ブログトップ

宇宙戦艦ヤマト前史

yamato2199.exblog.jp

宇宙戦艦ヤマト登場前の地球防衛軍の苦闘を描きます。

ガンツ中佐の提案どおり、木星の浮遊大陸に設けた観測基地から発進したパトロール艇による哨戒はまもなく
効果を上げた。

月基地のマス・ドライバーをガミラスに破壊された地球軍は今度は火星衛星軌道上で反物質弾頭を備えた
大型ミサイルを組み立てて、発射、木星会戦で生き残った数少ない艦隊型駆逐宇宙艦に誘導させて迎撃
していた事が判明したのだ。

シュルツはその報告を聞くとすぐさま艦隊を派遣してそのミサイルを誘導している駆逐宇宙艦を叩こうと
考えたが、ガミラスもまた、木星会戦で大きく傷ついており、バラン星から新しい艦艇を補給する必要に
かられていた。

木星会戦の結果、ガミラス艦隊の中心戦力である、汎用戦闘艦、駆逐型デストロイヤーはほぼ全艦が
大なり小なり傷ついていたからだ。

当然、今、作戦を行い、ただでさえ損耗している艦隊を更に傷つける事は得策ではなかった。

「ガンツ、何か妙案は無いか・・・。」レッチェンス大将を失って戦略案や戦術案を一人で立てなければならなく
なったシュルツは必然的にガンツ中佐を副官として重用する、いやせざるを得なくなっていた。

シュルツ大佐は古いタイプの軍人であり、大艦巨砲主義者であった。

従って、突撃艦の様な駆逐型ミサイル艦は戦力としてあまりあてにしていなかった。

レッチェンス司令から譲られた大型戦艦を投入する事も頭の隅を過ぎったが、まだまだ戦力を残している
地球陣営の中に虎の子の大型戦艦を向かわせる勇気はシュルツには無かった。

何やかにや言ってもガミラスは一応、有利に戦局を進めている、それなのに、この優柔不断ぶりである。

そんなシュルツの姿を見てガンツ中佐はこのままで本当に大丈夫なのか、不安になったがそんな彼も
シュルツと一連托生なのは変わらなかった。

シュルツもガンツもガミラスの被征服星の出身であり、戦果を挙げられなければその配下の部隊ごと始末され
かねない立場だったからだ。

「司令、せっかく、宙母が2隻も配備されているのですから機動部隊を編成してみてはいかがでしょう。」

「機動部隊? 宙母部隊か? そんな脆弱なものが役にたつのか?」シュルツは懐疑的であった。

確かに宇宙での戦いでは宙母は使い方の難しい艦艇であった。

宙母は艦載機を運用して艦隊の攻防力を担う役目があったが、艦載機は有人である以上、必ず帰還を前提と
した運用をしなければ成らなかった。

すなわち、帰りの燃料や推進剤を必要とする有人機は母艦から大きく離れる事は出来ず、艦隊戦では
近接防御が主任務にならざるを得なかったのだ。

それならば母艦から無人機を発進させれば、帰還を考えなくても良いので有人機の倍の距離にいる敵を攻撃
出来るのである。

これはすなわち、ミサイルを主兵装とする駆逐宇宙艦の用法に他ならない。

従って、ガミラスでも宙母は比較的贅沢な兵器と考えられており、あまり重用される事は無かったが、有人機の
融通の利く運用性は偵察や局地攻撃、反乱鎮圧などに価値を見出され、冥王星前線基地にも新型の十字型
高速宙母が配備されたのだ。

ガンツ中佐はその艦載機の融通の利く、運用性に着目した。

また、ガンツは1隻目の高速宙母を回航してきたピラウア少佐から高速宙母とその艦載機の有効な運用法を
学んでいた。

その秘策を秘めて2隻の高速宙母が冥王星前線基地を発進していった。

シュルツはガンツから作戦の説明を充分受けていたのだがそれでも自分が慣れ親しんだ艦艇型で無い
宙母の姿に不安を隠しきれないのだった。

*********************************************

「早期警戒艦『シドニー』より入電!遊星爆弾1基、地球に向かっています。」

「よろしい、護衛艦などはついていないか?」艦隊型駆逐宇宙艦「ゆうぐも」の艦長は問いただした。

「遊星爆弾だけでの飛来との報告です。」

「よし、本艦はこの遊星爆弾の迎撃に向かう、目標軌道データに従い、変針せよ」

「ゆうぐも」はこの遊星爆弾の迎撃に向かうべく、大きく面舵をとり、加速した。

ガミラス側は地球軍が的確に遊星爆弾を迎撃してくるので以前の様に一度に大量に投射するのをやめていた。

複数の遊星爆弾が固まって飛来するとそのなかの1発に反物質爆弾の命中があった場合、被弾した
遊星爆弾が破壊されるのはもちろん、周りの遊星爆弾も猛烈な対消滅爆発の影響を受けて軌道を
外されてしまう。

これでは、ガミラス側はいくら自然物を利用しているとはいえ、遊星爆弾が幾つあってもたまったものではない。

反対に今の様に遊星爆弾を1基だけ発射すると地球側はその1基のために大型反物質爆弾と大型ミサイルを
1基づつ、消耗しなければならなくなる、木星という資源、エネルギーの供給源を絶たれた地球にとってこの
様な消耗戦は避けたいところであった。

そのために地球側は火星軌道に艦隊型駆逐宇宙艦を単艦、交代で常駐させていた。
e0266858_1616284.jpg

e0266858_1639142.jpg

本来、反物質弾頭大型ミサイルの誘導だけなら艦隊型駆逐宇宙艦の必要はない、遊星爆弾を感知する
早期警戒艦がミサイルの誘導もすれば済む事である。

それをあえて艦隊型駆逐宇宙艦をその誘導艦に当てているのは、遊星爆弾が単独飛来した場合、
通常サイズの反物質弾頭ミサイルで迎撃し、あえて破壊を狙わず、命中軌道を外させる事が出来るためで
あった。

今回の遊星爆弾迎撃に向かった「ゆうぐも」は比較的古い設計の「かげろう」型の駆逐宇宙艦だったが、
ミサイル・プラット・フォームとしては充分な能力を持っており、この種の任務にはうってつけの艦であった。

「ゆうぐも」が遊星爆弾を探知、その軌道を変えるためのプログラムを施したミサイルを発射した時である。

ガミラスの高速宙母から発進して地球軍、駆逐宇宙艦を捜索していた艦載機がミサイルの発射炎を探知、
「ゆうぐも」の位置を知った。

ガミラス艦載機はブーメラン型をした全翼機であったが、これは大気圏内での運用を考慮したというより、
ミサイルなどの外装兵装をより多く積むための設計であった。

1機6発の艦載機にしては大型のミサイルが宙母1艦で攻撃機20機のミサイル、計120発が「ゆうぐも」に
襲い掛かった。
e0266858_5182762.jpg

「ゆぐも」は個艦防御兵装として5インチ連双レーザー砲塔を3基、計6門を持っていたが、120発もの
ミサイルの同時攻撃を迎撃することは出来ず、また、突撃型駆逐宇宙艦と違って運動性能は大きく劣って
いたためかわす事もかなわず、爆沈して果てた。

通常だったら宙母艦載機の航続距離くらいであれば「ゆうぐも」は容易に高速宙母の存在を探知出来たはず
だった。

しかし、今回、ガミラス冥王星前線基地の副官、ガンツ中佐は高速宙母の回航員であったピラウア少佐から
秘策を授けられていた。

宙母の攻撃半径の足枷となっているのは有人艦載機の航続力が半分しか使えない事であった。

つまり、艦載機は攻撃するための往路に加え、宙母に帰還するための復路に全航続力を別けて使わねば
ならないのだ。

これでは艦隊型駆逐宇宙艦の方がよほど遠距離の敵を攻撃出来ると考えるのが自然であり、ガミラスでも
その考えのもと、宙母は艦隊戦には使わず、惑星制圧戦に使う艦艇として用いられてきた。

しかし、有人である事の融通性の高さを生かす研究は宙母関係者のなかで地道に行われており、ついに
コロンブスの卵的発想が宙母の運用に画期的な道を開いたのである。

それは複数の宙母による機動部隊の結成であった。

しかし、これは単に宙母がかたまって行動するのではなく、一種の艦載機のシャトル運用とも言うべき
用法だった。

1隻の宙母が艦載機の航続距離ギリギリのところで敵に向かって機を発進させて攻撃を行い、機はそのまま
フライ・バイして敵のいる宙域を慣性で脱出、安全な宙域で前もって待機していた別の宙母に攻撃機を
回収させるというものだった。

もちろん、2次攻撃が必要ならば回収した宙母で燃料、推進剤、武装の補給を受けて再度、攻撃をかけ、今度は
出発した宙母に帰れば良いのである。

そして、このフライ・バイ攻撃は訓練を積みさえすれば、ワープの出来るガミラス艦なら最終的には1隻の
宙母で実行可能なものだったが、今回は初回という事もあり、錬度不足の搭乗員や艦艇の乗組員のことを
考えてガンツは機動部隊での運用に絞って作戦を行った。

しかし、それがガミラスに幸運をもたらすとは誰も考えてはいなかった。

*********************************************

ガミラスの放った機動部隊は火星からかなり離れてはいたが攻撃機を回収する役割の高速宙母は火星よりの宙域にいた。

いくらガミラスの軍人が精神力を鍛えられているとはいえ、自分の搭乗している艦載機が燃料切れを起こして
慣性航行に移った時、何も無い無の空間を目指して飛ばざるをえなくなるのは避けたい事だったのである。

このため、「ゆうぐも」を攻撃した6機の攻撃機は火星を目指して飛ぶ様に作戦行動が決められていた。

比較的火星よりの宙域でもう1隻の高速宙母は20機の攻撃機を回収する作業を始めた。

有重力下での空母への着艦作業は海上に浮かぶマッチ箱に降りる様だと形容される様に難しい物の代表の
様に言われるが、無重力下ではランデブーして着艦アームを宙母が伸ばして艦載機を艦内に引き込めば
済むのである。

着艦の順番待ちの時にも事故の起きる確率は有重力下の時に比べれば格段に少なかった。

だが、いくら離れているとはいえ、この宙域は完全に地球軍の勢力圏内である。

高速宙母は艦載機の回収作業を進めつつも、火星方面にいるであろう地球軍の動きに気を配っていた。

着艦待ちをしている機のパイロットも警戒措置の一環として火星の表面を機載の偵察用望遠モニターで
観察していたが、その結果、驚くべき事が解かった。

「ゆうぐも」が撃沈されても、さすがに直ぐには次の駆逐宇宙艦は姿を表さなかったが、高速宙母が初めての
作戦で艦載機の回収に手間取って時間が掛ってしまっていると次の駆逐宇宙艦が姿を表した。

地球軍もいつまでも遊星爆弾の脅威に耐えられなかったからであった。

ある意味、かつてシュルツがヨルクに圧力を掛けて実施させた遊星爆弾示威攻撃の恐ろしさが地球陣営に
染み渡っていたといえる。

しかも彼は単に次の迎撃任務に就く駆逐宇宙艦を発見しただけでなく、その発進基地をも見つけたのだ。

それは火星最大の火山であるオリンポス山の麓にある、宇宙艦発進口であった。

しかし、高速宙母の艦長は慎重だった。

もう1隻の高速宙母も呼び寄せると2隻で連携して詳細偵察行動に入った。

その結果、地球軍の火星基地は死火山であるオリンポス山の地下深く、既に冷えて固まったマグマ溜まりに
出来た大空間を利用して作られている事をも突き止めた。

これは元々、高速宙母が戦略強行偵察任務を重要な任務として設計されており、強力な探知装置を幾種類も
持っていたから出来た事であった。

オリンポス火山の標高は25,000mもある。

マグマ溜まりにある空間の上の岩盤の厚さはそこまでは無かったが、流石に高速宙母の艦載機の攻撃力では
分厚い岩盤に守られた地球軍の火星基地には手が出せなかった。

そこでガミラスの機動部隊は一度、冥王星前線基地に帰り、シュルツやガンツと戦略を練り直す事にし、
すぐさまワープに入ると火星宙域を後にしていった。

**********************************************

機動部隊が持ち帰った地球軍の火星基地に対する情報はシュルツやガンツ、冥王星前線基地、首脳部を
色めきたたせた。

木星圏のプラント奪取はかねてからの計画であってが、火星にこれほど大規模な防衛拠点が設けられていた
とはガミラスにとって大問題であり、この拠点を潰さない限り、遊星爆弾による戦略核攻撃はおろか、
地球を艦隊で襲撃したとしても背後を突かれ、苦戦する羽目に陥るのは目に見えていたからだ。

普段はあまり声を掛けられない作戦スタッフや技術将校も含め、大規模な作戦計画が練られていった。

「なんだい、この無茶苦茶なスケジュールは! 1日で20個の遊星爆弾を発射しろって司令部は何を考えて
いるんだい、一体!」
ガミラスの遊星爆弾発射用の施設では下士官が理由も聞かされずに押し付けられたノルマに悲鳴を
あげていた。

しかも、地球軍にこの作戦がある事を悟られぬために、無駄と判っていても1日、1基の遊星爆弾攻撃は
休まず続けられていた。

また、技術部や前線工廠でも新しい作戦に向けて新装備の開発・製造が急ピッチで推められていた。

開発とはいっても、遊星爆弾の軌道修正用補助エンジンとその制御システムであり、冥王星前線基地の
技術レベルでも充分対応出来る物で更にその製造数も量産という程の数ではなかったので前線工廠で数は
揃えられた。

突貫工事の末、この新作戦、「地球のたそがれ」の準備が出来たのは地球時間で7日後だった。

まず、その先遣として再び高速宙母2隻で編成された機動部隊が発進していったが、シュルツは機動部隊の
活躍に気を良くし、それがまるで自分の案だったかの様にガンツに得意そうな顔を見せた。

ガンツは<やれやれ、またか・・・。>と思ったが大事の前の小事と感情を顔に出さない様に極力、努めた。


「ガミラス艦出現! 距離10万! 数は2隻! 例の新型艦です。」土星宙域で警戒に当たっていた
早期警戒艦「シドニー」はガミラスの機動部隊を捕らえた。

「新型艦? 木星会戦の時、目撃したあの艦か? あれは戦略偵察艦だろう・・・。 それが何故、艦隊を
組んでいるんだ?」
「シドニー」の艦長は高速宙母と1度、会敵していたが、あの時は艦載機を使わなかったので、
それが宙母だとは想像も出来なかったのだ。

それに火星軌道で艦隊型駆逐宇宙艦「ゆうぐも」が撃沈された時に得られた情報では攻撃してきたのは
ガミラスの小型無人攻撃機だという事だった。

地球軍はまだ本格的な宙母を運用した実績がなく、シャトル運用という考えがなかった。

従って「ゆうぐも」を撃沈したのが高速宙母から発進した有人攻撃機であるとは考えもつかなかったのである。

もし、艦載機のシャトル運用という考えがあれば、攻撃機の飛来方向ばかりを探査して、進行方向を探査せずに
何の手掛かりも得る事が出来ない、しかも敵の攻撃機の回収作業が火星宙域で行われていたにも係わらず、
それに気付かないなどという無様な事にはならなかいで済んだはずであった。

だが、早期警戒艦「シドニー」の艦長は古参のベテランであった。

ガミラスの艦隊の正体が機動部隊である事までには気が付かなかったが、戦略偵察艦が行動しているという
事は敵が大きな作戦を計画している証であると考えたのだ。

「シドニー」は早期警戒艦である、通常の巡航宇宙艦とは比較に成らない探査能力を持っていた。

対してガミラス高速宙母は船体下面に偵察用探知装置が集中して装備されており、船体上部にある
航行用コスモ・レーダーの探知範囲や精度は駆逐型デストロイヤーとほとんど変わらなかったので
地球の早期警戒艦に目を付けられている事には気が付かなかった。

「シドニー」はガミラス機動部隊が充分遠ざかると探知情報を地球防衛軍司令部へ送り、ガミラス軍大作戦
行動に対する警告を送った。

                                                    ヤマト発進まで1278日
[PR]
# by YAMATOSS992 | 2012-05-27 21:00 | 本文 | Comments(0)
今日も冥王星前線基地には強風が吹いていた。

厳重に遮断された居住区の中には風や有毒ガスは流れ込んでこなかったが、吹き荒れる大気の音は居住区の
厚い壁を通して聞こえていた。

<まずい、これはまずいぞ・・・。>シュルツ大佐は木星会戦が終わった後、レッチェンス大将が戦死したので
格上げされて冥王星前線基地の司令官に収まっていた。

彼は戦略方針として地球陣営に対する攻撃を艦隊戦から遊星爆弾による戦略核攻撃に切り替えたが、それが
上手くいっていなかったのだ。

木星会戦直後からここ1ヶ月、ほぼ毎日の様に遊星爆弾を地球に向けて放っていたが、命中コースから外れたもの10個、地球側に迎撃されたもの約20個と、地球に命中した遊星爆弾は皆無だったのである。

本来、木星会戦はガミラスにとっては地球側の喉元を締め上げ、エネルギーや資源を枯渇させて抵抗を封じ、
遊星爆弾による惑星改造をスムーズに進めるための戦いであった。

だからこそ、元々少ない戦力であったが、それを惜しみなく投入し、最終的には最高司令官の戦死という高価な
代償まで支払って手に入れた貴重な勝利であった。

<ずいぶん、あっさりと引き上げたのが気にはなっていたが、次の手を読まれていたとはな・・・。>シュルツは
自分がかつて犯したミスにまだ気が付いていなかった。

シュルツは土星会戦のあと、地球艦隊の戦意に怖気づき、ヨルク技術中佐に圧力をかけて地球に対する
遊星爆弾攻撃の実験をさせていた。

シュルツは単に実験だけに納めるつもりだったが、担当者のヨルクは示威攻撃として遊星爆弾攻撃がガミラスの
仕業だと言う事を明かしてしまった。

地球陣営はこの示威攻撃の後、遊星爆弾攻撃に対する対抗策を幾つかこうじていたのだが、シュルツはそれが
自分が過去に犯した性急な行為の結果だとは気付いていなかった。

<少なくともどの様に迎撃しているのか、掴む必要があるな・・・。>シュルツは高速宙母を使って調査
させる事にした。

木星会戦での情報戦で活躍した高速宙母は更に1隻配備されて小さいながら機動部隊を編成出来る様に
なっていたが、シュルツは古いタイプの軍人であり、大艦巨砲主義だったため、宙母は単独運用、それも
偵察行動が主になっていた。

今回もシュルツの運用方針のとおり、高速宙母が1隻、地球側の迎撃方法を偵察するため、冥王星前線基地を
発進していった。

**********************************************

「早期警戒艦『シドニー』から入電!遊星爆弾6基、地球に向かっています。 ただし、その数はまだ増える
模様!軌道データを送ります。」

「よし、月面上のマス・ドライバーに反物質爆弾を発射させて迎撃しろ!」

地球陣営は木星~土星宙域に早期警戒艦を配備し、遊星爆弾の発射を早期に探知、月面上に3基ある
マス・ドライバーから反物質爆弾を発射、精密誘導によって地球から遥か彼方で爆破処理していた。

地球とガミラスの技術文明の程度はガミラスが勝っていたが、この遠距離探知の技術と宇宙航行体の精密
誘導の分野では地球側が大きく勝っていた。

ガミラスはその知られている歴史で既に他星を侵略していたが、その時から現在に至るまで無人探査機に
よる偵察という概念はなかった。

偵察も攻撃も必ず有人の艦艇で行うのがあたり前だったのだ。

例外は既に発見している目標の監視にカメラを搭載した人工宇宙塵や待ち伏せに使う宇宙要塞くらいだった。

ガミラスは今回の高速宙母による偵察のために10基の遊星爆弾を発射していたが高速宙母の艦長が
驚いた事にその全てが木星軌道に達する前に探知され、撃破、処理されてしまっていた。

地球人はその持てる技術よりも常にその好奇心が勝っており、人間を遠く宇宙空間を旅させる技術がなくても
遠くの星の様子を知りたいという欲求を持っていた。

その結果、地球上にいながら何千、何万光年もはなれた宇宙の様子を知る事が出来る深宇宙探査の技術を
発達させ、21世紀初頭にはすでに無人探査機を使って小惑星帯にある微惑星のサンプルを取って地球に
帰還させる事に成功していた。

ガミラス宙母の艦長はワープで地球軌道内にひっそりと進入すると偵察のために再度、遊星爆弾の発射を
冥王星前線基地に要請した。

再び月面上のマス・ドライバーが反物質爆弾を投射して遊星爆弾を処理した。

しかし、今度はガミラス宙母がその一部始終を観測していた。

そしてマス・ドライバーの設置位置が本拠地近辺であるという油断が地球軍にはあった。

本来、マス・ドライバーはスペース・コロニー建設用の資材を月面からラグランジュ点に向かって
打ち出すための設備で軍用の物ではなかった。

当然、その施設は全くの無防備でガミラスの攻撃を受けたらひとたまりも無い事は明らかだった。

だが、地球陣営はお膝元である月面にガミラスの手が及ぼうとは思っていなかったのだ。

ガミラス宙母は護衛艦も連れず完全に単艦だったが、月面上に3基のマス・ドライバーの存在を感知すると
その艦載機、20機を全力発進させ、その3基を完膚なきまでに破壊しつくした。

地球軍が慌てて迎撃に向かった時にはガミラス宙母はワープして早々に戦場を離れていた。

**********************************************

地球側迎撃施設の破壊成功の報を受けてガミラス前線基地は遊星爆弾による戦略核攻撃を再開したが、
やはり地球側は上手に立ち回り、遊星爆弾を迎撃、地球の損害は皆無であった。

再び高速宙母による戦略偵察が行われたが今回は艦艇からの反物質弾頭ミサイルによる迎撃であり、目標が
マス・ドライバーの時と異なって固定しておらず、その発見は困難を極めた。

遊星爆弾に突撃艦を同行させてミサイルを迎撃する事も考えたが艦艇は先の木星会戦で大幅に損耗しており、
例え、突撃艦と言えども、この任務に耐えるだけの数を揃えるのは容易ではなかった。

<定点観測基地が必要になるな・・・。>シュルツは木星圏に出城を一つ、設けようと考えた。

しかし、幾ら数があるとはいえ、木星の衛星上に観測基地を設けたのでは地球側に発見される恐れが大で
あった。

「司令、それでしたら、前回の会戦時、うってつけの物を発見しました。」ガンツ中佐が進言した。

彼は別動隊として地球プラントに奇襲を掛けた時、有り得ベからざる物を発見していた。

それは木星の大気圏下層部(木星は大気圏と液層圏の区別がほとんど無かったが・・・。)に浮遊して動き回る
大陸だった。

ガンツは作戦中だったので詳しい調査は出来なかったが利用価値ありと判断、位置を知らせるビーコンを
打ち込ませていた。

会戦が終わった後、再度その大陸を訪れ、利用方法を考えるためであった。

「そんな濁った大気の底にある基地では観測など不可能ではないか?」シュルツは率直な疑問をぶつけた。

「確かに、基地から直接の観測は不可能です。  しかし、多分、この大陸は地球側に知られておりません。

ですから、この基地からパトロール艇を運用すればこちらの存在を知らせずに地球側の戦略偵察が
出来ます。」

「突撃艦と違ってワープなど本格的な航宙機関は必要ありませんからこの基地でも製造する事が出来る
レベルの艦艇、いや舟艇クラスの航続距離も短いもので充分です。」

「ふむ、確かに遊星爆弾攻撃の進捗を進める事も重要だが常時、地球側の動きを監視しておく必要もあるしな。

ガンツ中佐、木星の浮遊大陸とやらに観測基地を設ける方向で作業を進めてくれ。」シュルツ大佐は以外と
冷静であった。

<この戦線はゆっくりでも良い、着実に進展を重ねる必要がある・・・。>シュルツは先の会戦でガミラスに
その人あり、と歌われたレッチェンス大将が戦死した事の重みを味わっていた。

その戦死に彼が責任があった訳ではなかったが、ガミラス大本営は敢えて新しい指揮官を任命せず、
シュルツを基地司令に格上げしてその采配ぶりを見ているのは明らかだった。

<絶対に失敗出来ない・・・。>この思いがやがて大きな失策に繋がってゆくのだが、今はその事に彼は
気付いていなかった。

                                                    ヤマト発進まで1426日
[PR]
# by YAMATOSS992 | 2012-05-22 21:00 | Comments(0)
 「どうした!ガミラス艦隊の総攻撃があったそうだが!」シェーア大将は旗艦「フレードリッヒ・デア・グロッセ」の
艦橋からプラントにある総合防衛司令部を呼び出した。

「はい、地球標準時15:07に南半球連合の艦隊が攻撃され、全滅しました。 その後、敵艦隊は再度ワープ、
行方を絶っております。」

「アジア連合の艦隊は無事か?」

「はい、今のところ、アジア艦隊も本艦隊も全く、攻撃を受けておりません。」

<フーム、ガミラスめ、何を考えている・・・。>シェーアはガミラスの司令官の心が読めなかった。

地球の常識でいえば真っ先に攻撃されるのは最も手薄なアジア艦隊のはずである。

だからこそ、シェーアはアジア連合のプラントと艦隊は強力な二つの艦隊で挟む形の布陣を敷いたのだ。

<読まれているのか・・・。 だとすれば、次に攻撃されるのはアジア艦隊ではなく、我が艦隊だ。>

シェーアはガミラスが弱い所から突き崩す戦法ではなく、自らの戦力が強大な内に手強そうな敵を片付ける
作戦だと読んだのだ。

<滅敵戦法・・・か、情け容赦ない奴等だ。> 敵の戦力を挫いて引かせる屈敵戦法ではなく、敵を一艦、一兵に
到るまで全滅させる滅敵戦法は後顧の憂いを絶つと言う意味でガミラスらしい戦法であった。

「南半球連合の艦隊が全滅した時の模様はデータがあるか?」シェーアは総合司令本部に問い合わせ、
データを至急、送らせた。

**********************************************

そのころ、レッチェンスは艦隊の建て直しに必死だった。

緒戦で2隻もの駆逐型デストロイヤーを失ったのだ。

ガンツ少佐の遊撃隊の駆逐型デストロイヤー2隻を引き抜き、本隊に組み入れざるを得なかった。

<あの指揮官め、経験は浅いが、度胸は満点だったわい!>レッチェンスは敵の司令官の力に瞑目した。

南半球艦隊はヤークト艦単独の攻撃時には戦艦のフェーザー砲塔を互い違いに左右に向けて一撃離脱
(ヒット・エンド・ラン)戦法に対応して見せた。

しかし、この態勢は両舷を満遍なくカバー出来るが自艦隊の砲力が半減したのと同じ結果となる。

レッチェンスもヤークト艦の攻撃時に南半球艦隊がとったこの戦法に指揮官が優秀ではあるが経験の少ない
提督であると看破、配下の駆逐型デストロイヤー、全艦を敵艦隊の木星よりの空間に小ワープさせ、砲力を
半減させた敵艦隊を圧倒的な砲力で沈黙させる作戦にでた。

しかし、小ワープして敵艦隊の右舷に出てみると敵艦隊は単縦陣でこちらに横腹を見せているのではなく、
横陣で艦首をこちらに見せており、ガミラス艦隊がワープ・アウトすると同時に突撃を掛けてきた。

ガミラス艦に艦首を向けている地球戦艦の目標としての面積は非常に小さく、反対にガミラス艦は横腹を
晒しているので目標としての面積は非常におおきくなっていた。

幸い、ガミラス艦は地球戦艦より重防御だったので地球戦艦が至近距離に接近するまで装甲を打ち抜かれる
事はなかったがそれでもガミラス艦隊の後部では地球戦艦によりガミラス艦隊は戦列を分断され、噴射口の
中にビームを打ち込まれた駆逐型デストロイヤーが2隻、爆沈してしまっていた。

これも英国伝統のネルソン・タッチ型戦術であるが駆逐宇宙艦と違って目標が大きく、動きが鈍い戦艦では
今一つの効果に欠け、強力な装甲を誇るガミラス艦隊に甚大な被害を与えるまでには到らなかった。

別動隊のガンツ少佐から連絡があった。

「司令、ヒッペルト中佐の威力偵察を退けた右翼の艦隊は見るからに手強そうです。 
ここは予定を変えて手薄な中央の艦隊を殲滅してはいかがでしょう。」

「わしが中央の艦隊を始末できたら直ぐに予定の行動に入るつもりだろう? ガンツ!」

心を見透かされたガンツはバツの悪そうな顔をした。

「慌てるな。もし万が一、右翼の艦隊がわしの艦隊を退けてもガンツ、お前の艦隊を相手に出来る戦力は
残さない!安心しろ!」レッチェンスは言い切った。

しかし、勇者は勇者を知る、の言葉どおり、欧州艦隊を率いるシェーア大将が腕利きである事を彼は
感じとっていた。

**********************************************

シェーア大将は相手の出方を見てから行動するタイプの指揮官ではなく、全軍を率いて戦運を自らの方に
引き寄せるタイプの指揮官だった。

しかし、今はプラントの防衛という相手の行動に自らの行動を合わせざるを得ない立場にあった。

とはいえ、彼は自艦隊をプラントの前を遊弋させるなどという中途半端な態勢は採らなかった。

どのみち動けないなら敵にも行動の自由を失ってもらおう。

彼は自艦隊をプラントの脇、ギリギリの位置に専位させた。

ガミラス艦隊が欧州艦隊より木星よりの空間にワープしようとしてもその位置にはプラントがある、ワープを
強行すればガミラス艦隊はプラントを構成している建築材料と物質重複を起こして吹き飛んでしまう。

否がおうでも、欧州艦隊の外側にワープせざるを得ないのだ。

艦隊は単縦陣を2群に別けてプラント前に外側に口を開いた「ハの字型」にしていた。

この悪魔の口にガミラス艦隊を宙雷戦隊の攻撃で誘導しようというのがシェーア提督の作戦だった。

「ガミラス艦隊出現!方位12時、距離10万、戦艦10 駆逐艦20」早期警戒艦から報告が入った。

ガミラス艦隊は超遠距離にも係わらず、フェーザー砲の一斉射撃を掛けてきた。

ガミラス艦のフェーザーは地球のそれよりも射程が長いとはいえ、この距離では戦艦の分厚い装甲は
破れなかった。

<ガミラスめ、何を考えている?>シェーアはレッチェンスの意図を図りきれなかった。

通常、軍艦のカタログ性能を比較する場合、主砲の射程が長い艦は短い艦より強いと判定される事が多いが、
最大射程はその距離まで弾を届かせる事が出来るというだけで命中率まで保障されているわけではない。

しかも実体弾ではなくエネルギー・ビームであるから距離の2乗に比例して威力は減ってしまう。

だから実戦では有能な艦長ほど砲戦距離を安全な範囲で出来るだけ詰め様とする。

<誘いか? だったら動くまい!>シェーアは断固として現状維持を命じた。

ガミラス艦隊のフェーザー・ビームは地球艦隊の直後にあるプラントに被害を与え始めていた。

また、ガミラス艦隊を罠の口に追い込む為に待機させていた宙雷戦隊にも被害を与えていた。

<ここが耐え時だ・・・。>シェーア大将がそう思った瞬間、彼の思考は真っ黒になった。

「司令!しっかりして下さい!司令! 軍医を呼べ!」参謀長がシェーアの体を支えながら叫んだ。

しかし、シェーアの体はそのまま旗艦の艦橋内で仰向けに浮遊し、軍医が駆けつけた頃には死亡していた。

脳溢血だった。
e0266858_1162657.jpg

**********************************************

「なんて事だ!シェーア提督が戦病死しただと! 欧州艦隊の次席の司令、カニンガム中将は・・・。」
戦艦「栄光」の寺内大佐が怒鳴るのを沖田提督が制した。

「嘆いても始まらん! 欧州艦隊は全滅したのだ! だが彼等はやるべき事はやってくれた。」沖田は
まなじりを決した。

「ガミラス艦隊出現!1時方向!距離5万! 戦艦4隻、単縦陣で接近、こちらの頭を抑えるつもりです。」
探査主任が報告する。

「オキタ・フォーメーション発動しますか!」山南艦長が沖田に問う。

「まだだ・・・。 それにその呼び名はやめてくれ。恥ずかしい。」沖田は打ち消す様に言った。

「敵の有効射程内、ギリギリまで引き寄せるんだ。そのかわり、無理はしないでよいぞ。」

ガミラス艦隊はアジア艦隊の戦艦が日本艦隊の「英雄」、「栄光」の2隻しかいないのは地球陣営の罠で
手薄な中央のアジア艦隊の防備を破ろうとすると、両翼の強力な南半球連合と欧州連合が押し寄せてくる
作戦だと読んでいた。

だからレッチェンスは両翼をそれぞれ別個に切り崩し、その後アジア連合の艦隊を排除して地球の
木星プラントを裸にするつもりだった。

ガミラス艦隊が先にフェーザー砲を発砲した。

地球艦隊も応射する、しかし、まだこの距離では地球艦隊のフェーザーはガミラス艦に弾かれてしまった。

ガミラス艦はそれに力を得て更に接近、必中の距離まで近づこうとした。

その時である、戦艦の陰に隠れていた突撃駆逐宇宙艦で編成された宙雷戦隊が2個、ガミラス艦隊に
襲いかかった。

艦隊型駆逐宇宙艦とは違って艦艇形の運用ではなく、航空機形の運用を前提とする突撃型駆逐宇宙艦は
突撃時の陣形は単縦陣ではなく、横に拡がった鶴翼型であった。

宙雷戦隊の指揮官、管野大尉は先陣を切ってガミラス艦隊に迫ると特殊ミサイルを放った。

配下の駆逐宇宙艦も負けじとミサイルを放つ、1隻の駆逐宇宙艦にはミサイル発射管が3基しか
搭載されていなかったが、突撃型駆逐宇宙艦は艦隊型の駆逐艦の様なセル方式ではなく、次発装填装置が
ついていたので連射が出来た。

すなわち、ガミラス艦隊が迎撃しきれないほどの多量なミサイルが投与されたのだ。

そしてこのミサイルは反物性ミサイルでは無かった。

もちろん核兵器でも反物質弾頭でもなかった。

このミサイルはガミラス艦のフェーザー・ビームを浴びて爆発すると液体をほとばしらせた。

しかもかなり粘性の強い液体である。

この液体はミサイルとして飛翔してきた時の慣性をまだ持っており、ガミラス艦のフェーザー砲塔周りに張り付いた。

フェーザー・ビームを潜り抜けたミサイルもガミラス艦の砲塔付近に粘性物質を撒き散らした。

レッチェンスは多数のミサイルを被弾した自艦や配下の駆逐型デストロイヤーに爆発も爆縮も起こらないのを
不審に思ったが、距離をつめて来ていた日本艦隊の戦艦2隻に対処する必要に迫られていた。

日本艦隊が再びフェーザー・ビームを放ったが、まだ距離が遠く駆逐型デストロイヤーの装甲を破るには到らなかった。

「こちらは既に必中の距離に入っている・・・。」レッチェンスは不敵な微笑を浮かべた。
 
「あの戦艦隊を葬れ!」彼の命令一下、ガミラス艦はフェーザー砲を放ったがそのビームは日本戦艦隊を
大きくかすめて宙に消えた。

「どうした! ちゃんと照準しろ!」レッチェンスは有り得ない部下の不手際に驚いた。

「照準はきちんと出来ています! 何故か砲塔が思う様に廻らないのです。」射撃手が信じられないという顔をした。

先に地球の突撃駆逐宇宙艦がガミラス艦に浴びせかけたのは強力な粘着物質だった。

ガミラス艦の砲塔と甲板の間に入り込み砲塔の旋回を邪魔していた。

旋回を完全に止める事はなかったが、微妙な旋回の微調整などとても出来る状態ではなかった。

しかし、幾多の戦乱を潜り抜けてきたガミラス軍はこのような事態に対する訓練も兵士に課していた。

艦艇がダメージを受けて砲の使用は可能だが砲塔の旋回が出来なくなった場合、砲塔側の照準は固定し、
艦艇の躁艦で照準をつける高度な技だ。

敵艦隊は自艦のフェーザー砲の有効射程まで接近するためにこの様な小細工を弄して来たにちがいない。

<ガミラスはこんな小細工には負けんぞ!>レッチェンスは更に闘志を燃やした。

しかし、沖田は一度は接近したがその後は何故か大きく距離をとって近づいてこなかった。

<何故だ? こちらは圧倒的に不利な状態だ。 何故攻撃してこない?>レッチェンスの疑問は直ぐに晴れた。

「大変です! 船外温度が急激に上昇しています。 現在3000度C! まだまだ上がります。」

ガミラス艦はどれも粘着物質にまみれて砲戦が出来ない状態だったが、日本艦隊は一度接近した時に
その粘着物質にフェーザー・ビームを照射し、発火させたのだ。

粘着物質は適度な酸素を含み、比較的ゆっくりではあるが高温を出して燃焼していた。

「ワープして脱出しろ!」危険を感じたレッチェンスは戦闘宙域からの脱出を図ろうとした。

「駄目です! 高温のため機関の制御がもはや利きません。」

機関部分に粘着物質をより多く被っていた2番艦の機関が高温に耐えられず爆発した。

「別働隊へ攻撃命令を! それも大至急だ。」

レッチェンスはスクリーン上の運命の定まった己の艦隊を見詰め、自分のコンソールをいとおしげに撫でた。

<今まで良く働いてくれたな、有難う。 デーニア・・・。>

デーニア・・・それは20年前に失った彼の妻の名だった。

**********************************************

レッチェンスからの攻撃命令を受け取ったガンツは予定通り、木星の大気圏の最上層の直ぐ上にワープ・アウトした。

地球のプラントは木星大気圏の最上層に浮かんでいる様なものだ。

それを複数の宙雷戦隊が守っている・・・、遠距離から接近するとその宙雷戦隊に迎撃される恐れがあった。

だから、ガンツは事前の研究でプラントに出来るだけ接近してワープ・アウトする事が攻撃成功の鍵を
握っていると考えていた。

「ワープ・アウトします!」航宙士がガンツに報告した。

ガンツの乗った駆逐型デストロイヤーは無事、地球プラント直近にワープする事に成功したが、艦隊の後尾に
位置していた2隻は木星大気と物質重複を起こして大破してしまった。

大気の濃い部分だったら大爆発が起こって他のガミラス艦もただでは済まなかったろう、しかし、物質重複を
起こした大気分子は微量だったため、その艦だけに被害は極限された。

とはいえ、被害は甚大でその2隻はもはや航行する事が出来ず、木星の重力に引かれ、その艦体をメタンの海深く沈めていった。

ガンツはその艦に敬礼を送ると直ぐに地球プラントの攻撃、破壊を命じた。

あまりにもガミラス艦隊はプラントに接近しすぎていたため、地球側のプラント防衛を担っていた宙雷戦隊は
攻撃をしかける事が出来なかった。

もともと戦闘を想定していなかったエネルギー・プラントは攻撃に脆く、たちまち瓦解して木星大気の底に沈んでいった。

収まらないのは防衛部隊であった。

ガミラスの奇襲部隊に対して一矢報いようと無謀な突撃をかける宙雷戦隊が一つ、二つあったが、生き残った
司令官、沖田少将や李中将は復讐にはやる宙雷戦隊や戦艦部隊をなだめすかし、地球帰還の途につかせた。

例え、木星プラントが失われようとガミラスに決して膝を屈しない決意が地球側にはあったのだ。

**********************************************

破壊されたプラントはプラントを維持する最小限の人員が残されていた。

そしてプラントが破壊された時、彼等は脱出船になる区画に避難しており、プラント破壊と同時にプラントから
切り離されて宇宙を漂っていた。

リットリオ技術大佐は部下達に睡眠ポッド入りを命令した。

助けが来るまで酸素の消費量を最小限にし、代謝も抑えて長時間の待機に備えるためだった。

しかし、時間が経てばたつほど救出の見込みが薄れるのは皆、判っていた。

「諸君! 再び、ここで合おう!」

リットリオは最後の別れになるかもしれない今、指揮官としては落第だと思いながらも部下達に感謝の敬礼を
捧げずにはおれなかった。

コーン、コーン、エア・ロックの方で何か戸を叩く様な音がした。

船外監視カメラを使ってエア・ロックのドアの前を見てみると地球軍の宇宙服姿が2人見えた。

他のカメラを使って船外全周を写してみると地球艦隊の巡航艦が来ていた。

低出力のレーザー通信が入った。

「こちら欧州艦隊所属、重巡『シャルンホルスト』、救援に来ました。 こちらに移乗して下さい。」

「ありがたい! 欧州プラント維持要員、リットリオ技術大佐以下6名、移乗します。」リットリオは申告すると
すぐ、部下に移乗を始めさせた。

他のプラント、アジア連合には日本艦隊の早期警戒艦「たかお」が米国プラントには戦艦「英雄」、「栄光」が
ソ連プラントには重巡「グナイゼナウ」が南半球連合のプラントには早期警戒艦「シドニー」がそれぞれ救援に
向かっていた。

ガミラス艦隊は地球プラントを壊滅させると長居は無用とばかりにワープして撤退していった。

しかし意気揚々と冥王星前線基地に帰還したガンツは尊敬していたレッチェンス司令の戦死を知り、体中から
力が抜けるようだった。

あの時、レッチェンス司令が攻撃司令を「大至急」実施しろと言ったのは自分が地球艦隊を引き付けておける
のはもはやこれまでという事だったのだ。
e0266858_202863.jpg

<有難うございました。 司令・・・>ガンツの脳裏には艦体後部を真っ赤に塗ったレッチェンスの旗艦の
後姿が焼きついていた。

地球陣営は木星の資源・エネルギー・プラントを失い、その勢力は大きく後退する事になった。

                                                   ヤマト発進まで 1481日
[PR]
# by YAMATOSS992 | 2012-05-08 21:00 | 本文 | Comments(0)
ヒッペルトもやられたのか・・・。

レッチェンスは木星圏の威力偵察に出した重巡艦隊の末路に眉をひそめてた。

ヒッペルト中佐はガミラスの重巡艦長の中でも切れ者で通った男だった。

それが任務遂行中に6隻中、4隻を失い、残り2隻も1隻は大破、もう1隻も中破という有様でしかも、敵状は殆ど偵察出来なかったのだ。

本人も艦と運命を共にしてしまった。

仕方ない、面倒だが、ここはまず、欲張らずに遠距離からの戦略偵察を行うとするか・・・、レッチェンスは冥王星前線基地に連絡をとった。

「先に試験配備された『高速宙母』を至急、派遣しろ!」レッチェンスは留守を預かるシュルツ大佐に命じた。

「『高速宙母』でありますか・・・、まだ受け取りが完全に済んでおりませんで・・・。」シュルツは口ごもった。

「何! 作戦に使用出来ないと言うことか!」レッチェンスは仕事の遅い部下は大嫌いであった。

「宙母を回航して来た要員は帰ったのか?」

「いえ、まだ居ります。 その回航委員長が問題でして・・・。」

「どういう事だ。?」レッチェンスは事情を聞いた。

要するに、『高速宙母』は新型艦で今までのガミラス艦と推進機関の方式など様々な部分が違っていて
その引継ぎに時間が掛っているのだ。

しかも、その引継ぎを仕切る回航委員長が完全主義者で中々、引継ぎの終了を認めなかった。

「判った。 その回航委員長とやらを出せ!」レッチェンスが委員長の呼び出しを要求するとシュルツ大佐は内心喜んだ。

<あの頑固者に司令のカミナリが落ちるか・・・フフッ>

しかし、現実はシュルツの期待した様には進まなかった。

「お初にお目に掛ります。 『高速宙母』回航委員長のピラウア少佐です。」

スクリーンに出た回航委員長はガミラス人の女性将校だったが、ガミラスも直接戦闘する部隊以外には
女性兵士も多く、レッチェンスも慌てなかった。

「ピラウア少佐、前線基地の要員ではまだ『高速宙母』の運用は無理との事だが、回航要員でなら
運用できるか?」

「はい、回航要員でなら出撃可能です。 しかし、搭載機の離着艦訓練は間に合いませんし、要員も
足りません。」

「いや、それは構わん、宙母そのものが出撃できればいいのだ。 『高速宙母』で遠距離からの戦略偵察を行って貰いたい。」

「了解しました。」ピラウア少佐は女であるがゆえに中々最前線に出して貰えなかったもどかしさが一気に晴れる気がした。

「冥王星前線基地副指令、シュルツ大佐、『高速宙母』出撃します!」

今まで引き継ぎ作業中は無表情だったピラウア少佐の顔は歓喜に溢れていた。

さっきまで疎ましく思っていた女性将校だったが、シュルツは喜び勇んで出撃してゆくピラウアの顔に
ガミラス本星に残してきた娘の顔が重なり複雑な思いにかられた。

<わしの娘もこうやって戦火の中に飛び込んでゆく日がくるのか・・・。>

シュルツ大佐は艦体の四方に腕を伸ばし、十字形をした円盤型の「高速宙母」が回転しながら木星圏へ
向かって発進してゆくのを何時までも見詰めていた。

**********************************************
e0266858_1612112.jpg

「トロンプ司令・・・。これは一体何でしょう?」参謀はスクリーンに写った奇妙な物体に思わず上司に問いかけた。

スクリーンにはまるでヒトデの様な物体が写っていた。

その物体はゆっくりと回転しながら南半球連合の艦隊の前を高速で横切っていった。

「UFOってこんな感じの物なのかな?」トロンプは子供の頃、見た記録のUFOの写真を思い出していた。

「とはいえ、今の状況ではこれはガミラスのものと考えるべきだろう・・・。 こちらの早期警戒艦に正体を
探らせろ!」

このUFOに一番近い位置にいたのは早期警戒艦「シドニー」だった。

この艦はもともと軽巡で速度は速かったが武装も軽装だったので早期警戒艦に改装するにはその武装を
ほとんど全部降ろさなければならなかった。

そんな艦で正体不明の物体を調査させるのは心配だったが、今は贅沢は言っていられなかった。

「シドニー」はその物体よりも僅かだが土星よりの空間にいたので電波管制を敷いて接近を図った。

木星圏にいる艦隊から見るとその物体の底面しか見えないので判らなかったが、「シドニー」が
接近してみるとその物体の背面が見てとれた。

その物体の背面の形状はやはり見た事のないものだったが、その色はお馴染みのガミラス艦の緑色だった。

e0266858_1613591.jpg

「シドニー」は南半球艦隊のみならず、全艦隊にガミラスの偵察艦来襲の警報を発した。

そして「シドニー」は僅かに残された6インチフェーザー連双砲塔1基からビームをガミラス艦に浴びせかけた。

しかし、そのガミラス艦は反撃もせず速度を上げるとみるみるうちに遠ざかって行った。

もっともこのガミラス艦は撤退した訳ではなく、アジア連合艦隊、欧州連合艦隊の前も横切って偵察の
任務を果たしていった。

早期警戒艦「たかお」もこのガミラス艦を追尾しようとしたが簡単に振り切られてしまった。

「たかお」の広瀬艦長は反物性ミサイルを持っていない事が悔しくてしょうがなかった。

だが、ガミラスの偵察艦はそんな地球艦隊を嘲笑うかの様に速度を更に上げると宇宙の闇に消えていった。

**********************************************

「やはり新型艦の威力は侮れないな。」レッチェンスは「高速宙母」が戦略偵察してきた情報に唸っていた。

木星圏をはなれ、ほぼ土星圏との境といって良い位置から採った情報だったが、レッチェンスが欲しかった
地球艦隊の規模と配置の情報はほぼ完璧に網羅されていた。

後は実際に交戦して相手の実力を確かめる必要があったが、その威力偵察に使うべき重巡はもはや消耗
し切っていた。

やはり、手順は守らないと結局、余分な手が掛るものである。

とはいっても、失った艦を惜しんでいても作戦は進展しない、レッチェンスは注意すべき戦力はプラント群の
両翼を固めている戦艦群だと考えていた。

そして、欧州連合の艦隊の性能についてはヒッペルトの重巡艦隊が偵察できた断片的ではあるが情報がある。

しかし、反対翼を固めている南半球連合の艦隊については性能の情報がない。

そこで、再度、威力偵察を行わせる事にした。

だが、今回はその任務に投入できる重巡はおろか軽巡すらなかった。

レッチェンスは一人の艦長を呼び出した。

「ヤクート大尉であります。お呼びでありますか。」スクリーンにごつい男が出た。

彼の顔は傷だらけでその歴戦ぶりを窺がわせた。

「ウム、ヤクート君、君には地球艦隊の左翼を固めている艦隊の威力偵察を行ってもらいたい。」

「偵察だけ・・・でありますか。 どうせ攻撃するなら撃滅を図りたいのですが。」

「とりあえずは偵察だけだ。 一隻だけなのだ。 決して深入りするな!」レッチェンスは釘をさした。

ヤクート艦は駆逐型突撃艦である。

本来なら巡航艦を出したかったが、巡航艦は重巡はおろか軽巡も消耗しきっていた。

レッチェンスは駆逐型デストロイヤーを出す事も考えたが、駆逐型デストロイヤーは基幹戦力である、もし、
戦闘で喪失すると、即、戦力低下に繋がるので出す事を躊躇ったのだ。

釘はさしたものの、ヤクート大尉は多分、自らの劣勢も返り見ず、地球艦隊に真っ向から挑戦するだろう。

レッチェンスはその戦闘状況を再び、高速宙母に観測させ、情報をとるつもりだった。

レッチェンスは年齢を重ねるにつれ、老獪になる自分に嫌気がさして来ていたが、今はガミラス軍の勝利が全てと割り切った。

ヤクート艦はたった一隻で南半球連合艦隊のいる方角に小ワープしていった。

**********************************************

「再びガミラス艦出現!12時方向、距離5万!」戦艦「オーストラリア」の艦橋に探知報告が響く。

「数量は・・・、駆逐艦一隻です。」トロンプ中将はまだ若かったがこれが威力偵察である事に直ぐ気が付いた。

だとしたら、なるべく早く始末して情報を取られない様にしなければならない。

そう判断したトロンプは配下の宙雷戦隊に迎撃に向かわせると同時に敵艦が小ワープによる
一撃離脱(ヒット・エンド・ラン)攻撃を戦艦に掛けてくる事を想定して自艦「オーストラリア」以下、
配下の戦艦に極力、左右均等に攻撃が出来る様、フェーザー砲塔を互い違いに両舷方向に向けさせた。

地球の宙雷戦隊を充分に引き付けるとヤークトは反物性ミサイルの雨がくる前に小ワープした。

そして南半球艦隊の右舷に出現すると旗艦「オーストラリア」に向かってミサイルを放つとまた小ワープして
位置を変えた。

「全く良くやるわね。ヤクート大尉・・・。」 ヤクートの戦いと地球軍の反応を偵察していた「高速宙母」の
ピラウア少佐はあきれていた。

ヤクート大尉は一撃離脱(ヒット・エンド・ラン)攻撃を連続して加えていたが単純に同じ位置を往復していた
のでは忽ち位置を特定されてミサイルや機雷の待ち伏せ攻撃を受けてしまう・・・だから、彼は往復の複時の
帰還座標をランダムに少しずつずらしていた。

しかし、その座標が安全である保障など何処にもないのだ。

しかも木星という大質量がそばに存在しているのに・・・である。

レッチェンスからヤークトに帰還命令が下った。

レッチェンスも失わないで済む部下は失いたくなかったのだ。

しかし、その命令は一歩遅かった。

その時、ヤークト艦は一撃離脱攻撃をするために小ワープで地球艦隊に接近した、が、
戦艦「ミナス・ゼラース」が発射したフェーザー・ビームの直撃を受けてしまった。

頑強な装甲を持つ事で知られるガミラス艦も駆逐艦はほとんど無装甲で有り、戦艦のフェザー砲を
弾き返す事は出来ず、爆沈した。

ある程度予想していた結果であったが、レッチェンスは苦渋に満ちた顔を隠さなかった。

木星圏に吹く嵐は激しさを増していった。

                                                    ヤマト発進まで1481日
[PR]
# by YAMATOSS992 | 2012-04-30 21:00 | 本文 | Comments(0)
2012,7,2、図版とその説明を追加 
2012,7,4,図版説明の改訂

 「目標捕捉!数量4! 距離2万宇宙キロ!」早期警戒艦「たかお」の艦橋に緊張が走った。

「敵味方識別(IFF)はポジティブ。 識別コードによればドイツ艦隊第2特務戦隊です。」探査主任はホッとした顔で報告した。

「土星圏へ行っていた、第2特務戦隊だとすると数が合わないが・・・。」副長が疑問を口にした。

「識別信号によると帰って来たのは『ニンフェ』、『アリアドネ』、『ウンディーネ』、『ブレーメン』・・・。全て軽巡
です。」

<重巡の「デアフリンガー」と「リュッツオー」はやられたのか・・・。>「たかお」の艦長、広瀬大佐は心を
曇らせた。

その時、再度、探査主任は目標探知を告げた。

「再度目標捕捉! 数量は34! 敵味方識別(IFF)はネガティブ! ガミラス艦隊です!」

「通信士! 艦隊司令部へ打電! 203宙域にガミラス艦隊出現! 本艦は敵艦隊との距離を取りつつ、
その動向を調査!詳報を続けて送る旨を連絡しろ!」艦長は「たかお」の最後を覚悟していた。

「たかお」は元々、高速を出せる重兵装の巡航艦として設計されていた。
e0266858_20393577.jpg

e0266858_18115066.jpg

e0266858_18124590.jpg

e0266858_18154231.jpg

しかし、内惑星戦争時の花形艦も今は旧式化して船体の老朽化も目立ってきていたので8インチ荷電粒子砲、
連双5砲塔の武装を8インチフェーザー、連双3砲塔に減らし、代わりに大型だった初期のコスモ・レーダー
装置を積んで早期警戒艦に生まれ変わっていた。
e0266858_1814498.jpg

e0266858_18211974.jpg

当然、重巡だった頃は積んでいたミサイル装備も今は下ろしており、持っていない。

重巡だった頃より軽量化していたので速度だけは現役時より速かったが、敵であるガミラス艦はワープが
出来る・・・。

狙われたら逃げようがないのが実態だった。

探査主任が訝しげが顔をした。

「どうした! 斉藤!」副長が探査主任の顔を見た。

「それが・・・。ガミラス艦隊の隊列が大きく乱れています。 これでは彼等は艦隊戦が出来ません。」

「何!状況を大スクリーンに写せ!」

スクリーンには驚くべき光景が写っていた。

先程、撤退して来たドイツ艦隊の軽巡4隻が横陣に広がってガミラス艦隊の進路を遮りつつ、対艦ミサイルを
連射して次々とガミラス艦に損傷を与えていた。

「こちら日本艦隊、早期警戒艦『たかお』、ドイツ第2特務戦隊!何をしている! 早く撤退しろ!」広瀬艦長は
呼びかけた。

「こちら『ブレーメン』艦長、マトニ中佐、そちらこそ、早く脱出して貴艦は自分の任務に専念して下さい。」

「無茶だ! 相手は戦艦クラスだぞ!」その叫びが終わらない内に9条のフェーザー・ビームが1隻の軽巡を
捕らえた。

その軽巡「ニンフェ」はたちまちズタズタになって大破、爆発した。

「早く退避しろ!」広瀬艦長は思わず怒鳴っていた。

しかし、ドイツ軽巡部隊は撤退するどころか、更に距離を詰めていった。

ガミラス戦艦隊は総旗艦と思しき一隻の艦を守る様に横腹を晒して立ちはだかった。

ドイツの軽巡は通商破壊用に造られ、反物性ミサイルの垂直発射管(VLS)を90セルも持っていた。

長期に渡る通商破壊活動時にも補給を受ける事無く活動するための装備だ。

今、戦っている第2特務戦隊は今回、任務について直ぐにガミラス艦隊と遭遇したため、その兵装がまだ全く
消耗していなかったのだ。

第2特務戦隊の残りの軽巡、3隻は残りの反物性ミサイルを全弾をこちらに横腹を見せているガミラス戦艦に
叩きこんだ。

ガミラス艦も駆逐艦の援護を受けてミサイルを防衛したが約270発のミサイルを全て防御する事は不可能
だった。

総旗艦の前で横腹を見せたガミラス戦艦や駆逐艦は重力崩壊を起こしてこの宇宙から消えていった。

**********************************************

<地球艦隊も粘るな・・・。>レッチェンスは舌を巻いていた。

土星空域で奮戦した2隻の装甲艦、幸いこちらの駆逐型デストロイヤーで戦闘不能になった艦はなかったが、
結構傷を負わされた艦は多かった、時間稼ぎをされたのも結構痛かった。

<そして今度は軽巡艦隊の勇戦だ、装甲艦より弱兵力と思ったのが油断だった。

駆逐型デストロイヤー2隻と駆逐艦5隻を失う羽目になるとは・・・。

木星圏には多分、地球艦隊の戦艦群がいる・・・、それも多分、精鋭中の精鋭だ。

艦隊の編成を考え直さねば・・・。>彼は副長に躁艦指揮を任せ、艦隊の再編成作業にかかった。

最初、レッチェンスは艦隊の前衛に2隻の重巡ををおいて威力偵察し、駆逐型デストロイヤーで構成された
主力艦隊は単縦陣、その上下左右に駆逐艦で構成された宙雷戦隊で球形陣を組んで侵攻するつもりだった。

<しかし、本当にそれで問題ないのか?>レッチェンスは自信が無かった。 

まず、為さねばならないのは地球艦隊の情勢を偵察する事だ。

レッチェンスは手持ちの巡航艦に艦隊を組ませ、最大限の威力偵察をする事にした。

これはかつて地球上で大艦巨砲主義が全盛だったころ、大海軍国が持っていた巡洋戦艦部隊が担っていた
任務だった。

高速で敵艦隊に近づき、攻撃を加えて挑発、相手の出方を見極める重要な任務だ。

ガミラス艦隊の高速巡航型クルーザーのうち、重巡に相当するのは駆逐型デストロイヤーより大口径の
3連双フェーザー砲塔を2基持っているタイプであるが、今までの約3年に渡る木星圏通商破壊戦で消耗して
おり、元々12隻あった重巡は6隻に減ってしまっていた。

全艦をこれに当てるのは少し大胆すぎる気もしたが、効果を挙げられなければ元も子もない、レッチェンスは
少し考えてから巡航艦戦に秀でたヒッペルト中佐を呼び出した。

「ヒッペルト中佐、君を巡航艦戦隊の戦隊司令に任命する。 君の艦を含む6隻の重巡で艦隊を組み、木星圏の
威力偵察を行ってくれ。」

「了解しました。 しかし、司令、6隻しかない重巡を全て投入するのはあまりにも危険ではないかと
思いますが・・・。」

ヒッペルトは会議室に他の将校がいなかったので大胆にもレッチェンスに反論した。

「だから君を任命したのだ。 勇猛さだけなら他に適任者が沢山いる。 君は押す勇気と引く勇気を合わせ
持っている。」

ヒッペルトはその言葉に微笑し、サッと敬礼して旗艦を出ていった。

**********************************************

木星圏の欧州連合の資源・エネルギー・プラントを防衛している欧州連合の早期警戒艦は日本艦隊の
「高雄」級と同じく、少し旧式になった英国重巡を改装した「ケント」、「ドーセットシャー」の2隻がプラントから
離れた遥か20万キロの位置を遊弋してガミラスの動向を探っていた。

「ケント」の艦橋に敵艦探知の報告が入った。

「403宙域にガミラス艦隊が出現しました。 6隻います! 距離5万! アッ 1隻が消失!ワープしたものと
思われます!」

その言葉が終わるか、終わらない内に「ケント」の右舷、直近にガミラス重巡が現れた。

あまりにも唐突な出現に「ケント」があっけに採られている内にガミラス重巡は手馴れた様子で攻撃して来た。

ほとんど何も出来ないうちに「ケント」は爆沈した。

それを確認したかの様に残りのガミラス艦5隻がワープして来た。

「何とか門は抉じ開けましたね。」副長がヒッペルトに声をかけた。

「ああ、でも威力偵察はこれからが本番だ。 航宙士、現在の座標を記録せよ。」

ヒッペルトの艦隊はこれから敵である地球軍の懐深く入って行くのだ。

撤退しなければならなくなる場合もあるだろう、その時、ワープの座標計算を一々やり直している暇はない、
安全だった前の座標を記録しておいて非常時にはその座標にワープすれば危険が少なく脱出出来る、
これは彼が木星圏で通商破壊作戦に従事していた時に編み出した戦術であった。

しかし、この戦法も決して無敵ではない、特にワープする前の出発点を知られていると罠を張られる場合があり、
現に何隻かは地球軍の罠にはまり、失われていた。

だから、ヒッペルトは自艦の位置を探知し、ワープ航跡をトレースしているであろう、早期警戒艦は重点的に
潰してゆく方針だった。

「戦術上の常識から言えばもう1隻いるはずだが・・・。 戦術士! どうだ、探知出来ないか!」

「はぁ、いる様子はありません。 もしかしたら、探知電波の発信を控えて受信(パッシブ)に徹しているのかも
しれませんが・・・。」

確かにその通りだった。

早期警戒艦「ケント」は僚艦「ドーセットシャー」と40万キロの間隔を置いていたが、データ・リンクは
成立させていた。

したがって、「ケント」が撃破された時、直ぐに「ドーセットシャー」はその事を知って電波管制をしいた。

そして外部からの傍受の恐れがほとんど無い、レーザー通信で艦隊本部に状況を報告していた。

ガミラス艦はワープする必要上、光年単位で空間を走査出来る能力を持っていたが、それは自艦が航行する
必要上、ワープ予定空間の走査が出来るだけで、40万キロ離れて息を殺している「ドーセットシャー」を発見
出来る可能性は薄かった。

ヒッペルトは10箇所の宙域をランダムに設定させ、コスモ・レーダーで走査させたが何も発見できず、
それ以上の探査は無駄と判断して、木星圏への強行偵察のためワープに入っていった。

**********************************************

 「ガミラス重巡艦隊6隻、11時の方角より 本艦隊に向かって接近してきます!」欧州艦隊司令部に報告が
入った。

「威力偵察か・・・。 ガミラスめ、大道を歩んできおったな。」シェーア大将はスクリーンに写る光点を
見詰めながら言った。

ここは同規模、同性能の艦隊を繰り出して迎撃、威力偵察を妨害したい所である。

しかし、地球軍にはガミラス重巡と同性能を出せる艦艇はほとんど存在しなかった。

平和な時代が続いたため武装は強力でも航行能力に秀でた艦は建艦されなかったのだ。

「今、第1特務戦隊はどうしているか?」シェーアはフローラー・ライニック大佐を呼び出した。

「我が第1特務戦隊は再度、土星圏への出撃のため補給作業中です。 作業は最終段階で今、燃料、推進剤の
補給中です。」

フローラーはシェーアに報告した。

「ガミラスの重巡6隻が艦隊を組んで威力偵察にきている。 すまんがこれを迎撃してくれ。 ただし、
無理はするなよ!」

シェーアは、またライニック姉妹に負担をかけるのは心が痛んだが背に腹は変えられない、実績のある部隊を
繰り出さなくてはならないのだ。

欧州プラントの一角から2隻の重巡、4隻の軽巡が発進、ガミラス艦隊に向かっていった。

<今度は重巡6隻を相手にしろとは、シェーアのオヤジめ、どんどん要求がエスカレートしやがる!>
フレイヤが心を弾ませた。

<我々の作戦目的は敵の威力偵察の妨害よ! 撃滅までは要求されていないわ。>フローラーが釘を刺した。

<へん!結果的に相手が滅ぶのは勝手だろ!>フレイヤは大胆な作戦を提示した。

それはかつて、フローラー自身が用いた戦法だった。

第1特務戦隊は早期警戒艦「ドーセットシャー」に連絡をとり、ガミラス艦隊が最後にワープに入った地点の
座標を確かめ、配下の軽巡部隊に10発づつの反物性ミサイルをそこに向けて発射させた。

そして、フローラーは自艦隊をガミラス艦隊に向けて直進、迎撃に向かった。

**********************************************

ガミラス重巡艦隊を率いるヒッペルト中佐はスクリーンに写った、迎撃に向かってくる地球軍艦艇を見て驚いた。

ガミラスの土星圏交通路を荒らし回った装甲艦2隻、軽巡4隻の艦隊だったからだ。

ヒッペルト自身は木星ー地球航路の通商破壊活動に従事していたので1度も剣を合わせた事はなかったが、
冥王星基地で聞いたその勇猛ぶりと狡賢さは跳びぬけていた。

地球軍の通商破壊活動はガミラスのそれとは規模が大きく違っていたので実質上の損害は大きくなかったが、
敵に凄腕がいるというだけで味方の士気は大きく影響されるものだ。

だから反対にこの敵を倒せれば、味方の士気は天を突く、ヒッペルトは心の中で舌舐めずりをした。

2つの艦隊の距離は1万キロを切った。

ガミラス艦隊は砲塔を廻し、第1特務戦隊に照準を合わせ様とした。

「敵艦が妙な動きを見せています! 重巡が2隻ともこちらに腹を見せました。 故障でしょうか?」

戦術士官がヒッペルトに報告した。

「よく判らんが油断するな! 射程距離に入ったら射撃を開始しろ!」ヒッペルトの指示が飛ぶ。

「シャルンホルスト」と「グナイゼナウ」と戦って帰還出来たガミラス艦はまだ居なかった。

戦いの終わった戦場で回収された僅かな情報のみが第1特務戦隊に関する情報の全てだったのだ。

当然、ヒッペルトには2隻が腹を見せる態勢をとった事が攻撃態勢だとは知るよしもなかった。

「ガミラス艦隊との距離、8000、一斉回頭! 敵艦隊の頭を抑える!」フローラーの命令が飛ぶ、

ガミラス艦隊と第1特務戦隊は反航戦の形だったが、フローラーは一斉回頭してガミラス艦隊の左舷を
圧迫するイの字型の隊形を強引に作った。

ガミラス艦隊はすぐさま、フェーザー砲の嵐を撃ちかけてきた。

しかし、並の戦艦以上の装甲をガミラス艦隊に向けている2隻は平然とそのビームをはね返し、更に距離を
詰めてきた。

そして、1艦、3連双2段、2群に分かれた11インチレーザー砲、2隻、全24門をガミラス艦隊に浴びせかけた。

ゴーン、ゴーン、ヒッペルト艦の艦橋に続けざまに命中するレーザー・ビームの衝撃が伝わった。

残念ながら、土星圏での戦闘時の軽巡と違って、装甲の厚い重巡は傷を負わせるまでには到らなかったが、
近距離でビームを浴びせられるのは気持ちの良いものではなかった。

更に2番艦は艦橋の窓に降ろしていた装甲シャッターを溶かされ、内部の光が漏れて来た。

<クソッ! たった2隻にここまで翻弄されるとは!>ヒッペルトは歯噛みした。

しかし、次の瞬間、彼は自分が重大な事を忘れていた事を思い出した。

<この敵艦隊には軽巡が4隻いたはず・・・。 奴等はどこへ行ったのだ?>

彼の疑問は直ぐに氷解した。

「シャルンホルスト」と「グナイゼナウ」が作った鉄壁の陰に彼等は隠れていた。

そして、「シャルンホルスト」から送られた敵の位置データを元に反物性ミサイルの雨を浴びせかけた。
e0266858_1211990.jpg

e0266858_1031523.jpg

ヒッペルトは状況判断に勝れた男だったので直ぐにその場から退避し、ミサイルの洗礼は受けずに済んだが、
5番艦は艦橋部分にミサイルの直撃を受け、戦闘不能になってしまった。

6番艦の艦長はガミラスの鉄の軍律に従って5番艦にフェーザー・ビームを浴びせ、始末した。

「艦長! 地球艦隊主力がこちらに向かってきています!」情報士官が叫んだ。

「なに!」ヒッペルトは2隻の装甲艦に翻弄され続けていた事を知った。

彼の艦隊は第1特務戦隊と交戦する内に知らず々と欧州連合艦隊主力の方へ誘導されていたのだ。

本来、ヒッペルトの艦隊の任務は威力偵察であった、だから、このまま敵主力と剣を交える事も考えた。

しかし、今のヒッペルト艦隊の態勢は完全に受身であった、このまま戦闘を続行しても良い結果は得られないと
彼は判断した。

戦闘の主導権を握ってこその威力偵察だと彼は思ったのである。

「全艦、小ワープで退避! 一度態勢を立て直す。」ヒッペルトは全艦隊を木星圏に侵入する時、集結した
宙域まで撤退する命令を発した。

ガミラス重巡艦隊は一度、威力偵察をやめ、出発点に戻って態勢を立て直す事にしたのである。

しかし、その宙域には第1特務戦隊が予め敷設しておいた反物性ミサイルが10基、獲物を求めて待ち伏せて
いた。



木星圏の支配権を巡る戦いはまだ始まったばかりだった。 

                                                    ヤマト発進まで1481日
[PR]
# by YAMATOSS992 | 2012-04-24 21:00 | 本文 | Comments(0)