、この指令は時間が命だ、何、相手を撃滅する必要は無い、何が起こっているのか、
それだけを掴んで報告すれば良い。
敵艦の撃滅は航宙艦隊の戦艦の仕事だ。
まずはアッカイラ星域に跳んで侵入、生き残りの僚艦に連絡を取って情報を得よう。」フラーケンは事態を
軽く考えていた。

ラング副長は一度言い出したら他人の意見など聞かないフラーケンの性格を良く知っていたので魚雷補給の進言は
それ以上行わず代わりに別の指示を出しに艦橋をこっそりと抜け出した。

**************************************************

「フーム・・・。怪しい物は見当たらないが・・・。」アッカイラ星域ににゲシュタム・アウトしたUX-01をフラーケンは即座に
次元潜航させ次元潜望鏡や亜空間ソナーによる情報収集にあたらせた。

「アッカイラ駐屯艦隊旗艦 "チラン・ケラン" より入電!」通信士が報告した。

<チラン・ケラン?だと・・・。>フラーケンが訝し気な顔を向けるとラング副長も「頭がグラグラする様な名前ですね。」と
おどけてみせた。

しかし、その通信内容は深刻なものだった。

『アッカイラ星域にはガミラス以外の他星系が送り込んで来た艦艇が出没、交通破壊戦を挑んで来ているので厳戒を
求む!』その通信が終わるか終らない内に探知主任が叫んだ。

「魚雷が次元境界面を突き破った反応を探知! 雷数八!」

「何! 発射艦の方位は判るか?」フラーケンは次元境界面の突破反応があったと言う事は敵艦の目標は通常空間に
居る "チラン・ケラン" だと判断し、次元潜望鏡をその方向に向けた。
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次々に被雷する "チラン・ケラン" 、八個の光球が消えた時、そこには威風堂々としたガミラス戦艦の姿は既に無かった。

<八射線・・・か。本艦は六射線、敵の火力は本艦の1.5倍のと言うところか・・・。>フラーケンは冷静に分析した。

と、 "チラン・ケラン" が最後を遂げた通常空間から少し離れたところにに赤い裂け目が生まれ、ガミラスの次元潜航艦と全くデザインの違う次元潜航艦が浮上して来た。

次元潜望鏡でそれを見ていたフラーケンはその姿に見入ると「おかしい・・・。ラングこれを見てみろ!」と言って
次元潜望鏡の眼視孔をラングに譲った。

「前甲板に大口径四連装ビーム砲塔2基ですか? これは確かにおかしいですね。」ラングも首をひねった。

次元潜航艦は自ら次元断層を作り出してそこに潜んで敵を攻撃する艦艇だ。

通常空間にいる敵は次元潜航艦の居場所が解らず、また敵が偶然にこちらを探知出来たとしても攻撃手段を
持たないのでこちらは一方的に攻撃出来るのだ。

だから次元境界面を越えられない通常のビーム兵器など幾ら装備しても何の意味も持たない。

更には次元断層内は "ゲシュタムの門" の "回廊" と同じくビーム兵器は無効である。

そして敵は "チラン・ケラン" を撃沈するのに亜空間魚雷を使った。

明らかに戦艦である "チラン・ケラン" とビーム兵器を撃ち合う愚を避けた事は明らかである。

「敵は今、通常空間にいる、我が方は次元潜航中だ、亜空間魚雷の射角を六十度ずつずらして敵艦を包囲する様に
発射すれば確実に仕留められるぞ! 前部発射管全門斉射!」フラーケンは勝利を確信して命令した。

「艦長、敵艦の出現で報告が遅れましたが魚雷が一本推進器が不調で発射出来ません。」ラング副長が
申し訳なさそうに報告した。

「五本で構わん!グズグズするな!」潜望鏡から目を離すとフラーケンは再度攻撃命令を発し、発射された五本の魚雷が次元境界面を突き破った。

「ん!」フラーケンが潜望鏡に目を戻すと漂泊していた敵次元潜航艦が動き始め、みるみる内に次元境界面を越え
次元断層の奥に消えていった。

UX-01の発射した五本の魚雷は目標を失って宇宙の彼方に消えていった。

しかし敵潜は次元潜望鏡の有視界面からは消えたが亜空間ソナーや次元断層振動波検出器には捕らえられていた。

<しまった!敵潜はこちらの攻撃を誘っていたのか! まんまと引っ掛かってしまった。>フラーケンは自分の判断の
甘さに歯噛みした。

「艦長、あなたのせいではありませんよ。敵はこちらの魚雷を消耗させようとしただけです。」ラング副長がフラーケンの
耳元で囁いた。

「だがおかげでこちらには魚雷は一本も無くなってしまった!反撃などおぼつかんぞ!」まだ若かったフラーケンは
焦りまくっていた。

「ここで焦って脱出を図れば敵の思う壺です。 敵は確かにこちらの魚雷を浪費させましたが、
こちらが丸腰になっている事までは気付いていません。」ラングは冷静に状況を分析してみせた。

「敵艦、右舷より接近! あ、奴が右へ転舵しました!」探知主任が報告した。

<魚雷発射管は艦首と艦尾に装備しているはず・・・・何故それが使えなくなる方向に転舵するのだ?>フラーケンには
この敵潜の行動は解らない事だらけだった。

「操舵手!敵潜に艦首を向けろ! 急げ!」ラング副長が切羽詰まった声で命令した。

UX-01はガミラス艦の中では小型の部類に入るがそれでも空間戦闘機の様なきびきびとした運動性は無い、のろのろと
艦首を敵艦の方に廻している内に敵潜が魚雷を放って来た。

その数、八射線、先程 "チラン・ケラン" を撃沈した時と同じ雷数である。

UX-01はラングの命令で向かってくる魚雷と正対しており被雷する確率は低かったが真面に魚雷に正対する事は並の
胆力で出来る事では無かった。

全ての魚雷とすれ違うとフラーケンはラングの作ってくれたチャンスを生かすべく次の命令を発していた。

「ベント開け、深々度潜航、最大!」幾ら次元潜航艦といえども本来いるべき空間で無い次元断層に潜っているのである、自ずとその深度には限界があった。

「最大深度に達しました。」潜航士官が報告する。

「よし、無音潜航。 各部、音を立てるな。 測的手は敵潜から目を離すな!」フラーケンは自分の最も苦手とする
我慢比べをする覚悟を決めた。


                                     201. アッカイラ 鮫達の狂宴ー(2)→ この項続く


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# by YAMATOSS992 | 2016-04-23 21:00 | ヤマト2199 挿話 | Comments(0)