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宇宙戦艦ヤマト前史

yamato2199.exblog.jp

宇宙戦艦ヤマト登場前の地球防衛軍の苦闘を描きます。

 17章、19章で取り上げた地球脱出用船として計画された2つの計画案について説明します。



試作番号「SBA-140」 大山造船技官が最初に提示した設計案。

ガミラスに劣る光速兵器を防御兵器として攻撃兵器はただ1つガミラスに通じる「反物性ミサイル」に絞った案。
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有重力下での着陸を前提としているので船体下面の強度を増す必要があるので、逆に下面をメインの装甲と
して他の面の装甲を減らしている。

戦闘時はこの装甲面(つまり下面)を敵に向ける事になるが、攻撃兵器は誘導ミサイルなので問題なく攻撃
出来る。

下面の装甲縁には左右で12基の3連双レーザー砲塔があり、敵の攻撃ミサイルに直接対抗する事が出来る。

但し、この設計は機関が純地球タイプなので出力がガミラスに大きく劣り、巡航用の機関の他に緊急用の
ブースターまで装備する必要があった。

また、主兵装の「反物性ミサイル」は量が積めず、艦内で生産するとしても戦闘時には大きく不足する恐れが
あり、問題となった。



試作番号「SBA-141」 ガミラス艦のエンジンを捕獲、調査、解析の結果、ワープは出来ないものの、飛躍的な
出力増大出来る見込みがたったため、主兵装を「反物性ミサイル」からフェーザー砲へ変更した試案。
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この案は撃破されたガミラス艦から回収された準波動エンジンを解析、理解出来た部分から設計された新型
エンジンを装備する事を前提とした設計である。

ワープは出来ないものの、今までの地球艦とは比較にならない高出力が実現出来る見込みがたったため、
主武装をこの時、地球で製造出来る最大口径のフェーザー砲(18インチ)を3連双2段の砲塔2基に収め、
両舷に別けて装備し、艦低部の主装甲越しに12門の18インチ・フェーザー砲を前後左右死角なしに発砲
出来る設計となった。

片舷、3連双2段に別れた砲塔は通常は一体となって旋回するが、多方向の敵に対処する時は1段づつ別れて
旋回する事が可能である。

更にミサイル艦案の時と異なり、艦首に発射部口径、2mの超大型荷電粒子砲を装備している。

この兵器は発射口にロート状のビーム誘導部を持ち、広範囲の空間を大出力ビームで走査する事が出来る。

これにより単に1隻の敵艦のみならず、前方に群れている敵艦隊を一瞬で葬る事を考えての装備だ。

これもエンジン出力が大幅にアップしたからこそ持てた兵器である。

ただ、この案も今の地球の技術ではフェーザー砲の寿命に問題があり、数ヶ月ならともかく、何年、何百年と
航行しなければならない「やまと」型には不的確な設計だと大山造船技官は判断、改良を命じた。

また。決戦兵器の超大型荷電粒子砲も当初は威力を発揮出来るかもしれないが、航行が長期に渡ると
ガミラス側も対策を講じる可能性は否定出来ず、その装備に一抹の不安がある。
(荷電粒子は磁力で簡単に曲げられるので磁力バリアーの様な装備を持って来られると無力になる。)

なお、両案とも地球艦では初めて艦載機の運用をする事を考えた設計になっている。

これにより少しでも劣勢な勢力で宇宙空間を戦闘しながら航行する不利を補い、また、惑星の初期探査に
探査艇を運用して無駄な着陸をしないで済む様に配慮している。



しかし、ガミラスが持っているワープの秘密を入手出来ない限り、これらの案も根本的解決にはならないのは
残念ながら明らかだった。
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# by YAMATOSS992 | 2012-06-03 21:00 | 本文 | Comments(0)
 「技官、あの人は一体、いつまでここに居るつもりでしょう?」 真田は秘書役の女性士官にたずねられたが、それは彼にも解らなかった。

大山造艦技術大佐は真田に見せられた捕獲したガミラス艦のエンジンの解析に掛りっきりになっていたのだ。

それも食事も睡眠もエンジンの脇でとり、1日15時間は働いていたであろう、幾ら、ここが秘密保持が厳密な
軍技術部であってもここまであからさまに調査、解析をやられてはガミラス艦の秘密を技術部が握っているのを
宣伝している様なものだった。

<もう、2週間になるものな・・・。好い加減に一度、打ち切ってくれないものかな、奴だって休暇は1週間だった
はずだぞ?

伊地知参謀長が捜しまわっていなければいいが・・・。> そう考えた真田は大山に一度、解析を中断させる
ためにガミラス艦のエンジンが保管してある室に入っていった。

しかし、そこに大山は居なかった、いや、あれほど散らかっていた室は綺麗に片付いており、誰かが
そのエンジンを解体して分析していた後はなかった。

秘書官にたずねたが、彼女も知らなかった。

<まっ、何時もの事だ。 しかし、自分で退去したって事は奴め、何かを掴んだな・・・。>真田は自分が
歯の立たなかったガミラス艦のエンジンの解析を2週間でやってのけた大山の技術に嫉妬に似た複雑な
感情を持った。


 大山が造艦部に返ってくると部下が任せておいた構造計算データを大山のコンピューターに送って来ていた。

その結果を見ると大山は直ぐに部下達を呼び寄せた。

「悪いが機関出力と機関重量はこの数値で計算しなおしてくれ・・・。」 大山は部下達にぶっきらぼうに言った。

設計変更は何時もの事なので部下達は別に気にしなかったが、その数値を見た部下の一人が不審そうに
たずねた。

「大山技官・・・。この数値、間違っていませんか? 重量が 1/4 で 出力は8倍ですよ。 出力/重量比が
32!なんて信じられません!」

大山は悪戯っぽく笑うと一言言った。 「ガ・ミ・ラ・ス!」

それを聞いた部下達は直ぐに全てを悟った。 そして直ぐに自分が果たすべき仕事に向かって散っていった。

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1週間もすると大山の元に計算結果が届き始めた、しかし、それを見た大山は何かに彼が気付いた時の癖が
出た。

髪の毛を掻き毟ってフケを飛ばすのである、当然、彼の机はフケまみれだったが、もう誰もそんな事を気に
するものは居なかった。

彼は腹心の部下である森田技術大尉を呼ぶと「大和」型の主武装を反物性ミサイルからフェーザー砲に
切り替えられないか、相談した。

「フェーザー砲はガミラスに適いませんよ。 やはり、「やまと」の主武装は反物性ミサイルでなければ。」 

森田は否定的だった。

「しかし、森田、反物性ミサイルはいくら資材を積んでも戦闘中は製造が間に合わない、フェーザーなら
エネルギーさえあれば戦闘し続けられるんだ。 幸いエンジンの出力の大幅アップは目処が付いた。 
可能性はないだろうか?」

森田もこの「やまと」型を「箱舟」として使う場合、反物性ミサイルを主武装とする事の非合理性には気が
付いていた。

だが、主武装をフェーザーに変えると言う考えまでは浮かばなかった。

確かにフェーザーに主武装を変更すれば、反物性ミサイルの搭載量を大幅に減らせる、それは何より、装甲を
大幅に増やせる事を意味していた。

沖田提督が言っていた様に、移民の搭載は考えない方針だったので積むべき荷重(ペイ・ロード)は変わらない、だとすれば、装甲を大幅に増やせる事は「やまと」型の生存性を大幅に高める事になるのだ。

森田は大山のコンピューターを借りて新エンジンでのフェーザー砲の出力アップの可能性を計算してみた。

だが、その結果は否定的だった。 ガミラスはどうやって問題を回避しているのか、解らなかったが、地球で
手に入れられる材料でフェーザー砲を作っても今の1.5倍の出力が限界で、それではガミラス戦艦とほぼ
同等の性能にしかならない事が予想された。

しかも、フェーザーの砲としての寿命(命数)は大幅に減る事が解った。

これでは太陽系内での戦闘だけを考え、地球圏での補給や修理が可能であるなら、それでも良かったが、
他星系まで長距離の航行をしなければならない時、この欠点は重大であった。

だが、大山はこの可能性をどうしても捨て切れなかったので、森田に「やまと」型フェーザー主兵装試案を
作る様に命じた。

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 実は大山は元々、「箱舟」計画には反対であった。

だから本心ではガミラス冥王星基地を叩ける性能を持った戦艦を2隻造って戦隊を組ませ、ガミラスを
太陽系から追い出す事を夢見ていた。

しかし、そのままではガミラスによって人類や地球の生命が滅ぼされる事に変わりは無かった。

だからこそ、ガミラスを追い出した後、地球を再生させる、それが彼の意思だったのである。

そんな大山の思いを察してか、森田技術大尉の作ってきた「やまと」型フェーザー砲主兵装試案は驚くべきもの
だった。

前に大山が伊地知参謀長に提示した反物性ミサイル主兵装案と基本的な構造・配置は変らなかった。

細長い船体の中央部に艦橋がそびえ、その前部の甲板ににVLS(垂直発射方式)の反物性ミサイルセルが
並ぶ、前後部の軸線方向に多数のミサイル発射管社が覗き、そして艦底は着陸床を兼ねて最大厚の装甲とし、戦闘時は敵にこの装甲板を向け続けつつ、この装甲の陰から敵に攻撃を加える設計であるのは同じだった。

しかし、森田案では今、地球で製造可能な最大口径18インチのフェーザー砲を3連双2段の砲塔にして2組
用意、それを右舷と左舷に振り分けて搭載、最大厚の装甲ごしに発砲出来る様にしていた。

この配置の場合、装甲を敵に向け続ける限り、前後、左右に死角は存在しない。

当然、反物性ミサイルVLS(垂直発射セル)の数は半分以下に抑えられていた。

この設計は欧州連合の装甲艦、「シャルンホルスト」級と同じ思想であったが、「シャルンホルスト」級は
通商破壊艦として常に戦闘をリードする事を前提としてこの思い切った装甲、武装配置を取っているのに
対し、「やまと」型はなるべく戦闘は避けて脱出するのが使命で戦闘はやむなくするものであったため、
どうしても戦闘は敵にリードされがちになるので大山はこの装甲配置極限案には疑問を持った。

前に自分が反物性ミサイル主兵装案でこの装甲配置極限案を使ったのは反物性ミサイルのVLSを極力沢山
積む為の妥協案だったからだ。

その事を森田に話すと森田は言った。「だからこそ、『やまと』型は2隻必要なのです。 互いに不利な方向を
カバーしつつ、航行する、それがこの案の大前提です。 それと、もう一つ、今までに無い装備があります。」

彼がそう言って指差したのは艦首だった。

通常、今までの地球艦は紡錘形をしていて艦首は尖っていた、しかし、森田の設計では艦首の下半分は
今までの地球艦の様に紡錘形の先端をもっていたが、上半分は大きく花が開いた様に拡がっており、
その中央には巨大な穴が開いていた。

「これは超大型荷電粒子砲です。発射口の部分の内径は2mですが、ロート型に広がった誘導部をその後に
持っています。」

「これは・・・、もしや、敵艦隊に包囲されかかった時、血路を開くための決戦兵器か!」 大山は驚いた。

「ええ、荷電粒子砲は地球では戦闘時、デブリを生みやすい兵器としてここ30年くらい使われなくなって
いますが、狭い宙域ではなく、広い宙域で使用する分にはデブリの発生は何の問題もありません。

また、ロート型に拡がった誘導部でビーム方向をコントロールしてやれば艦隊の様に広がった敵にも
対処出来ます。

12門のフェーザー砲とあわせれば、前方方向の破壊力はガミラス艦を上回ると考えられます。

しかも、2隻同時の攻撃が可能ですから、この戦隊の前に立ち塞がる物はたとえそれがガミラス艦隊と
いえども原子の雲にかえるでしょう。」

大山は森田の案は勝れていると思ったが、既に2隻の戦隊行動を前提としている点に不安を持った。

また、フェーザー砲の妙数が少ない点も未解決のままだった。

総司令部ではたぶん、2隻の戦隊運用か、1隻づつ反対方向に脱出させ、生存率を高める方を選ぶか、
まだ決めかねているだろう。

設計で造艦部が主導権を握る事も考えたが、大山はそうした政治に係わる決断をするのは苦手だった。

彼はもう一人の腹心、荒川技術少佐を呼び出した。

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 真田は後から大山が「これだけ解った。」と言って送ってきた、ガミラスのエンジン解析結果みていた。

さすがの大山もワープの原理や機構までは解析出来なかった様だ、彼はエンジンを小型・大出力化する事を
重点に解析していったのだ。

それが今の「箱舟」計画にまず必要とされる技術だったからだ。

だが、その報告書の中に真田は気になる箇所を見つけた、大山は最初、当然、ワープの秘密を探ろうと
このエンジンの解析を始めたはずだった。

しかし、その報告書の中ではこのエンジンの機構には地球で解っている超光速ワープ理論で理解出来ない
部分はほとんどないと言っていたのだ。

確かに真田が知っている理論物理の分野でもワープは可能とされ、その技術開発をしている内にガミラスの
侵略が始まり、防戦一方の地球軍にはそんな研究をのんびりやっている暇はなかっただけだった。

ただし、このエンジンの持っている理論上のワープ可能距離は数万キロが限度でそれ以上はどう見ても
無理だと大山は結論付けていた。

しかし、現実にガミラスは宇宙の深遠を渡って侵略に来ている、破壊されたガミラス艦から割り出された
航続期間はせいぜい数ヶ月だった。

この矛盾を理解する手段は地球には無かった。

これはガミラス帝国の構造体質に起因するものだったからである。

ガミラスはその歴史上、記録が残る時代から宇宙飛行を行い、近隣の星系に侵略の手を伸ばしていた。

そして、降伏した星を自らの内に取り込む融和政策を採っていた。

しかし、征服された側が何時までも大人しくしているとは限らず、反乱も絶えないのが実情だった。

そんな、いつ裏切るか、解らない連中に強力な決戦兵器を渡せないのは当然だったが、使用させる艦艇にも
制約を設ける必要があった。

反乱軍に駆逐型デストロイヤーはおろか駆逐型ミサイル艦の様な小船でも奪われて束になって襲ってこられ
てはたまったものではない。

そこでガミラスは大型戦艦未満の駆逐型とよばれる汎用戦闘艦は全て1隻では長距離ワープが出来ない様に
設計していたのだ。

1隻でも小ワープは出来るからワープの出来る艦が得意な一撃離脱戦法(ヒット・エンド・ラン)は使える。

しかし、少数の脱走者が1隻の汎用戦闘艦を乗っ取っても遠くに行く前に大ワープの出来る追跡艦隊に
追いつかれ始末されるという訳である。

ガミラスが殆ど単艦で行動せず、常に艦隊を組んで行動しているのには敵に対する威圧の効果もあったが、
こうした個艦能力の制約という面が運用者の心理的な負担となるため、彼等がそれを嫌ったためだとも
言えた。

真田はそんな事は知るよしもなかったが、理論的には可能だが、技術的には無理だという、現実が今度は
彼の技術者魂に火を付けた。

彼は制服の上着を脱ぐと、ガミラス・エンジンが保管してある室に向かって飛び出していった。


                                                     ヤマト発進まで787日
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# by YAMATOSS992 | 2012-05-31 21:00 | 本文 | Comments(0)
シュルツは今月の遊星爆弾命中成績表を見て渋い顔をした。

「ガンツ、地球側の遊星爆弾迎撃施設や迎撃基地を殆ど叩いたと言うのに60%の命中率だというのは
どういう訳だ。 命中率が悪すぎるぞ! 現場がたるんどるのではないか?」

「司令、今、遊星爆弾を発射している現場の技術は芸術的なものに育っています。

それこそ、フェーザー砲で隣りの敵艦を撃ちぬく位の精度です。

命中率が悪いのは悔しいですが、地球側の迎撃が的確だからです。

浮遊大陸哨戒基地から発進したパトロール艇が得た情報によると地球側は衛星軌道上に新型駆逐艦を
常駐させ、遊星爆弾の飛来とともに行動、迎撃している様子が観測されています。

ですから、この軌道上の駆逐艦群を叩く必要があると私は思います。」ガンツは再び地球圏の奥深く、
艦隊を送り込む作戦を提示した。

「確かに、この駆逐艦隊は排除する必要があるな。 だが、前の様にこの艦隊は地球本土に基地を
持っているのではないか?

だとしたら、その基地も叩かないと結局、いつまでもイタチゴッコでケリはつかないぞ!」

ガンツはゴクリと唾を飲み込んだ、敵本星に対する攻撃、それもまだ、戦力を大きく残している相手に
対する攻撃だ。

こちらもある程度の損害を覚悟しなくてはならない。

木星会戦並の戦闘規模になる事が予想された。

ガミラス艦隊は再建されてはいたが、シュルツの直接上司のゲールは今度、艦隊を大きく傷つけたら
シュルツやガンツを許さないであろう。

土星会戦、木星会戦、地球ー木星間の通商破壊戦、土星ー冥王星間の交通保護戦、どれも少なからず
艦隊に損害をだしたが指揮していたのは生粋のガミラス人であり、名将の誉れ高い、レッチェンス大将だった
から許された損害だったのだ。

もし、仮にゲールが許してもガミラス大本営は殖民星であり、被征服星であるザルツ出身の兵で固められた
冥王星前線基地そのものを無能者の集まり、サボタージュをする反逆者としてシュルツやガンツのみならず、
1兵卒にいたるまで処分する恐れが高かった。

「何を青い顔をしている。 お前は今はガミラス軍人だが、誇り高いザルツ軍人でもあるのだぞ! 
ガミラス人みたいな顔をするな」 シュルツはガンツをからかった。

「ですが、司令、敵の本拠を突くのですぞ!こちらの損害もただでは済みません!」ガンツは焦っていた。

「果たしてそうかな?」シュルツは机に両肘をついて掌を顔の前で組んだ姿勢のまま言った。

「ガンツ、お前がガミラス本星、大本営に勤めていたとして、もし、いきなり、少数の艦載機による攻撃が
あったらどうする?」 そう言うとシュルツは悪戯っぽく微笑した。

ガンツは質問の意味が解からず当惑したがそれでも精一杯の知恵を絞って答えた。

「防空隊に迎撃を命じますが・・・。」

「それだけか?」 シュルツがたたみ掛けるとガンツは慌てて付け加えた。

「艦載機の母艦を捜させ、それも排除、撃沈します。」

シュルツはウンウンと微笑しながら頷いた。

「では、話を変えて、もし、攻撃されたのがこの冥王星前線基地だったら、どうする?」

「この基地は浮遊大陸哨戒基地から発進したパトロール艇が木星軌道から土星軌道を固めています。

更には、深宇宙方面にも警戒艦を常備配置しているのでその様な奇襲を受ける事はありません。

充分な時間を持って艦隊で迎撃する事が出来ます。」

ガンツは何を当たり前の事を今更聞くのかとシュルツの真意を図りかねた。

「そうだろう、意外と心臓部の警戒は薄いものだよ。  奇襲があってから対応する羽目になる、これは
大ガミラスとて変わらん、

たぶん、今までの戦いぶりからして地球軍も前線にいる部隊は勇猛果敢だが、戦線後部にいる連中は
その場、その場の対応しか出来まい。」

シュルツがそう思ったのは火星の地球軍秘密基地を攻撃した時だった。

自分達が攻撃しているのは地球を狙う遊星爆弾だという、固定観念があり、遊星爆弾で自分達が
攻撃された時、その攻撃の意味が判らず、何も出来ないまま、遊星爆弾の集中爆撃を受けて火星秘密基地は
崩壊したのだ。

「では司令、今回の作戦、もう腹案があるのですね。」ガンツは今までとはうって変わったシュルツの積極的な
対応ぶりに何があったのだろうと訝りながらも喜びを隠し切れなかった。

「うん、それでだな・・・。」シュルツはガンツに作戦計画の腹案を話し始めた。

そして、新作戦の準備として、再び戦略偵察の任をおびて高速宙母が2隻、発進して行った。

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 高速宙母は地球に接近するにあたり、ワープを最大限に用いた。

幸いな事に宇宙空間を航行する艦艇と違って天体は規則正しい法則に従って太陽の周りを自転しながら、
公転している。

その未来位置を計算するのは容易だった。

だから、2隻の高速宙母は1隻は北極上空へ、もう1隻は南極上空へワープ・アウトした。

木星会戦の時のガンツ隊の様な大気圏上層ギリギリを狙う、危ないワープではなく、大気圏から充分に離れた
余裕を持ったワープ・アウトだったが、それでも地球の早期警戒網は2隻の宙母を探知出来なかった。

シュルツの言うとおり、地球の目は冥王星方向からくる遊星爆弾に向いており、自らの早期警戒網の
ど真ん中にガミラス艦がワープ・アウトする事態など全く、考慮していないのは明らかであった。

古代守に「ガミラス艦はワープ出来る事を忘れてはならない・・・。」と注意した早期警戒艦「たかお」の艦長、
永倉大佐ですら、ガミラス艦は地球の早期警戒網の外にワープ・アウトしておもむろに警戒網を潜って
潜入すると言う固定概念を持っていた。

その結果、やすやすと地球の両極の上空に専位した2隻のガミラス宙母はその艦載機、42機を放った。

ガミラス高速宙母の艦載機の定数は1隻あたり、攻撃機、20機、偵察機1機であったが、今回はその艦載機の
全てを偵察機にして短時間で地球の地表をくまなく偵察する計画であった。
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しかし、いくら不意を突かれたとはいえ、地表の上空を多数のガミラス機に蹂躙されたままでいるのは
地球防空隊にとって耐え難い事であり、緊密な連携は出来ないものの、各地で防空隊がスクランブルを
かけてガミラス偵察機の迎撃に上がってきた。

だが、その時点でガミラス偵察機の任務は殆ど終わっており、偵察結果も自らの母艦にデータ送信した後で
あった。

ガミラス宙母はデータを回収し終わると、地球防空隊に追いかけ廻される偵察機を見捨てて離脱にかかった。

偵察機の機上ではガミラス・パイロット達が皆、一律に離脱する宙母の方を向いて敬礼していた。

そう、彼等は地球防空隊に追い掛け回されているのではなく、防空隊を宙母に向かわせない様、引き摺りまし
ていたのだ。

離脱する宙母の艦長の目には涙が浮かんでいた、これは全て予定の行動だったのである。

宙母2隻は帰りがけの駄賃として月の周りを1周して最後の偵察データを取るとすぐさま、ワープに入り、
地球圏を脱出していった。

そして、宙母が月軌道に達した頃を見計らって生き残っていたガミラス偵察機は一斉に自爆した。

これは地球人に偵察機が有人機ではなく、無人機であると思わせ、偵察に来たのが宙母で編成された
機動部隊である事を隠蔽するためであった。

ガミラスにとって有人航空兵力の有用性が前2回の戦闘で明らかになったための隠蔽工作であったが、
折角育てた有能なパイロットを犠牲にする今回の様な作戦はさすがにガミラスでも問題視され、偵察機を
無人化する方向で新たなる開発が行われる事となった。

**********************************************

 ガミラス冥王星前線基地は木星会戦の時の様な喧騒を再び迎えていた。

42人の勇士の命と引き換えに得られた地球本土及び月面上の遊星爆弾迎撃設備や駆逐宇宙艦の
発進基地を叩くのだ。

ただし、今回の出撃の主役は駆逐型ミサイル艦であった。

駆逐型デストロイヤーは艦隊戦では大きな力を発揮するが、こと地表の拠点攻撃などにはかえって
駆逐型ミサイル艦の方が向く。

もちろん、駆逐型デストロイヤーも作戦には参加するが、あくまでも主役は駆逐型ミサイル艦であり、
駆逐型デストロイヤーはその支援、といえば聞こえは良いが、とどのつまり護衛をする事になってしまった
のである。

これは普段の艦隊戦の時とは立場が逆転しており、護衛艦を戦艦で護衛する様なものであった。

駆逐型デストロイヤーの艦長達は面白くなかったので士官食堂で酒を飲んでくだを巻いていた。

そこにガンツ中佐が入って来た。

酒をのんでいた連中はガンツの姿を見つけるとその周りを取り囲んで愚痴を言った。

最初は受け流して自分の食事をしていたガンツであったが、一人の艦長が「あんな小船共に何が出来る!」と
言った所で立ち上がり、その男の顔をしたたかに殴った。

たちまち、男は吹っ飛び、机や椅子をなぎ倒して倒れた。

「やりやがったな!」くだを巻いていた男達は一斉にガンツに飛びかかろうとした。

「ついてこい!」ガンツは普段、柔和な、場合によっては頼りなくさえ見える風采の上がらない男であったが、
今、男達の前にスックと立った姿はそんな雰囲気は微塵も無い、叩き上げた軍人の姿だった。

ガンツはそれ以上、何も言わず、歩いてゆくと、エア・ロックの前で簡易宇宙服を身に着け始めた。

艦長達が躊躇しているとお前たちも付けろと無言でうながした。

一行がエア・ロックを出て基地の片隅に行くとそこは墓地だった。

今までの戦闘で戦死した勇士を葬っているところだ、もっとも、戦場は宇宙なので遺体も遺品もなく、
ただ名前だけがそっけない金属板に刻まれているだけだったが・・・。

ガンツはその巨大な金属の墓碑ではなく、その隣りの小さい墓碑の前に止まると姿勢を正し、最敬礼をした。

一人の艦長がその墓碑に書かれている言葉を読んで、「あっ!」と声を上げた。

そこには、42名ものガミラス兵の名前とその所属が高速宙母航空隊である事が記されていた。

それは、帰還を期さない今回の偵察任務に殉じたパイロット達の墓碑であった。

作戦行動の準備で基地中が喧騒の中にある時、この様な墓碑を作っている暇などあろうはずがない・・・。

「そうだ、これは彼等が自分達で残していったものだ。 お前達も艦長を任されている身だろう・・・。
 これに恥じない行動をとれ!」

ガンツは一喝するとそのまま後も見ずに基地の屋内に戻っていった。

ヘルメットは彼の息で曇り気味であり、中は良くみえなかったが、ガンツの頬には確かに涙の跡があった。

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 木星空域には撃沈された早期警戒艦「シドニー」に変わって、欧州連合の早期警戒艦「ドーセットシャー」が
任務についていた。

「ガミラスめ、調子に乗りやがって、遊星爆弾の投射数を増やしてきやがった。」情報士官が独り言の様に
いった。

「どうした、ジョー、また遊星爆弾を探知したのか?」 艦長が問いただした。

「ええ、今までの最大投射数を遥かに越えます。 今のところ約20発ですが、次々と新しい遊星爆弾が観測出来ます。

途切れる様子はありません。 これは地球圏にいる突撃型駆逐宇宙艦のみならず、艦隊型でも、さらに
旧式な艦でも総動員して迎撃しないと間に合わないかもしれません。」

「何! それはまずい、直ぐに防衛本部へ警報とデータを送れ!」 艦長がそう命令し、送信が終わるのを
待っていた者がいた。

浮遊大陸哨戒基地からやって来ていたパトロール艇である。

パトロール艇の艇長は「ドーセットシャー」の警報とデータ発信が終わるのを待って早期警戒艦でも
探知出来ない遥か遠方で待機していた地球圏奇襲艦隊に出撃開始の合図を送った。

次の瞬間、「ドーセットシャー」はガミラス艦隊の只中にいた。

早期警戒艦「ドーセットシャー」は元々、重巡航艦であり、連双フェーザー砲塔を4基持っていたが、
早期警戒艦に改装するにあたり砲塔2基を降ろして、探知設備設備を増強していた。

しかし、ワープの出来るガミラス艦は「ドーセットシャー」が探知出来ない遠方からパトロール艇に誘導されて
ワープ・アウトすると同時にフェーザー砲の槍ぶすまを「ドーセットシャー」に浴びせた。

ただでさえ、地球艦はガミラス艦のフェーザー攻撃に弱い、しかも古いタイプの巡航艦はいかに重巡と言えども
戦艦より大幅に防御力が劣る。

たちまち、「ドーセットシャー」の戦闘能力は奪われた。

しかし、丁度、「ドーセットシャー」の第1砲塔の真前に駆逐型ミサイル艦が1隻、差し掛かってしまった。

駆逐型ミサイル艦の装甲は薄い、地球の弱いフェーザー砲でも撃ち向ける位であった。

「ドーセットシャー」の生き残り砲塔員はその幸運に感謝しつつ、最後の力を振り絞って駆逐型ミサイル艦に
1撃を浴びせた。

だが、その時、ミサイル艦を護衛していた、駆逐型デストロイヤーが1隻、2隻の間に割り込んだ。

「ドーセットシャー」と駆逐型デストロイヤーは本当に舷側を擦るほど接近していた。

ここまで接近すると、いくら弱いといってもフェーザー砲である、駆逐型デトロイヤーは装甲を打ち抜かれて
しまった。

ただ、その駆逐型デストロイヤーにとって幸運だったのは打ち抜かれたのが居住区だった事で、開いた穴は
直ぐに隔壁を閉鎖する事でそれ以上のダメージを負う事はなかった。

助かった駆逐型ミサイル艦の艦長は直ぐに自艦を身を挺して救ってくれた、駆逐型デストロイヤーに感謝の
通信を送った。

「なあに、何時もは君等に守ってもらっている身だ。 たまには立場が逆転する事もあるさ。」

駆逐型デストロイヤーの艦長は笑って応えたが、その頬にはガミラス式の絆創膏が貼られていた。

**********************************************

シュルツの予想通り、地球本土の防空はザルであった。

今、地球側の迎撃部隊は全て冥王星方面から飛来する30数個の遊星爆弾に注意を奪われ、月軌道内、
地球絶対防衛圏内へワープ・アウトしたガミラス艦隊に気が付かなかった。

ガミラス艦隊の内、駆逐型ミサイル艦40隻が地球本土に、10隻が月面に攻撃に向かった。

また、駆逐型ミサイル艦を護衛してきた5隻の駆逐型デストロイヤーは遊星爆弾迎撃に向かって待機していた
駆逐宇宙艦隊に背後から襲い掛かり、それを全滅させると地球衛星軌道上にある人工構築物を手当たり
次第に破壊した。

1時間後、地球の表面に露出していた宇宙船基地は一つ残らず破壊されていた。

月面の裏に設けられていた駆逐宇宙艦基地も同様だった。

そして、最後の仕上げは囮として発射された遊星爆弾30数個であった。

この遊星爆弾群は地球の迎撃駆逐宇宙艦隊を誘き出すのが主任務であったが、迎撃されなければ
地球表面地下に設けられた地下ドックの類を爆撃する様、プログラミングされていた、辛うじて残っていた
地下ドックや基地も破壊しつくし、このガミラスの制宙作戦(ファイター・スイープ)はまるで軍事教本に出て来る
課題の様に完璧に行われたのだった。

だが、そんなガミラスも大きな見落としをしていた。

それは月の表側(地球から見て)にあった地下工場施設を見落とし、破壊し損ねた事である。

多分、ガミラスにしてみれば、常に外側を向いている月の裏側(地球から見て)こそ、艦隊基地であり、
地球圏防衛の要だと考えたのだろう、攻撃前の戦略偵察の時、一応、月の表も偵察していたのだが、
艦隊基地がないと解ると、攻撃目標から外してしまったのだ。

また、月の裏側には廃艦駐機場があり、それがいかにも艦隊基地に所属する大駐機場に見えたのかもしれ
ない。

ともあれ、地球は何もかも失うと言う最大の悲劇だけは避ける事が出来たのだった。



                                                     ヤマト発信まで833日
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# by YAMATOSS992 | 2012-05-30 21:00 | Comments(0)
 その部屋には4人の男が机を挟んで対峙していた。

どれ位の時間が流れたであろうか、それでも男達は誰一人、口を開こうとしなかった。

かすかにミシッという音がして男達の上にホコリが舞い落ちてきた。

「また、一発命中したか・・・。」一人の男が重い口を開いた。

どこか比較的近い場所に遊星爆弾が命中したのだ。

地球軍は絶対防衛線を月軌道に引き、突撃駆逐宇宙艦による迎撃を行って効果をあげていたが、火星軌道の
防衛システムを失って以来、ガミラスの遊星爆弾はたまにではあるが地球本土を犯し始めていた。

「今のままではいずれ人類は絶滅する・・・、判ってくれ!大山! 『箱舟』は最後の希望なのだ!」もう一人、
別の男も加勢した。

「だからと言って、今、計画中の新型戦艦『やまと』、『むさし』の計画をやめて地球脱出のための・・・
『箱舟』とやらに計画変更するのは俺は反対です。」

「いいですか、 『箱舟』は移民のための船だ。 人員や各種動植物のDNAデータを出来るだけ多く搭載する
必要がある。

 また、今の状況では『箱舟』を衛星軌道上で建造するとガミラスに発見されて攻撃を受ける可能性が
高くなります。

従って地球の地下ドックで秘密裡に建造する必要がありますが、そうすると重力があるから無闇に巨大な船は
作れない。

当然、搭載力には大きな制限が出て来る、目的の荷物があるからそんなに多くの武装を積むわけには
いかないのです。

そして一番肝心なのは我々がまだ自分の太陽系すら出た事がない事です。

いいですか、ガミラスはワープと思われる超光速航行技術を持っているんですよ!

『箱舟』は有重力下で建造可能な最大の船になるでしょうから、地球を発進すれば必ずガミラスに発見され
ます。

陽動作戦を行って隠蔽する事も不可能ではないでしょうが、いずれ発見されるのは時間の問題です。

そして、一度発見されたら、超光速航行の出来ない『箱舟』は間断のないガミラスの攻撃に晒されます。

いくら強力な武装と防御力を持っていても撃沈されるのは時間の問題です。」

大山と呼ばれた男は心の奥にしまっていた思いのたけをぶちまけた。

そして、遠い目をして天井を見上げた。

「そう、この『箱舟』は1949年にそこが死地と判っていながら沖縄に出撃した日本海軍の超戦艦『大和』と
そっくり同じ運命を辿るの事でしょう。

人類にとっては僅か、数週間、寿命が延びるだけなのです。」

「貴様!司令部を馬鹿にするのか!」伊地知参謀長が大山技術大佐を睨みつけた。

「そんなつもりはありませんよ、ただ、俺は地球の事は地球のなかで納めるべきだと思うのです。」

「どういう事かね? 大山君?」先程、一番最初に口を開いた男、藤堂平九郎長官が聞いた。

「地球を脱出した人類は何処にいくのですか? ・・・ まぁ今は決まっていなくても何処か別の星系で居住
出来る惑星を捜して移民するのでしょう・・・。 ですが、それってガミラスのやっている事と基本的には
同じですよね。」

「全く地球と無関係な生態系に地球の生態系を無理やり割り込ませるわけですから、軍事力を使わなくても
これは立派な侵略です。」

「なんという事を! 貴様! 軍法会議にかけるぞ!」再び伊地知参謀長が吼えた。

「伊地知君、静かに。大山君、君の言う事はもっともだ。 だが、大山君、我々、人類はいや地球の生命は
何んとしてでも生き残らなければならない、これは地球に生命が発生して以来、そのDNAに刻み込まれた
至上命令なのだ。

我々、今生きている人類は甘んじて『侵略者』の汚名を着よう、それが我々、今を生きる者の責任なのだ。」
藤堂は強い意志を持って大山俊郎技術大佐を見詰めた。

藤堂は思った、<ガミラスが遊星爆弾の示威攻撃を仕掛けて来た時、地球に『絶滅か、奴隷化か』を
要求してきた。

あの時、『奴隷化』を受け入れていたなら、今の苦境は無かったかもしれない・・・。 しかし、人類のプライドに
掛けて『奴隷化』などと言う要求は呑めるものでは無かった。

その結果、今度は人類が『侵略者』になる・・・、本当に人類は抗争好きな宇宙の癌なのかもしれない・・・。>

いままで黙って話を聞いていたもう一人の男、沖田十三が口を開いた。

「大山君、今、君が計画している新戦艦は『やまと』、『むさし』の2隻だが、『箱舟』計画に切り替えるとしたら
どうするのかね?」

「それは『やまと』一本に絞ります。超遠距離、超長時間の旅を前提とした設計が必要になってきますから
今の『やまと』、『むさし』の建造資材を全部1隻に絞っても間に合うかどうか、判りませんから・・・。」 大山は
当然の如く応えた。

しかし、沖田は驚くべき提案を出した。

「それは目一杯の移住民と各種生物のDNAを運ぶと仮定した時の場合じゃろう、移住民もDNAだけにして
乗組員はその船を維持、ガミラスと戦闘出来るだけの最少人数に絞ったら、2隻作れるのではないかね。」

「沖田君!君は今生きている人々を見捨てるというのかね!」伊地知参謀長はど怒髪天を突く勢いで怒った。

沖田は静かに言った。 「誰を選ぶのかね?」 「えっ・・・。」伊地知は言葉に詰まった。

今の地球の実力では重力下で建造可能な宇宙船では武装なしで移住者だけを運ぶとしても最大限に
見積もっても1000人の人間を運ぶのがやっとだった。

それが、ガミラスと戦闘しながら航行するとなると更に人員は絞られてくる、冷凍睡眠等の技術を使っても
武器やミサイル等の消耗兵器の製造設備やその資材の格納場所などを考えると一度に運べるに人数は
約300人が限界だった。

「全世界から、たった300人の人間を選ぶ事など出来はしない。 むしろ、この事を発表しただけで地球陣営は
内部分裂する。」

伊地知参謀長は言葉に詰まった。

<確かに、これは一時の感情で処理できる問題ではない・・・。>石頭で通った伊地知であったが、流石に
沖田の言い分はもっともだと思った。

「しかし、『箱舟』を2隻作るというのはどういう意味があるのかね。」藤堂長官が沖田に尋ねた。

「戦艦は1隻より同型艦がもう1隻あった方が色々と運用に幅が出てくるのです。」

沖田はまだ戦闘艦が海の上を走っていた時代の例を引いた。

日本の明治時代、日露戦争の山場、日本海海戦に日本海軍が大勝した事の一環に戦艦6隻、
装甲巡洋艦6隻をそれぞれ準同型艦として性能を揃えた事があった。

性能が揃った艦隊は提督の意志のもと、まるで1隻の船の様に行動する事を可能とする、対して
ロシア海軍の戦艦隊は性能がバラバラで統一した指揮をするのには全く向いていなかった。

また、海軍軍縮条約が大海軍国の間で結ばれようとした時、日本海軍は世界初の16インチ(正41センチ)砲、
戦艦「長門」と同型艦「陸奥」の保有を強行に主張したが列強は連携して「陸奥」が未製であるとして、
廃棄を迫った。

だが、日本はアメリカや英国に新設計の正16インチ(40.6センチ)砲戦艦の建造を認めてまで戦艦「陸奥」を
保有する事に拘った。

これはいかに強力な戦艦でも1隻では本来の設計値以上の性能は出せないが、同型艦が2隻いてその2隻が
旨く連携して作戦する時、設計には出ない効果をあげる事が知られていたからだ。

今度の場合、戦闘を目的とした航行ではないが、2隻でお互いをカバーする様な戦術を用いればかなり
生存性を増す事が出来る。

また、1隻づつ、全く別の方向に脱出すれば、ガミラスの攻撃力を半分にする効果があると考えられるのだ。

「大山君、この方向で作業を進めてくれんかね。」沖田は大山の方に強力な意志を秘めた視線を向けた。

下を向き両手を直角に挙げて負けたという意志表示をした大山はそれでも言った。

「脱出戦艦『やまと』と『むさし』を設計するのは承知しました。  

但し、条件があります。」

”条件”という言葉に伊地知だけでなく、沖田も藤堂も訝しげな表情になった。

しかし、大山は吹っ切れた顔でその”条件”を口にした。

「俺はどんな形であれ、脱出船には乗りません。 地球に残って最後まで生存の努力をします。 

それで良ければ、この計画に参加しましょう。」

「それは困る、新しい船だ、どんな不具合が起こるか判らない! 最上級の技術者が乗っていなければ
心配だ。」伊地知参謀長が再び意義を唱えた。

しかし、沖田はそれを抑えて大山の方に向き直って言った。

「良く言った。それが男の言葉だ。 伊地知君、設計する事とそれを運用しつつ、手直しする事はまた別の
技術だ。 

それは修理の分野の仕事と考えてくれたまえ。 いいですな、長官。」

藤堂も無言で頷いたが、次に発した言葉は少々、大山を腐らせた。

「それでは、この『箱舟』計画の実務責任者は伊地知参謀長とする。いいね。沖田君、大山君、」

「はっ、謹んでお受けします。」伊地知参謀長がシャチホコばって敬礼した。

唖然とする大山の肩を沖田は苦笑いしながらポンと叩いた。

**********************************************

 新型戦艦「やまと」型はガミラスとの最初の戦闘であった土星会戦の戦訓を基に設計された初めての戦艦
だった。

地球軍の艦艇はガミラス艦に比べると小型でその分、機関の出力が劣り、当然の結果として光速兵器、
ビーム砲やフェーザー砲の出力が劣り、より接近しなければ効果を挙げる事が出来なかった。

また、装甲もガミラスの方が勝れており、ガミラス艦の残骸を調査した結果、装甲の厚さはむしろ、
ガミラス艦の方が薄いくらいであった。

敵のビームがこちらの装甲をブスブス貫けるのに、こちらのビームは相手の装甲に弾き返され、相手の装甲を
貫けるまで接近するのは至難の業だという事が一番の問題であったのだ。

ただし、ミサイルは地球側が勝れており、単なるエネルギー供給式の爆発型ではなく、小型ブラック・ホールを
利用した爆縮型で相手の装甲の素材が何であろうと小型ブラック・ホールのシュヴァルツ・シルト半径内に
入った物は全て吸収、穴を開けてしまう特性はガミラスも知らないものであった。

このミサイルは「反物性ミサイル」と呼ばれ、ガミラス艦との戦闘が予想される艦艇には必ず積まれていた。

当然、新型戦艦「やまと」型もその武装は大半「反物性ミサイル」であり、効果の薄いフェーザー砲、
レーザー砲は小口径にして敵ミサイルなどを防ぐ、近接防御火器として装備する計画であった。

大山造艦技官は悩んでいた。

元々、「やまと」型は冥王星前線基地を攻撃するために設計していた艦である。

その航行期間は長くても数ヶ月、短ければ数週間であった。

だからこそ、主武装を反物性ミサイルにして艦内の容積の殆どをその格納に使えたのである。

しかし、今度はいくらDNAの情報データだとはいえ膨大な量のペイロードが加わる事になった。

当然、ミサイルの搭載量は減る、しかし、反対に航行期間は年単位、ないしは数百年単位になるかもしれな
かった。

頭を抱える大山の基に古くからの因縁がある男、真田志郎が訪ねてきた。

真田は大山の悩みを聞くと大山を造船部門の部屋から連れ出した。

そして司令部の会議室の一つに大山を連れ込むとその部屋の監視システムを切った。

これは藤堂司令長官や沖田提督も知らないパス・ワードを知っていたから出来た事だ。

彼は仕事柄、司令部はおろか、世界中のネットワークを管理するサーバー・コンピューターは全てハッキング
して自由に情報が取れる様にしていたのだ。

「お前、これって悪くすると反逆罪だぞ・・・」大山は呆れたが、そうまでして真田が自分に伝えようとしている事の
重要さが良く判った。

「大山、俺達は今までの戦闘で撃破されたガミラスの兵器の調査、分析を行ってきた。

だが、戦闘場所は宇宙、中々、重要な資料は得られなかった。

しかし、ついに殆ど無償のガミラス艦のエンジンを手に入れたんだ。」

大山の背中にドーンとカミナリが走った。

「そ、それで解析は出来たのか・・・。」そう言うのがやっとだった。

ガミラス艦のワープの秘密が解かる! そう考えただけですぐさま、現場へ飛んでいって確認したくてしょうが
なくなっていた。

「残念まがら、俺たちのレベルでは理解出来ない部分が沢山ある、だが、もしかしたらお前ならもう少し
突っ込んだ理解が出来るのではないかと考え、今日は相談に来たんだ。」真田は大山の目をのぞきこんだ。

彼の目はもはや真田の顔を見ていなかった、たぶん捕獲したガミラス艦のエンジンを想像してそれを
見ているのだろうと思った。

**********************************************

 「伊地知提督、基本設計が終了しましたので、1週間ほど休暇を頂きます。」大山は伊地知参謀長に報告
した。

「そうか、そうか、とうとう出来たか、で、わしと家族が乗れる様に特別な配慮をしてくれたろうな。」
やはり伊地知は卑怯な男だった。

しかし、大山はそれを不快に思ったがそれをおくびにも出さず言った。

「それはもちろん、この任務をお受けした時の最初のお約束です。配慮してありますから御心配なく。」

だが、そんな細かい設計が基本設計の段階で盛り込めるものではないのを知っている大山は心の中で
ペロリと舌を出していた。

「基本設計の説明をします。」大山がそう言ってスクリーンに「やまと」の基本図面を写しだした。

「細かい説明は良い。 わしと家族の席は何処に用意してあるんだ。」伊地知は説明をせかした。

「ここです。」大山はいたずら心を起こして艦の中央部、艦橋の構築物が積み重なった最上部の艦長室を指差
した。


「ここは艦長室ではないのか?それにこんな艦から飛び出した所、敵に狙われたら一発でお仕舞いでは
ないか!」伊地知は大山を睨みつけた。

「参謀長、藤堂長官も沖田提督も『箱舟』には乗らないとおっしゃっています。となると、この艦に乗る者で
最高官位を持っているのはあなただ。 艦長はあなたがなるのが当然です。

また、『やまと』は目的の星を見つけられたら着陸しなければなりません。だから艦底部はその他の部分より
ずっと分厚くしなければ艦が持ちません。

しかし、着陸のためだけに分厚い装甲を持つのは非合理的です。 すなわちこの一番厚い艦底部の装甲を
メインの装甲と考え、敵が来る方向に常に向け続ける様にすれば、非常に良い防御装甲になります。

こちらの攻撃兵器は反物性ミサイルですから別に敵に直接狙いを付けなくても装甲の陰から誘導してやれば
充分、用を果たします。

そして、敵に艦底部を向けている時、艦橋構造物の最先端にある艦長室は敵から一番離れた安全な位置に
なるのです。」

大山はいかにももっともらしい事を言ったがその言葉の大部分は嘘ではなかった。

現に欧州連合の装甲艦「シャルンホルスト」級はこの考えで設計されており、大きな実績を上げていた。

伊地知参謀長はこれを聞くとご機嫌で大山に1週間の休暇をくれた、特に『自分が艦長で艦長室が一番安全』と
言うところが気に入ったとみえた。

よくよく、俗物な男だと大山は思ったが、彼もまた生物の本能に従って自分のDNAを残そうとしているだけ
なのだと思い直した。

そして、彼は司令部に併設されていた造船部を後に、非常灯もまばらな地下都市の闇に消えていった。


                                                    ヤマト発進まで1213日
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# by YAMATOSS992 | 2012-05-29 21:00 | 本文 | Comments(0)
 「土星宙域にいる早期警戒艦がガミラスの戦略偵察艦がこちらに向かっているとの情報を送ってきました。」
情報士官が参謀本部に報告した。

参謀本部長、伊地知少将はその報告を聞くと地球衛星軌道上にいる突撃駆逐宇宙艦隊に迎撃を命じた。

彼はガミラスが戦略偵察を行うとしたら地球本土上陸作戦の兆しと決め付けていたのだ。

地球衛星軌道上に配置された突撃駆逐宇宙艦隊は本来、遊星爆弾迎撃の最後の砦だったのだが、
だからと言ってガミラスの戦略偵察を許す訳にはいかなかった。

第5宙雷戦隊と呼ばれるその艦隊の指揮官は古代守少佐だった。

彼はこの任務のため、木星会戦には参加出来なかったので敵艦来襲の報に喜び勇んで飛び出して行こうと
した。

だが、そんな彼に待ったを掛ける男がいた。

「慌てるな。 坊や、 何処に行けばいいのか、本当にわかってるのかい。」血気に逸る古代少佐に声を
掛けたのは地球近傍の宙域の哨戒を担当している早期警戒艦「たかお」の艦長、永倉大佐だった。

「このまま、最後に観測された位置の方向に真っ直ぐ突き進めば出会うんじゃないですか?  大佐。」
古代はムッとして応えた。

「だから若いって言うんだ。 相手はワープ出来るんだぞ。 一直線に来るとはかぎらん。 いや、本気で
地球本土を戦略偵察する気なら冥王星方向から真っ直ぐ来る様な真似はせんよ。」

確かに永倉大佐の意見はもっともだった。

<しかし、それなら俺は何処へ向かえば良いんだ?>古代守は当惑した。

「その為に、俺たちがいるんだよ。  今、地球は月基地と2隻の早期警戒艦がつくる三角形の警戒網を
作っている。

ガミラスの戦略偵察艦がどの方向から来ようとこの警戒網には必ず引っ掛かる、だからその情報に従って
迎撃すれば良い。

幸い、今、来ているのは偵察艦だ。 迎撃するのは2隻の突撃艦で充分だ。 本来はやりたくないが君の
艦隊を3つに別けてそれぞれの警戒艦や基地の指揮に従えば確実に迎撃出来る。」永倉大佐は古代に戦術を
授けた。

早速、古代は配下の突撃艦を3分隊に別けて各早期警戒艦と月基地の配下に置き、偵察艦の襲来に備えた。

しかし、実際は全く違った方向に戦局は動いていったのだった。

**********************************************

 火星のオリンポス山地下大空洞を利用して作られた地球防衛艦隊秘密基地は土星宙域にいる早期警戒艦
「シドニー」からの情報に緊張が走っていた。

しばらくぶりに遊星爆弾の大量投射が観測されたのだ。

その数、10基、もはや艦隊型駆逐宇宙艦、1隻で対処出来る数ではなかった。

幸い、10基の遊星爆弾は固まって飛来してきている、これならば反物質弾頭を付けた大型ミサイルで
迎撃すれば1、2基は破壊、その他は大きく機動をそらせる事が出来る。

火星の衛星フォボスの近傍にあったミサイル工廠から反物質弾頭大型ミサイルが発射され、
艦隊型駆逐宇宙艦「あさぎり」によって誘導、飛来する遊星爆弾を迎撃した。

しかし、「シドニー」は更に10基の遊星爆弾、投射を観測した。
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「ガミラスめ、何を焦っている・・・。」火星秘密基地の司令、鴨志田少将はガミラスが遊星爆弾による
戦略核攻撃を本格化させたものと考え、フォボスのミサイル工廠に更に1基の反物質弾頭大型ミサイルの
用意をさせた。

だが、この遊星爆弾攻撃はいままでの地球に対する戦略核攻撃ではなかった。

2投射目の遊星爆弾群が木星軌道に到達した時、浮遊大陸哨戒基地から発進して遊星爆弾群を待っていた
ガミラス駆逐型ミサイル艦が遊星爆弾を先導するかの様に同速で航行し始めた。

また、そのころ、火星軌道では「あさぎり」が遊星爆弾迎撃の最終工程に入っていたが、ガミラス機動部隊も
また、作戦位置に付き、攻撃機を発艦させていた。

そして「あさぎり」は遊星爆弾群、第1陣の破壊・ミス・リードをさせる反物質弾頭大型ミサイルを命中させる
一歩手前で撃沈されてしまった。

もはや、火星軌道周辺で遊星爆弾、第1陣を防ぐ事は出来ない。

すぐさま、火星秘密基地から地球へ遊星爆弾迎撃失敗の報が飛ぶ、戦略偵察艦の迎撃のために地球
衛星軌道上に展開していた古代守の第5宙雷戦隊は再集結し、冥王星方向へ向けて発進していった。

そのころ、火星では「あさぎり」が撃沈されてしまったものの、遊星爆弾、第2群10基の迎撃をやめるわけには
いかなかった。

また、次の誘導用艦隊型駆逐宇宙艦の発進はとても間に合わない状況だった。

そこで、位置を知られる恐れを犯して早期警戒艦「シドニー」が反物質弾頭大型ミサイルの誘導を引き継ぐ事に
なった。

フォボスのミサイル工廠から長いプラズマ炎を引いて大型ミサイルが発射されていく、だが、ガミラスはこの時を
待っていたのだ。

前回の火星基地、詳細偵察時、遊星爆弾迎撃用大型ミサイルの発射ポイントは発見出来なかった。

そして、論理上、宇宙空間で利用する物をわざわざ重力井戸の底である惑星上で製作、運用するとは
考え難かったため、ガミラス冥王星前線基地の首脳陣は必ず、ミサイルの組み立て発射基地は火星衛星
軌道上にあるとふんでいた。

だから、今回の時間差攻撃はその位置を確かめ、攻撃する意図も含んでいたのである。

土星宙域に陣取っていた早期警戒艦「シドニー」は撃沈された「あさぎり」に変わって反物質弾頭大型ミサイルの
誘導を引き受けるために、全速力で木星宙域に入っていった。

しかし、その姿は木星の浮遊大陸哨戒基地から発進したパトロール艇に発見されてしまったのである。

**********************************************

「ミサイル、遊星爆弾群の衝突コースに乗りました。 あと20分後には命中します。」戦術士官の報告に
「シドニー」の艦長はホッと胸をなでおろした。

「良かった、なんとか間に合ったぞ。このポンコツも捨てたもんじゃないな。」艦長はコンソールをポンと叩いた。

その時である、「シドニー」の船体が大きく揺れた。

「どうした!探査主任!」艦長が呼ばわった。

「ガミラス艦・・・だと思われます。 ただ、今までのガミラス艦とは違い、異様に小さいです。」探査主任は
当惑していた。

元々は軽巡航宇宙艦だった「シドニー」は小ぶりだとはいえ、100mを超える全長を持つ、それに比べ、今、
攻撃してきたガミラス艦は小型で有名なゆきかぜ型突撃駆逐宇宙艦より更に小さい直径50mの円盤型を
した艦だった。

いや、もはや、このサイズになると艦というより、艇、ボートのレベルでしかない。

この船は木星の浮遊大陸哨戒基地から発進したパトロール艇であった。

しかも武装はほとんど持っていない、彼等は車両の出入り口を開け、そこから搭載している戦車の砲を
撃ってきたのだ。
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「見敵必戦か、敵ながら見上げた根性だな。」艦長はそのパトロール艇の戦意を称えた。

「だが、攻撃してくる者を黙って見過ごす事は出来ない! 主砲で反撃しろ!」

「シドニー」は軽巡航宇宙艦だったころから6インチ連双フェーザー砲塔3基と軽武装だった。

早期警戒艦に改装するにあたり、武装は最小限度の6インチ連双フェーザー砲塔1基に減らされていた。

だが、今、相手にしているパトロール艇はその位の軽武装でも充分だった。

「シドニー」のフェーザー砲2連射でパトロール艇は沈黙した。

その時である戦術士官が慌てて報告した。

「大変です。 遊星爆弾の軌道が大きく変わりました。」

「何! 迎撃が成功した訳ではないのか!」

「はぁ、迎撃用反物性弾頭大型ミサイルは爆発せず、そのまま外宇宙に向けて遠ざかっていきます。」

「遊星爆弾の新しい軌道を計算しろ!直ぐにだ!」艦長は嫌な予感を感じていた。

「大変です!遊星爆弾群の新しい目標は火星、オリンポス山です!」

「何! それでは本当の目標は火星の前線秘密基地だったのか!」

「直ぐに火星基地に警報を伝えろ・・・、」艦長がそこまで言った時、沈黙していたパトロール艇が最後の力を
振り絞って搭載戦車の砲を「シドニー」の機関部に打ち込む事に成功した。

「シドニー」は警報を発する事が出来ないまま爆沈した。

ガミラス・パトロール艇の搭載戦車の砲塔の中でも名も無いガミラス兵が微笑んだまま息絶えていた。

**********************************************

 2投射目のガミラス遊星爆弾群10基が木星軌道で大きく軌道を変えたのは普通の遊星爆弾とは違い、
軌道修正用の補助エンジンとその制御装置とプログラムを積んでいたからだ。

そして、1隻の駆逐型ミサイル艦がそれを使って地球直撃軌道から火星、オリンポス山に目標を変更する様、
軌道を変えたのだ。

「シドニー」の哨戒をあてにしていた火星前線秘密基地は自らのコスモ・レーダーに遊星爆弾群を感知するまで
その奇襲に気が付かなかった。

いや、感知しても遊星爆弾攻撃は地球に向かってなされるものとの固定観念が混乱を生み、何も出来ない
まま、遊星爆弾10基の集中爆撃を受けてしまった。

火星の運行軌道が変わるかと思われるくらいの大爆発がおさまるとオリンポス山のあった場所には巨大な
クレーターが口を開けていた。

それは地球軍が基地にしていた地下の冷えて固まったマグマ溜まりの上に出来ていた大空洞が完全に
潰れた事を表していた。

そして、死火山だと思われていたオリンポス山の地下深くにはまだ溶けたマグマ溜まりがあり、そのマグマが
噴出して巨大なクレーターの中に流れこんで火星秘密基地、壊滅の最後の仕上げをした。

この作戦の最後の仕上げとして、遊星爆弾を誘導した駆逐型ミサイル艦と高速宙母は共同して火星の衛星、
フォボス近傍の空間にあった、地球軍の遊星爆弾迎撃用大型ミサイルの建造・発射基地を叩き、壊滅させる
事に成功、意気揚々と冥王星に引き上げていった。

対する地球陣営には重苦しい空気が流れていた。

遊星爆弾攻撃を防衛する出城的な役割の火星秘密基地が叩かれたのだ。

そして、地球軌道上の突撃駆逐宇宙艦による防衛はやはり完全ではなく、10基の遊星爆弾の内、3基の
阻止に失敗していた。

「申し訳ありません。 我々がもっとしっかりしていればこんな事には・・・。」古代守は司令部で藤堂長官、
沖田少将、伊地知少将に頭を下げていた。

今回の遊星爆弾、3基は陸地ではなく、大西洋に固まって落ちた、その結果、200mの高さを超える大津波は
大西洋沿岸の大陸や島、その全ての表面を洗い流し、不毛の土地としていた。

幸い、1発目の示威で行われた遊星爆弾攻撃の結果、地表は「核の冬」を向かえていたので人類はその殆どが
地下に生存の場を求めて移住していた。

このため、人的被害は最小限度に食い止められたが、それでも億を大きく超える人命が失われた。

「古代少佐、悔やんでも始まらん。 我々の迎撃システムには大きな穴がある様だ。 君一人の責任ではない、
あまり自分を責めるな。」藤堂長官は古代守の前に進むとその肩に手をおいた。

「しかし・・・。」何か古代が言いかけると今度は沖田少将がそれを制した。 そして、もう行け、と合図した。

古代は海軍式の敬礼をすると自分の艦へ帰っていった。

それを見送った藤堂と沖田は伊地知少将の方に向き直った。

しばらく嫌な沈黙が3人の間に流れた。

早期警戒艦「シドニー」が戦略偵察艦の艦隊という有り得ないものを発見した時点で司令部まで報告が
上がっていればもしかしたら結果は違っていたかもしれない・・・、そうした思いが藤堂にも沖田にもあった。

伊地知少将の独断専行が生んだ悲劇なのかもしれなかった。

だが、沖田は黙って首を振った、あの戦略偵察艦の任務が何だったのか、未だに判っていない、
そして「朝霧」を攻撃した攻撃機がどこから来たのかも不明だ。

ガミラスに遊星爆弾の軌道を大きく変更する能力がある事も判った。

早期警戒艦と突撃駆逐宇宙艦の組み合わせだけで遊星爆弾を迎撃し切れるだろうか・・・。

沖田はこれから続くであろう、長く苦しい戦いを思った。

だが、わしは決して諦めない、ガミラスを太陽系から放逐するまで決して諦めない!と決心を新たにするので
あった。

                                                   

                                                    ヤマト発進まで1277日
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# by YAMATOSS992 | 2012-05-28 21:00 | 本文 | Comments(0)