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宇宙戦艦ヤマト前史

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宇宙戦艦ヤマト登場前の地球防衛軍の苦闘を描きます。

 艦長! 戦況はどうじゃ? この超巨大戦艦 "ガトランチス" は無敵であろう、ガミラス艦隊など幾ら数が居っても
相手にはなるまい?」サーベラー丞相は得意げだった。

「はぁ、確かに本艦は無敵なのですが、敵艦隊は一度、戦場を離れ、改めて空間跳躍で後に続く普通艦艇や輸送船団を
攻撃して来ます。その損害は拡大する一方です!」艦長はサーベラーの顔色を窺がいながら応えた。

「くそっ、ガミラスめ、悪賢い奴!」サーベラーは大帝の旗艦 "ガトランチス" を楯として用いて配下の艦艇や輸送船団の
"殲滅回廊" 通過を支援しようと考えていたのだ。

しかし、超巨大戦艦だけ "回廊" を抜けさせ、後に続く艦艇や輸送船団が "回廊" 内で動きが取れく為って居る内に
一撃離脱攻撃を掛けて来るガミラス艦隊に "楯" の意味は無くなってしまったのである。

しかも旗艦がその大量に持つ火力を後方のガミラス艦隊に向けて発砲する事は出来なかった。
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何故なら超巨大戦艦の後方火力だけでも集中射撃を行えばガミラス艦より、動きの鈍い輸送船団などひとたまりも無く
宇宙の藻屑となってしまうのは明らかだった。

<超巨大戦艦の "火力" さえあれば "回廊" 通過など朝飯前だと言ったのは誰じゃ!>サーベラーは幕僚達の読みの浅さが腹立たしかった。

幸いな事にガミラス艦隊の規模はあまり大きく無く、戦局は膠着状態になったが、どちらの艦隊の引くに引けなく
なっていた。

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「何だか妙な気分ですね。 迎え撃つべき敵艦と艦隊を組んで航行する事になろうとは思っても見ませんでした。」
ルルダ・メッキラ艦長が呟く様に言った。

「確かにあの巡洋艦隊は敵だ、しかし、あの赤い駆逐艦は我等を次元断層の咢から救い上げてくれた恩人の艦隊の
所属艦だ。 その男の "盟友" の艦隊となれば話は別だ。」メルダは "迅雷" のガルダ・ドガーラの言葉を信じてテレサ・
テレザートの救出作戦に参加したのだ。

<テレサ・テレザートの率いる一派はガミラスのみならず宇宙にあまねく存在する文明と平和共存する事を
目指していると聞く、この作戦はユリーシャ様の望むこの紛争の平和的解決に繋がる重要なものだ。 "呉越同舟" と
言う所か・・・。>メルダはヤマトに正式に乗艦していた時に教わった地球の古いことわざを思い出した。

「ナーカス殿、メルダ殿、私はこの艦で "大帝" の旗艦に接近を試みる、その間、旗艦の注意を引付けて置いて
貰いたい。宜しいか?」ドガーラからナーカスとメルダに作戦計画が伝えられた。

「しかし、テレザート様が、捕縛されていたら脱出は不可能なのでは無いか?」ナーカスはテレサの実力を目の当たりに
した事が無く、その分、救出に懐疑的になっていた。

「ナーカス殿、テレサ・テレザート殿は尋常では無い胆の据わったお方、心配するには及ばない。 
それより貴公の方こそ自分の部族を裏切ってしまう事を悔やまないのか?」メルダはナーカスの本心を確かめたかった。

「何の! この作戦は "古への星の海往く船乗りの約定" に基づき為される物、それも旧友、
"霹靂" のガルダ・ドガーラから要請された物でもある! だから、ここで、この "約定" を無視すれば
ガトランティスだけでは無く "星の海を往く船乗り" 全部の笑い者になってしまうわい!」ナーカスの目は
一途に前を見て居た。
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「味方は後、何隻残っているか!」デーリアン少将が悲痛な叫びを上げた。

「後、一艦隊、十隻です! 残りは全て撃破されました。」専任参謀が報告する、<撤退の時機を逸したか・・・。>
デーリアンは己の不明を恥じた。

「通信を傍受! 味方の増援です! 間に合いました!」通信士が喜びの声を上げた。

「何! 何処の部隊だ! こんなに早く回せる部隊は無いはずだが・・・?」デーリアンは誰何する様、通信士に命じた。

「ガミラス皇室付き遊撃艦隊、司令官はメルダ・ディッツ大佐です! 映像をそちらに廻します!」通信士は受信映像を
艦橋メイン・スクリーンに映し出した。

「援軍感謝する! ディッツ大佐、これより貴官は私の配下に入って貰う、まず・・・。」そこまで言ったデーリアン少将は
メルダがまったを掛けているのに気付き眉を寄せた。

「デーリアン少将閣下、確かに貴官は私より上位であるが、艦隊そのものの "格" は本艦隊の方が上になる、
申し訳けないが指揮権はこちらにあると理解して頂きたい。」メルダはデーリアンの怒りに油を注ぐ様な事を平然と言って
のけた。

「皇室直属の艦隊だからか! 今まで我々前線部隊が血を流して祖国を防衛している時、後方で安寧としていた
お前らの言う事を今更聞けと言うのか!」デーリアンには "皇室直属" と かつての "親衛隊" が同じ様なものにだと
感じられていた。

「では我が艦隊の力、お見せしましょう! "ゲシュタム・アタック" 開始!」メルダが自信たっぷりに宣言した。

ボロボロになったデーリアン艦隊の直近にデストリア級重巡九隻からなる艦隊が現れ、超巨大戦艦に一撃を掛けるとすぐさま再度ゲシュタム・ジャンプをして消えた。

その艦隊行動はまるで奇跡を見るようだったが、デーリアン達が驚いたのはメルダの指揮・戦艦が放った第二撃だった。

メルダの旗艦、"メラ・ドーラⅡ(ア・ルー)" の第一砲塔から発射された330mm陽電子ビーム三条は互いに捩り合わさって
一条のビームになると超巨大戦艦の上方で二回屈曲してその機関部に突き刺さって行った。

< これは "光の花園" ! 皇室・巡航戦艦にだけ装備された秘密兵器・・・、それを使う事が許されているとは余程、
ガミラス皇室の信頼が厚い人物の証明か!。>デーリアンはメルダの姓が "ディッツ" である事を思い出していた。

「失礼しました。 "光の花園" を託されているお方の命はガミラス皇室の命、喜んで従います。」デーリアンは格下である
メルダの指揮下に入る事を快諾した。

「指揮権の委譲、感謝する。 第一の命令は敵巨大戦艦の足止めだ、第二の命令は後方に展開している
ガトランティス軍、一般艦艇は放置せよ!」メルダの命令はデーリアン達には余りにも以外だった。

そして彼等の驚きを倍加させる出来事が起こった。

「近傍空間に重力振多数観測! ガトランティスの艦隊です!」空間跳躍にしろ、ゲシュタム・ジャンプ(ワープも)にしろ
空間を無理矢理捻じ曲げて長距離を跳び、光速を突破する技術だ、そこには空間を揺さぶる重力振はつきものだった。

「何! 戦術士官、重力振ポイントに主砲照準合わせ、敵が態勢を整える前に殲滅す・・・、」そこまで言った所でメルダが横槍を入れて来た。

「命令したはずだ! 我等の目標は超巨大戦艦のみ! 他の艦艇への攻撃は禁じる!」メルダは怒りで鬼の様になった
形相で再度、命令を徹底した。
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「ゲシュタム・アウトして来た艦隊は巡洋艦隊です。既に攻撃態勢を取りつつあります。 しかし、・・・。」観測士が困惑した
表情で言葉を濁した。

「しかし、何だ! 報告は簡潔にしろ!」デーリアンは珍しく言葉を荒げた。

「敵艦隊の目標は我々ではありません。」戦術士官が状況を分析して見せた。

「何?」デーリアンは艦橋のメイン・スクリーンに目を凝らした。

新たに戦場に現れた巡洋艦隊は前方に集中出来る砲火を全て超巨大戦艦に向けていた。

更に後部からエネルギー球を打ち出すとそれを使って本来死角になる後部砲塔のビームも前方に向けて屈曲させ、
火力を倍増、今までのガトランティス軍の巡洋艦とは比較にならない火力を見せていた。

「 "呉越同州" さ。」メルダが悪戯っぽく笑った。

「ごえつどうしゅう? 何の事です?」デーリアンは戸惑いを隠さなかった。

"呉越同州" これは中国の故事の一つである。

詳しい説明は省くが要するに『仲の悪い者達同士でも難局に出会えば協力する』と言う事。

これはガミラスとガトランティス双方が両立出来る体制を作り宇宙に平和と安定をもたらすための闘いだった。

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同時刻、超巨大戦艦に潜伏しているテレサは何とかドガーラと連絡を着けようと "輪廻の雷" を操ってあちこちに
空間回廊を開いて見たがどの回廊もその先に開けているのは宇宙空間ばかりで中々ドガーラと合流する事は
叶わなかった。

一ヶ所に長居すると発見される恐れがあるのでテレサは居場所を変えようと、艦内に空間回廊を開いた。

艦内の別の場所に空間回廊が繋がった事を確認するとテレサは "輪廻の雷" が空間を切り取った円の中に身を潜らせようとして思い止まった。
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何か嫌な感覚が走ったのをテレサは感じて居た。

<何が違うのだろう・・・?>テレサは "円" を見つめた、そして普段とは違う事を見つけた。

それは円の縁を作っている "輪廻の雷" の色が普通の "黄色" では無く、少し"赤色" がかった色に輝いていた事で
ある。

テレサは手近な物をその空間に投げ込んでみようと思ったが生憎ここは機械室、やたらな部品を外すとどんなトラブルが
起きるか分からないと考えた彼女は別の物を投げ込んでみる事にした。

普通なら着衣の一部や上着などで済むが彼女が今、着ているのは "ビキニ・アーマー" である、布地の部分など殆ど
無い、しかも胸当てはその裏に生命維持装置が仕込んであって何時真空の宇宙に投げ出されるか、分からない
今の状況では失う訳には行かない装置だった。

仕方なくテレサは "ビキニ・アーマー" の下穿きに着いて居る飾り布を外して丸めると怪しげな空間回廊の入り口の投げ込んだ。

小さな布の塊がゆっくりと弧を描いて向こうの空間に消えた、と、凄まじい光の洪水が溢れ、消えた。

<反物質空間、こちらと全く同じ物体が同じ形で存在しながらその電荷は正反対の空間、立ち入れば私も光に変わって
いただろう・・・気付いて良かった。>テレサはこの空間座標を記憶し、別の場所に回廊を開き直すとまた何処かに消えて
行った。



                                       196. ”大義”の”甲冑(よろい)” ー(14)→この項続く


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# by YAMATOSS992 | 2016-02-13 21:00 | ヤマト2199 挿話 | Comments(0)
 「敵艦、更に駆逐艦・撃破1、しかし "殲滅回廊" を抜けてくる敵艦隊の数は増える一方です! 支え切れません!」
戦術士官が悲鳴を上げた。

<これは "殲滅回廊" の意味を無くす作戦か! ” 回廊を抜けて来た直後の敵艦隊は数も少なく、撃破しやすい” 事を
前提にこの作戦計画は組まれている、我々が処理し切れない数の艦隊が投入されればおのずと撤退するか、
"殲滅回廊" の閉鎖を余儀なくされる!>デーリアン少将は苦しい選択を迫られていた。

最後の一艦まで戦って散るのは兵(強者)の美学だが、自分はここで散ってしまい、後は後続の部隊にお任せと言うのは
将として余りにも無責任だと彼は感じていた。

では一度、"殲滅回廊" を閉じて侵入を根本的に防ぐのが一番こちらの物的損害が少なくて済む様に思える、
しかし今まで艦隊単位でイオン嵐を乗り越えて来た事の無かったガトランティス軍が小艦隊とはいえ "殲滅回廊" 以外の
場所を突破して来たのも事実だった。

もし、任意の位置でイオン嵐を突破されたら、ガミラスの小マゼラン雲守備艦隊の兵力ではとても全域をカバーする事は
不可能だった。

デーリアン少将は一度、撤退し後続部隊の到着を待って態勢を立て直し、再び攻勢に出る事にした。

「通信士、大本営との通信回線を開け!」デーリアンは急ぎ作戦計画の変更を伝え様としたが、その時、思いもよらない事態が忍びよっていた。

「司令、回廊を物凄く大きな物体が通過して来ます! 今までのガトランティス艦の五倍以上はあります!」探知主任が
驚愕の声を上げた。
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「五倍以上? ガトランティス艦艇の母艦か何かか?」デーリアンも艦橋スクリーン一杯に迫るその巨艦が大帝の
旗艦だとは思いも依ら無かった。

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そのころ、イオン嵐を縦断、ガミラスの警備艦隊を殲滅、偵察に来た宙雷戦隊も葬って意気を上げていた、
ヨダム・ナーカスの陽動艦隊は強力なガミラス艦隊に出会い、損害こそ少なかったものの、こちらの戦果は無く、
とある惑星を楯に最後の布陣を敷いていた。

<一体どうなっているんだ? 奴等には実体が無いのか? そんな馬鹿な!>ナーカスの心の内は千々に乱れていた。

ナーカス艦隊がはっきりその存在を掴んでいるのはガミラス戦艦一隻だけだった。
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しかし、その戦艦に艦隊全部の輪動砲("自在雷" を含め)を集中して発砲してもその戦艦はナーカスの攻撃を尽く弾き、
悠遊と接近してくるのだった。

そしてある程度接近したその戦艦は第1砲塔を巡らし、ナーカスの旗艦では無く、鶴翼の布陣の右端の巡洋艦に狙いを定めた。

三条の陽電子ビームが走り、的にされた巡洋艦は一瞬で行動不能になった。

「敵艦から通信が入っています! 繋ぎますか?」通信士がナーカスに問いかけた。

「 ”馬鹿め!” と伝えろ!」ナーカスは怒りのままに命令した。

<どうせ降伏勧告だ、我々は破れる訳にはいかない!>ナーカスの部族が全てここに来ている訳では無い、大帝の
主力艦隊に大部分は残っているのだ、それは人質も同然だった。

彼等の為にもナーカス艦隊は "回廊の出口" を押さえている艦隊を何が何でも引付ける必要があるのだ。

敵戦艦はナーカス艦隊の正面、指呼の間に来て止まった。

<くそ!一隻づつ始末するつもりか! このままでは奴の餌食だ!>ナーカスはすぐさま艦隊の散開を命じた。

だが、ここに来てガミラスはナーカスの思いも依らない対応をして来た。

散開した個々の巡洋艦にガミラスはデストリア級重巡による一撃離脱(ヒット・エンド・ラン)攻撃を仕掛けて来たのだ。
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しかも一瞬、宙に現れ、四基の全砲塔から陽電子ビームを吐きかけるとすぐさま別の宙域に消えるのでナーカス艦隊は
反撃の暇さえ無かった。

だがナーカスにとって幸いだったのはガミラスもここまで徹底した一撃離脱戦法は不慣れだったと見え、命中率が
悪かった事だ。

「傍にある惑星を背にして背水の陣を敷く! 全艦移動せよ!」ナーカスは一撃離脱攻撃を背面から受ける事だけは
避けたかった。

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「ガトランティス艦隊は近傍・惑星の反対側に布陣しました。」観測士が広域・偵察魚雷からの情報を報告した。

「よし、そのまま、ガト艦隊の動向を観測し続けろ! ”反射遊星砲”で攻撃する、艦長、攻撃用意!」メルダは
メラ・ドーラⅡ(ア・ルー)の艦長、ルルダ・メッキラ中佐に指示を出した。
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「はっ、了解、火器管制、反射遊星を射出、反射プログラムを組んでガト艦隊の旗艦をまず戦闘不能にする! 良いか、
戦闘不能だぞ、爆沈させるな!」メッキラ中佐は妙に繊細な命令を下した。

今までガミラスとガトランティスの関係は喰うか、喰われるかの関係だった、だからメルダ司令の示した方針は
驚くべき物だった。

<司令はガトランティスと交渉する気か? そんな事、デスラーを従わせるに等しい。 出来る訳が無い!>それが
一般の乗組員の感想だった。

しかしメルダはこれがユリーシャの示唆だと明かす訳には行かなかった。

彼女は平和の象徴・・・、荒事には一切、関わってはいけないのだ。

<全て私の責任でこの作戦は遂行しなくてはならない!>メルダの見つめるスクリーンには "反射遊星" 、こと
"反射板・誘導弾" が六基、惑星の周囲に反射衛星ネット・ワークを作る為に惑星の衛星軌道上に消えて行くのが
映っていた。
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発射された "反射遊星" は二基一組で惑星の反対側に布陣しているナーカス艦隊を逃がさない様、三方向から惑星を取り囲む様に設置された。

「反射・プログラム完了! 目標、敵旗艦、何時でも攻撃出来ます!」火器管制主任が報告した。

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いきなり大きな衝撃を受けたナーカス艦隊の旗艦の艦橋内には怒号が渦巻いていた。

「ビーム飛来方向に艦影無し!どこから攻撃されたか判りません!」戦術士官が平常心を失いかけているのが
ナーカスには苛立たしかった。

しかし、こんな事で内輪もめしている場合では無かった、幸い今のビームは旗艦の艦尾を擦過しただけで直撃では
無かった事から敵もこちらの位置を今だ正確には掴んでおらず、今のうちに再び艦隊を散開させて一度態勢を
立て直す必要性をナーカスは感じていた。

「通信が入って来ました! あ、識別は ”友軍” です!」通信士が嬉々として報告した。

<現在の状況を変える事が出来れば良いが・・・。>とナーカスも僅かな希望を持って通信をスクリーンに映し出させた。

そこにはナーカスも見知った顔が映し出されたが、その言葉は意外だった。

「ヨダム・ナーカス、"刃雷" の戦士よ! ”古への星の海往く船乗りの約定”に依りて援助を求む!」スクリーンに
映し出されたのはナーカスの旧友、"霹靂" のガルダ・ドガーラだった。

< ”霹靂” のガルダ・ドガーラ! お前にはこの状況が見えんのか!>ナーカスはドガーラの援助要請に困惑したが
古き友人に対し、一応の礼は尽くそうと思った。

「 ”霹靂” のガルダ・ドガーラよ、よく来た。 しかし、我々は戦闘中だ、悪いが救援要請は受けられぬ!」ナーカスは
一瞥もくれずにドガーラの要請を断った。

「我はもはや ”霹靂” の戦士にあらず、テレサ・テレザート様にお仕えする "迅雷" のガルダ・ドガーラだ。 
再度頼む、”古への星の海往く船乗りの約定”に依りて助けを乞う、テレサ・テレザート様を大帝の旗艦から
お救いしなければならないのだ!」ドガーラの要請は具体性を帯びて来た。

「如何言う事だ? 詳しく聞かせろ!」ナーカスは大帝を手玉に取ったテレサ・テレザートの噂は聞いており小気味良く思っていた。

「 ”古への星の海往く船乗りの約定”に依る援助要請なら私にも聞く権利があるな? "迅雷" のガルダ・ドガーラ殿。」
ドガーラの駆逐艦の通信モニターに映し出されていたのはガミラスのメルダ・ディッツ大佐、その人だった。



                                       195. ”大義”の”甲冑(よろい)” ー(13) → この項続く




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# by YAMATOSS992 | 2016-02-06 21:00 | ヤマト2199 挿話 | Comments(0)
ガミラス第七空間機甲師団を率いて小マゼラン雲の入り口に設定された "殲滅回廊" の出口を固めていた
デーリアン少将は自分の兵力に絶対の自信を持っていたが、彼はかつてドメル司令の元で戦った経験があり、
その時、一番の怖いのは敵そのものでは無く、敵を侮る "慢心" だと言う事を徹底的に叩き込まれていた。
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だから彼は普通は敵が越えられないと考えられる多数の縮退星で構成される幾つかの星団の周りにも小規模の艦隊を
張り付けていた。

小規模の艦隊と言っても彼がガトランティスを侮っていた訳では無く、首尾すべき個所が多く一か所に廻せる艦の数が
二十隻前後と少なくなってしまったのだった。

これは地球の艦隊運用では充分、大艦隊なのだがガミラスやガトランティスの様な星間国家の運用方法では小艦隊に
過ぎないのだ。

<第三監視艦隊からの連絡が途絶えて一時間か・・・。 まさか侵入艦隊がイオン嵐の宙域を通過出来たとは
思えないが・・・。>デーリアン少将は監視艦隊が全滅した事など思いも依らなかったので再度通信を試みた。

しかし、応えが有ろうはずも無く、クリピテラ級航宙駆逐艦二隻からなる一個戦隊を偵察の為に当該宙域へ派遣した。

そして彼等も「ガトランティス艦隊の侵入を確認!・・・。」と言う通信を最後に連絡が着かなくなってしまった。

デーリアン少将はこれでガトランティス艦隊の侵入を確心、直ぐに全艦隊を持ってこれを撃滅したい所であったが
"回廊" の首尾を完全に外す訳には行かなかった。

彼はこれがガトランティスの陽動作戦だと考えたのだ。

彼は、ガト軍は錬度の高い小艦隊にイオン嵐の壁を突破させ、ガミラスの監視艦隊を叩く、慌てたガミラス艦隊は
"回廊" の守備艦隊を外してガト軍小艦隊の迎撃向かう、その隙にガト軍本体が "回廊" を抜け、後からガミラス艦隊に
襲い掛かる作戦と踏んだのだ。

< 相手は囮とはいえ、こちらの監視艦隊と増援戦隊を一撃で葬った彼等は強力な艦隊だ。
再び小艦隊を送っては強大な敵に戦力を逐次投入する愚を犯しかねない。
かといって "回廊" の守備も外せない・・・。>

戦争で一番やってはいけないのは戦力の逐次投入である、強力な敵に少ない兵力を向かわせ敗北する、
それを知った司令部は先に投入したものより多い兵力を投入するがそれでも足らず再び全滅する、こうして戦局は
泥沼化し、混迷の度を深めてゆくのである。

デーリアン少将は事の重大さにガミラス大本営に事の次第を報告し、指示を仰ぐ事にした。

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「ガミラスの青虫共、脆かったですね。 今まで敵わなかったのが嘘のようです。」副官がナーカスに喜びを伝えた。

「ああ・・・確かに脆かったな、脆過ぎた位だ。 敵も決して錬度が低かった様には見えなかったが・・・。」ナーカスは副官に
返事をしている様で独り言を言っている様にも見えた。

< "自在雷" これはかなり昔に封印された技術のらしい。 
古い技術だからその効果にはあまり期待して居なかったのだが、とんでもない威力を持っていた。
何故、先祖は "自在雷" を封印する必要があったのだろう?>ナーカスは頭を巡らした。

"自在雷" 、それは旧ラスコー級の主砲、輪動砲塔の真ん中に空いている穴からエネルギー球を発射し、母艦任意の
位置に配置、輪動砲が発射するビームをまるでビリヤードの様に弾き、その進路を変える物だった。
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これによりガミラスの皇室・ヨットが持つ "光の花園" と同等の効果をもたらし、全主砲の死角を無くし、その火力を一点集中出来るのだ。

ただ、ゲシュタム・フィールドの技術を持たないガトランティスは反射板誘導弾では無く、エネルギー球とビームの玉突き効果に依ってビームを屈曲させていたので第一撃を終わると再攻撃の為にエネルギー球を配置し直さなければならず、結果、発射速度に劣ったのだが、それは砲塔の交互射撃である程度補いがつき、大きな欠点とはならなかった。

ナーカスが理解しかねたのはこの様に有用な技術を封印していた先祖の考え方だった。

大帝の下で侵略と略奪に明け暮れている今のガトランティス軍人達だったらこの技術を使ってガミラスも忽ち飲み込んでいただろう。

しかし、祖先達は自軍が不利になるのを承知で "自在雷" を封印した、何故か・・・?

その理由は電撃の様にナーカスの心を心を打った。

<この技術を侵略に使えば戦闘に勝てはするだろうが、奪うべき敵の資源や財産までも破壊してしまうのか? 
それを防ぐ為の封印だったのか?だったら、俺は "禁断の箱" の蓋を開けてしまったのか?>ナーカスはこの封印の
意味を深く考え始めた。

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 大帝の "謁見の間" から "輪廻の雷" の空間跳躍能力を使って脱出したテレサ・テレザートは今、旗艦の機関室の
片隅でガルダ・ドガーラが待つ駆逐艦指令室に "輪廻の雷" による "回廊" を形成すべく奮闘していた。

しかし、何度 空間跳躍の入り口を開いても冷たい宇宙空間が開けているばかりで待機しているはずのドガーラが
指揮する駆逐艦の艦内には届かなかった。

<謁見の間を脱出するのに時間が掛かり過ぎた、ドガーラが計画通り脱出してもやむをえない・・・か。>テレサは
標準座標をドガーラの駆逐艦に置いていたので現地点を新たな標準座標として設定、大帝の旗艦の中を跳び廻って
次に打つ一手の材料を集めた。

その中の一つにテレサは興味を魅かれた。

それはサーベラーとナーカスの通信の内容からたまたま入手出来た情報だった。
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<旧型ラスコー級巡洋艦十隻の艦隊でイオン嵐を縦断、アムート星系からダガン星系を結ぶ宙域に網を張っている
ガミラス艦隊を引き剥がして本来、ガトランティス艦隊・本体が通りたい宙域を押さえているガミラス艦の数を減らそうと
言うのか・・・。
何と大胆な作戦を立てる漢だ、ヨダム・ナーカスと言ったか、この漢、是非とも欲しい!>テレサはナーカスの属する
ラウス族が秘密兵器 "自在雷" を操る事はまだ知らなかった。

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 ここはガミラス皇星、皇都 "バレラス" 、郊外にある乾ドックの一つにメルダ・ディッツが指揮する改・ガイデロール級
航宙・指揮戦艦が収まっていた。

ドック全体を見渡せる張り出しデッキの上でガル・ディッツ提督は手摺を握りつつ、身を乗り出しながら言った。

「見事な仕上がり・・・と言って良いのかな? 儂にはまだ改装部分が殆ど解らんぞ・・・?」
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「それでなくては困ります。 この艦はいくら防御力を格段に上げてあるとは言え、敵艦隊の付近に留まり続けて
一撃離脱を掛ける配下の突撃戦隊を指揮するのですから敵には普通の旧式なガイデロール級だと思い込んで油断して
もらう必要があります。」メルダが何度目か分からない説明をした。

「艦の後部しか赤く塗っていないのは間に合わなかったからか? それとも節約か?」
提督は如何でも良い質問をした。

「これも用兵上の必要事項です。 前は敵からはガイデロールと区別させない為に標準色を、
味方には指揮・戦艦である事を判り易くする為に後部を赤色に塗っているのです。」
メルダは<この親父、呆けたんじゃ無いのか?>と本気で心配に成った。

「配下の突撃艦隊の訓練状況はどうか? お前の事だ、旗艦が就航すると同時に出撃出来る様、準備をしておるの
じゃろう?」水面下で進めていた配下になる予定の艦艇に前倒しで猛訓練を課していたメルダはそれを黙って承認して
くれた父の想いに是非とも応えなければならないと身を引き締め敬礼した。

「デーリアン少将は知・力合わせ持った名将だが、援軍として差し向けてやれるのはお前の艦隊しか無いのだ。 
新艦隊の初陣としてはかなり厳しい戦いになると思うがお前の働きに期待しておるぞ!」ディッツ提督も娘の肩に
手を置き激励した。

**************************************************

 メラ・ドーラⅡ(ア・ルー)がバレラスを離れ、重力制御力場の力でぐんぐん上昇して行く、その艦橋で大佐に昇進させられたメルダが居心地悪そうに立っていた。

<如何に旧式とはいえ、戦艦の艦長が中佐では収まりがつかん! これも体制だ、我慢しろ!・・・か。 全く階級章で
戦闘が出来れば苦労は無い!>メルダが困惑していると通信士が秘匿回線の通信が届いた旨伝えた。

秘匿回線、それは誰から、或いは何処からの通信であろうか?

ディッツ提督なら別に普通回線で何の不都合も無く連絡してくる、他にこの秘匿回線の事を知っているのはガミラス皇室それもユリーシャ・ガミラシアだけだった。

艦長室に戻るとメルダの目の前にあるモニターにユリーシャの姿が映し出された。
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「ルード・ガミラシア(高貴なるガミラス皇女)、御見送り恐縮至極で御座います。」メルダは片膝を着き、両腕を胸の前で
合わせ、深く頭を垂れる礼を取った。

「また闘いに行くのですね、現実は解っているのですがやはり悲しいです。」ユリーシャ・ガミラシアはガミラス皇室・皇女と言う立場になって皇女らしい装いをしていた。

「はっ、これも運命(さだめ)、この身はユリーシャ様の楯となる所存です!」メルダは大望を言った。

「私の事など如何でも良い! 臣民を守って! 兵士を死なせないで!」ユリーシャはメルダに懇願した。

「勿論、我々は臣民を守る為に戦うのです。そして兵士の損害も最小に成る様、努力します。 しかし、相手が強ければ
こちらも無償と言う訳には参りません、御理解下さい。」メルダは戦士としての立場を貫こうとしたが、ユリーシャはそれを
許さなかった。

「貴方達はどうして "外交" と言うと戦闘ばかりに頼るの! 話し合いの余地は本当に無いの!」ユリーシャはメルダの
最も苦手な "政治" をこの戦いに持ち込もうとしていた。

「まさか "外交官" を連れて行けとおっしゃるのですか! 危険すぎます! 相手は蛮族です!」メルダはユリーシャが
"外交官" を付け、作戦行動を制限される事を恐れた。

「あなたに付けてあげられる程、外交官は余っていないわ、それに特別あなたに外交官は必要ないでしょうに。」
ユリーシャは小狡そうな笑みを浮かべた。
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「はぁ、どういう事です! 私は外交官用の学習・訓練は受けて居りません!」メルダが癇癪を起しそうなのを止めて
ユリーシャが続けた。

「地球とガミラス、その戦争の最悪の状況を改善し、ついにはデスラーの暴走から滅ぼされかかっていたバレラスの
臣民を地球のヤマトが救ってくれた。
更には異空間に閉じ込められたガミラス艦を兵ごと救い出す作戦をガミラス・ヤマトの共同戦線で実行、成功させた。
これらの業績はすべてあなたが次元断層内でヤマトへ丸腰でたった一人脱出の為の共闘作戦を提示する為に向かった
事に始まるのよ、充分な実績では無くて?」メルダは次元断層での出来事は全て秘密にしていた。

<あれはヤマトにコダイがいたからだ。 他の者では共闘は失敗したかもしれない・・・。>

<それにこの件については父、ガル・ディッツに対しても私の口からは一言も話してはいない。 
それを何故、ユリーシャ様は知っている・・・。>メルダは困惑を隠せなかった。

「それとあなたにはガトランティスに強力な伝手があるでしょ。」ユリーシャは事も無げに言った。

「何隻もの配下を持ち、ガトランティスでも数少ない秘密兵器を積んだ特殊艦を持っている・・・。 
彼女の名は "テレサ・テレザート" と言ったかしら。
あなたの艦隊は彼女の艦隊に次元断層から救いだされたのよね?」ユリーシャは再びメルダが上層部へ報告していない秘密事項に触れた。

< ・・・ >ユリーシャの告げた言葉にメルダの思考は停止してしまった。

「ふふん、驚いた? あなたの心の中には私の密偵がいるの、隠し事は一切無駄よ。」

<イルダ・・・。その密偵、私の記憶に無い私の妹なのだろうか?>

メルダはユリーシャはある意味、デスラーより恐ろしい支配者だと思った。


                                     194. ”大義”の”甲冑(よろい)” ー(12) → この項・続く

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# by YAMATOSS992 | 2016-01-30 21:00 | ヤマト2199 挿話 | Comments(0)
 イオン嵐を乗り切ったヨダム・ナーカスはガミラスの支配宙域に入る大分手前で止まり、艦隊の編成を単縦陣から大きく
変えさせた。

その陣形は "鶴翼" 、古くからどの民族、星系国家も用いる古典的な陣形でそこには何の新しさも感じ取れなかったが、
彼が取らせた隊形は通常の鶴翼陣より横一直線の横陣に近い浅いV字形だった。

<ガミラスの青虫共め、今度こそ貴様達の前線を中央突破して見せてくれるわ!> "刃雷" と仇名される
ヨダム・ナーカスはガトランティス・ガミラス方面攻略軍の一艦隊を指揮していた。
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小マゼラン雲の一角、アムート星系からダガン星系を結ぶ線は他の星系がイオン嵐吹きすさぶ難所であるにも
関わらず嘘の様に穏やかな宙域だ。

しかし、これはガミラスの作り出した "罠" だった。

本来、アムート星系からダガン星系を結ぶ一線にもイオン嵐が吹きすさんでいた。

ガミラス大本営ではこれを天然の要害と考える事も出来たのだが、強者がこれを乗り越える事を危惧した大本営は業と
イオン嵐の少ない宙域を作り出し、そこに侵入艦隊を誘導、出口で待ち構えたガミラス艦隊群に依って撃滅するのが
常だった。
(グリーゼ581で主星にヤマトを追いつめた技術はこれの転用。)

しかし、ガトランティスにも "雷鳴" のゴラン・ダガームの様な知恵無し者ばかりでは無く、これが罠である事を見破り、
" 平穏な回廊 " を通らずイオン嵐を突破しようと考える強者も少なからずいた。

残念ながら彼等の大半はイオン嵐に呑まれたが "刃雷" のヨダム・ナーカスはじっくりと考え、イオン嵐は強烈に
吹いてはいるが、その強度が一定の場所を突き止め、そこを一気に突破し艦隊を一隻も失わずにイオン嵐を
突き抜ける事に成功したのだった。

しかもヨダム・ナーカスは更にこの侵攻艦隊を特別な艦で統一していた。

彼が今回使った艦は他の部族と同じラスコー級巡洋艦であったが旧式な重装備型であった。
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何故、彼が重装備故に機動力に劣り、兵装配備の非合理さから重装備の割に火力の集中に難がある旧型を
選んだのか?

新型艦は輪動砲塔の数を減らしつつも、兵装配置を合理化、軽量化に成功して旧型とは比較に成らない機動性を
獲得していた。

だが、その新型艦を多数保有していた "雷鳴" のゴラン・ダガームの艦隊もガミラス艦隊とヤマッテの共闘に敗れた。
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そして旧型艦はドメル将軍の指揮する第6空間機甲師団に手も無く捻られ全滅しているのに、である。
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だが、ヨダム・ナーカスにとって旧型艦の重装備ゆえの機動力の悪さはイオン嵐の中では安定性の確保に繋がり、
イオン嵐の防壁を突破に成功したのだった。

また彼は通常ガトランティス艦隊が多用する軽快艦艇、ククルカン級の駆逐艦を同伴させて居なかった。
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先のイオン嵐突破時、主力の巡洋艦が辛うじて安定を保てる程の荒れた宙域では質量の少ない駆逐艦ではその安定を
保てず迷走する事が危惧されたからだ。

「 "刃雷" の戦士よ。イオン嵐の正面突破見事であった。 しかし、駆逐艦が一隻も居ない旧型ラスコー級巡洋艦隊で
ガミラスの強固な防壁をどうやって打ち破るつもりか、考えを聞かせい。」シファル・サーベラーは立体通信でナーカスを
問い質した。

「ははぁ、旧式艦ゆえの不利は承知しております。 後は初志貫徹の意志あるのみで御座います。」ナーカスは愚直な
応えを返した。

それを聞いたサーベラーは<この男もか!>と言う侮蔑の眼差しをナーカスに送ると「吉報を待つ!」とだけ告げて
通信を切った。

<フン!大帝の雌犬め!貴様などに我等が持つ秘儀 "自在雷" の秘密は簡単に渡してたまるか!>ナーカスもまた
テレサの故郷、シェザード族と同じく表面上は大帝に従っているものの、心から忠誠を誓って仕えている訳では
無いのだ。

こうした内情の不統一がガトランティスのいや、"大帝" の懸案事項だった。

これを緩和する為の "策" の目玉として一大勢力にあり空間跳躍の技に勝れるセジャード族の姫 、
"レティファン・クエセジャード" を "大帝" の妾籍に向かい入れ婚姻関係を持って中央勢力の拡大を目論んだ
サーベラー丞相であったのだが、肝心の "姫" が "真の名" に目覚め "使命の神託" を得て "テレサ・テレザート" と
名乗り、セジャード族の元を離れ、新たな新興勢力として台頭して来たとあっては何もかもぶち壊しになってしまった。

一度は "姫" を"大帝とサーベラー" の本拠まで引き摺り出す事に成功したが姫もさるもの、個人用空間跳躍という
サーベラーの信じられない技で彼等の手をすり抜けていった。

**************************************************

 目の前に広がる宇宙空間は平穏で今までイオン嵐に揉まれた続けた航行とはうって変わった平穏な航行だった。

しかし、ヨダム・ナーカスは気を緩めなかった、< 一応 ガミラスの裏はかいたつもりだが、こんな巧妙な " 罠 " を
張って来る敵の事だ自らの策が破れる事態も考慮していると考えるべきだ。>と信じる彼は次なる策を用意する様に部下に命じた。

「ナーカス様、全艦 "自在雷" 使用可能になりました。」副官が報告する。

「よし、分かった、全艦 "自在雷" 使用準備態勢のまま前進だ!」ナーカスは率いている艦隊十隻に命令を徹底する様に
命じた。

「前方一光秒の空間に次々にと所属不明艦が "空間跳躍" して来ます。現在その数二十隻、こちらの倍の数です!」
探知主任が悲鳴を上げた。

< 一光秒か、"自在雷" が使用出来るギリギリの距離だ。 だが今目前に居る敵がガミラスならその優れた機動性で
我等を押し包んで攻撃して来る。敵が態勢を整える前に先制攻撃を掛けるべきだ。>ナーカスはそれまでの
対ガミラス戦を良く研究していた。

「 敵が態勢を整える前に "自在雷" による攻撃を掛ける! 全艦、後部砲塔の "自在雷" を起動、前方砲塔はそのまま
直接目標を狙え、後部砲塔は "自在雷" を使った間接射撃で火線を集中して敵を殲滅する!」ナーカスの命令は簡潔だった。

しかし、この日の為に猛訓練を積んで来た部下達にはそれで充分だった。

旗艦ルード・ナルドは勿論、旗下の九隻も殆ど同時に後部輪動砲塔の中央に空いた穴から穴より少し大きめの
エネルギー球を吐き出し、その級は母艦の少し上で止まったまま、母艦と同方向に動き始めた。

旧ラスコー級は前方に五基の輪動砲塔を集中出来るが後部四基は射撃出来ない。

また輪動砲塔の特性上、一基の砲塔が一度に構成出来る火線が一本なのも欠点だ。

しかし、連射は出来るのでその欠点は大分少なくなるが、それでもやはり多連装砲には同等か、少し劣る物でしか無い。

だが "自在球" を使えば輪動砲塔の欠点が無くなる訳では無いが普通は使えない後部砲塔のビームも前方に指向
出来る様になる、これでどの方向にも八門の火線を集中出来る様になったのだ。
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「 "自在球" 所定位置に配置完了!」火器管制士が主任に報告する。

「よし、全主砲発砲せよ!」火器管制主任はナーカスの司令を待たず、発砲命令を下した。





                                       193. ”大義”の”甲冑(よろい)” ー(11) → この項・続く
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# by YAMATOSS992 | 2016-01-23 21:00 | ヤマト2199 挿話 | Comments(0)
 「済まぬな、メルダ・・・。今の航宙艦隊の事情では新型艦は前線から外せんのだ。」ガル・ディッツ提督は娘である
メルダに都合を付ける様に頼まれた航宙戦艦のデータを示した。
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「これは・・・。二等級の戦艦ですが、一等航宙戦艦 "ハイゼラード級" のベースになった名鑑、ガイデロール級では
ありませんか!」メルダ・ディッツ中佐は父の腕に抱きついた。

「この艦ならユリーシャ様の皇室・巡航戦艦 "アヲ・スイショウⅡ(ア・ルー)" と同様な改装が施せます!」

「おおっ、お前もユリーシャ様の慧眼に目覚めたか!」ガルは娘の成長を素直に喜んだ。

「はい、巡洋艦は速度では無く、航続距離に勝れた艦、駆逐艦は攻撃力は勿論、どんな宇宙気象でも戦力を
発揮出来る艦、そして戦艦は攻撃力より防御力を重視すべきなのです。」メルダはかつて父に言われた言葉を返した。

「何故そう考える?」父の顔から提督の顔に戻ったガル・ディッツはメルダの真意を確かめたかった。
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<単なるユリーシャ様の改装の模倣か、用法研究の成果による改装か、最後に確かめねば貴重な "艦と乗員" を
預けられん!>提督はメルダの答えを待った。

「提督、それは自艦が二等級でも絶対的な防御力さえ持っていれば相手が一等級の戦艦でもその攻撃力を恐れる
必要はありません。

そしてこちらの攻撃力が駆逐艦級、それも後部砲塔の中口径砲でも至近距離まで近づければ、相手の装甲を貫き
戦闘力を奪う事も可能です。」メルダは迷う事無く明確に答えた。

「ですから主砲塔は最前部の一基に絞り、前方を向いている魚雷発射管も底部の六基を除き全部撤去します。 
まぁ、外観上あまり差があると敵に付け込まれますので外観上は装備している様に装いますが・・・。」メルダは更に続けた。

「肝心な防御力はどうする? 皇室巡航戦艦はクリピテラ級二等級航宙駆逐艦の機関を三基装備して強力な
"ゲシュタム・フィールド" を発生させる事が可能だが、それはユリーシャ様だから都合を付けたまでの事、お前にまで
恩恵は与えられんぞ!」娘の用兵家としての素養に舌を巻いたディッツだったが、少し意地悪をしたく成ったのだ。

「構いません、私は必要な部品が沢山ある所を知っていますから問題ありません。」メルダは提督の思いも依らない
回答をした。
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「それはどこだ?」ガル・ディッツ提督は厳しい目でメルダを見つめたが彼女は応え無かった。

しかし、彼女は心なしか微笑んでいる様に見えた。

**************************************************

「いやはや、どれ程の艦が沈んだのですか?」ルルダ・メッキラ大尉はゲシュタム・ジャンプ明けの空間に広がった
驚くべき光景に目を見張った。

「約1万隻・・・。いや帝星に帰還で来た艦艇が約3千隻いたから、この残骸は7千隻分のものだ。」メルダはバラン星に
あったゲート・コントロール・システムの爆発とそれを引き起こしたヤマトの波動砲の威力に改めて恐怖を感じた。
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「さて、それでは主機関が無事な艦など残っているか、妖しいですね。」メッキラ大尉はこれからメルダ中佐が行おうと
しているサルベージ作業の困難さを思うとつい心が暗くなった。

「でもないさ、爆発するバラン星から退避しようとして間に合わなかった艦の主機関は全損と考えるべきだが、脱出が
大幅に遅れ、艦首をバラン星に向けたまま大破した艦はその強固な前面装甲で後部にある主機関を守ってくれた
可能性が高い、7千隻だぞ、7千隻、そんな艦が3隻位残っているだろう。」メルダは相変わらず楽観的だった。

「さぁ、サルベージ作業を開始しろ! 目的はクリピテラ級航宙駆逐艦の主機関を3基回収する事だ、作業かかれ!」
メルダの命令にガイペロン型多層空母の大容積を利用した高収容能力を持つ作業艦 "ガルン・バシュケ" は
搭載・探査艇を発進させ、めぼしい残骸を調査し始めた。

しかし、現実はやはりメルダの考えの様に都合良くはいかず、主機関が無償のまま壊れた艦艇は殆ど皆無だった。

<仕方ない、無事な部品だけ回収してクリピテラ級の主機関を再構成しよう。>探査艇の中で技術士官、
オルト・シーンブ少尉は方針の切り替えをメルダに具申した。

しかし、それでもクリピテラ級の主機関は2基しか組み上がらなかった。

それほどバラン星のゲート・コントロール・システムの破壊エネルギーは強大だったのだ。

メルダが報告を聞いて困惑しているとかつての部下、クリフ・ラッド大尉が艦橋に入って来た。
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「メルダ司令、お久しぶりです。」ラッド大尉はメルダの旗艦、"メラ・ドーラ" の火器管制主任だった男だ。

「おお、クリフ、次元断層で遭難しかかって以来だな! 懐かしいぞ!」メルダもかつての部下を暖かく迎えた。

「で、今度は何だ? また親父に言われてじゃじゃ馬の御目付か?」

彼がメルダの陰の補佐役なのは彼女には秘密だったのだが感の良いメルダは直ぐに彼の役目を見抜いていた。

いきなりカウンター・パンチを喰らったクリフ・ラッド大尉はバツの悪そうな顔をしながら本題に入った。

「司令、実は妹君から託された "土産" をお持ちしました。」ラッド大尉はメルダの思いも依らない事を言った。

「妹? 何の冗談だ、私はガル・ディッツ提督の一人娘だが・・・。」メルダは対処に困った。

「いえ、実在して居られます。今はさる高貴なお方の懐刀として常時仕えて居られるのでディッツ家を離れて暮らさざるを
得なかったのです。」ラッド大尉は真剣だった。
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<そうだとしても私には妹の記憶が無い・・・。何故だ! どんな任務を負っているのだ!>何か禍々しいものが心の中で
蠢くのをメルダは感じた。

しかし、その妹からの "土産" とは何か? それは大いに気になるメルダだった。

**************************************************

「これがあの戦艦の改装後の姿なのかね? 何も変わっていない様に見えるが・・・・」メルダに見せられたスクリーンに
映っているのは当たり前の "ガイデロール級戦艦" だとしかディッツには見えなかった。
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「違いがお分かりに成りませんか、提督。」メルダはスクリーンを指差して微笑んだ。
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この艦がガミラスの戦術に革命をもたらし、軍のドクトリンにまで影響を与えるものになるとは開発したメルダ自身も
気付いていなかった。




                                       192. ”大義”の”甲冑(よろい)” ー(10) → この項・続く

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# by YAMATOSS992 | 2016-01-16 21:00 | ヤマト2199 挿話 | Comments(0)